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2007年度

上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

「チルド飲料におけるブランド下方拡張に ついて」

A0442110 居代 真澄

(2008年1月15日提出)

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目次

1 はじめに 1 ‐ 1 調査動機 1 ‐ 2 定義

1 ‐ 3 素朴な疑問

2 親ブランドがブランド拡張する理由 2 ‐ 1 なぜブランド拡張?

2 ‐ 2 検証

2 ‐ 2 ‐ 1 ブランド拡張によって広告効果を得られるのか 2 ‐ 2 ‐ 2 ブランド拡張によってターゲットを増やせるか

3 ブランドイメージについて

3 ‐ 1 ブランドイメージが下がるのはどういう時か 3 ‐ 2 ブランドイメージが下がったときどうなるか 3 ‐ 3 期待不一致モデル

4 仮説と検証 4 ‐ 1 仮説 4 ‐ 2 検証

4 ‐ 2 ‐ 1 ブランド下方拡張を成功させるには 4 ‐ 2 ‐ 2 望ましい類似点をつくることについて 4 ‐ 2 ‐ 3 望ましい相違点をつくること

4 ‐ 2 ‐ 4 下方拡張に対する肯定的イメージを構築すること

5 ブランドロイヤルティのさらなる考察

5 ‐ 1 Exit, Voice, and Loyalty から読み取れること 5 ‐ 2 考察

6 結論 7 まとめ

8 参考 -ブランドの関与するチルド商品についてのアンケート 9 参考文献・参考URL

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1 はじめに 1 ‐ 1 調査動機

消費者は商品を選択する基準として、ブランドを用いる。そして有名ブランドの商品は消費者に 安心感、高級感などを与え、その商品の価格や人気はたちまち上がる。しかし、単にブランドネ ームを持っていたとしても、品質やデザインがよくなければ売り上げは落ちる。また、ブランド には他の商品に差別化を図るような価格設定や雰囲気づくりも必要である。

しかし実際にコンビニエンスストアに足を運ぶと、近年話題のチルドカップコーナーにおいて、

有名カフェや有名店の名前が書いてある飲料が並ぶようになった。私はそれを見て、そういった 商品を出したブランド側のブランドイメージが下がってしまうのではないかと考え、なぜ強いブ ランド力を所有する企業がブランド拡張をするのか疑問を持ち、調査しようと考えた。

1 ‐ 2 定義

今回私がブランドイメージの低下を懸念した商品の特徴とは、

 商品にカフェやパティシエのブランドの名前が入っている。

 コンビニエンスストアやスーパーのオープンケース(扉のない冷蔵庫)に置かれている。

 チルドカップを採用している。

 価格が他商品と数十円の違いしかない

ブランド(コラボレーションしている場合はメーカー名) 商品名

STARBUCKS (SUNTORY) スターバックスディスカバリーズ

TULLY’S COFFEE (伊藤園) タリーズバリスタズスペシャル KIHACHI (ハウス食品) キハチ シェフズセレクト ドトールコーヒー ドトール炭焼アイスコーヒー 珈琲館 珈琲館 炭火焙煎ブレンドコーヒー サロン・ド・テ スリジェ(コカコーラ) パティシオーレ

京はやし(北海道乳業) 京はやしの抹茶

Etc…

そこで、今回調査する際の商品の定義を、上記の4つの条件を充たしている商品とした。

また、以下から、ブランドがカフェなどの店頭で販売している商品を「親ブランド」、ブランド がコンビニエンスストア(CVS)で販売している商品を「(下方)拡張ブランド」と記載する。

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1 ‐ 3 素朴な疑問

以上の点を踏まえ、素朴な疑問を

「チルド飲料のカテゴリに下方拡張したブランドのブランドイメージを下げないようにするには どうしたらよいのだろうか」

とした。

2 親ブランドがブランド拡張する理由 2 ‐ 1 なぜブランド拡張?

