第 3 章 群 80
3.4 作用
3.4 作用
集合Sの集合Xへの作用とは
f :S×X →X
の形の写像のことであった。定理1.1.22によれば、これを与えることと ρ:S→Map(X, X)
を与えることとは同値である。s∈Sに対しρ(s) :X →Xであるからρ(s)(x)∈X。これを s·x:=ρ(s)(x)
と表記することが多い。
例 3.4.1.
Xを集合、SXをX上の対称群とする。
SX×X →X, (σ, x)7→σ(x) を与える。
Kを体とする。行列環と縦ベクトルの掛け算は、
GLn(K)×Kn →Kn, (A,x)7→Ax を与える。
定義3.4.2. 集合S, XとSのX への作用
ρ:S→Map(X, X) が与えられているとする。
1. Sがマグマ(S,◦S)であるとき、ρが「マグマとしてのSのXへの作用」であるとはρ が
(S,◦S)→(Map(X, X),◦)
なるマグマ準同型であることである。さらにSが半群であるとき「SのX への半群作 用」という。
2. Sがモノイド(S,◦S, eS)とする。ρが
(S,◦S, eS)→(Map(X, X),◦,idX)
なるモノイド準同型であるとき、「SのXへのモノイド作用」という。
3. Sが群(S,◦S, eS)とする。ρが
(S,◦S, eS)→(Map(X, X)×,◦,idX) なる群準同型であるとき、「SのXへの群作用」という。
問題3.6. 定義3.4.2と同じ設定とする。以下を確かめよ。
1. Sがマグマ(あるいは半群)であるとき、ρがマグマとしての作用(あるいは半群作用)
である必要十分条件は
AB ∀s1, s2∈S,∀x∈X, ρ(s1)(ρ(s2)(x)) =ρ(s1◦Ss2)(x) をみたすことである。言い換えると、
s1·(s2·x) = (s1◦Ss2)·x となることである。
2. Sがモノイドであるとき、ρがモノイド作用となる必要十分条件は、上のABに加えて AC ρ(eS) = idX
を満たすことである。言い換えると
∀x∈X, eS·x=x を満たすことである。
3. Sが群であるとき、ρが群作用であるとは上に加えて AD ρ(s−1) =ρ(s)−1
が成立することである。
しかし、命題2.4.20により、Sが群であるときにはABとACからADは従うことが わかる。
Xに代数構造が入っていると、自己準同型(endomorphism)モノイドEnd(X)が定義でき る。例えばXが加法群であればEnd(X)はXからXへの準同型の集合であり、Xが体K上 の線形空間であればEnd(X)はXからX自身への線形写像の全体である。End(X)は合成◦ と単位元idXによりモノイドとなる。End(X)の可逆元の集合End(X)×は命題2.4.9により 群となる。この群をAut(X)といい、Xの自己同型群(automorphism group)という。
例3.4.3. Kを体とする。Xをn次元縦ベクトル空間Knとするとき、EndK(X)はKnからそ れ自身へのK線形写像の全体である。n次正方行列の集合をMn(K)であらわす。A∈Mn(K) に対し、AをXの元に左から掛ける写像を
LA:X →X, x7→Ax と表すと、
ρ:Mn(K)→EndK(X), A7→LA なる作用が定まる。
ρが一対一写像であることは、線形代数でよく知られた事実である。
Mn(K)は環である。EndK(X)も環であり、ρは同型となっている(後述???)。
AutK(X) := (EndK(X))× は加逆な自己準同型写像の全体であり、GLn(K)と同型になっ ている。
3.4. 作用 87
定義 3.4.4. Xを加法群とし、Sをマグマ(半群、モノイド) とする。マグマ(半群、モノイ
ド)準同型
ρ:S→End(X)
をSの加法群Xへのマグマ(半群、モノイド)作用という。Sが群であるときは、モノイド準 同型
ρ:S→End(X)
をSの加法群Xへの群作用(group action)という。このとき、XをS-加群(S-module)とい う。ρをSのX における表現という。
ρの像はAut(X)に入る(例えば命題2.4.20をf =ρに対して使えばよい)ので、群準同型
ρ:S →Aut(X) をSのXへの群作用という、といっても良い。
上の定義で、Xは加法群としたが、線形空間としても同様の定義がなされる。あるいはモ ノイド、群としてもよい。
例 3.4.5. (S,·)をマグマとする。a, b∈Sに対してLa(b) :=a·bとおくとLa ∈Map(S, S)。
こうして与えられる
ρ:S→Map(S, S), a7→La をSの左正則作用(left regular action)という。
ρが(S,·)→(Map(S, S),◦)なるマグマ準同型であるという条件を記述すると La·b =La◦Lb
すなわち
La·b(c) =La◦Lb(c) であるが、これは
(a·b)·c=a·(b·c)
と書き直せる。すなわち、(S,·)が半群であることとSの左正則作用がマグマ作用であること とは同値である。
例 3.4.6. (M,+,0)を加法群とする。f, g∈End(M)に対してf+End(M)g∈End(M)を (f+End(M)g)(x) :=f(x) +M g(x)
で定義すると、加法群になる。
一方、合成◦により(End(M),◦,idM)はモノイドである。
f◦(g+h) =f◦g+f◦h, (f+g)◦h=f◦h+g◦h が証明できるので、End(M)は環となる。
MがK線形空間であるときも同様のことが言える。特にEndK(Kn)は環である。EndK(Kn) とMn(K)の間には自然な一対一対応があり、これが行列の集合が環となる理由である。
例3.4.7. (M,+,0)を加法群とし、(M,·,1)を同じ集合に入ったモノイドの構造とする。La(b) = a·bとし、
ρ:M →Map(M, M), a7→La
を考える。このρが
ρ:M →End(M) (⊂Map(M, M)) なる加法群の準同型である条件を書き下してみると二つの条件:
1. ρの像がEnd(M)に入る 2. ρが準同型である に分けられる。
前者はρ(a) :M →Mが単なる写像ではなく準同型であるということであるから
ρ(a)(b+c) =ρ(a)(b) +ρ(a)(c) ということであり、言い換えると
a·(b+c) =a·b+a·c であることである。
後者の条件は
ρ(a+b)(c) = (ρ(a) +ρ(b))(c) すなわち
(a+b)·c=a·c+b·c である。分配法則はこのようにして自然に現れる。