経済学部経営学科(網倉ゼミ) 久富 孝司
・ テーマ『商店街を探る ‐衰退とその対応‐ 』
≪はじめに≫
今、全国の商店街の 9 割以上が停滞ないしは衰退を続けているという。全国 各地で商店街の活性化運動が実施されているものの、回復の兆しは見当たって いないというのが現状のようだ。街角で、誰も客が入っていないブティックや 電器屋さんなどの姿を見かける人も少なくはないだろう。
このような商店街の衰退はなぜ生じるのか。さらにそんな中で繁栄するため の打開策はあるのか。「商店街」というものにいくつかの疑問を投げかけて、
その答えを追求して行きたい。実際に商店街を訪れ、その店主のお話なども織 り交ぜながら調査を進めていきたいと思う。
≪商店街とは?≫
「商店街」というものの定義は多くあるが、この論文では「商店街は主とし て多数の小売業が地域的に集中して、一定の街区をなし、各店舗は相互に補完 しあっていて、ともに買い物の場を形成するもの」という全国商店街組合連合 の定義を使って考えてみる。
次に商店街を細かく分けてみると、「近隣型商店街」、「地域型商店街」、「広 域方商店街」、「超広域型商店街」の4つにわけられるという。
① 近隣型商店街は、商圏人口1万人未満で、地方では農村、漁村に立地し たものであり、都市部では市街地の街路に沿ったもの、郊外住宅地の駅 前や中心部にあるものなど、付近の近隣地域社会の需要に支えられた地 域密着型のものが挙げられる。徒歩または自転車などにより、ほぼ毎日 買い物をする最寄品(最寄りの店でいつも繰り返し買うような商品)商 売中心の商店街をいう。
② 地域型商店街は商圏人口 10 万人未満で、最寄品店および買回品(複数 の店を回り、比較・検討した上で買うような品)店が混在するもの。商 業活動だけでなく、市役所、金融機関、業務施設、医療施設などの都市
施設と文化センター、娯楽レジャー施設などの生活サービス施設が結び ついている中規模の複合的商業集積である。主にバス、自動車、鉄道な どの交通手段で週間性買い物や日用品よりはワンランク上の買い物をす る商店街をいう。
③ 広域型商店街は商圏人口 20〜100 万人と領域が広く顧客吸引力の強い県 庁都市級の中心のもの。最寄品より買回品の方が多く、バス、自動車、
地下鉄などの交通手段で、月間性や目的を持った買い物をする商店街を いう。
④ 超広域型商店街は買回品中心で都市百貨店、大型量販店などがあり、鉄 道、地下鉄により遠距離からの来街者が買い物する商店街をいう。首都 圏で身近なところでは、新宿、渋谷、池袋などのような大都市に存在す るものが挙げられる。
≪なぜ商店街は衰退していくのか?≫
それでは次に商店街を調べるにあたって、最も基本的な疑問と思われる「な ぜ商店街は衰退していくのか?」ということに着目してみる。
実際に、「もうかっていない(いつも人通りが乏しく、シャッターが閉まって いる店が存在する)」と思われる商店街を歩き回った結果、あらゆる理由がそ の原因として浮上した。以下にまとめてみる。
①「競争が激しくなったから」
お店の競争が少なかった時代にさかのぼって考えてみる。お店の数が少なか った時代には、客はお店に対してほとんど不満はなかったという。自給自足の 農家が多く、お店が今ほど生活に密着していなかったということも考えられる が、一番大きな理由は客がお店を選択することがほとんどできなかったからと いうところにあるといわれている。昔は、「お米を買うといえば○○商店」と いうように、周辺に米屋は一軒しかなかったというところも少なくはないだろ う。客は米を手に入れるためには何としてもそのお店から買わなければならな かったのだ。このような場合、私たちは、そのお店の規模が小さかろうが、店 員の態度が悪かろうが、商品は買うだろう。これは客にとってコストが最小に なるからなのだ。つまりその時代は店があるというだけで満足できたのだ。こ の頃は、店員は商品をかわない客に対しては「冷やかしお断り(見るだけお断 り)」と掲げるお店さえもあったという。店員は貴重な商品を万引きされない ようにという感覚で店番をすることが多かったようだ。一方、客は店員と知り
合いになった方が商品を買う上で有利だったので、こうした店の体制に対して 不満を持つ者は少なかったという。これが「常連客」となっていったのだ。
しかし、やがて都市化などが進み、ライバル点が増加するようになっていく と、客は自由にお店を選択するようになった。特に同じような商品を同じよう な立地で販売していれば、客はより安い店の方に引きつけられるようになって いった。なかでも、これまでは値引きなど考えられなかったような商品を扱う ディスカウントショップの出現は衝撃的だった。
たとえば、隣町に大型雑貨店ケイヨーデーツー、激安酒店アタックが出現し たこと、そして何より、隣駅にふじみ野駅が開業しアウトレットモールができ たことは鶴瀬駅前商店街にとってはたいへん厳しいものとなった。常連客もだ んだんと減少していった。やはり、値段が安いということは消費者にとっては 大変大きな魅力なのである。
また、コンビニエンスストアの登場も大きく商店街の衰退を促した。コンビ ニエンスストアができると、客は従来の商店街のお店にあるものでも、気軽に 商品を選べることから頻繁に利用するようになった。確かに自分自身、商店街 の本屋で雑誌を見ようという気にはならない。ドラえもんに出てくる本屋では ないが、店主にはたきで追い出されてしまいそうに思えるからである。コンビ ニエンスストアでは店員からの接客もないので、店主の目も気にせず、気軽に 手軽に買い物をすることができるのである。
お店の数が増え、競争が激しくなるにつれて商店街は確かに、その勢いを弱 めていったのである。
②「店員の接客、お店の構造に問題があるから」
だいたいどの商店街を見てもそうであるが、とにかく入りづらい。なんだか 暗い雰囲気というか、どんよりとしているというか...。とにかく入りづらい。
これは少なくともお店の構造とそこからくる接客に問題があることがわかった。
商店街のお店には、商品が並べてある場所と客の移動できる場所があるもの の、店員の居場所が狭い、もしくは無いのだ。そうなると、店員はずっとじっ としているだけになり客にとってはじっと見られているような感覚になるのだ。
いったん店に入ってしまえば何かを買うまで出られないといった雰囲気さえ感 じてきてしまう。これでは、お店に入りにくいのは当たり前である。また、店 員は自分のスペースが狭いのでほかの作業ができない。すると自然に、店員は 客に対し注文も無いのに積極的に接客をするようになる。これは常連客だけを 相手にするだけならよいかもしれないが、初めての客にとっては大変入りにく いものである。客に「余計なお世話だ」というような態度を取られてしまって も仕方が無いと思う。
この商店街の構造、接客に比べコンビニエンスストアやスーパーなどでは、
一切の勧誘も無いので客は安心して商品を選べるのである。また、これは店員 のスペースがしっかりと区切って設けられているためといえるだろう。
商店街の構造とそこからくる接客の仕方は、コンビニエンスストアに客を取 られる原因の一つになっているだろう。
図)店の構造例
商店街の店 コンビニエンスストア