仮説を導く前に、親ブランドはなぜブランドを拡張するのか、親ブランドにどのようなメリット をもたらすのかを考えてみた。

理由1 広告効果を得るため、ブランドイメージが下がる可能性があってもブランド拡張する 価値がある。

理由2 ターゲットを増やすため、ブランドイメージが下がる可能性があってもブランド拡張 する価値がある。

とした。

2 ‐ 2 検証

まず、それぞれの理由を検証し、次章でブランドイメージについて調査し、仮説を導きたい。

2‐2‐1 ブランド拡張によって広告効果を得られるのか ケース:スターバックス 広告とは、企業の意思や理念が、提供する商品、サービスを認知、理解してもらうための市場・

消費者に対するコミュニケーション活動である。

今回のケースは、実際の商品が広告になるケースである。つまり、いつでもどこでも購入できる CVS において、親ブランドに行ったことのない未経験層に、ブランド拡張した商品を購入して もらうことによって、実際の店に行くきっかけを作る、橋渡し的な商品となるというものである。

米スターバックスコーヒーのハワード・シュルツ会長がブランド拡張商品を開発した理由につい て以下のように発言した。

「ここ数年間の調査で、日本の消費者がチルド飲料という分野でスターバックス の味を期待しており、チャンスがあると考えた。(チルドを含めた小売りでの)

市場規模は百億ドルに及ぶ。小売業で当社の商品を売ることで、店舗のない地域 に知名度が広がるし、ブランドイメージの向上という相乗効果もある」

この発言により、スターバックスではブランド拡張商品は広告効果を狙うことと、ブランド イメージの向上を狙うことが戦略であると考えられる。

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しかし、私は、チルド商品のこの戦 略に疑問を感じる。なぜなら、チル ド商品はどうしても店舗での商品と 比べると品質が落ちてしまうし、親 ブランドと違って、商品のバリエー ションが少ない。スターバックスの 人気の理由は、人気順に、コーヒー のおいしさ、店内の雰囲気、コーヒ ーメニューの豊富さであるという。

(図1)私はそういった「スターバ ックスらしさ」がない商品を広告と して使用することは、ブランドイメ ージの低下という逆効果が懸念され る。また、スターバックスというブ ランドネームはテレビや雑誌によっ てかなり多くの人に認知されている 状態であるため、広告を商品で

打つ必要性は感じられない。また、 図1親ブランド別、最も好きな理由の回答比較

都市部の人気から、店舗がない地域 (出典:ディムズドライブオープンデータ)

でものブランドに期待がある状況で、

チルド商品を購入した場合は、期待はずれという結果になる恐れがある。では、新店舗を出店し た場合は、どうだろうか。新店舗を出店すればクオリティーを維持したままなので、ブランドイ メージは衰えない。初日売り上げが300万円を超え、記録更新をした長野駅前店、大雨の中3 0人が行列を作った徳島店など、スターバックスは地方でも認知されていて、新店舗を出しても 成功するケースが多い。スターンバックスの成功した理由のひとつに、カニバリゼーションをあ えて避けなかったということが挙げられる。消費者にすぐにスターバックスに来店してもらえる 環境をつくるため、たとえ近距離でも新規出店を恐れなかったし、それで失敗するケースも少な い。よって、理由1は、チルド商品による広告効果を狙うより、むしろ新規出店をしたほうがメ リットは高いのではないかと考えた。

2‐2‐2 ブランド拡張によってターゲットを増やせるか

チルド飲料全般の主なターゲットも20~30代女性であるという。その理由とは、

① ストローで飲むため容器を口紅などで汚さずに済む。

② 都会的でおしゃれなイメージがある。

③ 缶特有のにおいがしない。

からであるという。

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また、私は親ブランドがブランド 拡張したチルド商品についての アンケートを先日行った。その結 果、チルド商品を買ったことがあ ると答えた人は100パーセント であった。それに対して50代の 女性になると15パーセントま で落ち込んだ。そして、チルド商 品の購入場所を調べてみると、

100パーセントがCVSで購入し

たということだった。 図2 出典 マイボイスコム(株)

(アンケートの詳細はP14に記載)

