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多職種連携による自閉症児支援アプリの開発

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Academic year: 2021

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(1)多職種連携による自閉症児支援アプリの開発 Design Development of Support Application for Children with Autism Spectrum Disorder by Interprofessional Work 岩藤百香1)    小田桐早苗1) 森戸雅子1)    難波知子1) 三上史哲     武井祐子 1). 1). 宮崎 仁1)    松本正富2) 川崎医療福祉大学. 1). IWADO Momoka 1). ODAGIRI Sanae 1). MORITO Masako 1). NANBA Tomoko 1). MIKAMI Fumiaki. 1). MIYAZAKI Hisashi 1) 2).  京都橘大学. TAKEI Yuko 1) MATSUMOTO Masatomi 2). Kawasaki University of Medical Welfare 1). 1.はじめに. Kyoto Tachibana University 2). ASD 児は、ほとんどが家族とともに地域で暮らしている。ASD. 2014年の夏、自閉症スペクトラム障がい(Autism Spectrum. 児の成長発達に伴い、家族は日常的に児の特性を記録し、年度ご. Disorder:以下 ASD)児の家族をサポートするアプリ開発プロ. とに学校担任や支援者に資料を提出する。資料を基に多職種がそ. ジェクトがスタートした。メンバーは、ASD 児や家族に対し. れぞれに課題を抽出して支援を行っているが、施設間、年度間の. ての実務経験者5名(プロジェクトの代表である看護師の森. 情報共有は行われておらず、断片的な支援方法の模索となってい. 戸、養護教諭の難波、社会福祉士の小田桐、臨床心理士の武井. る。適切な情報を適切なときに共有するだけでなく、膨大になっ. ら)、地域の障がい者支援としての情報処理やシステム管理経. ていく情報量を簡潔にまとめられることを念頭に置いた。. 験者2名(医療情報学の三上、臨床工学の宮崎) 、そしてグラ フィックデザインを専門とする岩藤である。. 森戸は、ASD 児の家族と関わりが深く、支援者から提供を 求められる資料と、家族が本当に伝えたい内容の間には隙間が. 筆者が本プロジェクトに参加することになった経緯について、少. あると考えていた。2006および2010年の調査において、軽. し説明しておきたい。筆者は大学で医療福祉とデザインの知識を. 度発達障害児の医療機関受診に伴う母親の思いが分析されてお. 学んだ後グラフィックデザイナーとして勤務しており、通常業務. り、以下の7カテゴリが抽出されている2-3)。. では医療と関わってこなかった。それが、5年前から医療福祉系.  1)医療者の障害認知の低さ. の大学に勤務することとなり、ASD 児の自立を支援する小田桐と、.  2)受診に伴う環境の見直し. 文字情報が苦手な ASD 児のためのイラストを用いたスケジュール.  3)適切な対応による信頼. 作成や大学教員のための支援ハンドブック作成に関わった 。森戸.  4)社会からの偏見. は、アプリを開発するにあたり、システムの構築を行う情報学、工.  5)障害についての親の悩み. 学の専門家と共に ASD 児の家族が使いやすいメニューやアイコン.  6)子供の言動に対する擁護. といった視覚的なユーザーインターフェイスをデザインできるメン.  7)当事者からの情報. バーを探しており、小田桐らから岩藤の情報を得ていた。このよう. このうち、例えば 1)医療者の障害認知の低さでは、 「感覚過敏. なメンバー間の繋がりから参加が実現したが、初めて話を聞いた. があり、親が駄目だと言っているにも関わらず理解してもらえない. のが研究に必要な補助金申請期間ぎりぎりの段階であり、怒涛の. ことが信じられない。