はじめに
◆今回の目的◆
日本の企業が海外市場へ株式を上場した時に、
日本市場へどういった影響を及ぼすかを実証分析で考察する
◆海外市場への参加◆
企業が海外市場へ上場する際、預託証券の制度を使うことができる 海外市場へ上場することにより、企業はメリットを享受できる
預託証券とは?
などが存在する。
非当該国企業の株式(原株)を裏付けとして、
当該国内での流通を目的として発行される証書のこと
米国においては、米国証券取引委員会(
SEC
)に米国内有価証券として 登録されることにより米国企業の株式と同様に売買・決済・保管される。
ADR(米国預託証券)
GDR(グローバル預託証券)
EDR
(欧州預託証券)JDR
(日本預託証券)
GBC
(ドイツ無記名証券)=
ADR
日本金融機関 株
海外上場のメリットとは?
・厳しい上場基準をのりこえ上場を果たす
ex//
主な上場基準:株主数、公開株時価総額⇒信用力などの向上による企業価値の上昇
・海外市場で外国企業と名を連ねる
⇒世界での知名度が上がる
⇒投資家が投資を行いやすくなる
・単純に出回る株式が増える
⇒資金調達機会の増加
⇒外国通過での調達(海外進出)
先行研究
・阿萬(2007)では、海外上場を株式市場の統合効果と同等の効果がある
として考察を行っていた
・株式市場の統合の効果を考える上での前提として、
投資家が投資判断を行うにあたってホームバイアスが影響している
・特に一般投資家等においては情報収集能力の制約がある
既知の銘柄 未知の銘柄
リサーチクエスチョン
海外市場への 上場 企業の
信用度 上昇
投資家へ の知名度
上昇
先行研究でも述べられていた・・・
つまりは、投資家のポートフォリオに組み込まれやすくなる
→
海外上場によって市場価格(株価)の上昇につながるのでは?イベントスタディ
そもそもイベントスタディとは・・・?
個別企業に関するなんらかのイベントがその企業の市場価値に
どういった影響を与えるかという問題を分析すること、およびその手法。
たとえば・・・
M&A
企業における重要事項の発表 事故や不祥事の発覚
イベントスタディ
t = -250 t = 0
推定期間を設定し、モデル式を推定する
※個別株の日次データだと、一般的に1年の営業日分の 250
日を 推定ウィンドウとすることが多い推定ウィンドウ イベントウィンドウ
イベントスタディ
イベント日におけるAR,CARの算出
AR=Abnormal Return=
異常リターン(過剰リターン)CAR=累積異常リターン(累積過剰リターン)
イベント日以後数日について 個別に超過収益をみたり、
グラフへ図示して検討する。
実証分析
今回、世界の株式市場の中でも上場審査基準が厳しいと言われる
NYSE市場への上場を行った日本企業を対象としてイベントスタディを行った
一般的なマーケットモデルをモデル式とし、推定を行う 説明変数はTOPIXと日経225の2種類
推定ウィンドウは
t= - 250
〜t= -20
モデル式:
R it = α i + β i R mt + ε it
R it
:t日における企業iの日時収益率R mt :t日における株価の指標の収益率
ε it
:t
日における誤差項実証分析
ARは推定ウィンドウから推定したモデル式の予測値からの
実際にとった実現値の超過分(=差)となるつまりはモデル式の残差と等しい
また、
CAR
はAR
を1
日ずつ足し合わせたものである実証分析
NYSE上場の日本企業は15社程度あったが、
イベントウィンドウ
t = -250
〜t = -20
の範囲の株価収益率を抽出できる企 業、対応する経済指標も抽出できる企業を採用 その結果7社が残った
実際にNYSEへ上場した日にちをイベント日に設定 トヨタ自動車 キャノン 野村ホールディングス
日本電産
NTT
ドコモ みずほフィナンシャルグループ 三井住友フィナンシャルグループ 全7社分析結果
実際にARとCARを算出し、推移を図示した結果
-0.015 -0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025
-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
収益率
7社平均(TOPIX)
CAR AR
-0.015 -0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025
-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
収益率
7社平均(日経225)
CAR AR
※横軸はイベントウィンドウ。 1
営業日前から10
営業日後までを図示グラフから
・超過リターンは、初めは大きな変化はないが
ポジティブな影響がグラフから見て取れる
・累積過剰リターンも4営業日目までにかけて上昇傾向にあるが、
5営業日目からはあまり変化が見られない
⇒はじめに立てた、海外市場への上場によって株価は上昇する
という仮定が確からしいことが7社平均のデータからわかる
今後の課題
・NYSE以外の株式市場への上場があった場合どうなるか
・海外市場へ実際に上場した日をイベント日としたが
情報のリリース日をイベント日として分析した場合どうなるか
・全く別の指標から企業価値を測るとどうなるか(トービンの
q
など)・算出されたCARをイベント日ごとに検定し、有意性を確認する
参照
・阿萬(2007)「株式市場の統合効果に関する考察」
・MacKinlay(1997)「Event Studies in Economics and Finance」
・廣松(2011)「情報セキュリティ事故が企業に与える影響の分析」
・
Brown&Warner
(1985
)「USING DAILY STOCK RETURNS
」 データ取得元・日経
NEEDS Financial QUEST
追記(個別企業のAR,CARの推移)
TOPIX
編-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
トヨタ
AR CAR
-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
キャノン
AR CAR
TOPIX編
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日本電産
AR CAR
-0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
NTT
ドコモAR CAR
-0.14 -0.12 -0.1 -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
野村ホールディングス
AR CAR
-0.06 -0.05 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
三菱東京UFJ
AR CAR
-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
三井住友FG
AR CAR
日経
225
編-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
トヨタ
AR CAR
-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
キャノン
AR CAR
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
日本電産
AR CAR
-0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
NTT
ドコモAR CAR
-0.1 -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
野村HD
AR CAR
-0.08 -0.07 -0.06 -0.05 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
三菱東京UFJ
AR CAR
さいごに。
個別企業について、ARとCARを 図示したところ、金融業のみ 非常にきれいに仮説と反対 の反応が見られました。各社 で分析した期間が完全に一 致しているわけではないため、
金融業に限り海外市場へ上 場することで特徴的な反応が あるようです。やはり業種別 にみることが必要そうだと改 めてわかりました。
-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
三井住友FG