The Japanese JournatOfPsychonomic Science 2013
,
Vol 32,
No I,
4D−
4呂調
視 覚探索
に お
け
る
出現頻 度効果
石
橋
和
也
a*・
喜
多
伸
一
b a 東京 大学大 学院総 合文化 研 究 科・
b 神戸大学大 学院人文学研 究科The
target
prevalence
effectin
visual
search
Kazuy
・1
・H・BA・H・ a*and
Shi
・i
・hi
KITAb
aGraduate
S‘加・1 ・
fArts
and Sciences,
The UniversityOf
Tokpto,
b
Graduate S‘hool〔)
fHumanities
、
Kobe UniレersiりノIn visual searches
,
targetprevalence
(the ratio of targeレpresent
to target−
absent trials)affects miss rates.
Weare more likely to miss targets in situations in which targets rarely appear
,
such as during detection of dangerous ma−
terials by airport security or routine medical screeningfbr
breast
and cervical cancer.
This tendency is termed the瓸
prevalence
e伍ect.
”
Here,
we review recent advances in visual search studies pertaining to th正s effect,
First, we de−
scribehow
target prevalence affects error rates,
reaction time (RT),
and criterion and sensitivity in target detection,
Se⊂ond
,
wediscuss
the mechanisms of the prevalence effe ⊂t,
especially response and motor errors,
observers’
con−
servative criterion shi 良s,
a皿d shorteni 皿g ef search termination times (RT fbr target−
absent trials).
Third,
we discusswhether or not expectations regarding target prevalence influence search termination times and miss rates
.
Finally,
based
on previous studies wediscuss
how
to prevent the prevalence effe⊂t in visual search.
Key words :visual search
,
prevalence e伍ect,
screening,
search termination ti血 e,
criterion,
expectationは じ め に
めっ たに出 現 しないもの は よく見 落とす
わ れ わ れ は 日常 的に
,
多くの刺 激の中か ら 目的とする対 象 (標 的 )を 探 す 行為を行っ て い る。 こ の行 為は 「視
覚 探索」 と呼ば れ
,
これ まで に数 多 くの研 究が な さ れ てきた (レ ビュ
ー
として,
Nakayama & Martini,
2011; Wolfe,
1998a)。 乳が ん を早 期 発 見 する ためのマ ン モ グ ラフ ィー
や 子宮 頸が ん の予 防・
早 期 発 見を可 能にす る細 胞 診,
危険 物 発 見のた め の空 港の荷物検査は,
現実場 面に おける視 覚 探 索 課 題の一
例である。 ま た これ らの課題は,
われ わ れの 命を守るた めに重 要な探 索 課 題の一
例で も あ る。 しか し,
長 年の経 験を積ん だ専門家 (放射線科医 や 細 胞 診の 専門 医,
空 港の保 安 検 査員 )が細心の注 意を払っ て こ れ らの 課 題を行っ て い る に もか かわらず, 時と し て標 的 *Corresponding author
.
Department of PsychologV,
Grad−
uate School efHumanities and Sociology
.
The Universityof Tokyo,7
−
3−
l Hongo,
Bunkyo−
ku,
Tokyo 113−
0033,
Japan
.
E−
mail :ishibashi@f氏hneLc.
u−
tokyo.
ac、
jp
(が ん細胞や細 胞の異 形成
,
危 険 物 など)が見 落とされ,
その結 果と して生 命に危 機が及んで し ま う こ と が あ る。 なぜ,
専 門 家が細 心の注 意を払っ てこれ ら の課 題を行っ て い る にもか か わ らず,
時と して標 的が見落とさ れて し ま うのだ ろ うか。 全く異な る探 索 場 而で ある にもか かわ らず,
これらの課 題に は共 通 する特 徴が ある。
そ れ は,
これらの課 題に おい て標 的の出現頻 度が極 端に低い と い う点で あ る (例えば通常のマ ン モ グラ フ ィー
の場 合,
放 射線科医の乳がん の検 出 率は医 用 画 像1Doo枚の う ち6枚 程 度で あり (Sickles, Worverton,
&Dee,
2002),
実 際の乳 がんの出 現 頻 度 もそ の程 度で あ る と思わ れ る)。 めっ た に 出現 し ない危 険 物が見 落と されて しまい,
