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Title ① 低ホスファターゼ症の遺伝子治療−硬組織石灰化不全
に対する新規治療法の開発−
Author(s) 髙橋, 有希
Journal 歯科学報, 122(3): 253‑254
URL http://hdl.handle.net/10130/5979 Right
Description
① 低ホスファターゼ症の遺伝子治療−硬組織 石灰化不全に対する新規治療法の開発−
薬理学講座 髙橋有希
緒 言
低ホスファターゼ症(hypophosphatasia, HPP)
は,組織非特異的アルカリホスファターゼ遺伝子
(tissue-nonspecific alkaline phosphatase, TNALP)
の変異が原因で生じる希少先天性疾患である1,2)。硬 組織の石灰化不全,病的骨折,呼吸困難,痙攣発 作,乳歯の早期脱落を主徴とする。発症時期および 症状により周産期重症型,周産期良性型,乳児型,
小児型,成人型,歯限局型の6病型に分類され,周 産期重症型および乳児型はしばし ば 致 死 性 で あ る3,4)。
HPP に 対 す る 治 療 法 と し て,現 在,骨 親 和 型 TNALP を補充する酵素補充療法が行われ,その生 存率は飛躍的に改善した5,6)。しかしながら,酵素の 半減期が短いことから週3回の皮下投与を継続して 行わなければならないこと,低身長や骨の低石灰化 に関しては治療効果が不明であることなどが問題点 である。
われわれは,ヒトに対し病原性がなく,安全性 が確認されているアデノ随伴ウイルス(adeno-asso- ciated virus, AAV)ベクターの単回投与が,重症 乳児型モデルマウス(Akp2−/−マウス)の生存率を 劇的に改善することを報告した7,8)。しかしながら,
延命効果の得られた治療マウスの大腿骨に関して解 析を行ったところ,形態不整,伸長不全および石灰 化不全,さらに軟骨細胞層の異常増殖などの治癒不 全が確認された8)。これらの問題は直接生命を脅か すものではないものの,患者の QOL を著しく低下 させる要因となるため,改善可能な治療法を検討す る課題が残された。
以上から本研究は,骨局所における ALP 濃度を 上昇させ,大腿骨の形態不整や石灰化不全を改善す るための至適 AAV ベクター投与量を検討し,治療
効果の確認を行うことを目的とした。
方 法
生後1日齢のAkp2−/−マウスの左右大腿四頭筋 に,TNALP を強発現するように構築した AAV ベ クターを1.5×1011,7.5×1011,1.5×1012,4.5×1012 vector genome(v. g.)/body の各用量を筋肉内投 与し,90日齢の時点で解析を行った。解析項目は,
血中 ALP 活性,体重,行動量,大腿骨および下顎 骨の放射線学的解析および組織学的解析とした。
結 果
高 用 量 の AAV ベ ク タ ー(4.5×1012v.g/body)
は,Akp2−/−マウスにおける血中 ALP 活性の持続 的な維持と,それに続く延命効果に加えて,正常な 体重増加,大腿骨および下顎骨の形態不整や伸長不 全の改善が確認された9)。
マイクロ CT 解析により,皮質骨の厚径および骨 梁の正常配列が確認され,骨密度等の海綿骨解析の 各種パラメーターは正常マウスと比較して有意な差 がない程までに改善した。骨強度解析の結果から,
正常マウスと同程度までの力学的負荷に耐えること ができるという結果が得られた9)。
また HE 染色では,低用量で確認された皮質骨内 への線維組織の迷入が,高用量治療マウスでは治癒 しており,線維組織の迷入は確認されなかった。ア ルシアンブルー染色では,成長板軟骨細胞層の配列 不 整 の 改 善 が 確 認 で き た。さ ら に,ALP 染 色 を 行った結果,骨膜および骨梁表面に ALP 陽性領域 が確認された。
一方,骨の形態は改善したのに対して,行動量 の回復停滞および膝関節部に異常構造物の残存が認 められた9)。
考 察
今回の結果より,硬組織に十分な量の ALP を補 充することにより,その形態不整や伸長不全の改善 が可能であることが示唆された。このことから,重 症乳児 HPP 患者の QOL を高められることが期待 できる。今後,血中 ALP 濃度を増加させたことに よる全身および局所の安全性の評価を行うこと,発
研究成果報告
学長奨励研究助成成果報告
歯科学報 Vol.122,No.3(2022) 253
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現効率の向上による投与ベクターを用いることで,
ベクター量を減量しつつ,局所 ALP 濃度を増加さ せることを検討していく予定である。また,行動量 の回復停滞や膝関節部の異常構造物残存の原因を探 索するため,骨組織だけでなく,筋組織や関節軟骨 などの解析も行う予定である。
② タバコ煙刺激と歯周病原細菌感染が歯周病 の発症・進展に及ぼす影響
歯周病学講座 今村健太郎
緒 言
喫煙は歯周病の環境面にお け る 重 大 な リ ス ク ファクターであり,歯周治療の予後においても悪影 響を及ぼすことが知られている1)。また,喫煙者で は非喫煙者と比較して,歯周病原細菌の検出率が高 いという報告がある2)。そこで我々はこれまで,タ バコ煙抽出物(CSC)が遊走能に対し低濃度で促 進,高濃度で抑制という二相性の影響を与え,この ような CSC の作用はPorphyromonas gingivalis感染 によって修飾されることや,CSC がP. gingivalisの 上皮細胞への侵入を増加させることを明らかにし た3)。さらに,CSC とP. gingivalisによる宿主 細 胞 のシグナル伝達系への影響を明らかにする目的で,
様々な細胞活動に関与している mitogen-activated protein kinase(MAPK)について,PCR array を 用いて関連84遺伝子の発現の 変 化,Extracellular signal-regulated kinase(ERK),p38,c-Jun N-termi- nal kinase(JNK)のリン酸化に与える影響を,抑 制実験により細胞遊走能への関与を検討した。その 結 果,低 濃 度 CSC に よ る 遊 走 の 促 進 に 対 す る MAPK の関与が示唆され,さらにその影響はP. gin-
