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意思決定フレーミング効果の三類型 : 幼児の発達と保育の観点を踏まえて

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(1)

-幼児の発達と保育の観点を踏まえて-佐々木

理論的背景

我 々は 日頃の生活の中で様 々な意思決定の場面 に直面す る。意思決定 は衣服の選択 の よ うに些細 な ものか ら生命が危ぶ まれる決断 まで実 に多様であ り、 しか もその選択 は しば し ば結果の不確か さ (uncertainty)が伴 う中で行 わなければならない。将来の見通 しが不確 かな中で迫 られる決断は、私達 を困惑 させ る一方で、ギ ャンブルの ように古来人類 を楽 し ませ て きた とい う側面 もある。 こうした不確実状況下の意思決定 は、行動経済学、認知心 理学、神経生物学 とい った諸分野 において注 目され、意思決定 プロセスの概念化が試み ら れて きた (weber& Johnson,2009)。 意思決定の情報処理モデルによる と、意思決定の生 起 メカニズムは、直感的無意識的なシステム1と理性的意識的 なシステム2の二重過程が 想定 され、不確実状況下の意思決定 には主 にシステム

1

が関与す る とされてい る (Evans,

2

0

0

8;

Kahneman&Frederick,

2

0

0

2

) . 不確実状況下の意思決定が システム 1によ りもた らされる とす る根拠 は、我 々の選択が 期待効用理論1(Yon Neuman& Morgenstem,1947)か らの予測 に反 して経済的合理性か

ら逸脱す る点 に示 される。例 えば、高確率で小額 を得 る選択 と低確率で高額 を得 る選択 に 直面す ると大概 は前者 を選ぶのだが、高確率で小額 を失 う選択 と低確率で高額 を失 う選択 となる と後者 を選択す る者が多 くなる (Kahneman皮Tversky,1979)。意思決定が常 に経済 的合理性 に準拠す るな らば、期待値が等価である限 り、利得場面 と損失場面で この ような 選好逆転 (preferencereversal;Slovic,1991)は起 こらないはずである。Kahneman&Tversky や Slovicとい った心理学者 らが示 した これ らのパ ラ ドクスは、不確実状 況 の下 で行 われ る我 々の選択が、論理的 というよりは直感的なプロセスに支 え られていることの証左 とな った。 また、 この ようして下 される判断は、心理学や計算機科学の分野ではヒュ- リステ イクス2(heuristics)と呼 ばれてしさる. 提示 された条件が客観的 には全 く等価で も、条件提示の表現の仕方が変 わるだけで意思 決定が大 きく変化す る とい う現象 はフレー ミング効果 と呼 ばれ、 これ まで数多 くの研究者 1 期待効用理論では、期待 される効果が最大 となる選択 を合理的な意思決定 とす る。 2′アルゴリズムや論理 を適用す るのではな く、経験則 や直感 に基づいてなされる問題解決。必ず しも正 しい答 えが導 けるわけではないが、ある程度は高い精度で正解 に近づ くことがで きる。

(2)

表1 フレーミング効果の類型化の基準 (Levinetal.,1998より作成) 類 型 何が操作されるのか 何に影響するのか どのように測定されるのか リスク選択フレーミング リスクが異なるオプション リスク選好 オプションの選択 属性フレーミング 対象・事象の属性 評価項目の評定値 好ましさの評価 目標フレーミング 行動の目標や結果 説得の受容 行動の採用率 の興味 を引いて きた。 フレー ミング効果の研 究は、意思決定 プロセスに直接 的な関心 をも つ認知心理学や行動経済学 に留 まらず、健康心理学、臨床心理学、教育心理学、そ して産 業組織心理学 とい った分野 にまで波及 してい る。 しか し、 こう した適用 の広が りに も関わ らず、 フレー ミング効果の基礎 となるプロセスの理解 は未 だ十分 とは言 えない段 階 にある。 従来 フレー ミング効果はプロスペ ク ト理論3(Kahneman良 Tversky

,

1979)によ り説明 さ れる現象 とみなされて きたが、●プロスペ ク ト理論では説明 し得 ないケース も少 な くない。 そ こで Levinらは、異 なるメカニズムが基礎 となる別種 の フレー ミング効果があ ることを 理論 的 に証 明 し、 リス ク選択 フ レー ミング (risky-choice 舟aming)、属 性 フ レー ミング

(attributeframing)、目標 フレー ミング (goalframing)の三類型 を提唱 した (Levin,Schneider,

&Gaeth

,

1998)。彼 らの類型化 は、 フレー ミングを操作す る手法 に基づいている。表1は、 フレー ミング効果の三類型 について、 「何が操作 されるのか」、「何 に影響す るのか」、「ど の ように測定 されるのか」とい う観点で まとめた ものである。 この類型 は以後の研 究 に多 大 な影響 を与 え、Levinらに よる呼称 が広 く普及す る ようになった。本稿 で は、彼 らの理 論 を抄訳 した上で、 フレー ミング効果の発達研究 を概観 し、保育研究へ の適用 を試みる。

l

)スク選択 フレ- ミンク

リス ク選択 フレー ミングの典型的 な例 は、先 に示 した損失 、・利得 の選択 問題 とTversky & Kahneman(1981)による 「アジアの疾病問題」である。 この意思決定問題 では、二つ の選択 オプシ ョンが仮説的 シナ リ・オの中で提示 される。一つは リスクを伴 わない確実 な見 通 し (プロスペ ク ト)で、 もう一つ は全 か無 かの リス クを伴 う不確実 な見通 しである。そ の生起確率が数値 によ り表 わされる。 二つのオプシ ョンに対す る選択 は、そのオプシ ョン がポジテ ィブに表現 されるか (生存 、利得) ネガテ ィブに表現 されるか (死、損失) に依 3 主観的価値 を表す価値関数が利得 と損失で非対称 に歪 曲す ることか らフレー ミング効 果 を説明 す る。期待効用理論が期待効用の最大化 を原則 とす る規範的理論 であるの に対 し、 プロスペ ク ト 理論 は意思決定者の心理 を説明す る記述的理論である。詳細 についてはKahneman&Tversky (19 82)や奥 田 (2008)を参照 されたい。

