西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 一
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目 次 Ⅰ は じ め に 一 本 稿 の 位 置 づ け と 課 題 二 本 稿 の 構 成 Ⅱ 住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 賃 借 人 に よ る 許 可 の 請 求 │ 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ │ 一 前 提 と な る こ と が ら 二 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 裁 判 例住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 二 ) 二 1 基 本 と な る 裁 判 例 ( 以 上 、 四 五 巻 三 ・ 四 合 併 号 ) 2 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 ( 1 ) 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 2 ) 経 済 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 以 上 、 本 巻 本 号 ) ( 3 ) 家 族 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 4 ) そ の 他 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 Ⅲ 住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 賃 貸 人 に よ る 許 可 の 拒 絶 │ 賃 貸 人 に と っ て の ﹁ 要 求 不 可 能 性 ﹂ │ 一 基 本 と な る 裁 判 例 二 賃 貸 人 に と っ て の ﹁ 要 求 不 可 能 性 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 Ⅳ 総 括 と 日 本 法 へ の 示 唆
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 三 Ⅱ 住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 賃 借 人 に よ る 許 可 の 請 求 ─ 賃 借 人 の 「 正 当 な 利 益 」 ─ 二 賃 借 人 の 「 正 当 な 利 益 」 を め ぐ る 裁 判 例 2 賃 借 人 の 「 正 当 な 利 益 」 を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 以 上 、 Ⅱ の 二 の 1 に お い て は 、 B G B 五 五 三 条 一 項 一 文 に お け る 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ の 解 釈 ・ 適 用 を め ぐ る 裁 判 例 に お い て 、 そ の 基 本 と な る 二 つ の 裁 判 例 を 考 察 ・ 確 認 し て き た が 、 続 い て 、 Ⅱ に お け る 考 察 の 中 心 的 問 題 に 入 る こ と に す る 。 す な わ ち 、 そ れ ら 二 つ の 基 本 と な る 裁 判 例 を 踏 ま え た う え で 、 住 居 の 転 貸 借 、 よ り 正 確 に は 、 住 居 の 一 部 の 第 三 者 へ の 使 用 の 委 譲 を め ぐ る 賃 借 人 に よ る 許 可 の 請 求 に 関 す る 裁 判 例 に お い て は 、 実 際 に 、 い か な る 場 合 に お い て 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る と 判 断 さ れ て い る の で あ ろ う か 、 あ る い は 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ は 認 め ら れ な い と 判 断 さ れ て い る の で あ ろ う か 、 と い う 問 題 で あ る 。 こ の 問 題 に つ い て 、 こ こ で は 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 を 、 四 つ の 類 型 に 分 け て 考 察 し て お き た い 。 す な わ ち 、 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( ( 1 ) ) 、 経 済 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( ( 2 ) ) 、 家 族 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( ( 3 ) ) 、 お よ び 、 そ の 他 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( ( 4 ) ) で あ る 。
