高価格濫用規制の現代的意義-香川大学学術情報リポジトリ

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高価格濫用規制の現代的意義

搾取濫用について

柴  田

潤  子

1.搾取濫用と妨害濫用  ドイツ及びヨーロッパ競争法で重要な意義を持ちつつあり,かつ様々な 形で議論されている市場支配的地位の濫用規制について,ドイツ競争制限 防止,法では,市場支配の定義と同様に制定以来多くの改正を経て19条が 規定レており,同条の1項,が一般規定とレて理解されている。そこでは, 単数又は複数の事・業者による市場支配的地位の濫用が原則的に禁止されて いる。競争制限防止,法19条は,EC条約82条に対応する。  市場支配的地位の濫用規制は,妨害濫用と搾取濫用に一般的に区別され る。妨害濫用が,市場支配事粟者の競争者に着目するのに対して,搾取濫 用は,伝統的に,市場の相手方に着目する規定として整理されている。高 価格濫用は搾取濫用の典型である。近年。とりわけヨーロッパレベルでは 妨害濫用規制に焦点を当てた議論が活発であるが,搾取濫用規制自体につ いても,いわゆる公益事粟における価格行勣との関係で意義が認められる と考えられ,以下,高価格行勣を中心に,搾取濫用に係る最近の議論を検 討し,その意義について考えてみることとする。  妨害濫用と搾取濫用の区別は一義的ではなく,価格濫用行為は,差別禁 止又は妨害濫用禁止に該当することがあり,両者を組み合わせた法適用の 一 25 − 28−2−340(香法2008) 一ごご一

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一 1 1 1 一 - 1 事例が見られる。とりわけ,実際の価格濫用の法適用に際して意昧を持っ ているのは,競争者にとって同時に妨害効果を持つ場合となるレすなわ ち,垂直的統合事業者が,その垂直統合されていない競争者に対して,そ の前段階の商品について設定する価格の問題であり,特にネットワー・クに        m 基礎をおく産業にみられることになる。 ドイツ競争制限防止訟19条4項 2号は,「有効な競争が存在すれば高度の蓋,然性をもって形成されるであ ろう対価又はその他の取引条件と異なる対価又は取引条件を要求する場 合。この場合,特に,有効な競争の存在する比較可能な市場での事業者の 行勣が考慮されるものとする」と定め,高価格を濫用行為とするプカで, 他方,高価格濫用の問題は,従来,19条4,項2号だけでなく,同条同項 4号違反として問題とされる事例が多くなってきている。ここでは,垂直 的統合事業者である電力事業者の託送等についての価格設定が,不当に引 上げられていることが,新規事業者に対する参入妨害として提えられる。  さらに,妨害濫用の典型的ケースにおいて,搾取的視点がみられるのは いわゆる価格スクイーズである。ここでは,市場支配事業者の価格濫用に 直面する買手とレての事業者が存在しOII上市場),そして他の市場(川 下市場)においては,市場支配事業者が当該買手と競争関係に立,ち,そこ で,供給者・需要者関係に基づく川上市場から生じる利益が用いられる場 合である。特に妨害効果が深討であるのは,川下市場における価格が川上 市場における前段階商品の価格以下または僅かに上回るような場合であ り,このような場合は,ニ置に市場支配が認められるケースといえる。す なわち,川下市場における価格形成について,市場支配者がコストカバー        (2) を確保しない場合に濫用が認められる。そして,川下市場においては何ら        (3) 市場支配が存在しない場合には,搾取濫用の問題ということになる。 2.搾取濫用規制について  高価格濫用とされるのは,市場支配的地位を前提にして,競争のもとで 形成される価格より高い価格である。高価格濫用規制がとりわけ重,要・な意

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昧を持つのは,自然独占,さらに独占的事業者の行動余地に対する競争圧 力が弱く,公的な規制による保護が必要力設備(ライン)拘束性のあるエ ネルギー・産業,その他ネットワーク産業ということになるが,事・業者の価 格が政府によって予め規定されている場合には,事・業者の行為余地が存し        (4) ないことから,市場支配的地位の濫用は問題にならないことになる。  また,競争制限防止法19条4項3号は,「客観的に正,当化される場合を 除いて,市場支配事業者自身が同種の購入者からなる比較可能な市場にお いて要求するよりも不利な対価又はその他取引条件を要京する場合」と規 定し,「価格差別」及び「条件差別」を適用対象としている。ここにいう 価格・ヽ条件差別は,搾取濫用及び妨害濫用の両者の側面から捉えられる。 すなわち,一方で,問題となる高価格は,顧客の一部にとっては搾取濫用 を意味し,他方で,他の部分の顧客にとっての低価格は競争者の市場参入 を困難にする(妨害濫用)。搾取濫用に該当するのは,市場支配的事・業者 と市場湘手訪との関係においで,市場支配事・業者が同種の買手4こつき,そ の差異が正。当化されない場合を除いて,比軟市場より不利な価格又は条件 を要京する場合である。  ドイツ法とヨーロッパ法は,高価格規制の適用範囲において殆ど差異は ないが,ヨー・ロッパ法においては,高価格規制に関してはどちらかといえ ば積極的ではないといえる。競争政策上の楷置としての高価格濫用規制の 意義・役割をめぐる議論においては,その意義は明白であるとしつつも, 見解は一様ではない。規制のもとで強制された価格引下げは,短期的には 消費者に利益をもたらしうるが,残っでいる競争及び新規参入者の市場参       (5) 入行動の観点からは,むしろ悪影響を与えるという考え方がある。これに よれば,強制された価格引下げによって,経営資源上溺体である供給者は 市場から容易に排除されることになり,市場参入の意思があっても,参入 者は場合によっては低い利益見込みから参入しないことがあり得る。もっ とも,このような議論はEC,レペルでは存在しない。 - 27 28−2−338(香法2008) 一三〇