-5

6

(3)

-リスク選択 フレーミング 600人の死亡が予想 される伝染病の流行 に備え、二つの対策が準備 されている。 ポジティブフレーム 対策A 200人が助かる 対策B 1/3の確率で600人が助かるが、2/3の確率で誰 も助からない ネガティブフレーム 対策C 400人が死ぬ 対策D 1/3の確率で誰 も死なないが、2/3の確率で600人が死ぬ 存す る。す なわち、ポジテ ィブフレームでは確実 な結果が得 られるオプシ ョンを選 び、ネ ガテ ィブフレームでは リスクを伴 うオプシ ョンを選ぶ とい う選好逆転である。 この リスク 選択 フレー ミング効果 は、プロスペ ク ト理論 により説明 される。 リスク選択 におけるフレー ミング効果 は比較的一貫 した傾向 を示すが、その効果が弱 ま る (あるいは無 くなる)ケースについて も検討 されている (Miller

&

Fagley

,

1991;Sieck &Yates

,

1997)。例 えば、Keren& Wegnaar(1987) は、従来の一度 きりのギ ャンブルを 選択す る課題の代 わ りに、同 じ選択 を複数回繰 り返すギ ャンブルが提示 されると、 フレー ミング効果が消失す ることを示 した。一度 きりのギ ヤ・ンブルでは、利得条件の場合 にリス クを回避 し確実 な結果 を求める傾向が見 られるが、複数回のチ ャンスがあるギ ャンブルで は (つ ま り挽 回のチ ャンスが与え られる と)、リス クを伴 うとして もより高い利益 を追い求 めるのである。そ して、Keren& Wegnaar(1987)の課題では同 じ選択 を繰 り返すギ ャン ブル機会が一皮 だけ与 えられたのに対 し、著者 らの研究ではギ ャンブル選択の機会 自体が 複数回与 えられる実験 を行 った (sasak

i皮

Kanachi

,

2005)。 つ ま り、 自分が選択 したギ ャ ンブルの結果 を受 け、次の選択で リスクを求めるか回避す るか を変更で きる状況が複数回 繰 り返 されたのである。実験の結果、 この場合で もフレー ミング効果は消失 し、利得条件 において もリスクを志向す る傾向が見出 された。ただ し、ギ ャンブルの回数 を重 ねるに し たが って、 この傾向は縮小 してい くことも確かめ られている。 リス ク選択 フレー ミング効果の解釈 は、 フレー ミング操作が選択 オプシ ョンの設定 に も 関わって くるとい う事態のために複雑 な ものにになって しまう。オプシ ョンの選択 は、オ ブシ ョシの評価や比較 といった複数のプロセスに依存す ることにな り、認知情報処理 に対 す るフレー ミング効果の間接的な測定 とならざるを得 ない。 また、 リスク知覚が関わるこ とも、情報処理 に対 してフレー ミングが どの ように影響 してい るのか抽 出す ることを難 し くしている。

(4)

属性 フレー ミング

属性 フ レー ミングは もっ と もシ ンプル な フ レー ミングで、提 示 され た記 述 の誘 意性 (valence)が情報処理 に どの ように影響す るか理解す るの に もっ とも有効 な方法 であ る。 Levinら (1998)が属性 フレー ミング と名付 けたのは、所与の文脈 のなかでただ一つの属 性のみが フレー ミング操作 を受 けるか らである。 従属変数はオプシ ョンの選択 ではな く、 対象 ・事象 に対す る評価であるため、選尺 に至 るまでの よ り基本的 なプロセスを測定す る ことがで きる。 属性 フレー ミングの典型的な例 は消費者判 断 に関わる ものである。Levin

&

Gaeth(1988) は、牛挽 肉の質についての評価が、赤身75%と表記 されるか、脂 身25%と表記 されるか に 依存す ることを示 した。牛挽 肉は、赤 身75%と表記 されたほ うが、味が良 く、脂 っこ くな い と評価 されたのである。 ここで フレー ミング操作 される情報 は、 リス ク選択 の結果では な く、牛挽 肉の評価 を左右す る属性 である点 に注 目しなければな らない。つ ま り、 この例 は、属性 フレー ミング効果の本質的特徴が リス ク知覚ではない ことを示 している。 属性 フレー ミングの もう一つの適用例 は、成功率 と失敗率 に関す る状況 を記述 した もの である。 この場合 も、成功率 を示 してポジテ ィブな表現 を した方が、失敗率 を示 してネガ テ ィブな表現 をす るよ り好 ま しく評価 される。例 えば、医療行為 に関 して、治療が失敗す る確率が提示 よ りも、成功 の確率が提示 された ときの方が、その医療行為 は承認 されやす い ことが確認 されている (Krishnam urthya,Carterb,&Blair,2001;Marteau,1989)0

属性 フレー ミングも、 リスク選択 フレー ミングと同様、その効果 は比較的頑健 である。 Levinら (1998)は、ポジテ ィブフ レームの方が好 ま しい評価 を受 けやす い とい う一貫 し た現象 を、 「フレー ミングの誘意性 に合致 したシフ ト (valence-consistentshift)」と呼 んだ。 この一貫 したシフ トが崩れるのは、強固な態度が関わる トピックを扱 った場合で、例 えば、 人口中絶 に関す る問題 については属性 フレー ミング効果が消失 して しまう (Marteau,198 9)。また、極端 なケース を扱 う場合 に も属性 フ レー ミング効果 は減少す る傾 向 にあ り、ギ ャンブル評価 におけるフレー ミング効果 は、勝敗の確率が極端 な ときよ りも中程度の とき に大 きくなる (Levineta1.,1986)。 属性 フレーミング ポジティブフレーム 成功する確率が80%の手術 ⊥ 好 ましさの評定 ネガテ ィブフレーム - 5

