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ルートヴィヒ・ベヒシュタイン編著
『ドイツ
昔
メ ル ヒ ェ ン話
集』
(一八五七)試訳(その五)
鈴木
滿
訳・注・解題
お断り 編 著 者 ル ー ト ヴ ィ ヒ・ ベ ヒ シ ュ タ イ ン に 関 し て は、 鈴 木 滿 訳・ 注・ 解 題「 ル ー ト ヴ ィ ヒ・ ベ ヒ シ ュ タ イ ン 編 著 『 ド イ ツ 昔 メルヒェン 話 集 』( 一 八 五 七 ) 試 訳( そ の 一 )」 (「 人 文 学 会 雑 誌 」 第 四 〇 巻 第 四 号、 二 〇 〇 九 ・ 三 月 ) の「 ま え が き 」 をご参照ください。 なお、目下のところ底本としては ヴァルター・シェル フ (( ( の注とあとがき付きで、ルートヴィヒ・リヒターの一八七葉の挿絵が入った下記Ludwig Bechstein : Sämtliche Märchen. Wissenschaftliche Buchges
ellschaft. Darmstadt (972. と共に ハンス=イェルク・ウタ ー (2 ( 編の下記
Ludwig Bechstein : Märchenbuch. Nach der Ausgabe von (857, textkritisch revidiert und durch Register
erschlossen. Herausgegeben von Hans-Jörg Uther. Eugen Diederich
s Verlag. München (997. をも用いている。 こ れ は Ludwig Bechstein Märchen と し て 二 巻 本。 第 一 巻 が D M B( 一 八 五 七 )。 た だ し 挿 絵 は 一 切 無 い。 第 二 巻は N D M B。「世界の民話」 Die Märchen der Welitliteratur (略称 M d W)シリーズの一つである。共に簡単な がら、古語、方言などドイツ語圏の一般読者にとって難解な語彙一覧が、収録された 昔 メルヒェン 話 番号別に付いている。ま た、 シ ェ ル フ 注 釈 テ キ ス ト に は 稀 な が ら 存 在 し た 誤 植 が、 こ ち ら で は 訂 正 さ れ て い る。 ま た、 M d Wの 方 針 に 従 い、 全 て の 昔 メルヒェン 話 の 注 中 に A T番 号 と そ の タ イ ト ル( A Tの 英 語 タ イ ト ル で は な く ド イ ツ 語 で ) が 必 ず 示 さ れ て い る。 ただし、注自体はシェルフ注釈テキストの方がずっと詳細なので、両テキストを相互に補完させるのがよろしか ろう。 ちなみに訳文中の[ ]内、その他の部分の〔 〕内は訳者の補足である。 訳注・解題略記号凡例 A T ア ン テ ィ・ ア ー ル ネ / ス テ ィ ス・ ト ン プ ソ ン 編 著『 民 話 の 話 型 』 Antti Aarne / Stith Thompson : The Types of the
Folktale. Suomalainen Tiedeakatemia. Academia scientiarum Fenni
ca. Helsinki (964. A T U ハ ン ス= イ ェ ル ク・ ウ タ ー 著『 国 際 的 民 話 の 話 型 』 Hans-Jörg Uther : The Types of Internatinal Folktales. A
Classification and Bibliography. 3 Vols. Academia scientiarum Fe
nnica. Helsinki 2004. A Tの増補改訂版。 B P ヨハンネス・ボルテ / ゲオルク・ポリーフカ編著『 K H M注釈』 Herausgegeben von Johannes Bolte / Georg Polívka :
85 Anmerkungen zu den Kinder- und Hausmärchen der Brüder Grimm. 5 Bde. Georg Olms Verlagsbuchhandlung. Hildesheim (963. D M B(一八四五) ルートヴィヒ・ベヒシュタイン編著『ドイツ 昔 メルヒェン 話 集』
Ludwig Bechstein : Deutsches Märchenbuch
( (845 ). D M B(一八五七) ルートヴィヒ・ベヒシュタイン編著『ドイツ 昔 メルヒェン 話 集』
Ludwig Bechstein : Deutsches Märchenbuch
( (857 ). D S グリム兄弟編著『ドイツ伝説集』
Brüder Grimm : Deutsche Sagen.
第一巻(一八一六) 。第二巻(一八一八) 。 E M ク ル ト・ ラ ン ケ 創 始 / ロ ル フ・ ヴ ィ ル ヘ ル ム・ ブ レ ー ド ニ ヒ 編『 昔 メルヒェン 話 百 科 事 典 』 Begründet von Kurt Ranke. Herausgegeben von Rolf Wilhelm Brednich zusammen mit Hermann Bausinger : Enzyklopädie des Märchens :
Handwörterbuch zur historischen und vergleichenden Erzählforsch
ung. Walter de Gruiter. Berlin [u. a.]
(977-. H d A ハ ン ス・ ベ ヒ ト ル ト= シ ュ ト ロ イ ブ リ 編『 ド イ ツ 俗 信 事 典 』 Herausgegeben von Hanns Bächtold-Sträubli :
Handwörterbuch des deutschen Aberglaubens.
(0 Bde. Walter de Gruiter. Berlin / New York
(987. H d M 『ドイツ 昔 メルヒェン 話 便覧』
Handbuch des deutschen Märchens.
このうち二巻のみが一九四〇年までに刊行された。 E Mの前身。 K H M グリム兄弟編著『子どもと家庭のための 昔 メルヒェン 話 集』 Kinder- und Hausmärchen gesammelt durch die Brüder Grimm. 初版 第一部(一八一二) ・第二部(一八一五) 。決定(第七)版(一八五七) 。 M d W 「世界の民話」 Die Märchen der Weltliteratur. Begründet von Friedrich von der Leyen. Herausgegeben von Kurt Schier
und Felix Karlinger. Eugen Diederichs Verlag. Düsseldor-Köln.
N D M B( 一 八 五 六 ) ル ー ト ヴ ィ ヒ・ ベ ヒ シ ュ タ イ ン 編 著『 新 ド イ ツ 昔 メルヒェン 話 集 』 Ludwig Bechstein : Neues deutsches Märchenbuch ( (856 ). V d D ヨ ー ハ ン・ カ ー ル・ ア ウ グ ス ト・ ム ゼ ー ウ ス 著『 ド イ ツ 人 の 民 話 』( 一 七 八 二 ─ 八 六 ) Johann Karl August Musäus :
六五
黄
き ん金
の小さな星をつけた男の子たち
昔むかしうら若き伯爵がいた。とっても美男だったけど、これまで恋なるものを味わったことがなく、母夫人や 友人たちの、結婚しなければ、という 小 こ 言 ご と についぞ耳を貸さなかった。しかし城下の村をお忍びで歩き回り、若い 衆 や 娘 た ち が 糸 紡 ぎ 部 屋 (3 ( で し た り、 歌 っ た り、 し ゃ べ っ た り す る こ と を そ っ と 見 聞 き す る の を 楽 し み に し て い た。 こうしたある時、伯爵自身を話題とする会話が聞こえた。娘らの一人が言うには「ああ、もしうちの伯爵様が結婚 することになって、もしそのお相手があたしだったら、飛び切り美味しいお料理をあの方に 拵 こしら えてあげるんだけど な 」。 二 人 目 が 言 う に は「 も し あ た し だ っ た ら、 あ の 方 の 子 ど も た ち を ほ ん と に き ち ん と お 世 話 し て 育 て 上 げ る ん だ け ど な 」。 「 あ た し は ね 」 と 三 番 目 が 言 っ た。 「 も し 奥 様 に し て い た だ け れ ば、 あ の 方 に 可 愛 い 坊 や を 二 人 産 ん で あ げ る つ も り。 そ の 子 た ち は 胸 に 黄 金 の 小 さ な 星 を つ け て る こ と で し ょ う よ 」。 他 の 娘 ら は ど っ と 笑 っ た が、 伯 爵 の方はいろいろ思案に耽りながら、城へ引き揚げた。 翌日伯爵は三人の娘らを呼びにやらせた。で、彼女たちは昨日お互いに伯爵が妻をもらうとしたらどうするかに ついてしゃべったことをもう一度全部繰り返さねばならなかった。三番目は長いこと拒み続けた。なにせ恥ずかし か っ た の で ね。 で も と う と う 自 分 の 思 い 切 っ た 望 み を 打 ち 明 け る と、 伯 爵 は 優 し く 乙 女 の 手 を 取 っ て、 こ う 言 っ た。 