そ の結 果と して重 大 な 局 面に陥っ て し まっ た一
例と して は,
2001年9月11U に発 生し たア メ リカ同時多発テロが 挙 げら れ る。 ア メ リカ「司時 多 発テロ か ら数 年 後,Jeremy
Weifeらは アメ リカ国 土 安 全 保 障 省・
運輸 保 安庁か らの援助 を 受け
,
“
Rare items often rnissed in visual searches”
とい う論 文を発表 した (Wolfe
,
Horowitz,
&Kenner,
2005)。
実 験 室で行わ れる視覚 探索課 題で は
,
標 的が 課 題中に存 在す る試 行 (標 的 存 在 試 行)と標 的が課題 中に不 在であ石 橋
・
喜 多:視 覚 探 索における出現頻度効果 41 る試 行 (標 的 不 在 試 行 )の割 合は それぞれ 50%で ある こ とが多い (Wolfe,
1998a)。
しか し,
現 実 場 面で の視 覚 探 索で は,
標 的の出 現頻度が極 端に低い場 合が あ る。 そ こ で彼 らは,
標 的の出現 頻 度が視 覚探索に与え る影 響を 検討す る た め に,
標 的の出 現 頻 度を1%,
10%,
50% に 操 作 した視 覚 探 索実験を行っ た。 彼ら は空港の荷 物 検 査 を模 した視 覚 探 索 課 題 (スー
ツケー
ス のX線 画像の中か ら,
危 険 物を探 す課 題 ) を 用い て,
こ の ような課 題を初 めて行う参加 者 (以後,
放 射 線 科 医 や 細 胞 診の専 門 医 空 港の保 安 検 査 員な どで はな く,
与え ら れ た課 題を初め て行う実 験 参 加 者の こ とを 「初 心 者」とする)を対象に して実 験を行っ た。
その結果 標 的の 出 現 頻 度が 50% の場 合は見 落と し率 (標的存在試行 時に,
標 的が ない と 答 える確 率 )が 7% だっ たの に対して,
10%の場 合は 16%,
1%の 場 合は 見落 と し率が 30%に まで 急 増した (以 後,
50%で 標 的が出現 する場 合と比較し て,
低頻 度 時に 見落 と し率が 上 昇 するこ とを,
特に 「出現頻度 効 果」 と呼ぶ)。 彼ら はこ の研究の 中で, 放 射 線 科 医や細 胞 診の専 門 医 空港の保安検査 員だ け で な く,
わ れ わ れ の多くが 「めった に出 現しない もの は よく見 落とす 」 と い う傾 向を持つ こ とを明 らか にした。
本 論 文の目的 医 用 画 像 診 断 や 細 胞 診,
空 港の荷 物検査と い っ た場 面 で の標 的の見落と し は,
重 大な事 故の原 因の一
つ とな り うる。
この よ う な場 面で の見落とし を防止す る に は,
ヒ トが な ぜ標 的を 見落とすの かを理 解し,
その特性に基づ いた防止策を提案するこ と が必 要で ある。
視 覚 探 索の よ うな 視 覚 的注意が関与し た課 題で はt
非 注 意に よる見 落 と しや変 化の見 落とし,
注意の瞬 き な ど さ まざま な要 因 で標 的の見 落と しが生 起 する (レ ビュー
と して , Chun & Marois,
2002;河 原,
2003;横 澤・
大谷,
2003)。 本 論 文 で はその中で も,
低頻度時の見落と し率 上 昇と い う現 象 に注 目 する。
本 論 文の目 的は
,
視 覚 探 索に おける出 現 頻度の影響を 調べ た基 礎 研究を概観し,
そ れ ら を基に出現 頻 度 効 果の 防 止 策を考 察する こ と である。
本 論 文で は,
最 初に,
標 的の出 現 頻 度が視 覚 探 索に与え る影響 につ い て詳し く紹 介す る。 次に,
出現 頻 度 効 果の生 起 原 因に つ い て検証し たい くつ か の先行 研究を解 説す る。
その次に,
出現頻度 効 果が 出現 頻 度に対 する期待だ け で は生 起し ない こ とを 紹介す る.
最 後に,
これらの研究を踏ま え,
出現 頻 度 効 果の防 止 策 を考察する。出
現 頻 度と視 覚 探 索 出現 頻 度 が 視 覚 探 索に与 える影 響 最初に,
標 的の出 現 頻 度が視 覚 探 索に与 える影 響(Wolfe& Van Wert
,
2010)につ い て簡 単に説 明す る。
視 覚 探 索で は,
標 的の出 現 頻 度が低 下 するにつれて,
その 見 落とし率は上 昇 する。 ま た標 的の出 現 頻度は,
標 的の 見落とし率だ け で な く,
標 的 不 在 試 行 時の反応 時間 (以 後,
探索終了時 間と呼ぶ)と実験参加者の判 断基 準 (信 号 検 出理 論に おけ るCの値が用い ら れ るこ とが多い)に 影響を与え る。 標的の出現 頻 度が低い 場 合,
探 索 終 了 時 間は短縮す る。 ま た低 頻 度場 面で は,
実 験 参 加 者の判 断 基 準の位 置は 「標 的が ない」とす る方 向に偏る,
つ まり 「標 的が ない」 と判 断 しや す く なる (以 後,
こ の ような 偏 りを判断基準の保守 化と呼ぶ)。
誤 警 報 率 (標 的 不 在 試 行 時に,
標 的があ ると答え る確率)に も出現頻度の影 響が見ら れ,
低 頻 度の場 合には誤 警 報 率が低 下 する が,
その変 化は見落 とし率と比 較す る と小さい。一
方で,
標 的存 在 試 行 時の反 応 時 間と実験 参加者の感 度 (d
’
が用い ら れ ることが多い )は,
出現 頻度を操作して もほ とんど 変化し ない 。 こ の ように標 的の出 現 頻 度は,
探 索 終 了 時 間や見落と し率なビ,
標 的が ない と判 断 する意 思 決 定に 影 響を与える。 出現頻度効果の頑 健 性 視 覚 探 索にお け る 出現頻度 効果の存在は,
Wolfe et al.