(5)

8-属性 フレー ミング効果の説明 ポジテ ィブフレー ミングが よ り好 ましい評価 に結び付 き、ネガテ ィブ フレー ミングが よ り好 ましくない評価 に結 び付 くとい う現象は、属性 フレー ミング効果が誘意性 に開通 した 符号化 (encoding) によ りもた らされることを示唆 している (Levin& Gaeth

,1

9

8

8)

。 す なわち、ポジテ ィブなラベ ル付 けでは好 ましい連想 を引 き起 こす符号化が生 じ、 ネガテ ィ ブなラベルでは好 ましくない連想 を引 き起 こす符号化が生 じる とい う仕組みである。牛挽 肉の赤 身 と脂 身の記述 の操作 によって、肉質か ら連想 される味の次元 にフレー ミング効果 が波及す ることは、その例証 と言 えよう。 こうした説明は、印象形成の研究 に適用 されるプライ ミングの概念 と相通ず る ものがあ る。 印象形成の実験では、先行課題 の誘意性 によ りプライ ミングが生 じ、後 に続 く印象評 価が左右 される (Decoster&Claypool

,

2004)。一方、属性 フレー ミングでは、 フレー ミン グ操作 されたラベル付 けが プライム刺激の ように働 き、誘意性 に合致 したシフ トを導 くの である。 したが って当然の ことなが ら、属性 フレー ミングに対 しては、プロスペ ク ト理論の説明 は適 さない。 なぜ な ら、プロスペ ク ト理論 は `リス クが異 なるオプシ ョン-の選好 'を説 明す るよう構築 されたか らで、 リスク操作ではな く対象 ・事象の属性が操作 される属性 フ レー ミングは、質的に リスク選択 フレー ミングとは異 なるのである。

目標 フレーミング

目標 フレー ミング効果 は、説得的 コミュニケーシ ョンの分野 において注 目されている。 この タイプの フレー ミングは、説得的なメッセージが行動 した ときのポジテ ィブな結果 を 強調す るか、あるいは行動 しなかった ときのネガテ ィブな結果 を強調す るとい う図式で操 作す る。 したが って、 ポジテ ィブフレームはポジテ ィブな結果 を得 る とい う目標 に注意 を 向け、ネガテ ィブフレームは消極的な結果 を避 けるとい う目標 に注意 を向けることになる。 目標 フレー ミング操作 の特徴 は、ポジテ ィブフレーム もネガテ ィブフレーム も同 じ行動 を 促進す るとい う点 にあ り、 目標 フレー ミングの問題 は どちらの フレー ミングが よ月説得的 な効果 をもつか探 ることにある。 留意 しなければならないのは、 目標 フレー ミングの フレー ミング操作が属性 フレー ミン 目標 フレーミング ポジティブフレーム 乳房自己診断を行えば、対処 しやすい初期段階で腺癌を見つけるチャンスが増える ネガティブフレーム ′ー乳房自己診断を行わないと、対処しやすい初期段階で腫虜を見つけるチャンスを逃す

(6)

グのそれ とは まった く異 なる点 である。例 えば、 目標 フ レー ミングの典 型 的 な例 に、 Meyerowitz&Chaiken (1987)による乳房 自己診断 (breastselトexamination;BSE)に関す る問題がある。 属性 フレー ミングであれば、ポジテ ィブフレームでは BSEを発見率の高 い優れた検査 として説明 し、ネガテ ィブ フレームでは見つけ損 なう率 を提示 して BSEの 信頼性 に懸念 を表明す る。その結果、ポジテ ィブフレームの方が好 ましく評価 される。 対 照的に目標 フレー ミングでは、ネガテ ィブ とポジテ ィブの両方の フレームで、BSEを優 れた効果のある実行すべ き検査 とい う想定 をす る。Meyerowitz

Chaiken(1987)によれ ば、BSEを実行 しようとす る動機づ けは、ネガテ ィブフレームの方が高い傾向が現 れる。 目標 フレー ミングは他の フレー ミングに比べ ると不安定で、 しば しばフレー ミング効果 が生 じないこともある。 フレー ミング効果の三類型の独立性 ・関係性 を検討す るために、 三つめ フレー ミング効果 を被験者内要因計画で調べ た Levinら (2002)の研 究では、 リス ク選択 フレー ミングと属性 フレー ミングではフレー ミング効果が認め られたが、 目標 フレ ー ミングではフレー ミング効果が現 われなか った。同様 に我 々の研 究で も (Hayashi & sasaki,undersubmission)、目標 フレー ミングのみフレー ミングの主効果が見 られない とい う結果 を得ている。 また、状況によっては結果のパ ターンが逆転することさえあ り、例 え ば、問題 に対す る自我関与が低い場合や 自尊心が高め られた場合 には、む しろポジティブ フレームの方が承認 されやす くなる (Maheswaran & Meyers-Levy

,

1990;Robberson &

Rogers,1988)。あるいは、女性では定型的 にネガテ ィブ優位 の結果が見 られたの に対 し、 男性では逆 にポジテ ィブフレームで説得 の効果が高 まった とい う報告 もある (Huang & wang,2010)0 目標 フレー ミング効果の説明 ネガテ ィブな情報 は注意が向け られやすいため、ポジテ ィブな情報 よ り強い影響があ る。 ネガティビテ ィバイアス と呼ばれる現象である (Baumeister,Bratslavsky,Finkenauer,

&vohs,2001;Rozin& Royzman,2001)。目標 フレ丁 ミング効果はこのネガテ ィビテ ィ バイアス (negativitybias)により説明 された (Meyerowitz& Chaiken