③「道路交通網が発達したから」
長野県大町市に行ったときのことである。私が JR 信濃大町駅におりたって、
駅前商店街を歩いていたときのことである。各商店が「商店街活性化運動」を 掲げていた。地元の人の話によると少し前はその商店街も大変華やかだったと いう。活気が弱くなってきたのはほんの最近であるという。その原因を聞いて みたところ、それは「交通網の発達」だった。私はそれを耳にしたとき「なる ほど」と思った。冬季オリンピック開催に向けての道路整備の一環として大町 市郊外にバイパス道路ができたのだ。この道路は混雑した市街地を通らずにす む大変便利な道である。便利であるがゆえにその道路の周辺には大型店がたつ ようになったというのだ。地元も人ばかりか観光客でさえも市街地には足を運 ばなくなっていったという。
客が商店街の店を捨てて大型店に引きつけられていったのは、大型店自体の 魅力もあったのだろうが、その大型店に行くための交通網の発達がその要因で はないだろうか。
都市のお店がどんなに魅力あふれていても、コストの低い買い物を目指す客 は、交通の便の悪いところにはなかなか行こうとはしないものだ。
ところが経済の発展は都心から離れた地域を結びつけるために、交通網を発 展させてきた。特に地方では、高速道路が大きな役割を果たしている。自動車
店員
商品棚 入口 商品棚
商品棚
店員
店員の机 商品棚 入口 商品棚
店員の机 商品棚
商品棚
が日常の交通手段として利用されている地域では、都心まで一時間程度で行け る高速道路ができると、客はどんどん商店街を離れて都市の店に引きつけられ てしまうのだ。地元の商店街よりも、車で一時間離れた店の方が引かれるとい うような経験を自分も実際している。よく軽井沢のアウトレットモールにいく 人も少なくはないのでは...。
また、数駅離れたところに大型店や有名店が登場してくると、やはりそちら の方に引かれてしまう。私も先日三つ隣の駅に「丸井」ができよく利用するよ うになった。
大型店の進出は確かに商店街の衰退の大きな原因なのだ。そのため地元商店 街では一般に大型店の進出に強く反対するが、たとえ大型店の進出を食い止め ることができたとしても、その地域の交通網が発達してしまえば、商店街は結 局同じ運命をたどるのではないだろうか...。
また、道路交通網の発達とは反対に赤字鉄道路線は廃止、もしくは列車本数 の削減に追いやられている。これも商店街の衰退に多少影響しているのではな いだろうか。山間地を抱える各県にとって公共交通機関、なかでも鉄道は大切 な大動脈である。しかし、国鉄民営化をきっかけに、あちこちで赤字路線の廃 止ばかりが進んでいる。大型駐車場を持つ大型店舗が郊外にできてから、ます ます鉄道の利用は減っている。駅前の商店街は「開店休業状態」になって、町 並みが消えつつあるのだ。「駅を降りると町が広がる、人が集まる、家が立 つ...」といった街のイメージがどんどん崩れて寂しいものになっていくよう に思える...。
④「アーケードが商店街の改革を遅らせたから」
アーケード、それは一見、商店街を盛り上げてくれるかのような響きだ。見 栄えもいい。いかにも活気が有りそうな雰囲気だ。そんな感覚で私は小樽のア ーケード商店街を潜り抜けた。休日の昼だというのにその活気は大変小さなも のだった...。今、このアーケードが、 商店街の衰退を招いているという。
かつて、アーケードを設置したときには、なぜアーケードを作るといいのか ということは明確に理解されていなかったとう。しかし、実際にはアーケード があるのか、ないのかではそれぞれのお店の 3 つの場所(商品のある空間、客 の移動できる空間、店員の空間)に大変大きな影響を与えた。
アーケードのない商店街では雨や風をしのぐために店頭と道との接触部分の 商品空間はほとんど発達しなかったようだ。そこで、このような商店街は一般 に「引き込み・回遊型店」の集合体になりがちだったのだ。
このような店は、客がいちいち店のドアを開けて中に入らなければ商品を見 ることができないので、はじめての客はなかなかやってこない。また、多少接 触部分に商品を置く店であっても、その部分には雨にもあたっていいくらい魅
力のない商品が置かれることが多く、多くの客を引きつけるまでには全くいた らなかったのだ。
ところが、アーケードが設置された商店街では、まったく環境が違ったのだ。
商品の劣化が少なく、厚さや寒さもあまり気にならないので、店の構造は店頭 をオープンにしたものとなった。店頭と道との間にも商品が並んでいるので、
客はそれを気軽に自由に見ることができるのである。実際多くの客を引きつけ たという。
このようにアーケードがある商店街が有利であるならば、いったいどうして アーケードが商店街衰退の要因になるのかというと、そもそも、全国の商店街 ははじめから商店街として存在したわけではないからだ。はじめは何らかの理 由で人通りがあるところに、一軒また一軒と店が増えていったのだ。たとえ、
地方都市でよく目にする今はどんなにさびれた商店街でもかつては華やかな時 代があったということだ。
店の前に、人の通行が多ければ店頭に商品を飾っておいても回転が早いから 採算が合うが、アーケードがあればより有利なのだ。そこで元気のいい商店街 では多少の投資をしてでもアーケードをつけようということになったのだ。ア ーケードのおかげで客も買い物が便利になって華やかな日々が続いたりしたも のの、やがて再開発の影響などでその通りの通行量がだんだんと減少すること になったという。
ここで、本来ならば店はさびれた場所を捨てて人通りの多い場所へ移ってい こうのが普通であろう。しかし、高い投資をして作ったアーケードがあるため に、今度はそう簡単には移動できなくなってしまったのだ。アーケードは商店 街業界の初期投資、固定費を大変大きくする要因となったのだ。そのためこの ような商店街では、店を移転しないまま、何とか客を呼び戻す方法はないもの かと模索を続けてきたというのだ。
しかし、かつてアーケードによって栄えた商店街も、通行客こそが繁栄の第 一条件だということに気づかない限りは、その復活のかぎを見つけ出すことは そう容易ではないだろう。今でも、客の姿はないが元気な音楽の流れる小樽の アーケード商店街の姿が思い浮かびあがってくる...。
図)引き込み・回遊型の店舗例
⑤「自動販売機の設置が増えていったから」
今現在、多くの商店街の前には、閉店後や定休日でも客が利用できる自動販 売機がたくさん設置されている。停滞、衰退する業績を取り戻すためにも、自 動販売機の数がどんどん増えていったというのだ。
ところが客は、自動販売機で買える商品は買うものの、店内で買わなければ ならない商品はその店を避けてコンビニエンスストアなどで買うようになった のだ。そして、店内よりも自動販売機の売上が上がると、店主はついつい機械 の数を増やしたくなり、ますます店内の商品が売れないという悪循環に陥って いった。決して自動販売機が商店の客寄せに貢献するわけではないということ を店主は知っているにもかかわらず、店主はやはりどうしても安易な解決策に 頼りたくなってしまうようだ。隣町のある商店街の電器店は乾電池の自動販売 機まで設置している。しかし、これは値段も定価であんまり売れてはいなさそ うだ。最近では、乾電池ならディスカウントショップでもアルカリ電池2本入 りが100円くらいで手に入ってしまう。何が何でも自動販売機に頼るのも良 くないのだ。
