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岩石惑星の大気

ドキュメント内 地球惑星圏物理学 (ページ 52-55)

第 4 章 惑星大気 45

4.3 惑星大気の概観

4.3.1 岩石惑星の大気

表4-1.地球型惑星大気の物理量。岩波書店『比較惑星学』より転載。

表4-1に太陽系の岩石惑星の大気の諸物理量を示す。水星はエクソベースが地表面に相当 するような希薄な大気しか持たないため、ここでは除外した。金星・地球・火星の順に地表 温度が高くなっているが、これは太陽からの距離の違いに加えて、大気量の違いによるもの である。金星は地表圧力が90気圧程度の厚い大気を持つ一方で、火星は地表圧力が小さい希 薄な大気しか持たない。温室効果を担う大気量の違いが地表温度に大きく寄与している。特 筆すべき点として、金星のボンドアルベドが極めて高いことが挙げられる。金星大気中の雲 によって太陽放射の大部分は反射され、地表温度に寄与しない。アルベドを加味した実効的 な惑星の平衡温度は、金星より地球のほうが高い(4-1の有効放射温度が実効的な平衡温度 に対応)。従って、金星が地球より高い地表温度をもつ要因は、大気の温室効果によるもので あるということができる。金星の地表温度は水の臨界温度(647 K)より高く、また、火星の 地表圧力・温度は水の三重点以下である。従って、地表で液体の水を安定に保持できる環境 をもつ太陽系の岩石惑星は地球のみである。

4.3. 惑星大気の概観 53 金星

図4-9.金星大気の温度構造。(a)高度と温度の関係。破線は探査機による計測で、実線は探 査の結果からつくられた標準大気モデルである。数字は緯度を表す。(b) 圧力と温度の関係。

破線は地球大気を比較のためプロットしたもの。数字は緯度を表す。

金星大気は高温高圧のCO2大気で特徴づけられる。化学組成は主にCO2: 97 %, N2: 3 % である。地表圧力は9.2 MPa, 地表温度は735 Kである。

図4-9に金星大気の構造を示す。高度50-65 kmに全球を覆う雲の層があり、0.78という金 星の高いアルベドをつくりだしている。金星の高い地表温度は、主に大量に存在するCO2と、

わずかに存在するH2Oの温室効果によるものである。雲の下の下層大気の温度分布はほぼ断 熱温度勾配に従う。雲層の上の中層大気は地球のような温度のピークをもたず、成層圏と中 間圏に区分されていない。金銭の熱圏温度は100-300 K程度と、地球の熱圏温度800-1300 K と比較して非常に低い。これは金星大気の主成分であるCO2の赤外放射による冷却によるも のと考えられている。

火星

図4-10.火星大気の温度構造。(a) 高度と温度の関係。破線は探査機による計測で、実線は 探査の結果からつくられた標準大気モデルである。(b) 圧力と温度の関係。破線は地球大気 を比較のためプロットしたもの。

火星大気は希薄なCO2大気で特徴づけられる。化学組成は金星同様、主にCO2: 95 %, N2:

2.7 %である。地表圧力は平均で6 hPa, 地表温度は平均で210 Kであるが、金星大気と異

なって著しい日変化・季節変化がある。低温の火星大気中では主成分であるCO2が凝結する ため、大気圧は大きく時間変動する。

図4-10に火星大気の構造を示す。火星大気の特徴は、大気中の塵によって温度分布が強く 影響を受ける点である。下層大気の温度分布は断熱温度勾配と比較してずっと等温に近い温 度分布が観測されている。これは、大気中の塵が太陽放射を吸収することで、大気上層部を 暖めているからである。火星大気中の塵の存在量は大きく時間変化するため、大気の温度分 布も大きく変動する。比較的塵が少ない条件下では下層大気の温度分布は断熱温度勾配に近 づく。中層大気は金星と同様に温度のピークをもたず、地球のような成層圏と中間圏の区分 はない。火星の熱圏温度は平均的には150 K程度であり、太陽活動が活発な時期は300 Kに 達することもある。火星は金星と同様CO2大気をもつことから、地球と比べて熱圏温度は低 温である。

4.3. 惑星大気の概観 55

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