流速標準に関する世界の動向
(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門
流量計測科 気体流量標準研究室
岩井 彩
1-FLOMEKO 2013流速関係報告
2014年3月14日
流量計測クラブ@日本科学未来館
目次
CIPM 相互認証協定 Appendix C (CMCs: 校正・測定能力)
から、流速標準の登録内容紹介
FLOMEKO 2013をベースとした、各国の流速標準や校正設備
の紹介
産総研が進める気体大流速標準の設定
各国流速設備の流速範囲
•気体流速を登録しているNMI(国家計量標準機関)は12機関 •アメリカ、オランダ、リトアニア、ドイツのNMI4機関が大流速域を扱う 3CMC:
アメリカ トルコ スイス オランダ リトアニア 韓国 日本 ドイツ フランス デンマーク 台湾 オーストリア大流速
流速40 m/sまでの中流速域はほとんどの 機関で対応可能 最大流速はアメリカ[NIST]の67 m/s各国流速標準の不確かさ
拡張不確かさは1 %前後 流速が大きいほど拡張不確かさは小さい傾向大流速
1%
0.5%
CMC:
アメリカ トルコ スイス オランダ リトアニア 韓国 日本 ドイツ フランス デンマーク 台湾 オーストリア5
FLOMEKO 2013
16th International Flow Measurement Conference• 流速・流量分野の国際会議 専門家、研究者が200人以上参加 • 2013年9月24-26日 フランス・パリで開催 • セッションは大きく4分野 全体で約100の発表
標準
流速
、液体・気体微小流量、液体流量、 石油系流量、高圧・低圧ガス流量、 天然ガス流量、体積流量計測・測定
LNG計測、燃料用ガス測定、ガス測定、 混相流、液体流量測定その他
不確かさ、品質システム、 流体現象各種流量計
超音波式測定、臨界ノズル、 タービン式・渦式測定流速関係の発表機関
日本_NMIJ 韓国_KRISS 中国_NIM アメリカ_NIST フランス_LNE-CETIAT イタリア_INRIM オーストリア_BEV/E+E<2010> •スペクトル分析器を導入し、測定体積の中心位置を0.1 mmの精度で測定 •設定流速は10 m/sと20 m/s →LDA校正の不確かさは0.4 % しかし、回転円盤軸のふらつきや振動、金属線の形状は流速に依存するため、不確かさが更に付加される可能性
回転円盤によるLDA校正の高度化
7 <2011> •測定体積内を通過する金属線の位置を流速0.2 m/s ~ 20 m/sで測定 →回転円盤の金属線形状に依存しない流速決定が可能に →LDA校正の不確かさは0.4 % →<2010>と同じ不確かさだが、経年変化による測定体積の変化幅が小さくなった <1999 ~ 2009> •回転円盤の金属線に対する測定体積の中心位置は、 LDA信号が消える中間地点と推定 →LDA校正の不確かさは約1 %アメリカ NIST
発表1
collet hole clamping screws light trap wire d Disk Disk Spin Axis chopper photo diode helium-neon laser LDA laser 測定体積 LDAレーザー wire Disk Spin Flomeko 2013講演予稿集より流速範囲:0.2 m/s ~ 75 m/s 一次標準:回転円盤 トランスファ:LDA、ピトー管 設備:ゲッチンゲン型風洞
アメリカ NIST
発表1
NISTのトレーサビリティ体系(予定) 回転円盤 Flomeko 2013講演予稿集より Flomeko 2013講演予稿集よりFlow Flow Flow 9
アメリカ NIST
上面図
側面図
