思いやりの広がり 中垣芳隆 年が改まった元日の午後、天気予報どおりに穏やかな外気に誘われ、地元の神社に恒例 の初詣に出かけましたが、例年に比べて参拝の方の多いのが今年の初驚きでした。いつも なら拝殿まで数分並べば十分なところが、2割増しの時間、雑踏の中に並び、毎度のこと ながら、お賽銭の額の何十倍、何千倍もの願いをかけました。報道のニュースによれば、 横綱格の伏見稲荷大社をはじめ、いずれの神社も三が日の人出が例年を上回った模様です が、これも多くの人の生活を一変させた災害・事故の生起した前年に別れを告げ、今年こ そ皆が笑顔で暮らせるいい年であるようにとの人々の気持ちの表れでしょうか。 昨年の世相を表す漢字一字は「絆」でした。年末TV を見ていますと、「家族の絆の大 切さ」がしきりと語られ、年代を問わず同窓会の開催が増えているとのニュースが報じら れていました。或る人の言葉には「絆には二つの種類がある。例えば血縁関係は強い結び つきで、仕事、趣味、学校での人間関係はゆるやかな結びつき」とあります。65歳以上の 単身世帯化がますます増加するであろうわが国では、ゆるやかな絆の重要性が高まってい くものと思われますが、東日本大震災を契機に他人を思いやる気持ちはさらに広がりを見 せているようです。 様々な調査で同様の傾向がみられるようですが、或る大学の先生の調査によれば、今後 大事だと感じることについて、89%の人が「他人を思いやる心」を、83%の人が「他 人との助け合い」を挙げ、経済成長(77%)やグローバル化(49%)を上回っていま す。高度経済成長期以降、我が国が右肩上がりに成長していた時代は、「個」が重視され、 他人とのかかわりを避ける傾向にあったようですが、バブル崩壊後の経済の長期低迷や急 速な高齢化により、困っている人を目にする機会が増えた結果「困っている人がいたら手 を差しのべよう」という気持ちをもつ人が徐々に増えてきました。東日本大震災の後は、 こうした気持ちが、本学の学生もそうですが、ボランティアや寄付といった取り組みの形 で一気に活発化したことは周知のことです。これらの活動に繰り返し参加している人たち の多くは、「真剣だが深刻ではない」ことが長続きする理由として挙げています。肩肘張 らず、出来る範囲で協力し支えあう活動形態は、近年地域社会の結びつきの希薄化が嘆か れてきた、我が国の今後のコミュニティーの在り方に大きな示唆を与えているように思わ れます。最後に、今年一年、皆さまにとって良い年でありますよう祈念申しあげます。
DSpace at My University: 英語教育リレー随想 24号(2012.1) 思いやりの広がり
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