〈
資 料
〉大 学
カ
リ
キ
ュラ
ム
改 革
に
関 連
す
る
芳 香
料 事
業
会
計
・損 害
保 険
会
計
中 原 章 吉
1
. は じ め に激 減 しは じめ た
18
歳
人 口 に , サバ イバ ル 時 代 に突入 する 大 学に と っ て , 北 海 道 ,埼 玉,愛
知,福
岡で は余
剰定 員
が続
出 し た とも
い わ れ は じめ , 地 方 国 立 大 か ら私立 大, 短 大 まで消 滅 か吸 収の対 象 に な るの は どこ か , ともい わ れ て 久 しい 。18
歳 とい う大 学 進 学 年 令の 人口 は平 成4
年 (1992
年 )の205
万 人の ピ ー ク以 降, 減 り続 けてい る 。 主と して第2
次
ベ ビ ー ブ ーム の影 響
で ,18
歳人 口 は昭 和60
年
(1985
年 ) 代 に入 っ て急膨張
し, 大 学の 数 も急増 し た。文 部
大 臣の 諮 問 機 関で ある大 学 審 議 会 高等
教育
計 画 部 会の 報 告 は, 社 会や 国民 の多 様
な 要 請 に適 切に対 応 してい る と7
年 も前 (1991
年 )に 言っ て い る が,大 学
の 企業 化
や多角 経 営
が多
くみ られ る今
日,確
固 た る理念
・目標
に も とつ く もの とい い 難い 。大 学の 行な うビ ジ ネス は, 人 材 派 遣 会 社, コ ン ピュ ー タ ・ソ フ トな どの 販
売
, ク レ ジ ッ ト ・カ ー ド発行
,食
堂 ・売 店
・警 備
な どの サ ー ビス会社
, 不動
産 ビ ジ ネス な ど拡 大 してい る。 しか し ,大
学 ビ ジ ネス が 実態
と して 利 益 (収 支差額が プ ラス とい う意味の )を あ げて い る 大 学 は ほ と ん どない とい う。 大 学 に ビ ジ ネス向
きの人 材 がい ない か ら だ という意 見
が これ につ い て ある のもう
なず ける。大 学経
営の 最 大 の財 源で ある18
歳 人 口は す で に 下 り坂 に向
っ て い る。 有効
な 生 き残 り策 を講 ずべ きだ とい うの は, か な り以前
か らい わ れ て き たこ とで 一87
一駒沢
大学経済
学 論 集第
29
巻 第3
・4
合 併 号あ り
,す
べ て の大学
の 現状
認識
であ
る。 しか し, 生き残
り策 に万全
な妙
手は な く, どの 大 学 もやれ る こ と は何で もや る とい うの が現
状で あ り, 厂特
色 ある 大 学づ く り」
が 各 大 学 が力 を入れ て い る こ とで もある 。媚ん ば か りの 生 き残 り
策
は花 ざか り とい える ほ どで ある。 た とえ ば ,大
学 案内
の パ ン フ レッ トは若 者 向
けの グ ラ ビ ア 雑 誌 そこ の けで あ り,大 学の テ レ ビCM
や プロ モ ー シ ョ ン ビデ オ も あた り ま えで ある。 イメ チ ェ ン作 戦の 一 つ に校 名
その もの を変
更 する もの も あ る。 こ れ で企 業 コ ー ポ レー ト ・ア イ デ ン テ ィ (CI
)に ならっ たユ ニ バ ー シ テ ィ ・ア イデ ン テ ィテ ィ (UD
が 効果 を あ げる もの で も な く, マ イン ド ・ア イデ ン テ ィ で ある大 学構 成 員
の 意識 改
革こ そ求
め られ る が , 実 際 に は議 論 倒れ に終
るの が 実態
であ る。も う一 つ の 生 き残 り
策
は, 学 部 新設 (短大の 学 部へ の 昇 格 転換 も含め て) あ る い は で きるだけ先 端 的
な印象
を与
える学 部
へ の学 部
の名
称 変更
で ある 。 い ずれ も18
歳人 口 対策
の 思惑
が 透 けて み える。 対 策 と し て , キ ャ ン パ ス に ゴ ル フ 練 習 場, 車の 運 転 練 習コ ース , ス テ ー キハ ウ ス を作っ た短
大, レ ン ガ 造 り校 舎
など欧 米
調
に コ ー デ ィネ
ー トした短大
も話
題 と な っ た。平 成
2
年 (1990
年 ) に 厂臨 時定
員増」
を実 施 し た私立 大 学 はそ れ が大 学 財 政に プ ラス と し なが ら も,合格
の難 易度
(偏 差 値 )を落 と さ ない よ うに 苦 心 し た。 私立大
の 入学
難 化 はべ つ に大
学そ の ものが よ くな っ た か らで は ない と 意見 が あっ た。受
験生 の増 加 に対す る私 大 の定
員 しぼ りこ み に私
大 入学 難 化
の 原 因が あ り,5
教 科7
科 目と3
教 科の 比較
に無 理が あ り, 大学
の 内 容 と国 立 大 の イン フ ラ と教 員の質の 高 さを こ の意 見 理 由 と して い る。 そ して , そ の後
国 公 立大
の推 薦
入学
や セ ン ター試験 免 除
や3
教 科
や2
教 科 移行
などの 入 試 改革
に よっ て 国 公 立大
の カ ム バ ッ ク は なっ た と, こ の意
見 は い っ て い る 。 た し か に国公 立大
の 現 状 は , その カ ン バ ッ ク を示 して い る 。 しか し, この 意見 は 間 違っ て い る。 その 主 因はバ ブ ル 崩壊
に よ る経 済 的
理由
の それ にす ぎ
な い o私 大の 受 験生 の 大 学 選 択の フ ァ ン ダ メ ン タ ル ズ は (
1
)大 学 の イ メー ジ , (2
)偏 差値
, (3)大学
の特 徴
, (4)知 名 度
, (5)就
職 状 況, (6 )交
通 の便 , (7)キ ャ ン パ ス ー88
一大 学 カ リキ ュ ラ ム 改 革に関 連 する 芳香 料
事 業
会 計 ・損害 保険 会計 (中原 ) の 環境, (8 )教授 陣 と カ リキ ュ ラ ム で あ る とい わ れ る。 受 験 生 は 優 秀な 女子 を 除 き大 学 の 特 色よ り偏 差 値の 入 りや すい とこ ろ に 入 る とい わ れ る。 大 学 は 入 学 と就 職 に力を 入 れ た とこ ろ が 成 功 して い る とい わ れ た が ,最 近は入 試 も多 くの 大学