商品棚 店員 商品棚
客はこのスペースを 回遊する
入口 店員の机
≪客が遠ざかった商店街の店たち(実際に見られる衰退の具体話)≫
商店街には、電器屋、靴屋、駄菓子屋、肉屋...というように多くの専門店 が並んでいる。次は、その各店にみられる具体的な寂しい様子をいくつか例と して、参考までにあげてみる。実際にどんな形で客の入りが悪くなっているの か、その様子を頭の中に思い浮かべることができるだろう。
1、『とあるファッション店(ブティック)』
店主が趣味と実益をかねてつくった店で、店主は自分のファッションセンス と販売にかける情熱にはまだまだ自信を持っている。この店はできた頃には、
当時としては大変センスのいいファッション店として、おしゃれな主婦たちに 愛されていた。口コミであたらしい客も次々と訪れ、ファッション情報の拠点 として毎日多くの客が出入りしていた。ところが近くに大型店ができた頃から、
だんだんと訪れる客の数が減ってきた。最近ではごく限られた常連客だけがぽ つぽつとやってくるだけになってしまいました。
商店街によく見られる店内の様子が見えにくいような店は店員の常連接客が 予想されるため、初めての客にとっては大変入りづらい店なのだ。
2、『商店街の花形、電器店』
電器店といえばかつては商店街の花形的存在であった。商店街に繁栄を担っ たリーダー的存在だったが、店の構造や接客方法はほとんど変わらなかった。
っそれは電気製品の商品パワーが強かったために、特別な改革をしなくても客 がやってきたからなのだ。
その後、スーパーや大型店が登場してきてはじめて、客は従来の電器店が入 りにくい店だということに気づいたのだ。さらにディスカウント店の登場によ って電気製品がよりやすく自由に買えるようになると、客はあっという間に商 店街の電器店から遠ざかってしまったのだ。困った電器店は客を呼び戻すため にますます常連接客に力を入れてしまい、なおいっそう、客を遠ざける結果に なってしまったのだ。今はなじみの高齢者の客に修理が頼める店として定着し ているようなところも多いという。
3、『店主優先のスポーツ店』
商店街を観察してみると、店員の姿がなかなか見えない店がたくさんあるこ とに気づく。店と住居が一緒になっているために、店員は客がこない間は住居 の中で用事をしたり休んだりしていて、いつも店頭に出ているわけではないか らだ。これは決してコンビニエンスストアや百貨店やスーパーなどには見られ ない風景だ。
スポーツマンの主人が経営をはじめた、とあるスポーツ店があった。この店 も主人が体を悪くしたために、開店休業のような状態を続けてきた。客は商品 を買うために我慢をしてきたが、他にいい店ができるとすぐに移動してしまっ たという。店主とその家族だけの店では、どうしても客の都合よりも働いてい る人の都合が優先されてしまいがちなのだ。不安定な経営の一要素となってい る。
4、『コンビニエンスストアに負けた駄菓子屋』
商店街の衰退が始まると、店が古くなってもなかなか改装されなくなってし まう。例えば、商店街の片隅の駄菓子屋さんはたいてい昔のままの姿で残され ていて、すっかり大人たちの郷愁をそそる存在となってしまっている。
駄菓子屋さんと言えば、昔は子供たちでにぎわったものだが、今では一日に 数えるほどしかやってこないという。子供たちはたとえ同じような商品であっ ても、色々な商品があって自由に見られるコンビニエンスストアでお菓子を買 うようになってしまったのだ。
それでいても多くの駄菓子屋さんの店主は、一人で気が向くままにやってい くので、体が元気なうちは店を開けているのだ。損をしてでも、地元の子供の 役には立ちたい、少しは立てるだろうといった具合だろう。
5、『客の選択に対応できない和菓子店』
店員の空間が狭い引き込み型のお店というのは大変入りづらいものだ。堂々 と入れるのはなじみの客くらいである。かつて甘いものを売っているお店が少 なかった頃には、近所の客がちょっとしたお使いやおやつなどを買うためにし ばしばやってきた。しかし次第にさまざまなファーストフード店やスーパー、
コンビニエンスストアなどの競合店に客を取られてしまい、店の前の通行客は 確かに増えているのにもかかわらず、業績は下がってしまった。競合店に対抗 できるような商品を開発したり、はじめて訪れる客の訪れやすい店の構造にし たりすればいいのだろうが、店主にとっては大変負担が大きいので、なかなか 手をつけることができないという。
6、『すぐに接客される衣料品店』
前面をオープンにして、店頭にも店内にもたくさんの商品を陳列した婦人衣 料の店がある。まだ、商店街に活気があった頃は、この店も連日多くの客でに ぎわったという。
しかし、かつては人目を引いた豊富な商品量も、スーパーや百貨店やショッ ピングセンターやディスカウント店の大量陳列に慣らされた客の目にはもはや 新鮮には感じられなくなってしまったのだ。そのために客数は急速に減少して いったのだ。
その上、少なくなった客に対して、もともと熱心だった店主がますます熱心 に接客をするので、常連客にとってもなかなか店内をゆっくりと歩いて回れな い状況になってしまった。
7、『自分流を貫くお店』
商店街には、何度も店舗改装を繰り返す店がある一方、まったく改装をしよ うとしない店もたくさんある。商店街はあくまでも個人の客の集合体なので何 事も個人の都合によって決められ、全体の意志を統一することは大変難しいか らだ。商店街に勢いがあるときには、組合などの活動も活発で店舗改装を働き かけたりすることもあるが、いったん衰退が始まるとなかなかそういう気運は 起こさなくなってしまう。
昔と同じ構造の店で、変わらぬ商品を販売し続けている店も少なくない。売 上はだんだんと下がっては行くものの、とりあえず何とかやっていけるので、
改装したり新しい商品構成の店にしたりする気はまったく起こらないのだ。お 店がそんな状況であれば、借金をしてまで店を改装する気にはなれないといっ た気持ちもわからなくはない。
8、『店主が老いたお店』
商店街の中には、老齢化した店主が経営をする後継者のいないお店というの もよく見られる。子供たちは将来性を考えて別の道を選んでいったのだ。
そんなお店を営む店主の中には、「若い頃から店頭に立って商売を続けてき たので、今でもそれを続けている。以前は多かったこの商店街の通行量は今で はすっかり減ってしまい、時々通りかかる顔見知りに挨拶するのが主な仕事に なっている」といった店主や、「最近はお店に出ていてもうつらうつらしてい ることが多くなってしまった。客はあまりやってこないが、それでも他の職場 では、この年齢でこんなふうに働くことはできないから、健康のためにも店を
続けたい」といった店主もいるという。
9、『ライバルに苦しむ写真屋』
商店街の写真屋は、かつて地元の人々の誕生、七五三、入学、卒業、成人、
見合い、結婚など様々な社会催事を記録してきた。やがてカメラが普及すると、
今度は現像やプリントを通じて、それぞれの家族の変化を記録することになっ た。
