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中学生用多読教材SIGNALの開発とその効果 : パイロット・スタディー

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(1)

中学生用多読教材

SIGNALの

開発 とその効果

―パイロッ ト・ スタディーー

(1)

*1,岡

*2,福

*3

現代 の英語教育では

,従

来の話

,語

,文

法な どの学習 に加 えて

,コ

ミュニケーシ ョン活動 と総 称 され る言語活動が推奨 され

,か

つ実践 されている。一方で

,読

解能力養成 のための指導

,時

間的 な余裕

,お

よび教材開発 な どが十分 で はない とい う指摘が ある (島谷

,他

1987,浅

1994,藤

森 1995)。 このような事情 を意識 してか

,最

近では理論 。実践の両面か ら読解能力の養成 に貢献す るこ とを目的 とした研究 も多い (津田塾大学言語文化研究所読解研究 グループ

1992,高

,他

1994,小

1994,金

1995,渡

部1996)。 本研究で も読解能力の養成 を目的 とした教材 について論述するが

,特

に中学校 レベルの学習者 を 対象 として開発 した多読用の教材 を紹介 し

,そ

して鳥取大学教育学部附属中学校(分で行 われたパ イ ロッ ト・ スタディーで得 られた結果 を分析す ることにより

,そ

の効果 を測定す る。以下

,本

稿では, 多読 に関する従来の見解

,本

研究のために開発 した教材の理論

,そ

して試行 の様子 とその結果 につ いて述べ る。

H

多 読 の 定 義 と実 践 例 英文読解力の養成 には

,精

読 に力日えて多読が不可欠であることは

,多

くの現場教師

,研

究者 に指 摘 されているところである (吉田

1995,島

,他

ゲ♭

",浅

野力″.)。 天満 (1989)では

,多

読の必 要性が以下のように述べ られている。 授業時間の少なさに加 えて

,教

科書の検定

,お

よび費用な どの制約があるために

,各

レッスン での読 む分量が まことに少な く

,こ

とに初年級では細 ぎれの単文がい くつか羅列 されているにす ぎない。 これでは

,読

解の必須条件である各文 の相互 のつなが り

,つ

まり論理的関係 をつかむ練 習 はほ とん ど不可能である。英文の持つ文構造 の把握 はおろか

,推

論 を働かせ る余地 もない。短 い

,断

片的な文か らは

,鮮

明なイメージの湧 く道理がない。語彙や文法構造 をや さしく

,な

じみ のあるものをおさえてあれば

,か

な り長 めの教材で も

,彼

らは内容の面 白さにひかれて容易 に読 球1鳥取大学教育地域科学部 教科教育講座 (英語教育 ) ■2鳥取大学大学院教育学研究科 ■3鹿野中学校

(2)

足立和美・ 岡本尚也・福田智美:中学生用多読教材SIGNALの開発 とその効果 み進みうるものである。 ここでい まひ とつ留意 しなければな らない ことがある。それは

,読

む速度 との関係である。読 む量が少ない と

,こ

この語や文法事項 に不当に注 目す ることにな り

,逐

語的に解読す る習慣がつ き

,そ

の結果

,読

みの速度が遅 くなる。 この ことは

8.10.1(→ p.119)で

詳述す るが

,読

む速度 が遅い と

,全

体的な内容把握 に支障 をきたす ことが多い。初期 の段階か ら

,か

な りの量の文 を, 適切 な速度で読む習慣 をつけることは

,き

わめて重要である (p.7172)。 上の引用では

,読

む量が十分でない と,(1)文相互のつなが りを理解することがで きない,(2)物語 を読む場合 に経験する

,鮮

明なイメージが湧 きに くい (つまり

,読

む作業が無味乾燥 な ものにな り がちである),(3)逐語的に読む癖 がつ き読 みの速度がおそ くなる

,

といった問題点が指摘 された上 で,「初期の段階か ら」の多読が推奨 されている。なお

,河

(1997:51)で

,韓

国の中学校

3年

生の読む量 を

,日

本の中学校

3年

生の もの と対比 させて

,以

下の表のようにまとめ られている。 表1 1997年度使用の韓国 と日本の中学校3年生用英語教科書比較 1997年度使用の韓国の中学3年英語教科書 (M撼0と

9駐

力οο′馳 碗Sか 教科書 A B C D E 総ペ ー ジ数 248 225 総課数 各課 の本文 での平均使 用語 数 キ:1∼3年 の新出語彙数:1,050語以内 1997年 度使用の日本の中学3年英語教科書 教科書 NH SE NC OW TE EE CE 総ペ ー ジ数 総課数