で多様
化 し,OB
人脈
な どを含
め た 総 合 的な パ ワ ー を もつ 大 学 は 強 い 018
歳 人 口 は ピー クの 平成
4
年
(1992
年 ) に205
万 人で , それ か ら下 り坂 とな り平成
12
年
(2000
年 ) に は27
パ ーセ ン ト減
っ て151
万 人 に なる。 それ 以 降 も18
歳 人口 は減 りつ づ ける。 将 来 平 成12
年 時 点で , 昭和60
年 (1985
年〉 と同様
18
歳
人口 の ほ ぼ半 数
が大 学
・短大
・専 修 学校
に 入る とす
る と, 入学者
総 数 は約75
万5
千 人 と な る。 こ の 約75
万5
千人 を大
学 ・短 大 ・専 修 学 校 の 入学 者
に振 り分 けて み る と, (1)入学 者
は第
1
に 大学
を男
女 比率
6
対
4
で志
望 し, (2)短 大 に は大 学 に 入 れ な かっ た 女 子 の う ち20
パ ー セ ン トが 入 り , (3
)大学
・短 大に 入れ なか っ た 者が専 修学
校 に入 る と仮定
する と, 大 学の 収 容 力 (定 員 × 定 員 超 過率 )は すべ て満 た さ れ , 入学
者 数は約
42
万9
千人,進
学 率 は28
パ ー セ ン トになる とい わ れ る。短 大
は,18
万3
千 人の収容
人員
に対 して ,14
万8
千 人 が 入学 者 と な る と予 想す る と, 約3
万5
千人 の 収 容 力 が ,学 校 数 に して 約90
校以 上 が 必 要な くな る という
こ とに なる。 専修 学校
は収
容 数28
万7
千人 に対
して 入学 者
は18
万人 で ある か ら,収容 能力
の40
パ ーセ ン ト弱の10
万7
千 人 が消
えて な く な るこ とに な る。 そ して2005
年 に な る と, 短 大の130
校
分の 約5
万2
千 人 , 専 修 学 校 で は全
体の6
割 が 不 用 に なる とい わ れ る。こ の よ
う
なデ ー タをみ る と,2000
年
以降
は ,18
歳
人口 の減 少
の結
果 と し て ,合格 率
の向
上 に よっ て ,大 学
は無 試験
時代
に突 入す
る とい わ れて い る。2000
年 時点
の大
学 志望
率 を50
パ ー セ ン ト と予 想す る と, 合 格 率 は99
パ ーセ ン ト, 現役
の志望
率 を,1990
年 度の 実 績値
49
パ ーセ ン トか ら推 定
して60
% に 設定
して み る と,合
格率
は83
パ ー セ ン トとなり
, い わ ゆ る 中堅以 下の 大 学 は ほ とん ど無 試 験 に な る とい う予 測 す ら あ る。 上 位20
校 の 国 公 私立大 を除い て , 誰でも大 学
に 入学
でき
る。偏
差値
が 下 降 し, ラ ン キ ン グの変 更
も生 ず 一89
一駒
沢 大 学経
済 学論 集
第29
巻 第3
・4
合併 号 る 。 そ して定 員割
れ の大 学
・短大 も
で る。18
歳 人口の 減 少 が 進 むにつ れ, 大 学 志 望 者 の絶 対 数が 減 り, 短 大 な ど へ の 進 学率
低下が 加 速 され ,4
年
制 大学
へ の 進 学 志 向が 強 ま り, 短 大 の4
年
制 大学
へ の昇格転 換
志向
が強
まっ た 。短
大は情 報 処 理 , 福 祉, 特 殊 技 術 分 野 に職 業専
門化 を 迫 ら れ て い る。4
年
制大学
で は ,現在
の就 職 難
の も とで , 上位
国公 私 立大
以外
は就 職が 不利
で あっ て ,就 職 有利
は ウ リモ ノ と し て使 えない 。 そ こ で , 教 育の 充 実 こ そ が学
生獲得
の有 効
な手 段
で ある こ とが 考 え られ る 。 大 学か らの情 報 に何 を 望 む か の予 備 校 調 査で , 教 育 内 容 を知 りたい とい う要 望が トッ プ だっ た という
結 果 が その 根 拠の 一 つ だ とい う。 教 育に ま じめ に取
り組
む大学
が 生 き残
り, 研 究 レベ ル を 上 げる大 学が 研 究 成果 に よ っ て 社 会に よ っ て支
持 さ れ る とい う。推 薦
入学
制 度 を例 に とっ て も,私
大入学 者
の4
人 に1
人 は推薦
入学で あ る とい われ る。 し か し,無 試 験
入学 時代
に こ の方法
は効 果的
と は考 え
ら れな い 。 ま た ,社 会人 教 育 も大 学 本 来の 使 命 に沿 うとい え,18
歳 人口 の穴 埋 め に は疑 問 とい わ れ て い る 。 理 由は, 日本が学
校 歴 社 会で学
位 歴 社 会の ア メ リ カ と は違う
という
こ と で ある。保
育科
が 人気 学
科 とな る予 測 もある。 こ れ は18
歳人 口の 減少
で若 年
労働 力
の 激減
す る と予 測 さ れ , 女性 ・老人 ・外 国人労 働力
が その 不 足 を補う
と考
えら れ る か らで ある 。大 学
の 生 き残
り ,大学
間競 争
に 勝ち抜 くに は どうすべ きか。 大 学 関 係 者の 意見 や 提案
を例 示 して み る と次の よ うな ものが あ る。 その 第1
に は,M
&A
が ある。 総 合 大 学に よ る 主 に地 方 短 大 の系
列 化, 吸 収 ・合併 で ある 。 また,4
年 制 大 学 の 再 編で ある。 第2
には, 大 学 の ラ ン クの 変 動, と く に 中 堅 大 学 の ラ ン ク の変 動
で ある。第
3
には ,危
ない大 学
,苦
しい大学
は どこか。 まだ 社会
的評価
の得
ら れて い ない新
設大 学
, 小 規 模 な単
科 大 学 だ とい わ れる 。 た だ し,独 裁 的 経 営 者 の い る大 学 の ほ うが有 利 だ と も考え ら れ てい る。 第4
に は ,力
あ る学 長
の リ ー ダー シ ッ プの待
望で ある 。大 学
の経 営 組織
を三分 類 す
る と , (1)創 業