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- k ← 1 ← 1 七 支配者の非効率性を尊,重することが競争法上の高価格規制の目的ではな い。ただし,19条4,項3号が問題になった「Flugpleisspaltung」の最高裁   ㈲判決は,事業者に生じるコストを適正に配賦し,かつ合理的リザーブを確 保しても,原価をカバーしない収入のみが達せられる場合には,濫用を否 定する。というのは,市場支配事業者も,継続してそのコストを下回る供 給,ひいては市場から排除することを強要されないとする。ただし,前提 となるのは,適正なコスト配分であり,支配市場で生じる損失は他の供給 者にも同様に妥当する客観的事櫓が示されなければならない。  最近の享例で,以下の様に,電力事業者とその取引相手方の電力取引に       叫おける取引価格が,民法との関係で問題になった事例がある。「Gaspreis」ケ ースでは,ガス利金の引上げが民法315条との関係で検討されている。本 件では,鍛終利用者に天然ガスを供給するYは,2004年。天然ガス購入 におけるコストの上屏を理由として,ガス斜金の値上計IをH新聞におい て告知した。Xは,Yの顧客であり,当該ガス料金引上げが不当であると 主張し,これに換えて,裁判所によって審査された正当な料金が妥当する ことを請求した。  本判決によれば,争点となっている価格引上げについては民法315条が 直接適用されるとして,ガス供給者の一方的判金引上げは,民法315条に       闘基づき裁判による公正な裁量づ茄Imgk£出ko紺y,olle)に従って審査される。 このような鉄判による公正,な裁量は,競争制限防止,法19条4,項2号及び 33条による差し止め請求権を排除するものではないとする。  まず,争点となるのは,ガス価格自体ではなく,2004年・のガス斜金引 上げの公正性であることを確認し,価格引上計の不当性が認定されるとし ても,従来の価格は正当な価格として妥当しうる。そして,購入コストの 上昇を顧客に先渡しすることは原則として公正性に合致するとする。この ため,公正,な裁量において,他のガス供給事・業者のガス価格との比較を基 礎としうるかどうかについては判断していない。そして,具体的な金額計 算に基づき,引上げられたガス判金は実質的に購入コストの上昇に基づく

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ことが認定されている。もっとも,購入コストの引上げを基礎にする価格 引上,げは,他の分野におけるコスト低下により相殺される場合には,不当 であるとされる。本件では,これには当らず,むしろYのコストは全般 的に上昇士ていることが認められている。  さらに,ガス料金の一方的引上,げが不当となりうるのは,引上げ荊の斜 金が既に不当に引上げられている場合である。この前提は,当該料金も民 法315条に基づく公正。な裁量に服することであり,判金が,供給者と料金 顧客との間で合意されている場合には,これを欠くことになる。顧客が, 引上計られた料金を基礎にした供給者の年間計算を異議なく受入れ,料金 引上げについて適切な期間内に315条に基づく不当性に関レて異議を中立 てず,引き続き当該供給者からガスを購入している場合には,ガス供給者 によって一方的に引上げられた斜金は合意された価格であり,当事者間の 合意による既存の当初の価格への民法315条3,項の適用は排除される。た だし,供給事業者が独占的地位,にある場合,又は契約締結強制がある場合 には,公正,な裁量の検封に服するとする判例を引用レつつも,当該判例 は,本件には妥当しないとする。すなわち,本件では,Yは,確かにH 市における範囲で唯一のガス管拘束のあるガス供給者であり,ガス供給市 場において直接的な競争には直面していない。しかし,他の全てのガス供 給事凛者と同様に,ガス供給事業者は,熱エネルギー市場において,灯 泊,電力,石炭および地域暖房・のような,競合する熱エネルギーの供給者 と代替競争にあるとする。  本件では,ガス供給事業者の一方的価格引上げが,どの程度民法315粂 3項にいう公正な裁量に服するかの問題として捉えられている。,民法315 条は,契約一方当事者によって給付が決定される契約において,契約内容 を一方的に規定する法的な力を限界付け,そこでは実質的に,契約両当事 者のみに係る客観的かつ経済的な利益状態の考慮が求められており,市場 支配的地位の濫用を禁止する競争制限防止法とは,基本的には目的を異に するといえる。もっとも,民事・法の基本理念として,不公正な取引から当 - 31 28−2−334(香法2008) - 4 ● 一 1 1 1   1 ノ ゝ

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〃 - ・ 二五 事者を保護すること,すなわち一対一の当事者における公正識引の確保が 理解され,とりわけドイツでは,契約法との強い連続性において競争法が 捉えられている。本判決では,競争法の適用を否定するものではなく,本 件は,競争との観点からも,価格引上げの問題が検射されうる事例であっ たようにも思われるが,民法315条の方が競争制限防止法19条より適用       (12) が容易であるという見解もある。また,本判決では,市場の圓定につい て,ガス供給市場に限定せず,熱エネルギー市場全体を捉えていることも 特徴的である。       叫  また,「Stadwelke(地方公営業者)Uelzen」ケースでは,ガス供給事・業 者の最終利用者への価格が濫用的に引上げられた価格に該当し19条4項 2号違反の有無が争点となった。本件では,ガス供給事業者が競争制限防 止法にいう市場支配的であるか否かは,ガス供給事・業者が熟エネルギー市 場において,競合する熟エネルギー業者と代替的な競争関係にあることを 考慮すぺきであるとして,商品関連市場は,最終利用者市場における天然 ガスの供給に限定されるか,又は一般的な熟エネルギー供給市場が捉えら れるかどうかが問題となった。本件では,熱エネルギーに係る統一的な市 場を出発点とレており,これを前提とした市場支配的地位の存在は明らか ではないとして,濫用行為の存否について検討されていない。  (3)利益限界コンセプト  直接比較可能性が認められない場合に,競争制限防止,法19条4,項2号 に基づき,高価格濫用を基礎付けるためのコスト審査をすることができ る。とりわけ,ネットワーク利用料金に関しては,電カネットワークが原 則とレて自然独占であるため,比較事業者が実質的競争に直面していない という状況が存在し,比較市場のコンセプトの代替として,とりわけ, ヨーロッパ栽判所で展開している利益限界コンセプトが考慮に入れられる ことになる。  利益限堺,コンセプトは,「妥・当なコスト」,「投資資本の妥当な利子」,