ところが時代とともに薬局やコンビニエンスストアなど様々な業種の店が 次々と取扱店となり、ついにはプリント料金0円までの激しい競争になった。
また、カメラやフィルムを買う客は都会のディスカウント店に取られてしまっ たのである。
子供時代に撮影したことのある客も、今では安い代金で何も交渉しないで現 像やプリントをしてくれる店を愛用してしまっているのだ。
10、『地元客の離れた寝具店』
寝具はかさばる商品なので、以前はたいてい地元の寝具店が利用されていた。
そのため寝具店の店主は客の家族構成の変化などをよく知っていた。ところが 店員を気にせず自由に寝具が買えるスーパーやショッピングセンターなどが登 場すると、客はすぐにそういった店で買い物をするようになってしまった。
商店街の寝具店は在庫の種類や量が少ないため、なかなか客の気に入った商 品を販売することができない。売上も上がらないので後継者がいないのが現状 だという。それでも店主はあまり忙しくない今の店に満足してしまっている場 合もある。こういった店は店主の高齢化とともに自然に衰退をたどることとな っている。
11、『客を遠ざける貴金属店』
かつて貴金属店は文字通り貴重品を商品として販売していたために、客はな かなか落ち着いて気軽な気持ちで商品を眺めることができなかった。それにも かかわらず、商品にはパワーが合ったので、客は何とか辛抱して商品を買って いたという。
昔であれば、商店街の貴金属店には、ある程度の客が訪れていたが、最近で は大型専門店やショッピングセンターの中でも、もっと自由に商品を見たり検 討したりできるようになったので、客はだいぶ減っていった。またさらに、商 店街の貴金属店の店主は万引きがついつい気になるらしく、客のことをじっと 見張りがちだという。余計に客は店に入りにくくなってしまうのだ。
12、『構造と接客が矛盾する文具店』
文具店の場合、もともと商品アイテム数が多かったり廉価な商品が多かった りしたことから、比較的早くからセルフに近い方法で販売されてきた。商店街 の文具店もほとんどがセルフの構造をしていたが、店の規模がどうしても小さ いので多くの店では常連客向けタイプの接客が行われてきたのだ。
昔は近所の子供でにぎわったものだというが、通行量の減少とともに客数が 減っていった。そこで思い切って店内を改装して、趣味性の高い文具を中心に した品揃えに切り替えた店が多かったのだが、接客方法まではなかなか変える ことができなかったという。セルフの店なのに店員が接客をしてしまうので客 は落ち着いて商品を見ることができないのである。セルフ方式にはしたものの、
ここでもやはり店主は万引きが気になり接客をしてしまう兆候がある。
13、『商圏拡大に困る玩具店』
車社会の到来は郊外に次々と新しいショッピングセンターや大型店を生み出 し、買い物のあり方を変化させた。そうした大規模な店の中にある玩具店では、
自由に遊べる場所があったり試すことのできるおもちゃがおいてあったりする ので、子供の心を大きくつかんだ。今では、当たり前のようにおもちゃは自由 に見たり触ったりして買うものだというイメージがある。
こうした環境の中で、商店街の玩具店はどんどん厳しい状況になっていった。
近所の玩具店は子供たちにとって非常に興味のある店でありながら、自由に触 ったり遊んだりすることを厳しく戒める場所でもあったからだ。このような玩 具店はもはや子供の心を捉えることはできないだろう。
14、『常連接客で客が遠のく酒屋』
酒屋は免許制度などの恩恵を受けて激しい競争から保護されてきた反面、他 業種の店に比べて古い構造や接客のままで営業を続けている店が多かったとい う。それでも次第に改装されるようにはなったというが、古い体質が残ってい るために、なかなか新しい売り方になじむことができなかった。
とある酒屋も従来の薄暗い酒屋を脱してコンビニエンスストアのような構造 に改装した。しかし、奥が住居となっているために、店員はいつも店頭にいる というわけでもなかった。また、常連接客が展開されているので客は自由に店 内の商品を見たり検討したりすることができないのだ。これが客の減少につな がっているという。
15、『買う客しかこない米屋』
大勢の客でにぎわっていた頃の商店街は、八百屋、肉屋、豆腐屋などのいわ ゆる業種店によって構成されていた。今でも大部分の米屋はその頃と同じ構造 と売り方によって営業を続けている。酒屋と同じように免許制度で守られてい たことが、かえって改革を遅らせてしまったのだろう。
米屋は昔から典型的に買う客しかやってこない店だったため、構造や接客は 完全に常連客中心になっている。客は重くて自分で運ぶのが大変な米は配達し てくれる従来の店を利用してもいいとは思っていたが、スーパーなどでいつで も自由に好きな米が好きなだけ買えるようになると、わざわざ商店街の米屋で 米だけを買う必要もなくなってしまったのだ。
16、『質はいいのに客のこない肉屋』
かつての商店街には、新鮮で上質な肉を売ることで人気のあった肉屋や自家 製の揚げ物が評判で、毎日行列ができた肉屋がたくさんあったという。ところ がこうした店は味も品質も昔とはあんまり変わらないはずなのに、今ではめっ きり客が減ってしまったのだ。
夫婦の共働きが珍しくなくなった今現在では、買い物のパターンも大きく変 わってきたという。かつては、毎日夕方になるとその晩のおかずを買いにきた 主婦たちも、今は土曜日曜に夫婦そろって車を使ってスーパーへ買いだしに行 ってしまうのだ。身近なはずだったこうした店が、現在の客には遠い存在にな ってしまったのだろう。
17、『スーパーに負ける商店街の魚屋』
商店街の中で魚屋はいつも元気な声を飛ばしていた。活きのよさが売り物の 魚屋では、店員の活気のある風景が多くの客をひきつけるのだ。
ところが、スーパーや百貨店やショッピングセンターなどの大規模な魚屋が 新鮮な魚を安く大量に、しかもセルフ方式で販売するようになってからは、商 店街の魚屋の客数がどんどん減少し、次第に店員の活気ある声もなくなってい った。かつて魚は家庭の主婦が身近な魚屋で店員と言葉を交わしながら買うの が常識だったという。しかし今は、男女を問わず多くの客が、セルフ方式で自 由に商品を選んだり買ったりするのが当然となってしまった。
18、『常連接客が避けられた八百屋』
八百屋の店頭で店員と顔なじみの主婦たちがにぎやかにしているやりとりは、
全国の商店街に共通する人情味あふれる風景だ。しかし、やはり、スーパーマ ーケットが登場し、セルフで野菜が買えるようになると、客はどんどんとそち らの方に流れていった。八百屋の店員とのやりとりを楽しみにしていたはずの 主婦たちも、店員の存在を気にせずに野菜を買えることの魅力に強く惹きつけ られてしまったというのだ。
かつては商店街の売り物だったなじみ客との濃密な人間関係は、実は多くの 客にとっては大変大きなコストとなっていたのだ。
19、『顔見知りに避けられる薬局』
商店街の薬局の店主は近所の客から『先生』として信頼される存在だったと いう。けれども薬局が急増するにつれて、客は店を使い分けするようになって いった。店主が近所の人であるだけに、知られたくないことや話しにくいこと も多くあり、そのようなときには少し離れた店を利用するようになったのだ。