また、ブランド拡張商品であるかは定かではないが、

チルドコーヒーが飲まれるシーンは1位ドライブ中 2位仕事・家事・勉強の間 3位おやつの 時となっている(詳細は図2)1位のドライブ中というのは親ブランドにまだドライブスルーが 少ないことが理由ではないかと思われる。また、スターバックスディスカバリーズは20代~3 0代女性が支持層で、ドライブ時に最も売れるためか土曜が最も売り上げが多いという。

よって、今回は、20代~30代女性のCVSをよく利用する人がターゲットと判断し、①20 代~30代女性の購買行動の特徴 ②20代~30代のCVSでの購買行動について調べ、飲ま れるシーンと購買行動がリンクするかを調べた。

① 20代~30代半ばの女性の購買行動の特徴

女性の購買行動は男性とは異なる場合が多いと注目されている。F1(20歳から34歳ま での女性)有職者層という言葉もある。最近ではWebマーケティングが多くなり、Webで はターゲットを明確化すべきでないという理由から近年では用いられることが少なくはな ってきたが、ターゲットを明確に調査すべき時にはいまだに使われる指標である。

彼女達の購買行動で特徴的なことを挙げると、

 見た目重視

 虚栄心がある

 ブランド志向

 自分のライフスタイルにマッチした物であれば高い金額も惜しまない

といったことである。この20代~30代半ばの女性の購買行動の特徴が、CVS の購買と どう関係してくるのか、調べてみた。

② 20代~30代半ばの女性のCVSでの購買行動について

F1層有職者を対象に行った、CVS での購買についてのアンケートを見てみよう。次ペー 6

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ジの図3は、平日における、CVS利用頻度に応じたF1世代の夕食摂取状況と収入、可処分 所得の状況である。また、図4は、F1 層が商品を購入する時、衝動買いしやすいか、新商 品を買いやすいか、価格よりデザインを重視するかというアンケートである。

図3

平日のCVS 利用頻度

N 夕食を毎日 欠かさず摂る人

週3日以上仕事中 個人年収 可処分所得 に間食する人

平日ほぼ毎日 330 74.5% 66.1% 313万円 65600円 週1~3日 577 75.4% 51.1% 276万円 50100円 月に3日以下 173 89.6% 44.5% 255万円 45500円

M1F1総研

特徴1 CVS利用頻度が高く、夕食もCVSで済ませることが多い。

特徴2 CVS利用頻度が高くなるほど、高年収で可処分所得が多い。

 つまり、可処分所得が高い人ほど、CVSで高額な買い物をしている可能性が ある。彼女達は夕食時など、親ブランドの店舗が閉まっている時間に、飲料として、少し高 額なチルドコーヒーを購入することができる環境にあるのではないだろうか。

図4

M1F1総研

特徴1 全体的に、「同じような品物を比較するとき、価格が多少高くても、機能性やデザイン のよさを重視する」という人の割合が高いが、とくにCVS利用頻度が高い人の方が 高い割合となっている。

特徴2 CVS利用頻度が高いゆえ、新商品の情報が早く、とりあえず買ってみるケースも多い。

特徴3 衝動買いをする割合も高く、夕食を買いに行くという短い時間の中で、即決して購入し ていることがわかる。

7

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 つまり、F1層は、多少高くても新商品の情報や衝動買い、デザインによって購入に至 る傾向があるということが分かった。

20代~30代半ばの女性の購買行動の特徴と、この図3,4から言えることは、F1層は、ド ライブ時や職場での間食時などの人から見られている状況であると、虚栄心やブランド志向が働 き、デザインやブランドなどを意識する。よって少し他の商品より値段が高くても、あまり気に しない傾向にあり、ブランド側にとってターゲットになりうるのではないかと考えた。親ブラン ドがブランド拡張する理由は、新たなターゲットを増やせるからであると判断した。

しかし、彼女達はまた、特定のブランドが欲しいわけではなく、CVS で「少しリッチな」買い 物をしようと思っているだけの人が多いので、新商品などにすぐ流れてしまい、ロイヤルティー をもった顧客ではない。ロイヤルティーをいかに持たせるかが鍵になるであろう。