者 タ イ プ (存命の 創業者 自 身が学 長 ・理事 長 職 にある大 学 ), (2
) 世 襲 タ イ プ (創 業者 の 子 弟が 経 営 者で あ る 大学 〉, (3 )法
人 タ イ プ (創 業 者 と血 縁の ない 経 営者
が経営す る大 学)
となる 。創 業 者
タ イプには, ワ ン マ ンで視 野 一90
一大 学 カ リキュ ラム 改 革に 関 連 す る芳 香 料事 業会 計 ・損 害 保 険 会 計 (中 原 ) が
狭
い , 世 襲タ イ プには, 無能
者 が トッ プにな る, 法 人 タ イ プに は,統
一 的 リー ダー を 欠 くという
欠 点が 出る こ とが よ くある 。 サ バ イバ ル時代
の学 長
と は, (1)30
代
〜40
代 に学
問 的 業績
を上 げて い る(2)政 治 力 ・説 得 力
・企 画力
が ある(3)教 育 目標
を もっ てい る という
人, とい われる。多
くの わ が 国の大学
は 見 識 な く無 能
で無 責任
だ という批 判
が あ る。 こ の 中で の サバ イバ ル に生 きる 学 長の リー ダ ー シ ッ プ が 要請
さ れ て い る。サバ イバ ル に
危 険
性の あ る大
学 は,新
設大学
と 女 子大
学 と宗
教大
学 だ とい う意 見が ある。 その 理 由は専 門 経 営 者が い ない か ら だ という
。 新 設 大 学 に は もちろ ん だ し,宗
教大 学
は教団
に頼
りっ ぱ な しだ か ら だ とい う。 しか し, 宗 教 大 学 は教 団か ら財 務 的に独立 してい て教 団 に頼 ろ うに も, すで に規 模 が教 団 を こ えて い る とこ ろ も多
く, こ の批 判は見 当はずれ で ,宗
教大 学
と呼
ばれ る大学
を知
ら ない 不 用意
な発
言であ
る。 も ちろ ん宗 教大 学
の財政 不安定
なの は 理 事 会が大 学の 財政 運 営 に専 門 家が す く ない こ とは い え る が , そ れ は民主 的 に運 営 さ れ てい る多
くの 大 学で み ら れ る こ と。 総 合化
が大学
サ バ イバ ル の 一 つ の要 点
とい わ れ る。 そ して , 教育 内容
が充実
して い て , 研究活
動 が前 進
的 ・積 極 的で あれ ば大 学 サバ イバ ル競 争 に勝て る とい う。本
稿で は, こ うい っ た意識
の もとで の 大 学 カ リキ ュ ラ ム 改革
と財務
お よび そ れ に関 連 した芳香 料 事 業 会計
と損 害
保 険 会計
を検討
し紹 介
する こ と を 目的
と す る。2
.学
校
法
人
の財 務 分 析
日本 私立大 学 連盟 学 校 会 計 研 究 会の
「
学校
法 人基 準 」 (1964
年 )や 学 校 法 人財務
基準 研
究 会の 「報 告
一学校 法
人 会 計 基 準」 (
1970
年)
の 設定
を省
み な が ら,1971
年 (昭和46
年 )に 「学 校 法 人 会 計 基 準 」 が 企 業 会 計 の 損 益 計 算 思考
をモ デ ル とし て作 成
さ れた。1987
年 (
昭和62
年)
に「学校 法
人会 計 基
準」
は その根
幹
であ
る基本 金
を 中 心に改
正 さ れ た。1971
年(
昭 和46
年 ) 当時
, 経済
発 展が 加 速 し, その恩 恵 と して 高 等 教 育 が 期待
さ れ,進 学率
は 上昇 した。 私立大学
は, それ らの志 願者
の大
部 分 を受
一91
一駒 沢 大 学経 済 学 論 集
第
29
巻 第3
・4
合併 号 入れ る ため に ,新
設 あるい は増 設 を 図 っ た。 しか し, その財
源 は ほ と ん ど学 生 納 付 金 と借入金に依 存 す る以外 な かっ た 。 とはい え, 授 業 料の 値上 げ は 政 治 的 環境
と も絡み あい 大 学 紛争
の標 的
の ひ とつ と さ れ たの で ある。 授 業 料 の 値 上 げが 不 可 能 となっ た 財 政 的 虚弱 体 質
に , 借入 金 利息
を は じ め 人 件費
な ど の諸経 費
の 上昇が大学
財政 を圧迫
し た。 当 時 の大 学 人は財 政 的 窮 乏 に よる教育 水
準 や内 容の 低 下 な ど を含む意
味で の 倒 産 の幻 影
に怯
え たの で ある。また, 私立
大
学の教育 費 負
担の 増 大 や 国 立 大学
との 格 差 の 拡大は ,私 学 助 成 の 要 請 を生み だ し, 私 立 大 学 教 育費
補 助 制度
(1968
年)お よ び私立大
学等
経 常費補 助
金 制度 (
1970
年)
を発 足
させ た。 しか し, 国 に とっ て , それ は あ く まで補助
にす ぎず,私学
の 行 末は私 学 自体 が み とるべ きで あるい う姿 勢 を 崩 し た わ け で は な か っ た。 も た れ込み は困
るが , し か し, の た れ死に は避
け なけれ ば なら ない , という
の が私 立 大学
に対
する 国の方針
であ っ た と考
えて よ か っ た と思わ れ る 。こ の よ うに , 私 学 の 積 極 的 ある い は
消 極 的存 続
が最
優 先の 共 通 意 識 と し て ,学
校法
人会 計 基 準の 制定
に携 わっ た人々 を貫
い た と考
えら れ る。「
報
告 一 学 校 法人 会 計 基 準 」の 前 文 に は , 学 校 法人会 計の 目的の第
一が「
存 続の た め の情 報 提 供 」
にある こ と を指 摘
して い た と考 え
ら れ る。以
来
20
年 経過
し た今
日 も, 私立 大 学 の最 優 先 の 共 通 意 識 は 「存 続」
で ある と考
える の が 自然
で は なか ろ うか。経 済の 発 展 はその
後
GNP23300
ドル を生 み だす まで に な り, 経 済 大 国 と して 認め ら れ る ように なっ た。 進学 率
は 上 昇 し, と くに女性 の 高 等 教 育へ の 進学 率
は男性
を抜
く まで に な っ た。第
2
次
ベ ビー ・ブ ー ム ,団
塊 の 世代
の進
学
に さ し か か り, 私立 大 学は受