「 そ な た の 言 葉 通 り の 男 の 子 を 二 人 産 ん で く れ る な ら、 そ な た を わ た し の 妻 に し よ う。 で も そ う な ら な か っ た ら、 わ た し は 鼻 で 嗤 わ ら っ て そ な た を こ の 城 か ら 追 い 出 し て し ま う よ 」。 娘 は 承 諾 し た。 だ っ て 彼 女 は 明 る い 性 分 だ っ た上、かねてから伯爵を心中ひそかに慕っていたものだから。それから婚礼が行われたが、伯爵の母親はこれがな んとも気に喰わなかった。さて、数箇月経つと若い伯爵夫人に懐妊の 兆 き ざ しがあったが、伯爵は 遠 お ん ご く 国 に出かけねばな87 らなくな り (4 ( 、奥方が出産したらすぐにその旨手紙で知らせてくれるよう、母親に頼んだ。こちらは猫をかぶって 嫁 よ め 女 じ ょ をちやほやしていた。 分娩の時が迫り、若妻は二人の可愛い男の子を産んだ。この子たちは胸に黄金の小さな星をつけていた。産婦は 精も根も尽き果てたので、長いこと気を失っていた。意識を取り戻して、子どもたちは、と 質 た だ すと、こんなことを 告げられたのだ。産まれたのは不細工な猫どもだったので、水に漬けて殺してしまった、と。これを聞いて身も世 もなく嘆き悲しんだが、それに続いた不幸はもっとひどかった。彼女は物乞いの女かなんぞのように、嘲りの声を 浴びせられて城を追い出されたのだ。哀れんでくれたのは下僕がたった一人。この男はこっそりこう打ち明けてく れた。あなた様がお産みあそばしたのは、胸に黄金の小さな星をつけた二人の綺麗な男のお子たち。籠に入れられ て、 こ れ は 猫 だ か ら 水 に 投 げ 込 む よ う に、 と の 命 令 で 自 分 に 引 き 渡 さ れ た の で す が、 籠 を 開 け た と こ ろ、 罪 も な い 赤 子 が 可 哀 そ う で た ま ら な く な り、 育 て て く れ、 と あ る お ば さ ん に 預 け ま し た、 と。 放 逐 さ れ た 奥 方 は 悲 嘆 の う ち に も こ れ を 聞 い て 大 喜 び、 同 情 し て く れ た 召 使 に 何 度 も 何 度 も 礼 を 言 う と、 急 い で 子 ど も た ち の 許 も と に 向 か い、 人 目 に つ か な い 寂 し いところで何年も一緒に暮らした。 男 の 子 た ち は す く す く 育 ち、 ま す ま す 可 愛
らしくなった。哀れな妻は夫を偲び、あのひとがこの子たちを目にしたら、 邪 よこしま なその母親の仕打ちをすっかり償っ てくれるでしょうにねえ、と考えた。するとこんな夢を見た。十字路の脇に立っている大きな し リ ン デ ン バ ウ ム なの木 の (5 ( ところに 行け。木の下に 亜 あ ま に 麻仁 が (6 ( 一山ある。これで 隠 ポ ケ ッ ト し を一杯にするがよい。けれどそれ以上取ってはいけない。そうして それからポルトガ ル (7 ( へ行くのだ。そなたの夫はその地である女魔法使 い (8 ( 、というか 妖 フ ェ 精 と (9( いうか、そうした者の愛 の網に 絡 か ら め取られている、と。妻はその木の許に行き、亜麻仁を見つけ、それで 隠 ポ ケ ッ ト し を一杯にした。森の中で強盗 に襲われ、身ぐるみ剥がれたので、一文無しになってしまい、それから先は物乞いして生きて行かなければならな くなり、足は傷つき、血が流れた。こんな惨めな境遇ながら再三夢に慰められた。夢は、最後には成功する、と約 束してくれた。ある時のこと美しい館の 門 か ど ぐ ち 口 で、どうぞお恵みを、と頼んだところ、館の奥方は妻が連れている子 どもたちを見、いかにも可愛らしいのにひどく心を打たれ、哀れな妻に向かって、どちらか一人譲ってたもれ、そ の 代 わ り い か よ う な 望 み で も 叶 え ま し ょ う、 と 申 し 出 た。 子 ど も の 一 人 を 失 う の は 哀 れ な 妻 に は と て も 辛 か っ た が、 そ れ で も 結 局 は 承 知 し て、 引 き 替 え に 丁 度 奥 方 が そ の 前 に 佇 たたず ん で い た 小 さ な 黄 き ん 金 の 足 踏 み 糸 繰 り 車 ((0 ( が 欲 し い、 と言った。奥方はそんな要求を 訝 いぶか しく思ったが、それでも糸繰り車を差し出し、二人の男の子の片方は奥方の許に 残 さ れ た。 哀 れ な 妻 は 先 へ 先 へ と 旅 を 続 け、 と う と う ま た し て も 二 人 目 の 男 の 子 と 別 れ を 告 げ な け れ ば な ら な く なった。その子の代わりに貰ったのは小さな黄金の手回し糸繰り 車 ((( ( 。この二つの貴重な道具を大事だいじにしまい 込み、妻は苦しい旅路を続けた。 のべつまくなしの 艱 か ん 難 な ん 辛 し ん 苦 く のあげく、やっとのことでポルトガルに到着、夫が住んでいる館にやって来た。館の 召使たちの話では、ご主人様は結婚なさっておられ る ((2 ( が、奥様のお顔を見た者はだれもいない、なにしろ館にいる のは夜の間だけ、昼間はどこへ行くのかだれも知らない、とのこと。太陽が沈むと、妻は館の庭園に忍び込み、伯
89 爵 夫 人 の 部 屋 の 窓 の 下 に 腰 を 下 ろ す と、 足 踏 み 糸 繰 り 車 を 回 し た の で、 車 は 夜 の 闇 の 中 で 星 の よ う に 輝 い た。 さ て、伯爵の奥方である女魔法使いは妻のところへやって来ると、この風変りな玩具のことを問い質した。妻は、お 願いを一つ聴いてくださいますなら、これは贈り物に差し上げます、と答えた。その願いとはつまり、相手の夫の 傍 で 一 夜 過 ご さ せ て 欲 し い、 と い う も の。 女 は こ れ を な ん と も 妙 だ と は 思 っ た が、 と に か く 承 知 し た。 け れ ど も、 こっそり伯爵に眠り薬を飲ませた。そこで伯爵は一晩中目を覚まさず、傍らにいた妻はがっかりして夜が明けるの を見た。夜が明けると女魔法使いは妻を迎えに来た。でも次の宵、妻はまたまた館の外に坐り、黄金の手回し糸繰 り車を回した。女魔法使いはまたやって来たが、同じ願いを聴き入れなければならなかった。今度はしくじって十 分強い眠り薬を伯爵に盛らなかったので、夜が明けないうちに伯爵が目を覚まし、痩せ衰え、 窶 や つ れきった妻が傍ら にいるのを見てびっくりした。妻は夫に胸の思いをありったけぶちまけた。これを聞いた伯爵は子どもたちがなん ともいとおしくて堪らなくなり、妻に、改めて自分の奥方として認める、と約束した。それから、 妖 フ ェ 精 がやって来 て、妻をそこから連れ出す時、眠っているふりをした。さて、伯爵は 妖 フ ェ 精 に向かってこんな話をした。こんな奇妙 な夢を見たのだよ。ある男だがね、これが判断を間違って妻を追い出してしまい、他の女性と結婚した。けれども 元の妻は命と美貌を犠牲にしてその男を探し求めた。その妻が夫を見つけ出したとしたら、夫はどうすべきだろう か、 と い う 夢 な の だ よ、 と。 「 で し た ら そ の 方 は 二 度 目 の 奥 さ ん と 別 れ て、 信 ま こ と 実 の あ る そ の ひ と の と こ ろ へ 戻 ら な く て は 」 と 妖 フ ェ 精 。「 そ な た は 自 分 で 自 分 に 審 判 を 下 し た の だ 」 と 伯 爵 が 応 じ て、 何 が 起 こ っ た の か 一 部 始 終 を 物 語った。そこで 妖 フ ェ 精 は悲しく切ないながら身を引き、伯爵は、子どもたちを請け戻してから、 信 ま こ と 実 のある奥方とも ども故郷に引き揚げた。伯爵の邪な母親は二度と再び息子の面前に姿を現さなかった。伯爵は奥方をこよなく大切 にし、あの同情心篤い召使にはたっぷり礼をした。黄金の星をつけた男の子たちは成長して両親の喜びとなり、大
胆不敵な勇士として幾多の合戦に参陣、勝利の 勳 いさお を 嬴 かちえ たのだった。 解題 フランケン地方の口承。 ヨ ー ロ ッ パ で 最 初 に こ の 類 話 が 見 ら れ る の は ジ ョ ヴ ァ ン ニ・ フ ラ ン チ ェ ス コ・ ス ト ラ パ ロ ー ラ『 楽 し き 夜 夜 』 Giovanni Francesco Strapalora : Le piacevoli notti ( 一 五 五 〇 ─ 五 四 ) 第 四 夜 第 三 話。 後 に ド ー ノ ア 夫 人 の「 王 女 麗 ベ ル ・ エ ト ア ー ル し の 星 」 Mme d ’Aulnoy : La princesse Belle-Etoile に よ っ て 広 く 知 ら れ る よ う に な っ た。 K H M九 六「 三 羽 の 小 鳥 」 De drei Vügelkens と の 似 寄 り も 指 摘 し て お く べ き で あ ろ う。 な お 後 者 は お そ ら く ア レ ク サ ン ド ル・ セ ル ゲ ー ヴ ィ チ・ プ ー シ キ ン の 民 話 詩「 サ ル タ ン 王 と そ の 息 子、 誉 れ 高 く 逞 し き グ ヴ ィ ド ン・ サ ル タ ー ノ ヴ ィ チ 公 と 世 に も 麗 し き 白 鳥 王 女 の 物 語 」 の 素 材。 ガ ラ ン 訳 の『 千 一 夜 物 語 』 に あ る( Parizade-Erzählung )、とのことだが、未詳。 A T七〇七「三人の金髪の息子」
The Three Golden Sons.
