• 検索結果がありません。

社会科授業改造の視点 (II) : 理論・解釈と授業の関係を検討して

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会科授業改造の視点 (II) : 理論・解釈と授業の関係を検討して"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

――理論・ 解釈 と授業の関係 を検討 して一―

社会科教育教室 /」

は じBウに 教師 は皆

,社

会科 の授業 を通 して子 どもたちに社会や人間 に関する見方

,考

え方 を教授 し

,学

習 させている。 しか も

,そ

こで目ざされ る見方

,考

え方にはさまざまな ものが あ り

,一

教科で は到底 実現で きないレベルの ものす ら存在 しているのが現実である。 そこで

,社

会科 の授業 を社会科学教育 (本稿では「社会科学教育」 とは「概念探求 としての社会 科」を意味する。)と して成立 させ るためには

,社

会科学的な見方

,考

え方 を用意 しなけれ ばな らな い し

,そ

れ を社会科学的な方法や態度 に もとづいて習得 させ るように構成 しなければな らない。 筆者 はこれ まで

,

このような求 められる社会科授業の具体像 を探求 して

,二

通 りのアプローチを 試みて きた。一つは,「手段 的な立場か らの授業研究」の方法に もとづ くものであ る。 いま一 つは, 「 目的的な立場か らの授業研究」の方法 にもとづ くものであるき1 本稿 は

,後

者の方法 にもとづ きなが ら

,従

来の改造視点 を発展 させ るものである。 すなわち

,社

会科学研究 において明 らかにされ る社会や人間に関する諸理論・ 解釈 (以下

,理

論・解釈 と略す。) を社会科授業の側 か らどの ように吸収 し

,再

構成 し直す ことが 日常的な社会科授業 を所期 の目的に 合致 したものへ と改造することになるのか という

,理

論・ 解釈 と授業の関係 を中心 に論及 す るもの である∵そのための手法 として

,本

稿 ではまず

,同

一の教材 を扱 った二つの実践 を取 り上 げ,それぞ れの実践 における理論・解釈・3との関係 を分析

,比

較 し

,次

にそ こか ら得 られ る視点 を一般化 させて 結論づけることにする。 実践Iは

,理

論・解釈の吸収

,再

構成の進展度において途次 と思われるものをす実践IIは

,か

な り完成度が高 いと思われるものを選択 した。 なお

,本

稿では実践者

,研

究者への敬称 は省略 させていただいた。

実践

I「

人 び との くら しと店 の はた らき」分析

1.実

践 の概容 実践Iとは

,1982年

10月 26日

,鳥

取県八頭郡八東町八東町立八東小学校 を会場 にして開催 された 「昭和57年度八頭郡小学校教育研究大会」における第

3学

年公開授業「買い物 しらべ とまとめ」(八 束小教諭松本道子指導

)を

含 む計12時間の授業 と社会見学学習の総称である。 まず

,実

践 Iに 至 る背景 としての八東小教師集団による教育研究および社会科教育研 究 を検 討 し 樹 直 山

(2)

小 山直樹:社会科授業改造 の視点 (H) てお こう。 鳥取県小教研八頭郡部会誌 『八頭の教育第

17-1集

・ 新教育課程 の実践Ш1982』 と

,鳥

取県小学 校社会科教育研究会誌 『社会科研究第29号1983』 によれ ば

,八

東小 における社会科教育研究 テーマ は「学び とる力 を育てる指導法――社 会科 における基礎的基本的事項 を通 して一―」となっている。 このよ うにテーマを設定 した理由は

,子

どもたちの学習実態 についての次のような把握 と願 いが あったか らである。それ は

,考

えることを嫌 う消極的な学習態度 であ り

,そ

れ を改善 し,「学習を楽 しく感 じ

,ま

た学習への勇気 を獲得 してい く子 どもであってほ しい」 という願 いである。 そして

,こ

の願いを具体化 させたテーマ として,「学びて間 う子 どもづ くり」とい う教育研究 テー マが登場 して くる。 「私 たちが期待 している子 どもの学習像 は『問われて答 える子 どもでな く』『学びて問 う子 どもづ くり』 を目ざしている」 と述べている児童観

,教

授・ 学習観が それである。 この教授・ 学習観 は, 近年 よ く耳 にする「子 どもの立場 を尊重する授業」論*4と近似 した表現であるため誤解 されやすいが, 教授すること(「学びて」

)を

通 して自ら問いかけてい くことので きる子 どもを育 てる とい う意味で あ り

,決

して

,教

授活動 という教師の指導性 を放棄 するす ることで自立 (律

)的

な子 どもが育 つ と 考 えている訳で はないどS この ような「学びて間 う子 どもづ くり」をめざす教育研究 は,「自ら考 え正 しく判 断で きる力 を も つ児童生徒 の育成」 を目ざした教育課程審議会答申の趣 旨にも沿 う研究であ り

,社

会科 の立場 か ら 把握 し直せば,「社会的半J断力 を育 てる」 ことに研究 を焦点化することになる

,

と言 う。 そして,「子 どもたちの社会的判断力 を育てるには

,子

どもにいろいろな『行動』『体験』『経験』 『労作』 という活動 を行わせ

,そ

の中で適切な観察力

,表

現力

,分

析力 をはじめ総合力 を育 てるこ とによって達成 できるのではないだろうか」

,と

述べてい る。 ここに

,八

東小教師集団による社会科教育研究が

,社

会科 における社会的半」断力の育成 を

,

とり わ け

,社

会科 における事実的半」断力の育成 を軸 として進 め られてい ることが確認 で きるのである。 角度 を変 えて

,社

会科教育研究か ら他教科お よび教科外の教育研究へ という方向で表現す るな ら ば

,子

どもたちが 自らの五官 (感

)を

働かせて社会や人間 とは何か

,な

ぜそのようにあ るのか を探 求す る活動 を導入 し

,事

実的半J断力 を育 てる ことが

,学

び とる力 を育 てることになるし

,そ

の先 に 子 どもたちのよ り意欲的かつ自主的な学習が期待で きるとい う見通 しがあるのであ り

,そ

の起点 と して社会科教育研究が位置づけられているのである。

2.実

践Iの構成

実践

Iの

単元名は

,「

人びとの くらしと店のはたらき」

(計12時

)で

ある。単元目標は

,①

「校

区内の店で買い物をする人々のようすを調べたり

,買

い物調べを基に自分たちの消費生活が商店 と

深いつなが りによって支えられていることを理解させる」

,②

「商店は

,交

通条件などにより

,そ

規模や店の特色

,利

用する範囲や数などに

,違

いがあることを理解させる」というものである。

時間配当は

,小

単元④「校区で店の多いところ」(7時 間

)一

―「生活センターの見学」 4時 間

,

「買い物調べ」3時 間――

,小

単乃

9「

店 どうしの協力 と工夫」(4時 間)一―「商工会の仕事」

2

時間

,「

町内の商店調べ」 2時 間一―

,小

単元⑥「土曜夜市」(1時間)と なっている。また

,鳥

駅前 。若桜街道商店街見学が半日程度配当されている。

3.実

践Iの分 析

(3)

