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骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 宮坂 宗充

論 文 審 査 担 当 者 主査 和泉 雄一

副査 野田 政樹 篠村 多摩之

論 文 題 目

Low-intensity pulsed ultrasound stimulation enhances

Heat-shock protein 90 and mineralized nodule formation in mouse calvaria-derived osteoblasts (論文内容の要旨) <諸言> LIPUS による骨折の治癒促進効果は、動物や細胞実験により証明されており、臨床的にも理学 療法のひとつとして確立されている。超音波刺激療法は非侵襲的であるため、骨プレートやペー スメーカーを使用している患者にも安全であるとされているが、LIPUS の物理的負荷が生化学的 な事象につながる機序は解明されていない。 HSP は細胞への熱/化学的ストレスで誘起される分子であり、推定分子量で6ファミリー HSP20, HSP40, HSP60, HSP70, HSP90 ,HSP100 に分類される。HSP は高次構造の破壊された タンパクの修復および変性の抑制や細胞の修復に関与している。恒常的に発現が高いものと、 HSP72 のように刺激後に誘発されるものがある。細胞保護は HSP の一般的な機能であり、その 効果は様々な基礎研究および臨床研究において示されている。HSP の誘導により、創傷の縮小化 や、損傷を受けた細胞の修復、疲労の回復が促進すると考えられている。また、HSP は骨代謝に も関与していると考えられており、HSP27 など、低分子の HSP は骨芽細胞の分化とアポトーシ スのバランスに関与すると報告されている。細胞種によって HSP27 の発現レベルは異なるが、 骨芽細胞株 MC3T3 において、様々な生理学的ストレスによって HSP27 の発現が誘導されるこ とが報告されている。一方、HSP70/90 などの高分子 HSP は細胞内でタンパク質のフォールディ ング、オリゴマー化や転座に寄与する分子シャペロンとして働き、骨形成のシグナリングにも関 与している。HSP27 は、熱などの刺激により、Smad のリン酸化に続く、p38 mitogen-activated protein (MAP) kinase の活性化を介して発現が誘導されるが、HSP70/90 は、この種の刺激によ っては発現が誘導されない。HSP70/90 はグルココルチコイド受容体に結合する事でグルココル チコイドのシグナルを阻害することが報告されている。この事から、HSP70/90 は骨折治癒のよ うな骨形成イベントに際して、BMP シグナリングとは異なる経路を介して合成される可能性が 考えられる。 ヒト前骨髄球性白血病性細胞HL-60 などにおいて、10MHz の超音波を 10 分間照射した場合、 超音波と熱の相乗効果によりHSP70/72 を誘導するという報告がなされているが、HSP の骨形成 に関する明確な効果や貢献についてはあまり知られてない。本研究では、新生児マウス頭蓋冠細 胞にLIPUS を照射し HSP27/70/90 の誘導と、その後の骨形成能を検討した。この結果により、

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- 2 - 骨形成におけるLIPUS と HSP の関係性が明らかとなった。さらに、BMP シグナリングが阻害 されたような症例にも効果的な、LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された。 <方法> 10%FBS と、抗生剤を添加した α-MEM 培地を作製し、新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を懸 濁し、3.5cm 培養皿に播種後、培養 72 時間で LIPUS もしくは熱刺激を加えた。また BMP 阻害 薬にNoggin を用い 1.0ng/ml の濃度で添加し培養した。LIPUS 照射は OSTEOTRON D2,(伊藤 超短波,東京)を用い、30mW/cm2 を持続的に 15 分間単回照射し、照射後 24 時間で解析した。 熱刺激は、培養器を使用し42℃で 20 分間熱刺激を加え、FBS 非添加培地を戻し刺激後 24 時間 で解析した。細胞生存率は培養24 時間で PrestoBlueTMCell Viability Reagent を用い定量化し た。ALP 活性の測定は、培養 24 時間後に、ALP Assay kit を用い定量化した。さらに細胞生存 率の解析は培養24 時間後に、LIVE and DEAD Cell Assay kit を用い蛍光染色を行い、蛍光顕微 鏡で撮影および計数を行った。RT-PCR で、培養 24 時間後の HSP や骨形成関連遺伝子の発現を 検討した。Western blotting により培養 24 時間後の HSP や骨形成関連遺伝子タンパク発現を確 認した。結節形成はFBS 添加培地での培養 10 日目で Alizarin Red S を用い染色を行い、CPC を用い定量化した。 <結果> 細胞生存率は熱刺激で増加しLIPUS では増加しなかったが、Noggin 存在下では全群で増加し た。一方ALP 活性は両刺激群で低下した。この結果は、刺激により細胞代謝が、分化より増殖に 傾いた事を示している。Noggin 存在下での ALP 活性の低下は、LIPUS により回復し、熱刺激に よっても僅かな回復がみられた。刺激から24 時間後の RT-PCR において、HSP27 は両刺激群で 減少したが、Noggin 存在下では LIPUS のみ低値を示した。対照的に HSP90 は両刺激で増加し、 Noggin 存在下では LIPUS で著しく増加した。一方、HSP70 には変化がみられなかった。BMP2 は両刺激で増強された。Smad1 は両刺激で増強されたが、Smad5 は、Noggin 存在下では LIPUS にのみ顕著に反応した。面白い事にOSX は LIPUS で下降、熱刺激では上昇し、Noggin 存在下 でもまた同様であった。Western blotting では、mRNA のプロファイルと同様、両刺激で HSP27 の低下を認めたものの、Noggin 存在下では熱刺激において回復がみられた。HSP70 は全ての実 験群でみられ、その発現レベルは安定していた。HSP90 は両刺激群で上昇したが、Noggin 存在 下では熱刺激において減少がみられた。BMP2 は全ての実験群で充分に検出されなかった。一方、 BMP 受容体は Noggin によって減少が確認された。Smad1/5 のリン酸化は両刺激で認められた が、Smad5 のリン酸化は Noggin によって減少した。また、Alizarin 染色では、対照群と比較し て両実験群で強い石灰化が見られたが、なかでも LIPUS 群が最も強い石灰化を示した。結節形 成は細胞播種と同時に骨芽細胞にLIPUS や熱刺激を加えた場合増強された。