3 ブランドイメージについて

親ブランドはなぜブランドを拡張するのかを検証した結果、2.ターゲットを増やすため、ブラ ンドイメージが下がる可能性があってもブランド拡張する価値がある という理由が正しいと 判断した。しかし、本当にターゲットを増やすことによってブランドイメージの低下はおこるの だろうか。また、ブランドイメージの低下があった場合、どの程度の影響があるのかどうか、そ れぞれ調べてみた。

3 ‐ 1 ブランドイメージが下がるのはどういう時か

ブランドとは、’’ある売り手あるいは売り手の集団の製品及びサービスを識別し、競合他社の製 品及びサービスと差別化することを意図した言葉、サイン、シンボル、デザイン、あるいは組み 合わせ‘‘(American Marketing Association)である。

また、消費者にとってブランドとは、リスクを削減するツールである。(リスク:機能的リスク、

身体的リスク、金銭的リスク、社会的リスク、心理的リスク、時間的リスク)

よって消費者は、ブランドを信用して選んだにもかかわらず、リスクが発生した場合に、ブラン ドへの評価が下がる。

そして次に、ブランドを下方拡張させることによって起こるデメリットについて考えると、

 消費者の混乱や失望を招く可能性

 小売業者の反発を受ける可能性

 失敗により親ブランドのイメージを損なう可能性

 成功しても親ブランドとのカニバリゼーションを起こす可能性

 成功しても特定カテゴリとの一体感を弱める可能性

 ブランドの意味を希薄にする可能性

 新ブランドの開発機会を逃す可能性 などが挙げられる。

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3 ‐ 2 ブランドイメージが下がったときどうなるか(例)

企業の商品の品質が顧客に評価されなかった場合、また、商品の品質低下をうけ、顧客に離脱さ れた場合のケースをみてみる。

① 一人の不満足は66人に伝播する。

満足した消費者は7人にそのことを話すが、不満足な客はそれを11人に話し、11人がさ らに5人に話すといわれている。この計算は、1人の不満足が66人に伝播する。また、近 年では、それがインターネットのブログや口コミサイトにおけるネガティブ口コミなどにも 書かれることがある。

② 信用をなくすことの恐ろしさ

ブランドロイヤルティをもった消費者は、ブランド関与、商品関与ともに深く、また、口コ ミで他の消費者も連れてくる有能なセールスマンである。しかし、このような客は品質に妥 協したり、特性を変えたりすることを極端に嫌う。ニューコークがその例で、わずかなマー ケットシェアの低下を危惧して99年間守り続けたレシピを変え、ペプシコーラと同じよう な味にした。消費者は反撥し、マーケットは一時期混乱した。

この例から、たとえ一人の消費者の不満でも、その人の発言力は計り知れないほどあるので、侮 ることはできない。また、長年積み重ねてきたブランドロイヤルティも、顧客の忠誠心が尽きた 時点ですぐに崩壊してしまうということがわかる。

3 ‐ 3 期待不一致モデル

ブランドを下方拡張させることによって起こるデメリットや、ブランドイメージが下がった時実 際の影響はどのようなものかを見てきたが、ここでは消費者の購入した商品の評価方法について 挙げる。製品やブランドに対する感情は、 実質値-期待値 で決定される。(期待不一致モデ ル)結果が-(マイナス)の時は負の不一致、±0の時は一致、+の時は正の不一致である。よ って、期待値が低いほうが正の不一致を起こしやすい。

ブランド拡張したブランドのブランド評価はどうだろうか。ブランド拡張をしているブランドの ブランドイメージは高いので、当然期待も大きい。よって、実質値が高くないと負の不一致にな る可能性が高い。つまり、ブランド拡張はブランドイメージの低下をおこしやすい。