医療者でさえ障がいの特性を理解していない. スタートとなったのも記憶に新しい。また、チーム名として、 「クレ. 人が多い」 、4)社会からの偏見では、 「待合室では他の患者との関. マチス」という名が森戸より提案された。8枚の花弁を持ち、 “美. 係が難しく、子どもの見た目年齢から判断され、酷いことを言われ. しい心”という花言葉を有するこの植物のイメージを共有すること. たりした。社会的な認知が高まると楽になるのではないかと思う。. で、メンバーの心がひとつになる効果があると感じた。. さまざまな子どもが居ることを理解してほしい」などの意見が得ら. 1). 本稿では、調査や開発の詳細は参考文献に託し、チームクレ マチスの歩みを振り返りつつ、筆者がどのような役割をもち、 関わっていったかを紹介したい。. れており、理解されないことに対する家族の苦悩が見てとれる。 中でも、ASD 児は音やにおいなど日常の情報を処理することに 難しさを抱えている場合があり、これを“感覚特性”という。主に、 感覚に対して、異常にあるいは正確に反応する“感覚過敏”と、外. 2.アプリ開発の目的. 14. 部からの刺激に対して感覚が鈍く、情報を感覚に届けることが難し. 本プロジェクトで開発するアプリの目的を一言で説明すると. い“感覚鈍麻”の2つのグループに分けられる。ASD 児の感覚特. したら、「ASD 児の家族が子どもの特性を日々記録し、周囲へ. 性は、個別性が高く日常生活に影響が大きい。また、たとえば“ロ. の伝達が簡単に行えること」と言えるだろう。. ボットの目”など非常にニッチな場所にフォーカスしている場合も. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(2) 多いため、家族であっても理解が難しく、急な状況では児のサポー. りやすく、ストレスフリーに目を通すことのできる量や見た目. トが精いっぱいで周囲の人間に対する情報提供を諦めてしまう家族. にしようとする。結果、内容の精査と監修を同時に行うことが. もいる。感覚特性が原因で生じるパニック等により、ASD 児の問題. できる。また、見た目の良い資料やテストモデルがあることは. 行動が注目されることは多いが、本人の感じる辛さや家族の生活の. 研究への協力や理解を得るために役立つことが実感できた。. しにくさについて、社会的な認知度は低い。本プロジェクトでは、 こうした「感覚特性」についての情報提供に特に着目している4)。. 4.アプリ開発のながれ 2014年9月から12月にかけて、看護と福祉の専門職によ. 3.チーム「クレマチス」の始動. る18歳未満の ASD 児の家族5名の面接調査を行った。次に、. チーム「クレマチス」がまずはじめに取り組んだのは、お互い. 2014年9月から2016年3月にかけて、面接を行った家族の. の専門知識について学びあう勉強会およびメーリングリストによ. うち、研究参加に同意が得られている1名について、誕生から. る情報共有環境の構築であった。所属の違うメンバーが一同に. 現在までの必要なメモや記録類の閲覧および面接調査を行い、. 会することはなかなか難しいが、業務の合間を縫って開催された. メンバー間で以下の3点を共有した。. 集まりでは、各メンバーが一人ずつ自分の専門分野や研究内容に. 4.1. 情報提供する上での ASD 児の家族の思い. ついて発表し、知見を共有した。代表者が最初から最後まで全部 やる、という手法ではなく、互いの得意分野で貢献しあうことが チームの特徴である。勉強会には、メンバーが「これは」と思っ. まず挙げられたキーワードが、情報量の膨大さであった。ASD 児の成長発達に伴い、情報はその都度加筆修正されていく。 学校に資料を提出する際のエピソードとして、 「学年が変わると. 5). た方をお招きすることもあり、音声読み上げアプリ「指電話 」. 提供した情報が共有されておらず、同じ記録用紙に同じ内容を手. の開発者である高橋宜盟氏や、障がい者の地域支援を行う福祉. 