原題
9(
六六
杜
ね ず松
の木
解題 A T七二〇「母さんがぼくを殺した、父さんがぼくを食べた。杜松の木」 My Mother Slew Me ; My Father Ate Me. The Juniper Tree. 原題 Der Wachholderbaum K H M四七「杜松の木の話」Von dem Machandelboom
六七
白い狼
あ る 王 が 狩 を し よ う と 馬 で 大 き な 森 に 分 け 入 っ た が 、 そ こ で 迷 っ て し ま っ て ね 、 幾 日 も 幾 夜 も あ て ど も な く う ろ つ く 羽 目 に な り 、 ど う し て も ち ゃ ん と し た 道 が 見 つ か ら ず 、 餓 え と 渇 き に 苦 し ん だ 。 や っ と の こ と で 出 逢 っ た の は 黒 装 しょうぞく 束 の 小 人 だ が 、 王 は こ れ に 道 を 訊 ね た も の 。「 ご 案 内 し て 送 り 届 け て 差 し 上 げ ま し ょ う が な 、 あ な た 様 の 方 も そ の お 礼 に わ し に な ん ぞ く だ さ ら ね ば 。 お 宅 に 戻 ら れ て 最 初 に 出 く わ す も の を こ ち ら に お よ こ し に な ら な く て は な り ま せ ぬ 」 と 小 人 。 王 は 嬉 し が っ て 道 道 こ う 言 っ た 。「 小 人 よ 、 そ な た は 全 く 感 心 だ の 。 ま っ こ と 、 わ し の 一 番 の 愛 犬 が わ し を 迎 え に 走 り 寄 っ て ま い っ て も 、 喜 ん で 褒 美 に そ な た に 遣 わ そ う ((3 ( 」。 し か し 小 人 は こ う 答 え た 。「 そ ち ら の 一 番 の 愛 犬 な ん ぞ わ し は 欲 し く は ご ざ い ま せ ん 。 わ し が 好 き な は 別 の も の 」。 さ て 二 人 が 城 に 近 づ く と 、 王 の 一 番 末 の 姫 君 が 窓 か ら お 父 様 が 馬 で 戻 っ て 来 た の を 見 つ け 、 は し ゃ い で ぴ ょ ん ぴ ょ ん 駈 け て 来 た 。 こ う し て 娘 に 抱 き 締 め ら れ た 王 は 「 や あ 、 こ れ は し た り 、 一 番 の 愛 犬93 が 迎 え に ま い れ ば よ か っ た の に 」 と 言 っ た 。 こ れ を 聴 い て 王 女 は と っ て も 驚 き 、 泣 き だ し ち ゃ っ て こ う 叫 ん だ 。 「 な ん で す っ て 、 お 父 様 。 私 よ り 犬 の 方 が お 可 愛 い の で す か 。 犬 が お 迎 え に ま い っ た 方 が 嬉 し か っ た 、 と お っ し ゃ るの」 。王は息女を慰め 、「ああ 、いとしい娘や 、そんなつもりで申したのではないのだ」と言い 、ことのしだいを 一切物語った 。でも姫君はびくともせずにいわく 「いとしいお父様が深い森の中でひどい死に方をなさるよりこの 方 が ず う っ と よ ろ し ゅ う ご ざ い ま す 」。 す る と 小 人 は こ う 言 っ た 。「 一 週 間 し た ら 連 れ に 来 る 」。 一週間経つとほんとうに一頭の白い狼が王城に来た。そして王女はいやおうなしにその背中に乗らなければなら なかった。それから、ほっほう、それ進め、藪だろうが原っぱだろうが、上り坂だろうが下り坂だろうがおかまい なく、どんどこどんどこどこまでもまっしぐら。王女は狼にまたがっているのがもうもうやりきれなくなって「ね え、まだ遠いの」と訊いたのさ。
─
「黙れ。 硝 ガ ラ ス 子 の山まではまだまだなんとも遠いのだ。─
黙っていないと 放 ほ う り 出 す 」。 そ れ か ら ま た も ず ん ず ん 進 む。 と う と う 王 女 は 可 哀 そ う に び く び く お ず お ず、 ま た し て も、 ま だ 遠 い の か、と訊いたのさ。すると同じ脅し文句を狼は言い、どんどんずんずん駈けて行く。とうとう王女が思い切って三 度目にまた訊いた途端、狼は王女をすぐさま背中から投げ落とし、さっさと走って行っちゃった。 さてさて哀れな姫君は昼なお暗い森の中に独りぼっちになり、歩きに歩いて考えた。なんとか人間のいるところ に 辿 た ど り 着 け な い か っ て。 す る と や っ と の こ と で 一 軒 の 小 屋 に 出 く わ し た。 そ こ に は 小 さ い 火 が 燃 え て い て、 歳 を 取 っ た 小 さ な 森 お っ か あ ((4 ( が 坐 り、 火 の わ き に 小 さ な 深 鍋 を 据 え て い た ((5 ( 。「 お ば さ ん、 あ な た、 白 い 狼 を 見 ま せ ん で した」と王女が訊いた。─
「うんにゃ、見なんだ。それは風に訊かなきゃなるまい。風はそこいらじゅうで訊き 回ってるからのう。ところでまずまあちょいとお坐り。そうしてあたしと一緒にお食べなね。ちょっぴり 鶏 と り 汁 じ る を ((6 ( 煮 て い る と こ だ で 」。 お 姫 様 が そ の 通 り に し て、 鶏 汁 を 食 べ 終 わ る と、 婆 様 は「 お ま え さ ん、 鶏 と り の 小 骨 を 持 っ て お 行き。これにゃうまい使い道があるだろうよ」と言い、それから風のところに行く道筋を教えてくれた。 風の 許 も と に王女が着くと、風もやっぱり火の傍に坐り、鶏汁を煮ているところだった。けれども白い狼の行方を訊 か れ た 風 は 王 女 に こ う 返 辞 し た。 「 好 い 子 ち ゃ ん、 わ し は そ ん な の 見 て は お ら ん。 な に せ 今 日 は 一 度 も 外 出 せ ん じ ゃ っ た で な。 の ん び り 休 養 し よ う と 思 っ た の じ ゃ よ。 太 陽 に 訊 い て ご 覧。 あ れ は 毎 日 昇 っ た り 沈 ん だ り し と る。 が、まずわしのようにくつろいで、疲れを休めるがええ。そうしてわしと一緒に食事をしなさい。そしたらおまえ さん、食べた後鶏の小骨を皆持ってける。これにゃうまい使い道があるだろうよ」 。 これが済むと、女の子は太陽のところに出掛けた。そこでもまた風のところでと全く同じだった。太陽はやっぱ り 傍 ら で 鶏 汁 を 煮 て い る 最 中、 そ こ で 話 は 手 っ 取 り 早 か っ た が、 こ ち ら も や っ ぱ り 白 い 狼 を 見 ち ゃ い な か っ た。 で、 姫 君 を 一 緒 の 食 事 に 誘 っ た。 「 あ な た ね、 月 に 訊 い て み な く っ ち ゃ。 だ っ て ど う や ら そ の 白 い 狼 は 夜 に し か 走 ら な い よ う で す も の。 夜 の こ と な ら 月 は な に も か も 目 に し て る わ 」。 王 女 は 太 陽 と 一 緒 に 食 事 を し、 小 骨 を す っ か り 集 め る と、 旅 を 続 け て、 月 に 訊 い て み た。 月 も 鶏 汁 を 煮 て い て、 こ う 言 っ た。 「 そ い つ は や っ か い だ な あ。 わ た し は 晦 み そ か 日 に は 照 ら さ な か っ た し な、 昇 る の が 遅 過 ぎ た こ と も あ る。 白 い 狼 に つ い ち ゃ あ 何 一 つ 知 ら ん 」。 少 女 は し くしく泣き始め「ああ、ああ、それじゃだれに訊けばいいんでしょ」と叫んだ。
─
「まあ辛抱、辛抱、お嬢ちゃ ん」と月。 「『飯食う前には踊りにゃなら ぬ ((7 ( 』[腹が減っては戦はできぬ] 。坐って、まずわたしと一緒に鶏汁を食べ な さ い。 そ う し て 小 骨 も 持 っ て お 行 き。 う ま い 使 い 道 が あ る だ ろ う よ。 そ れ に わ た し は こ ん な 話 も 知 っ て い る の だ。 そ の 黒 装 束 の 小 人 は 硝 子 の 山 に い て ね、 今 日 婚 礼 を 挙 げ る の さ。 月 の 中 の 男 ((8 ( も こ れ に 招 待 さ れ て い る 」。 「 あ ら、硝子のお山、硝子のお山。私、ほんとはそこへ行きたかったんです。だって白い狼はそこへ私を乗せてくはず だ っ た ん で す も の 」 と 王 女 は 大 声 を 出 し た。 「 そ れ じ ゃ あ ね、 そ こ に 辿 り 着 く ま で わ た し が き っ と 照 ら し て あ げ よ95 う。 道 案 内 も し て あ げ る 」 と 月 が 言 っ た。 「 さ も な い と お ま え さ ん、 あ っ さ り 迷 っ て し ま い そ う だ。 な に し ろ た と えばわたしなんぞは体全部がそっくり混じりけなしの硝子の山山でできてるんのだか ら ((9 ( 。さあさあ、おまえさんの 小骨を全部ちゃあんと持って行くんだよ」 。姫君はそうした。だけど慌てたものだから、 一本だけ小骨を忘れちゃっ たんだ。 