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「妥・当なリスク割増」等の認定を前提とすることになるが,市場支配事業 者の事実上。のコストを基礎にする場合,これ自体が,非効率性に基づく場 合でも所与のものとして受入れられてしまうため,コスト審査における具 体的な規範的基準がないとコスト分析を実施することが困難であるとし て,従来,単に特異・まれな手法とレて位置づけられていた。  しかし,近年の電力事業に関するカルテル庁や高裁のケー・スでは,補足 的ではなく,コスト規制が主要・な検討手法とレて支持されている。カルテ ル庁の決定では,基礎となるコストの計算は電力産業上合理的な経営遂行 のためのコストの水準に限定される。  Ⅱ エネルギー産業に係る競争制限防止法の改正  2007年・12月の競争制限防止法の改正では,エネルギー供給及び小売業       闘 の分野で価格濫用の強化が図られている。競争制限防止法131条7項によ り,2012年・末という期限付きで,エネルギーセクター(電力・ガス)に おける濫用規制の実施を容易にする同法29条が導入されているが,立,法 過程において29粂の導入をめぐる議論は一様ではない。 29条は,電力又 は設儒(管)拘束性のあるガス供給者として,単独で又は他の供給事業者 と共同して市場支配的地位を濫用することを禁じており,同条1号は,比 較市場において他の供給事業者又は事業者より不利な価格又は条件を要享 すること,但し,供給事業者が異なる扱いについて正当性を立罷する場合 にはこの限りではないとする。立罷の転換はカルテル庁の手続きにおいて のみ妥当する,と規定する。同条2号は,不当な方法でコストを上回る判 金を要京すること,競争においては計上されないであろうコストは,1文 の意昧での濫用の認定において考慮されないと規定する。  競今制限防止法19条との対比で実質的に新しく導入された点は,29条 1号の立罷貴任の転換庖,比軟市場コンセプトの拡大及び同条2号’の利益限 界コンセプト(コストコント・ロール)の新設である。 33 28−2−332(香法2008) コー四

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一 ● W 1 一 一 一 一 1 1.改正の趣旨  エネルギー分野についての価格濫用規制の本改正。の背景としては,法的 な市場開放から8年,以上経過レても,電力及びガス分野においては十分活 発な競争が行われていないこと,ひいては大幅な価格の下落につながって いないこと,エネルギー市場は,強度に垂直的統合されている高度の集中 度を示し,エネルギー価格は,国民経済的に懸念される水準まで上昇・して おり,これは,一時的なエネルギーコストの展開によって説明し得ないと 捉えられ,買手である産業及び消費者に価格が転嫁・ヽ負拒されているとい う状況が指摘されている。このため,とりわけ,規制を受けない市場に関 して,市場支配的エネルギー供給事業者に対する競争制限防止法の介入の 可能性が改善されるべきであるとされる。  電力産業については,市場構造の変革をもたらすアンバンドリング等の 措置がヨーロッパレベルで展開しつつあるが,これらは,中期的にみて初 めて効力を示すことになる。また,競争システム自体に依拠するのみで は,独立,系生産者又はエネルギー輸入業者によるエネルギー供給の拡大 は,短期的には期待できない。この中で,エネルギー価格は,エネルギー に依存する産業及び中小事業者の競争能力にとって決定的な意昧を持ち, 高いエネルギー・価格は何より直接消費者に負担を課すことになる。このた       叫 め,巡邦政府の理,解によれば,2012年・までの期限付きで過渡的に,すな わち,旧供給独占を競争市場に転換するまで,ないしは効果のある構造的 措置によって持続的な競争維持が可能となるまでの間,規制を受けない発 電,卸売及び配電の分野において,エ。ネルギー・市場の特殊性に合致しかつ 効果的なカルテ?レ法上の濫用規制が,必要かつ正当屁される。カルテル庁 は,29条を用いて,エネルギー・経済法による規制を受けない分野でその 濫用規制を効果的に実施し,短期の間に競争を活発化させ,それをもって       叫 価格低下に貢飲することが可能となろう。

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2.改正の目的  理由書では改正。の目的が以下のように説明されている。まず,競争制限 防止法29条の目的は,一・般条項である同法19条1項,の趣旨をェネルギー 分野に適合させる手段として,ェネルギー価格の濫用的引上げを規制する       ㈲ 競争法的措置の強化である。すなわち,ェネルギー経済法1n条によれ ば,ネットワークの価格規制に関してはェネルギー経済法が侵先する。こ, れによって,競争制限防止法29条は,ェネルギー市場の発電,卸売及び 配電のようないわゆる前後市場についてのみ効力を発揮し,時間的に限定 される規定でもって,当該市場における濫用規制の特殊な問題に対応する ことを目的とし,カルテル庁は,これにより,19条で定める濫用禁止の 実施が容易になるであろう。  29条は,同法19粂及びEC条約82条に基づく法適用によって展開して きた濫用規制のコンセプトを引き継ぐものである。それをもって,従来規 制を受けていない市場における価格規制は,予定されていない。市場支配 事・業者への事後的価格規制は,依然としでカルテル庁の裁量事項である。 濫用手続きを容易にすることは,ェ。ネルギ・-・産業における競争が十分に展       圈 開していない限り,必要であるとされる。  このように,当該改正は,従来の法的立,場を明文化したものと言え,圓 期的な新規性はないが,濫用規制のより効果的な実施が意図されている。 国民経済にとって重要かつ競争上,特別に問題のあるェネルギー・産業におけ る濫用的価格の禁止に対してより迅速に対応することが可能となる。  また,新設された濫用要・件は,いわゆる判金規制に介入するものではな い。すなわち,料金申請手続きにおける判金設定又は料金引上げの事前の コントロールを問題にするのではなく,従来の濫用手続きと同様,カルテ ル庁が,具体的事例においてのみ,濫用的高さに基づき事後的に価格を審 査し禁止,しうる。  加えて,ヨーロッパ委員会も,市場構造の特徴として,強度の垂直統合 及び集中度が高まっていることを認めている。依然として存在するェネル - 35 − 28−2−330(香法2008) 一 1 i 1 − ← 1 一 一 I