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 二 ) 四 な お 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 の 類 型 化 に あ た っ て は 、 個 々 の 事 案 に お い て 考 慮 さ れ た 複 数 の 事 実 ・ 要 素 の な か で 、 当 該 事 案 に お い て 最 も 重 要 と 考 え ら れ た も の に 対 応 し て 類 型 化 を 行 っ た 。 ( 1 ) 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 第 一 の 類 型 は 、 賃 借 人 の 側 に 、 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 で あ る 。 第 一 の 類 型 の 典 型 は 、 す で に Ⅱ の 二 の 1 に お い て 考 察 し た と こ ろ の ハ ム 上 級 地 方 裁 判 所 一 九 八 二 年 八 月 一 七 日 決 定 ( 裁 判 例 ︻ 5 ︼ ) 、 お よ び 、 連 邦 通 常 裁 判 所 一 九 八 四 年 一 〇 月 三 日 決 定 ( 裁 判 例 ︻ 6 ︼ ) の 事 案 が そ う で あ っ た よ う に 、 賃 借 人 が 、 自 己 の 人 生 形 成 の 枠 組 み に お い て 、 個 人 的 な 理 由 や 必 要 性 か ら 、 第 三 者 と 住 居 共 同 体 を 形 成 し た い 場 合 で あ る 、 と 考 え ら れ る 。 裁 判 例 ︻ 5 ︼ お よ び 裁 判 例 ︻ 6 ︼ 以 外 に お い て も 、 そ の よ う な 事 案 に お い て 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る と 判 断 さ れ た 民 事 裁 判 所 の 裁 判 例 が 存 在 す る 。 た と え ば 、 次 の 二 つ の 裁 判 例 が 、 そ う で あ る 。 ︻ 7 ︼ ヴ ェ デ ィ ン グ 区 裁 判 所 一 九 八 九 年 九 月 七 日 判 ︶49 ︵ 決 ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 被 告 ら は 、 一 九 八 四 年 三 月 二 九 日 付 け の 使 用 賃 貸 借 契 約 に も と づ い て 、 原 告 が 所 有 す る 本 件 建 物 に 所 在 す る 本 件 住 居 の 賃
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 五 借 人 で あ っ た 。 本 件 住 居 は 、 六 つ の 部 屋 、 台 所 、 二 つ の ト イ レ 、 浴 室 、 お よ び 、 物 置 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 。 本 件 使 用 賃 貸 借 契 約 に お い て は 、 ﹁ 賃 借 人 は 、 明 確 な 書 面 に よ る 賃 貸 人 の 許 可 な し に 、 本 件 住 居 の 転 貸 借 の 権 限 も 、 第 三 者 へ の そ の 他 の 使 用 の 委 譲 の 権 限 も 与 え ら れ て い な い 。 た だ し 、 訪 問 的 に 滞 在 す る 人 々 へ の 使 用 の 委 譲 は 、 除 外 さ れ る ﹂ 、 と い う 条 項 が 存 在 し た 。 被 告 ら は 、 一 九 八 九 年 五 月 二 三 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 転 借 人 を 本 件 住 居 に 受 け 入 れ た い 、 と 通 知 し た 。 原 告 は 、 一 九 八 九 年 五 月 二 九 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 転 借 人 の 受 入 れ に 対 し て 異 議 を 述 べ 、 同 時 に 、 転 貸 借 が 行 わ れ た 場 合 に は 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 即 時 に 解 約 告 知 す る こ と を 通 知 し た 。 