(2005)の以前か ら専 門 家 を対 象に し た研究で 指摘さ れ ていた。
例 え ばEgglin&Feinstein(1996)とKundel (1982)は
,
放 射 線科医 が画 像 診 断を行 う際に,
しば しば出 現頻 度 効果が 生 起す るこ とを報 告 し てい る
。
またEvans,
Tambeuret
,
Evered,
Wilbur,
& Wolfe(2011b )は,
細 胞 診の専 門 医 を 対 象に医用 画 像 を用いた研究を行い
,
そ の結 果として出 現 頻 度 効果 が生 起 し たこ とを報 告して い る。
出現 頻 度 効 果は
,
専 門家だけで は な く初心者を対 象とし た研 究で も頑 健に見 られる
。
初 心 者を対象と し た 研究で は
,
空港の荷物 検査を模し た自然 画 像・
線 画 を用いた課 題 (Fleck&MitrofL 2007;Godwin
, Menneer,
Cave,
&Don−
nelly,
2010a;Godwin,
Cave,
Helman,
Way,
&Donnelly,
2010b ;Ishibashi
,
Kita,
&Wolfe,
2012; Lau & Huang,
2010; Van Wert,
HeroWitz
,
8(Welfe,
2009;Wolfe et al,
,
2005;Wolfe,
HoroWitz,Van Wert
,
Kenner,
Place,
&Kibbi,
2007;Wolfe & Van Wert,
2010) や
,一
般的な自然 画像を用い た課 題 (Levin,
An −
gelone
,
& Beck,
2011) だけで な く,
異な る傾きの線 分を探 す 課 題 (Navalpakkarn
.
Koch,
8【Perona,2009)や,
回転42 基 礎 心 理学研究 第 32 巻 第1号
2010;Rich
,
Kunar,
Van Wert,
Hidalgo−
Sotelo,
Horowitz,
&Wolfe
,
2008)といっ た無意味 図 形 を用い た課 題で も出 現 頻 度 効 果が生 じる こ と が報 告さ れてい る。 以 上の こと か ら出現 頻 度 効 果は, 初 心 者につ いて は課題に依 存せず頑 健に生 起す る現 象 (効果)だと言える。 ま たヒ トだ けでな く他の動 物 を対 象と し た研 究で も出 現頻度効 果に類 似 した現 象が生 起す るこ とが報 告さ れて い る。
Bond &Kanll (2002)は,
訓 練され たア オ カ ケス を対象に,
餌と な る蛾の持つパ ター
ン の頻 度 を操 作し た 視 覚探索実験を行っ た。
その結 果,
アオ カ ケス は出現頻 度が高いパ ター
ン を持つ蛾を好ん で捕食し,
出 現 頻 度が 低い パ ター
ンを持つ 蛾を あ まり捕食しない こ と が分かった。 ま た
,
OlendorC Rodd , Punzalan , HQude、
Hurt,
Rezllick,
&
Hughes
(2006)は グッピー
を対象に し た研究で,
出 現 頻 度が低い休 色を持つ グッ ピー
は,
そうで ない グッ ピー
と比較して外 敵に捕 食 されに くい こ とを報 告し てい る。 こ の ように,
「めっ たに出 現し ない もの は よ く見落とす 」 とい う傾 向は,
ヒ トの視 覚 探 索 場面 だ けで な く動物の捕 食 場 面でも見 られ る。
こ う した知見を踏ま え,
い くつ か の 先 行 研究は,
動 物の 採 餌行動に 関す る最 適 化理 論 (Charnov,
1976) を 援 用 する こ と で,
ヒ トに おけ る出現 頻 度 効 果の説 明を試み てい る (Cain,
Vul,
Clark,
& Mitroff,
2012;Wolfe & Danielson,
2012) 。 ビ ジ ラ ンス課 題 との違い 非 注 意に よる見 落とし や変化の見落と し,
注意の瞬 き な どと ともに,
ビジ ランス (注意を集 中して い る状 態 を 長 期 間に わ たっ て保つ 能 力)の低 下 もまた見 落と し率 上 昇の原 因となる。
Mackworth (1948)は,
標 的検 出課 題 を長 時 間にわたっ て行い,
その結 果,
標的の見 落と し率 が実 験開始 後30 分 以 降に著 し く高 くなっ たこ と を報 告 してい る。 こ の よ うに標 的の見 落と し率は,
長時間の監 視に よ る ビ ジ ラ ン ス の低下に よっ て上 昇 する。 ま た,
Baddeley & Colquhou (1969)は,
信号が低頻度で しか出 現 しない場 合にビジ ランスが低下 し,
その結 果として見 落と し率が高 く な るこ とを報告してい る。
こ の よ う に視 覚探索に おける出 現 頻 度 効 果は, ビ ジ ラン ス の低下に よっ て生 起 する見 落とし率の上昇とよ く似て い る。 しか しWolfe et al.
(2007)は,
視 覚 探 索に お け る出現 頻度効果が,
ビジ ラン ス の 低 下によっ て生 起する見落と し率の上 昇とは,
い くつ か の点で異なる こ とを指 摘して い る。
多 くの ビ ジ ラン ス課題は長 時 間にわたっ て連 続 し て行われ る。
そのた め,
ビジラン ス が徐々 に低下 して し まい,
その結果として標 的の見 落と し率が上 昇 する。 し か し,
出 現頻度効 果 を検 証 し た多くの実験で は,
実 験 参 加 者は こ ま め に休憩を取ること が許さ れ てい る。 現 実 場 面で も,
例えば 空港の保安 検査 員は ビ ジ ラ ン スの低.
.