そのうちに大型のセルフ方式の店が登場し、種類豊富な薬や雑貨類が安く売 られるようになると、客はこれまでお世話になった店を避けて、このような店 に行くようになった。なじみの店主が熱心に客の相談に乗ろうとすることが、
かえって客に強い負担を感じさせてしまったのだ。「知っている人だからこそ 話せない」ということは普通によくあることだろう。
≪商店街に関わる環境の変化≫
これまでに衰退原因、そしてその具体的な実情についていくつか例を挙げて 書いてきた。するとどうやら、一言でまとめてみると、「商店街にかかわる環 境の変化」がその衰退の大きく影響を与えているということに気づいた。そし てそれは「外的な環境」と「内部的な環境」の 2 つにわけられることができそ うである。
ここで書いてゆくことは、これまでに書いてきたことと重なる点が多いかも しれないが、今度は衰退の原因が隠れていると思われる「環境変化」に焦点を 合わせて考えてみる。さらにそこでは「外部環境」と「内部環境」との 2 つに 分けて書いてみる。
−外部環境
①「消費者のライフスタイルの変化」
急速な技術の進展と経済的な豊かさを得て生活水準が向上していくと、消費 者は様々な媒体から情報を仕入れ商品知識が豊富になっていく。そして「品質 と価格のバランス」を重きにおいた買い物をするようになっていった。中小企 業白書によれば、価格、品質以外の商品選択基準では「特に基準はなく、気に 入った商品を購入する」と応えた割合は高年齢層ほど高く、反対に「自分のラ イフスタイルや価値観を満たす商品を嗜好する」と応えた割合は若い世代ほど 高くなっている。つまり、これは、若い世代ほど自分のライフスタイルにこだ わりを持っているということではないだろうか。
このことには「自由化」、「少子化・高齢化」、「女性の社会進出」という社会 の変化が消費者のライフスタイルに影響を与えている。
「自由化」は市場競争を促進して、メーカーや流通業が差別化に向けたいろ いろな革新を行うようにした。それで、消費者には選択肢が豊富に用意され、
「よいものを、よりやすく買いたい」とか「自分の嗜好に合うものを選びたい」な どといった、それぞれの選択基準で商品や店舗を選ぶという意識がたかまる。
また、「自由化」は規制によって隠されていた消費者ニーズや抑えられていた 消費者満足を表面に顕にさせることにもなる。
「少子化・高齢化現象」は、「人口統計(平成10 年 10 月 1 日現在のもの)」 のよれば65歳以上の高齢者人口は2,051万人で総人口の16.2%を占めることに なり、今後の推移は「日本の将来統計」によれば、2,015 年には 25%を越えると 予想されている。また、少子化も進んでいるので、14 歳以下の年少人口の割合
は 15.1%となっている。これらは出生率の低下、晩婚化、非婚化などが原因と
されており、その結果として 50 歳代の層が最多人口の年代となり、消費はな るべく切り詰めるが、価値があると認める商品、サービスやこだわりの分野に おいてはお金を惜しまないといった消費者が増加するだろう。高齢化は収入の 面においては伸びを抑えるが、時間の面においては「自由な時間」が増える方 向になる。それで、買い物それ自体が楽しみとなってその目的には時間を惜し みなく使うようになる。また、「高齢化社会」といえば「福祉・介護」や「医 療」などのビジネスなどが考えられがちであるが、70歳以上でもおよそ 8 割の 人は日常生活を送るのに支障がないため、元気な高齢者に向けての新しい商品、
サービスを提案していかなければならないと思われる。
「女性の社会進出」についてであるが、これは近年大変著しい。就職活動を 通じてもこれは強く感じられた。女性の就業率は特徴としてM字型になってい て、平成 7 年度「働く女性の実情」によれば出産期の 30 歳代前半は 50%強で
あるが、労働適齢期の20歳台と50歳台では 70%以上となっている。また、以 前は家庭に閉じこもりであった専業主婦が、最近ではその自由な時間を利用し て積極的に習い事や町内会へ参加するという意味においても「女性に社会進出」
が進んでいる。こうした 2 つの方向での社会進出は女性の価値観を幅広く多様 化させてみせた。また、働く女性は買い物の時間の制限を受け、まとめ買いの 傾向が高まって、更に一箇所で購入予定の品を全て揃えられる買い物、ワンス トップショッピングへの要求が高まっているようだ。
これら消費者ライフスタイルの変化は確実に買い物をする機会というものを 減らしている。ライフスタイルの変化を踏まえて今後、新しい対策を練ってい かなければならないのは商店街に限ったことではないだろう。
②「モータリゼーションと交通機関の進展」
歩いて買い物に出かけるといったのが主流であった時代とは変わって、近年 交通ネットワークの整備などによって買い物に行く手段は、バス、鉄道、自動 車などと大変幅広くなった。
地方都市圏を見てみれば自家用車の普及が顕著であり、道路の延長や幅の拡 張、バイパスの新設など道路への投資が盛んに進められ、ますます車による買 い物が促進されていった。反対に、自家用車に乗客を奪われたバス路線や鉄道 路線では運行本数の減少や路線の廃止といった現象が起きている。このような 公共交通機関の利便性の低下が、「車が買い物に欠かせない」といった風潮を つくっていったようだ。
大都市部では道路混雑が激しく、店舗密度が大変高いので車を利用市内で買 い物に出かける消費者も多い。地方に比べればモータリゼーションの影響は少 ないといえるだろう。しかし一方では、公共交通機関の整備が格段に進んでい る。その中でも鉄道ネットワークの整備が消費者の行動範囲を広げている。タ ーミナル地域においては、乗客数と商業力が密接な関係を持っていて、大変広 い地域から消費者が買い物にやってくるという。鉄道会社がデパートを持つと いった多角化の行動もこのことから理解できる。
自動車、鉄道、バスのいずれの交通手段を使って買い物をするにせよ、その ネットワークの進展は競争の環境を広くするという影響を与えているだろう。
具体例をあげたときにも書いたが、こういった消費者の動きも商店街の売上に 大きく影響するのである。
③「法律の影響」
中小の小売店が大型店と共存共栄していかなくてはならない現在、ここ数年 の法律面において大きな変化が訪れた。従来の大型店の事業活動を規制してい た大店法(大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律)は、
大型店の事業活動を規制して中小小売店の事業活動保護をして、なおかつ消費 者の利益の確保に配慮するかたちであった。しかし、いつしか規制緩和の風潮 が流れ、大型店を経済面において規制するということも時代の流れに反するよ うになった。海外からの圧力も重なって、2000 年 6 月には大規模小売店舗立地 法が(大店立地法)が生まれるに至った。
大店立地法の条項のはじめには「この法律は大規模小売店舗の立地に関し、