7+R4

8+R3

9+R3

8+R3

10+R3

8+R4

各課 の本文 での平均使用語数 175/227 260/300 210/228 230/274 338/393 318/360 *注:1∼3年の新 出語彙数:約1,000種。Rは各課以外 に設 けられた「Reading」 の部分 を表 す。TE以外 の本 文 で の平 均 使 用 語 数 の左 の数 字 は「Reading」 を含 まな い数 字 で あ る。

NH(三

New Horizon English

Coursё),SE(=Sunshine Engli Course),NC(=New Crown English Series New Edition),OW(=

One ⅢVOrld English COurse 3), TE(=Total English 3), EE(=Everyday Ellg

3)CE(=Columbus

English COurse 3) 河合氏 による と韓国の英語教育 で は,「内容把握力 を習得 させ ることを第1目標 としてい る」 ∽ ″.)とい う。上表の総ページ数 を見 ると

,韓

国の英語教科書 は日本の ものに比べ

,お

お よそ3 倍の分量があることがわかる。 これは

,内

容把握の能力 を養成す るためには

,最

低 で もこの程度の 英文量が必要であるとい う判断に由来す るもの と思われ る。韓国の中学校ではこのように

,多

読 に 近い活動が

,授

業の一環 として位置づ けられているのである。 それでは次 に

,多

読 という活動が どの ように理解

,定

義 されているのか

,そ

の代表的な例 を紹介 してお く。 垣田

(1981:140)で

,多

読 は下記 のように定義 されている。 教科書名 はすべ て同 じため

,出

版社 名 は記号 で示 す。

A:斗

山東亜

(1)B:斗

山東亜(21

C:数

学社

D:天

才教育(り

E:関

西 出版社

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

1巻

2号

(2000) 3

多読 とは

,相

当量の教材 を個々の語彙や文の構造 な どに注意 を集中す るのではな く

,専

ら内容 の理解 を中心 において

,そ

の大意 を把握 してい く読 み方で

,精

読 (intens e reading)と 対比 さ れる。 堀 口

(1991:89)に

示 されてい る定義 は次のような ものである。 多読 とはある程度の長 めの文章 を普通 よ り速 いス ピー ドで多 く読 む ことである。多読 は時間 的に制約 のある通常の授業内で行 うことが難 しいので

,授

業では指示のみ行い

,読

みは家庭学 習

,特

に夏休 み冬休 みな どの長期休暇中に行 うことになることが多 い。 さらに

,金

(1995:109)で

,多

読の二つの定義が採用 されている。 中●リーディングの活動 を

,読

む「量」で分類す ると多読 と精読 になる。新井 (1991)は多 読 を「細かい部分の内容把握 には多少 目をつむって も

,で

きるだけ多 くの英文 に接 し

,そ

こに 書かれている内容 の概要や要点 を効率 よ く理解す る読 み方」と定義 している。また

,塩

澤(1986) は「内容理解 とともに発音 。語彙 。文法な ども扱 う総合的な学習活動」である「精読」 と対比 して,「多読」とは「精読 によって得た知識や技能 を活用 して

,多

量の英文 を内容理解 を中心 に 読む言語活動」である

,

と定義 している。 以上

,多

読 について最 も一般的に受 け入れ られていると思われ る定義 を述べたが

,そ

れでは ここ で

,そ

のような定義 を実践 に移 している例 を紹介 してお く。 (1) Reading Library 項 目別

,難

易別 に分類 された3,800冊ほどの英語の原書 を常備 し

,生

徒 は年間最低15冊を読む よう 指導 されてい る。対象 は

,高

1年

生 と

2年

生 (辻1997)。 磁

)ペ

ーパーバ ック・ クラブ 高等学校 にお ける課外活動 による多読指導。会員 となった生徒か ら徴収 した会費で英書 を購入 し, 難易別 に分類。会員 の生徒 は好 きな本 を借 りて読 み

,読

破ページを競 う (鈴木1996)。 (3)リ ーデ ィング・ マラソン

5段

階 にレベル分 けされた洋書 を準備 し

,生

徒たちが 自ら選 んだ本 を自分のペースで読 んでいけ るよう支援す るプログラム。対象 は高校生 (栗原1996)。 以上

,多

読 について

,そ

の必要性

,定

,実

践例 を紹介 してきた。 ここまでに述べて きた ことを, 中学校 における英語教育の視点 も含 めてまとめてお こう。 多読 にまつわ る基本的な考 え方 とは, ① 多読 とは,「細かい部分の内容把握には多少 目をつむって」行 う,「大意を把握」することを目 的 とした活動であり,「速読」 とほぼ同意語である。