本稿の目的に最も合致 し

,か

,学

習指導計画や授業事実に関する資料がそなわっている小単元

④を中心に分析してみよう。

小単元④の小単元観は次の通 りである。

「 ●わた したちの毎 日の暮 らしにはいろいろな品物が必要であ ること

,そ

の品物 の多 くは近 くの 商店 か ら入手 して いること, この2つの事実か ら商店 は地域の暮 らしとどのようなつなが りがある かを調べ させ ようとするものである。 また

,近

くの店 だけでな く金額 の高 い品物 や趣 向品などは遠 くの店で (専門店

)買

っているな ど

,消

費生活 を通 して他地域 と深 く結 びついていることを理解 さ せるものである。 ●校 区内には

,才

代 に生活セ ンターの他 に10軒の店があ り

,必

要な食品や 日用品 はほとんどこの店 で買 っている。子 どもたちの買い物 といって も

,時

どきおや つ とか学用品 を買 う 程度である。 また休 日な どに鳥取で買い物 をしている子 どももか な りいるが

,そ

の経験 については 意図的

,計

画的な ものでな く両親 についてば くぜん と買い物 を している。校 区内の商工会の はた ら きにいたっては

,な

にが

,ど

の ように客集めに役立 っているのか

,ほ

とん ど知 らない現状である。 指導 にあたっては

,一

番身近 な素材の買い物調べや家族 の声

,新

聞に入 っている折 りこみ広告な ど 手がか りにして

,次

時『社会見学』で意図的に観察する必要があ ることを意識づけ

,商

店街のはた らきや 自分たち とのつなが りに着 目させ学習意欲 を高めてい くように したい。」(○印筆者) この記述中

,O印

部分 に松本の教材解釈が示 されている。筆者 な りに要約 するな らば,「た まに し か買わない専門品

,趣

向品 は専門店 で

,日

常生活必需品は近 くの店で買 う」とい う

,

商店 (街

)の

機能 と人々 の消費生活の関係 を説明す る理論・解釈 を背景 とす る教材解釈 となろう。 この ような理論・解釈 を校 区内の店や鳥取駅前・浩桜 街道商店街 に適用 し

,そ

の妥当性 を明 らか にしているのが小単元観後半部分の記述である。 理論・解釈の妥 当性が確認 され る と

,次

の段階 として

,自

己のつかんだ理論・ 解釈 をタイプの異 なる商店 (街

)を

事例 として子 どもたちに探求 させ

,発

見 させてい こうとす る指導の方向性が次第 に明確 になって くる。 それ は

,通

,小

単元 目標

,本

時 目標

,教

授 。学習過程 を決定 す る中で具体化 されてい く。 松本の場合 はどうであろうか。以下

,公

開授業 を中心 に検討 してみ よう。 小単元 目標 は,(1「近 くの店 は地域の人び との日常生活 に密着 し,そ れを支 えていることを理解 さ せるJ,(2)「人び とは買 い物 の目的に応 じて遠 くの商店 を利用す ることに気づかせ る」

(O印

筆者)と いうものである。 ○印部分の記述 は

,先

の小単元観 の記述 と比較す ると

,具

体化 された とい うよ りもむ しろ抽象化 された表現である。「 日常生活に密着 し

,そ

れ を支えてい ること」や,「買い物 の目的 に応 じて遠 く の商店 を利用す ること」のより具体 的説明が「おやつJ「学用品」「趣 向品」「日用品」等の概念

,用

語 による説明 になるのであ り,「社会科 における知識の構造j6から判断すれば

,抽

象度 において逆転 した配置 となっているのである。 同様 の ことが小単元 目標 と本時 目標 の関係 について も言 える。 本時 目標 は,「買い物調べのグラフか ら

,校

区の人たちの生活 は

,校

区の店だけでは成 り立 ってい ない事 に気づ き校 区の店 と商店街 との違いを とらえることがで きる」 (O印 筆者

)と

なっている。 本時 目標の前半部分 はともか くとして も

,○

印部分の記述 は明 らか に方向 目標 的な表現であ り, 何 をどうとらえ

,ど

の ように説明す ることが「校 区の店 と商店街 との違い」がわかった ことになる のか不明である。 もちろん

,O印

部分の記述が先述の内容要約で示 した商店 (街

)利

用 に関す る規 則性 を

,さ

らには規則性 を構成する諸概念や

,諸

概念 を支 える具体的事実 を意味 し

,そ

れ らに読 み

(4)

小山直樹 :社 会科授業改造の視点 (II) 替 え られ てい くの で あ ろ う と期 待 した い と ころで はあ るが。

下位目標はどうであろうか。下位目標

(八

東小では形成的評価の研究も進めている。

)は

,「

①グ

ラフを見て近 くの店

,遠

くの店に買い物をしていることがわかる。②遠くの店に買い物などに行く

わけが言える。」となっている。

下位 目標 は

, 1時

間内でのチェック・ ポイ ン トであるか ら

,簡

略的な表現で示 され るのが通例で あるが

,知

識 。理解面 にかかわ る評価観 点であることを考 えると

,

この表現 もやは り内容明示性が 不足 した ものである と言わざるをえない。 では

,子

どもたち と最 も直接的かつ具体的 に対応する教授・ 学習過程 はどうであろうか。 まず, 「指導過程」 を示 してお こう。 図

1

指導過程 買い物調べのグラフを 見て, どんな事がわか るだろう。 。近 くの店での買い物が多い。 。近 くの店では食べ物が多い。 ●遠 くの店 で もいろいろな物 を買 っている。 遠 くの店 とは, どこの店 だろうか。 0どこへ 0だれ と 0どのようにして 遠 くの店で買い物 をす るわけを考 えよう。 。大売 りだ しの とき 。店がた くさんあるか ら ●品物がた くさんあるか ら ●八東の店 にない品物がある。 ●べん りだか ら 0おくりもの ●買い物調べ という身近な素材 を具体 的な事象 として とらえさせる。 ●消費生活面での他地域 とのつなが り かたをとらえさせる。 ●商店 と自分たちのつなが りをしっか りつかませたい。 ●どこの店 をよく利用 しているか分布 図で読みとらせる。 ●家族の声や,新聞に入 っている折 り 込み広告な どにも視点 をあてた発表 をさせたい。 ●発表内容は買い物だけに限定 しない ようにする。

OHP

。買い物 し らべのグ ラフ 。写真 (校区の店)

OHP

●買い物 し らべの分 布図 ●写真 (鳥取駅前) 20 分 指 導 上 の 留 意 点 どうして、近 くの店 と遠 くの店 に 買い物に行 くのだろう。

(5)

遠 くの店 に買い物 に行 くわけを社会見学でた しかめよう 。遠 くの店や商店街へなぜ買い物 に行 くのか (校区の店 との比較か ら)追 求 していこうとする問題意識 をもた せ る。 社会科 の教授・ 学習過程 は