ドを 防ぐた めに,
20分 程 度ごとにロー
テー
シ ョ ン で休 憩を 取 るこ とが多い。 よっ て,
出 現 頻 度 効 果は長 時 間の監視 に よ るビジ ラン スの低下で は説明で き ない。 ま た,
多 く の ビ ジ ラン ス課 題で は予 期 し ない一
過 性の標 的 を検 出 す る の に対 して,
視 覚 探 索で は一
般 的に実 験 参 加 者が判断 を行う ま で標 的を含む探索課 題は提示さ れ続 ける。 その た め,
視 覚探索に おける標的の見 落としは瞬 間 的 な 注 意 の低 下で は説 明で きない。
これ らの点で ビジ ラン ス課 題 と視 覚 探 索 課 題は課題の性質そ の ものが異なっ て おり,
そ れ らの見 落と しの原 因も ま た異なっ てい ると考 えら れ る。出
現頻度効
果の生 起 原 因視 覚 探索課 題は
.
注 意 や 走 査,
検 出,
意 思 決 定,
運 動・
反 応などさま ざま な知 覚・
認 知過程が 関 与 する課題 で ある。 出 現 頻 度 効 果の防止 策を提案す る に は,
これら の過 程の中でどの過 程のエ ラー
が出現頻 度効果の主た る 原 因である か を検 討 する こ と が重 要で あ る。 これ まで の 研 究は,
出 現 頻 度 効 果が運動・
反 応 過程のエ ラー
と意 思 決 定 過 程のエ ラー
(判 断基 準の保 守 化 ),
走 査 過 程の エ ラー
(探 索 終 了 時 間の短 縮 )に よっ て生 起す る と指 摘し て い る。 運 動・
反 応エラー
Heck &Mitroff(2007)は
,
Wolfe et al.
(2005)の実 験に お け る 出現 頻 度効 果の主 な原 因が, 運 動・
反 応エ ラー
で ある こ とを主 張 した。
彼ら は初 心者を対象に,
標的の出 現頻 度を操作 し た視 覚 探 索 実 験を行っ た。
彼らの実験が Wolfe et al,
(2005)と大 き く異な る点は,
1試行の終了後 に,
実 験 参 加 者に自分の反 応を修正 する機 会を与えた点 で ある。
その結果,
Wolfe et al,
(2005)と同 様に,
反 応を 修 正す ること がで き な かっ た群で は出 現 頻 度 効 果が生 起 し た。・
一
方で,
自分の反 応を修tEす るこ と が可 能で あっ た群で は,
そ うで ない群と比 較し て出 現頻度効 果が大 き く低 減 した (低 頻 度 ブロ ッ ク時の見落と し率が大 幅に低 減 し た)。
こ の こ と か ら彼 らは,
出 現 頻 度 効果の生 起 原 因 を次の よ うに説 明し てい るe 低頻度ブロ ッ クで は,
試 行のほとん どが標 的 不在 試 行となる。
その ため,
実験参 加者は標 的が 「ない」 と反 応 する こ と に慣れ,
その反 応 時闇が極端に短 縮 して しまう。
その結 果,
実験 参 加 者は 標 的 を見つ け てい る に も かか わ らず,
「ない」 とい う反 応 を誤っ て行っ て し まうこ と が多 くなる。 彼らは,
こ の よ う な速す ぎる反 応に伴う運 動エ ラー
の増 加が,
出現 頻石橋
・
喜多:視覚探索に お け る出 現 頻 度 効 果 43 度 効 果の原 因である と し てい る。 探 索 終了時 間の短 縮・
判 断 基 準の保 守 化一
方で,
運 動・
反 応エ ラー
の みが 出現 頻 度 効 果の原 因 で は ない と主張す る 研究 も存 在す る。
Ri⊂h
et al.
(2008) は,
探 索 関 数の傾 き (刺 激1個 あたりの反応 時間の増加 分で あ り,
探 索の難 易 度の 目 安となる (Wolfe,
1998b)) が小 さ く効 率 的 な探索が可能な課題を行っ た場 合に,
出 現 頻 度 効 果が生 起 するか否か を検 証した。 その結果,
効 率 的探 索が可能な課題で も出現 頻 度 効 果が生 起した。
し か し,
課 題中に運動・
反応エ ラー
を生 起さ せ ないた め に 強 制 的に反 応 を遅 延させ たと ころ,
効率的な課 題で は見 落と し率の上 昇は見 られな くなっ た。 しか しながら,
非 効 率的な探索課 題で は,
強 制 的な反 応の遅 延 を設けて も 依 然と して 出 現 頻 度 効 果が生 起し た。
ま たVan Wert et al.
(2009)は,
出 現 頻 度 効 果が運動・
反応エ ラー
に よっ て 生起す る か否か を検 証す る た め に,
Fleck & Mitroff (2007)が用い た課 題と比 較し て さ ら に難しい課題を用 いて実 験を行っ た。
その結 果,
Fleck & Mitroff(2007)の 実験の ように,
自分の反 応が修 正す るこ と が で きる場 合 も出現頻度効果が生起し たこ と を報 告し てい る (同様の 結 果は,
非 効 率 的な課 題を用い たKunar etal.
(2010) も 報 告し てい る)。
以 ヒの結 果は.
比 較 的 簡 単な課 題で の 出現頻度効果の主 原 因は運 動・
反 応エ ラー
で あるが,
困 難な課 題で の出 現頻 度効果 は そ れ 以外の原因に よっ て生 起 するこ とを 示 唆 する もの であっ た。 Rich et al.