その周辺の生活環境保持のため、大規模小売店舗を設置するものによりその施 設の配置および運営方法について適正な配慮がなされることを確保することに より、小売業の健全な発展を図り、もって国民経済および地域社会の健全な発 展を国民生活の向上に寄与することを目的とする。」と書いてある。この法律 は大店法の「経済規制」に対して「社会的規制」という言葉があてはまるだろ う。大店立地法により法律の運営主体が国から自治体へと移り変わって、より いっそう地域に即した街づくりができるようになったという。しかし、減少し ている中小小売店にとっては大型店が条件さえ満たせば 24 時間営業すら可能 になるようなことは決して歓迎されることではなかった。実際、法律制定に関 しては事業主から大きな反対を受けたという。そのような反対を抑えて、彼ら を守る目的で制定されたのが中心市街地活性化法である。
中心市街地活性化法(中心市街地における市街地の整備改善および商業等の 活性化の一体的推進に関する法律)は、空洞化の進行している中心市街地の活 性化をはかり地域の創意工夫を生かし行政が総合的な政策を推進することで、
地域振興と秩序ある整備を図り、かつ自国の国民生活の向上と国民経済の発展 を図ることを目的としている。総額1兆円の予算が計上されており、「商工会、
商工会議所、第三セクターを設立して、中心市街を『面』的にとらえて、総合 的なマネジメントを行う」とされている。またその内容は地元のコンセンサス に基づいて具体的な活性化案を考える街のマネジメント機関を設置するなどと いったものになっている。
また都市計画法は、そのはじめに「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、
それによって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的と する。」とある。1998年5月の改正でこれまで国が指定してきた特別用途 地域を地方行政が指定できるようになった。このことは、中小小売店舗地区ま たは特別住居地域などといった特別用途地区の指定を行うことで、その地域へ の大型店の出店を規制することが可能となったことを意味する。
以上に述べてきた「大規模小売店舗立地法」、「中心市街地活性化法」、「改正 都市計画法」を3つまとめて「街づくり3法」と呼ぶ。少なくとも商店街はこ れらの法律に即した街づくりを進めていかなくてはならないのだ。
④「大型店の郊外進出」
中心市街地の地価の高騰により都心に家を持つことが難しくなり、郊外に出 現したニュータウンのような新興都市へと消費者は移るようになった。そして、
市街地が無計画に郊外に拡大していった結果、市街地が虫食い状に形成される ようになっていった。それにともなって魅力のある市場が郊外に形成されるこ とになるのだ。しかしまだその時点では衣食住の各市場がまだ不十分であった。
そこで商品力と資金力が豊富な大型店がそのニーズをいち早く察知し、郊外に 出店し始めた。郊外は都心部とは違って、土地が豊富でその価格も安くなってい る。しかも、第一次、第二次産業を中心とした産業構造からの転換、グローバリ ゼーションの進展により、郊外にあった工場の跡地が利用できるようになった のである。そのこともあってモータリゼーションに対応する大きな駐車場が整 えやすく、ローコストでの運営が可能となって、大型店は繁栄していったのだ。
最近では、都心大型店よりも郊外の大型店のほうが採算性がよいともいう。し かも規制緩和の流れにも乗って郊外出店は加速しているのだ。
⑤「新しい小売業態の出現」
近年いろいろな小売業態が現れているという。例えば、食料品を中心とした 大衆商品全般を扱っている店舗(ジェネラルマーチャンダイズストア)、人件 費、仕入れ価格、店舗経営費などの削減をすることで低価格の販売を行ってい る店舗(ディスカウントストア)、同じくディスカウントストアの一形態で特 定の商品カテゴリーに専門化して、狭く深い品揃えと低価格販売を行っている 店舗(カテゴリーキラー)、郊外の主要幹線道路沿いに出店している低価格販 売を特徴としている店舗(ロードサイドショップ)、身近で手軽といった利便 性を追求した店舗(コンビニエンスストア)などがある。
これらの新しく増えてきている小売業態は、消費者のライフスタイルに合致 した対応をとっていたために急速に発達していったのだ。商店街はこれらの新 小売業態にお客さんを奪われていき、その衰退はますます加速することとなっ た。
−内部環境
①「中核店舗が無い商店街」
多くの商店街の中に知名度が高く、集客力の強い中核店舗が存在していない という問題がある。近年の大型店舗は多様化する消費者のニーズに応えるよう に、専門性やテーマを持って、消費者の来店目的を持たせることや買い物時間の 延長を狙っている。それ以外の低価格志向、専門分野への特化などの特徴を持
った小売業者も集客力に富む。これらの中核店舗を持たないという内部状態は 商店街からの衰退を加速させていく。
②「魅力創出が苦手」
個別店が消費者に対して魅力を作り出せなかったという問題点がある。それ には豊富な品揃えや親切なサービス、店舗の清潔性、レイアウトなどをよりよく する努力がなかなか行われなかったのが商店街各店舗の魅力を減退させること になったという。常連客に対してはあまり問題ではないかもしれないが、引っ 越してきたばかりの人などに対して考えれば魅力の創出は大変重要なことのよ うに思える。
③「店舗後継者がいない」
後継者不足と空き店舗の増加という問題がある。中小企業の調査によると、5 年前と比較して空き店舗が増加している割合が 58%と半数を超えたという。そ の増加の理由だが、「売上が現象し、資金繰りが困難になったから」が 59%、つ いで「後継者難」が 47%となっている。将来的な不安の多い商店街内の小売業 が後継者を確保することが困難となって、売上が落ちても改善努力をしないで、
そのまま廃業、倒産、移転に追い込まれている。空き店舗化してしまった店舗は 商店街全体の見た目の悪さ、閑散とした雰囲気を作り出し、魅力を減退させ、新 たな空き店舗の増加という悪循環を生み出すのだ。
④「商店街統括リーダーがいない」
個別店で構成されている商店街のその全体を引っ張るリーダーの不在という 問題がある。外部環境に対応していくためには商店街全体で取り組んでいかな ければならない。しかし、数多くの個別店により構成される商店街ではなかな か構成員の総意や協力はえられないのだ。また、このリーダーの欠如は全体の 事業の進行、活性化を妨げている。
≪商店街に今何が必要なのか≫
これまで商店街の衰退原因やそのおかれている環境などに焦点を当てて書い てきた。ここでは、それらを踏まえた上で、商店街に今何が必要なのかを考え ていきたい。また、参考として繁栄していると思われる商店街から感じ取れた ことなども含めて考えていく。
いままで調べてきた結果を踏まえるとここでは「商店街が果たすべき機能」
という言葉を用いるのが最適と考えた。何が必要なのか分かりやすく考えるた
めに「商店街が果たすべき機能」をキーワードにしたいと思う。「果たすべき 機能」といっても勿論数え切れないほどあがるだろう。今回は特に重要と思わ れる 7 つの機能に絞ってみた。繁栄している商店街をみてみると、その多くは その7つの機能をほとんどカバーしていることが感じとれた。