,教

師 と子 ども

,子

どもと子 ども

,資

科・ 教科書作成執筆者 と子 ども の間での

,社

会や人間に関する知識提示過程 とみなす ことができる。 したがって

,社

会科授業分析 の方法 は,や りとりされ る知識の質 と提示の論理 を検討 してい くことが中心 となるYすなわち,いか なる問いによっていかなる回答 を引 き出 しているのか,「問い一一回答」の構成 に注 目して分析 して い くことになる。本時の「指導過程」 も同様 に分析 してみ よう。 まず

,本

時 を貫 くM.Q。 (Main Question)である「 どうして

,近

くの店 と遠 くの店 に買 い物 に行 くのだろう」 という「why」 型の問いが導入部分で提起 され る。

MiQ.に 員F答す ることは困難であるので

,S.Q.1(Sub一

Question)「 買い物調べの グラフを見て,

どんなことがわか るだろう」 という問 いが提起 され

,購

買品の中の生活必需品

,

とくに食料 品へ注 目させてい く。 また

,遠

近両商店 (街

)で

買い物がな されている事実をお さえてい く。

すでに小単元第1時において,「毎 日の生活 の買い物」とこついて学習 しているので, S.Q.1に対 し ては事実的記述的知識 を確認 しあ うことで回答 した ことになる。

その上で,「遠 くの店 とは

,ど

この店 だ ろうか」という展開部分 に位置づ くS.Q。2が 提起 され る。

S.Q.2に ついては,「どこへ

,だ

れ と」行 くのか を問 うS.S.Qユ

(Sub Sub―

QuestiOn)と ,「どの

よ うに してい くのか」を問うS.S.Q.2が

,さ

らに下位の問い として構成

,配

置 され る。 S.S.Q.ユ ヘの回答 は,「家の人 と鳥取駅前商店街や若桜街道商店街へ買いに行 く」とい う事実 的記 述的知識であ り,S,S,Q.2への回答 は,「国鉄やバス

,

自家用草 を利用 して買い物 に行 く」 とい う事 実的記述的知識である。したがって, S.Q.2へ の回答 も事実的記述的知識か ら構成 され ることにな る。 以上のように,「どんな」「 どこへ」「だれ と」「 どの ように して」 という問いに もとづ き事実的記 述的知識 をお さえたのちに

,本

時の

M.Q.が

再度提起 され る。それは

,下

位 目標② に到達す ることを 期待する問いで もあ り

,展

開部分の中心 を占めるものである。松本が期待する回答 としては,「●店 がた くさんあるから,●品物がた くさんあるか ら,。八東の店 にない品物 がある,● お くりもの」等 であ り

,そ

れ らの回答が並列的に用意 されている。 子 どもたちか らこれ らの回答 を引 き出す と

,そ

れ を次時の社会見学での観察視点 とし

,視

点の有 効′性を検証 してい くことになる。

4.実

践Iの評価 以上の分析 をぶ まえて

,実

践 1に おける理論・ 解釈 の吸収・ 再構成 に関す る評価 を試み よう。 まず

,実

Iが

,商

店街 と消費生活の関係 に関する理論・ 解釈を大枠 として保持 し

,そ

れを地域 の事実 。事象に対 して「 なぜ

,ど

うして」 と問 うことによって探求 させ

,発

見 させ ようと意 図 して

(6)

小山直樹:社会科授業改造 の視点 (II) いる点 は評価で きる。 しか し

,次

のような問題点 も内在 させている。 第1点は

,松

本の教材解釈が

,商

業立地論や商業地域形成論 と呼ばれる理論・解釈 をどのように 学び とる中で成立 した ものであるかが十分 には示 されていないことである。 今回取 り扱われた教材が

,か

な り常識的なレベルでの解釈 を許容するものであるために

,先

行研 究か らの吟味があいまいな ものになっているのではないだろうか。 そのために

,第

2の問題点 として

,小

単元観→小単元 目標→本時 目標→教授・学習過程 の順 を追 って次第 に明確化 し

,具

体化 されて くる理論・ 解釈が

,逆

に抽象度 を高め

,

よりあいまいな ものに なってしまっているのである。 本来 は

,理

論・ 解釈 はその本質 を失 うことな く低次のそれへ と読み替 えられ

,配

置 され るべ きで あるが

,実

践Iの場合 には抽象度が逆転 した配置 となっているのである。 さらに,このような混乱 は

,M.Q.へ

の回答 を浅い レベルに とどめて しまうことになる。それが第 3の問題点である。 すなわ ち,「店がた くさんあるか らJとか「品物 がた くさんあるか ら」とい う現象的側面での回答 を,「専門店」 として「た くさんある

Jこ

との意味 を説明す る回答へ と深めてこそ

M.Q.へ

の回答 と なってい くのであるが

,実

践Iの場合

,授

業構成段階においてすでに理論・ 解釈 と用意 された回答 とが一致 を欠いているのである。 たとえば,「八束の店 にない品物」があるか らとい う回答 を中心 に して他 の回答 を構造化 してお くことが無いまま

,た

だ並列的に配置 され るのみであった。 実際の授業において も,「品物 がえらべるか ら」とい う回答が子 どもの側か ら出 されていた。もし, 松本 が この「えらべる」 ことの背後 にあるものへ注 目し

,子

どもたちに問い返 していたな らば

,子

どもたちの探求 を理論・ 解釈探求 のルー トにのせてい くことも可能であったのではないか と惜 しま れる。 以上の問題点 を内在 させていたために

,結

局の ところ

,授

業 は事実的記述的知識提示型 の もの と なっていったのである。 ここに

,実

践Iが事実的判断力の育成 を軸 として日常的な社会科授業か らの脱皮 を目ざしなが ら も

,そ

の改造度 において途次の もの と評価せ ざるをえない理 由がある。 では

,こ

のような問題点を解決 した実践 とは どのような実践 であろうか。そのためには

,ど

の よ うに理論・解釈 を切 り取 り

,教

授 。学習過程 にまで組 みこんでいけばよいのであろうか。 実践

Hを

検討する中で

,こ

れ らの問いへの回答 を求めてみよう。 Ш

実践

H「

商 店が い と人 々の くら し」 分 析

1.実

践の概容 実践

H「

商店 がいと人々の くらし」は

,伊

東亮三編著『〈基礎学力保障のために③〉達成 目標 を明 確 に した社会科授業改造入門』(明治図書

,1982年

)│こ収 め られた実践であ り

,広

島大学教育学部付 属小学校教諭森本直人 (現・ 島根大学教育学部

)の

指導によるものである。 同書の全体的特徴については,すでに簡単 な書評 を述べてい る*3ので,本稿では実践

Hに

かかわ る 限 りにおいて参照 してい くこととす る。 実践

Hは

,同

書所収の他の実践 と同様 に

,伊

東が提唱する社会科授業設計理論 に依拠 してつ くら れた ものである。同授業設計理論の大 きな特徴 は

,社

会科 にお ける「知識・理解」概念 を「知識」

(7)

概念 と「理解」概念 に区別 し,「理解か ら知識へ」 と授業 を設計 し,「知識か ら理解へ」 と学習 を展 開 させ ようとす るところにある。 筆者 のこれ までの授業改造論 と対比 させて言えば