4 仮説と検証

それでは、どのようにしたら、ブランド拡張したブランドのブランドイメージの低下起きないの か、仮説を立てて、検証してみた。

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4 ‐ 1 仮説

いままでの調査を踏まえ、チルド飲料に参入したブランドのブランドイメージの低下が落ちない ようにするためには企業はどうしたらいいかという素朴な疑問に、

 価格設定をブランドイメージに合ったものにする。

 カテゴリを区別する(親ブランドと拡張ブランド)

 Loyaltyな顧客を多くする。

とした。

4 ‐ 2 検証

4‐2‐1 ブランド下方拡張を成功させるには

一般的に、ブランドイメージの低下を下げずにブランド下方拡張を成功させるためには、

 望ましい類似点をつくる

 望ましい相違点をつくる

 拡張に対する肯定的イメージを構築する が必要であるとされている。

それでは、チルド飲料においては具体的にどうすれば上記のポイントを充たせるのだろうか。

4‐2‐2 望ましい類似点をつくることについて

望ましい類似点を作ることは、このケースでは、親ブランドと拡張ブランドイメージを 同じにすることであると思う。しかし、店の雰囲気やメニューの豊富さ、味の品質も CVSでは親ブランドのように演出できない。CVSで親ブランド側ができることは、デ ザインと価格設定のみである。タリーズバリスタズスペシャルは、何度もチルドカップのデ ザインチェンジを行い、現在は店内でくつろいでいる時のようなホットコーヒーの写真がデザイ ンになっている。(しかし、コールドの商品なのにホットの写真は違和感があるという意見が多 い)スターバックスも、商品名に都市の名前を使用し、その都市をデザインしていて、評価が高 い。しかし、チルドカップの形はほぼ決まっているので、そこまで大胆なデザインの変化をつけ にくいというのが難点である。

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一方価格設定はどうだろうか。ブランド商品の場合、多くの場 合が「名声型価格設定」を行っている。名声型とは、消費者が 商品に対してこだわる傾向が強いが性能や品質的には大差ない 場合に、その価格設定によって商品ランクを決定させることで ある。つまり消費者側が「価格が高いから良い商品である」と 勝手に思い込んでしまう心理を利用した戦略だ。スターバック

スは210円、タリーズコーヒーも160~198円という、他商品より50円近く高価格に設 定している。これは、チルドコーヒーのカテゴリにおいても親ブランドでのブランドイメージの 低下を反映させた価格となり、ブランドイメージの低下が起こらない可能性がある。また、消費 者から、コーヒーショップとしての市場と、コーヒー飲料としての市場の2つにおいてブランド を下方拡張させたことによるブランドイメージの上昇も見込める可能性もある。

つまり、価格設定をブランドイメージに合ったものにすることは、ブランドイメージを維持する ために必要であり、コーヒーショップ市場、飲料市場双方にブランド力が及ぶことによる相乗効 果も考えられることが分かった。

4‐2‐3 望ましい相違点をつくること

相違点を作ることは、カニバリゼーションを起こさせないためにも重要である。Kevin Lane KellerとDavid A. Aakerの研究、Jean B. Romeoの研究、Barbara Loken とDeborah Roedder Johnの研究はブランドの下方拡張はブランドイメージが変化するケースがあることを見出した。

下記に変化の成功例と失敗例を述べた。

成功例1 ポテトチップスのブランドがクッキーやアイスクリームに拡張され、しかもその味や 品質は評判が悪いと説明された場合でさえ、本来のブランドの近く品質は影響を受け なかった。

成功例2 フルーツジュースのブランドがシャーベットに拡張された場合、シャーベットが『コ ンシューマーレポート』誌での評価が悪くても、フルーツジュースのブランドの品質 を傷つけなかった。

失敗例 シャンプーのブランドがティッシュへ拡張した時、シャンプーの「優しい」という連 想が、ティッシュへは影響したが、逆にシャンプーに対し、「優しい」という連想が弱 められた。

これらの失敗例と成功例の違いは、ブランド側が行っているブランド拡張は大して変わらないの に、顧客のブランドのアイデンティティーを2つの製品クラスに分けられたか分けられなかった かで結果が大きく違った例である。