被 告 ら は 、 転 借 人 と し て 、 友 人 で あ り 、 取 引 相 手 で あ っ た と こ ろ の A 氏 を 受 け 入 れ た 。 A 氏 は 、 デ ザ イ ナ ー で あ り 、 確 固 た る 地 位 に お い て 働 い て い た 。 原 告 は 、 実 行 さ れ た 転 貸 借 に か ん が み て 、 一 九 八 九 年 六 月 九 日 付 け の 訴 訟 代 理 人 の 書 面 を も っ て 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 即 時 に 解 約 告 知 し 、 本 件 住 居 の 明 渡 し を 求 め て 訴 え を 提 起 し た 。 被 告 ら は 、 被 告 ・ 2 は 、 五 月 か ら 九 月 ま で 、 ギ リ シ ア に 滞 在 し 、 被 告 ・ 1 は 、 週 末 、 西 ド イ ツ に 滞 在 し た 、 と 主 張 し た ほ か 、 次 の よ う に 主 張 し た 。 す な わ ち 、 被 告 ら は 、 数 年 間 の 共 同 居 住 に も と づ い て 、 被 告 ら に よ っ て 達 成 し よ う と 努 め ら れ 、 欲 せ ら れ た と こ ろ の 社 会 的 な 、 か つ 、 集 団 力 学 的 過 程 に よ っ て 特 徴 を 与 え ら れ た 形 態 に お け る 被 告 ら の 将 来 の 生 き 方 は 、 家 庭 的 な 二 人 だ け の 水 入 ら ず の 生 活 状 態 と い う 夫 婦 の 孤 立 が 、 第 三 者 の 受 入 れ に よ っ て 破 ら れ る と い う や り 方 で の み 、 実 地 に 適 用 さ れ う る と い う 見 解 に 達 し た 。 特 に 、 日 常 の 小 さ な 諸 々 の 問 題 に お い て も 、 被 告 ら 個 人 の み を 前 景 に 立 て る の で は な く 、
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 二 ) 六 む し ろ 、 当 該 グ ル ー プ に お け る 相 互 の 配 慮 と い う 要 請 を 感 知 す る こ と が 、 被 告 ら に と っ て 貴 重 で あ る 、 と い う 主 張 で あ っ た 。 ② 判 決 理 由 区 裁 判 所 は 、 右 の 本 件 事 実 関 係 を 踏 ま え て 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 賃 貸 人 で あ っ た 原 告 の 明 渡 し の 訴 え を 棄 却 し 、 B G B 旧 五 四 九 条 二 項 一 文 の 意 味 に お け る 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 存 在 し た 、 と 判 断 し た 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 被 告 ら は 、 B G B 五 四 九 条 二 項 に も と づ く 転 貸 借 の た め の 許 可 の 付 与 に 対 す る 請 求 権 を 有 す る ・ ・ ・ ・ B G B 五 四 九 条 一 項 に よ る と 、 賃 借 人 は 、 賃 貸 人 の 許 可 な し に 、 原 則 と し て 、 賃 借 物 の 使 用 を 第 三 者 に 委 譲 し 、 特 に 、 賃 借 物 を 転 貸 す る 権 限 は な い 。 し か し 、 住 居 使 用 賃 貸 借 の 領 域 に 関 し て は 、 B G B 五 四 九 条 二 項 一 文 に も と づ い て 、 ひ と つ の 例 外 が 生 じ る 。 こ の 規 定 は 、 賃 借 人 の た め に 、 当 該 使 用 賃 貸 借 契 約 の 締 結 後 、 正 当 な 利 益 が 生 じ た 場 合 、 当 該 住 居 の 一 部 を 第 三 者 に 委 譲 す る 許 可 に 対 す る 請 求 権 を 賃 借 人 に 付 与 す る 。 B G B 五 四 九 条 二 項 一 文 の 意 味 に お け る 賃 借 人 の 正 当 な 利 益 は 、 す で に 、 当 該 住 居 の 一 部 を 第 三 者 に 委 譲 す る と い う 賃 借 人 の 願 望 を あ と づ け る こ と が で き る と 思 わ せ る と こ ろ の 筋 の 通 っ た 理 由 が 賃 借 人 の 側 に 存 在 す る 場 合 、 受 け 入 れ ら れ な け れ ば な ら な い ︶50 ︵ 。 そ の よ う な 正 当 な 利 益 は 、 本 件 で は 、 被 告 ら が 第 三 者 と 住 居 共 同 体 を 形 成 し た い と い う 点 に 存 在 し た 。 