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ロックイン赤外線発熱解析法を用いた故障解析サービス

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Academic year: 2021

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ロックイン赤外線発熱解析を用いた実装基板の故障解析

Failure Analysis for Mounting Circuit Substrate using Lock-In Thermal Emission

沖エンジニアリング(株)信頼性解析事業部 ○味岡 恒夫、高森 圭、山本 剣、中村 隆治

Tsuneo AJIOKA Kei TAKAMORI Ken YAMAMOTO Takaharu NAKAMURA Lock-In Thermal Emission (LIT) is a new powerful failure analysis tool, because it can find out an electrical failure spot in a mounting circuit substrate easily. In this presentation, the importance of LIT analysis, the failure analysis system using LIT and results of physical analysis are shown.

1.目的 ロックイン赤外線発熱解析(LIT: Lock-in Thermal Emission)は発熱を高感度に検知でき る故障箇所特定法で、内部で発生した熱をモー ルド樹脂やプリント基板を通して検知できる 特徴を持っている[1]。このため、従来困難で あった実装基板でも故障箇所特定が可能とな り、解析時間の大幅な短縮や成功率向上が図れ、 実用的な解析が可能になった[2]。 我々は LIT を用いた実装基板や半導体部品の 解析システムを構築し、効率的な受託解析を実 施しているが[3]、実装基板の場合には物理解 析の方法などいくつかの課題があることがわ かった。 本発表では実際に実施した実装基板の LIT を 用いた解析からわかった用途や解析事例を述 べ、今度の実装基板解析の足がかりとしたい。 2.実装基板の故障解析の問題 図1に従来から行われている代表的な実装 基板の故障解析フローを示す。故障状況から回 路を絞りこみ、外観検査や透過 X 線観察で異常 の有無を確認後に、最も原因に推定される部品 を取りはずし、場合によっては正常な部品に差 し替えて、基板の電気特性を測定する。その結 果、故障が継続している場合には次に怪しい部 品を推定し、同様な解析を進める。実装基板の 故障か解消した場合にはその前に取り外しを 解析依頼 X線CT 物理解析 断 面 / 平 面 部品メーカに 継続 故障 解消 実 実装装基基板板 部部品品 回路絞り込み 透過X線 故障部品推定 部品取り外し 基 基板板 電気特性 部品故障の可能なし 透過X線 図1 従来の実装基板の故障解析フロー 基板電気特性 1)沖エンジニアリング株式会社 信頼性解析事業部 〒179-0084 東京都練馬区氷川台 3-20-16 e-mail:ajioka542@oki.com 【キーワード】ロックイン赤外線発熱解析、故障解析、実装基板、

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した部品の故障と判断して部品の解析に移る。 故障の可能性のある部品がなくなった(少なく なった)場合に基板の故障と判断する。部品の 故障の場合、製造メーカに解析を依頼すること が多い。基板の場合には X 線や X 線 CT で観察 した後、断面や平面からの加工で故障の可能性 のある面や層を出して観察する。 3.LIT を用いた故障解析フロー 図2に LIT を用いた実装基板の故障解析フ ローを示す。LIT を用いた場合には電気特性で 故障モードを確認した後に、LIT で箇所特定を 行う。これで故障箇所が特定できればそこにフ ォーカスした透過 X 線観察ができる。LIT と 透過X 線の結果から、故障部位(部品、基板、 接続)の特定を行う。その後は故障部位ごとの 解析に移る。これ以降の解析フローは従来と同 じであるが、実際には特定箇所情報から、最適 な方法に変更する場合もある。図2には半導体 部品の故障解析も示したが、開封前の非破壊解 析の一つとして LIT が用いられている。実際 には LIT 後にモールド樹脂を薄膜化し、再度 LIT を行い、発熱スポットがチップ内部である ことを確認してから、チップ表面を露呈する方 法を用いている。これにより、故障要素の喪失 を低減することができる[3]。 4.LIT を用いた解析の利点 LIT を用いた実装基板の故障解析では故障箇 所の特定が簡単にできるため、大幅な解析TAT の短縮ができる[2]。後で述べる 7.1 項の事例 ように透過 X 線で異常が見つかる場合には 2 時間程度で異常の存在が確認できる。また、7.2 項の事例のように界面に異物が存在する場合 には加工と観察を繰り返す方法で故障要素を 見つける方法が実施されるが、箇所が特定され ていない場合には観察範囲が広く、見逃してし まう場合が多い。 もう一つの重要なことは故障している部位 が明確になることである。LSI の故障の場合に は製造しているデバイスメーカに解析依頼を することが多いが、半数以上が不再現(正常) になる場合もある。この原因としては LSI の 故障が不安定な場合もあるが、搭載されるシス テムの問題や接続部の故障など LSI 以外の問 題が多く含まれている。このように不安定な故 障が想定される解析では前段階で確実に故障 部位を特定しないと不再現ということで解析 が進まなくなる(故障を再現させるようなこと はしない)。また、不再現が多発すると、デバ イスメーカが不信感を持ち、そのセットメーカ の故障解析の優先度が低くなる要因にもなる。 この解決のためには実装基板の状態で LIT による故障部位の特定を行うことが、肝要であ る。 5.LIT による故障部位の切り分け 図3は実装基板をLIT 解析した例である。こ の場合、LSI の端に発熱しているため、部品の 故障と接続の故障が考えられる。この場合には LSI の故障を想定し、部品を取り外し、その解 析を行ったが、電気特性、透過 X 線、および LIT の結果、正常品と差異がなかった。 実際には LSI 端に発熱ある場合にはチップ の故障ではなく(チップの場合には7.3 項の事 例のようにLSI の内部で発熱する)、LSI 端子 解析依頼 X線CT 物理解析 断 面 / 平 面 部品メーカに 接続部 故障 部品 実 実装装基基板板 部部品品 LIT 透過X線 基 基板板 電気特性 基板 透過X線 図2 LIT を用いた実装基板の解析フロー 電気特性 LIT 透過X線 開封 箇所特定 物理解析