(200S)は,
高 頻 度 時と低 頻度 時の視 覚探索 時の眼球運動を測 定し,
そ れら を 比 較 する実 験を行っ た。
その結 果,
低頻 度時に は高 頻度 時と比 較し て,
実 験 参加者は見落とし試 行の多 くで標 的を見る こ とな く探 索 を終了 して い るこ とが分か っ た。 こ の こ と か ら彼 女ら は,
出 現頻度効果の原因の一
つ が探 索 終 了 時 間の短 縮で ある こ とを示 唆 して い る。 また低 頻度時に は,
見落と し 率が上 昇す る と同 時に誤 警 報 率が低 下し,
判断基 準が保 守化 す る とい う実 験 結 果 も報 告さ れ て い る (lshibashi et aL,
2 12;Wblfe&Van Wert,
2010)。
これ らの結 果は,
判 断 基 準の保守化も ま た出現 頻度効 果の原 因であるこ とを示唆す る
。
二重意思 決 定モ デル
い くつか の先 行 研 究は
,
探 索 を終 了 する際の意思決定の規則化を試みてい る (Chun & Wolfe
,
1996;Hong,
2005;Treisman
& Gormican,
1988; レ ビ ュー
と して,
Wolfe,
2012)
。
こ う した先 行 研究を踏ま え,
W 。lfe
& VanWert
(2010)は
,
標 的の出 現 頻 度が視覚 探 索に与え る影 響のm
Figure 1
.
Schematic representation of the A Multiple−
Decision MQdel
”
(Wolfe& Van Wert,
2010).
First,
anobserver makes an internal decision about each select
−
ed item
.
The“
yes
”
response is generated when the se−
lected item is classified as a target
.
If not,
a new itemwill
be
chosen.
The“
no”
response is generated whenthe quitting signal exceeds the threshold
・
モ デル 化を試み
,
その 中で出 現 頻 度 効 果の生起メカニ ズ ム を次の よ う に説明 してい る。
彼らの提案する 二 重意思 決 定モデル (Figure 1)は,
最初に,
課 題 中の一
つ の項 目が選 択さ れ ると仮定し て い る。 その後,
選 択さ れ た項 日が標 的で あ るか否か の意 思 決 定が実 験 参加者の判 断 基 準に基づいて行わ れ る。 もし選 択 した 項 目が標 的で ある と判 断さ れ た場 合は,
「あ る 」 反応が生 成さ れ る。一
方 で,
標 的k
’
ない と判 断さ れ た場 合は探索終了の た めの意 思 決 定 信 号が蓄 積さ れ,
その意思決定信号が探 索 終了閾 値に達す る まで項 目の選 択が繰 り返さ れる。 二重意思決定モデル は, 出現 頻 度 効 果が, 標 的で あ る か否か の判 断 基 準の変化と,
探索終了 閾 値の変 化に よっ て生起す る と説 明し てい る。 標 的の出現 頻 度が低頻度の 場 合は,
標的で ある か否か を判 断 する実 験 参 加 者の判 断 基 準が保 守 化 する。
その結 果,
たとえ 選択し た項目が標 的で あ る場 合 も,
実 験 参 加 者はその項 目が標 的で は ない と判断 し て し ま う。
ま た,
標 的の出 現 頻 度が低頻度の場 合は探 索 終 了 閾値が低下 し,
探 索 終了時 間が極 端に短 縮 する。
その結 果,
実験 参加者は標 的を選 択 する前に探 索44 基 礎 心 理 学研 究 第 32巻 第1号 を終了 す るこ と が 多く な り
,
標的を見 落とし や す くな る。
こ のよ うに二重意思 決 定モ デル は,
判 断 基 準の保 守 化と探 索 終 了 時 間の短 縮が出 現 頻 度効果の原 因で あ るこ とを指 摘し てい る。 出 現 頻 度に対 する期 待の効 果 視 覚 探 索に は,
実 験 参 加 者が意識的に使 用で きる要 因 (例え ば,
標的に対 す る期 待 )と ともに,
実 験 参 加 者が 意 識的に利用 しな くて も探 索に影 響 を与 える自動 的な要 因が ある (レ ビュー
と し て,
熊田,
2003)。 も し,
出 現 頻 度が視 覚 探索に与え る効果が,
自動 的 要 因に よっ ての み生起す るの であれ ば,
出 現 頻 度に対 する期 待を変 化さ せ るだ けで は その効 果を防止で き ない こ と になる。 そこ で この章で は,
低頻度 時の探索終 了 時 間の短 縮 や 見 落と し率の ヒ昇が,
出現頻度に対す る期 待の変 化に よっ て生 じるか否か を検 討 したい くつか の研究を紹介する。 探 索 終了時間 視覚 探 索に影 響を与える自動 的 な 要 因の一
つ と し て は,
ポッ プ ア ウ トのプラ イ ミング (以 ド,
PoP)が挙 げ られ る(Kristjansson,
Wang,
&Nakaアam 覊2002;Maljkovic &Nakaγama
,
1994)。 PoP と は,
ある試 行で定 義さ れ た標 的 の特 徴 が直 前の試 行で定 義さ れ た標 的と同 じ特徴を持っていた場 合に
,
そうで ない場 合と比 較して,
標 的の探索 時 間が短 くな る現 象で ある。標 的に対す る期待が関 与 し た反 応 時 間の短 縮と
,
PoPの ような試 行の繰 り返し に よ る 反応 時間の短縮は
,
全く異な る効 果で あ るが混同 さ れ や すい 〔Kristjansson et al
.