チルド飲料においては製品を2つのクラスに分けることは極めて

難しい。コーヒーショップとコーヒー飲料というのは、一見する

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と「コーヒー」という同じコモディティーに過ぎない。しかし、

同じものとみなされると、どうしてもコーヒーショップ内の

コーヒーとCVSのコーヒーでは味、雰囲気において優劣がつき、CVSの商品は期待はずれの 結果となる。

これを防ぐには、ブランド同じコモディティーであっても、はっきりとカテゴリを分けることが 必要である。しかし、現状としてはまだ分け方が不十分である。

4‐2‐4 下方拡張に対する肯定的イメージを構築すること

消費者に下方拡張に対する肯定的イメージを構築させ、親ブランドに対する連想が消費者の中で 他の競合製品と比べて突出すること最もよい方法は、親ブランドにブランドロイヤルティを持た せることであると思う。ブランドロイヤルティを持たせるにはどうすればいいか考えると、他ブ ランドと品質の違い、サービスの違い、価格設定をもたせ、スイッチングコストを創り出すこと である。

ある商品に満足している消費者の65~85パーセントは、満足しているにもかかわらず別の商 品を試すという統計が出ている。代替商品がたくさんあるので、ロイヤルティーを持たないので ある。仮に拡張ブランドの期待値が高く、負の不一致を起こした場合、消費者はすぐ代替品を選 択してしまう。よって、リピーターを増やす場合は、代替品が多数あるチルド商品よりも、ある 程度成功している親ブランドにロイヤルティーを持った人を多く作ればよいのではないかと考 える。

5 ブランドロイヤルティのさらなる考察

ここまで調査をして、いくつかの疑問が出た。

① ブランドロイヤルティがない人はリピート買いをせず、ブランドロイヤルティがある人は変 化に敏感だとすると、ブランド側はどうすべきなのか。

② 拡張ブランドにブランドイメージに合うような価格をつけても、期待不一致モデルで考える と逆に期待感が出て、マイナスが出る可能性が高くなる。それは妥当なことなのか。

この事項について、Albert O. Hirschman (1970)のExit, Voice, and Loyaltyの観点から考 察してみたい。

5 ‐ 1 Exit, Voice, and Loyalty から読み取れること

ブランドに対してloyaltyを持つ人とは、たとえ代替品が多数存在する状態であっても、そのブ ランドを利用し続ける顧客である。ブランド側の品質低下があった場合、loyaltyがない顧客は

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代替品を選んでいる状態であるのに対し、loyaltyがある顧客はそのブランドを利用し続ける。

(親ブランド・拡張ブランド共に)しかしその顧客には認知的不協和が働いている状態となる。

認知的不協和とは、人がある認知(知識、経験、行動など)と矛盾した認知に遭遇した時に感じ る不協和(不快感)を解決しようとする心理状態である。つまり、今回のケースの場合、拡張ブ ランドの製品の品質がよくないと思っても、顧客はブランドに対しての思い入れがあるので、そ れを品質の低下だと認めないで、購入し続けるということになる。

ハーシュマンはまた、品質の低下のレベルに応じた、loyalty がない顧客と loyalty のある顧客 の発言と離脱の行動を述べて

いる。

ブランドの品質が低下すると、

負の不一致の度合いに比例し て、loyalty のある顧客からの 不満・改善の発言が強くなる。

そしてXAL点においてloyalty のない顧客は離脱をする。しか し、ここでloyaltyのある顧客は 離脱しないので、彼らは離脱の 総数が上がるのを止める働き をもつ。そしてTX地点におい て、発言の効果を高めるために、

離脱するという脅しをかける。

脅しはその後発生する発言量を非連続的に増大させるので Albert O.

