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加群

ドキュメント内 代数系への入門 (ページ 115-118)

第 5 章 加群 115

5.1.1 加群

加法群(M,+,0)のことを加群(module)ともいう。

命題5.1.1. 加法群Mの自己準同型全体End(M)は和として関数の和を、積として合成を与

えることにより単位的環となる。

これは例3.4.6でみたとおりである。

定義5.1.2. Rを環とし、Mを加法群とする。環準同型

ρ:R→End(M)

が一つ指定されたとき、Mを左R-加群(leftR-module)という。

Rが単位的環のときは、ρは単位的環準同型であることを要請する。

群の場合を扱った定義3.4.2とくらべれば、左R-加群Mとは「環Rの加法群Mへの環と しての作用が指定されていること」に他ならない。

定理1.1.22によればρ:R→End(M)Map(M, M)は R×M →M, (r, m)7→ρ(r)(m) なる対応を与える。ρ(r)(m)をmrを作用させた結果といい、

r•m:=ρ(r)(m)

であらわす。のちのちは省略するが、最初のうちははっきりさせるために書いておく。

問題5.1. (R,·,1)を単位的環、(M,+,0)を加法群とする。RM への(左)作用

:R×M →M, (r, m)7→r•m

によりM が左R-加群になる必要十分条件は、

1. r•(m1+m2) =r•m1+r•m2

2. (r1+r2)•m=r1•m+r2•m 3. (r1·r2)•m=r1(r2•m) 4. 1•m=m

が成り立つことであることを示せ。(それぞれρ(r)End(M),ρと加法とのコンパチビリティ、

ρと積とのコンパチビリティ、ρと単位元のコンパチビリティを言い換えたものである。)

定義5.1.3. (R,·,1)を単位的環、(M,+,0)を加法群とする。RM への右作用

:M×R→M, (m, r)7→m•r

が与えられたとき、この作用によりM が右R-加群になるとは、次の四つを満たすこと。

1. (m1+m2)•r=m1•r+m2•r 2. m•(r1+r2) =m•r1+m•r2 3. m•(r1·r2) = (m•r1)•r2

4. m•1 =m

問題5.2. M が右R-加群であることと、環準同型RopEnd(M)が与えられていることと が同値であることを示せ。

ここにRopとは、加法群としてはRと同じであるが積を Ropr:=r·Rr で定義した環である。

Rが可換環のときにはR=Ropであるから左R加群と右R加群は同じ概念となる。この

時は単にR-加群という。

定義5.1.4. Rが体のとき、R-加群をR線形空間という。

線形代数の教科書を調べて、線形空間の定義が「加法群であること、および問題5.1の4つ の公理を満たすこと」であることを確認してみてほしい。

問題5.3.Rは、左(右)からRの元をかけることにより左(右)R加群であることを示せ。

定義5.1.5.R加群M に対し、そのR部分加群Nとは(1)部分加法群であって(2)Rの 作用に閉じているもの。すなわち

1. m1, m2∈N ⇒m1+m2∈N,さらに 0∈N 2. r∈R, n∈N r•n∈N

となるもの。

問題5.4. Rの部分集合Sが左R部分加群であることと、SRのイデアルであることが同 値であることを示せ。

以下、R加群といったら左R加群を指すものとする。

5.1. 環と加群 117 定義5.1.6. Rを単位的環とし、M1, M2R-加群とする。M1からM2へのR-加群としての 準同型とは加法群の準同型

f :M1→M2

であって、Rの作用とコンパチブルなもの。すなわち f(r•1m) =r•2f(m) が全てのr∈R,m∈M1について成り立つこと。

さらにf が逆写像を持ち、それがR-加群の準同型であるときにfを同型写像といい、M1M2R加群として同型であるという。

問題5.5. R加群準同型f :M1→M2が同型である必要十分条件は、全単射であることであ ることを示せ。

R加群の準同型定理は次の通りである。

定理5.1.7. M を左R加群とする。M 上の同値関係M に指定された全ての演算とコン

パチブルである、すなわち

m1∼m2, m1∼m2⇒m1+m2∼m1+m2, r•m1∼r•m2

であるとする。(単位元や単項演算についてはコンパチビリティは自動的に成立する、命題

2.4.19の証明同様に示される。)

このとき、[0]M の左部分R加群となる。

逆に、M の左R部分加群N に対し、

m1∼m2⇔m1−m2∈N

なる二項関係を定義するとこれは同値関係で、Mに指定されたすべての演算とコンパチブ ルである。

5.1.8. M を左R加群、N をその左R部分加群とする。M/Nには q:M →M/N

R加群準同型とするような加群の構造がただ一通りに入る。具体的には、

[m1] + [m2] := [m1+m2], r•[m] := [r•m]

となる。

5.1.9. f :M →Mを左R加群準同型とするとき、Kerf ⊂Mも左R加群、像f(M)⊂M も左R加群であり、

M/Kerf →f(M) なる同形が与えられる。

5.1.10. fが単射であることと、Kerf = 0とは同値。

証明は、群や環の準同型定理の証明と大差ない。

問題5.6. 上の定理とその系を証明せよ。

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