,

1987)。ネガテ ィビ ティバ イアスはプロスペ ク ト理論 に も取 り込 まれてお り、損失忌避 (loss aversion)とい う用語で説明 されている。すなわち、客観的には等価 だ として も、利得 か ら得 る満足 より 損失か ら受ける苦痛のほうがはるか に大 きいため、利得 よりも損失 を免れ ようとす る動機 づけの方が強 く現れるとい う説明である(Kahneman&Tversky,1979;Tversky& Kahneman, 1991)。したがって 目標 フレー ミング効果 において、ネガテ ィブフレームの方が説得の効 果が強 く、動機づ けが高 ま りやすい とい う傾向は、 まさに損失忌避の反応 だ と言 えよう。

(7)

0-三類型のプロセスモデルの比較

以上の議論か ら、種 々の フレー ミング効果 を同一視 して扱 うべ きでない ことが明白 とな った。Levinら (1998)の三類型 は、異 なる操作 的定義 に よる フレー ミング効果が、異 な る心理 プロセスに依拠す ることをうま く説明 している。 しか しなが ら、Levinら (1998) の三類型以外 にも、 フレー ミング効果 を理解するための重要 な視点があることは指摘 して おかなければな らない。それは例 えば、 タスク領域 (task domain)に基づ く分類 である (wang

,

1996)。 Huang& Wang(2010)は Levinらの三類型の要因に加 えて、 タス ク領 域 (生死 に関す る開港、金銭 に関す る問題、時間に関す る問題) を要因 としてフレー ミン グ効果 を調べ、三類型 とタスク領域 の間にフレー ミング効果の交互作用があることを見出 している。 Levinら (1998)の類型の もっ とも重要 な貢献 は、正反対 の結果のパ ター ンをフ レー ミ ングの類型の違いか ら説明 した点である。異 なる心理 プロセスが もた らす結果のパ ター ン の差異 を図 1に図式化 した。同 じ結果のパ ターンで も、 リスク選択 フレー ミングでは価値 関数の歪みが リスク志向 とリス ク回避 に押 しや り (プロスペ ク ト理論モデル)、属性 フレー ミングでは連想 プロセスが好 ま しさ評価 を反対方向 に押 しや る (連想 ネ ッ トワー クモ デ ル) とい う異 なる図式が想定 されている。 これに対 し目標 フレー ミングでは、 フレー ミン グ操作 された行動 目標が動機づ けを同 じ方向 に押 しや り、ネガテ ィブフレームが損失忌避 によって より強 く作用す る (損失忌避モデル) とい う図式が想定 された。 こうした図式 に よ り、他の二つの類型 とは正反対 の結果が生 じることが矛盾無 く説明 された。 Levinら (1998)の三類型 はメ タ分析 によ り導かれたモ デルであ る∵ため、次 に Levinら (2002)は被験者内要因計画 による検討か ら三類型の実証的研究 を行 った。その結果、三 つの フレー ミング効果 はいずれの組み合 わせ も相関が低 く、 したが って三類型 は独立 した メカニズムに依拠す ることが示唆 された。同様の結果 は、我 々の研究 において も確認 され ている (Hayashi& Sasa

k

i

,undersubmission)。 ただ し、Levinら (1998)が提案 した連想

ネ ッ トワークモデル と損失忌避モデルにつ.いては、その妥当性が認 め られたわけではな く、 依然 として実証的な検証が必要 とされている。例 えば、属性 フレー ミング効果の連想 ネ ッ

トワー クモデルは単純化 しす ぎてい るとい う指摘 もあ り (Kuvaas& Sel

a

rt

,

2004;Sasa

P

&Hayashi,undersubmission)、モデルの見直 しやあるいは操作的定義の精教化が検討 され るべ きか もしれない。

リスク選択 フレー ミング効果の発達研究

フレー「ミング効果は発達過程 の どの段階かち現れるのか。あるいはフレー ミング効果の 生起機序 は生得的なのか、後天的 に獲得 された ものなのか。発達過程 の解明はフレー ミン

(8)

リスク選択フレー ミング

価値関数の歪みに 基づくリスク志向 ■

価値関数の歪みに 基づくリスク回避

」 一十

リスクを伴 うオプシ ョン

属性フレー ミング

ネガテ ィブ 連想プロセス ■ -

確実なオプション ポジテ ィブ 連想プロセス

」 一十

好ま しくない評価

目標フレー ミング

損失回避 目標 ・一

・ト

好ま しい評価 実行への低い動機 実行への高 い動機 図 1 フレー ミング効果の三類型における処理過程 (Levineta1.,1998より作成) - 6

(9)

2-グ効果の心理 プロセスについて重要 な示唆 を与 えるはずである。当然の ことなが ら、 これ らの問い に対 しては、Levinら (1998)の類型毎 に異 なる答 えが必 要 となるだろ う。 現在 の ところ、発達過程 に関す る実証研 究が なされているのは リス ク選択 フ レー ミングのみで あるが、 フレー ミング効果の実証研究では被調査者 に一定の言語能力や確率概念の理解が 求め られるため、三類型のいずれにおいて も発達研究 には困難が伴 う。 そ うした制約 を踏 まえて、今後 は巧妙 にデザ インされた実験 により、三類型それぞれ について発達過程の理 解が進 むであろう。 ここでは リスク選択 フレー ミングに関す る発達研究の動 向 を紹介す る。 リス クティキング行動 (risk-takingbehavior)の発達研究 に関す る総説で、Boyer(2006). は リス クティキ ングを認知発達、感情の発達、神経生理学的発達、社会性の発達の観点 に 分 けて考察 している。Boyerの分析 によれば、 リスクティキ ングの発達 は加齢 に伴 って早 調 に変化す る とい った単純 な ものではな く、その複雑 な発達過程 は認知、感情、社会性 に 分類 して捉 えると理解 しやす くなる。例 えば、幼児期 は認知能力が未発達であるために適 切 な確率判断がで きず4、総 じて リス ク志向 になって しまうが (Levin&Hart,2003;Reyna & Ellis,1994;Schlottmann, 2000)、その一方で青年期 も "若気の至 り" と言 われ る無思 慮 な衝動 にか られて感情の コン トロールがで きず、やは りリスクの高い行動 をとって しま

