第2章 風洞実験に基づく風ノイズレベル L wind 推計式の構築 2.1 はじめに
2.5 フィールド実験風ノイズレベル L wind 推計式導出の試み
2.5 フィールド実験風ノイズレベルLwind推計式導出の試み
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式(23)及び(24)をフィールド実験風ノイズレベル 推計式と呼ぶこととする.
図 2-21~図 2-23に風ノイズレベル 測定値,風洞実験推計式を用いて計算した推 計値及びフィールド実験推計式による推計値の比較結果を示す.
三つの時間帯の全体を俯瞰するとフィールド実験風ノイズレベル 推計値は風洞実 験風ノイズレベル 推計値と比較し測定値との対応が良い.一方, 図 2-21の20 Hzの ように,10 dB程度の差が生じる瞬間もある.
また,風洞実験風ノイズレベル 推計値では測定値と整合がとれていなかった 1.6Hz 以下の周波数帯においてフィールド実験風ノイズレベル 推計値は測定値との整合が 良く,改善されていることが分かる.
ただし,本検討で使用したフィールドデータは,風洞実験風ノイズレベル 推計式の 検証用に測定した一つのサイトにおける短時間の測定結果によるものである.フィールドデ ータに基づく風ノイズ推計式の妥当性を証明するためには,複数のサイトにおいて,より多く の風ノイズを測定し検証する必要がある.
2.6 まとめ
本章では,低周波音と風速の同時測定による風洞実験の結果に基づき,風速レベル及び 低周波音計マイクロホン出力と,平均風速 及び乱流強度 の関係について検討した.
続いて,風洞実験データを基に風ノイズレベル 推計式を構築する手法について提案 するとともに,風洞実験風ノイズレベル 推計式のフィールドにおける自然風への適合 性を検証した.さらに,測定値を基にフィールド実験ノイズレベル 推計式の導出を試み た.その結果以下の知見を得た.
1) 風洞実験の結果,風速レベル値は,平均風速 の増加に伴い増大し,さらに乱流強 度 の増加によっても増大する傾向を示す.
2) 低周波音計マイクロホン出力のパワースペクトルの平均値は,平均風速 及び乱流 強度 の増加に伴い風ノイズレベル も増大する.また,その傾向は周波数によ り異なる.
3) 風洞実験により得られたデータを基にカーブフィッティングにより求めた風ノイズレベル 推計式は,周波数を変数とする負のべき関数で表すことが可能である.
4) 風洞実験風ノイズレベル 推計式の係数は,平均風速 と乱流強度 を変数 とする一次式で表すことができる.
5) 平均化時間の長い5秒による風洞実験風ノイズレベル 推計値はフィールド測定 値と整合するものの,1.6Hz以下の周波数帯において測定値との乖離がみられる.
6) 周波数帯1.6Hz以下におけるフィールド実験ノイズレベル 推計値と測定値の乖
離理由として,風洞実験とフィールド実験では風の乱れの長さスケール と乱流強度 が異なることによるもの考えられる.
7) 風ノイズのフィールド測定値を平均風速 と乱流強度 の階級別に分類して整理す ると,対数型の関数形で推計式化することができる.
8) フィールド実験風ノイズレベル 推計式による推計値とフィールド測定値を瞬時値 で比較すると,瞬間的に差が大きくなる場合があるものの,全体的には整合性が良い.
9) フィールド実験風ノイズレベル 推計式の推計値は,1.6Hz 以下においても測定 値と整合する.
以上の結果,風洞実験風ノイズレベル 推計式は,平均化時間の長い 5 秒による推
2.6 まとめ
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計値が測定値と整合するものの,1.6Hz 以下の周波数帯において測定値との乖離がみられ る結果となった.その原因として,風洞実験とフィールド実験では風の乱れの長さスケール と乱流強度 が異なることによるものと考えられた.そこで,1.6Hz以下の周波数帯におけ る推計精度を向上させるため,フィールド測定データを基に風ノイズレベル 推計式の 構築を試みた.その結果対数型の推計式が導出され,測定値との整合性が良いことも確認さ れた.しかし,フィールド実験風ノイズレベル 推計式の導出に用いた実測データは,限 られたサイトにおける短時間の測定に基づくもので,フィールド実験風ノイズ推計式の妥当性 を証明するためには,複数のサイトにおいて,より多くの風ノイズを測定し検証する必要があ る.
なお,本論文で導出した風洞実験風ノイズレベル 推計式も,適用条件として2Hz 以 上の周波数領域で,平均風速 が5 m/s以下かつ乱流強度 が9.28 %以下の範囲内で あれば,十分適用できるものと考える.