書きで何度も記載し提出している現状があり、提出用紙をコピー. 施設スタッフなどから貴重な知見を得ることができた。. していないと大変である」というストレスが寄せられた(図1) 。. この多職種の知識・経験を「ASD 児の家族による感覚特性. 記入の手間についても、「母子手帳、サポートブック、日記. の情報提供」に焦点をあてて議論することで、医療情報や家族. 等に記録すると良いと分かっていても、手書きは難しい」「成. の思いに対する関わり方や立場の違い、解釈や解決方法の発. 長に伴い増えた情報量の中から、必要な情報を選んで、他者に. 想などが大きく違っていることが分かった。筆者個人として. 整理して伝えるのは難しい」 「そもそも、整理する作業時間を. は、はじめのうちは自分の医療知識や経験の不足に気おくれす. 確保できない」などの声が挙げられた。また、「行動に着目し. るところがあったものの、グラフィックデザイナーとしてチー. て記載するため、嫌いなこと、できないこと、失敗したこと、. ムに貢献できる役割をはっきり認識することができた。具体的. 迷惑をかけること、など我が子の問題点ばかりを挙げることと. には、支援を専門とするメンバーは対象者に直接関わりニーズ. なり、ネガティブな思考となる」「なぜ問題行動を起こすのか、. を拾い上げながら適切な情報を収集するインプット作業を行う. といった理由の記載欄はない」「子供の成長に伴い、出来る事. が、専門的な内容を余すところなく正確に伝えようとすると、. は変化していき、マイナスの側面だけでなくプラスの側面も生. 原稿は膨大な量となる。対して、情報伝達を専門とするメン. じるが、記載欄はない」など、現在記載していない情報の大切. バーは情報を受け取る側からの視点で、専門家でなくとも分か. さを訴える声が寄せられた。. 小学校3、4、5年生の進級時に、その都度全く同じ書類を提出. 母親が記した日々の記憶は膨大な量にのぼる. 図1 家族が進級のたびに担任に提出している資料の一部. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 15.

(3) 当事者の視点から語られる体験談は重く、間接的にではある. き、嫌いの2つの項目を記入できるようにしプラスの側面も伝え. がアプリに対する家族のニーズと期待の大きさをあらためて感. たいこと、児が嫌いな項目については、その場の状況に応じて児. じることができた。. への対処法も一緒に伝えたいこと、の2つの要望が寄せられた。. 4.2. 家族の語りやメモ、記録類の内容整理 面接調査後、家族から得られた意見が整理され、家族が制作し. 5.ユーザビリティに配慮したアプリデザインの流れ. た手書きの資料と共にメンバーに公開された。まず筆者が感じたの. 挙げられた要望をふまえ、協議によりアプリ画面に求められる. は家族の児に対する愛情である。児と真摯に向き合い、行動を読. デザインポイントを5つにまとめた。アプリの構造を検討する場. み取り、彼らが安楽に過ごせるよう丁寧にまとめられた資料であり、. では、分厚い文字資料をもとにアプリの画面を想像しながら話し. インタビュー内容であった。にも関わらず、続けて感じたのは「こ. 合うことが難しく、お互いに混乱する場合があった。そこで、そ. れを読んで理解するのは大変そうだ」と面倒に思う気持ちであった。. の都度絵を描きながらイメージを共有していく手法をとったとこ. 資料を提供された支援者とて同じであろうことから、読みづらさに. ろ、共通認識のもと作業を進めるために効果的であった(図2) 。. 感じるストレスをいかに軽減できるかが重要で、自分の専門である. ①家族が、ASD 児の感覚特性やパニックに対する対処方法等. ビジュアルデザインのスキルを活かすべきだと認識できた。. のデータを入力しやすいよう、簡潔な言葉を用いる。. 4.3. 家族が情報提供する際の支援ツールの提案. 詳細な記録を記そう、正しく書こうと求めることは、時間も. ASD 児の持つ感覚特性について、看護師、養護教諭、臨床心理. かかり、家族の感じるプレッシャーも大きくなる。SNS や. 