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← 1 1 1 1 1 皿 一 1 ギー供給事・業者の市場力は,高価格を維持し,濫用する可能性をもたら        叫 す。ヨーロッパ委員会の2007年・4月の調査では,ドイツの高価格が指摘 され,市場構造を改善することにより,より価格競争がもたらされると指 摘する。 3.カルテル庁と規制官庁による価格規制  エネルギー経済法の第⊃次改正,まで,ネット利用料金(託送聯金)は, 原則とレて当事者の自由な交渉で合意され,正確には,多様な利益団体に よる団体協定において定められた原則に基づいて決定されていた。競争制 限防止。法19及び20粂は,エンドユーザーヘの供給についての総エネル ギー価格と同様にこれに含まれる託送料金も適用対象としていた。        叫  競争制限防止法130条3項,は,エネルギ・一経済法1n条を示して,競争 制限防止法19,20及び29条の適用範囲を定めている。すなわち,エネル ギー経済法1n条によれば,ネットアクセス条件に係る規制は,エネルギ ー経済法の規制権限に基づいてのみ行われ,ネットワー・クアクセスに関し ては,競争制限防止法19,20及び29粂の適用が排除される。さらに,エ ネルギー経済法111粂3項により,カルテル庁は,公表されかつ規制当局 による異議がIない託送利金に対しては,何ら独自の介人余地はないとされ るレすなわち,カルテル庁の濫用規制は,最終利用者への供給に対する電 力又はガス価格を対象とすることになるが,公表された託送判金は,この 場合何ら新たな規制に服することはなく,正,当であることを前提とする。 従って,エネルギー経済法111粂1項,1文に基づき,競争制限防止法 19,20及び29条が適用されるのは,エネルギー経済法又はエネルギー経 済法に基づく法律規則がなんら完結的な規定を有していない場合のみであ る。そして,完結的なエネルギー経済法の規定は,同法111条2項で具体 化されている。すなわち,同法20から28a条,及び当該原則に基づく法 令等が問題となる。総エネルギー価格を構成する託送料金の規制について の法的根拠は,エネルギー経済法20条以下とそれに基づく規則等によっ

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て規定されることになる。同法21条において託送斜金についての一般的 原則が規定され,託送料金は,同法23a条の基準により,高価格を規制 する観点からコストを基礎にした事薗認可制に服する。同様に,競争制限 防止法19及び29条に基づく検討も,高価格の有無を問題にするが,エネ ルギ・一経済法と競争制限防止法は区別される。競争制限防止法上,の濫用規 制は,既に述べたように事業者の価格形成後に実施され,これに対して, 託送判金は,規制官庁の認可手続きの枠組みで事前に設定され,この限り で事業者の行動余地は存在しないことから,競争制限防止,法にいう市場支 配的地位の濫用は問題にならないと考えられている。2つの異なる規制官 庁であるカルテル庁と連邦ネットワ・-ク庁間の判断の統一性を確保するた       叫 めにもこのような規制体系は意昧があるという見解がある。 4.改正の具体的内容  田 比較市場コンセプト(他の事業者との価格比較)  比較事業者は,基準は,供給事業者と比較可能な市場で活動レているェ ネルギー分野に属しない事業者も含む。比軟市場とレては,全体として又 は部分的にネットワー・ク構造によって特徴付けられる市場が考慮に入れら れるであろう。その他,取引の価格形成をめぐって商品市場が中心的役割 を果たしている原材斜市場も,場合によっては比較市場として考慮され  聯 る。また,競争制限防止法19条4項2号の文言と異なり,同法29条にお ける比較基準は,比較事業者によって要求されている事庚上の価格であ り,仮定的な競争価格ではない。  カルテル庁は,依然として,低い比較価格を著しく上回っていることを 立罷しなければならず,したがって,僅かな価格乖離は,考慮されないと される。しかし,既に述べた通り,著しい超過の程度について一義的な説 はなく,具体的事例において市場支配の程度に従い審査されることになろ ,聯 っo 一 37 28−2−328(香法20㈲ i 1 1 1 一 I O

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−● 一1 九  (2)正当事由  29条1文1号によれば,供給事・業者は,比軟事業者による低価格供給 にも拘らず,その乖離を正当化することができる。これは,正,当事・由につ いての実賀的な立亘責任を市場支配事業者に課すものであり,当該立亘負 担に係る規定によって,カルテル庁は,高価格濫用の認定が容易になる。 もっとも,濫用規制の手蓑きにおいては,依然とレて職権探知主義が妥当 し,原則とレてカルテル庁が介入要件・の存在についての立,証を行わなけれ ばならず,供給事業者に有利となる判断上重晏な事奥を自ら審査する義務 がある。  今後,供給事・業者は,自身にとって有利な状況の存在についての立亘を 負うことになる。原則として供給事業者が,カルテル庁が比軟基準として 引き入れた他の供給事業者が十分に比較可能でないこと,ないしは比較事 業者の価格に対して要・求価格が高いこと,ないしは高い価格コスト乖離が 正,当化されることを立証しなければならない。正し当事由として,競争制限 防止法19条4項と2号と同様,例えば自己のコスト状態に基づくことが 考えられる。  29粂1文1号の立罷負担に関する規定は,行政手続だけでなく,むし ろ,民事手続においてより大きな影響を持つ。民事手続きにおいでは,職 権探知主,義は妥当せず,各当事者が自己に有利な事奥を立罷しなければな らない。倶給事業者に対する訴訟の場合,原告の立罷は,供給事業者が市        糾 場支配的地位にあること,供給事業者の価格設定が比較事・業者より高いこ とに限定することができる。その場合,供給事業者は,原告によって比較 基準として引き入れられている他の事業者が十分比較し得ないことなどを 述ぺて,高い判金についての正当事由を立証しなければならないことにな (3)利益限界コンセプト(コストコントロール・29条2文) 29条2文によれば,供給事業者は,不当にそのコスト・を上回る価格を