うとい った具合である (Cauffman&Steinberg,2000;Steinberg&Scott,2003)0

それでは リスク選択 フレー ミング効果 は どの ような発達過程 を辿 るのか。 アイオワ ・ギ ャンブル課題 (IOWA gamblingtask;Bechara& Damasio

,

2002)の ようにギャンブル課題 を複数回繰 り返す意思決定 は、結果の フィー ドバ ックが情動反応 を引 き起 こすため、感情 の発達が深 く関わるが (Garon

&

Moore

,

200

4,

2007;Ker

r&

Zblazo

,

2004)、 フレー ミン グ効果の課蓮 は一度 きりの判断 を問 うため、その意思決定 には もっぱ ら認知発達が関与す る と考 えられる。 同様 の予測 は リス ク選択 フレー ミング効果のモデルか らも導 くことがで きる。 とい うの も、 リスク選択 フレー ミング効果 をもた らす主観的価値 関数 は、直感的無 意識的 な情報処理の出力 とみなされ るか らである。 Reyna& Ellis(1994)は、 こうした予測が幼児期 に当てはまることを最初 に実証 した。 彼 らが意思決定課題 に用いたのはルー レッ■トゲームで、被験者 は就学前 の幼児28人 (平均 年齢4歳8ケ月)、小学校2年生40人 (8歳0ケ月)、5年生43人 (11歳1ケ月)だった。ル ー レッ トは生起確率 を視覚的に表現で きるため、子 どもを対象 とす る実験 に しば しば用∨そ られる。被験者の課蓮 は、賞品のス←-パーボールを確実 にもらう (失 う)か、ルー レッ ト ゲームで リスクを負 うか選択す るこ とだった。実験計画は、 フレー ミング (獲得 、損失)、 生起確率

(

1

/

2

、2

/

3

、3

/

4

)

、アウ トカムの期待値 (

1

4

、30)の三要 因の被 験者 内要 因 4 5歳前後の子 どもに確率判断はで きない とす ろ説 (piaget良 Inhelder,1951/1975)とで きると す る説 (schlottmann,2001)がある。Harbaughら (2002)は、幼児 に確率判断 はで きるが、経験 不足か らくる未熟のために不十分であると説明 している。

(10)

計画だった。 実験 の結果、就学前の子 どもは、 フレー ミングに関わ らず リスク志向の選択 をす ること がわかった。一万、

5

年生の子 どもは獲得 フレーム と損失 フレームの間で選好逆転 こそ生 じなかったが、損失 フレームの方が よりリス ク志向になるとい う傾向が見 られた。 この結 果か ら、就学前の子 どもは アウ トカムに関す る量的な差異 に注 目す るが、加齢 とともにヒ ュー リスティックな判断をするようになるとい う結論が導 き出 された0

Reyna&Ellis

(

1

9

9

4)

と同様の結果 は、Levin&Hart

(

2

0

0

3)

の研究で も確認 されている。

彼 らが用いた課題では、箱の数 (確率の操作)と箱 に入れる賞品の数 (アウ トカムの操作) で リス クを表現 した。被験者は賞品を確実 に もらう (失 う)か、複数の箱か ら選ぶ リスク を負 うか選択 した。被験者 は、実験

1

5-6

歳の子 ども

3

0

人 (平均 月齢

5

8.

8

7

ケ月)で、 実験

2

6-7

歳の子 ども

7

2

人 (平均 月齢

8

3.

0

ケ月) とその親だった。実験計画 は、実験

1

ではフレー ミング (獲得、損失)の一要因の被験者内計画で、実験

2

ではフレー ミング (獲得、損失)、生起確率

(

1

/

2、1

/

5)

の二要因の被験者内計画 だった。 また、Reyna&Ellis

(

1

9

9

4)

の実験 は各条件一度 きりの選択 だ ったの に対 し5、各条件複数 回 (実験

1

5

回、 実験

2

3

回)の選択 を行 ったため、量的データ (選択回数) を扱 うことがで きた。 実験の結果、獲得 フレーム と損失 フレームで選好逆転は見 られず、損失 フレーム と同様 に獲得 フレームで もリスク志向が見 られた。ただ し、損失 フレームの方が よりリスク志向 になるとい う偏 りが認め られた。 また、 この リスク志向の偏 りは臆病 さ、衝動性 といった 個人差特性が関わ りをもっ こと、親の方が より大 きな偏 りを示す ことが確認 された。 この 結果か らLevin&Har

t(

2

0

0

3)

は、 フレー ミング効果の発達 は幼児期か ら始 まる と結論づ けている。 幼児期 にはフレー ミング効果が見 られなかった Reyna& Ellis

(

1

9

9

4)

の結果 と は対照的である。 Schlottmann& Tring

(

2

0

05)

は、それまでの発達研 究で選好逆転の ような明確 なフレー ミング効果が見 られなかったのは、実験手続 きに起因すると指摘 した。先行研究では、生 起確率 とアウ トカムが視覚的に表現 されるのに対 し、 フレー ミング情報 は口頭で伝 えられ るだけだったため、 フレー ミング効果 を生 じさせ るには手続 きが不十分 だった と考 えたの である。そこで、 フレー ミング情報 について も笑顔や険 しい顔 のキャラクターを表示 して、 視覚的にわか りやすい表現 を行 った。被験者は、

6- 7

歳の子 ども

1

4

人 (平均年齢

6

6

ケ月) と

8-1

0

歳の子 ども

1

4

(9

4

ケ月)だった。被験者の課題 は、ゼ リー ビー ンズ を確実 に得 る (失 う)か、ルー レッ トに似たゲームで リスクを負 うか選択 した。 また、彼 らの実験では、ルーシー という名のぬい ぐるみが選択課題の当事者で、被験者 は第三者 と しての意見 を求め られた。 こうした手続 きも従来の研究 と異 なる点である6. 5 Reyna&Ellis(1994)の研究で得 られたのはカテゴリカルデー タだが、F検定が行 われている. -6