,筆

者が「説明」概念 を用いている部分が同授 業設計理論では「理解」概念 になっていると思われ る。 この差異 は社会科教科論 の違いにまで発展 する可能性 もあろ うが

,今

,知

識 を所有する子 どもの内面的体制 に注 目して概念設定 をしてい く のか

,そ

れ とも

,所

有 する知識の間主観的な側面に注 目して概念設定 をしてい くのか

,そ

の重心の 置 き方の違い程度 を指摘するのにとどめたい。それ というの も

,森

本 によって紹介 されている実践 ■は,「理解」概念 を「説明」概念 に読 み替 えて分析 してい くことを可能 とす るほ どに内容明示性が 保 たれて報告 され ているか らである。 また

,一

般論 として時に指摘 される ところであるが

,あ

る実践がなぜそのようにあるのか

,あ

り えたのかを問 うとき

,必

らず しも自らの依拠する授業構成論 か ら満足で きる回答 を引 き出せ るわけ ではない。む しろ

,他

の授業構成論 によってこそ

,よ

り満足で きる回答が得 られる場合 もあ る。 その意味か らも

,実

Hに

ついては

,本

稿の目的や分析方法の一貫性 を考慮 しなが ら,「概念探求 としての社会科」理論 か らの分析 を試みよう。

2.実

Hの

構成 実践

Hは

,実践Iと同様 に,現行社 会科第

3学

年の目標 を受 けて,「地域 における消費生活の特色」 を理解 させ るために構成 されている。 単元 目標 は,「商店街のはた らき(機能)は

,人

々の消費行動や交通の条件 などと深い関係がある こと

,ま

た商店街の活動 は消費者の欲求に対応 し販売のための工夫・ 協力体制がみ られることを理 解 させ る」 というものである。 単元の「全体構造」および「指導計画」 は次の とお りであ る。 図

2

単元の構造 商品の類別一― 引 目彗 旱畜 品 理 写 の利 用の一 弓匠目

g写

Fず

Ξ真

_

の種類 と数 FU用の様子 中心商店街 一 (本通 り商店4 の条件 周辺 商店作 つ様 子 (環境) 私達の消費行動 私 達 の 消 費 生 活 と 商 店 街 の は た ら き (中通 り商店街)

(8)

小 山直樹:社会科授業改造 の視点 (H) アーケー ド ー カラー舗装 大売 り出 し 定 休 日 歩行者天 国 宣伝 。広告 通 りの飾 り付 け ネオ ン・ 街 灯一 図

3

指 導計 画 次 主 題 ね ら セゝ 時 間 1 買い物調 べ 家 で は どの よ うな品物 を どこで買 ってい るか を調 べ

,そ

の結果 を もとに私達 の買 い物 にみ られ る消費行 動 の特色 (「買 い 回 り品 は 中 心商店街 の専門店 や デパ ー トで

,最

寄 り品 は家 の近 くの商店街 や ス ーパ ーで購入す る。」

)を

理解 させ る。 2 2 本通 り商店街 見学 を もとに

,商

店 の種類 や数

,客

の利用 の様 子 な どを まとめ, 本通 り商店街 の特色(買い回 り品を扱 う専門店が集 中 していること) を理解 させ

,交

通条件 や周 囲の様子 な どか らその立地条件 を考 えさ せ る。 4 3 中通 り商店街 見学 を もとに

,商

店 の種類 や数

,客

の利用 の様 子 な どを まとめ, 本通 り商店街 と比較 させなが ら中通 り商店街 の特色 (最寄 り品 を扱 う小 さな店 が集 中 してい るこ と

)を

理解 させ る。 3 4 商店街 の工夫 と協力 見学 の ま とめ を活用 し

,ア

ーケー ドや カ ラー舗装 な どを手がか り として

,そ

れ ぞれの商店街 には商店会が あ り

,客

が楽 し く便利 に買 い笏 がで き るょぅに工夫や協妬をし てjiる こ とを理解 さを る。 1 商店街 に来 る 人 び と 本通 り商店街 を例 に

,商

店街に来 る人々はどんな所か ら来ている か をまとめ

,商

店街 と他地域 との結び付 きについて理解 させる。 1

3.実

Hの

分析 実践Iと対比 させ る意味か ら最 も注 目 して分析する必要があるのは,「私達の消費行動」と「商店 街の特色」 を扱 っている第

1次

∼第

3次

の実践である。 まず

,こ

の部分 に関する森本の教材解釈 を見てみ よう。 「子 ども達が生活 している広島市の場合 は

,こ

の地域 は広島県の商業の中心的都市 としての性格 を持ち

,市

内に数多 くの商店街がある。 これ らの商店街 を消費生活 との結 び付 きの面か ら

,そ

の機 能において二つ に分 けることがで きよう。一つは交通至便 な市の中心部にあって専門店が集中 して いる商店街のタイプ

,

もう一 つは住宅地区にあって生活必需品を披 う商店が集中した地 区住民のコ ンベニエ ンス・ ショッピング・ セ ンター としての性格 を持つ商店街のタイプである。商店街 と一口 第4次 「商店街 の工夫 と協力」 商店街 の工夫・ 協力

(9)

に言って も,これ ら二 つのタイプの商店街 は本質的に立地条件 も異 なる。『た まに しか買わない買い 回 り品は品数の豊富な専門店 で

,生

活必需品は最寄 りの店 で買 う』 という私達 の消費行動が

,交

通 の条件 な どとからみ合 いなが ら『中心商店街 には買い回 り商品 を扱 う専門店が集中 し

,周

辺商店街 には最寄 り品 を扱 う商店が集 中する』 という現象 を生み出 しているわけである。 しか し

,こ

れ ら二 つのタイプの商店街は

,商

店会 を結成 して販 売のための工夫

,協

力 を行 っている とい う共通性 も有 している。」 以上 のような森本の教材解釈 は

,現

行社 会科が期待する「地域 における消費生活の特色」の理解 を

,商

店街の機能か ら

,す

なわち

,消

費者の消費 目的 とそれを支 え

,可

能 とす る交通条件 か らとら えることで応 えようとす るものである。 それ は

,単

に広島市内の商店街 の機能 をそれ 自体 として個別的に とらえるのではな く,「交通条件 のよい市の中心部 には買い回 り品 を扱 う専門店が集 中する商店街が形成 され

,周

囲の住宅地の近 く には最寄 り品を扱 う店が集中する商店街が形成 され る」 という総合的 レベルでの商業立地論

,商

業 地域形成論 を背後 にもち

,そ

の枠 ぐみを用いて広島市内の商店街 をとらえるとい う構造 にもとづい て成立 した解釈である点が特徴的である。 この ような理論・解釈 を前提 として

,先

述 の単元 目標が設定 され

,さ

らにその前半部分 に関 して 第

1次

∼第

3次

の指導計画が立て られてい く。 第1次「買 い物調べ」の「学習内容」 について森本 は次のように述べてい る。 「第1次『買い物調べ』では

,家

庭 で はどのような品物 をどこで買 っているか を調べ

,そ

の結果 をもとに,商品の種類 と購入先の違 いに着 目させ,『買い回 り品は中心商店街の専門店やデパー トで, 最寄 り品は家の近 くの商店街やスーパーで購入する』 とい う私達の消費行動の特色 と理由を理解 さ せ ることが中心的なね らいである。 このね らいを達成するためには