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要求することが禁止,されている。高い価格とコストの格差も,それを以 て,濫用非難を根拠づける。コストコントロール又は利益限界コンセプト による高価格濫用の認定は,既に現行のドイツ法及びヨーロッパ法に基づ き可能であり,29条2文Jによって,従来の判例が実質的に明文化された ことになる。 5.エネルギー供給事業者による市場支配  29条にいう市場支配的地位要普がどの範囲で充足されるかは,第一 に,商品及び地理的市場圓定に依拠する。商品関巡市場は,いわゆる需要 市場コンセプトによって市場の相手方の視点から検討される。それに基づ いて,需要者の視点から,一定の商品又はサービスが,その特性,,価格, 及び予定されている利用目的に鑑みて,代替可能として捉えられるかどう かが検討される。商品的に関連のある電力市場として,カルテル庁は,最 終利用者市場,流通段階の市場,発電段階の市場を捉えている。垂直的に 編成されるガス産業の供給システムは,実賀的には,再供給者への供給及 び最終買手への供給に区別される。  最終利用者市場において,カルテル庁は,産業用大口顧客と小口顧客の 市場を区別している。電力大口顧客は,中圧及び高圧に接続しでいる利用 サービスで計測される顧,客である。小□顧客は,電力分野において,低圧 に接続していて,利用サービスで計測される顧客ではない。ガス分野で は,いずれにしても,産業と家庭顧客間の異なる買手状況に基づき,商品 上区別して理解されている。電力においては,大規摸顧客と配電者への供 給市場は,地理的観点から達邦全体であり,小□顧客についての市場は。        紳 ネットワーク地域に応じて確定される。カルテル庁は,ガス市場について は地理的観点から当事者のネクトワ・-クの及ぶ地域に応じた地方で確定す る。このような電力及びガスの詳細な市場区分は,一般的に受入れられて きたといえる。  ただ,ガス市場に関レていえば,ネットワー・クに関連した伝統的な地理 一 39 28−2−326(香法2008) −● 一I 八

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= 1 − k 七 的市場圓定は,もはや維持されないであろう。 E。0Nの子会社の参入によ り,ガス顧客の供給をめぐって連邦範囲での競争が始まったとされる。連 邦ネットワーク庁の決定においても,地理的関連市場はネット」ワークに関 連せず,ガス供給が行われる地域市場という観点から圃定することが必要         匈 であるとしでいる。加えて,前述の最高裁・・高裁判例においても,代皆注 の観点からガスを含む熱エネルギ・-・市場が観念されており,地理的・・商品 的観点から市場の圓定はむしろ拡犬される傾向がある。  Ⅲ ヨーロッパ法 1.概要  EC条約82条2文a号は,市場支配事業者が直接間接を問わず不当な価 格を強制することを禁止レでいる。この規定に基づき,原則として,価格 濫用規制の可能性が開かれる。ヨーロッパ裁判所は,EC条約82粂につ       叫 いて搾取濫用の類型を,「United Brands」ケ・-・スにおいで原則として承認 したが,実務上及び概念上の困難さもあって,ヨーロッパレベルでの運用 は消極的である。競争当局による高価格規制の経済的合理性等については 殆ど議論されていないが,委員会は,日常的な高価格それ自体を規制する のではなく,市場支配事業者がぞの地位を維持しようとする行為を検封す るとする。そして,このような行為は,通常,有効な競争を生み出しかつ それに応じた価格水準をもたらすであろう競争者又は新規参入者に向けら   叫 れる。これに応じて,規制手続は,市場支配事業者による差別的濫用行為 における一定の高価格に焦点が当てられることになり,委員会による高価 格濫用行為に対する適用事例は,新興の自由化市場における時析の高価格      図 濫用手続きを除いては,一般的に高価格規制は殆ど実施されていない。従 来,82条に基づき実施されてきた価格濫用規制の運用をみると,82条 は,消費者利益を保護するための一般的な価格規制の措置とレては性格付 けられない。

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2.高価格濫用規制  82条に言う価格が不当であるというのは,価格が商品又はサービスの 価値との関係で不均衡である場合であり,高価格濫用の認定は,「もたら されるサービスの経済的価値に比レて極めて高い」ことを前提とレてお り,この場合の法適用の困難性は,競争法的に妥当かつ受入れうる価格の 認定にある。  United Blands のケースでは,検討の出発点は,市場支配事・業者がノ・-マルかつ有効な競争の下では設定し得ない価格を要京しているかどうかで ある。本件では,委員会は,United BI・andsが共同体加盟国においてバナ ナの価格を大幅に異なって設定しアイルランドとデンマークの間の価格関 係は138%となるほどであった。この価格差は,異なるマーケティング又 は輸送費用によって正,当化されないとした。委員会は,本件では,3加盟 国におけるUnited Brands のバナナの価格が不当に高く,問題となる製品 の販売価格と発生コストとの比較を行い,この比較においては,事奥上の 発生,コストと事奥上の要京価格との間に過剰なアンバランスがないかどう かが検討されるべきとする。それを以て,反対給付の経済的価値,に対して 過度な利益を生じていることを認定している。しかし,委員会は当該決定 において発生コストの詳細な分析をしているわけではなく,裁判所は当該 決定を取消している。判決では,製品の発生,コスト・の認定は,多くの場合 恣意的な間接費用及び一般管理費用の配賦ゆえに,場合によっては極めて 困難であるという認識が示された。しかしながら,バナナのような単純な 製品についてのコスト配分に鑑み灘ば,当該ケースにおける発生,コストの 審査は克服し難い困難が伴わないであろうと述べている。当該判決の一般 的理解は,事・実上の発生コストと事・実上の設定価格との過度なアンバラン スにおいてのみ,市場支配者において,濫用的な高価格を認定しうるとい うことである。          図  「Genel・a1Motors」のケ・-スでは,ベルギーにおいて市場支配的地位にあ る事業者が,外国からベルギー・にオペル自動車,を並行輸入する独立,系販売 41 − 28−2−324(香法2008) 一 1 - ¥ . y . 、 ノ ゝ

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− 1 一 I 五 業者に対して,ペルギー法によっで規定されている一致証明の供与に関係 する管理コスト及び技術的コントロールについて,著しく高い価格を要求 することによって,濫,用的にその地位を利用したとされている。委員会が 重,視したのは,Genela1 Motors が,当該サービスについて,他のケースで は当該価格より大幅に低い価格を要求していたことである。こ。こから,委 員会は,General Motors が問題となったケースで要求した価格は,実際発 生するコストとの関係で「異言に高い関係」にあると判断した。ヨーロッ パ裁判所の判決では,この価格設定が極めて短い期間であったこと,委員 会の手続きの開始前に,関係する顧客に補償されていることから,委員会 の決定を取消したが,裁判所は,供給されるサービスの経済価佃lと比し て,当該価格が著しく高いという委員会の判断を支持している。  委員会の適用事例では,利益限界手法が採用されており,ここでは,価 格が,当該製品の発生コストに対して著しく高いかどうか,及び事賃者の コスト構造分析に基づく事廉者の高い利益率が検肘されている。また,委 員会及び裁判所の事例の殆どは,いわゆる価格分割手怯も同時に用いられ ており,これによれば,同−の製品について異なる地域的買手・市場におい て,一・事業者の要求価格が大きく異なることに基づき,それぞれ濫用的価 格引上げが示されるとする。要するに,価格分割手法は,地理的及び物理 的比較市場コンセプトの基準を組み合わせている。 3.知的財産権と搾取濫用  ヨーロッパ裁判所の判決によれば,知的財産権の設定だけでは支配的地 位を基礎づけない。市場支配的事・業者による知的財産権の行使は,濫用行 為を基礎づける特別な事・情がない限り,原則としてEC82粂違反とはな らない。このことは,EC条約30条に鑑,みて,知的財産権の付与とその 保護範囲が,ヨーロッパレペルでの整合的ないしは統一的な措置が妥・当し ない限り,加盟国内法によって規定されることと関係している。  知的財産権者は,ニ。つの取引市場に関係することができる。すなわち,