ちなみに、当初「常連接客が悪い」といったイメージにかられていたが、実 際に商店街を見てみると、次の7つの指標を満たしていれば「常連接客」も問 題ないように思えた。商店街の評判がよく活気があれば、常連接客が良い悪い というのは全く考える必要がなさそうだ。ただ、寂れた雰囲気の商店街での「常 連接客」は店への同情、その他あらゆるプレッシャーを感じ、確かに入りにく いものだった...。
それではまず、その 7 つの機能をあげ、それからその機能性をどう上げるか を一つ一つ考えていきたい。
〔指標となる機能性〕
① 利便性;近くて便利、交通の便がよい、駐車場が利用しやすい、一つの商 店街でいろいろなものがそろってしまう、通勤通学途中で買い物ができる 等。
② 選択性;商品の種類が豊富で、同業種・異業種の効果的な組合せがある等。
③ 安全性;交通面での歩行安全性、災害、保安、風紀面での安全性等。
④ 快適性;落ち着いて買い物ができる、清潔である、雰囲気がよい、憩いの 空間がある等。
⑤ コミュニティー性;地域との密着度、人間的なふれあい等。
⑥ レジャー性;買い物時間を楽しめる等。
⑦ 情報性;内部の情報管理、商店街と消費者との相互の情報交換等。
〔機能性向上の方法〕
1.<利便性・選択性>
ショッピングセンターは計画的に作られた商業施設の代表例だろう。商 店街が利便性、選択性を高めるための具体的な取り組みとして、駐車場の
整備、ワンストップショッピングの場の提供、核となる店舗の誘致などを 行う際には計画性が不可欠であろう。ここではまずショッピングセンター の特徴と経営原則を挙げて、それらを参考にしながら利便性、選択性を高 めるための方法を考察してみたい。AMA(アメリカマーケティング協会)
の定義によればショッピングセンターとは、「多くの消費者が商品につい て抱いている欲望の大部分を満足させるに足りるだけの各種の商品を取り 扱っている小売店が集合している地理的な集合店であって、かつ消費者が 買い物に出かけていくのに、時間的に便利かつ十分な魅力を持っている場 所」だという。次にショッピングセンターそのものとしていかなる性格が あるか考えてみる。
ⅰ)計画的建設の原則
出店する小売業やサービス業などの業種の設定、構成や、配置、ま た店舗の構造や、道路の幅員、更にまた駐車場や、自動遊園地、モール などの設備に至るまで、誠に合理的にまた理想的に形成することで、
それが最初から計画的に設立されることによってもちうる合理性を 打ち出してゆく。
ⅱ)地域社会との結合の原則
消費者が郊外住宅地に大きく移動したために、必然的にその地域 にそれらの消費者が魅力を感じ、満足を得ることのできる小売店が 要求される。そのため住宅地改造計画が立てられている土地にその 計画の一環としてまずショッピングセンターを建設する例にもある ように、地域の特性を考えて出店してゆく。
ⅲ)システム化されたる大型経営の原則
多数の企業経営が共同的に結びついて、彼らの共通の利益をより 大ならしめるために、全体を包括する一定のルールに従って活動し てゆく。
ⅳ)総合性の原則
様々な業種、形態の商業経営が総合して経営されることで、消費 者の観点からワンストップショッピングの買い物慣習を満足させて くれる経営形態。ワンストップショッピングとは先にも書いたが「顧 客が一度で全ての買い物を済ませることができること」で、そのた めた店舗によるバラエティーに飛んだ商品の組合せが必要になって くる。
ⅴ)共同的意識の原則
ショッピングセンター会社が一つの単位として計画、所有、管理す ることで全体的な経営や管理の機能を担うという役割を果たし、各 店舗の企業経営も、共同化することによって全体を束に下大きな力 を発揮し、共通の「幸福」を高めようとすることで、ショッピングセ ンター全体を一つのグループとして常にその根底に共同意識を横た えている。
ⅵ)統一的管理の原則
ショッピングセンターとは各種形態の小売業やサービス業などの 多数が有機的に結びついて初めて構成される商店の集団であり、デ ベロッパーやショッピングセンターの管理会社と出店者との関係は、
完全なる協力体制のもとに集団的な共同力を発揮するものである。
ⅶ)マグネットストア配置の原則
マグネットストアとは顧客吸引力の核となる企業のことで、これ らの店舗を配置することでそのショッピングセンター全体が持って いる名声と魅力をより大きなものにしようとするものである。近隣 型商店街においてマグネットストアはスーパーマーケットやドラッ グストアとなることが多く、地域型商店街では小型百貨店やスーパ ーマーケットがなることが多い。
ⅷ)モール構成の原則
ショッピングセンターの構成について見られる動向として「オー プン・モール」と「エンクローズド・モール」がある。「オープン・モ ール」とはショッピングセンターの歩行スペースが青天井のものを 言い、天候や気温の影響をじかに受けてしまうが、「エンクローズ ド・モール」とは歩行スペースの上に屋根をのせた構造のもので、全 館冷房・全館暖房が可能となってより快適な買い物が可能になって くる。このようにモールを設備することによって、顧客の滞留時間を より長くして、さらに快適で楽しいショッピング空間を提供するこ とができるのである。
これから、以上 8 つの経営原則を参考にしながら駐車場の整備、ワンス トップショッピングの場の提供、各店舗の誘致について考えてみる。
Ⅰ)駐車場の整備
平成 7 年度の「小売業経営戦略調査」によると商店街の抱え る問題点に対するハード面においての具体的な取り組みは「駐 車場の整備」がもっとも多くモータリゼーションを繁栄した結 果となっている。駐車場の整備を行うには「計画的建設の原則」
にのっとり、他の設備との兼ね合いを考えながら、総合的に魅力 を向上させなければならない。
Ⅱ)ワンストップショッピング
消費者の中小小売店に対する不満を見るとワンストップショ ッピングへの対応の悪さが上位に挙げられている。中小小売業 が個人レベルでこの要求に応じることは不可能であり、商店街 全体で「システム化されたる大型経営の原則」、「総合性の原則」
に基づきながら、商業集積としてのメリットを十分に発揮しな ければならない。
Ⅲ)核店舗の誘致
商店街の核店舗とはショッピングセンターにおけるマグネッ トストアにあたり、中心になって顧客を吸引する力を持った店 舗である。商店街は「マグネットストア配置の原則」にのっとり、
集客力の高い力を持った店舗を誘致して、効果的な事業の組合 せを行い、共存共栄を図ることを目指すべきである。
2.<安全性・快適性>
安全性、快適性を高めるための具体的な取り組みとしてアーケード、歩車 道分離、カラー舗装、ストリートファニチャーなどが挙げられる。これらは いわゆるハード事業である。ここでは、それぞれの対応の特徴を述べてみ る。
ⅰ)アーケード
商店街の来街者に書いて来な買い物の場を提供するひとつと してアーケードがあり、炎天下では日陰の役割を果たし、雨天時 には傘をささずに買い物を楽しめる施設として楽しまれている。
アーケードの設置は通常歩道のカラー舗装など他のハード事業 と一体的に行われる場合が多く、商店街にとっては、環境施設改