ま も な く 王 女 は 硝 子 の 山 の 麓 に や っ て 来 た。 で も、 こ の 山、 ど こ も か し こ も つ る つ る す べ す べ で 登 る こ と が で き な か っ た。 け れ ど も 王 女 は 年 取 っ た 森 お っ か あ と 風 と 太 陽 と 月 に 貰 っ た 鶏 の 小 骨 を そ っ く り 取 り 出 し て、 そ れ で 梯 は し 子 ご を 拵 こしら え た。 こ れ は と っ て も 長 く な っ た が、 う わ あ、 や れ や れ 大 変 だ、 お し ま い の た っ た 一 段 が 足 り な か っ た の さ。 そ こ で 姫 君 は 小 指 の 先 っ ち ょ を 切 り 落 と し、 そ れ を う ま く 使 っ た の で、 さ っ さ と 硝 子 の 山 の て っ ぺ ん に 登 る こ と が で き た。 上 に は 大 き な 穴 が 開 い て い て、 立 派 な 階 段 が 下 に 通 じ て い た。 な に も か も 絢 け ん ら ん 爛 豪 華 で、 大 広 間 は 婚 礼 の お 客 た ち で 一 杯、 楽 士 が た く さ ん お り、 ご 馳 走 が た っ ぷ り 並 ん だ 食 卓 が 数 数 あ っ た。 そ れ か ら そ こ に は 例 の 黒 装 束 の 小 人 が 坐 っ て お り、 そ の 隣 に は 女 の 人 が い た。 こ れ が 小 人 の 花 嫁 だ っ た。 で も、 黒 装 束 の 小 人 は 悲 し そ う な 様 子。 そ こ で 王 女 も と っ て も 辛 く な っ た。 自 分 の 到 着
が 遅 過 ぎ た の と、 小 人 が と っ て も 悲 し そ う な の が、 辛 く て 辛 く て 堪 ら な か っ た。 そ れ か ら 胸 の 裡 う ち で こ う 考 え た。 私、白い狼の唄を歌おう。そうしたらもしかして私のことを思い出してくれるかも、と。
─
だって、小人はまだ ちらりとも王女の方を見なかったので、王女がだれだかも分からないでいたから。さて壁際に 竪 ハ ル フ ェ 琴 が (20 ( 一台立ってお り、姫君はこれを上手に 弾 ひ けたので、それを手にしてこう歌った。 「そちらの一番の愛犬なんぞわしは欲しくはございません、 わしが好きなは別のもの、 一番末の王女様。 白い狼駆けてっちゃって、 どこに行ったか分かんない、 一番末の王女様」 小人ははっと聴き耳を立てたが、姫君はなおも演奏と唄を続けた。 「狼の跡を追い掛けて、 指の先っちょ切り落としたの、 一番末の王女様。 やって来たけど、あなたには分かんないのね、97 この唄をせつなくあなたに歌うのは 一番末の王女様」 す る と 小 人 は 座 席 か ら ぱ っ と 立 ち 上 が り、 突 然 こ よ な く 綺 麗 な 若 君 の 姿 に な り、 つ か つ か と 王 女 に 歩 み 寄 る と、 両腕にぐっと抱き締めた。 な に も か も 魔 法 だ っ た の さ。 こ の 若 君 は 魔 法 で も っ て 年 取 っ た 小 人 に、 あ の 白 い 狼 に、 変 身 さ せ ら れ ち ゃ っ て、 硝子の山に封じ込められていたわけなの。どこかの姫君がその許にやって来るために小指の先っちょを犠牲にする までずうっとね。でも、もしある期間、そうしたことが起こらなかったら、若君は別の女の人と結婚して、生涯黒 装束の小人でいなければならないところだったんだ。さあて、こうして魔法が解けると、もう一人の花嫁は姿を消 し、呪いから救済された若君は王女と結婚、それから連れ立って王女の父親の許に向かった。父王は息女に再会で きたことを心から喜び、死ぬまで皆一緒に幸せに暮らした。でも万一死んでいなかったら、いまだに生きてるって こともまずまああるかも知れないね。 解題 ベ ヒ シ ュ タ イ ン は こ の 話 を( D M B一 七、 三 六、 三 七 も し か り だ が )、 カ ー ル・ ミ ュ レ ン ホ ッ フ( 一 八 一 八 ─ 八 四 ) 編『 シ ュ レ ス ヴ ィ ヒ、 ホ ル シ ュ タ イ ン、 ラ ウ エ ン ブ ル ク 諸 公 国 の 伝 説、 昔 話、 民 謡 』 Karl Müllenhoff : Sagen, Märchen und Lieder der
Herzogtümer Schleswig, Holstein und Lauenburg. Kiel
(845, IV. 7. から採録した。 A T四二五「消えた夫を探す」 The Search for the Lost Husband. 、 A T四二五 A「怪物(動物)婿」 The Monster ( Animal ) as Bridegroom. 原題
六八
倹
し ま り や約家
あにいと
浪
つ か い や費家
あにい
昔むかしあるお百姓が息子を二人持っていた。で、お百姓は二人に手仕事を習わせた。 「なにしろな」とお百姓。 「手仕事ちゅうもんには 黄 き ん 金 の土台があるだで」 。息子の一人は靴職人になった。もう一人は仕立て屋さん。で、徒 弟奉公の年期が明けると旅修 行 (2( ( に出た。この連中、二人ながら好一対の 暢 の ん 気 き ぼうずだったが、靴職人の方は有り金 残らず 煙 パ イ プ 管 煙 た ば こ 草 や 嗅 か ぎ煙 草 (22 ( 、それから 火 シュナップス 酒 に (23 ( 遣い果たしてしまうのだった。だが仕立て職はというと、 煙 パ イ プ 管 はやら な い、 嗅 ぎ 煙 草 も 嗅 が な い、 火 シ ュナップス 酒 な ん ぞ 飲 み ゃ あ し な い。 と き ど き、 と に か く 倹 約 し な よ、 と 兄 弟 に 忠 告 し た が、 靴屋はそれを笑い飛ばしていわく「いったいなんのためにおいらに倹約しろって言うんだ。あんたは倹約すりゃあ いい。 倹 し ま り や 約家 にゃ 浪 つ か い や 費家 がつきも の (24 ( さね。諺にあるじゃないか」 。 この愉快な職人衆はこんな具合に丸一年連れ立って旅歩きをした。仕立て屋は一つ特別な財布を用意して、兄弟 が無駄金を遣うたんびに、万一の時の蓄え用の、たっぷりあったことは一度もない、二人共同の会計から丁度同じ だけこれに入れた。これを丸一年やり続け、そのちいちゃな財布のぽんぽんがだんだんふっくらしていくのを嬉し がっていた。 さて両人 、ある時またしても倹約と浪費について口争いをおっぱじめた 。仕立て屋が貯め込んだお宝を自慢する と 、靴屋は 「あんたが貯めたものなんざ 、ろくなことにならんさな」と言い返したもの 。そうこうするうち 、とあ る橋に差し掛かったが 、欄干の上には立派な 、幅が広くて滑らかな石が敷かれていた 。そこで仕立て屋は 、倹約は 良 い も の だ っ て こ と を 兄 弟 に 呑 み 込 ん で も ら お う 、 と し た 。 だ っ て 、 ほ ら 、 諺 に も あ る よ ね 、 備 え あ れ ば 憂 い 無 し (25 ( 、 っ て 。 それ か ら さ 、 蓄 財 に 励 め 、 若者 、 年 老 い て 窮 迫す る は 哀 し き も の ぞ (26 ( 。 二 人 は背 嚢 を 下 ろ し 、 仕 立 て屋 は99 自分のちいちゃな財布を取り出すと 、長いこと持ち歩いたのですっかり赤味がかってしまったすてきなグロッシェ ン銀 貨 (27 ( とゼクサー銀 貨 (28 ( を何枚も数え 、橋石の一つの上に並べた 。これはかなりの金額だったので 、仕立て屋はほく ほ く 喜 ん だ 。 靴 職 人 の 方 は そ の 様 子 を 我 関 せ ず で 眺 め や る と 、 煙 パ イ プ 管 に 煙 草 を 詰 め 、 火 打 ち 道 具 で 火 を 打 ち 出 し た (29 ( 。 丁度その時猛烈な一陣の突風が吹いて来て 、橋に欄干が無かろうものなら 、ちっぽけな仕立て屋さんのこと 、その ま ま 川 に 吹 き 飛 ば さ れ る と こ ろ だ っ た か も 。 で も 、 お 金 の 方 は 風 が な に も か も 水 の 中 に 攫 さ ら い 落 と し て し ま っ た 。 仕 立 て 屋 は び っ く り 仰 天 し て 立 ち す く ん だ ま ま だ っ た が 、 靴 屋 は 火 ほ く ち 口 の (30 ( 火 を 煙 パ イ プ 管 に 押 し つ け 、 世 に も の ど か な 顔 で こ う 訊 い た も の 。「 な あ 、 お い 、 倹 し ま り や 約 家 あ に い よ 、 で 、 あ ん た 、 い く ら 貯 ま っ た ん か ね 」。 仕 立 て 屋 は し ゃ く り あ げ て 泣 き わ め い た 。「 同 おんな し こ っ た い 、 あ ん た と
─
と ほ ほ ほ ほ 。 同 おんな し こ っ た い 、 あ ん た と─