(4)

足立和美・ 岡本尚也・福田智美 :中学生用多読教材SIGNALの開発 とその効果 ② 多読 とは,「精読 によって得た」知識 を利用す ると言われているか ら

,中

学校 レベルの学習者 に は無理である。 なぜな ら

,中

学校での読解活動 とは

,訳

読 中心の「細 かい」部分 についての学 習

,つ

まり「精読」が主体だか らである。 ③ 上記② より

,訳

読 (精読

)と

多読 (速読

)は

,別

個 の活動 としては併存す るが

,両

者 を授業の 中で共存 させ ることは困難である。 この ことは

,た

とえ高等学校 レベルであって も

,多

読が多 くの場合課外活動 として位置づ けられていることにもうかが える。 ④ 多読活動 には

,教

師 による適切 な事前

,事

後指導が必要である(緑川乃″.)。 また

,多

読専用の 多 くの教材 を準備 しなければな らないな ど

,教

師 にかな り負担がかか る場合がある。 の四つに要約で きよう。 多読 に関する上 の一般的な理解 は

,お

おまかではあるが

,現

在わが国の英語教育 の現場で実践 さ れている「多読」の基本的な理念 とその実践上の特徴 を示 しているものである。上の要約ではまた, そ こか ら欠落 しているものが

,中

学校 レベルの学習者 に対 す る配慮であることも明 らかであろう。 すなわち

,中

学校 レベルでは

,学

習者の語学力の問題

,時

間的

,経

済的な理由

,教

師の負担な どの ために

,多

読活動が一切 といって よいほど取 り入れ られていないのが現状 なのである。先 に引用 し た天満氏の言葉 にあった,「初期 の段階か らかな りの量の文 を適度 な速度で読 む習慣 をつける」こと は

,中

学校ではまった く無理 なのであろうか。 Ⅲ 中 学 校 に お け る 多 読 用 教 材

SIGNALの

作 成 中学校 レベル において も

,で

きるだけ多 くの量 の英文 を

,あ

る程度の速度で読 ませ ることを目標 として

,本

研究 グループは

,以

下 に掲 げられている人 つの点 を柱 とした教材開発 を行 った。

(1)入

手 に比較的手間のかか らないような材料 を選ぶ こと この ことを達成す るために

,本

研究 グループは鳥取大学教育学部附属中学校で現在使用中の

N勿

G℃ ω%の旧版や

,他

社 の教科書 を用いることにした (cf.高梨・ 高橋1987:217)。 また一部

,高

等学校用の教科書 も使 い

,計

28冊の中か ら教材 を編集 した。 (21 実験の対象 を

2年

生 とし

,

この学年 で学習 した (あるいは

,す

る予定の

)文

法項 目を 全 てカパーで きるようにすること この ことを達成す るために

,本

研究グループは

,教

材 を「過去形」冊ヒ較級」「動名詞」「不定詞」 「未来形」「助動詞J「その他」の

7文

法項 目に分類 した。ち

13)学

習者 に十分 な量が提供 で きること この ことを達成す るために本研究グループは

,上

記の

7文

法項 目のそれぞれ に

,各

35種類 の教材 を作成 し

,学

習者が最高245種類 の英文教材 に接す ることを可能 とした。 (41 個々の学習者の英語力に合 った教材 を提供 で きること この ことを達成す るために本研究グループは

,各

文法項 目ごとに準備 された35種類 の教材の中に, 英文の量

,文

の複雑 さな どを基準 にして

,初

級用

(5種

),中

級用 (20種類

),上

級用 (10種類)