士、社会福祉士による検討が行われ、以下の9項目に分類された。. メッセージツールの普及により、アプリを使う親世代には短. 1:前庭感覚. い言葉で入力する習慣があろうことから、入力がおっくうに. 体のバランスを自動で整える機能。筋肉の緊張の強弱を維. ならないよう、30字以内で簡潔に入力するというルールを. 持したり、体の両側のバランスをとったりする働きもある。. 設け、一言つぶやく感覚での入力を推奨することとした。. 2:視覚. ②他者と共有しやすいよう、画面上には必要最小限の情報量を. ASD 児は物のシルエットや色、形など気になるものに. 表示し、読む際のストレスや時間を軽減する。. フォーカスし、全体を見るのが苦手な場合が多い。. 家族から情報提供を受ける周囲の人間や支援者が、すぐに必要. 3:聴覚 大きな音や、特定の音域、雑多な音が入り混じるとに過敏 な反応をする場合がある。 4:臭覚. な情報に辿りつけるよう、まずは最低限必要な情報に絞って表 示させ、余裕があれば詳細を確認する、という階層構造にした。 ③情報をカテゴリ分けし易いよう、文章と共にアイコンを用いる。 感覚特性の中には、専門用語故にどういったことを指すのか. 食物や素材の匂いに過敏に反応し、嫌悪を抱いたり、気分. 理解しづらい場合がある。そこで、各感覚をアイコン化する. が悪くなったりする。. ことで、入力する情報をカテゴリ分けしやすいようにした. 5:味覚. (図3)。なお、前庭感覚・内臓覚・固有覚・環境はもっと適. 触感や味など、こだわりが強く、無理に食べようとすると. 切で簡単な言葉に置き換えられないか、検討する必要性がメ. 嘔吐につながる場合もある。. ンバーより指摘された。. 6:内臓覚 空腹感、満腹感、口渇感、悪心、尿意、便意、内臓痛など 内臓に由来する感覚。 7:触覚 服の素材などによって着られなかったり、痛みを感じにく かったりする場合がある。 8:固有覚 関節や筋、腱の中にセンサーにあたる感覚受容器から、筋肉 や関節の動きを感じとる感覚。前庭感覚と密接に関係する。 9:環境 部屋の広さや色、明るさなどに過敏に反応する場合がある。. ASD 児はひとりひとりの特性が異なるため、複数の項目にあて はまる場合も多い。家族からは、それぞれの項目については、好. 16. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 図2 画面のイメージを共有するために描かれた図.

(4) ④日々入力した情報を、まとめて印刷する機能を持たせること で、学校や支援者に資料として提出し、関係者が情報共有で きるようにする。 蓄積された情報が膨大となっていく過程において、提供する場 面や相手によって、特に重要なもの、最新の状態など伝えたい 情報をピックアップして、印刷できるシステムとした(図4) 。 ⑤蓄積された情報の検索および振返りができるようにする。. 前庭感覚. 視覚. 聴覚. 臭覚. 味覚. 内蔵覚. 触覚. 固有覚. 環境. データが年単位で蓄積されていくと、何歳時の事例であった か、など過去のログを見つける事が難しくなってくるため、 キーワードを設定することで過去の記録を検索したり、ログ を一覧できるようにした。 上記をふまえ、ASD と情報の専門職が内容を構成した。次 に、デザインと情報工学の専門職が加わり、実際にどのような 画面、階層構造を持ったアプリケーションとすればよいか、家 族の使いやすさ、見やすさを念頭において検討を行った。その 後、筆者による画面のデザインを経て、エンジニアによるシス テム構築が行われた。 画面のデザインは、各作業段階ごとに、メーリングリストお よび会議で情報共有し、各専門職による検討を重ねながらテス トモデルを開発した(図5、6)。. 図3 感覚特性を示すアイコン. 作成したツールを見た家族からは、「私たちの声を聞き、取 り組んでくれたことが嬉しい。 」「画面が可愛い。使ってみた い」などの声が寄せられた。. 図4 家族、学校、支援者による ASD 児の情報共有イメージ. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 17.