と ほ ほ ほ ほ (3( ( 」。 解題 口承。 短 い 話 に 幾 つ も の 諺。 ベ ヒ シ ュ タ イ ン の 好 み で あ る。 こ う い う 軽 妙 な 主 題 だ と、 と り わ け ベ ヒ シ ュ タ イ ン 一 流 の 活 き 活 き し た 語 り 口 の 面 目 躍 如 た る も の が あ る。 結 び は 子 ど も た ち に 受 け る こ と を 狙 っ た の だ ろ う。 普 通 ベ ヒ シ ュ タ イ ン の 物 語 で も高く評価されている倫理を笑いものにしてのおふざけだが。 A T該当無し。 原題六九
菊
きくいただき戴
昔むかし一人の爺様が森の中のちっぽけな家に住んでいた。何人も子どもがいたが、他に一羽の菊 戴 (32 ( を持ってい た。菊戴というのはヨーロッパで一番小さい鳥で、 鷦 みそさざい 鷯 の (33 ( 仲間なんだ。だれにも好かれるこの小鳥を爺様はとって も 愛 い と しがっていたし、子どもたちも負けず劣らず可愛がった。さて、爺様、今わの際になると、子どもたちにこう 言ったもんさ。 「いいかの、この菊戴は売ってはならんぞ。こりゃ幸運の小鳥だからの」 。けれども爺様が死んでし まうと、この子どもたちのちっぽけな家は困苦欠乏てのに見舞われた。さあて、この菊戴、毎週 豌 え ん 豆 ど う く (34 ( らいの大き さの卵を産んだ。色も豌豆みたいな黄色だった。これらの卵を爺様はどこかへ持って行っては、金やら食べ物など を 手 に し て 戻 っ て 来 る の が 常 だ っ た。 と こ ろ で 食 べ 物 が な く な っ ち ゃ っ た の で、 長 男 は、 こ れ ま で 産 ん だ 卵 を 集 め、それを売りに行こう、と心を決めた。ところが、男の子が幾つもの菊戴の卵を、売り物です、と並べると、大 笑 い さ れ、 や っ と こ さ、 こ の 可 哀 そ う な 腹 ぺ こ の ぼ う ず を 気 の 毒 に 思 っ た 一 人 の 男 が 同 情 し て プ フ ェ ニ ヒ 銅 貨 (35 ( 二、 三 枚 で 買 い 取 っ て く れ た。 こ の 銭 を 遣 い 切 っ ち ま う と、 以 前 に も 増 し て ひ も じ く っ て 堪 ら な く な り、 今 度 は 卵 を たった一個持っただけでまた出掛けて行ったんだがね。この時は巡り合わせが良かった。若者が見つけた男は、父 親がしょっちゅう卵を売っていた相手で、この男、卵の値打ちをちゃあんとわきまえておったのだ。つまり、卵は 皆純金でできていたのさ。さはさりながらこやつ、男の子が真相を何にも知らないのに気づくと、こうぬかしたも の。 「わしにその卵をどうしろって言うんだね。鳥の方を売りな。とっても好い値を払うつもりだよ」 。そうしてす ぐさま連れだって森の小屋に向かった。他の子どもたちは一番上の兄が菊戴を男に売ったことを聞かされると、泣 いたりなじったりした。男はぴかぴかのターラー銀 貨 (36 ( を何枚か代金として 卓 テーブル の上に並べた。小鳥は籠の中でばさば(0( さ羽ばたいていらいら動き回り、その様子は子どもたちには「ぼくを売らないで、ぼくを売らないで」で叫んでい るように思えた。でもやっぱり売られちゃったんだ。 こうした折、この国の王が亡くなるという事態が起こった。 寡 か ふ 婦 となった若くて綺麗な王妃は服喪期間が過ぎる と、こんな 布 お ふ れ 告 を出した。いわく、吊り下げられた王冠を目隠しをしたまま槍で突き当て、これを落とす方をわら わ は 夫 と し、 そ の 方 と 玉 座 を 分 か ち 合 い ま し ょ う (37 ( 、 と ね。 そ の 頃 例 の 菊 戴 が し ょ っ ち ゅ う こ う 啼 く よ う に な っ た。 「ぼくを食べる者は王様になる、ぼくを食べる者は王様になる」 。菊戴を買った男はこれを聴いてほくほく喜び、そ り ゃ あ 食 べ て し ま え ば 黄 金 の 卵 を 諦 め な け れ ば な ら な か っ た け れ ど も、 そ れ で も 小 鳥 を 殺 し て し ま い、 羽 を 毟 む し ら せ、 炙 あ ぶ り焼きにしてもちゃんと分かるように、派手な絹糸を結んで目印にした。それから料理女に、よくよくそれ に気をつけるんだぞ、ときつく言いつけた。たくさんの友だちを宴会に招いておいたが、これは自分が鳥を食べて 突然王様になったら、すぐさま臣従の誓いをさせよう、との魂胆からだった。 さて、この宴会のためにありとあらゆる準備が調えられている時、菊戴を売ってしまった男の子が哀れなその日 暮 ら し の 物 乞 い に な っ て こ の 家 に や っ て 来 て、 料 理 女 に 何 か 施 し 物 を お 恵 み く だ さ い、 で な け れ ば 麪 パ ン 麭 を 一 切 れ、 と頼んだ。すると料理女は「何かしらやるけどね、おまえの方も何かしなくちゃいけないよ」と言った。こちらも 喜んでそれを引き受けた。若者は水を運び、 竈 かまど の火のために薪を割り、平鍋の中で炙られている鳥たちに気をつけ た。 こ の 鳥 の 中 に は あ の 菊 戴 も い た。 少 年 が う っ か り 一 本 の 薪 を 平 鍋 に 突 き 当 て る と、 菊 戴 が そ こ か ら 転 げ 出 し て、真っ赤に焼けた炭の中に落ちた。 男の子はびっくり仰天したものの、わあ、この小鳥もったいない、と思い、ひどく焦げはしたけれど、ぱっと口 に 入 れ て 食 べ て し ま っ た。 そ れ が 以 前 自 分 の 持 ち 物 だ っ た 菊 戴 と は 露 知 ら ず。 料 理 女 は 台 所 に 入 る と 鳥 の 数 を 数
え、 一 つ 足 り な い の に 気 づ い て、 当 て に な ら な い 新 米 の 下 働 き の こ ぞ う を 悪 口 雑 言 を 浴 び せ て そ こ か ら 叩 き 出 し、 別 の 小 鳥 に 急 い で 目 印 を 付 け、 そ の 料 理 を ご 主 人 の と こ ろ に 持 っ て 行 っ た。 主 人 は 目 印 の 付 い た 小 鳥 を 平 ら げ た。 そうして今日ただいまでも相変わらず坐りこんで、王様になるのを待っておるよ。友だち連にさんざんご馳走しち まったのに腹を立てながらな。 追っ払われた少年はしょんぼりと街道筋を 彷 さ ま よ 徨 い歩き、とある粉挽きの家の戸口で物乞いをした。粉挽きは丁度 驢馬追いが入り用だっ た (38 ( ので、この地位を哀れな若者にくれてやり、驢 馬 (39 ( どもと一緒に 厩 うまや で眠ってもいい、と許し た。するとね、なんと、粉挽きが翌朝敷き 藁 わ ら の古いのを片付けて新しいのに取り替えた時、今度雇った驢馬追いが 眠 っ た 藁 の 中 に 黄 金 の 卵 を 幾 つ も 見 つ け た ん だ。 こ れ を ほ く ほ く 喜 ん だ 粉 挽 き は こ う 考 え た。 こ の 若 造 は ぜ ひ と も ず う っ と 引 き 留 め て お か な く ち ゃ な。 前 の や つ は 糞 野 郎 だ っ た が、 こ い つ は 宝 物 だ て、と。 さ て、 槍 で 王 冠 を 突 き 当 て る 日 が 到 来 す る と、 驢 馬 追 い は 考 え た。 だ れ で も 王 冠 を 突 く こ と が 許 さ れ る ん だ っ た ら、 自 分 だ っ て や っ て み た い、 と。 で、 粉 挽 き に 槍 を 一 本、 馬 を 一 頭 貸 し て 欲 し い、 と 頼 ん だ。 粉 挽 き は 思 い っ き り げ ら げ ら 笑 っ た が、 こ い つ ぁ と て つ も な い 冗 談 事 だ、 と 思 い、 が り が
(03 りに痩せているびっこの老いぼれ馬と古ぼけた槍をやり、王冠突き当てに若者を送り出した。 弱弱しい 恰 か っ こ う 好 のへんてこりんな騎士がどたどた馬を急がせて参着すると、だれもが噴き出したし、こんなにもみ すぼらしい若者が、すこぶるたくさん身分の高い騎士や貴顕が名乗りを挙げた王冠突きに割り込んで来たことに王 妃はご機嫌斜めだったが、王冠突きへの参加をだれにも認めてしまっていたのだから、今更それを制限するわけに はいかなかった。 競技が開始され、まず一人の伯爵と一人の騎士が次次に目隠しをして王冠を突きに掛かったが、いずれも成功し なかった。そして驢馬追いが見事王冠を突き当てて下に落とし、競技は終了。王妃は全くもっておもしろくなかっ たが、驢馬追いの奥方になるほか仕方ない。なにしろそう誓っちまったんだからね。それから驢馬追いの主人の粉 挽きだけど、その後はもう厩の寝藁の中に黄金の卵を見つけることはなかった。見つかったのはただ驢馬たちが生 むああいうのだけ。 王 妃 は 氏 素 性 が 賤 し い の で 背 の 君 が 一 向 愛 し く な か っ た か ら、 な ん と か 始 末 し て し ま お う、 と 昼 も 夜 も 思 案 し た。そこで手っ取り早く術に 長 た けた年寄りの女魔法使いに頼った。するとこの婆様、ある薬草をよこしたが、これ には人間を動物の姿に変える力があった。 邪 よこしま な王妃がこの薬草を夫の食べ物に混ぜると、なんとね、王様はその料 理を召し上がったとたん、変身し始め、それまで綺麗な青年だったのが驢馬そのものになってしまった。こういう しだいで若者はさんざん罵られ、 莫 ば か 迦 にされて宮廷から追い出され、他の者が王に選ばれた。賢明にも今度の選び 方は運任せ、盲目の偶然任せではなかった。なにしろ驢馬風情が至高の位に登るのをまたしても見る羽目になるの が怖かったから。 哀 れ な 元 驢 馬 追 い で 今 や 驢 馬 そ の も の は、 新 し い 境 遇 が い か に も 辛 い の を 身 に 染 み て 感 じ な け れ ば な ら な か っ