(5)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

2号

(2000) のレベル を設 けた。(なお解答用紙 は

,全

ての レベル に使用で きるよう規格 を統一 した④。) 傷

)多

読の条件の一つであった,「ある程度の速度」(天満崩J。

)が

達成 で きること この ことを達成す るために本研究 グループは

,未

習の語

,語

句が本文で使用 されている場合 には, それ らに注 を付 し

,学

習者がいちいち辞書 を引 く手間 を省 くように配慮 した。

(6)多

読 を通 じての精読が で きること この ことを達成す るために本研究 グループは

,ま

だ「細かい部分」の学習 中である中学

2年

生が, 多読 をしなが らも同時 に「細かい部分」の学習 もで きるよう

,設

間に多肢選択問題

,内

容読解問題 に加 えて

,英

文不日訳の問題 も加 えた。つ まり,`micro skill'`macro skilP(根 岸

1997)の

両方 を考 慮 した。 伊

)学

習者の自分の学力に合わせて個別学習が で き

,か

つ教師への負担 を最小限 にするこ とが で きること この ことを達成す るために本研究 グループは

,一

枚一枚 の教材 を全てカー ド化 し

,表

側 に英文 と 注 と設間を

,裏

側 に全訳 と解答 を配す るようにした。 このため

,学

習者 は自分 の解答 を自分で確認, 訂正す ることができるばか りか

,採

点 も自分です ることが可能 となった。それぞれのカー ドは

,レ

ベル をわか りやす く表示で きるように

,初

級用 は緑色 の縁

,中

級用 は黄色の縁

,上

級用 は赤色の縁 のあるものを用いた。

(3)学

習者 は

,自

分の進歩 を確認 で きること この ことを達成するために本研究 グループは

,独

自の記録表

(Reading Map)を

作成 し

,学

習者 に

, 1枚

カー ドを読む終 える度 に

,日

付 を言己入す るようす旨示す ることとしたいち この教材には

,中

学生がなじみを持てるようにと

,カ

ー ドの三色の色 (緑

,黄 ,赤

)に

ちなんで,

SIGNALと

名付けた。以下 この論文では

,こ

の教材に言及する際には

,SIGNALで

統一する。

IV SIGNALの

試 行 対象 鳥取大学教育学部附属中学校

2年

D組

(39名) 期間 平成

9年

11月 7日 か ら平成11年 12月 23日 (46日間) 方法 週4回ある英語 の授業 の最初 の10分間 を

SIGNAL試

行 のために利 用 させ て もらうこと とした。 また

,興

味のある生徒 には

,休

憩時間な どにも自由に使用 させた。

SIGNALの

試行開始前 に

,辞

書 を使用 しない こと

,他

人 と相談 しない ことを生徒 に伝 えた。本研究 グループは時々

,授

業風景 を観察 に出か けていき

,一

部 その様子 をビデオ・ カメラに収 めたが

,こ

のルールは守 られていた。 さらに生徒 には

,解

答用紙 の右上部 に

,各

カー ド の開始時間 と終了時間 を記入 させ

,ま

た一枚 のカー ドが終了 した ときには

,READING

MAPに

記録 させた。

(6)