験生 の 私 大 志 向 とも あい まっ て ,新
設あ るい は増 設 を再 び 図る こ と になっ た が, そ の 財 源は依
然 と して学 生納 付 金 と借入金
に依 存
せ ざる を えな か っ たの であ
る。授
業 料 の値
上 げ は ,借入 金利息
と人 件費
をは じめ とす る諸経 費
の 上昇
をカ バ ー しきれ な くなっ た。 しか も, 出生率低
下 に ともなう受験
生 の激
減 は,「
倒 産 」 (財 政 的 困 窮 に よる教 育 水準 や内容の 低下 を含 む広 い 意 味で の 倒 産) とい 一92
一大 学 カ リキ ュ ラム改 革に関 連する芳香 料 事 業 会 計 ・損 害保 険 会計 (中 原
)
う幻
影 に怯 えるの が 大 学 人の あ た りま えの姿 となっ て い る。 前 述の私 立 大 学 教育 費補助 金 制 度 も私
立大 学等 経 常 費補 助
金制度
もあく
まで補 助
にす ぎず
, 私 学 の将 来 は私 学 自体 が み とるべ きで ある とい う国の 姿 勢 は,20
年経 過 し た今
日となっ て も変 化
し た わけ
で は ない 。私 学 の最 優 先 の 共 通
意
識が , 存 続に ある と考 える こ と は依 然 と して , 学 校法
人 会 計 基 準が1987
年(
昭和62
年 ) に 改正 さ れて も, 変 化な く, 学 校 法 人 会計
の 目的
の第
一 が 厂存続
の ため の 情 報 提 供 」 にある こ と は, かわ りが な い と考 え ら れ る。従
っ て ,存続
の た め に,資本
回収計 算
と して の 企業会 計
が学
校 法 人会計
の モ デ ル に な る 可能
性 の ある こ と は, 容 易に考
えら れ る 。学
校 法 人 会 計 基 準 第29
条 は,「
基 本 金 」 を「
学 校 法 人 が, その 諸 活 動 の 計 画 に基づ き必 要 な資 金 を継 続 的に 維 持 すべ きもの と して, その 帰 属 収 入の う ちか ら組 入れ た 金額 」 と し て い る。 帰 属 収入 を 「維
持 すべ き 金額 」 と 「消費
しう
る金額 」
に 分 けた の で あ る。 こ の こ と は, 企 業 会 計 でい う「
資 本と利 益
の 区 分」
あるい は 「資 本 維持 」
の 思考
の影 響 を受 けて い る こ と は , 学 校 会 計基準
の制 定 者
の認
め る と ころで ある。帰
属収
入 一基 本 金= 消 費収
入 … … … ・… ・… … … ・… ・… … ・… … … … ・(1)消
費
収 入 一消費
支 出= 消費
収 入 (支出) 超 過 額… … … … ・… … ・・… … …(2
)(1)
式
は,厂
維持
すべ き金額
と して の 基本
金」
が自
己に帰属
する資
金 か ら控
除 する こ と が で きた か ど うか 一 い い か え る と ,長 期 的 財 政 維 持が 出来 るか どう
か が わ か る。 (2)式 に よ っ て , 消費
収 支が均 衡 して い る か どうか 一 い い か える と短期
の 財政維持
が 可能
か ど うか を示 してい る。こ の 学 校会
計
基 準 に対す る 主な批 判 は次 の2
点で ある 。そ の 第
1
は, 学 校 法 人会 計 の よ うな非 営 利 事 業の 会 計モ デ ル に営 利 事 業で ある企業会
計の それ が準
用でき
る か どう
か , の疑
問で ある。 学 校法
人の よう
な非 営 利 事 業の 組 織 の会 計で は , 支 出を「
回 収の ない 消費
, い い か える と消費
の ため の消 費」
と考
えるほう
が自然
で はない か。 損 益計 算
に お ける費
用 の よ うな, 回 収 を考 えた消費
と は異
な る の で は ない か , という
認識
が そ の批判
のも
と に なっ てい る。回収
を意 図
して い ない消 費
は ,営利
を否定
して公共 的
一93
一駒 沢 大 学 経 済 学 論 集 第
29
巻 第3
・4
合 併 号 効 果の 達 成 を考
えて い る 。 従っ て , 回収の 意思 の ない ,消 費
意思 の み に よ る消 費
とな る わ けであ
る。 回収意
思 と消費意
思が会 計の実
際の動き
を決 定 し,会計
の形 態
を分 ける もとに な る [村 山,1971
,112
−113
頁]。 こ の よ うに, 減 価 償 却 計 算 と か退 職 給 与 引 当 計 算の よ う な 回 収 計 算 を 内 包 した 学 校 会 計 基準
の消 費収
支計 算
は批判
される し,資 本維 持
の考
え方
か ら派
生 した学校 会計
基 準の 基 本 金 概 念は批 判 さ れ る わ けで ある 。その
第
2
は, 基本
金へ の組
入額
は学 校 法
人の自
主性 に委
ね ら れ て い るた め に,消 費 収支
の均 衡
の「
安 全 弁」
と し て は ,意
図 的に操 作可 能なた め, そ の 意 味が な くなる とい う批 判で ある。1982
年の 基 準 の 改 正 に よっ て , 基本
金組
入の不 明確
な点
は会 計
処 理の統
一性
,明 瞭 性
という
面 で改 善
さ れ た と は い え, 不 明 確 な 点 は残
っ て い る。こ うい っ た批 判は , い ずれ も,
学
校法
人 と は何 か ,学 校 法人 が そ の 目 的 を達
成 する ため に会計
が どの よう
な役割
を果 すこ と が でき
る か , とい う基 本 的 な問題 が解 決 さ れ ない 限 り結 着 を み ない こ とで ある 。3
.学 校 法
人
の非
営
利 性
学 校 法 人の 非
営
利 性 に つ い て は, その背 後 に, 「公 益 性 」 と 「非 効率
性」
の 概 念が存 在
し, 無 意識
に混 同
され て い る。「公 益
性」
につ い て は,学校経 営
を私益 追 求
の手
段 とすべ きで は ない とい う こ と は一 般 に認め ら れて い る が , そ れで は, い か なる 公益
に役立 つ べ き なの か明確