,ま

ず商品が 『買い回 り品』 と 『最寄 り品』 という二つの概念に類別 され ること

,及

び両概念の概念規定 を習得 させ ることが必要 であろう。次 に『買い回 り品』や『最寄 り品』が主にどこで購入 されているか を知 り

,各

々の商品 の特性 についての知識 と照 らし合わせて『 どうしてそこで買 うのか』 を考 えさせ る。 この推理場面 において,『最寄 りの品』の場合 よ りも『買い回 り品』の場合の方が難解 と想定 されるため

,そ

の手 がか りとして 『専門店』 に関す る情報 を与 える必要があると思われ る。その他 に も子 ども達 は生活 経験か ら導 き出 したいろいろな知識 を用 いるであろうが

,授

業のね らいを達成 するための基本的な 学習内容 は以上の ような もの と考 え

,次

のよ うに整理 してみた。」 以上 の説明か ら

,森

本が第

1次

の指導計画立案 に際 して

,自

らのつかんだ理論・ 解釈 を次の よう に限定 し

,教

授 しようとしていることが読み取れる。 まず

,第

1次のね らいを消費行動の特色 と理由に関するものに限定する。 総合的 レベルでの商業立地論

,商

業地域形成論 の探求 は

,第

2次

以降の探求 も含 めた ときに成立 するもの と考 えられているのである。 さらに

,第

1次のね らいに到達するための前提 として,「買い回 り品」と「最寄 り品」とい う概念 に注 目す ることで商品を とらえられることの認識 と

,両

概念の概念規定の習得がめざされている。 その上 で

,両

概念 を用いて各家庭 での買い物状況 を見直 させ,「なぜ

,ど

うして」と問 うとき

,第

1次でね らい とする理論 。解釈が発見で きる と考 えられているのである。 では

,そ

れ らの意図 は

,森

本の言 う「整理」内容 にどのように盛 りこまれてい るのであろうか。 それ らは

,次

のように示 されている。

(10)

小 山直樹:社会科授業改造 の視点 (H)

4

基本 的な学習内容 〈理解〉

Al

最寄 り品 は

,一

般 に安価で買 う人の好 みにはあ ま り関係がな く

,日

常の生活 に欠か せないものが多いので

,近

くの商店街やスーパーで購入する。

A2

買い回 り品 は

,一

般 に高価 で買 う人の好みが強 く出て くるので

,中

心商店街 の品数 の豊富な専門店やデパー トで購入す る。 (知識〉

Bl

私達が購入する商品は

,最

寄 り品 と買い回 り品 とに区別することがで きる。

B2

最寄 り品 とは

,毎

日の生活 に必要で日常的に購入す る一般に安価 な商品の ことであ る。

B3

買い回 り品 とは

,家

庭 においてた まに しか購入 しない

,一

般 に高価 な商 品の ことで ある。

B4

最寄 り品は

,家

の近 くの商店街やスーパーで購入す ることが多い。

B5

買い回 り品は

,市

の中心部の商店街やデパー トで購入することが多い。

B6

市の中心部の商店街 には買い回 り品を扱 う専門店が多い。

B7

専門店 は同種の商品 を品数多 くそろえている。 森本が ここで使用 している「理解」 とは,「意味の推理の結果」のことであ り,「知識」とは,「意 味の知覚 による判 断によって得 られた命題・情報」の ことであるが

,

このように文章化 され明示 さ れた

Al,A2も

Bl∼B″と同様 に

,社

会や人間についての知識 その もの と見 なしうるのであ る。 「理解」概念 は

,こ

れ らの知識 を個々の子 どもたちが習得 し

,内

面化 した状態 を

,す

なわち

,社

会 の見方

,考

え方 として保持する状態 を表現す るために使用 されているもの と思われ るが

,客

体化 して とらえるな らば

,全

て知識 その ものである。 そ こで

,Al∼

B7を社会科 にお ける知識の構造 に照 らして判別 してみよう。 す ると

,Al,A2は

化」(generalization)に 相当 し,B二 ∼B7は「低次の一般化」に相 当す る ことがわかる。 さらに,「買い回 り品」「最寄 り品」「専門店」 という概念 は,「低次の一般化」 を構 成する「概念」 として位置づ くことも明 らかである。 基本的な「学習内容」が決定す る と

,次

,そ

れ らを中心 に「達成 目標」を導 き出すために,「目 標行動」 との関連性 を考慮 した「内容・ 目標 マ トリックス」が作成 される。 第1次の場合

,畔

」断」「推理」「技能―資 料活用能カー 」「関心」「態度・学習規律」 に関 して計17 項 目が「達成 目標」 としてマ トリックスに登場す る。 「判断」「推理」に関する「達成 目標」は

,

ともに「思考」に関する「 目標行動」 として

,Al∼

B7 に「気づ く」「わかる」 とい うものである。 この ように して

,森

本の意図は

,授

業 の論理的側面の構成 において着実に具体化 され

,明

示 され てい く。 論点 は多少ずれるが

,こ

こで注 目しておきたい今一つの点 は,「関心」や「態度・学習規律」の育 成 に関す る実践

Hの

立場

,考

え方である。 示 されている「達成 目標」は

,す

べて,「最寄 り品を買 っている商店街 と買い回 り品 を買 っている 商店街の位置の違 いについて関心 を持 ち,この違 いが生 じるわけを積極的 に考 える」(関心Al∼

A2

(11)

オ),「買い回 り品や最寄 り品の特性 とそれ らの購入先 との関連 について自分の意見や考 えを積極 的 に発表する と共 に

,友

だちの発表 に も注意深 く耳 を傾 け

,力

を合わせて課題 を追究することがで き る」(態度 。学習規律Al∼

A2 力 )と

い うものであ り

,実

践 Ⅱが求 める「関心」「態度 。学習規律」 はあ くまで も知的探求にかかわるそれなのである。知的興味 と学習過程で行 う活動形態 に関す るも のに明確 に限定 されているのであ り

,伝

統的 に社会科 の 目標 と考 え られて きた し

,今

も根強 く主張 されている内容的目標 としての価値 的

,態

度的 目標 は

,第

1次に関す る限 りは排除 され

,科

学的態 度

,合

理的態度 で社会的事象 に接するという方法 的目標 として取 り入れ られているのである。他教 科 に並列する一教科 としての社会科 で達成可能 なこととしたい こと