givalisによって変化することが明らかとなった4)。
これらの研究の成果を受け,さらに詳細なメカニズ ムを検討するために micro-RNA(miRNA)に着目 することとした。miRNA は,喫煙,薬物,発癌物 質などの曝露や,ストレスに応答して発現が変化 し5),歯 周 炎 局 所 に お い て も,炎 症 に 関 連 し た miRNA の発現プロファイルが変化することが報告 文 献
1)Whyte MP : Physiological role of alkaline phos- phatase explored in hypophosphatasia. Annals of the New York Academy of Sciences,1192:190−200,
2010.
2)Mornet E : Hypophosphatasia. Orphanet Journal of Rare,4;2:40,2007.
3)Michigami T, Uchihashi T, Suzuki A, Tachikawa K, Nakajima S, Ozono K : Common mutations F310L and T1559del in the tissuenonspecific alkaline phosphatase gene are related to distinct phenotypes in Japanese patients with hypophosphatasia. Euro- pean Journal of Pediatrics,164⑸:277−282,2005.
4)Whyte MP, Zhang F, Wenkert D, McAlister HW, Mack KE, Benigno MC, Coburn SP, Wagy S, Griffin DM, Ericson KL, Mumm S : Hypophosphatasia : vali- dation and expansion of the clinical nosology for children from 25 years experience with 173 pediat- ric patients. Bone,75:229−239,2015.
5)Okazaki Y, Kitajima H, Mochizuki N, Kitaoka T, Michigami T, Ozono K : Lethal hypophosphatasia successfully treated with enzyme replacement from day 1 after birth. European journal of pediatrics,
175⑶:433−437,2016.
6)Whyte MP, Rockman GC, Ozono K, Riese R, Moseley S, Melian A, Thompson DD, Bishop N, Hofmann C : Asfotase Alfa Treatment Improves Survival for Perinatal and Infantile Hypophosphatasia. The Jour- nal of clinical endocrinology and metabolism,101
⑴:334−342,2016.
7)Matsumoto T, Miyake K, Yamamoto S, Orimo H, Mi- yake N, Odagaki Y, Adachi K, Iijima O, Narisawa S, Millan JL, Fukunaga Y, Shimada T : Rescue of se- vere infantile hypophosphatasia mice by AAV-medi- ated sustained expression of soluble alkaline phos- phatase. Human gene therapy,22⑾:1355−1364,
2011.
8)Takahashi AN, Miyake K, Watanabe A, Hirai Y, Ii- jima O, Miyake N, Adachi K, Kasahara YN, Ki- noshita H, Noguchi T, Abe S, Narisawa S, Millan JL, Shimada T, Okada T : Treatment of hypophosphata- sia by muscle-directed expression of bone-targeted alkaline phosphatase via self-complementary AAV8
vector. Molecular therapy Methods & clinical devel- opment,3:15059,2016.
9)Takahashi AN, Tanase T, Matsunaga S, Shintani S, Abe S, Kasahara YN, Watanabe A, Hirai Y, Okada T, Yamaguchi A, Kasahara M : High-level expres- sion of alkaline phosphatase by adeno-associated vi- rus vector ameliorates pathological bone structure in a hypophosphatasia mouse model. Calcified Tis- sue International,106⑹:665−677,2020.
東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ 254
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