に された た め しが ない 。 公 益 という概 念
は定義
の難
しい概 念
であ
る。 そ れ はDewey
の いう
よう
に , 人 々 の価値 観
に よっ て 変 化 する は か ない もので あ り, 時 代 や場 所 に よっ て 異な る 。
Rousseau
やLock
やBentham
とい った予
定 調 和 派
に よ れ ば, 私益
の 不 断の競 争
が 公益
に楽
観 的に結
びつ い た が ,Marshall
らは こ うし た競 争の 役 割 を否 定 し, 私 益 は 近 視 的 ・利 己 的で あっ て , 利益
の単 な る総計
が 公益
に なる こ と はあ り得
ない と主張
し て, 公 共 政 策 を 重 視 した。Sorauf
は, 公益
とは せ い ぜ い 「集
団の調 和
プ ロ セ ス を象 徴 化 し た もの」
と主張
し た。 −94
一大
学 カリ キュ ラム 改 革に 関連 する芳 香 料 事 業 会 計 ・損 害 保 険 会 計 (中原 )学 校 法
人会計
基準
は,学校 法
人の存 続
すな わ ち教育
・研
究活 動
の社会
に対
する 永 続 的 提 供 を 公益
と考
え , そ れ が達 成 さ れ る ため に学校 法
人会 計 の 計算
構
造の 中に,「
資 本 維 持 思考 」
や「
損益
計算」
の 論理 を組み込 んだ。 しか し, それ は,学 校 法
人 自体
の 保 全 を 目的
とした もの で, 社 会 一般 の 利 益 に必 ず し も合致
した もの で は ない 。厂
非 効 率 性 」 につ い て は , 学 校 法人の 非 営 利 性 を主張
す る人 々 は , 教育
・研 究 活動
を本
質 的に「
非効 率
的」
な もの と断定
する傾向
の あ る こ とに着 目す る 必 要が ある。 教育
は損 益 基
準で 測 定で きない し,学 校
は智識
の切 り売 りの場 で は ない , とい っ た感
情 的 把 握で ある 。 こ れ は教 育 が 回収を意図 しな い 私費
活動
以外
の な に もの で も ない とい う道 徳 的 理 念 の 反 映で あ る。組
織
が あ る か ぎ り, そ して その活 動
が 目的指
向 的で ある か ぎ り, 目的 達
成 度 ある い は活
動の効
果 を測定
し報 告
する こ とは, そ の組織
の管
理 と運営
を委
託 され た もの の責任
であ
る。 こ の よう
に ,教育
を生 産 とみ なす観 点
[醍 醐,1981
年]が 生 れ る 。 そ し て 会 計 は教 育 活 動 の 効 率 性を測 定 ・報 告 し よ うとす る。 ま た, 企業 会計
の損
益計 算
に は, 社 会 的観
点か ら, 利益 数 値
が資 本投
下 の 有効
性 を 評 価 する重 要な指
針 と な る 可能
性 を もっ て い る とい う仮定
を含
ん で い る とい う考 え方 も あ る くらい で ある。利
益 動機
をも
た ない学校 法
人の 場合
,会計
の重点
は資
金の会計
に移
り, (1
) 活 動の 計 画 , (2>必 要 な資 金の 確 保, (3
)そ う した 資金 の 支 出の 管 理,(4)実 際 の 活 動の評 価 と統 制, に 関 す る分 析に 必 要な情 報 提 供を 目 的 とする 。 投下 さ れ た経済
的 な資
源 だ けで な くて その 他の諸資
源の 効 率 性 を評 価 する た め に, 利 益 数値
に代 る有効
な指標
の 開発が 要 請され る [高 松,1985
,pp
.17
〜20
] 。4
.学 校 法 人
会
計 基
準
の意
味
学 校
法
人会計
基準
の計 算構
造の 中で ,2
の 基本
的 認識
が そ こ で どう
いう意
味を もつ か を検 討
す る。「公
益
」 とい う概 念の 定 義が混 乱 してい る という
こ と は ,学 校 法 人の 主 目的 が「
存 続 」
だ けで は ない こ と を示
して い る。 そ して「
学 校 法
人会計 基準 」
の 一95
一駒 沢 大学 経 済 学 論 集 第
29
巻 第3
・4
合併 号 消 費 収支
計算
は ,消費
額 と こ れ を カバ ーで きる収 入額 との 均 衡 状 態 を明 ら か にす る に は役
立 つ けれ ど も , その差額
であ る計 算結
果 は効 率性
の指 標
とは関 係が ない 。そ こ で , 学 校 法人 の 利 害関係 者 (経 営 者 , 教 職 員 ,学生 , 一般 大 衆 , 創立者 と その 関係 者 )の 共 通
的利 害
と して「
良 質で安
価 な教 育サ ー ビ ス の提 供」
と いう
目 的を示 して み る。 何が厂
良 質 」か は多
義 的で その評 価 が 困 難 なの で ,「
安 価 」 とい うひ とつ の 公益
性を抽 出 し て み る。 安 価 な教 育サ ー ビス提 供
が学
校 法 人の 重 要 な 目的 と認め ら れ れ ば, 「学費 算定
の ため の 情 報 提 供が学校 法
人 会 計 の テ ーマ に なる。 従っ て次 の よ う な計算構
造が成 立 す る 可能性
が ある。経 常 収入 一
経
常 支 出= 経 常収
入 (支 出) 超過 額・… … … ・… … … ・(3
)基 金
収
入 一一基 金 支 出= 基 金収
入 (支出 ) 超 過 額… … … ・… … … 』… ・… …(4)学 校 法 人の
帰
属 収入 は , まず 当 期 の 活動
に関す る経 常収
入 と長 期 的 活 動 に 関 す る基 金 収 入に区 分 さ れ る。次
に経 常 収 入か ら経
常支
出 が 差 し引か れ て経
常
収入(
支 出)
超 過 額 が計 算
さ れ る。経 常 収 支計 算
は収 益 的な収 支 計算
で あ り, その 計算
結果 で ある 経 常 収 支 差額 はあ る意 味で は学 校 法 人の 経 営 努 力の成
果 を示
す指 標
で あ る。 そ の 差額
は ,教育
の産
出で ある収 益
を授 業 料 という
不 完全 市 場 に お ける価 格 設 定に よっ て測 定 し て い る とい う意 味で , 不 完 全で は あ る が ,毎 年