被 告 ら は 、 自 己 の 住 居 の 内 部 で 自 己 の 私 的 な 生 活 を 自 己 の 考 え に も と づ い て 形 成 す る 権 利 を 有 す る し 、 も は や ひ と り で は な く 、 む し ろ 、 共 同 体 に お い て 他 の 人 と 生 活 す る と い う 、 基 本 法 一 条 一 項 、 二 条 一 項 か ら 導 き 出 さ れ 、 保 護 さ れ る 権 利 も ま た 、 被 告 ら に 帰 属 す る ︶51 ︵ 。 被 告 ら が 婚 姻 生 活 を 三 人 で 送 り た い か ど う か と い う 点 は 、 未 決 定 の ま ま で あ り う る 。 と い う の は 、 他 人 の 住 居 に お け る 事 象 は 、 原 則 と し て 、 第 三 者 の 権 利 に か か わ ら な い か ら で あ る 。 し か し 、 原 告 に よ っ て 立 証 的 に 否 認 さ れ な か っ た と こ ろ の 被 告 ら の 申 立 て に よ る と 、 被 告 ら は 、 婚 姻 生 活 を 三 人 で 送 り た
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 七 か っ た の で は な く 、 む し ろ 、 社 会 的 な 、 か つ 、 集 団 力 学 的 理 由 か ら 、 住 居 共 同 体 を 第 三 者 と 形 成 し た か っ た の で あ る 。 こ の よ う な 理 由 づ け は 、 妥 当 し て い る 法 秩 序 お よ び 社 会 秩 序 と 全 く 一 致 し 、 一 般 的 な 人 格 権 に よ っ て も 保 護 さ れ る ﹂ ︶52 ︵ 。 第 二 に 、 ハ ン ブ ル ク 地 方 裁 判 所 一 九 九 二 年 四 月 九 日 判 決 ︶53 ︵ は 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 住 居 共 同 体 の 共 同 賃 借 人 で あ っ た 原 告 ・ 2 が 、 本 件 住 居 か ら 退 去 し た が 、 さ ら に 引 き 続 い て 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 の 契 約 当 事 者 と み な さ れ る と い う 状 況 に お い て 、 本 件 住 居 に 残 っ た 原 告 ・ 1 が 、 新 た に 、 第 三 者 と 住 居 共 同 体 に お い て 生 活 し た い と い う 場 合 、 賃 借 人 で あ っ た 原 告 ら の 側 に 、 本 件 住 居 の 一 部 の 転 貸 借 に つ い て 、 ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る 、 と 判 断 し た 。 ﹁ 当 部 の 見 解 に よ っ て も 、 原 告 ら は 、 B G B 五 四 九 条 二 項 一 文 に も と づ い て 、 転 貸 借 の た め の 許 可 の 付 与 に 対 す る 請 求 権 を 有 す る 。 そ の よ う な 請 求 権 は 、 す で に 、 当 該 住 居 の 一 部 を 第 三 者 に 委 譲 す る と い う 賃 借 人 の 願 望 を あ と づ け る こ と が で き る と 思 わ せ る と こ ろ の 筋 の 通 っ た 理 由 が 賃 借 人 の 側 に 存 在 す る 場 合 、 受 け 入 れ ら れ な け れ ば な ら な い 。 そ の 際 、 法 秩 序 お よ び 社 会 秩 序 と 一 致 す る と こ ろ の 、 全 く 取 る に 足 ら な い こ と は な い 重 要 さ を と も な う 賃 借 人 の き わ め て 個 人 的 な あ ら ゆ る 利 益 も ま た 、 正 当 な 利 益 と 考 え ら れ な け れ ば な ら な い 。 賃 借 人 が 第 三 者 と と も に 継 続 し て 基 礎 づ け ら れ た 住 居 共 同 体 を 形 成 し た い 場 合 に も 、 自 己 の 私 的 な 生 活 を ﹃ 自 己 の 四 つ の 壁 の な か で ﹄ 自 己 の 考 え に も と づ い て 形 成 す る と い う 賃 借 人 の 決 定 は 、 原 則 と し て 、 こ の こ と に 属 す る ︶54 ︵ 。 こ れ ら の 要 件 は 、 本 件 事 案 に お い て 、 満 た さ れ て い る 。 原 告 ・ 2 の 退 去 に よ っ て 、 原 告 ら の 側 に 、 本 件 住 居 に 残 っ た 原 告 ・ 1 に 、 新 た に 、 住 居 共 同 体 に お い て 生 活 す る こ と を 可 能 に す る た め に 、 転 貸 借 に つ い て の 正 当 な 利 益 が 生 じ た 。 被 告 の 見 解 に 反 し て 、 こ の 点 に 関 す る 原 告 ら の 申 立 て は 、 立 証 さ れ て い な い わ け で は な い 。 そ の つ ど 住