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      叫 権利の実施に係る市場と当該権利を実施して生産される製品市場である。 前者の直接的な権利の実施に関する濫用行為は,権利の実施自体が濫用行 為の対象となり,この場合,妨害的濫用行為だけでなく,搾取濫用も考慮 される。すなわち,権利者が自身の役資に関して報酬を不当に高く要求す ることによって,濫用要・件が充足されることがある。計算手怯として,客 観的に価格の高さ(価格の引き上げから生じる総収入)をライセンサーの 権利許諾についてのコストと比較すること,ないしは妥当な価格を仮定的 に比較市場コンセプトに基づき検討することが示されている。それによる と,権利者が他の利用者群に要京している価格,ないしは,他の市場にお いて対応する権利について,どの程度の報酬が支払われているかが検討さ れる。ョー・ロッパ裁判所は,後者の方法を採用レている。要京する価格が, 他の加盟国において比軟される原則に基づいて計算される価格より著しく 高い場合に,82条2項a号にいう不当な価格の強制が認められる。斜金 の計算が,国内の特殊性から生じないコストに配分しうる場合には,計 算・検討の基本原則は比較可能である。濫用行為の非難は,権利者によっ て,権利の実施許諾の際の価格の相違が,客観的かつ重要・な相違によって 正,当化されることを立亘することによって反証される。 4.ドイツの電力会社に対する濫用調査開始  電カエネルギ・-・市場に対するEC 82 条の適用は,従来殆ど行われてこ なかったが,2006年5月半ば,委員会は,EU加盟国6カ国の複数のエネ ルギー事業者についてー斉に調査を行った。その根拠として,取引の制限 と市場支配的地位の濫用禁止規定に反レている(EC条約81条及び82条) 可能性が挙げられた。さらに,同年・12月には,ドイツの電力会社が調査 を受けている。その根拠として,同様に,取引の制限と市場支配的地位の 濫用禁止,違反の可能性が指摘されている。  委員会の調査は,ドイツの卸電力市場及び需給調整電力市場(系統の周 波数を維持するために必要なアンシラリーサービスの市場)に関係する。 43 28−2−322(香法2008) ← 1 四 ● 四

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← 1 1 1 1 ● -一 1  第一に,E,0Nは,ドイツの卸電力市場において,その市場支配的地位 を以下のように濫用している。すなわち,消費者に損,害を与える電力価格 を引上げることを目的とレて,可能な電力を供給しない,すなわち,故意 に,可能かつ経済的に合理,的である一・定のパワーステーションの発電を販 売に提供しないことである。委員会は,さらに,第三者に対して発電への 新しい投貴を妨害することによって,市場支配的地位の濫用を懸念する。  第二。に,E。0Nは送電ネットワークのオペレー・ターとして,そのネット ワークエリアにおけるセカンダリー需給調整電力に係る市場における市場 支配的地位lを以下のように濫用している。すなわち,自身の生産子会社を 優遇し,増加コストを最終消費者に転嫁し,そして,他の加盟国からの発 電事業者がE。0Nの需給調整市場に電力を販売することを妨害している。  E。0Nは,上元の委員会の懸念に関して,卸電力市場における委員会の 懸念に対応するために,委員会の予備審査において,「ヨーロッパ委員会       叫への約束」を公表している。ここでは,多様な技術,燃利・/すなわち,水 力,褐炭,石炭,ガス,原子力から,ドイツにおける生産能力を放棄する ことを提案した。加えて,電力需給調整市場における委員会の懸念に対処 するために,超高圧]380/220 kv)ラインネットワークを構成するそのト ランスミッションシステム及び現在E。0Nによって経営されているシス テムオベレーションを放棄することを提案した。ここでは,E。0Nは,送 電システムネットワークを発電に関心を持たないオペレーター・に売却する ことなどを提案レている。ョーロッパ委員会は,電力分野における反トラ ストケースの解決に向けて,E。0Nによって示された構造的レメディーを       叫)欽迎レており,委員会は,規則2003年,1号9条に基づく決定を行うため に,E,0Nの市場テストを予定する。この手続きのもとで,約束(コミッ トメント)は委員会の決定により法的拘束力を得て,委員会は反トラスト ケースとして追求しないことになる。この市場テストの公表によって,委 員会は,E。0Nによる約束についての利益関係者の意見を求める(官報公 示後1ヶ月以内)。利益関係者がドイツの電力市場における競争を促進す