の 経 営 効率
性 を評価 で き る機 能を もっ てい る と考え られ る 。 他方
,経 常収
入超
過額
が極 端
で ある こ と は授 業 料負
担 が 大 きす ぎる こ と を示 す。 すな わ ち, 経 常 支 出 超 過 額が発生 す る とい うこ とは, 授 業 料 を 改 訂 す る 必 要が あ る とい う指 標 を与えて い る こ とにな る 。 こ の場
合,経 常収
入超 過額
の 一部は将 来の計
画 に従っ て 基 金 収 入 に加 え ら れ る が , その加 算
額の決定
に は合理性が 要求
さ れ る 。他 方, 基 金
収
支計 算
に お け る基 金収
人 に は ,当 期 の 基 本金へ の 資 源 の 流 入 諸 項 目 (経 常 収 入 超 過 額 か らの 基 金 組 入額,施設 設 備 関係 収入 等 )が 含 まれ , そ して基
金支
出に は当期
の基金
か らの資
源
の 流 出諸項 目 (
主 と して減
価 償却費
や 資産 除却 損 等 )が含
ま れ る。 基 本金 収 支 計算
は む しろ 資 本 的 収 支計 算
で あ っ てその 計 算 結 果 は基金 の 純 増 減 額 を示 すの で あ る。 も し基 金 収 入超 過 額が 一96
一大 学 カ リキ ュ ラ ム 改 革に 関連 する芳 香 料 事 業 会 計 ・損 害 保 険 会計 (中 原) 発 生 すれ ば , 将 来 計 画 に利 用で きる資 源の 当 期 蓄 積 額が わ か る し, 反 対 に基 金 支 出
超
過 額が 生 じ れ ば,委
託 さ れ た資
源の 一部
が失
わ れ た こ と を示 す。 従 っ て , こ こ で は , 基 金は「
基 準」
の 基 本 金 の よう
に帰
属 収 入 か ら任意
に分 別 さ れ るの で な く, 社 会 一 般 (創 立 者 を含む)の 拠 出 資 本 と して の性質
が与
え られ る。 さ らに,減価 償 却
は ,「基準」
の よ う な費
用 配 分の 過程
で も,取
替資
金準 備
の過 程 で も な く,「
資 産評 価の 過程 」 と み な さ れ る。(
3
×4)式
は 消費
して よ い もの と維
持 すべき も
の の 区 分の考
え方
を「
基 準」
と は別 の 形式
で 示 して い るが , 要 点 は , それ が収入 支 出の 本質
に もとつ い て 区 分 され て い る こ とで ある。「
基準 」
で は維持
すべ き金額
である 基本
金を, 企業
会 計の払
込 資 本の よう
に, 学校
法 人の資
金 源 泉の 側 か ら は識 別で き ない もの と し て, 資金 の 使 途 (「基準 」30
条1
項の 基本金組入対 象資産)に 関 連 さ せ て 規 定 を した。 従っ て , 消 費 収 入は そ の 性 格 と は無
関 係 に支 出の 結 果 に よ っ て 決 定 さ れ る とい う不 合理 を内 包 して し まっ た 。一 般 に経 常 収入 と 基金 収入 の 区 別は,
収
入 の 時 点で資
金 提 供者
の 意思 が確
認 で き れ ば , 比較
的 容 易で あ る。 た とえば, 国お よ び地 方公 共団体
か ら の補
助 金 の な かで ,経 常 費 補 助金 は経 常 収 入 に,施
設 設 備補
助 金は基
金 収 入 に区分
で きる。学
生納付
金の施 設 設 備費
は世 代 間の 利 害 調 整の 点か ら も基金収
入 に含
め るが , その 金 額 は既 存 施 設 設 備 の 減 価 償 却費
相 当 分や施 設 設 備 関 係 借 入 金 利息 相
当 分が考
え られ る[
高 松 ,1985
, pp .20
−一26
] 。5
.財 務 分
析
の基 本 的 枠 組
(
1
) 学 校 法 人の 財務
分 析の 考 え方学
校
法 人の よう
な非営
利 組織 体
の活動
は, 企業
の よ うな営利 組 織 体
とは異
っ た 考え方, 理 念 に よっ て行 な わ れ なけれ ば な ら なV
非 営 利 組 織の 業 績 と そ の 評 価は ,当 該 組 織 体の 目標 との か かわ りに お い て 認識 さ れ な けれ ば な らない 。学 校 法 人の 財 務 分 析 を行
う
に あ たっ て は, 現実
には, そ の資料
は 二 大 別 す る こ と が で き る。 そ の 一 つ は , 文 部 省令
18
号
と して 制定
さ れ た「
学校 法
人会 一97
一駒 沢 大学 経 済学 論 集 第
29
巻 第3
・4
合併 号計 基 準」
にお ける会 計 シ ス テ ム に準 拠 して作 成 さ れ る計 算
書類
を情 報
として 利 用 す る こ とで ある。 その 二 つ は ,3
での べ た よ うな,試
論 に もとつ い て作 成 され る計 算
される計 算
書類
を利
用 す る こ とで あ る。(
2
)学 校
法人 の付加価 値
計算
学 校 経
営
に よ っ て生み だ され た価値
を認識 する とす れ ば, 教 員か ら学生 へ の 教 育 活 動, 職 員 の 各 種事
務サ ー ビ ス , 社 会 の 発 展の ため の 研究 活 動が そ れ で ある。 そ れ に対
し国
は補助
金,学
生は納付
金, 関係者
は寄付 金
を提
供 する。純
付
加 価値
= 人件 費 + 借入 金等
利息
+ 租 税公 課+賃 借 料 +消費
収 支 差 額投
下 さ れ た施設 設備お よ び教職員 に対 して ど れ だ け 付 加 価 値が 生 れ た か。一
一 一聡
欝
鍍無
一 一=
◎ 付 加
価値
率 ×投 下資 本 生 産 性 付 加 価 値 教 職 員+ 投 下資 本(
計 算
不能 )
付 加 価 値= 教 職 員 数
付
加 価値
◎
=投
下 総資
本帰属
収入; 教 職 員
帰
属収
入一
投 下 総
資
本一
椴 駿
こ れ を同 種 学 校 法 人 と比較
し, 自校
の そ れ と比較
す る。(3) 学 校 法 人の 効 率 性 分
析
学
校法
人 の 目的が 教 育 研究 活動
に 必 要な財 産の維
持に よ っ て , 学 校 法 人の永 続
的活
動 を可能