た。 以 前 何 の 不 満 も な く 驢 馬 を 追 い、 寝 藁 の 上 で 眠 っ た 粉 挽 き 小 屋 へ の 道 を 辿 っ た が、 若 者 が や っ て 来 た の を 見 た 粉 挽 き は、 他 の 驢 馬 た ち と 区 別 す る こ と が で き な か っ た。 も っ と も、 そ の 目 に は い く ら か 人 間 ら し い と こ ろ が あ っ た け れ ど。 こ う し て 若 者 は 他 の 驢 馬 た ち の 仲 間 と し て 粉 挽 き 小 屋 の 厩 に 置 か れ、 穀 物 や 粉 の 入 っ た 袋 を 年 が ら 年 中 運 ば に ゃ あ な ら な か っ た。 他 の 驢 馬 た ち に 較 べ こ れ っ ぽ っ ち も 良 く も 悪 く もない暮らしさね。 さ て、 昔 ま だ 人 間 だ っ た 時 こ の 哀 れ な 驢 馬 に は 妹 が 一 人 い た (40 ( 。 こ の 妹 は そ の 頃 兄 さ ん と 別 れ て 物 乞 い を し て 歩 い て い た が、 と あ る 修 道 院 (4( ( でも、 麪 パ ン 麭 をお恵みを、と施しをねだったもの。すると、若くて達者な女の子なものだから、下働きの仕事に雇っ てもらえた。この子は蔭日向なくせっせと励んだので、とうとう修道尼にさえなり、見込まれて門番の 役 (42 ( を与えら れた。さて、丁度その頃この修道院はご存じの驢馬がいる粉挽き小屋に製粉させたのだが、初めて袋を背に載せて 修道院の門にやって来た例の驢馬は、門番の尼僧が自分の妹だとたちどころに分かった。なにしろまだ人間らしい 物 の 考 え 方 と 記 憶 を 持 っ て い た か ら な。 そ こ で イ ヤ ア ア ア、 イ ヤ ア ア ア と 高 ら か に 嘶 いなな き、 嬉 し さ を 告 げ た。 す る と門番女の胸の 裡 う ち にもこの驢馬に対して何かこう愛しいという気持ちがこみ上げて来た。これこそ自然の声と申す もの。ところでこの門番女はありとあらゆる薬草に通じていたし、自身修道院の菜園で最も上質で最も効能のある ものを栽培してい た (43 ( 。そこで出掛けて行くと、もし魔術で変身させられていたのなら、動物の姿を再び人間に戻す 力のある魔法の草を摘み、それを驢馬に食べさせた。すると驢馬は以前同様人間に還り、夥しく 接 く ち づ け 吻 をし、夥しく
(05 涙を流して、優しい妹に感謝した。けれども若者は七年間というもの袋も 笞 む ち もたっぷり頂戴したので、二度と人間 の仲間入りをしたくなかった。優しく信心深い妹と巡り会った修道院の近くに木の枝で小屋を建て、敬虔な隠者に して森住まいの修道士になった。そこで草の根や野草を 糧 か て として暮らし、森の鳥たちの快い唄を聴いて楽しみ、餌 をやったり世話をしたりした。ただし例外は菊戴で、これには我慢がならず、呪うのだった。なんしろその一羽の せいで災難に見舞われたのだから。そこで捕まえに掛かり、獲物が手に入りさえすれば殺した。 解題 テューリンゲンの口承。 た だ し、 テ ュ ー リ ン ゲ ン の 都 市 イ エ ナ に 住 ん で い た 市 井 の 学 者 ハ イ ン リ ヒ・ デ ー リ ン グ Heinrich Döring ( 一 七 八 九 ─ 一 八 六 二 ) が 編 ん だ『 テ ュ ー リ ン ゲ ン 年 代 記 』 Die Thüringer Chronik か ら ベ ヒ シ ュ タ イ ン が 採 録、 多 く の 細 部 を 変 更、 語 り 口 も よ り 活 き 活 き させた、とのこと。 こ の 話 で は 魔 法 の 鳥 の 役 割 が さ ほ ど は っ き り し て い な い。 特 に 貧 し い 若 者 が 王 女 と 結 婚 し て か ら の 第 二 部 で は 大 層 混 乱 し て い る。 鳥 の 心 臓 を 食 べ た 者 が 毎 朝 金 貨 を 授 か る と か、 人 間 を 驢 馬 に 変 え る キ ャ ベ ツ と そ う し た 驢 馬 を ま た 人 間 に 戻 す キ ャ ベ ツ の モ テ ィ ー フ を う ま く 扱 っ て い る 点 で は K H M一 二 二「 キ ャ ベ ツ 驢 馬 」 Der Krautesel の 方 が ず っ と 優 れ て い る。 主 人 公 が 妻 で あ る 王 女 に 裏 切 ら れ て 驢 馬 に 変 え ら れ、 王 宮 か ら 追 い 出 さ れ て 苦 難 を 味 わ っ た 結 果、 人 間 の 容 姿 を 取 り 戻 し て も 王 女 へ の 復 讐 を 考 え ず、 人 の 世 に 幻 滅 し て 隠 者 と な る と か、 魔 法 の 鳥 と 同 じ 種 類 の 小 鳥 を 目 の 敵 に し て、 捕 ま え る こ と が で き れ ば 殺 し て し ま う と か い う 設 定 は 民 話 の「 常 識」から背馳すること甚だしい。 D M Bでは珍しく推奨し難い物語である。 A T五六七「魔法の鳥の心臓」
The Magic Bird-heart.
原題
七〇
騎士
青
あお髯
ひげの
物
メルヒェン語
解題 A T三一二「巨人殺しと巨人の犬」The Giant-killer and his Dog
( Bluebeard ). 原題
(07
七一
三人のとんまな悪魔
昔むかし地獄でとっても妙ちきりんなことが起こったげな。地獄に来るのは男ばっかりで、女は一人も来なかっ たっちゅうわけ。男どもは、ここん中に女がいりゃあなあ、と 心 し ん から思ったもんよ。すると一人のごく若造の悪魔 が し ゃ し ゃ り 出 て、 「 賭 け て も い い が ね、 お い ら、 一 人 連 れ て く ら あ 」 と こ う ぬ か し た。 他 の 悪 魔 ど も は な る ほ ど 嬉しがりはしたが、こやつの 科 せ り ふ 白 をまともに信じはしなかった。この悪魔、すぐさま出立し、他の連中は大成功を 祈 っ て や る。 こ う し て 地 面 に 出 て 来 る と、 出 く わ し た の は 一 人 の う ら 若 い あ ま っ こ。 「 い よ う、 姐 ね え さ ん、 結 婚 す る 気はあるかなあ」とこやつ、言葉を掛けたもの。 「もちろんですとも」と相手は返辞した。 「あたくしでしたら明日 ご婚礼でもいいですわ」 。「おいらもそれでけっこうさ」と悪魔。で、明日という日になると、悪魔は牧師のとこへ 出掛けてって、このあまっこを女房にしてもらう。さはさりながらいちゃいちゃ 月 づ き が (44 ( 過ぎ去ると、若奥さんはお金 やら着る物、それもすてきなのをねだるし、悪魔の方はろくすっぽ暮らしを立てることもできずで、しょっちゅう 自 分 の 食 い 扶 ぶ ち 持 を 削 っ ち ゃ あ、 そ の 分 を 女 房 に 回 す 始 末。 そ の せ い で ひ ょ ろ ひ ょ ろ の 痩 や せ っ ぽ ち に な っ て し ま い、 以前のようにご機嫌なことはもうずうっとありゃしない。女房はもっともっとこの色男から約束してもらってたん だ─
金をどっさり、すてきな着物を何着もってね。だもんで、手始めはまず亭主の悪魔に冷たくなる。亭主は 宥 な だ めすかす。ぶつくさ 唸 う な る。でも女の方はひどくきゃんきゃん責め立て、ぶつわよ、と脅かす。これにゃあ悪魔はせ せ ら 笑 っ て、 お い ら あ お ま え を な ん と か 我 慢 で き ら あ、 と 考 え る。 け れ ど も 亭 主 が 一 ひ と こ と 言 や っ つ け れ ば、 女 房 は 十 と 言 こ と 言 い 返 す。 こ ん な こ と が 年 が ら 年 中 続 く ん だ。 そ れ か ら ど う し た か っ て。 結 局 悪 魔 は 猛 烈 に ひ っ ぱ た か れ た の さ。そ こ で 悪 魔 は 思 案 し た。 や れ や れ、 な ん だ っ て お い ら、 こ ん な 女 房 で 苦 労 せ に ゃ な ら ん の だ。 あ っ さ り 国 に 帰 る こ っ た。 て な わ け で
─