善によるイメージアップが可能になる。両側に商店の並ぶ道路 の前面に文字通り蓋をする形でかける全蓋式アーケードと、道 路を境にして片側店舗前の道路を覆う形でかける片側式アーケ ードの2種類に分類される。
全蓋式アーケードでは、歩行者天国を実現する反面、開放性 に乏しく日照性を欲する時期は帰って妨げとなってしまう。ま た片側式アーケードは乗用車、バス、タクシーなどの乗り入れが 便利であることと、開放性に優れている半面、買い物の場として の便宜性や落ち着きムードにかけるということが欠点である。
ⅱ)歩車道の分離
先程にも述べたモータリゼーションにより、来街者が通行車 両による危険に脅かされているため、いかに歩行者の身の安全 を守るかが課題となっている。この対策として、路上のイベント 区分や車止め防御棚(ガードレール)の設置、店舗や住居の移 動を伴う拡張工事や買い物公園化による車両通行の禁止といっ た多様な対策がある。一般に商店街近代化事業は道路法、土地区 画整理事業など公共投資の実施決定を受けて、それに従った形 で公共事業との整合性を維持しつつ実施されるのが通例となっ ている。
ⅲ)カラー舗装
歩道のカラー舗装化は楽しい買い物の場を演出するものであ り、その点でアーケードと同様に、街作りの基本コンセプトに添 った形で舗装材の材質、色調、デザインを選択する。舗装材を選 択する上での留意点は気候条件と地盤の強度、車両通行量とさ れている。例えば気候条件が寒冷地や巧拙の多い地域では路面 が滑りにくい材質を選ばなければならない。色調・デザインに おける留意点は策定されたCIのもとにイメージを調和させ、
それをモチーフに図柄をパターン化して表現することが重要な のである。
ⅳ)ストリートファニチャー
ストリートファニチャーとは、来街者の買い物環境の向上に寄 与
する施設として位置付けられている。街具とも称される。主に、
アーチ、トイレ、憩いの広場、案内板等があり、商店街を取り巻く
環境条件を勘案しながら、街作りの基本コンセプトのCIにそっ て設置を進めなければならない。すなわち、ただやみくもに設置 するのではなく道路の広さや来街者の通行量、周辺の施設などに 配慮する必要があるのだ。この 4 つの例にもみられるようにハー ド事業は都市計画に関するため行政の所轄になっているものが 多く、また資金面での高速もあるため、商店街の一存では実行で きないという欠点がある。
また、高齢化社会を迎え高齢者・身体障害者等のふれあい、交 流が重視されている現在「バリアフリー」というかつ動画重要視 されている。バリアフリーとはバリア(障壁)の除去であり、具 体的には歩道の段差解消、歩道と個店の出入り口フロアの段差解 消、音声誘導システムによる安全な横断歩道設置などを行う「人 にやさしい街づくり」を推進する活動である。この活動は「ハート ビル法(正式名称;高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特 定建築物の建築に関する法律)」の他、高齢化社会などの社会的 課題に対応すると共に地域の特性、文化に配慮して都市基盤とし ての整備を進めるために創設された施策である「商業パサージ ュ事業」などによって促進されているという。
3.<レジャー性>
商店街のレジャー性とは消費者が楽しんで買い物ができる空間を提供す ることだろう。その主なものとしては、イベントやアトラクションなどの 催し物や特典のついてくるスタンプ、ポイントカードなどがある。
イベント事業は、個々の店の売上の増進や集客のための商店街として絶 対に欠かせない共同事業である。イベントやアトラクションについては商 店街の規模の大きさにより異なっているようだ。
まず近隣型の商店街は規模が小さく予算に乏しいため、小額予算をカバ ーするような活気演出が必要になってくるだろう。そしてコミュニケーシ ョンの確保が主目的となる。イベントとしては、価格対策からの売出しであ る販売促進イベントなどが主体となりやすいようだ。イベントを行う際に、
店頭ポスター予告や販売時の掛け声のように事前に十分な周知を行って期 待感を持たせることが重要である。近隣型商店街では、子供と母親中心のフ ァミリー的なアトラクションを年に2〜3回程度開催することが重要であ る。予算の少ない部分は動きでカバーし、馴染み客にしたしまれ、楽しま れるような運営方法をとるようにするのである。
次に地域型商店街は規模が大きいので、参加意識の統一と合理的な予算 計画を立てて推進することが必要となる。イベントとしては四季の変わり
目にイメージアップを図り、価格対策の他にも飽きさせない演出のイベン トが必要である。他の地域からの流入を促進するため、広範囲に伝達するチ ラシや宣伝カーなどの媒体を利用することが重要である。それを長年にわ たって育成していく考えが必要である。地域型商店街のアトラクションと PR効果の高いものを選択する必要がある。
スタンプ事業は次の3つの理由から商店街の有力なソフト事業として期 待される。第一には、来街する消費者にとっては実質的な価格割引であり、
当然のことながら魅力があり、集客力は高まる。第2には、商店街としては、
それを「スタンプ倍出しセール」といった機会を設けて直接的に販売促進に 使うことができる。第三に、スタンプ事業によって商店街組織は活動のた めの資金を集めることができる。スタンプ事業は、商店街の大半の店がスタ ンプ加盟店でなければ消費者のスタンプを集める意欲は減退し、うまくい かないだろう。
最近では、スタンプは少なくなりポイントカードとして利用されるよう になってきている。カードはスタンプの手間を省き、手軽にもてるようにし たものでポイントも一目でわかるようになっている。
これらのイベント事業やスタンプ事業を積極的に行う商店街は、消費者 に活気付いて見え、魅力があるものであろう。
4.<コミュニティー性>
消費者のニーズが多様化、高質化し、物自体を欲するというより付加価値 を求める傾向が強まっている。一言にサービスといっても様々であるが、個 ここでは物や価格においての「おまけ」をさすのではなく目に見えない無形 の精神的ともいえるサービスを意味する。地域との密着の濃い近隣型・地域 型商店街において特にサービスやコミュニケーションの重要性が問われる のは当然のこととなるであろう。
商店街におけるサービスとして、取り組むべきとしてはまず営業時間の 統一が挙げられる。現段階での商店街では、開店時間、閉店時間共に統一が なされておらず、個々の店でバラバラに行われている。消費者は営業時間が 不確かであるために、どの店がいつ開いているのかがよく分からないので 安心して買い物に行くことができないことが多いという。また、統一がな されていないために関連購買が困難になり、集積としての特権を活かせな いでいる。このことも、顧客離れに拍車をかけているひとつの要因だという。
顧客が買い物を快適にできるようにするためには、商店街全体で統一した 営業時間を設定し実行していくことが重要だ。また、ライフスタイルの変 化により生じた夜型行動傾向の増加に加え、これから迎える高齢化社会か ら生じる朝方行動傾向にも対応し、営業時間の延長も検討するのもよいこ