に する こ とで あっ て , その た めの 財 産の維持
の た め に会計
一98
一大 学カ リ キュ ラ ム改 革に関連 する 芳 香 料 事 業会計 ・損 害 保険会計 (中原)
計 算
が行な わ れ る と して も, 同 じ効
果が ある な ら少ない 消費支
出で抑 える こ とで あ る。 た だ, この効 率
性は 一つ の事 実
の表
現 で あ り , 企業
の よう
に利益
とい う唯一 の 価値
判断
と して は扱 わ ない 。 無 駄が な い か どうか を認 識す るた め に利
用 する。消 費支
出消
費
支 出 比 率 =帰
属収
入総 資
産増 加 額
純 資 産 増 加 率=総
資 産
有 形
固定 資
産 回転 率
一学
生霧 鑿
収
tS
学 校
法 人の 採算
分 析 学 校 法 人 が社 会 的に必 要 と さ れ る教 育 研 究 活 動 を永 続 的に維 持 す る の を 目 的 と す る 以 上 ,採
算 を 保 つ こ と が 必 要 と な る。その ため に は, 企
業
の損 益 分 岐 点分 析
の導
入が必 要
となり
, それ には 図表
法 と公 式 法 が ある。A
.公 式 法 損 益 繍 消費
収 入 一 固定費
÷卜
一7
飜
親
こ の 場
合
の 固定 費
と変動 費
は次
の よう
に なる。驫 騰
ニ
ー
こ の
中
で個 別 費
用法
は,諸経 費
の費 目
ご とにその性 質
を吟味
し,学
生等 納
付 金 収 入や 学生数
に比 例的
に増 減 す
る もの か , そ れ らに無
関係
に 固定 的
な も の か を 区 分 す る もの で , 学 校 法 人に適 してい る。B
. 図表 法
消 費収
入に対
する消 費支
出の実 績 資
料
を多
年度
に わ た り蓄 積
一99
一駒 沢 大 学 経 済 学 論 集 第
29
巻第3
・4
合併 号 し, そ れ に よっ て分岐
図表
を作 成
す る。(
5) 学 校 法 人
の財 務 安全 性
学 校 法 人会 計の 財 務の 安全 性の た め の会 計 構 造 と して は,
予
算
会 計 (予 算に よっ て予定され て い る諸 活動が 全体 と して 整合 性が と ら れて い る か どうか確 認 する),基 本 金 会 計 (基本 金の 増 加 額 は 総
資
産で ま か な われ るべ き と し て帰 属 収入 か ら あ らか じめ引 き, 残 りの 消 費 収入 の 範 囲 内で支出する),特 定 預 金 (将 来の 確 実な資金支 払の た めの 源 資を特 定 預 金 する) が ある。
財 務
安
全性
の内容
と な る資
金 流 動 性 の安
全 性,利 用
資
金の安
全 性 ,内 部 留 保 の
安
全 性 ,事 業の成 長 性 を 示 す
10
の財 務 比率
を算 定
して標
準 とな る 平 均 値 と比 較 す る こ とがで きる。 レー ダ ー ・チ ャ ー トを利
用 する と次の よ うに なる 。 (流動比率)流 動資産 / 流 動 負 債 資 金 成 長 性 当 流 動 性 り) 用資産 (自 己 資 金構成 比率 ) 内部留 保 自己資産/総資金 利 用 資 金ー
(6)学校 法
人会
計 基準
の 基 本 金 建 物や 機 器 備 品を減 価 償 却 した う え, さ らに基 本金 に組入 れ る の は 重複で 一100
一大 学カ リ キ ュ ラ ム 改革に関連 する芳香 料 事 業 会計 ・損害 保険 会計 (中 原) ある。 建
物
や機器備
品は時
の経
過 と共 に簿 価 も価値
も減 る の に ,取 得
価額
の ま まで基
本 金 に組
入 れ た ま ま なの で ,簿価 減
少 分 を差引
く必 要が あ る。 施 設 設 備の焼 失
・除却
の分
の 基本
金は取 崩
す 必 要 が ある。 以上 は基本
金 を基準
に お い て の 修正 すべ き点で あ る。基 本
金組
入は経 費
か帰属 収
入の 留 保 なの か も問 題 で ある。フ ロ ーの と き財 務 比 率は帰 属 収入 を消
費
収支
の 分 析 に とる こ と が多
い 。 し か し, 基 本 金 組 入 を必 要 経費
とすれ ば, 消 費収 入で み るべ きで ある。 「消費
収 支 比率
以外
はすべ て帰 属収
入 を利 用
して い る か らで ある。 こ れは, 基本
金組
入 を必 要経 費
で は な く, 内 部 留 保 とみ て い る か らで ある。ところ が ,
貸借 対
照表
の場 合, ス トッ ク と し て基 本 金 組 入後で ある消費
収 入 を採
用 して い る 。 貸借
対 照表
分析
は ス トッ ク で基 本
金組
入後
の「消 費収
入」
, 消費
収 支 分 析で は フ ロ ーで基 本 金 組 入前
の「
帰
属収
入」
を使
っ て比較
す るの は お か しい 。基 本 金 の組入 は ,
100
% を こえる こ とは認
め ら れ ない が ,20
%前 後
が 一っ の 指 標 と なっ て い る。基 本
金組
入額
基本
金組
入率
=帰
属 収 入(7)
学 校 法
人の指 数
法 に よ る総 合
的 分 析指 数 法 (
lndex
Method
) と は,事
業 活 動が どの よ うに運 営 さ れて い る か を 総 合的
に見
る た め の財務
分析
の 方法
の 一 つ で ある 。私 は
1967
年 (昭和42
年) に, 広島
県の新 市
町 の 縫 製業
につ い て ,指
数法
が どの ように使 わ れ てい る か , その実態
を調
査 して, 「広島
県下の 中小 企業労
働 問
題の 背景
となる経営
分 析 にお ける指 数法
につ い て一広 島
県
下の縫
製業
を め ぐっ て一」
(「広 島商大 商 業経 済 研 究 所 報 」5
号 ) と題 し て 論 稿 を発表
し た。指 数 法
は 「い くつ か の 比率
を選 択 して , こ れ に ウエ イ トを定
め, これ ら諸比 率
の標 準
比率
か らの開 き
を1
個の指 数
に総 合 的
に表 す
こ と」
であ
る。 し か し, こ の い くつ か の 比率
に何
を選ぶ か が 問 題 に な る。広 島