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間のショートや基板のショートが考えられる ため、取り外すべきではなく、透過 X 線やレ イアウト図でショート箇所を推定し、そこを中 心に解析を進めるべきである。 このように故障部位の特定は LIT の発熱状 況を理解すれば可能である。 6.基板の物理解析 LIT により故障箇所の特定ができるようにな り、特定箇所にフォーカスして物理解析を進め ることができるため、成功率が飛躍的に向上す ることが期待できる。プリント基板の物理解析 は異物のような厚みのあるものであれば容易 にわかるが、イオンマイグレーションのような 薄い層になっている場合には3 次元的に故障 部位を特定して平面研磨により物理解析を進 める必要がある。断面からの観察では加工時に 界面が選択的に加工されるため、異常があって もわかりにくい。 また、実際には上記の方法で特定箇所を入念 に見ても異常が観察できないことがあり、基板 の物理解析技術の確立が必要である。 7.実装基板の解析例 7.1 異物による基板のショート 図4に実装基板の異物によるショート不良 の解析の例を示す。LIT により、スルーホール 部で発熱していることがわかった(a)。実装 基板では部品の影になって表面では発熱が確 認できないことがあるために、裏面側からも LIT 解析を行った。その結果、同じスルーホー ルが発熱し、他の箇所からの発熱はなかったた め、ここがショート箇所であることがわかった。 次に特定箇所を透過X 線で解析したが、異常 な陰影がスルーホールを横切ったように存在 していた(b)。この部分を中心に切り出し、 X 線 CT で観察した結果、配線の残渣によりス ルーホール間でショートしていることがわか った。このようにLIT で箇所を特定すること により、短時間(この場合には2 時間程度)で 異常が確認でき、箇所かわかるため、X 線 CT の詳細解析も容易できた。 7.2 界面に存在する異物 図5に別の実装基板の解析事例を示す。まず、 実装基板をLIT で解析した結果、太い配線の 下で発熱しており、中心点がわからなかった (a)。そこで、配線の一部を除去して再度LIT 解析を行った結果、箇所の絞り込みができた (b)。この箇所は(a)の○で囲んだ箇所で (a)発熱箇所 (b)発熱箇所の拡大 (c)対象部品 (d)正常部品 図3 実装基板の LIT 解析 (a)LIT (b)透過X 線 (c)X 線 CT(MPR) (d)X 線 CT(VR) 図4 実装基板のスルーホール異常の解析

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ある。次にこの箇所を透過X 線で観察したが、 異常の観察ができなかった(c)。しかしなが ら、特定箇所が内部にある配線間と一致してお り、平面研磨でこの深さまで削り、観察するこ とにした。このため事前に別の箇所を断面加工 し、表面からこの配線層の深さを求めた。配線 のある近くまで研磨し、その後、精密研磨と光 学顕微鏡(光顕)観察を繰り返した。光学顕微 鏡は樹脂に対する透過性がよく、故障箇所に達 しなくても、金属部の観察ができる。今回の結 果では、はじめに配線が観察され、その後、配 線間に異常の観察できた。さらに研磨を進める (d)のように故障部の観察ができた。この結 果は配線間に銅があり、イオンマイグレーショ ンを示唆している。 このように LIT で箇所が特定できれば配線 のある層界面に異常があっても観察すること が可能である。 7.3 部品の故障 次に実装基板に搭載された部品が異常であ った場合の事例を図6に示す。LIT の結果を (a)に示すが、部品の半分が発熱しており、 部品内部でショートしていることがわかる。透 過X線で観察した結果、異常は観察されなかっ たが、2 つのチップがあることがわかり、この 一つ(LIT の像では下側のチップ)が故障し、 発熱していることがわかった。この部品を取り 出し、I-V 特性をした結果、ソース-ゲート間 でショートしていた(デバイスはMOSFET)。 そこで、この端子間で LIT を行い、発熱を観 察した結果(b)、取り外し前と同様チップ全 体が発熱していた。そこで、レーザー開封機を 用いてモールド樹脂を薄膜化した再度 LIT を 行った結果、発光スポットを絞ることができた (c)。この箇所はソース電極とゲート電極の 間であり、パッド間のショートとチップ内部の ショートの両方の可能性がある。パッド間の異 常は開封により喪失してしまう可能性がある ため、再度、透過 X 線で観察したが、異常は 認めらなかった。今回は開封し、解析を進める ことにした。開封後、チップ表面のパッド間を SEM 観察した結果(d)、樹枝状結晶(デンド (b)LIT(配線除去後) (a)LIT (c)透過X線 (d)研磨後の光顕 図5 実装基板の界面異物の解析事例 (a)実装基板のLIT (b)部品 LIT(未加工) (c)部品LIT(加工) (e)EPMA 元素分析 図6 実装基板の搭載部品の解析事例 (d)SEM BEI AgKα