, 2002)。
例 え ば,
標 的が特定の位置に高 頻 度で 出 現 する 場 合,
その位 置で は他の位置と比 較して標 的の検 出 時間 が短 縮す る (Geng & Behrmann,
2002)。
この反応時間の 短 縮は,
標 的 出 現 位 置の頻 度 学 習に よ る期待の効果であ る ように見え る。
しか し,
高 頻度で出 現する場 合 も, 直 近の試 行での繰り返し が な け れば反 応 時 間は短 縮し ない こ とが報告さ れてい る (Kabata &Matsumoto,
2012)。 低 頻 度 状 況で は,
標 的の出現頻度が低 下 する と同 時 に, 標 的不在試行の繰 り返 し数 も増 加 する。
では,
低 頻 度 時の探索 終了 時 間の短 縮は,
出 現 頻 度に対す る期待 (例え ば,
「実 験 中標 的が めっ た に出現し ない」 と い う予 測 )に よっ て生じ るのだ ろ うか。 それ とも,
標 的 不 在 試 行の繰り返し数の増 加に伴っ て,
自動 的に生 じ る短縮な の だろ うか。 Ishibashi et a1.
(2012)は,
局所 的な繰り返 し数 を局 所 的頻 度と し て,
その頻度の効 果が次の試 行の 探 索終了時間に影響を与 え るか否かを 検 討し た。 その結 果,
局 所 的 頻 度は探 索 終 了 時 間に は影 響を与えない,
も し くは非 常に小さ な影 響し か与え な かっ た。 こ の結果を 踏 まえlshibashi et al.
(2012)は,
低頻度 時の探 索終 了 時 間の短 縮は,
標 的 不 在 試 行の局 所 的 繰 り返 し数の増 加の よ う な 自動 的 要 閃だ けでは生 起し ない こ とを示唆して い る。 さらにlshibashi et al.
(2012)は,
標 的の出現頻 度に対 する期 待として確 率 手が か り を実験参 加 者に与え,
その 効 果が探 索 終r
時間に見ら れ るか否か を検 討 した。 実 験 の結 果,
確率手がか りが示 す 標 的の出現 頻 度が低い場 合 に,
探 索 終 ∫時 間は有 意に短 縮し た。 これ らの結果は,
探 索 終 了 時間の短縮は,
自動 的要因より もむ し ろ,
出現 頻度に対する期待の ような意 識 的 要 因が関 与し た現 象で ある ことを 示 唆す る。
見落とし率 こ こまで紹 介 した ように,
先 行 研 究は,
標的の 出現頻 度に対す る期 待は探 索終∫時 間に影 響を与える こ とを報 告して い る。一
方で,
い くつ かの先 行 研 究は,
標 的の出 現頻度に対す る期 待が,
その検 出感 度や見 落と し率に は 影 響 を与 えない こと を報告し ている。Reed
,
Ryan,
McEntee,
EvanofL& Brennan (2011)は,
標 的の出現頻 度に対する期 待と し て言 語 的 確 率 手が か りを 実 験 参 加 者に教 示 し,
その教 示が実 験参加者の標 的検出 感 度に影 響 を与 えるか否か を検 討し た。 彼らは,
放射 線 科医 を対 象に 医 用画 像を用いた実 験を行い, その際に標 的 (病巣 )が50%の頻 度で 出 現 する視 覚 探 索 課 題を2ブ ロ ッ ク行っ た。
実 験で は3つ の実験 参 加者 群を設け,
そ れ ぞ れの群に対してブロ ッ ク ごとに一
部は偽で ある言 語 的な確 率 手が か りを教 示し た (第1群は 30%と50%,
第 2群は 50% と70%,
第3群は 50% と手が か り教示な し)。 その結 果,
言 語 的 確 率 手が か りの教示 は,
実験参 加者の 標 的 検 出感 度に影 響 を与 えない こ とが分か っ た (教示が 実 験 参 加 者の標 的検 出感 度に与 える影 響に関 し て は,
磁 伽 Jogγ誌に おい て興 味 深い 議 論が行わ れてい る (Lar−
son,
2011;Wol琵,
2011))。
Lau&Huang (2010)は
,
初 心 者 を対 象に空 港の荷 物 検 査を模した画 像を用い た実 験を行い,
Reed et al.
(2011) と同様の結 果を得てい る。 さ らに彼ら は,
偽の確 率 手が か りで は な く本 当の確率手が かり を用い て,
確 率 手が か りの効 果 が 見落と し率に見 られ るか否か を検副し た、 彼 ら は標的が 10% と50% で出現す る2 種類の視覚探 索実 験 を行っ た。
彼ら は,
ブロ ッ ク内で標的の出 現 頻 度が一
定 で あ る一
貫条件 と,
ブロ ック内で2つ の確 率 手がか り (10% 手が か りと50%手がか り)が ランダムに提示 さ れ る混 合 条 作を設定し た.