(11)

4-表2 リスク選択フレーミング効果の発達研究 著者 年齢 人数 確率表現 アウトカム フレーミング効果/選好逆転 Reyna

&

ElhS(1994) 幼児 28 ルーレット スーパーボール なし 2年生 40 5年生 43 あり/なし Lev

h&

Hart(2003) 5-6歳 30 箱の選択 終了まで未開封 あり/なし 6-7歳 72 箱の選択 10セント硬貨 あり/なし Schlottmann

&

Tring(2005) 6-7歳 14 擬似ルーレット ゼリービーンズ あり/あり 8-10歳 14 あり/あり Levinetal.(2007) 5-7歳 37 カップの選択 25セント硬貨 なし 8-11歳 43 なし その結果、獲得 フ レームでは リス ク回避 、損失 フ レームで は リス ク志 向 とい う、大 人 と 同様 の選好逆転が子 どもの実験 で も確認 された。 したが って、幼児期 には ヒュー リステ ィ ックな意思決定 がで きない とす るReyna

&

Ellis (1994)の説 よ りは、幼児期 か ら既 に発達 の萌芽が見 られ る とす るLevin&Hart(2003)の説が支持 され る結果 とな った。 さ らに、

Schlottmann&Tring(2005)は、いわゆ る授 か り効果7(endowmenteffect;Kahneman,Knetsch

,

良 Thaler,1990)が 関与す る可能性 を排 除 し、実験結果が ヒュ- リステ イタス に よ りもた らされ る標準 的 な フ レー ミング効果 である こ とを示 してい る。 また、 フ レー ミング効 果 は 選択行動 (choice)で は見 出 され るが、 リス ク判 断 Gudgment)の場 呑 フ レー ミ ング効 果 は小 さ くなる こ とも明 らか に された。意識態度が実際 の選択行 動 と乗離 す るの は成 人 に も 見 られ る現象 で (例 えば、Tversk

y,

Sattath

,

& Slovic

,

1988)、この点 に も幼児期 の意思決 定の発達過程 が垣 間見 える。 リス ク選択 フ レー ミング効果 の発達研 究 を表2にま とめた。 かつ てPiaget&Inhelder (1 951/1975)は幼児 に確率 の概念 は理解 で きない と考 え、Reyna

&

Ellis (1994)は幼児期 に フレー ミング効 果 は生 じない と報告 した。 しか し最近 の研 究 に よって、幼児 に も確 率 の概 念があ り、大 人 と同様 の フ レー ミング効果が生 じるこ とが明 らか となった。今後 さらに、ニ リス ク適択 フ レー ミング効果 の生起秩序 の解 明 に向 けて、発達研 究の知見 が積 み重 ね られ てい くであろ う.学童期 に獲得 す る とされて きた心 の理論8(theory ofmind)を、 15

ケ月

の乳児が既 に獲得 してい る と報告 された ように (Onishi

Baillargeon

,

2005)、 リス ク選 6 この相違が結果 に影響 を及ぼ した可能性 につ)さては議論がなされていない。 7 -度手 に入れた物 に高い価値 を感 じ、手放 した くない と感 じることが損失回避 をもた らす. 8 他者の心の状態 を類推 した り、他者が 自分 と違 う信念 を持 ってい ることを理解 した りす る能力。

(12)

択 フレー ミング効果 も生後数週 間の新生児 に見出 される日が来 るか もしれない。

保育 にお ける目標 フレー ミング効果

Levinら(1998)が定義づ け した目標 フレー ミングは、 メ ッセージフレー ミング (message f rami ng)と呼 ばれて きた概念 とほ とん ど同義であ る。Levinらも触 れてい る ように、説得 的 メ ッセージの フレー ミングは、効果の現れ方が一貫 しない ことがたびたび指摘 されて き た。一般的にはネガテ ィブフレームの効果の方が大 きい とされているが、ポジテ ィブ フレ ームの効果の方が大 きい とい うメタ分析結果 もある (0'Keefe& Jensen

,

2008)。フレー ミ ング効果 を逆転 させ る媒介要因 としては、 自我関与 (Maheswaran&Meyers-Levy,1990)、 自尊心 (Robberson& Rogers,1988)、性別 (Huang良 Wang,2010)が挙 げ られる他、 リ スクが小 さい場合 にポジテ ィブ フレームの効果の方が大 き くなる とい う報告 もあ る (Lee & Aaker

,

2004)。 ここでは もう一つ、制御適合 (regulatory fit)に焦点 をあて、 目標 フレ ー ミング (あるいはメッセージフレー ミング) に対す る媒介要因 としての役割 を概説 し、 後述す る調査報告 (保育 における目標 フレー ミング方略)の理論 的な基礎づ けを行 う。 制御 適合 は 自己制御 (selトregulation)に関す る概念 で、動機づ けの方 向性 と目標追 求 の方法 との関係性 について説明す る (Higgins

,

2000)。 まず、動機づ けの方向性 は、ポジ テ ィブな結果への希望、推進、達成 に関わる促進焦点 (promotion fわcus)と、 ネガテ ィブ な結果 に対す る予 防、安全 、責務 に関わる予防焦点 (prevention fわcus)に分 け られる。一 方、 目標追求の方法 は、ポジテ ィブな結果 を目指す熱望方略 (eager strategy)とネガテ ィ ブな結果 を回避す る警戒方略 (vigilant strategy)に分 け られる。 したが って制御適合 とは、 促進焦点 一熱望方略、予防焦点 一警戒方略 とい うように、 自己制御 の方向性 と目標追求の 方向性が合致 した状態 を指すのである。一般的に、制御適合の状態 になると、 目標追求へ の動機づ けが高 まる と言 われてい る。