ゲッチンゲン型風洞 全長 43.6 m 幅8.9 m •入れ替え可能な2個の測定胴 直管:0.2 m/s ~ 45 m/s 凹管:0.2 m/s ~ 75 m/s •測定胴での乱流強度はほとんどの流速域で0.07 %凹管
直管
直管 凹管 Flomeko 2013講演予稿集より Yeh and Hall, NIST Special Publication 250-79より三次(参照)標準としてのピトー管校正と不確かさ解析
NISTでは近い将来、ピトー管を三次(参照)標準として使用
<ピトー管の形状> •直径9 mm、L型 <校正条件> •流速5 m/s ~ 75 m/s、低乱流条件 •風洞とLDAで校正 ヨー角とピッチ角は0度 角度の不確かさは1度以内 • ヨー角、ピッチ角のずれによる誤差 は流速の0.02 % <結果> •2 m/s以上の流速域を三次標準として使用可能 •長期安定性に非常に優れている(10日後の再現性あり) •流速5 m/s ~ 75 m/sでの拡張不確かさ(k=2)は0.41 %程度アメリカ NIST
発表2
ピト ー係数 Flomeko 2013講演予稿集よりフランス LNE-CETIAT
流速計の閉塞効果の誤差評価を数値計算で行う取り組み
第1段階として、
風洞実験
による結果との比較で数値計算結果を評価
(Code_saturne(c) 2.0、ナビエ-ストークス方程式)風洞実験で使用した流速計
• ピトー管(ISO 3966に準拠)
• 熱式流速計
• タービン式流速計(直径14 mm)
• タービン式流速計(直径100 mm)
発表
Flomeko 2013講演予稿集よりフランス LNE-CETIAT
Flow ゲッチンゲン型風洞 流速範囲:0.15 m/s ~ 40 m/s トランスファー:LDA 不確かさは約0.5 %10.8 m
3.18 m
Flomeko 2013講演予稿集より13
フランス LNE-CETIAT
風洞実験(LDA)
数値計算
ピトー管
20mm
300mm
20mm
300mm
閉塞効果
• 流速計の前方20mmでは、ピトー管は閉塞効果なし、熱式は効果あり • 数値計算は、定性的に実験結果と良く合っている20mm
20mm
300mm
300mm
熱式
Flomeko 2013講演予稿集よりフランス LNE-CETIAT
風洞実験(LDA)
数値計算
100 mm 14 mm20mm
300mm
20mm
300mm
20mm
300mm
20mm
300mm
• 数値計算結果は実験結果よりも分布は滑らかだが、分布傾向は十分に反映 →風洞実験を数値計算に置き換えられる可能性あり Flomeko 2013講演予稿集よりイタリア INRIM
15回転腕を用いた流速標準の設定
<実験準備>散乱粒子を充満させた後、無風状態になるまで10分間待機
回転腕半径: 3.5 m 流速範囲: 0.1 m/s ~ 5.0 m/s ピトー管やタービン式などの流 速計を回転腕の先端に設置し、 無風空間で回転させる発表1
流速計 回転腕 無風空間 回転軸 散乱粒子の噴霧器 回転軸<実験目的>回転腕の通過前後に発生する空間内の流速をLDAで測定
Flomeko 2013講演予稿集よりイタリア INRIM
<実験目的>回転腕の通過前後に発生する空間内の流速をLDAで測定
回転腕の先端にタービン式流速計(直径100 mm)を設置
空間内の流速(m/s)空間
内
の流速(
m/
s
)
時間(秒)
流速計から
5 m手前
流速計から
1 m手前
流速
計
の流速(
m/
s
)
流速が増すほど、空間内の流速はばらつく 空間内の流速分布は設置する流速計によっても異なる と考えられるため、他の流速計でも実験を予定している 設定流速: 1 m/s Flomeko 2013講演予稿集より17 改良点 • 木製ファンを金属製に →流れの質が向上 • 測定部の構造的な強度を向上 ドア枠を改良 • 流速範囲が拡大 →2 m/s ~ 35 m/s (潜在的には40 m/sまで可能?)