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 二 ) 八 居 共 同 体 に お い て 生 活 し た い と い う 原 告 ら の 願 望 は 、 す で に 、 共 同 で 賃 借 し 、 し ば ら く の 間 住 居 共 同 体 が 実 践 も さ れ た と い う 状 況 か ら 、 結 果 と し て 生 じ る ﹂ ︶55 ︵ 。 次 に 、 住 居 共 同 体 の 形 成 と い う 典 型 的 な 場 合 と 類 似 す る が 、 賃 借 人 が 、 自 己 の 人 生 形 成 の 枠 組 み に お い て 、 婚 姻 に 類 似 し た 、 な い し 、 婚 姻 に よ ら な い 生 活 共 同 体 や 何 ら か の 生 活 共 同 体 を 第 三 者 と 形 成 し た い と い う 事 案 に お い て 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る と 判 断 さ れ た 民 事 裁 判 所 の 裁 判 例 を 三 つ み て お き た い 。 ︻ 8 ︼ ボ ン 地 方 裁 判 所 一 九 七 六 年 三 月 二 二 日 判 ︶56 ︵ 決 ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 原 告 は 、 一 九 六 四 年 に 、 被 告 、 お よ び 、 被 告 の 当 時 の 夫 に 、 本 件 住 居 を 賃 貸 し た 。 本 件 建 物 に は 、 本 件 住 居 の ほ か 、 別 の 三 つ の 住 居 、 な ら び に 、 原 告 の 業 務 用 の 空 間 が 存 在 し た 。 被 告 の 夫 が 死 亡 し た 後 、 被 告 は 、 さ し あ た り 、 ひ と り で 本 件 住 居 を 使 用 し て い た が 、 一 九 七 四 年 に 、 独 身 の イ タ リ ア 国 籍 を 持 つ A を 本 件 住 居 に 受 け 入 れ 、 そ れ 以 後 、 A と 婚 姻 に 類 似 し た 関 係 に お い て 生 活 し て い た 。 被 告 は 、 被 告 の 夫 の 死 亡 に も と づ く 被 告 の 年 金 請 求 権 が 喪 失 す る こ と に か ん が み て 、 A と 婚 姻 す る こ と を 意 図 し な か っ た 。 原 告 は 、 一 九 七 五 年 に 、 A が 本 件 住 居 か ら 退 去 す る た め に 配 慮 す る こ と を 被 告 に 請 求 し た 。 被 告 は 、 原 告 の 当 該 請 求 を 拒 絶 し 、 B G B 旧 五 四 九 条 二 項 を 指 摘 し て 、 本 件 住 居 に A を 受 け 入 れ る た め の 原 告 の 許 可 の 付 与 を 請 求 し た 。 こ れ に 対 し て 、 原 告 は 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 即 時 に 解 約 告 知 し 、 同 時 に 、 本 件 住 居 の 明 渡 し の 訴 え を 提 起 し た 。 被 告 は 、 反 訴 を も っ て 、 本 件 住 居 に A を 受 け 入 れ る た め の 原 告 の 許 可 の 付 与 を 請 求 し た 。
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 九 区 裁 判 所 は 、 原 告 の 明 渡 し の 訴 え を 認 容 し 、 被 告 の 反 訴 を 棄 却 し た 。 こ れ に 対 し て 、 被 告 は 、 地 方 裁 判 所 に 控 訴 し た の で あ る 。 ② 判 決 理 由 地 方 裁 判 所 は 、 結 論 と し て 、 ﹁ 被 告 は 、 B G B 五 四 九 条 二 項 に も と づ い て 、 本 件 住 居 に A を 受 け 入 れ る た め の 原 告 の 許 可 の 付 与 を 請 求 す る 権 限 が あ る ﹂ ︶57 ︵ 、 と 判 断 し た 。 そ の 理 由 と し て 、 最 も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る と こ ろ の 地 方 裁 判 所 の 論 述 は 、 次 の よ う で あ っ た 。 ﹁ こ れ に 対 し て 、 自 己 の 人 生 を ﹃ 自 己 の 四 つ の 壁 ﹄ の な か で 自 己 の 考 え に も と づ い て 形 成 す る と い う 被 告 の 権 利 が 存 在 す る 。 異 性 の 人 と 婚 姻 す る こ と な し に 一 緒 に 生 活 す る と い う 権 利 も ま た 、 こ の こ と に 属 す る 。 た と え 、 な さ れ な い ま ま で あ っ た 婚 姻 の 締 結 に と っ て 、 原 告 の 主 張 に 対 応 し て 、 経 済 的 な 理 由 が 決 定 的 で は な か っ た と し て も 、 そ れ に も か か わ ら ず 、 被 告 が 新 た な 婚 姻 を こ れ ま で 見 合 わ せ た こ と は 、 被 告 の 年 齢 か ら し て 、 異 議 が 述 べ ら れ る こ と は で き な い し 、 論 拠 の あ る 考 慮 に 親 し み や す い 。 い ず れ に せ よ 、 こ の よ う な 決 定 は 、 被 告 か ら 得 ら れ た 個 人 的 な 印 象 に も と づ い て 、 特 に 行 き 当 た り ば っ た り の 考 え 方 に も と づ い て は い な か っ た 。 被 告 が 、 い ま や 二 年 を 越 え て A と 一 緒 に 生 活 し 、 ま さ し く よ り し ば し ば 替 わ る こ と の な い 男 性 と の つ き あ い を 続 け て き た こ と も ま た 、 行 き 当 た り ば っ た り の 考 え 方 に 不 利 な 材 料 を 提 供 す る 。 被 告 が ﹃ 軽 々 し い ﹄ 生 活 様 式 で あ っ た な ら ば 、 被 告 は 、 第 一 審 手 続 お よ び 控 訴 審 手 続 に お い て 繰 り 返 さ れ た と こ ろ の 被 告 の 訴 訟 上 の 危 険 の 指 摘 に 際 し て 、 最 終 的 に 、 お そ ら く 、 本 件 住 居 を 失 わ な い た め に 、 A に 本 件 住 居 か ら 退 去 す る よ う に 命 じ る 気 が あ っ た で あ ろ う ﹂ ︶58 ︵ 。
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 二 ) 一 〇 さ ら に 、 二 次 的 に は 、 地 方 裁 判 所 の 次 の よ う な 論 述 も 、 重 要 な 理 由 で あ ろ う 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 全 体 で 六 一 .五 平 方 メ ー ト ル の 広 さ で 、 二 つ の 部 屋 、 台 所 、 シ ャ ワ ー 、 ト イ レ 、 お よ び 、 玄 関 ホ ー ル か ら 構 成 さ れ て い た と こ ろ の 本 件 住 居 は 、 二 人 の 人 に と っ て 適 切 で あ り 、 本 件 使 用 賃 貸 借 契 約 の 締 結 時 に も 、 二 人 の 人 に よ っ て 賃 借 さ れ て い た 。 被 告 の 夫 の 死 亡 の 結 果 、 本 件 住 居 に お け る 被 告 の 夫 の 場 所 は 、 空 い た 。 そ れ に 加 え て 、 被 告 の 収 入 は 、 被 告 の 夫 の 所 得 に 対 し て よ り わ ず か な 年 金 収 入 の 結 果 、 減 少 し た 。 そ れ に 対 し て 、 本 件 住 居 の 賃 借 に も と づ く 負 担 は 、 付 帯 費 用 を 含 め て 、 本 質 的 に 、 同 じ ま ま で あ っ た 。 こ の よ う な 家 族 的 お よ び 経 済 的 な 関 係 は 、 本 件 住 居 に さ ら な る 人 を 受 け 入 れ る こ と に つ い て 、 被 告 の 正 当 な 利 益 を 基 礎 づ け る ﹂ ︶59 ︵ 。 ︻ 9 ︼ ベ ル リ ン 地 方 裁 判 所 一 九 八 五 年 一 〇 月 一 二 日 判 ︶60 ︵ 決 ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 賃 貸 人 で あ っ た 原 告 ( ド イ ツ 財 団 と い う 公 法 上 の 法 人 ) は 、 一 九 八 〇 年 一 二 月 一 六 日 、 被 告 と 、 九 六 平 方 メ ー ト ル の 広 さ で 、 五 つ の 部 屋 、 台 所 、 三 つ の 地 下 室 、 ベ ラ ン ダ 、 ホ ー ル 等 か ら 構 成 さ れ て い た 本 件 住 居 ︶61 ︵ に 関 す る 使 用 賃 貸 借 契 約 を 締 結 し た 。 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 は 、 一 九 八 〇 年 一 二 月 一 九 日 に 始 ま り 、 当 初 、 そ の 終 了 時 点 と し て 、 一 九 八 一 年 六 月 三 〇 日 が 見 込 ま れ て い た 。 