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るために約束が十分な解決であると考えることを,市場テストが示す場合 には,委員会は,規則2003年・1号9条に基づき約束決定を採用する。同 9条の決定は,違反の有無について結論を下すことなく,委員会による措        ㈲ 置の必要盤が認められないことを意昧する。  Ⅳ 高価格濫用行為の意義  搾取濫用行為の典型例として,高価格濫用を規制の対象とレているドイ ツ・ヨ・-ロッパにおける最近の議論・判例を検討した。もともと濫用規制 自体の適用亭例は多いとはいえず,近年。妨害濫用事例についての議論が 活発となり,徐々に適用事冽が増えてきているのが現状である。その中 で,高価格濫用規制の競争法における位置づけは,理論的及び運用上も一 義的に理解されているわけではなく,適用事例はきわめて少ない。加え て,正式な手続きに至らないことも多いよ乍である。また,アメリカの反 ト・ラスト法や日本の独占禁止,法においても,直接対応する法規定は存在し ておらず,この意昧では特徴的な規制である。他方,日本法にいう優越的 地位の濫用規制とEC 82 条違反となる搾取的濫用規制とを同視する見解    ㈲もある。日本の優越的地位lの濫用は市場支配的地位の前提を要件とレてい ないが,市場支配的地位が存在する場合には,いわゆる相対的な侵越的地 位の存在も認められる。優越的地位の濫用規制においては,市場圓定は必 ずしも必要庖されていないが,市場支配的地位の濫用規制においては市場 圃定が比較的狭く圓定される傾向がある。そこでの市場支配的地位が認定 されれば,選択の可能性が不十分であることを前提として,特に市場に対 する具体的な効果の検討を要せず,一対−の取引当事者間で高価格を受入 れさせることによる,地位の不当利用として搾取濫用が問題になりうるこ とを捉えれば,両者の規制は実質的にはきわめて酷似しているといえる。  さらに,搾取濫用については,近年・の運用例を見てみると,現代的な意 義が見受けられるように思われる。ヨーロッパレベルでは,もとより適用 事例が少ないにしても,従来高価格行為自体ではなく,加盟国間の価格差 一 45 − 28−2−320(香法2008) ← 1 一 ● i 1 ← ●

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一 1 〃 皿 ● 一 ¥ との関係で高価格を問題にしている事・例が中心であった。搾取濫用行為 が,具・体的な取引関係における価格設定を問題にしていることと関係し て,まずは加盟国の競争法による対応が考えられるため,ヨーロッパレペ ルでは問題になりにくい行為であるが,ドイツ法と同様に,いわゆる従来 法的独占を認められてきた規制緩和が進むいわゆる規制産業への適用が視 野に入れられてきている。ここでは,E,0Nのケースにみられるように, 妨害的側面をもつ搾取濫用行為が捉えられているが,その規制の中心は高 価格それ自体に移行しているようにも思われる。市場支配的事業者が存在 する市場構造白体に対する措置が考慮に入れられないため,いわゆる垂直 的統合事業者による価格行動に対する規制が重要になってくる。  ネットワーク産業を中心としたいわゆる公益・規制産業においては,旧 独占者が依然としで単独ないしは他の事粟者と共同して寡占的支配的地位 を有していることが多い。この場合,排除妨害行為を規制することはもと より,同時に,かかる地位にある事・業者の搾取的行為,すなわち高価格行 動を規制することと組み合わせた規制体系が必要であると考える。支配力 を獲得し,その価格設定が濫用とされるケー・スは,例えば知的財産権を使っ て形成された支配力に基づく価格設定を除けば,現時点では実際には考え にくいと思われる。しかしながら,寡占化・・独占化が進む経済社会におい ては,競争過程により達成された価格が独占価格と捉えられ,取引の相手 方に負担を課す場合には,搾取的高価格を規制の対象とする仕組み・理論 を整えておく必要がある。 (1)近年では,ドイツ鉄道が競争者に課す輸送価格,垂直的統合エネルギ・一供給事業  者がその競争者に対して電力ないしはガスの利用について課す価格が議論になって  いる。同様に,ドイツテレコムの競争者に対する卸サービスヘのアクセス(ロ・-・カ  ルル・-プ及び相互接続サービスヘのアクセス)利用価格が問題となり,これは,業  法であるTKG(電気通信事塵法)に基づきネクトエー・ジェンシ・-・による規制を受け

 る。 Hossenf6ldeびT611nel/OstrKaltelhechtspllaxis und Kalte11rechtsplechung 2005/06」(2006  年,)94頁参照。

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(2)「Deutsche Telekom」2003年・5月21日委員会決定,「Deutsche Telekom,/Kommission」  2008年4月10日の第一審裁判所判決において,委員会の決定が支持されている。  当該判決の意義については,国内の規制当局による事・前規制に服する科金に対して  もEC競争法が適用されること,価格スクイ・−ズがEC条約82条にいう独自の濫用  行為とレて裁判所によって初めて認められ,その計算方法は垂直的統合をしている  規制市場の特殊性に合致すること,当該市場における反競争的効果の立証における  必要な一般的認定について徊及されていることである。「EuG : Missblauch einer  malktbehenschenden Stellung durch Kosten- PI・eis-Schere beim OltsnetzzugangJMMR  2008年6月385頁以下参照,。

(3)SchultzrL,angen/Bunte Kommental zum deutschen und eulopaischen Kalte111echtBand 1」  (2006年)442頁

(4)「velbindung von ’Telefbnnetzen」(最高裁判決2004年,2月10日WuW/E DE.-R 1254)  マンネスマンは,EC条約82条に基づき,社内ネノトワ・−ク及び排他的な利用者グ  ループと公的電話網との接続サービスの斜金が濫用的に引上,げられていると主張し  たケ・-スである。本件・については,最高裁は,ドイツテレコムには利金認可中請の  際固有の判断余地があったと判断している。 ㈲ M6schelrlmmenga/Mestmackel/ Wettbewelbsl・echt GWB」(第4販2007年)463貢以下。 ㈲ 構造的要因は,一定の地域の市場において活動するすべての事業者に妥当し,か  つそれぞれ事業者が価格上昇を回避し得ない状況にあることを前提とする。また,  仮定的競争価格の圧倒的部分が割増・・割引によって検討される場合は,濫用に適し  た基礎とはなりえないとしている。比較市場コンセプト,の具体的な適用事例として

 は,「Stadtwelk Mainz」(最高裁判決2005年6月28日WuW/E DE.-R 1513)参照。ま  た,当該判決については,柴田潤子Fドイツ電カエ,ネルギ・一産業における市場支配  的地位,の濫用規制」『新電気事業制度と競争に関する課題,』(2006年)204頁以下参  照。 (7)「TEAG」2004年・2月11日デュッセルドルフ高裁(WuW/DE-R 1239 以下)では,  価格差が10パー‥セント以下の場合に著しい価格引上,げを否定している。 (8)Schultz前掲注(3卜437頁 ㈲ 1999年7月22日判決(WuW/E. DE-R 375 以下)。ルフトハンザのベルリン=フラ  ンクフルト・間とベルリン=ミュンヘン間の航空運賃の価格差別が問題となった。競  争に直面していることから生じる収人損を独占地域での価格形成を通してバランス  化する目的は,価格濫用を基礎付ける。       一 ㈲ 最高裁判決2007年6月13日(WuW/DE-R 2243)      ○ ㈲ 民法315条(一方の当事者による給付の確定)   民法315条3項は,一方当事者によって給付が決定される契約においては,(決定  が公正,な裁量に基づいて行われるときは,行われた決定が公正づBil≒keit)に合致す 47 − 28−2−318(香法2008)