,な

すべ きこととなすべ きでは ないことを示唆する考 え方 と思われ る。 さて,「内容・ 目標 マ トリックス」が作成 され ると

,次

,教

授・学習過程組織化の段階である。 それ は

,次

のように図示 されてい る。 図

5

学 習過程 問 資 料 学 習 活 動 回 答 (習得 される内容) の 連 標 目 関 ◎私達はどこで,どのよ うな品物 を買っている のだろうか。 「買い物調べJ の調査表 「買い物調べJ の調査表 と.学習課題 を確認する。 2.夏休 みの間 に調 べ た 「 買 い物 調 べ」の結果 を 発 表 す る。 3。「買い物調べJの結果 をもとに話 し合 う。 4.「 買い物調べ」の結果 を「最寄 り品」 と「買 い回 り品」 に分 けてグ ラフにまとめる。 O食料品,衣料品,家具,生活用 品,電気器具な どいろんな品物 を買っている。 O家の近 くの商店街やスーパー, 本通 りな ど中心部の商店街やデ パー トなど,いろんな所で買っ ている。 O毎日の生 活 に必 要 で 日常 的 に 買っている一般 に安い値段の品 物 (「最寄 り品」)である。 O家庭 においてはた まにしか買わ ないような一般 に高い値段の品 物 (「買い回 り品J)である。 BI一 エ Bl― オ B2∼ Bs― エ B2∼B5 オ B2∼B5 カ Bl― ア B2 ア B3 ア BI一 ア B3 ア 。夏休みの間に家庭 では どんな品物 を買ってい たか。 0それ らの品物 はどこで 買っていたか。 O家の近 くの商店(街 )や スーパーではどんな品 物 を主に買っている力ち O市の中心部の商店街や デパー トではどんな品 物 を主に買っている力ち ◎ どうして最寄 り品は家 の近 くの商店(街)やス ーパーで七買い回り品は 市の中心部の商店街やデ パートで買うのだろうか。 O最寄 り品 とはどういう 品物だったか。 O最寄 り品はどうして近 くの商店やスーパーで 買 うのだろうか。 「買い物調べJ のグラフ 1.学習課題 を確認する。 2.最寄 り品の例 を確認 しあう。 3.最寄 り品の特色や最 寄 り品を買った時の経 験 を手がか りに話 し合 う。 。最寄 り品は毎 日の生活に欠かせ ない。 O最寄 り品は一般に安 い。 。最寄 り品は買 う人の好みはあま り関係がない。 ◎だか ら最寄 り品は家の近 くの 店で買 うのが便利である。 Al∼A2 オ Bl― ア Al∼A2 カ B2 ア Al―イ

(12)

小山直樹 :社 会科授業改造の視点 (H) O買い回 り品 とはどうい う品物だったか。 O買い回 り品はどうして 市の中心部の商店街や デパー トで買 うのだろ うか。 O市の中心部の商店街や デパー トはどうい う特 色があるか。 「買い物調べ」 のグラフ 写真「専門店 の 店 内 の 様 百隣」 4.買い回 り品の例 を確 認 しあう。 5.買い回 り品の特色や 買い回 り品を買った時 の経験 を手がか りに話 し合 う。

6

写真や本通 り商店街 に行 った経験 を手がか りに,市の中心部の商 店街の特色について話 し合 う。

7

学習課題 についてま とめる。 。買い回 り品は家庭ではた まにし か買わない。 。買い回り品は一般 に高価である。 O買い回 り品は買 う人の好 みが強 く出て くる。 O中心部の商店街 には買い回 り品 を扱 う専門店が多い。 O専門店 は同 じ種類の商品 を品数 多 くそろえている。 ◎だか ら買い回 り品は市の中心 部の商店街の専門店やデパー トで買 うと便利である。 Al∼A2 カ B3 ア B6 ア B7 ア A2 イ まず,「学習過程」の形式について検 討する と

,一

般的に採用 されている指導案の形式 よ りも

,何

が どの ように教授 され

,学

習 されるのかが明示 しやすい ものになっている。 それ を意識する人々の間では,すでに早 くか ら注 目され

,使

用 されてきた形式キ9であるが

,伊

東編 著書所収の他の実践報告 における形式や

,実

践 Iの それ と比較 して も

,こ

こに示す形式の方が はる かに批半J的吟味 を受 けやすいもの となっている。 今後の授業改造研究 においては

,こ

の ような「開かれた形式」での報告が求 められ るもの と思 う。 さて,「学習過程」 の吟味

,検

討 に移 ろう。第1次は

2時

間扱 いである。 第1次を買 く

M.Q.は

,「私達 はどこで

,ど

のような品物 を買 っているのだ ろうか」とい うもので あ り

,そ

れを支える2つのS.Q.に もとづ き「買い物調べ」か ら明 らかになる事実的記述的知識 を挙 げることで回答 となると考 えられてい る。 「買い物調べ」 を中心 とする学習指導 は

,実

践 Iの 場合 もそ うであったように

,多

くの実践で採 用されている導入方法であ り

,特

に論及するほどの新 しさは見 い出せない。実践

Hで

注 目で きる部 分 は

,む

しろ

,S.Q.「

家の近 くの商店(街 )やスーパーで はどんな品物 を主 に買 っているか」,「市 の 中心部の商店街やデパー トではどんな品物 を主に買っているか」 という問い とそれに対 す る回答 で 構成 されている部分 である。 それ は,「買い回 り品」と「最寄 り品」という両概念の特徴的な属性 を明示 し

,そ

の属性 によって まずグルー ピングを行 い

,他

の属性 を考察させる「概念獲得」の手法 を採用 して

,両

概念の習得 を 意図 した部分で ある。 森本のつかんで いる理論・解釈 に子 どもたちが到達す るための出発点 として,「概念獲得」場面が 周到に設定 されている ことがわか るのである。 それ を受 けて授業の実際 も,「概念獲得」の方向に枠づ けられた森本 の指示

,発

間 に導かれなが ら, 子 どもたちの回答が 日常経験 を交 えて無理な く両概念 を習得 した もの とな りえている。授業後の商 品類別評価 テス トでの正答率の高 さもそれ を裏づけている。 第

2次

,第

1次

で確認 した人々の消費行動の特色 に対 してM.Q.「 どうして最寄 り品は家の近 く の商店 (街

)や

スーパーで

,買

い回 り品は市の中心部の商店街や デパー トで買 うのだろうか」 と問 い,「理解Al,A2」 を探求

,発

見 させ ようとするものである。

(13)

M.Q.を 支 えるS.Q:は ,S.Q.1「最寄 り品はどうして近 くの商店やスーパーで買 うのだろう」と,S.Q 2「買い回 り品は どうして市の中心部の商店街やデパー トで買 うのだろうか」である。 さらに

,SQ.1は

「最寄 り品 とは どうい う品物だ ったか」とい うS.S.Q.1に,S.Q.2は「買い回 り品 と はどういう品物だ ったか」 とい うS.S.Q.2,ぉよび「市の中心部の商店街やデパー トは どういう特色 があるか」 とい うSS.Q.3に 支 え られている。 この ように