<考察>

LIPUS は東らによって動物実験での効果が報告され、臨床では骨折治癒を促進するのに使用さ れている。本研究ではLIPUS による HSP の発現と骨芽細胞活性化との関連、そして LIPUS が

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BMP canonical 経路と独立して骨形成シグナリングを活性化できるかに焦点を当てた。結果よ り、LIPUS が 10 日後に石灰化を増強して骨形成を開始する機序として、non-canonical 経路で の HSP 合成を介しているのではないかという考察が得られた。30mW/cm2 よりも強い 45・ 60mW/cm2 での予備実験をおこなったが、より大きな照射が培養細胞の分化や増殖を引き起こす ことはなかった。本研究では同様の細胞実験にもとづいた設定を使用した。熱刺激は骨芽細胞で のHSP27/70/90 の誘導に関わるとされている。また、培養ヒト骨髄細胞において、HSP70 は 39℃ で増加し、MG-63 細胞では 39℃のみならず 33℃でも観察されるとの報告もある。一方、 simvastatin は MC3T3 細胞の p38MAP kinase を活性化することで、HSP70 でも HSP90 でも なくHSP27 を増加させ、骨芽細胞分化を促進するとされている。さらに simvastatin は BMP2 経路において、Smad1 のリン酸化を介して細胞生存率と分化を促進する。組み替え BMP4 を培 地に添加した時、HSP27 転写後に骨芽細胞の石灰化が促進されるのがみられるという報告がみら れた。これらの報告から骨形成において、骨芽細胞でのHSP27 発現と BMP2 生成が密接に関わ っている可能性が考えられる。多くの研究で LIPUS は骨芽細胞の増殖・分化に関与していると いわれ、本研究ではマウス頭蓋細胞に対して LIPUS を使用した。今回、LIPUS と熱刺激は simvastatin の効果とは反対に、24 時間では HSP90 を上げ、HSP27 を下げた。これは、熱刺激 やLIPUS 等の機械的ストレスは、HSP27 ではなく、分子シャペロンとして、危機的状況下で細 胞を守る働きの HSP90 の発現を上げると考えられる。すなわち、機械的ストレスは p38MAP kinase を介した骨形成の canonical 経路とは別の経路を使って、シグナル伝達を行う可能性があ る。 骨への機械的ストレスにより、骨芽細胞は BMP の生成促進など様々に反応する。鈴木らの報 告では、骨芽細胞株ROS において、BMP2 の mRNA の発現が増加したとされている。本研究で はLIPUS が培養 24 時間で BMP2 の発現を最も上昇させた。培養 10 日では、熱刺激群の石灰化 もみられたが、LIPUS 群で最も多い石灰化を認めた。Noggin 存在下では、LIPUS 群の石灰化が 最多であったが、24 時間後の細胞生存率の著しい増加から細胞増殖促進が予想され、石灰化は遅 れたために弱まったものと考察できる。そして培養24 時間後の OSX 遺伝子発現が LIPUS では 減少したことからも、Noggin によるシグナリング阻害と LIPUS が、結果的に細胞分化よりも細 胞増殖を促進し、石灰化を遅らせた可能性が示唆される。また、statin 処理 30 分後の培養細胞 において、autocrine - paracrine による BMP2 受容体への刺激と、BMP2 発現に続く Smad1 の リン酸化が報告されている。本研究ではLIPUS で Smad1/5 遺伝子が著しく増加し、熱刺激では p38MAP-kinase を介した骨芽細胞分化の報告同様、Smad1 の発現のみ上昇した。そして LIPUS によって24 時間後の OSX 遺伝子発現が抑制されたにもかかわらず、LIPUS で最も強い石灰化 沈着がみられたことから、LIPUS で細胞増殖促進と Smad1/5 遺伝子発現が誘導された結果、骨 芽細胞分化が促進したと考えられる。特に Noggin による BMP シグナルの遮断においても、 LIPUS によって Smad1/5 遺伝子発現が著しく増加したことは、BMP canonical 経路以外のシグ ナル経路を示唆するものであった。さらに、Noggin 添加によって早期の Smad5 遺伝子発現の増 加がなく、またALP 活性にも変化がみられなかった熱刺激では、石灰化はほとんど確認できなか った。これらの結果から、転写レベルではあるが、石灰化における Smad5 遺伝子発現の重要性 が示された。

