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風洞実験風ノイズレベル L wind 推計式の自然風への適用性の検証

第2章 風洞実験に基づく風ノイズレベル L wind 推計式の構築 2.1 はじめに

2.4 風洞実験風ノイズレベル L wind 推計式の自然風への適用性の検証

ブバンド中心周波数分析結果を比較した結果である.両地点ともに 10 Hzの他 31.5 Hz,50

Hz,63 Hz及び80 Hzにピークが現れている.これは,本実験で使用した超低周波音源装置

は,電磁力とコーン紙で構成される一般的なスピーカと異なり,空気圧サーボアクチュエータ とアルミハニカム板を使用している.そのためサーボアクチュエータと振動板の周波数特性や,

振動板の外周部(縁)の影響などにより,例えば 10 Hz の純音を放射しようとした場合に,そ れ以上の周波数において意図しない音が発生することが類似音源に関する文献 [40]で確 認されている.したがって,これらの周波数帯は,音源の影響を受けていると判断し,以後の 検討では,これら以外の周波数帯を風ノイズレベル として考察する.

図 2-14に,測定時間 120 秒における音圧レベル測定値(Leq,120s)の周波数分析結果を棒 グラフに,120秒間のデータを1 秒,3秒,5秒ごとに区切り平均化し算出した平均風速 と それぞれの時間区分ごとに算出した乱流強度 を基に風ノイズレベル 推計値を求め エネルギー平均した結果を折れ線グラフに示す.この図から 2Hz 以上の周波数帯では,概 ね測定値と同様に高周波数側に右肩下がりとなっており,風の平均化時間が長いほど,推計 値は測定値と整合する傾向を示している.しかし,1~1.6 Hz 付近は整合していない.これは,

風洞実験で作られる風洞風の乱れの長さスケールに限界があり,低い周波数における風の 乱れが自然風に比べて小さいことが一因と考えられる.

2.4.3 乱れの長さスケール

前項の考察を検証するため,風洞実験とフィールド実験における乱れの長さスケール

( [m])を検討する.乱れの長さスケール は,風(乱流)に含まれる様々なスケールの渦 の平均的なサイズを表す指標であり,乱れの長さスケール が大きいほど,変動周期の長 い成分を有している.乱れの長さスケール の算出は,測定されたスペクトルのピーク周波 数 peak [Hz]から求める方法を用いる [41].ピーク周波 peak は,低周波数側で一定値を取 るスペクトルが低下し始める箇所であり,ピーク周波数に対応する.乱れの長さスケール と ピーク周波 peakの間には式(22)の関係が成り立つ.

peak

この関係式より求めた風洞実験及びフィールド実験において低周波音出力の無い実測デ ータを用いて乱れの長さスケール の算出を行う.

両実験によるピーク周波 peakの算出例を図 2-15に示す.風洞実験は平均風速 が

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3.03 m/s,乱流強度 が9.2%で 30秒間測定したケース,フィールド実験は平均風速 が

4.81 m/s で 分間測定したケースである.図より風洞実験及びフィールド実験のピーク周波

peakは,前者が7.8 Hz,後者は0.077 Hzと読み取れる.これらの数値を式(22)に代入し乱 れの長さスケール を求めると,風洞実験は0.0567 m,フィールド実験は9.120 mとなる.

この結果より,風洞実験時の乱れの長さスケール は,フィールド実験時に比べ極めて小 さいことがわかる.風洞実験では,一般的に広く普及している乱流格子を用いて乱れを生成 する.乱流格子を用いた場合,生成される乱流強度 は,格子の部材及び開口部のサイズ

(10 cm程度)に依存し,それらと同程度のサイズとなる.一方,自然風の乱れは,周辺の建物 や地形の起伏などから生成されたものであり,乱れの生成源のサイズが大きいことから,風洞 実験に比べて乱れの長さスケール は大きくなる.

本論文では 1~80 Hz の周波数領域の風ノイズレベル に着目しているが,風洞実 験による乱れの長さスケール は小さいことから,低周波数領域で屋外の乱れを再現できて いないことが,フィールド実験結果と乖離が生じた原因と考えられる.

2.4.4 風洞実験とフィールド実験の乱流強度

風洞実験推計式により算出した風ノイズレベル と測定値が低周波数領域で整合し ていないその他の理由として,風洞実験とフィールド実験における乱流強度 の違いが考え られる.

図 2-14に示したフィールド実験結果のうち,平均化時間1秒間ごとに算出したときの乱流強度

は 2.9~19.6 %であり,広範囲かつ比較的大きな値も含まれている.一方,風洞実験における

乱流強度 は,乱流格子により風の乱れを生成する風洞実験の限界から,最大でも9.28 %と小さ な値となっている.

このように,風ノイズレベル 推計式の構築に用いた乱流強度 の違いも,推計値と フィールド実験値で整合がとれない一因と考えられる.