イタリア INRIM
リニューアルしたエッフェル型風洞の性能評価(新旧比較)
発表2
性能評価 • 熱線流速計を使用 • 乱流強度0.6%台(旧型と同等) • 流速12.5 m/sでは、ノズル出口 から30 cm後方で乱流強度が ピーク(1 %以上)を持つため、 そこで渦が発生している可能性 Flomeko 2013講演予稿集よりFlow エッフェル型 流速範囲:0.04 m/s ~ 2 m/s 乱流強度:0.15 % ~ 0.8 % 散乱粒子:DEHS(平均直径1 μm) Flow
オーストリア BEV/E+E
ゲッチンゲン型 流速範囲:0.3 m/s ~ 40 m/s ノズル直径:255 mm 乱流強度:0.15 % ~ 0.5 % 測定流体温度:5℃ ~ 80℃発表
新しい流速標準の確立(0.04 m/s ~ 40 m/s)
• ドイツのNMI(PTB)で校正されたLDA(不確かさ0.2 %)を使用
• LDAの安定度0.015 %未満/年
Flomeko 2013講演予稿集より Flomeko 2013講演予稿集より中国 NIM
19流速標準(0.2 m/s ~ 30 m/s)の新規立ち上げ
大気循環や室内空気のモニタリング調査、航空宇宙などの分野に焦点を当てる 煙突内の流速測定についてはNISTでも研究が進んでおり、NISTに研究者を長期派遣中 LDA Flow エッフェル型風洞 流速範囲:0.2 m/s ~ 30 m/s 一次標準:回転円盤 トランスファ:LDA(0.2 m/s ~ 30 m/s) ピトー管(5 m/s ~ 30 m/s) 熱線流速計(0.2 m/s ~ 5 m/s) ノズル直径:200 mm Fan Test section LDA校正用の回転円盤 エッフェル型風洞 LDA測定による拡張不確かさ(k=2)は0.3 %未満 LDAによる校正方法の効率化が今後の課題発表
ノズル直径 200 mm Flomeko 2013講演予稿集より Flomeko 2013講演予稿集より韓国 KRISS
ピッチ角、ヨー角変動時のS型ピトー係数の評価
工場等の煙突から排出される温室効果ガスの、流量測定精度向上を目指す 設定流速:2 m/s ~ 15 m/s 拡張不確かさ(k=2):0.6 % ~ 1.1 % 乱流強度:0.5 %未満 ピッチ角およびヨー角を2度ずつ、±10度の範囲で変化させた発表
S型 ピトー管 煙突 S型ピトー管 衝突孔 後流孔 温度計 差圧計へ Flow Flow Flomeko 2013 講演予稿集より韓国 KRISS
21 Flow Flow • 標準偏差と不確かさは、レイノルズ数=3,000で0.3 %未満、レイノルズ数=22,000で 1.21 %であった • ヨー角変動による変動傾向は、後流孔での圧力が原因と考えられる測定結果 (左)ピッチ角変動時 (右)ヨー角変動時
傾向無し 傾向有り Flomeko 2013講演予稿集よりドイツ PTB
ゲッチンゲン型風洞 流速範囲:0.5 m/s ~ 65 m/s 流量設備のブロワを併用したエッフェル型であったが、動力源を独立させて改良した 一次標準:回転円盤 トランスファー:LDA ノズル直径:320 mm (FLOMEKOで流速関係の発表は無い) 流量設備併用型現在
流量設備へ
Flow
回転円盤
ドイツ PTB
第1のLDA(流速測定用)
第2のLDA(風洞制御および参照標準)
ノズル直径
320 mm
ドイツ PTB
エッフェル型風洞 流速範囲:0.2 m/s ~ 40 m/s トランスファー:LDA、超音波式など ノズル直径:180 mm このチューブから 散乱粒子を供給 流速分布を平らにするためのフィルター 流速計校正では通常こちらを使用 排出側 モーターノズル直径
180 mm
大流速標準設定の流れ
25 気体中流量標準 正確な体積流量 を供給 量速変換ノズル (60φ) 噴流 流速分布測定 ピトー管&熱線流速計 規格化 面積分 噴流中心部の流速を算出 ピトー管 移転 エッフェル型風洞 (100φ) 供給 産総研つくば中央 産総研つくば北サイト標準設定に使用する設備
気体中流量設備
(高速風洞システム)
エッフェル型風洞(実用標準)
産総研つくば中央
産総研つくば北サイト
高速風洞システム
27 Flow 体積流量 nzl m v Q Q
質量流量 閉ループ式校正設備量速変換ノズル
100A 200A ステッピングモーターによるトラバース機構 上下方向(0.002 mm間隔)、 回転方向(0.00192°)の2自由度 ノズル直径は60 mm、ノズル比は9:1 メッシュは3枚、ハニカムは1枚 ピトー管噴流分布測定
1. 噴流中心部の安定した流速をピトー管で測定
2. 流速分布を熱線流速計で測定
3. 流速分布を測定断面積で面積分し、体積流量に変換
4. 高速風洞システムから供給される体積流量で補正後、中心部の流速を正確
に算出
5. 得られた流速からピトー係数を決定する
29 熱線流速計 ピトー管 Flowエッフェル型風洞
全長:8.4 m
大流速標準設定後、校正は この風洞で実施予定