Cesarioら (2004)や Yi&Baumgartner(2009)は、制御適合理論の予測か ら、説得的メ ッセージの説得力 は制御適合 に依存す ることを見 出 した。す なわち、促進焦点 メ ッセージ においては熱望方略の説得 (例 えば、 「野菜や果物 は栄養が豊富で摂取すれば よ り健康 に なれる

)

が よ り説得力 をもち、予防焦点 メッセージにおいては警戒方略の説得 (例 えば、 「野菜や果物 は健康維持 に必要で摂取 しない と病気 を防げない

)

が よ り説得力 を もつ こと が証明 されたのである。 ここで注 目すべ きは、説得的 メッセージの熱望方略 ・警戒方略の フレー ミングが、 目標 フレー ミングのポジテ ィブフレーム ・ネガテ ィブフレームに対応す る点である。 つ ま り、予 防焦点 メッセージにおいてネガテ ィブフレームが説得力 を高めた のは Le vin(1998)の理論 に合致す るが、促 進焦点 メ ッセー ジで は Levinら (1998)の理 論 に反 し、ポジテ ィブフレームで説得の効果が強化 されたわけである。 これは制御適合が 目標 フレー ミング効果の媒介要因 として働 くことを強 く示唆す る結果である。 - 66

(13)

-これまでの目標 フレー ミング (メッセージフレー ミング)の研究は、健康 に関す る行動 (Rothman&Salovey,1997)や購買行動 (Ganzach&Karsahi,1995)を対象 とす るごとが 多かった。そこで本論では、保育中の言葉がけに適用 して も有益 な示唆が得 られると考 え、 保育 における目標 フレー ミング方略の予備調査結果 を報告す る。 アンケー ト調査 では、子 どもに村する説得的な言葉がけにおいて、ネガテ ィブフレーム とポジテ ィブフレームの ど ちらを使 うか尋ねた。 また、その選択 は制御適合に則 っているのか調べ るため、予防焦点 メッセージ (例 えば、 「虫歯 になる」)と促進焦点 メッセージ (例 えば、 「元気 になる」)に ついて検討 した。つ ま り、子 どもに対 して制御適合 に則 った言葉がけをす るのであれば、 予防焦点メッセージの ときにはネガティブフレーム (警戒方略) を使い (例 えば、 「歯磨 きしない と、虫歯 になるよ

)

、促進焦点 メッセージではポジテ ィブフレーム (熱望方略) を使 う (例 えば、 「お昼寝 を した ら、元気 になれるよ」)ことが予想 される。

方法

目標 フレー ミングに関する調査項 目の選定 目標 フレー ミングの調査項 目の作成 にあたって、保育 ・幼児教育 を専門 とする新潟中央 短期大学教員栗原 ひとみ氏の協力 を得た。内容的妥当性、項 目類似性、表現のわか りやす さを念頭 に吟味 した結果、最終的に7項 目を利用す ることとした。 回答者 と実施方法 新潟中央短期大学幼児教育科の

2

年生 (女性

6

2

名) と宮城学院女子大学の心理学専攻学 坐 (女性

6

4名) を対象 に調査 を行 った。 調査 は、新潟中央短期大学学生 には

2

01

0

9

月の 授業内で、宮城学院女子大学学生 には

2

01

0

1

1

月の授業内で実施 した。 調査内容 アンケー トは、 (1)予防焦点メッセージ項 目4項 目、 (2)促進焦点 メッセージ項 目

3

項 目か ら構成 された (表

3

参照)。アンケー ト用紙 には、奇数番 目に予防焦点メッセージ 項 目、偶数番 目に促進焦点 メッセージ項 目、 とい うように交互 に提示 した。各項 目の見出 しに条件設定 を提示 し (例 えば、 「お もちゃを失 くす子 どもに

)

、熱望 方略 フレーム (例 えば、 「ちゃんと片付 けた ら、お もちゃ無 くならない よ」)と警戒方略 フレーム (例 えば、 「ちゃん と片付 けない と、お もちゃ失 くしちゃうよ」)の二つの選択肢の うち、 自分 だった らどちらの言い方 をす るか回答 させた。

(14)

結果

本研究の調査対象者は、保育士 ・幼稚園教諭養成校の学生 と心理学専攻の学生であった。 まず、保育 に関す るメッセー ジ選択が保育学生 と心理学専攻生で異なるか検討す るため、 項 目ごとに二群間の独立性検定 を行 った。その結果、 「ご飯 を残す子 どもに」項 目におい てのみ二群間の独立性が有意だったので (p

<.

0

5;

Fisherの直接確率法 による)、各群でメ ッセージの選択 に差があるか検討 した ところ、保育学生のみ有意 な差が認め られた (p<.

0

5;

Fisherの直接確率法 による)0「ご飯 を残す子 どもに

項 目以外 の

6

項 目においては、 二群間に独立性が見 出だ されなか ったので (ps

>.

0

5;

Fisherの直接確率法 に よる)、二群 に分けず に合計 した人数でメッセージ選択の差 を検討す ると、

6

項 目すべ てにおいて有意 な差が認 め られた (ps<.05;Fisherの直接確率法 による).したが って、表 3に示す通 り、 促進焦点メッセージではポジテ ィブ優位 なフレー ミング効果で、予防焦点メ ッセージでは ネガテ ィブ優位 なフレー ミング効果が得 られた。つ ま り、子 どもに対す るメ ッセージの選 択 は、制御適合 に則 った方略が好 まれるとい うことである。 考察 予想 した通 り、制御適合 に則 った方略で子 どもへの説得的メ ッセージが選択 されること が確認で きた。本研究の被験者は、 してほ しいこと (促進焦点 メッセージ) にはポジティ ブな表現 (熱望方略)で、 してほ しくないこと (予防焦点メッセージ) にはネガテ ィブな 表現 (警戒方略)で、子 どもに対 してメッセージを送 ることが示 された。 したが って本研 究の結果 は、 目標 フレー ミング研究が保育場面 にも通用 し得 ることを示唆 している。 しか しその一方で、保育学生 と心理学専攻学生 に顕著な違いは見出 されなか った。つ ま りこの 結果は、保育現場 を目指す学生の資質 と、心理学 に関心がある学生の資質は、メ ッセージ 選択 に影響 しない ことを意味 している。 ただ し、保育学生は保育現場の経験が少 ないので、 これか ら保育士 として現場 に就 き、経験年数が増加するにつれ、メ ッセージ選択 に変化が 現 れるか もしれない。最近我 々が得 たデー タは、その予測 を支持 す る もの となっている (佐 々木 ・林,2011)