被 告 は 、 妻 と 二 人 の 子 供 ら と と も に 、 本 件 住 居 に 居 住 し て い た が 、 一 九 八 三 年 に 、 被 告 の 妻 は 、 子 供 ら と と も に 、 本 件 住 居 か ら 退 去 し た 。 そ の 後 、 被 告 は 、 一 九 八 四 年 の う ち に 、 現 在 の 伴 侶 、 お よ び 、 そ の 三 人 の 子 供 ら と と も に 、 本 件 住 居 に お い て 、 共 同 の 世 帯 を 構 え 、 被 告 の 現 在 の 伴 侶 は 、 一 九 八 五 年 七 月 に 、 被 告 と の 子 供 を 出 産 し た 。 被 告 は 、
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 六 巻 第 二 号 ( 二 〇 一 三 年 九 月 ) 一 一 一 九 八 五 年 一 月 に 、 離 婚 の 書 類 を 提 出 し た 。 原 告 は 、 一 九 八 五 年 三 月 四 日 に は じ め て 、 こ れ ら の 経 過 を 知 っ た 。 そ の 前 に 、 原 告 は 、 一 九 八 一 年 六 月 一 九 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 一 九 八 一 年 九 月 三 〇 日 ま で 延 長 す る こ と を 表 明 し た 。 し か し 、 原 告 は 、 一 九 八 一 年 七 月 一 七 日 付 け の 書 面 を も っ て 申 し 立 て ら れ た と こ ろ の 、 さ ら な る 延 長 を 求 め る 被 告 の 依 頼 を 拒 絶 し た 。 そ の 後 、 原 告 は 、 一 九 八 一 年 九 月 三 〇 日 の 後 、 一 九 八 一 年 一 一 月 一 三 日 に 請 求 し た こ と を 最 初 と し て 、 何 度 か 、 本 件 住 居 を 明 け 渡 す よ う に 被 告 に 請 求 し た 。 さ ら に 、 原 告 は 、 一 九 八 四 年 五 月 二 二 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 奨 学 生 の 促 進 の 増 大 と い う ド イ ツ 財 団 の 公 法 上 の 課 題 を 満 た す た め に 、 本 件 住 居 を 必 要 と す る と い う 理 由 に も と づ い て 、 被 告 と の 使 用 賃 貸 借 関 係 を 解 約 告 知 し た 。 被 告 が 一 九 八 四 年 五 月 二 二 日 付 け の 解 約 告 知 に 異 議 を 述 べ た 後 、 原 告 は 、 本 件 住 居 の 明 渡 し の 訴 え を 提 起 し た 。 そ の 後 、 曲 折 を 経 た 後 、 区 裁 判 所 は 、 一 九 八 五 年 二 月 六 日 付 け の 判 決 に よ っ て 、 原 告 の 訴 え を 棄 却 し た 。 区 裁 判 所 は 、 当 事 者 間 の 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 は 、 B G B 旧 五 六 八 条 ( 黙 示 の 延 長 に 関 す る 規 定 ) に も と づ い て 、 期 間 の 定 め な く 延 長 さ れ 、 ま た 、 一 九 八 四 年 五 月 二 二 日 付 け の 解 約 告 知 は 有 効 で は な か っ た 、 と い う 理 由 に も と づ い て い た 。 こ れ に 対 し て 、 原 告 は 、 地 方 裁 判 所 に 控 訴 し た 。 控 訴 審 裁 判 所 に お い て 、 原 告 は 、 は じ め て 、 本 件 住 居 の 明 渡 し の 請 求 を 、 被 告 の 現 在 の 伴 侶 に 許 可 さ れ て い な い 転 貸 借 が な さ れ た こ と を 理 由 と し て 、 一 九 八 五 年 四 月 三 日 付 け の 書 面 を も っ て 意 思 表 示 さ れ た と こ ろ の 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 の 解 約 告 知 に も 依 拠 さ せ た 。 原 告 は 、 被 告 の 現 在 の 伴 侶 、 お よ び 、 そ の 子 供 ら を 本 件 住 居 に 受 け 入 れ る こ と は 、 許 可 さ れ て い な い 転 貸 借 を 意 味 し 、 ま た 、 本 件 住 居 は 、 被 告 の 現 在 の 伴 侶 の 子 供 ら を も 受 け 入 れ る こ と に よ っ て 、 過 度 に 人 員 が 配 置 さ れ る 、 と 主 張 し た 。