悪 魔 は 引 き 揚 げ た。 女 を 連 れ ず に 地 獄 に 戻 る と、 他 の 悪 魔 ど も は こ や つ を し た た か に 笑 い の め し、 そ こ い ら じ ゅ う で「 と ん ま な 悪 魔 (45 ( 、 と ん ま な 悪 魔 」 っ て 叫 ん だ。 で も ね、 こ ち ら は「 地 獄 全 部 を く れ る と 言 わ れ た っ て、 お い ら 二 度 と 女 な ん ざ 要 ら ね え。 お ま え ら、 お い ら が 女 を 連 れ て 来 な か っ た の を 喜 び な。 女 が こ こ に 来 よ う も ん な ら、 お い ら た ち だ れ に と っ て も 地 獄 を ま す ま す 熱 く し ち ま っ た と こ だ 」 と 答 え た も ん さ。 す る と 別 の い く ら か 年 上 の 悪 魔 が い う よ う「 今 度 は こ の お れ が 行 く。 き っ と 一 人 手 に 入 れ て 来 る 」。 こ れ も 出 立 し、 と あ る 豌 え ん ど う 豆 畑 に 出 る と、 娘 だ け れ ど も う 年 と し 増 ま な の に 出 く わ し た。 で、 悪 魔 は 考 え た。 「 待 て よ、 こ い つ は そ う あ ど け な い お ち ゃ っ ぴ い っ て わ け じ ゃ な い。 だ か ら こ れ を 連 れ て 行 こ う 」。 そ こ で こ う 声 を 掛 け た。 「なあ、 おい、 姐さん、 結婚する気はあるかなあ」 。─
「あ る わ よ う、 あ た し に く れ る お 金 と 食 べ 物 を 持 っ て る な ら ね 」。 「 持 っ て る と も 」 と 悪 魔。 で、 二 人 は 婚 礼 を 挙 げ た。 そ し た ら 女 房 は 悪 魔 が 嘘 を つ い た の に 気 づ い た の よ。 だ っ て な、 こ い つ は(09 貧 乏 も 貧 乏、 赤 貧 洗 う が ご と し っ て く ら い の 貧 乏 な 悪 魔 野 郎 で な、 何 一 つ 持 っ ち ゃ あ お ら ず、 何 一 つ で き な か っ た。やっこさん、うちでこういう具合になっちまっ た (46 ( 。なにしろこやつ、とんだけちんぼうの山の神に関わり合っ ち ま っ た の よ。 こ の ご う つ く ば り、 茹 ゆ で じ ゃ が い も に は 塩 を 惜 し み、 日 曜 日、 [ 教 会 で 回 さ れ る ] 鈴 付 き の 献 金 袋 にはヘラー銅貨の代わりに 釦 ボタン を放り込んだもん さ (47 ( 。かみさんは亭主の悪魔に仕事はたっぷりあてがい、口に入れる も の は 僅 か し か や ら な か っ た。 も っ と も 口 小 言 の 方 は 欲 し い だ け 頂 戴 で き た し、 ひ っ ぱ た か れ る の も 珍 し く は な かった。ひもじくて腹が痛くて堪らなくなっても、舌がからからに乾いちまっても、かかあどんはだんつくを憐れ ん だ り す れ ば こ そ。 何 か 喰 い た け れ ば、 悪 魔 は 出 掛 け て っ て、 じ ゃ が い も を 拾 い 集 め て 来 に ゃ あ な ら な ん だ (48 ( 。 で、 夕方でっかい袋一杯持って帰らなかろうもんなら、またまた幾つかぶんなぐられた。年がら年中こんな具合。とど の つ ま り、 悪 魔 は こ ん な 暮 ら し に う ん ざ り し て、 独 り 言。 「 や れ や れ、 な ん だ っ て お い ら、 こ ん な 女 房 で 苦 労 せ に ゃ な ら ん の だ。 お さ ら ば し ち ま お う。 な に し ろ こ れ じ ゃ 最 下 等 の け だ も の だ よ 」。 家 を 出 て 地 獄 に 戻 る。 地 獄 に 着 く と、 か み さ ん は ど こ だ い、 と す ぐ に 訊 か れ る。 「 は あ、 か み さ ん ね え。 も ら っ た よ。 も う た く さ ん だ。 上 で 一 緒 に な っ た 女 の こ た あ、 お れ は 生 涯 忘 れ ね え。 あ ん な の を こ の 地 獄 に 連 れ て 来 る だ と。 あ い つ を 厄 介 払 い で き て、 おれは嬉しい」 。そこでそこいらじゅう「とんまな悪魔、とんまな悪魔」ってことになった。 さて、だけども全く年を取った悪魔がいわく「今度はわしが行こう。わしは女どもにたっぷり仕返しをしてやる わ な 」。
─
爺 さ ん 悪 魔 は 出 立 し、 地 面 の 上 に 出 る。 白 し ら か ば 樺 の 若 木 の 森 を 抜 け て 行 く と、 遠 く に 見 え た は 一 人 の 女 め 郎 ろ う よ。これは 後 ご け 家 さんでな、どうしてまだまだ色香たっぷりな様子だった。男は女をとっくり眺める、女は男をとっ くり眺める、それから 慇 い ん ぎ ん 懃 な申し入れと愛想の良い返辞が交わされ、ご両人は取り引き成立の間柄とあいなり、牧 師が連中を釘と 鋲 びょう で留めちまった。思う存分しっかり頑丈に。けれども婚礼が終わると、悪魔がよくよく得心したの は、 袋 に 入 っ た 猫 を 買 っ ち ゃ あ い け な い (49 ( 、 街 道 筋 で 後 家 さ ん に 求 婚 す る も ん じ ゃ な い、 っ て こ と。 女 は 手 札 を よ っ く 心 得 て い た (50 ( 。 な に せ、 聖 な る 結 婚 生 活 は 初 め て じ ゃ な か っ た か ら の。 粗食と井戸水なんてのはまだ序の口、 殿方ならどなたでもいらっ し ゃ い ま せ (5( ( 、 っ て 始 末 な ん だ け ど、 亭 主 は そ れ を 黙 っ て 見 て な き ゃ な ら ん。 こ い つ は あ ん ま り ひ ど す ぎ た。 こ ん な 具 合 に 拱 こ う し ゅ 手 傍 観 な ん て の は 悪 魔 だ っ て 我 慢 で き な い が、 女 房 は 亭 主 を 壁 に ぶ ら 下 げ と い て[ ほ っ た ら か し に し て ]、 恋 人 た ち と 麦 ビ ー ル 酒 を 飲 み に 行 っ ち ま う。 で、 戻 っ て 来 る と 壁 か ら 下 ろ す ん だ[ い ろ い ろ 用 を 言 い つ け る ん だ ]。 そ れ か ら や っ こ さ ん、 猫 を 飼 わ ず に 済 む よ う に 鼠 を 捕 る こ と を 覚 え さ せ ら れ る。 け れ ど も こ い つ は 悪 魔 に だ っ て ひ ど 過 ぎ た の で、 逃 げ 出 し て 例 の 森 に 入 り 込 み
─
て の も、 お め お め 地 獄 に 引 き 下 が る の は 恥 ず か し か っ た か ら な─
草 く さ 木 き の 実 (52 ( を探したが、この方が鼠よりずうっと上等。 こ う や っ て 草 木 の 実 の 中 に い る と、 出 く わ し た の は 一 人 の 炭 焼 き (53 ( で、 悪 魔 は こ の 男 に 窮 状 を 訴 え、 何 か 食 べ 物 を 恵 ん で く だ さ れ、 と 頼 ん だ。 す る と 炭 焼 き は こ う 言 っ た。 「 な あ、 爺 様 や、 お ら が と こ に も 子 ど も が 七 人 い て の、 し ょ っ ち ゅ う 食 う 物 に 事((( 欠 く だ よ 」。
─
「 炭 焼 き ど ん、 真 っ 黒 な 御 ご 仁 じ ん 、 一 つ 教 え て お く ん な さ い。 わ し は ど う し た ら 根 こんじょうわる 情 悪 の 女 房 に 言 う ことを聞かせたものかの。何と引き替えにしてもいい、お願いじゃ、助けてくだされ」 。 これに答えて炭焼きいわく。 「根性悪の女房は 手 て 酷 ひ ど い罰だて、 あら 哀 か な し、そんなの背負い込むやつ は (54 ( 」 悪魔が思うよう「土台そんなもんなら、わしゃあ国に帰った方がいいわい。最初っからうちにいたんだったらな あ」 。─
で、女どもに復讐してやろう、と思案し、こう言った。 「のう、兄弟、おぬしも貧乏人。わしはおぬしを 金 持 ち に し て 進 ぜ よ う。 し た が、 わ し の 言 う 通 り に し て も ら わ に ゃ な ら ん 」。 炭 焼 き「 え え と も さ、 な ん と か 金 持 ちになりてえもんだ。だからおら、あんたがやれっちゅうことをやるだよ」 。そこで悪魔はこう言った。 「ま、聴き なよ、炭焼きの兄弟、わしはある王を知っとる。この王にゃ姫君が三人ある。わしはこのうちの一人の体に潜り込 む つ も り じ ゃ (55 ( 。 そ し て な、 お ぬ し は 医 者 ど ん に な ら に ゃ い か ん。 わ し が 姫 君 の 体 に 潜 り 込 む と、 王 は、 物 狂 い を す っ ぱ り 治 し て く れ る 医 者 を 探 す 布 お ふ れ 告 を 出 す だ ろ う て。 そ う し た ら、 こ の 王 の と こ ろ に 行 っ て、 こ う 言 ごんじょう 上 す る の じ ゃ。 『 王 様、 や つ が れ は 姫 君 様 を お 助 け で き ま す る。 し た が そ の た め に は 姫 ひ い 様 さ ま と 一 つ 部 屋 で 二 人 っ き り に な ら ね ばなりませぬ。万端ご無礼なきように務めまするのはもとよりでござりまするが』とな。で、おぬしが姫君の 許 も と に 通されたら、わしに向かって『ええこの悪魔め、出て行けえ』と唱え─