,M.Q.を

中心 にしてS.Q.およびS.S.Q.が論理的整合性 を保 ちなが ら配置 され

,そ

れぞ れの問いに対する回答 も先述の「一般化」「低次の一般化」 レベルで用意 されている。 授業の実際 も

,森

本 自身が述べているように教師の指導性が前面 に出す ぎた きらいもあるがすЮ子 どもたちの探求 は「達成 目標」 に到達 しえている。 さらに

,T男

の感想文 に見 られ るように,「どうして本通 り商店街 には専門店が多 く集 まっている のだろう」とい う

,商

業立地論の本格 的探求へ向 う新 らたな問いを子 どもたちは持ちはじめている。 この問いへの回答 を求 めてい く学習が

,第

2次

および第

3次

の指導計画 に もとづ く学習である。 残念な ことに

,第

2次

以降の指導計画細案や授業記録が紹介 されていないので

,詳

しい分析 は不 可能であるが

,第

2次以降 に探求 される理論・ 解釈の概略 を示すならば

,第

2次

で は交通条件や周 囲の様子 な どか ら中心商店街 の立地条件 が探求 され

,第

3次

ではそれ との対比 において周辺商店街 が扱われ る。 そ して

,第

1次

∼第

3次

の探求 を経過 する中で

,商

店街立地 に関する総合的 レベルで の理論・ 解釈

=森

本の教材解釈の習得が目ざされ るのである。

4.実

践 Ⅱの評価 以上 の分析 をふ まえて

,実

Hに

おける理論・解釈の吸収 。再構成 に関す る評価 を試みてみよう。 しか も

,そ

れ を実践Iに内在 した問題点に対す る回答 を求める形 で述べてみよう。 まず

,問

題点 1に 関 しては

,実

Hの

場合

,教

材解釈が関連専門科学の批半」的吟味 に十分 に耐 え うるもの となっ,ていることで解決 している。 現行社会科 に盛 られている教材の中で

,今

回取 り上 げられた教材 は,「概念探求 としての社会科」 に構成 しやすい ものの一つであるとは言 うものの

,こ

こに示 された程度の解釈力

,水

準 は他の教材 解釈の場合 にも要求 され るであろうし

,ま

,そ

れな くしては「概念探求 としての社会科」への授 業改造 も実現 しないので はないだろうか。 問題点2に関 しては

,理

論・解釈か ら具体的事実に至 る過程 を,「一般化J「低次の一般化」「概念」 「具体的事実」の各 レベルで とらえ直す ことによって解決 している。 この ような とらえ直 しを行 っているか らこそ

,理

論・ 解釈 を限定 し

,そ

の一部 を本時 目標化 した り

,そ

のための教授 。学習過程 を組織化することが可能 となる点に注 目したい。 問題点3に関 しては,「問い一一 回答」の連続的な過程 として組織 され る科学的探求過程が

,子

ど もたちの探求 を指導 し

,枠

づ けているために

,探

求の方向を無方向な ものにすることな く,「達成 目 標」へ と収敷させているのである。 あ くまで も「指導 された討論・ 探求」 の場 として授業過程 を組 織 しているのである。 以上の理 由によ り

,実

Hは

実践Iと比較 して

,社

会や人間 に関する諸理論・ 解釈 を社会科授業 の側 か ら吸収 し

,再

構成 し直す ことに大 きな前進 を示す実践であると評価 で きるのである。

(14)

小 山直樹:社会科授業改造 の視点 (H)

おわ りに一― 求 め られ る関係 と

,そ

のための一般的改造視 点――

実践 ■は

,実

践 Iに 内在す る問題点 を社会科学研究 にお いて明 らかにされ る社会や人間 に関す る 諸理論・ 解釈 との連続性 を強化す る方向で解決 し

,成

立 した実践であった。 ここに

,我

々 は

,理

論・ 解釈 と社会科授業 との間の求め られる関係 を見い出す ことがで きよう。 すなわ ち

,社

会科授業 は理論・解釈 との連続性 を積極的 に求 めるべ きであ り

,そ

れが教科 の成立・ 発展の歴史 に も合致する基本的方向である と言 えようど11 今後

,よ

り多 くの教材 に関 して も

,こ

の ような関係 を確保 した解釈 と

,そ

れに もとづ く授業の改 造が求められ るが

,そ

のためにはず連続 的関係 を保障す る視点が転移性のあるもの として明 らかに されなければな らない。 そ こで

,以

,筆

者 な りに一般的改造視点 を提案 してまとめ としたいど12 第1の視点 は

,教

師の教材研究 を社会科学者 の研究 と連続 させるための視点 であ り

,教

材研究 は 「教師による自分のための学問的研究」であるというものである。 「自分のための学問的研究」である以上

,学

問的な問いを立 て

,調

,わ

か ってい こうとす る知 的好奇心 や

,先

行研究 を批判的に吟味 し

,学

んでい こうとす る知的廉直 さも要求 され よう。 第2の視点は

,教

師が授業 を通 して子 どもたちに伝 えたいこと

,語

りたい こと

,探

求 させたい こ とを生み出すための視点 であ り

,そ

れ らは「自分のための学問的研究」 において教師 自身が新 しい 社会の見方を発見 し

,わ

かってい く楽 しさを味得する中か ら生 まれて くるとい うものである。 教師 自身が 自主的な知的探求活動 を行 い

,知

的なぞ解 きの楽 しさを知 るときに

,子

どもたちにも 分ち伝 えたい とする授業意欲が湧いて くるし

,常

識の世界 か ら科学の世界へ子 どもたちを渡 らせ る 道が開けて くるのである。 第3の視点は,そ れをより確かな ものにする視点であ り

,子

どもたちにどうわか らせ るか とい う, いわば「子 どものための教材研究」 にかかわる視点である。 すなわ ち,「自分のための教材研究・ 学問的研究」でつかみ とった理論・ 解釈 を,「学問的

,科

学 的真理 はどの発達段階の どの子 にも理解 させ る ことがで きる」 とい う授業構成 の基本原則 に もとづ き「到達 目標」 として設定 してい くというものである。 第4の視点 は

,第

3の視点 を教授・ 学習過程 の組織化の段階で具体化 させ る視点 であ り

,教

授・ 学習過程 は典型的事例 (具体 的事実 。事象の中で も最 も理論・ 解釈 を具現す るもの

)か

ら理論・ 解 釈へ という方向で組織 されることを基本 とする というものである。 それ は

,教

師が「 自分のための学問的研究」で辿 った過程 の中か ら帰納的 な探求過程 を取 り出す ことで可能 となろう。 第5の視点は

,帰

納的な探求過程 は「問い一一 回答」か ら成 る「詳 しい指導案」 に表現 される訳 であるが

,そ

の際

,一

まとまりの探求過程 に,さ らには

,い

くつかの まとまりか ら成 る探求過程 に, その論理 と実証 において混乱や飛躍が生 じることの無 いように

,教

授・学習内容 を明示的に記述 す るというものである。 いわゆる `名詞止 め″と呼 ばれるような記述 は極力排除 されなければな らな い。それが保障 されてこそ

,授

業後の授業分析や再改造が よ り実証的な もの になるのである。 以上述べて きた視点 をふ まえて

,所

与 の教材*螂を自律的 に研究 し直す とき

,日

常的 な社会科授業 を「概念探求 としての社会科」授業へ改造することになるもの と思われる。 IV

(15)