も し,
出現 頻 度 効果が出現頻度石 橋
・
喜 多:視 覚 探 索に お け る出 現 頻 度 効 果 45 に対 する期 待のみで生 じるの で あれ ば,一
貫条件で も混 合 条 件で も出 現 頻 度 効 果が生 起す るこ と が予 測さ れ る。
しか し彼らの実験で は,
一
貫条件で は出現 頻 度 効 果が生 起 した が,
混 合 条 件で は出 現頻度 効果は生起し なか っ た。 こ の ことか ら彼ら は,
「標 的が めっ た に出 現しない」 とい っ た出現頻度に対する期待の み で は,
出現頻 度 効 果 が生 起しない こ とを示 唆して い る。 さ ら にlshibashi et al,
(2012)は,
50% と低 確 率 (6%) (ブロ ッ ク内 全 体で は2 %)の確 率 手が か りの組み合わ せ だ けで なく,
50% と50% (全体で は50%),
50% と高 確 率 (94%) (全 体で は80%)の組み合わ せ を用い て実 験を行っ た。 その結 果,
Lau & Huang (2010)と同 様に,
見 落とし率に確 率 手がか りの効 果は見 られ な か っ た。 ま た,
実験参 加 者が 「50% で標 的が出 現す る 」とい う期 待 を持っ て い て も,
ブロ ッ ク内全体で の出現頻 度が低い場 合は標 的 を見 落とし やすく な るこ とが分かっ た。 この結 果は,
「特 定の状 況で は高 頻 度で標 的が出 現す る」 と い う期待を持っ ていて も, 標 的の出 現 頻 度が そ も そ も低い 場合は,
その期 待とは関係なく見 落と し率が上 昇 して し まう可 能 性 を示 唆 する。 そ の他
の見 落と し の原 因と標的
の出現頻度
と の関
連 医 用 画像 診 断や細 胞 診,
空 港の荷 物 検 査 などと い っ た 現 実 場 面で は,
標 的の出現頻度だ けで な く その他の要 因 も見 落とし率に影響を与え る。 こ こで は,
出現 頻 度 効 果 と関 連す るい くつ か の見 落としの原 因につ い て紹 介す る。
SatisfaCtion of seardh 標 的の見 落と し率 を上 昇さ せ る原 因の一
つ と して は, satisfaction of search (SOS)が挙 げ られ る。 SQS は,
画像診 断場面で最初に報 告さ れ てい た現 象で あ り
,
同じ医 用 画 像 内に 二 つ以上の病巣が あ る場合に,
一
つ を見つけ る と残 りの病 巣を見 落と しやす くなる現象で あ る (Tudden−
ham,
1962)。 画像診 断 場 面で報 告されてい たSOS は,
実 験室場面で も再 現で き る こ とが確 認されて い る。 He⊂k,
Samei,
&Mitroff(2010) は,
複 数の 回転 し たLの中か ら い くつ か の Tを 探 す課 題 を行っ た。 その際に,
Tの種 類 として発見が容 易 な もの と困難 な ものがあっ た。 彼ら は 実 験の結 果,
発 見 するの が 困 難な標 的の出 現 頻 度が低 く,
報 酬 や 時 間 制 限と いっ た外 的プレッ シャー
が あ り, 標 的が複 数 出 現する頻度が低い場合にSOS が生起 しやす くな るこ とを報 告し てい る。
また,SOS
を よ り現 実 的な 状 況で検 討し た研究もある、
医用 画像診断 や 細 胞 診,
空 港の荷 物検査な どで は, 外 的プレッ シャー
にさ ら さ れ た 状 態で標 的の探索を行う こ と が多い。
Cain
, Dunsmoor,
Labar,
& Mitroff(201D は,
こ の よ う な予期 不 安 状 況 下 に おい て,
実 験 参 加 者は2個 目以 降の標 的 を見 落と し や す く なる こ とを報 告してい る。
最 近で は,
ヒ トが同一
画 面か ら複 数の標 的を探索す る際の意思決定を,
最 適 採 餌 理 論 (Charnov
,
1976)か らモデル 化 する研 究 も行わ れて い る。
これ ま で の研 究は,
ヒ トが同一
画 面か ら複 数の標 的を探 索 する際に,
必ずし も最 適で は ない が, 出現 頻 度 に応じて柔 軟に探索戦 略を変化させ ること を報告し てい る (Cain et aL.
,
2012)。
以 上の ように,
これ まで の研究 は,
低頻度 場面でSOS が生 起しや す くなる こ とを報 告 し て お り,
その原 因が探 索戦略の最適化にある可 能 性を指 摘し てい る。
二重 標 的コ ス ト (dual
−
target cost )空 港の荷 物 検 査で は
,
色 や 形が全 く異 なる,
銃 や ナ イ フ,
爆発 物などを 同時に探さ な け ればい け ない。
1試 行 につ き一
つ の標 的が出 現す る探 索課題で, 2種 類以L
の タイプの標 的が試 行ごとに ランダムに出現す る場 合,
1 種類の タ イプの標 的しか出 現しない場 合と比 較して,
そ の探索の成 績は悪化す る。 この現 象は二重 標 的コ ス ト(dual
−
target cost)と呼ば れて い る。 先 行研究で は,
色や傾き, 無意味図 形, 有 意 味 図形 な どが刺 激と して用い ら
れており
,
いずれの研究で も二 重 標 的コ ス トが生 起 するこ と が 確 認さ れて い る (Menneer
,
Barrett,
Phillips,
Don−
nelly
,
&Cave,
2007;Menneer,
Cave,
&Donnell脇2009;Stroud,
Menneer
,
Cave,
Donnelly,
& Rayner,
2011)。
二 重標 的コ ストは出現頻 度効 果に も影 響を与え, 1種 類の標 的を探 索
する場合と比較し て
,
2 種類以上の標 的を探 す 場 合に,
出 現 頻 度 効 果が大き く なる こ とが 報告さ れてい る (God
−
win et al
.