窓を開けるがよい。わしはそこからおさ らばするでなあ。だが、こういうことは二度しかやってはいかん。三度やろうもんなら、わしはおぬしの頸根っこを へ し 折 ら ず に ゃ お か ん 」。
─
「 お ら が 綺 麗 で 気 立 て の え え 女 を 見 せ て あ げ て も か の 」 と 炭 焼 き が 訊 い た。 悪 魔 は「見せてもらおうじゃないか」と応じたもの。でもこう考えてのこと。喜んでそう約束してやれるわい。そうし たって何の 懸 け 念 ね ん もあるものか。わしら悪魔は女ってものをよおく知っとる、と。─
さてある日の夕方、炭焼きは 森をあとにした。おかみさんがこう言ったのでな。 「なあ、とっつぁま、金持ちの王様がお触れ書きを出したがな。 姫様が今にもおっ 死 ち ぬちゅう 病 やまい だ、うんだ、重病だ、と。助けてくれる者には王国の半分か、その医者どんと王様 二人の目方と同じ重さの 黄 き ん 金 を遣わす、だってよ。もし、なあ、あんたが、とっつぁまや、よく効く 家 か 伝 で ん の薬たら い う も ん を 心 得 と っ て、 そ の 姫 様 を お 助 け で き る だ ら、 わ た い ら、 こ の 貧 乏 か ら 抜 け 出 せ る か も 知 れ ね え だ 」。─
すると炭焼きは女房に「おら一遍試してみるべえ、もしかしたらうまく行くかもなあ」と返辞して─
そうし て 出 立 し た。 王 の 許 に 参 上 す る と、 王 は こ う 訊 い た。 「 老 人、 そ ち は 余 の 息 女 を 健 や か な 身 に で き る と 申 す の か 」。─
「 さ よ う で ご ざ り ま す と も、 王 様 」 と 炭 焼 き。 「 や つ が れ は ま ず 薬 種 商 の と こ ろ か ら 幾 つ か 薬 剤 を 手 に 入 れ ね ば な り ま せ ぬ が、 こ れ は 自 分 自 身 取 り に 参 ら ね ば。 そ れ か ら 姫 君 様 の お 傍 で た っ た 独 り に な る 必 要 が ご ざ り ま す る 」。 こ れ を 聞 い て 王 い わ く「 老 人、 そ ち の し た い よ う に す る が よ い。 そ ち が わ し の 息 女 を 健 や か な 身 に い た し た ら、王国の半ばか、余とそちの目方と同じ重さの黄金を遣わす」─
炭焼きは悪魔に教えられた通りにした。する と姫君は即座に元気になった。王が炭焼きに、黄金か王国か、どちらでも好きに選べ、と言うと、炭焼きは黄金を 取った。 そ れ か ら 間 も な く 別 の 姫 君 が 悪 魔 に 取 り 憑 か れ た。 王 は 炭 焼 き を ま た 呼 び 出 し て、 こ う 言 っ た。 「 老 人、 そ ち は 初 め 病 気 に な っ た 息 女 を 健 や か に し て く れ た。 こ れ も 同 様 に 救 う て く れ い 」。─
炭 焼 き は「 や っ て み ま し ょ う、 王様」と答えた。すると、ねえ、ほら、二番目の姫君も助けてやったので、王は炭焼きにまたしても同じ重さの黄((3 金を与えた。 こうして炭焼きはとっても金持ちになったが、それでも深く悩んどったのだ。なにしろ、これで、女どもをこっ ぴどく苛めてやろう、と決心し、きっとそれから離れっこない悪魔を、もう二度と再び追っ払えなくなっちまった のだからな。最初の二回が済むと、三度目には炭焼きは悪魔を姫君の体の中に置いたままにしとかなきゃならなん だ。さもないと頸根っこを悪魔がおっぺしょるちゅうんだから。そして、三度目に悪魔を追っ払えなければ、王が 自分を死刑にするのをおめおめ認める羽目になるわけ。で、炭焼きは、なんとか三度目にうまく悪魔を 騙 だ ま くらかす ことができまいか、ととつおいつ思案に耽った。 さて、三人目の姫君も病気になった。悪魔が体の中に潜り込んだもんでな。またまた王は炭焼きの爺さんを呼び 出して、こう言った。 「のう、老人、そちが余の息女を救えなければ、そちを縛り首にいたすぞ」 。これに炭焼きが 答えていわく「いとも 優 ゆ う 渥 あ く なる国王陛下、一つ試してご覧に入れまするが、それにはかように計らって戴かねばな りませぬ。明朝早くに、この都中の気立ても 見 み め 目 もよろしい乙女たちが一人残らず白い衣装を纏い、 紅 くれない の飾り帯を 肩から 斜 は す か 交 いに掛け、髪を巻き毛にして、陛下にお仕えするお坊様がたご一同ともども集まって、お城の前に立ち ましてな、それから乙女たちとお坊様がたが声を合わせて唱いながら、姫君様と並んだやつがれに山の上まで 随 つ い て参るのでござりまする。さりながらその中に断じて一人もおってはならぬのは、そんじょそこらにざらに転がっ ているあまっこどもとか、いまだにやきもき結婚したがっている年増娘たちとか、結婚場所を移らせたがってい る (56 ( [ 再 婚 し た が っ て い る ] 後 家 さ ん 連。 こ の こ と は 陛 下 の お 坊 様 が た に よ く よ く 厳 し く ご 命 令 く だ さ い ま し。 こ う や っ て 山 の て っ ぺ ん に 到 着 い た し ま し た ら、 一 つ 試 し て ご 覧 に い れ ま す る 」。 こ れ ら の 条 件 が 叶 う よ う、 王 は 大 至 急 準 備 万 端 調 え さ せ た。 次 の 日 の 朝、 城 の 前 に 大 群 衆 が 集 ま っ た。 行 列 は 山 の 麓 へ と 向 か い、 や が て 山 頂 に 着 く
と、炭焼きは唱えた。 「ええこの悪魔め、出て行けえ」 な る ほ ど 悪 魔 は 姫 君 の 体 の 中 か ら 出 て 来 は し た が、 炭 焼 き に こ う 怒 鳴 り つ け た。 「 こ の い か さ ま 野 郎。 約 束 を 守 ら ん の か。 見 て ろ、 こ れ か ら き さ ま の 頸 根 っ こ を お っ ぺ し ょ っ て や る わ い 」。 し か し 炭 焼 き は 言 葉 を 返 し て こ う 言った。 「待ちな。おらたちの取り決めにゃあ差し控えの項目があるべえ。あんたはおらに指一本触れられねえだ。 お ら が あ ん た に 綺 麗 で 気 立 て の え え 女 を 見 せ て あ げ れ ば の。 ま あ さ、 振 り 返 っ て、 と っ く り 眺 め な 」。 そ こ で 悪 魔 が 振 り 返 り、 一 人 ま た 一 人 と 女 た ち を と っ く り 眺 め、 こ の 女 た ち に 自 分 は 何 も で き な い こ と を よ く よ く 思 い 知 っ た。こうなると地面の上にいるのが恥ずかしくて堪らず、山の神がおっかなくもなったので、ぶわっと一発臭いお ならをぶっぱなし、元来たように引き揚げた。 こ う し て こ の 悪 魔 は 地 獄 に 帰 っ た わ け だ が、 着 く な り、 仲 間 た ち が だ れ も か れ も、 女 を 連 れ て 来 た か、 と 訊 い た も の。 で、 一 人 も 連 れ て 来 な か っ た、 と 答 え る と、 ま た し て も「 と ん ま な 悪 魔、 と ん ま な 悪 魔 」 っ て こ と に な り、 悪 魔 の よ う な お ふ ざ け、 大 騒 ぎ、 悪 魔 の よ う な げ ら げ ら 笑 い で、 ど ん が ら が っ ち ゃ ん ど し ん ば た ん、 地 獄 全 体 が 古 び た 壁 み た い に ぐ ら ぐ ら 揺 れ て め り め り い っ た。 て な わ け あ い で 地 獄 に は い ま だ に 女 は お ら ん。 悪
((5 魔 の 年 取 っ た 祖 ば あ 母 様 (57 ( を 除 け ば あ く ま 0 0 0 で お ら ん (58 ( 。
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そ れ と い う の も 女 ち ゅ う も の は ご く ご く 気 立 て が い い か ら だ て。 解題 ヴェラ谷の口承。 二 つ の 異 な っ た 部 分 か ら 成 る 笑 シュ ヴ ァ ン ク い 話 で あ る。 悪 魔 と い え ど も 女 性 に 対 し て は 三 さ ん し ゃ 舎 を 避 け る と い う 前 半 は と り わ け お も し ろ い が、 男 性 だ け の 集 ま り で 語 ら れ た の で あ ろ う。 な お、 「 悪 トイフェル 魔 」 と い う 語 の 入 っ た ド イ ツ 語 の 慣 用 句 が 幾 つ も 使 わ れ、 滑 稽 さ を 更 に 盛 り 上 げ て い る が、 日 本 語 に 移 す と な る と、 ド イ ツ 語 の そ れ に 相 当 す る 適 切 な 日 本 語 の 掛 かけことば 詞 が 思 い つ か ず、 最 後 を 除 き、 ほ と ん ど 諦 め ざ る を 得なかった。 A T一一六四「穴の中に投げ込まれた邪な女」 The Evil Woman Thrown into the Pit + A T一一六四 D「魔物と人間が力を合わ せる」The Demon and the Man Join Forces.
原題