注・ 参考文献

*1

拙稿「発達段階に応 じた社会科総合学 習の実験 。実証的研究――小学校 中学年 ゴ ミ学習の場合――J(『鳥 取大学教育学部研究報告教育科学第22巻第2号』昭和55年),および「社会科授業改造の視点一―授 業観 と教 材解釈の検討 を通 して一―」(日本社会科教育研 究会 『社会科研究第26号』昭和53年)を参照 されたい。

*2

本稿で は,「社会科 の授業 は理論・解釈 を教 えて いる」 とい う授業観 を前提 とし,狭義の教材解釈の立場 に 立 つ ものではない ことを主張す るために,すなわ ち,所与の教材 をどの ように受 けとめ,理解 し,意味づ け るか という立場 に立 つ もので はない ことをよ り鮮 明 に主張す るために「授業 と理論 。解釈 の関係」 を問 うこ ととした。 また,「目的的 な立場 か らの授業研究」の方法 に もとづ く継続的研究であ るために(Ⅱ)と表記 し ている。

*3

実践

I,Hで

扱われ る教材 についての筆者な りの解釈 を示 してお こう。先行研究 の一つである,服部錐二 郎・杉村暢二共著『商店街 と商業地域』(古今書院,1978年)を参照すれば,商店街の一般的な分類 を商圏の 広狭,買物サ イクルの長短 に注 目して行 い,(a)近 隣型商店街(日常性 の買物街),(b)地域型商店街(週間性 の 買物 街),(C)広域型商店街 (月間 。年間性の買物街)の 3分類 を示 してい る。 そ して,消費者の購買習慣 を3 分類 された商店街の合 目的的利 用 に見い出 している。(最寄 り品の購買,買い回 り品の購買,専門店 の購 買) また,(a)が地域住民の徒歩範囲 を主たる商圏 とするのに対 して,(b)は,さ らには(C)は,よ り高次 な中心性 を 保持 し,行政 や文化 な どの中心機能の総合体 の一部 として作用す るために,立地選定 にはすべての住民 に利 便 な交通条件の優位 な地点 であることが重視 され ることを明 らかに してい る。筆者 も,この見解 に依拠 した い と思 う。

*4

「子 どもの側 に立 つ 『授業の展開』 とは」 とい うテーマの もとに編集 された 『現代教育科学 No317』 (明 治図書,1983年4月 号)において,谷川彰英 は,「教育界 で は『子 どもの立場 に立 つ』とか『子 どもの立場 を 考 えて』 とかい うことばを安易 に使 い過 ぎるのではないか」 と述べてい る。筆者 も谷川の指摘 に同感であ る し,教育実践研究における研究主題の無限定,広大 さ,ムー ド主義的傾 向 は改 められ るべ きであ ると考 えて いる。

*5

現実 には,教師の指導性 を放棄することによって自ら問 う子 どもが育 つ とす る主張 もある。それ は,「自ら 問 う」 ことの意味 を

,子

どもがパー フェク トに 自発的に問 うと解 す るときに生 まれ る主張である。 しか し, その ような解釈 は,あらゆる社会科授業構成事実お よび授業事実 に照 らしてみれ ば認め られない解釈であ る。 その ような ことは不可能 である ことを前提 にして論 を立 ててい くべ きである。子 どもたち各人 の思考 の多様 性 も指導性 の中のそれであ ろう。思考の多様性 については,拙稿「基礎・基本 は どう考 え られて きたか」(『社 会科教育』No228,1982年 4月 号,明治図書)において紹介 した安井俊夫の指摘が示唆的である。

*6

詳 しくは,森分孝治 『社会科授業構成の理論 と方法』(明治図書,1978年),および拙稿「発達段階 に応 じ た社会科総合学習の実験・ 実証的研究

J(*1)を

参照 されたい。

*7

授業 という トータルな存在 に対 して トータルな注 目をして,論を立 ててい く行 き方 もあ りうるが

,社

会科 授業の論理的側面 での構成 に限定 し,未知 な部分 を既知 な ものへ変 えてい くために このような注 目をす るの である。 また,当面 は,授業 の論理的側面の構成 →実験授業化→授業の心理 的側面の検討→授業の論理 的側 面 か らの再構成→…… というサ イクルで授業づ くりが進 め られなけれ ばな らない と考 える。 その意味 で は授 業構成 の方法 とも言 え る。

*8

拙稿「書評・達成 目標 を明確 に した社会科授業改造入門J(『社会科教育』N0236,1982年11月号,明治図書) を参照 されたい。

*9

社会科授業研究の科学化 を目ざす立場か ら使用 され る学習指導案の形式であ る。 すなわち,社会科授業研 究が観念的・ 思弁的な主張 に終始 するのではな く,何をどの ように教授 し,学習 させ るときに子 どもの社会 認識 に どのような変化・ 発展 を もた らしうるのか とい う事 実 を明 らかに し

,事

実に もとづ きあ るべ き授業理 論 を構 築す る研究へ と脱皮 してい くために使用 され る形式であ る。「 教授書」「詳 しい指導案」 と呼ぶ こ とも あ る。

*10 *5と

も関連 す るが,教師の指導性 は間主観的 な納得 (理論・ 解釈の習得)に到達す るための多様 なルー トを求 める中で生か され るべ きである。

(16)

小山直樹 :社 会科授業改造の視点 (■) *■ 大槻健は「社会科教育における経験■態度iンÅヽ格主義について」(『教育』19∝年 8月 号)において,教科 と―科学の関係を次のように述べている。「近代教育において,『教科』を設定 して,その指導を中心に

,学

校 教育をすすめることができ―るようになったのは,そうした教育の1やり方を可能にする科学の発達があったか らである

c―

中略‐教科は,こうしてはじめから科学と,基本的に結びついて成立 していたものである。」

*12「

自分のための教材研究J「子どものための教材研究」という発想は

,森

分孝治「社会科の授業構成 と授業 観察」は 島1大学教育学部・ 同付属中 。同付属小 F教育実1習研衆

J昭

和蒟年度

)か

ら学んだものであ│る。 ■13 現行小学校学習指導要領に示される中学年社会科の自標

:内

,方

法については, とりわけ,内容(教材) の性格については

P拙

紆 申学年の社会科」(社会認識激育学会編f初等社会料教育学』学術図書出版社,1983 年)を参照されたい。 (昭和 58年 4月 30日 受理)

参照

関連したドキュメント

の知的財産権について、本書により、明示、黙示、禁反言、またはその他によるかを問わず、いかな るライセンスも付与されないものとします。Samsung は、当該製品に関する

ことで商店の経営は何とか維持されていた。つ まり、飯塚地区の中心商店街に本格的な冬の時 代が訪れるのは、石炭六法が失効し、大店法が

弊社または関係会社は本製品および関連情報につき、明示または黙示を問わず、いかなる権利を許諾するものでもなく、またそれらの市場適応性

関係会社の投融資の評価の際には、会社は業績が悪化

  支払の完了していない株式についての配当はその買手にとって非課税とされるべ きである。

ぎり︑第三文の効力について疑問を唱えるものは見当たらないのは︑実質的には右のような理由によるものと思われ

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

神はこのように隠れておられるので、神は隠 れていると言わない宗教はどれも正しくな