足立和美・ 岡本尚也・福田智美 :中学生用多読教材SIGNALの開発 とその効果

V SIGNALの

効果

(1)プ

レ・ テス トとポス ト・ テス ト

SIGNALの

効果 を統計的に測定す ることを目的 として

,SIGNAL試

行 開始直前 の1997年 11月 1 日にプレ・ テス トを

,そ

して試行終了直後の同年12月 24日 にポス ト・ テス トを実施 した。テス ト時 間は

,そ

れぞれ20分。内容 は

,市

販 の英語検定試験問題集

(3級

)を

もとにして

,本

研究 グルー プが作成 したK61。 設問形式 は

,SIGNALに

含 まれているの もの と同 じ形式 にし,50点満点 とした。採 点 は

,本

研究 グループの内の

2名

が担 当 し

,両

者の平均点 を得点 とした。 プレ・ テス トは

,附

属中 学校

2年

生 4ク ラス

(A組

,B組,C組,D組

)の

全員 (157名

)に

実施 し

,そ

の得点 を

t検

定 した 結果

,B組

D組

,今

回の試行の対象 とした0。 さらに

,同

中学校 で英語授業 を担 当されている教 官の助言 に もとづいて

,D組

を実験群 に

,B組

を統制群 に定めた。 磁

)実

験群の

SIGNAL使

用枚数 と点数の変化 47日間にわたる

SIGNALの

試行期間中

,通

常の英語の授業回数 は24回であった。 この間

,実

験群 の生徒 は

,

リーディング・ マ ップに使用 した

SIGNALの

識別番号 を記録す るよ うに指示 されてい た。試行終了後 に リーディング・ マ ップを回収 した ところ

,実

験群 の最高使用枚数 は72枚

,最

低使 用枚数 は

7枚

,平

均使用枚数 は27.6枚 であった①。 次 に

,使

用 された

SIGNALの

枚数 を基準 にして

,実

験群 の生徒 を三つのグループに分 け

,そ

れぞ れのグループ内のプン・ テス トとポス ト・ テス トの点差 をまとめてみた。 表

2

使 用枚数 ごとの得 点の変化

SIGNAL使

用枚数 (生 徒数) プ レ・ テス トの平均得点 (50点満点) ポス ト・ テス トの平均得 点 (50点満点) 点数 の変化

0-19枚

(5人) 32.2ノ//50 33.8///50 +1.6 20-29枚 (20人) 35.3///50 41.2///50 +5。 7 30-72枚 (9人) 33.2///50 40.5///50 +7.3 上 の表 か ら

,SIGNALの

使 用枚 数 の多 いグルー プの方が

,ポ

ス ト・ テス トで の得点 の伸 びが大 き ヤヽことが理解 され る。 俗

)実

験群 の プ レ 。テ ス トの成績 と得 点 の変化 同様 に

,実

験群 のプ レ 。テス トの結果 を基 に して

,そ

の学習者 を三 つのグルー プ に分 け

,そ

れ ぞ れ の得点 の変化 を示 した のが次表 で あ る。

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

2号

(2000) 表

3

プ レ・ テ ス トの結果 に基 づ く得 点の変化r働 プレ 。テス トの成績で 分 けたグループ (生徒 数) プ レ・ テス トの平均得点 (50点満点) ポス ト・ テス トの平均得 点 (50点満点) 点数 の変化 40点以上 (11人) 42,7///50 44///50 +1.3 20-39点 (23人) 31.7///50 37.1///50 +6

0-19点

(3人) 13/50 27ノ//50 +14 上の表か ら

,プ

レ・ テス トでの成績が低かったグループの学習者の方が

,ポ

ス ト・ テス トでの得 点の伸びが大 きい ことが理解 され る。 なお

,統

制群

(B組

)の

プレ 。テス トとポス ト・ テス トの結果 を

t検

定 した結果

,有

意差 は見 ら れなかった。 この ことより

,二

つのテス トは同 じ難易度であると考 えられ る。(表

5参

照。) 141 総合得点の変化のt検定 lAl 二群の平均点の変化の

t検

定 実験群 と統制群のプレ 。テス ト

,ポ

ス ト・ テス トの平均点の変化 は

,以

下の通 りであつた。 表

4

実験群 (D組) 表

5

統 制群 (B組) プレ 。テス ト (標本数38) 33.500 ポス ト・ テス ト(標本数39) 38.211 (P値 0.00179) 【表4】の結果 よ り

,実

験群 の二つのテス ト成績 には

,統

計上有意な差が見 られる。一方,【表5】 の結果 は

,プ

レ・ テス トとポス ト・ テス トの間には

,難

易度 において差がない ことを示 している。 すなわち

,SIGNALを

使用 したグループは

,同

じレベルの試験 において

,統

計上有意 な得点差 を生 み出すだ けの英語力 を身 に付 けた ことを示 している。以下 では

,こ

の結果 をさらに細分化 して

,成

績上位群 と下位群 とに分 けて効果 を検定 してみる。 lBl 二群 の上位群 と下位群 の比較 実験群 と統制群 のプレ・ テス ト (標本数

75)の

平均点 は

,33.387で

あった。 この点数 を基準 とし て

,二

つのグループを上位群 と下位群 とに分類 し

,二

群 のポス ト・ テス トでの平均点 を

t検

定 した。 実験群 下位群 (標本数19) 35 526 統制群 下位群 (標本数17) 29.64 (P値 0.0472) 実験群 上位群 (標本数19) 40.895 統制群 上位群 (標本数20) 35。900 (P値 00109) (P値 0.85817) 表

6

上位群 のポ ス ト・ テス トの平均 点 表

7

上位群 のポ ス ト・ テス トの平均 点

(8)