0

本研究の特筆すべ き点は、従来の フレー ミング研究の従属度数が フレー ミング操作 され た記述 に対す る選択や評価、承諾であるのに対 し、本研究ではフレー ミングを操作する主 体 としての判断を求めたことにある。 これまでのフレー ミング研究 には見 られない切 り口 であ り、 フレー ミング 「効果

ではな く、 フレー ミング 「方略

の研究 になっている。 も ちろん、制御適合 に則 ったフレー ミング方略 (説得的メッセージ)が、必ず しも効果的だ とい う保証はない。そこで今後の研究 として、説得的メッセージを受けた子 どもにメッセ ージの フレー ミングが どの ような効果 を及ぼすか、制御適合 に則 った言葉がけが子 どもに とって本当に効果的か検討す る試みが期待 される。 =16J8I

(15)

-表

3

保育 における目標 フレー ミング 保育学生 心理学専攻学生 度数 (%) 度数 (%) 予 防焦 点メッセー ジ おもちゃを失くす子どもに ちゃんと片付けたら、おもちゃ無くならないよ ちゃんと片付けないと、おもちゃ失くしちゃうよ 歯磨き嫌いな子どもに 歯磨きしたら、虫歯にならないよ 歯磨きしないと、虫歯になるよ -靴のかかとを踏んで転んだ子どもに 靴をちゃんとはいたら、もう転ばないよ 靴をちゃんとはかないと、また転んじゃうよ 手を洗わない子どもに 手を洗ったら、バイ菌がいなくなるよ 手を洗わないと、バイ菌がたくさんついているよ 促 進 焦 点メッセー ジ お昼寝しない子どもに お昼寝をしたら、元気一杯遊べるよ お昼寝をしないと、元気になれないよ ご飯を残す子どもに ご飯を残さず食べたら、大きくなれるよ ご飯を残したら、大きくなれないよ 友だちの輪に入れない子ども8ご 「入れてね」って言ったら、,一緒に遊べるよ 「入れてね」って言わないと、一緒に遊べないよ

21 (

3

3

.

9

)

1

8 (

2

8

.1)

41 (

6

6

.1)

4

6

(

7

1

.

9

)

8 (

1

2

.

9

)

1

0 (

1

5

.

6

)

5

4 (

8

7

.1)

5

4 (

8

4

.

4

)

1

7 (

2

7

.4)

1

0 (

1

5

.

6

)

4

5 (

7

2

.

6

)

5

4 (

8

4

.

4

)

2

0 (

3

2

.3)

2

8 (

4

3

.

7

5

)

4

2 (

6

7

.

7

)

3

6 (

5

6

.

2

5

)

5

3 (

8

5

.

5

)

5

5 (

8

5

.

9

)

9 (

1

4

.

5

)

9 (

1

4

.

1

)

5

2 (

8

3

9

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3

0 (

4

7

6

)

1

0 (

1

6

.1)

3

3 (

5

2

.4)

5

2 (

8

3

.

9

)

6

0 (

9

3

.

7

5

)

1

0 (

1

6

.1)

4 (

6

.

2

5

)

※いずれの項 目も、上の文がポジティブフレーム(熱望方略)で、下の文がネガティブフレーム(警戒方略)

(16)

謝 辞

本研 究 にあた り、宮城学 院女子大学大橋智樹教授 よ りア ンケー ト調査 へ の協 力 を賜 り、 法政大学林洋一郎准教授 か らは原稿-の助言 をいただいた。 ここに記 して深謝す る。

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表 1 フレーミング効果の類型化の基準 ( Levi neta l . ,1 9 9 8 より作成) 類 型 何が操作されるのか 何に影響するのか どのように測定されるのか リ スク選択フレーミング リ スクが異なるオプション リ スク選好 オプションの選択 属性フレーミ ング 対象・ 事象の属性 評価項目の評定値 好ましさの評価 目標フレーミ ング 行動の目標や結果 説得の受容 行動の採用率 の興味 を引いて きた。 フレー ミング効果の研 究は、意思決定 プロセスに直接 的な関心 をも つ認知心理学や行
表 2 リスク選択フレーミング効果の発達研究 著者 年齢 人数 確率表現 アウト カム フレーミ ング効果/選好逆転 Re y na &amp; El h S( 1 9 9 4 ) 幼児 2 8 ルーレット スーパーボール なし 2 年生 4 0 5 年生 4 3 あり/なし Le v h&amp; Ha r t ( 2 0 0 3 ) 5 ‑ 6 歳 3 0 箱の選択 終了まで未開封 あり/なし 6 ‑ 7 歳 7 2 箱の選択 1 0 セント 硬貨 あり/なし S c h l o t t ma nn &
表 3 保育 における目標 フレー ミング 保育学生 心理学専攻学生 度数 ( %) 度数 ( %) 予 防焦 点メッセー ジ おもちゃを失くす子どもに ちゃんと片付けたら、おもちゃ無くならないよ ちゃんと片付けないと、おもちゃ失くしちゃうよ 歯磨き嫌いな子どもに 歯磨きしたら、虫歯にならないよ 歯磨きしないと、虫歯になるよ ‑靴のかかとを踏んで転んだ子どもに 靴をちゃんとはいたら、もう転ばないよ 靴をちゃんとはかないと、また転んじゃうよ 手を洗わない子どもに 手を洗ったら、バイ菌がいなくなるよ 手を洗わな

参照

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