(5) ①タイトル画面. ②感覚特性ごとの分類画面. ③感覚特性個別の詳細画面 感覚特性ひとつひとつに対して、文字数を30文字以内とし、 「好 き」「嫌い」を整理する. ④感覚特性個別の詳細画面(補足情報の表示) 必要に応じて、「嫌い」な事例に対する具体的な対処法を表示す ることができる. 図5 テストモデルのための画面デザイン. 図6 感覚特性ごとの分類画面(詳細). 18. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(6) 6.グラフィックデザイナーとして得た経験 様々な職種のメンバーと協働しプロジェクトに関わることで、 デザイナーの色・文字・レイアウトに関する感覚や手法が多くの 場面で求められていることが再認識できた。また、テーマの発掘 から調査、分析、実際のモデルづくり、検証、利用者への発信と 必要な作業は膨大であるため、同一職種が複数集まるのではなく、 多職種がお互いの視点が必ずしも万能ではないことを前提としな がら相互に補完しあうことで、利用者の求めるものを実現するた めの時間は年単位で短縮できうると実感した。本プロジェクトは、 医療福祉の専門職を多数養成する大学にデザイン学科があったこ とでメンバーが集結しやすいという利点があったが、通常は接点 の少ない分野であることは否めない。しかし、デザインが医療福 祉の世界に積極的に関わることが増えれば、子どもたちやその家 族のニーズにきめ細かく対応できるのではないだろうか。. 【参考文献】 1)岩藤百香,松本正富,小田桐早苗,青木陸祐,真鍋克己, 援助者による制作時の汎用性に留意した自閉症女児向けス ケジュールのフォーマット提案,日本デザイン学会デザイ ン学研究,特集号02,21(1):34-40,2014. 2)森戸雅子,松本啓子,アスペルガー症候群の子どもを抱 える母親の思い─幼稚園教諭に提出した1年間の回顧録 の分析,日本看護学会論文集,小児看護37,300-302, 2006. 3)森戸雅子・松本啓子,軽度発達障碍児の医療機関受診に 伴う母親の思いの分析,日本地域看護学会誌12巻2号, 57-63頁,2010. 4)森戸雅子,三上史哲,宮  仁,岩藤百香,小田桐早苗, 難波知子,武井祐子,自閉症スペクトラム障害児の情報提 供支援ツールの構築の提案,IT ヘルスケア第10回記念学 術大会抄録集,第11巻1号,147-150,2016. 5)「指電話」:http://yubidenwa.jp/. 更に、研究成果が様々な場で専門職ごとの視点により発表さ れることで、思いもよらぬ知見を得る、協力者が出現する、な どプロジェクト自体も広がっていく。また、多方面のメンバー が協働した結果、プロジェクトの進め方や研究費の獲得につい て学びを得たり、海外を含む異分野学会への参加等、研究活動 の裾野が広がったのは大きな収穫であった。 情報がますます多様化し、伝達したいというニーズが分野を 問わず存在していくであろう将来、このような協働はますます 重要になってくると考えられる。. 7.おわりに 本稿では、多職種連携によるそれぞれの専門性を活かした ASD 児支援アプリのデザインプロセスを報告した。現在進行中の開発プ ロセスを振り返るのは早すぎるが、短い期間でテストモデルの作成 まで行えたことは、多職種ならではの研究成果であり、ASD 児と家 族、そしてサポートする方々に学ばせていただいた結果である。そ の成果を分かりやすく目に見える形で社会に「見せる」ことが、グ ラフィックデザインの得意分野であることも改めて実感できた。 作成したアプリは、家族によるアプリのテスト使用を経て、 画面の見やすさ、操作のしやすさ、入力文字数の調整、他の情 報との統合、児の成長と共に継続して使用するための整理など、 家族の評価をもとに検討しながら改善していく必要がある。 最終的な目標は、家族から ASD 児が成長した際に本人に手 渡すことができること、受け取った本人が喜んでくれるような 遊び心を追加すること、である。 今後も、パワフルなメンバーに学びながら自分の役割を果た し、ゆくゆくはアプリのリリースに向けて進んでいきたい。 謝辞 本プロジェクトは、平成26年度川崎医療福祉大学医療福祉 研究費の助成を受けて実施されたものです。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 19.

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