足立和美・ 岡本尚也・福田智美:中学生用多読教材SIGNALの開発 とその効果

6】

と 【

7】

より

,SIGNALの

効果は

,プ

レ・テス トでの成績に関係なく

,上

位群にも下

位群にも及ぼされていることが分かる。

Ⅵ 考 察 訳読 を含む読解能力養成 を目的 とした多読用教材

SIGNALを

試行 した結果

,ほ

ぼ―ケ月半後 には 実験群 の学習者 の英語力

,特

に訳読の領域 (micro ski11)で 変化が見 られた。 この時点での平均的 な

SIGNALの

使用枚数 は

,約

30枚であった。 この ことか ら

,ま

だ英語の基本的な文法

,訳

な どを学 習中の中学校 レベルの学習者であって も

,多

読的な活動 によ り

,現

在の英語力 を一層伸 ばす ことが 可能であることが理解 され る。 おお まかな集計 か らうかが えるように

,SIGNALを

用いると

,概

して成績下位者の学習者 の方が 得点の伸びは高いようである。 また

,READING MAPの

集計か らは

,SIGNALの

使用枚数が多い

ほど

,成

績が伸 びている傾 向があることがわかる。 より精緻な統計的な処理 をほどこしてみて も

,SIGNALの

効果 は表れている。プレ・ テス トとポ ス ト・ テス トを

t検

定 してみると

,実

験群 と統制群 との間 には有意 な差が生 じている。 これは

,上

で述べたおお まかな集計結果が

,単

に見かけだけの変化ではない ことを示 している。 さらに実験群 の生徒 をプレ・ テス トの成績 により上位群

,下

位群 とに分 けて検討 した場合で も

,や

は り二つのテ ス ト結果 には有意 な差が生 じている。通常

,成

績が高い学習者 の場合 ほど

,新

しい教材

,教

授法 な どの効果が表れに くい ものであるが

,今

回の試行 では両者 に効果が見 られた ことは

,今

後 の継続研 究 にとって も有意義であると言 えよう。 二方で今回の試行では

,SIGNALを

使用す ることによ り選択肢問題 (主に

,前

置詞な どの文法的 な知識)とか

,内

容把握 を問 うような総合的な問題 (macro skill)に ついては

,は

っきりとした効 果 を見 ることがで きなかった。 これは

,プ

レ・ テス トとポス ト・ テス トでの配点の 'ヒ 重 (プレ・ テ ス トでは

,50点

,選

択肢問題

4点

,総

合的な問題18点

,ポ

ス ト・ テス トでは

,50点

,選

択肢問 題

6点

,総

合的な問題16点とい う配点)と一部関係があるか もしれない。 また特 にmacro skillで あ る総合的な問題 に対応で きる読解能力 は,micro― skinで ある訳読能力 よ り

,養

成 に時間がかか ると い う可能性 も考 えられ る。

SIGNAL試

行後 に生徒か ら回収 したReadilag Mapを 検討 してみると,生徒たちはおおむね三つの レベルのカー ドをまんべんな く使用 していることが判明 した。例外 として