で の調査
研究
で 一101
一駒 沢 大学 経 済 学 論 集 第
29
巻 第3
・4
合併 号 は , 厂労
働問題 の背 景 と な る経 営分析
にお け る指
数 法 」 を考
えて い た。 従 っ て , まず
, こ の 比率
の 選 択に「
従業 員
」の 問題 との関連 性 を考 え
る こ と に な っ た。 私 の研 究テ ー マ の 一 つ で ある 「付 加 価値
会 計」
は この と きに,付
加 価値
の比率
を選
択 する こ と か ら始
まっ た。縫 製 業
は中 小 零 細 企業
であ
っ て , し か も労 働 集 約 的 な 企業
で あ る こ と か ら ,労 働 問 題 との 関 連 性 を意 識 して こ の業 種
を調 査対 象
と し たの で あ る。こ の 論 稿で は , 学
校 法
人に とっ て , 指 数 法 が , その 財務
分 析 を す る場 合 に, どの よ うな効 用を果 すか を探 究 しよ うとす る もの で ある 。ウ ォ ー ル (
Alexander
・Wall
) に よ っ て提 唱 され た指
数法
(index
method)
ωは標 準 比 率に よっ て諸 比 率 を判 断 す る とき , 判 断 すべ き諸 比
率
の 一部が標 準 比率
以 上で 一 部が標 準 比 率 以下 の 場 合に, 企業
の 総合 的
成 績の 判断
が 困 難 と なる の で ,諸
比率
の標 準
に対
する 関係
を単
一 の 比率
に集
約 す る方法
をいう
。標 準
比率
, こ こ で いう産 業標
準 比 率 を作 る に は, ウ ォ ー ル に よれ ば , 同 じ 産 業の多
数 企 業 の貸 借 対 照 表の 諸 項 目を合 計 し た合 成貸
借対
照表 を 作 り, そ れ か ら必要
な比率
につ い て そ れ ぞ れ算 術 平均
, 並数
お よび中 数
の 三 つ を計 算
し, さ らに それ ら を平 均 して算 定
す る。 こ こ に ,並 数 と は数 値グ ル ー プ の な か で もっ と も多
く現 れて い る数値
をい う。 中 数 と は, 比 率の 数が偶 数の ばあ い は 中央
に位 置 す
る2
比 率
を平均
し たも
の で ある 。 比率
の 数 が奇 数 なら中 央 に位 置 する比 率 をい う。指
数法
を次
に ウ ォ ー ル の 設 例 を使
っ て説
明 する と次
ペ ー ジの よう
に な る。第
1
に , 一定
の分析
目的
に従
っ て 必 要な比 率を選 択 す る。 そ して その比 率 に合 計100
% に な る ように , それ ぞれ重 要度 (
ウエ イ ト)
を与
える。 ウ ォ ー ル の 指 数 法 の分 析 目 的は信 用 分 析 なの で , 選ば れ た比率
とウエ イ トは どれ ほ ど企 業の支 払 能 力 が測 定で きる か その 能 力 に よ っ て そ れ ら が決 め ら れ て い る 。 選ん だ比 率 をすべ て 比率
が高
い ほ ど良好
な状態
を示
す よう
に統
一 す る た自
己資
本自
己資 本
,
負債 比 率
は め, ウ ォ ー ル は固定
比率
はの
式
に よ っ固
定 資
産 他人資 本 て 計算
して い る。第
2
に, 企業
の実
際 比率
の 標 準 比 率 (算術平均, 並数, 中数の 平均 値)
に 一102
一大 学 カリキ ュ ラ ム 改 革に 関連 する芳 香 料 事 業 会 計 ・損 害 保 険 会 計 (中原 )
(
比率)
流 動 比 率… 固 定 比 率…負
債 比率
… 売上債権回転率… 商 品 回 転率
… 固定資産回転率… 自己資本回転率… 指数 …(
ウエ イ ト)
25
%1525101010
5100
%(
標準
比率)
200
%250
150
600
800
400
300
(実 際比率 )220
%220
160
500
600
400
240
(関係比率
)110
%88
106
83
75
100
80
(
比率
価 値 )27
.50
%13
.2026
.50
8
.30
7
.5010
.00
4
.OO97
.00
標準以 下300
%対
する 関 係比率
を計算
し, こ れ に ウ エ イ トを乗算
して 比 率価値
を算
出 す る。最 後
に各
比率
価値
を 合計
し て指
数 を計算
す る。 こ の 指 数 が100
% をこ える場 合は総合
成 績が標
準 以上 ,100
% に満
た ない と きは標
準 以下 と診 断
す る わけで ある。指
数 法 に は次
の よ うな問 題 点 がある。 ある比率
が異常
に高
く,実 際
比率
が 標準
比 率 の2
倍以 上 に もなる場 合, その た め に指
数が 非 常 に高 くな る こ と が ある。 た と え ば, 設例
の企業
の自
己資本
回 転率
が1200
%で ある とする と, 関 係比 率は400
% , 比 率 価値
は20
.00
% と な り, その結 果 , 指 数 は175
% と な っ て 標 準 を16
% も上 ま わ る。 総 合成
績 を よ くみ せ て しまう
の で あ る。 こ うい う こ とに な ら ない よう
に, すべ て の 関係
比率
の上限
200
% まで に制
限 して調 整
する こ と が ある。 こ れ は関 係比 率の 下 降 す る幅が100
%か ら0
% まで あ るの で , 上 昇 幅 もこ れ と同 じ よ うに調 整す るわ け で あ ろ う。標 準 比
率
標 準 比 率関 係 比 率 =
100
+(
100
−)
= =200
一実
際比率
実
際 比率
例 示 をこ の算 式
で調
整 する と300
200
− ×100
:==1750
/01200
と な る。 一103
一駒沢 大学 経 済 学 論 集
第
29
巻 第3
・4
合 併 号 注(1)
Alexander
Wall
&Raymond
W
.Duning
,Ratio
Anatgszs
ofFinanct
αl
St
αtements
,New
York
1928
,pp
.152
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