Hirschman 『Exit, Voice, and Loyalty』

グラフ上でTX点からの発言 XAL = loyaltyがない顧客の離脱点 は垂直に伸びている。そしてよ T X = loyaltyがある顧客の不満足による うやく彼らに忠誠心がなくなり 発言が脅す状態になった点

離脱にいたる。 XWL = loyaltyがある顧客の離脱点

5‐2 考察

私はこのことから、

① loyaltyのある人を多く確保しておくことで、XAL地点以前の横軸を短く、XAL地点以降の

横軸が長くなり、リピーターを増やすことができる。

② loyalty な顧客は、発言はするものの、離脱をするのは XWL 地点である。よって、ブラン

ド側は、脅しを含む発言を無視すれば、XWL地点の直前まで品質低下があったとしてもリ ピーターはつくのではないかと考えた。Loyaltyにも程度があるので、一概にXWL地点直

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と考えた。

つまり、ブランドロイヤルティをつけさせれば、少し品質を落としても、認知的不協和が働く状 態で、顧客のロイヤルティーを維持できるのである。

6 結論

「チルド飲料のカテゴリに下方拡張したブランドのブランドイメージを下げないようにするに はどうしたらよいのだろうか」という素朴な疑問に対し、私は、以下の結論を出した。

初めに親ブランドでブランドロイヤルティを持った顧客を多くつくる。その後、拡張ブランドに おいて、ブランドイメージを損なわない価格設定を打ち出し、また、ターゲットを明確にするこ とにより、カニバリゼーションを防ぐ。

7 まとめ

今回は、チルド飲料という、最近コンビニエンスストアのコーナーが増設されたばかりの商品を テーマとして扱ったので、これからの予測がつきにくく、また統計データもあまり出ていないた め、一般論から推測するしか方法のないテーマであった。

普段カフェにあまり行かず、チルド飲料もあまり飲まない私のような人間もいるので、ブランド のターゲットもすべてが正しいとは限らない。

しかし、これからも激しいマーケットシェア争いが見込まれるチルド飲料市場の、売れる商品と 売れない商品、また、ブランドイメージが傷つく商品とそうでない商品を見分けられるようなル ールを調べることができたのではないかと思っている。

ブランドは実に多くの種類があり、ブランドを拡張する時も、サブブランドを作るか、親ブラン ドのままでいくかなど、さまざまな方法がある。近年は、品質がよくて価格も安くても、デザイ ンや店舗の雰囲気で他店に負けてしまったりする店舗も多く見られる。そういった時に、ブラン ド拡張をしていればリスクを減らせることから、ブランド拡張は必要不可欠である。

今回はチルド飲料においてのブランド拡張を調べたが、他のカテゴリにおけるブランド拡張など も今後注目していきたいと思う。

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8 参考 -ブランドの関与するチルド商品についてのアンケート

実施日:12月23日~1月5日 総数 :36人

対象 :20代前半~50代後半の女性 年齢構成:20代(ほぼ後半)27人

30 代 2人 40代 2人 50代 7人

以下の調査は、ブランドに対する消費者の購買意識を調査するものです。研究以外に使用することは決してあり ません。お忙しい中申し訳ございませんが、何卒お願いいたします。 上智大学 居代 真澄

参考:有名カフェ・有名料理店が監修する商品とは…(例)

スターバックスディスカバリーズ タリーズバリスタズスペシャル

キハチ シェフズセレクト ファミリーマート × DeNA 「有名 パティシエたちが監修したスイーツ」

Q1あなたは有名カフェ・有名料理店が監修する商品を購入したことがありますか?

YES ・ NO (YES の方は Q2 以降、 NO の方は Q7をお答えください)

Q2 その商品をどこで購入しましたか?

1. コンビニエンスストア 2. スーパーマーケット 3. 百貨店 4. その他( )

Q3 具体的に、何という商品を購入したことがありますか?覚えていらっしゃいましたら お願いします。 (いくつでも)

( ) Q4 どれくらいの購入頻度ですか?