,一

人 の生徒 (女子

)は

, 赤(上級 レベル)のカー ドだけを使用 した と記録 していたが

,こ

の生徒 に とってはそれが自分 に合 っ たレベルだったのであろう。生徒たちは

,SIGNAL作

成時 に考慮 しておいた三つのレベル を自分た ちの英語力 に合わせて使 い分 けていた と言 えよう。

SIGNAL試

行 中は

,カ

ー ドは七個 のファイル・ ボ ックスに文法項 目ごとにまとめて

,教

室の後部 に棚の上 に置かれていた。41名の生徒たちは英語授業開始 とともに,まず これ までの記録 をReading

Mapで

確認 してか ら教室の後 ろへ行 き

,お

のおのがカー ドを選 んでいた。 この際

,だ

れが どのカー ドを使用す るかについての混乱 は見 られなかった。今回の試行期間であれば

,41名

の生徒 に対 して, 245枚のカー ドは

,量

的に十分であった と判断 され る。 生徒たちが

SIGNALに

取 り組 んでいる間

,英

語担当教師 は机間巡視 を行 っていた。生徒たちはあ まり私語 を交わす こともな くそれぞれのカー ドに取 り組 んでいたが

,字

旬 に関す る質問を除 けば教 師に質問す る姿 はあまり見受 けられなかった。 この ことか ら

,上

記Ⅲ(7)で述べた

,教

師への過剰 な

(9)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

2号

(2000) 負担 もなかった と幸R告で きよう。

SIGNALの

試行終了直後 に

,生

徒たちに簡単 なアンケー トを実施 した(10。 このアンケー ト結果 を 見る と

,ク

ラスのおよそ半数が

,SIGNALを

使 つた ことにより英文和訳 の力が伸 びた と思 うと答 え ている。 これは

,プ

レ・ テス トとポス ト・ テス トの点数の変化 を分析 して得 られた結果 とほぼ一致 している。 この半数近い生徒たちは

,精

読の領域 において実際にスキル を上達 させた と同時 に

,そ

の ことを自分たちで自覚 しているようなのである。 もう一つのアンケー トの項 目に対 する反応 は

,興

味深い。質問 は

,SIGNALを

使用 した ことによ り新 しい語 。語旬 を覚 えたか どうか を問 う内容であった。 この質問に対 して

,同

じ く半数程度の生 徒が

,新

しい語・語句 を覚 えた と回答 していた。

SIGNALは

もともと読解力 を養成す る目的で作成 された ものであ り

,語

・ 語旬 を学習するための教材 としては意図された もので はないために

,こ

の 点 に関 しては今の ところどの ように解釈 して よいのか不明である。 しか し

,大

量 の英文 に接する過 程で

,知

らず知 らずのうちに新 しい語・ 語旬が身 に付 くことは

,む

しろ当然 とさえ言 える。問題 と なるのは

,新

たに習得 された語・ 語旬が どのような種類 (語

,語

旬の どち らが より多 く習得 された か

,習

得 された語の品詞 は内容語か機能語か

,習

得 された語 。語句 はpass eなものかact eな種類 か

,な

)や

あるいはどの程度 の量 なのか等であろう。 これ らの点については

,今

後の研究課題 と したい。 Ⅷ ま と め と今 後 の 課 題 一般 に中学校 レベルの読解活動 は

,訳

読 を中心 とした精読が主流であ り

,多

読的な活動 はあまり 行われて きていないのが現状である。 このレベルの学習者の英語知識

,学

習習慣

,教

材 の種類・ 量, あるいは学校での英語の授業時間数 な どがその大 きな原因である。 さらに現場 の先生方が多忙 を極 めているというの も事実である。 このような要因が重 な り合 った結果

,少

な くとも中学校 レベルで は

,精

読 と多読 とは

,併

存で きない ものであるとい うことが当た り前の こととして受 け止 め られて きたのではないだろうか。多読的な活動の必要性 は認 めつつ も

,結

局 は高等学校 に進学 してか ら, しか も興味 と余裕のある場合 にのみ行 うもの

,

とい うのがおおかたの見方なのである。 しか し精読 と多読 とを三分す るような指導観の もとでは

,本

稿 の冒頭で引用 した ような事態 はい つ までたって も解消 されないまま残 るであろう。 さらに

,現

状のような作業 のみを積 み重ねて も, 最終的 に多 くの学習者 に十分 な英文読解能力が身に付かない ことは

,こ

れ までの体験談や研究報告 が くわ しく伝 えて くれている。 こういった閉塞状態 を少 しで も改善で きないのだろうか というのが, 本研究の出発点であつた。 本研究では

,ま

ず身の回 りにある教材 に工夫 をこらし

,中

学校 レベルで自主学習用 として使 える 教材 を作成 した。 この教材 を実際 に試行 した ところ

,い

まだ基本的な文法や語彙 を学習 しなが ら, お もに精読的な活動 にしか接 していない学習者で も

,

これ まで以上 に多 くの英文 に取 り組 む ことが で き

,そ

うす ることにより読解力の養成 につなが ることがわかった。今回の調査か ら得 られた効果 は

,複

数の要因により英文和訳の領域 に主 に限定 された ものであったが

,今

後 とも試行 を継続す る ことによ りさらにその効果 を検証 してい く予定である。 最後 に

,こ

れか らの研究の目安 として今後の課題 をまとめ

,本

稿 の締 め くくりとす る。

(D

教材 について

(10)