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四 心 ○九  る場合にのみ他力当事者を拘束する」と定める。 叫 競争制限防止法19条違反が認められれば,民法315条違反も同時に認められる可  歯吐は高いが,民法315粂違反が認められても,競争制限防止法19条違反が認,めら  れる可能性jまそれより低いという理解が示されている。R・anz ,ほgen Siickelrum

 velhiiltnisvon§315 BGB zu §§19 GWB, 29 RegE,GWB − Konsequenzen aus den  Entscheidungen des Achten Senats des Bundesgefichtshofes vom 28,3 und 13 6,2007」  ZNER 2007 年,114頁以下。

叫 2008年j月10日ツエレ高裁判決(WuW/DE-R 2249)。当該判決については,Siegfiied  KlauerE,inheitlicheI Angebotsmalkt del xValmevellsollgungJZNER 2007年414員以下参  照。 ㈲ 小売分野については,仕入価格での販売禁止の強化が図られている。日用品中小  小売事業者に負担を課す破壊的な競争を防止するためである。大規摸小売店が高い  集中によって,様々な形で明らかに僅かな集中によって特徴付けられる生,産者に対  する,著しい購買力を所為していることに着目されている。 ㈲ 29条によって,供給事業者の投資準備も何ら影響を受けない。というのは,現在,  計画されている発電所は,2012年・より前に稼診することはない。

㈲ Rittnel/LiickerDie Bekiimphmg von PI・eismissblauchim Beleich deI Enellgieversolgung  und des Lebensmittelhandels- geplante Andelung des GWBJWuW2007年,700頁

(17)ェネルギー経済法111条1項は,同法又は同法に基づいて発布された法令が明白  に完結的な規定である限りで競争削限防止,法19,20及び29条の適用を排すること  を規定している。競争制限防止法とェ,ネルギー経済法の関係については,山部俊文  「ドイツ競争制限禁止,法における市場支配力のコントロ・−ル」ジュリスト1331号113  頁以下を参照。

㈲「Matelialien zu denAndemngen des Gesetzes gegen Wettbewefbsbeschllinkungen  (GBW)JWuW2008年,289頁以下参照。

㈲ http://www.eulopa.ed/cOm 「competition/seetolS/energy/inquiry/eleetl・ieityjinaしpalt4Pdfl 叫 ェネルギー経済法111条において他の規定が適用されない限り,ェネルギー経済

 法の規定は,競争制限防止,法19条,20条,及び29条の適用を妨げるものではない  と定めている。

胆)Lotze汀hom汝「Neues zul Kontl・oUe von Enelgiepreisen : Pleismissblauchsaufsicht und  AnleizlegulielungJWuW2008年・257頁以下。 聯 BT-Dls 16/5847, 11頁 叫 Lotze/Thomale前掲注(2か・261頁 綱 競争制限防止法33条は,差止塵求,損害賠價義務について定めており,同条4項  は,損害賠價請求において,裁判所又は,カルテル庁,ヨーロッパ委員会の確定し  た決定の通り,違反の認定に拘束されることが定められている。これにより,損害

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 賠憤請求における原告は,市場支配の立証に関レて裁判所又はカルテル庁の確定し  た決定を示すことができる。

叫 Rittnel/LUcke前掲注(1(704頁

叫「Strom und Telefon l」最高裁判決2003年11月4日(WuW/DE-R 1206) 効 Lotze汀homale前掲注叫 260頁

叫「United Brands/Commission」ヨーロッパ裁判所判例集1978年・207頁

叫 M6sche1「lmmenga/MestmackeI Wettbewerbsl・echt EG汀ei11」(2007年)539頁 帥 例えば,エンドユーザ・-の外国での携帯電話ネットワークの利用について支払わ  れるローミング価格が濫用的に引上げられているという疑いは数年来存在した。 1999  年に開始された電気通侶セクター調査の目的の一つは,携帯電話に係るローミング  価格が濫用的に引上げられているのではないかという疑いにより,EC条約81条又  は82条違反の有無を明らかにすることであった。この結果,イギリス及びドイツの  ネットワ・−クオペレータ・-・であるボ・-ダフォン,02,T-Mobileに対レて競争法違反

 の調査が開始された。この手続きと並行レてE.RG(Eulopean Regulatoly Group)は,  ロー・ミング価格の調査に着手し,その結論は,エンドユーザ・-・価格は極めて高額で  あり,それについては明白な正当事由が存在しないというものであり,2006年,ロ  ・−ミング規則の策定に着手・されている。 Uhike E Bel・gel- K6がelrRegulielung des  Auslandsl・oaming-MalktesJMMR2007年・294頁以下参照。 胆)ヨ・-・ロッパ裁判所判例集1975年1367頁 図 M6schel前掲往叫・544貝 叫 http://www.opa.eu/laPid/pl・essReleasesAction,do?ldelence=MEMO/08/132&f61mat=HTML  &aged°O&language=EN&guiLanguage=en参照。 叫 2008年2月28日報道。 http://eulopa,eu/lapid/plessReleasesActiondo?lefelence=MEMO  /08/132&format=HTML&aged=1&1anguage=EN&guiLanguage=en参照。 叫 第9条(約束)第1項によれば,委員会は,違反行為を終結し,委員会が予備審  査において当該事業者に対レて表明した懸念に対処するために当該事業者が約束を  提供することを命ずる決定を行おうとする場合には,決定により,約束を当該事業  者に対して拘束力あるものとするこ。とができる。そのような決定は,特定の期間採  択されかつ委員会が行動する理由がもはや存在,しないと結論句けられなければなら  ない。 ㈲ 白石忠志「独禁法講義第3版」(平成17年)52,128貝‥根岸哲「優越的地位の濫  用規制に係る諸論点」日本経済法学会年報第27号・通巻49号(2006年・)26貝参照。 - 49 28−2−316(香法2008) 一〇八

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参照

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