1.1週間に 2~3 回程 2. 1 週間に 1 回程 3. 2~3 週間に 1 回程 4. 1 ヶ月に 1 回程度 5.それ以下

15

(16)

Q5 なぜその商品を購入しようと思ったのですか?(いくつでも)

1.味 2. パッケージのデザイン 3. 価格 4.ブランド 5.コーヒーのタイプ 6.評判が良い 7.新製品だから 8. 広告 9. いつも飲んでいるから 10.その他( )

Q6 その商品を再び購入しようと思ったことがありますか?また YES の人はなぜですか?(いくつでも)

YES ・ NO

理由 1.味がよかった 2.そのブランドが好きだから 3.値段が妥当だから 4.その他( )

Q7 (Q1 で NO と答えた方のみ)なぜこの様な商品を購入したことがないのですか?(いくつでも)

1.存在を知らなかった 2.味がよくなさそう 3.お店に行った方がおいしいに決まっている 4.値段が高いから 5.その他( )

Q8 ★性別 [ 男性 ・ 女性 ] ★年齢 ( )代

質問は以上です。ご協力大変ありがとうございました。

結果

Q1あなたは有名カフェ・有名料理店が監修する商品を購入したことがありますか?

年齢 YES (%) NO (%)

20代 100 0

30代 100 0

40代 50 50

50代 15 85

Q2 その商品をどこで購入しましたか?(複数)

年齢 CVS(人) スーパー(人) 百貨店(人)

20代 26 3 1

30代 2

40代 1 2

50代 1 1

16

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Q3 具体的に、何という商品を購入したことがありますか?覚えていらっしゃいましたら お願いします。 (いくつでも)

年齢 1位 2位 3位

20代 スターバックス タリーズ ドトール、キハチ 30代 スターバックス タリーズ

40代 スターバックス タリーズ 栗原はるみシリーズ 50代 スターバックス

(同率1位) タリーズ

栗原はるみシリーズ

Q4 どれくらいの購入頻度ですか?

1.1週間に 2~3 回程 2. 1 週間に 1 回程 3. 2~3 週間に 1 回程 4. 1 ヶ月に 1 回程度 5.それ以下 年齢 1週間に2~3 1週間に1回 2~3週間に1 1ヶ月に1回 それ以下

20代 1 2 4 9 10

30代 2

40代 1

50代 1 1

Q5 なぜその商品を購入しようと思ったのですか?(いくつでも)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

20代 30代 40代 50代

特徴:味を答える人と、デザイン・ブランド・新製品を答える人たちで二極化した。

Q6 その商品を再び購入しようと思ったことがありますか?また YES の人はなぜですか?(いくつでも)

17

(18)

年齢 YES NO

20代 20 7

30代 1 1

40代 1

50代 2

YES の人はなぜですか?(いくつでも)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

味 ブランド 価格 その他

20代 30代 40代 50代

Q7 (Q1 で NO と答えた方のみ)なぜこの様な商品を購入したことがないのですか?(いくつでも)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

40代 50代

18

(19)

19

9 参考文献・参考URL

参考文献

Albert O. Hirschman 『Exit, Voice, and Loyalty』1970

櫻井秀勲、川北義則 『女が買うモノ買わないモノ』主婦と生活社2001 平久保仲人『消費者行動論』ダイヤモンド社 2005

デービット・A・アーカー 『ブランド優位の戦略』ダイヤモンド社 1997 マイケルJ.シルバースタイン、ニール・フィスク、ジョン・ブットマン

『なぜ高くても買ってしまうのか』ダイヤモンド社 2004 2005/09/28, 日経MJ新聞

参考URL

http://www.starbucks.co.jp/(スターバックス)

http://www.tullys.co.jp(タリーズコーヒー)

http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20060403gr01.htm(読売オンライン)

http://trendy.nikkeibp.co.jp/news/life07q2/530112/(日経BP社)

http://www.sankei.co.jp/enak/2006/nov/kiji/05lifecoffee.html(産経新聞)

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http://www.fgn.jp/mpac/sample/__datas__/impacter/200702_05.html(マイボスコム)

http://www.m1f1.jp/m1f1/files/topic_071031.pdf(M1F1総研)

http://www.toyobeverage.co.jp/product/index.html(トーヨービバレッジ)

http://www.dims.ne.jp/timelyresearch/enq/060613_01/(ネットリサーチDIMSDRIVE)

http://ameblo.jp/brandlegalmanagement/theme-10004460039.html(米国法制度研究)

参照

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