10

足立和美・ 岡本尚也・福田智美:中学生用多読教材SIGNALの開発 とその効果

(a)初

級 レベ ル のカー ドの改善

(b)本

文 中のブランク問題 の取 り扱 い

(C)解

答 部分

,指

導 の ポイ ン ト部 分 の改善

,充

(d)カ

ー ドの数 の追加 鬱

)試

行 方法 について

(a)よ

り長期 にわた る試行

(b)プ

レ・ テス トとポス ト・ テス トの見直 し

(C)よ

り綿密 な結果処理

(d)被

験 者 に対 す るよ り細 か い調査

(e)学

習者一人一人 の解答 用紙 の細 か な分析

(f)学

習者 一人 一人 の

Reading Mapの

よ り詳 しい検討 以上 の よ うな改善点 を念頭 に

,本

研 究 グル ー プで は今後 とも継続 して

SIGNALの

現場 で の利 用価 値 を検 証 し

,中

学校 レベル にお ける リーデ ィング活動 を少 しで も充実 した もの に してい きた い と希 望 して い る。 江

(D

本稿 は

,平

成10年度第29回 中国地区英語教育学会 において口頭で発表 した内容に,カロ筆

,修

正 を加 えた ものである。 修

)現

在 は

,鳥

取大学教育地域科学部附属中学校。 僧

)実

際の教材に興味ある方は

,本

稿 の第1著者 に連絡 されたい。 傲

)詳

しくは

,第

29回 中国地区英語教育学会発表資料 を参照のこと。

0

詳 しくは

,第

29回中国地区英語教育学会発表資料 を参照のこと。

)詳

し くは

,第

29回中国地区英語教育学会発表資料 を参照のこと。 (7)この検定の詳細 は

,Fukuda(1997)を

参照のこと。

(8)D組

の39名中, 5名がReading Mapを返却 していなかった。 (91 このプレ・ テス トの 日に

,一

名が欠席 した。

10

このアンケー トの詳細 は

,Fukuda(1997)を

参照の こと。

参 考 文 献

浅野博 (1994)「 日本人の英語読解力」『英語教育』 9月 号

,pp.2931,大

修館書店. 金谷憲編著 (1995)『英語 リーディング論』河源社. 島谷浩

,他

(1987)「 リディングの個別指導」F現代英語教育』 8月 号

,pp.2022,研

究社. 藤森千尋 (1995)「 リーディングのための語彙・ 辞書指導」『英語教育』 1月 号

,pp.1719,大

修館書店. 河合忠仁 (1997)「韓国の教科書に見 るReading能 力習得方法の特徴」『英語教育事典』

pp.5051,ア

ル ク. 根岸雅史 (1997)「読みの力をどう評価する」『英語教育事典』

pp.4449,ア

ルク. 橋本雅文

,他

(1998)「高等学校 における英語多読指導」『英語教育』 2月 号

,pp 74 76,大

修館書店. 小池生夫監 (1994)『第二言語習得研究に基づ く最新の英語教育』大修館書店. 栗原由郎 (1996)「多読指導のためのreading教 材」『現代英語教育』 7月 号

,pp.1820,研

究社.

(11)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

2号

(2000)

■ 静哲人 (1996)「捨 て きれ ない文法訳読法 の生 か し方」『英語教育 』 1月 号

,pp 26 28,大

修館書店。 高梨康雄

,高

橋 正 夫 (1987)『英語 リーデ ィング指導 の基礎 』研 究社. 辻 由紀子 (1997)「 トキ フ学 園の場合」『英語教育事典 』

pp.1924,ア

ル ク. 鈴木寿一 (1996)渡辺時夫編著 F新しい読 みの指導 目的 を持 った リーデ ィング』pp l16 123,三省堂 。 高橋俊章

,他

(1994)「 リーデ ィング」『英語教育』 9月 増刊 号

,pp.6487,大

修館書店. 天満美智子 (1989)『 英文読解 のス トラテ ジー』大修館書店. 吉 田達弘(1995)「 リーデ ィング教材 としての教科書 は どうあ るべ きか」『英語教育』1月 号

,pp 26 28,大

修館書店. 緑川 日出子 (1997)「多読指導 の可能性 を求 めて」『英語教育事典』

pp.3843,ア

ル ク. 垣 田直 巳監 (1981)『 英語科重 要用語300の基礎知識』明治 図書. 津 田塾大学言語文化研究所読解研究 グループ編 (1992)『 学習者 中心 の英語読解指導』大修館 書店. 堀 口俊一編 (1991)『 現代英語教育 の理論 と実践』聖文社.

Fukuda,Tomomi。 (1997)The Effect of the laterials for Teaching Reading.Unpublished B.A.

paper,Faculty of Education,TOTTORI UNIVERSITY.

Okamoto,Naoya (1997)A Study of Teaching Method for Reading in English―Review and Compila‐

tion―,Unpublished B.A paper,Faculty of Education,TOTTORI UNIVERSITY 謝

SIGNAL試

行 に際して

,全

面的なご協力を頂いた鳥取大学教育学部附属中学校英語科の先生方,

ならびに

2年

生の英語担当教官安本文嗣先生に

,こ

の場 をお借 りして執筆者一同

,心

より感謝申し 上げます。

(12)

参照

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