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- 4 - BMP2 リガンドと受容体の量は Noggin に影響を受けないと考えられるが、Noggin 存在下で BMP2 遺伝子の転写は熱刺激により急速に減少し、反対に LIPUS では増加した。しかし、Western blotting では BMP2 タンパクは検出レベルに達しなかった。また、Noggin による BMP シグナ ル経路のブロック下では、LIPUS は熱刺激と同様に Smad1 をリン酸化したが、HSP27 の減少 とHSP90 の増加がみられた。これは、HSP27 が増加する p38MAP キナーゼ関連 canonical 経 路と異なる経路で、リン酸化が活性化された可能性を示唆する。興味深いことに、Noggin によ るBMP シグナルブロック下においても LIPUS によって遺伝子発現が増加した Smad5 に関して は、そのリン酸化の抑制が顕著であった。しかしながら石灰化を誘導することから、LIPUS 特有 のシグナル伝達がある可能性が示唆された。また、今後はLIPUS の OSX 発現パターンを明らか にすることで、LIPUS 特有のシグナル経路が示されるかもしれない。以上の結果から、BMP 受 容体に関連する先天的BMP シグナル欠乏状態の骨芽細胞においても、LIPUS によって石灰化が 誘導される可能性があると考えられる。

本研究では、LIPUS が HSP27 の増加を伴う p38MAP kinase の canonical 経路ではなく non-canonical 経路で石灰化誘導を示す機序が明らかとなってはいないが、LIPUS により引き起 こされたHSP90 の増加と、Smad1/5, BMP2 遺伝子発現の初期の増加および Smad1 リン酸化は、 10 日後にみられる石灰化結節形成を誘導したと考えられる。 <結論> 培養骨芽細胞へのLIPUS によって、HSP90 の発現の上昇と細胞生存率が上昇し、石灰化結節 の形成が有意に増加した。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 4985 号 宮坂 宗充

論文審査担当者 主 査 和泉 雄一

副 査 野田 政樹 篠村 多摩之

論 文 題 目 Low-intensity pulsed ultrasound stimulation enhances

Heat-shock protein 90 and mineralized nodule formation in mouse calvaria-derived osteoblasts (論文審査の要旨) LIPUS は間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化と増殖、そして血管新生を促進し、破骨細胞の 成長に負の効果をもたらす。HSP は細胞に対する熱/化学ストレスにより発現が上昇し、骨芽 細胞の分化とアポトーシスのバランスに関与する。しかし LIPUS の骨芽細胞の分化促進効果 にHSP が関与するかは不明である。 宮坂は、培養72 時間後のマウス骨芽細胞に、LIPUS(3.0MHz、30mW/cm2、15 分間照射) もしくは熱刺激(42℃、20 分間)を加え,同時に BMP シグナルをブロックするための Noggin 添加群と非添加群に分け、24 時間後における細胞増殖および骨芽細胞分化能の解析、HSP お よび骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現の解析、Western blotting により HSP や骨形成関連 遺伝子タンパク発現を解析し比較検討を行った。また播種同時及び培養 72 時間後のマウス骨 芽細胞に対して同刺激を加え、7日後に石灰化結節形成能を比較検討した。本研究で用いたこ れらの実験方法は適切に選択されていたと考えられる。 研究結果として以下の知見を得た。 1. LIPUS 群と熱刺激群は同様に最初に HSP90 を上昇させ、Smad1/5 のリン酸化と 24 時間 後の細胞増殖を認め、さらに、培養10 日目で、LIPUS 群に最も強い石灰化結節の形成が 見られた。 2. BMP2 シグナルが阻害された中で二つの刺激は石灰化結節形成を伴う Smad1 のリン酸化 を維持したことにより、LIPUS は non-canonical なシグナル経路により骨芽細胞分化の治 療法になりうる可能性が示唆された。 本研究は現在の歯科臨床の役割を理解して、生物学的な裏付けを与えるもので、広く臨床応 用されている治療法のmechanism の解析に強く貢献する研究である。 以上より、本研究の着眼点とその成果は評価され、基礎および臨床歯学の発展に寄与するこ とが期待される。したがって、本論文は博士 (歯学) の学位を申請するに値するものと認めら れた。

参照

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