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ライト)が認められた。この原因を調査するた めにEPMA 分析を行ったが、樹枝状結晶は Ag の分布と一致していた。このことから、本結果 はダイボンド材であるAg ペーストが吸湿によ り水分に溶け込み、パッド間の電位差でイオン マイグレーションを起こしたと考えられる。 8.実装基板の解析 表1にいままでの実装基板に関する解析結 果をまとめた。その結果、以下のことがわかっ た。 (1)故障モードはほとんどがショートである が、高抵抗不良も含まれている。 (2)LIT 解析で箇所特定できたものに関して は○印をつけた。ショート不良の場合には ほとんどLIT で特定できているが、解析前、 または解析中に故障モードが回復してしま ったものもいくつかある。 (3)故障部位はプリント基板が多いが、部品 の場合や接続不良もあった。 (4)透過 X 線で異常が観察されたものに○ 印を、できなかったものには×印をつけた が、透過X 線で観察されない場合が多い。 透過X 線で観察されなくとも X 線 CT で見 つかるものもある。透過X 線、または X 線 CT で観察されたものは厚みのある異物で ある。 (5)物理解析としては透過 X 線で観察でき たものに関してはX 線 CT で構造がわかる 場合もある。透過X 線や X 線 CT で観察で きた異物は断面解析でも検出できるが、そ れ以外の場合には断面では観察しにくく、 ほとんどの場合、平面解析で行った。ただ し、平面解析で見つからない場合もあった。 表1 実装基板の解析結果一覧 試料 LIT 部位 X 線 物理解析 要素 A ○ 部品 - - サージ? B 回復 - - - 不明 C ○ 基板 - 平面解析 (観察できず) D ○ 基板 × X 線 CT⇒断面解析 異物 E ○ 基板 × 平面解析 アライメント不良 F ○ 基板 × 平面解析 イオンマイグレーション G ○(不安定) 基板 × - - H ○ 部品 × チップ表面 イオンマイグレーション I ○ 接続 × - - J ○ 基板 ○ X 線 CT 配線残渣 K 回復 - - - - L ○ 基板 × 断面解析 (観察できず) M ○ 基板 ○ - 異物 N ○(高抵抗) 基板 ○ - -

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9.まとめ ロックイン発熱解析(LIT)の実装基板への 適用を検討した。重要な点を以下にまとめる。 (1)LIT の用いた実装基板の解析は従来の解 析に比べ、解析 TAT の大幅な短縮、成功率の 向上ができる。 (2)セットメーカがデバイスメーカに解析を 依頼する場合に LIT を用いると故障部品が明 確なため、デバイスメーカも納得して解析を進 めることができる。 (3)LIT 解析はショート故障だけでなく、高 抵抗不良も可能で、故障維持されればほとんど の場合、解析が可能である。 (4)いままでの我々の解析ではプリント基板 の故障が多かった。 (5)LIT 解析によりプリント基板内で故障を 特定した場合、透過X 線解析が効果的である。 ただし、検出できるのは厚みのある異物である。 (6)透過X 線や X 線 CT で観察できない場 合にはある層の界面で異常(異物)が成長して いることが多く、平面解析のほうが検出できる 可能性が高い。平面解析でも観察できないこと もあった。 参考文献 [ 1 ] 長 友 俊 信 、 一 宮 尚 至 、 茂 木 忍 、 R.Schlanen:『ロックイン赤外線サーモグラフ ィー(ELITE)のご紹介』、第 30 回 LSI テス ティングシンポジウム、p.121(2010) [2]西向一也、佐藤幸男、一宮尚至、長友俊信 『車載ニュット非破壊不良解析へのロックイ ンサーモグラフィの応用』、第33 回 LSI テス ティングシンポジウム、p.37(2013) [3] 高森圭、山本剣、味岡恒夫、清宮直樹、 一宮尚至:『ロックイン赤外線発熱解析を用い た故障解析』、第43 回信頼性保全性シンポジ ウム、セッション1-4(2013)

参照

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