,2010a;Godwin et aL,
2elOb ;Menneer,
Donnelly,
Godwin
,
&Cave,
201 )。 出 現頻度効
果の防
止策
最後にこれ まで の基 礎 研 究か ら得 られ て い る知 見を基 に,
現実場面での出現頻度効 果の防 止 策 を 考 察 する。
運 動・
反 応エ ラー
の防止 運 動・
反 応エ ラー
を防 止 するに は,
実 験 参 加 者に自分 の判断 を 修 正 す る機 会を与え るこ と が有 効な手 段で ある こ と は先に紹 介し た (Fleck& Mitro氏2007)。
加 えて,
Rich et al.
(2008)は,
課 題を同定す る課題 (標 的の有 無 の判 断で は な く,
標 的が何で あるか を判 断さ せ る課 題 ) にす るこ と で,
出現頻度 効果を防止で き る と報告し てい る。
46 基 礎 心 理学研 究 第 32 巻 第1号
判断基 準の保 守 化の防 止
低 頻 度 時の判 断 基 準の保 守 化 を防 止 する方 法 もい くつ
か 提 案さ れ てい る
。
Schwark、
Sandry,
MacDonald,
& Dol−
gov (2012)は
,
標 的不在 試行後に誤っ たフ ィー
ドバ ッ ク (標 的不在試 行で正 しく 「ない」 と判 断した試 行の 20% で,
標 的 を見 落と してい た と実 験 参 加 者にフ ィー
ド バ ッ クする) を 与 えるこ と で判断基 準の保 守化を防ぎ,
その結果と して出 現 頻 度 効 果 を 防 止で きると報 告して い る。 また,
低 頻 度 時の判 断 基 準の保守 化を防ぐ に は,
途 中に高 頻度で出現す る ブロ ッ クを挿 入し,
実 験 参 加 者の 判 断 基 準 を 「ブー
ス ト」する こ とが有 効である と の報 告 も ある (Wolfe et al.
,
2007)。
視 覚 探 索の よ う な信 号検 出 場 面で は (Green & Swets,
1966),
標的 発 見に対 する報 酬 は実 験 参 加 者の判断基準の保守化を防ぐた めに重 要で あ る。 しか し,
実験 参加者に対する報酬は,
出現 頻 度 効 果 を 防 止 する の に有 効である とい う報告 (Navalpakkam etal.
,
2009)が あ る一
方で,
そ れに対 する反 論 も存 在 する (Wol魚 et al.
,
2007)。 報 酬が出 現 頻 度 効 果に与え る影響に 関 しては,
効 果が ある の か否か,
あ る場合に は どの よう な状 況で効果 が 見 ら れ るの か な どの疑 問が残っ て お り,
今後も検 討が必 要だろ う。 CAD の有 効 性 近 年 医 用 画 像 診 断で は,
病巣の見落とし を防 ぐた め に,
コ ンピュー
タに よる支援 検 出 (computer−
alded detec−
tion;CAD )シ ス テム が用い られ る こ と が多 く なっ た。
CAD
を併 用 し た画 像 診 断で は,
病 巣の検 出・
診 断を攴 援す る た め に,
コ ンピュー
タ が病 巣と思わ れる部 位を場 所 手が かりと して専 門 家に知 らせ る。
しか し,
CAD シ ス テ ムを併 用し た視 覚 探 索で は,
手が か り提示 位 置で の 感 度の向 上と ともに,
T
・
が か り が提示さ れ なか っ た位 置 で の感 度の低 下が生じ るこ と が報 告さ れてい る (Drew,
Cunningham
,
&Wolfe,
2012)。 Russell&Kunar (2012)は,
出現頻度 効 果が手が か りに よっ て防止で き る か否か を検 討す る た めに
,
色 手が か り を用いた実 験を行っ た。 その 結 果,
手が か り提示位置で は出 現 頻 度 効 果は低 減 した が,
手が か りが提示さ れ な かっ た位置では 出 現 頻 度 効 果 が さ らに大きくなっ た。
これ らの研 究は,
CAD を併用 し た画 像 診 断で は, 手が か り提示位置で は病 巣の検 出 感 度が高く なる こ とを示唆する。
その一
方で,
手が か りが 提 示さ れ なか っ た位 置では, 病 巣の検 出感度が低下 する と い う負の 側 面 も 持つ こ と を 示 して い る。
今 後は,
CAD の負の側 面を詳 細に 調 べ る こ と で,
より有 効 性の 高い CAD の開発が可能になると考 え られる。
ま と め こ こまで紹 介した よ うに,
出現 頻 度 効 果は さ まざま な 原 因によっ て生 起 する。
本 論 文で は,
出 現 頻 度 効 果は,
反 応・
運 動エ ラー
や判 断 基 準の保 守化,
探索終 了時 間の 短縮な ど が原 因となっ て生起 す るこ とを紹 介 した。 ま た 出現 頻 度 効 果は,
出 現 頻 度に対 する期 待の効 果が主 要因 で は ない 可能性を指摘し た。 こ の点を踏ま える と,
出 現 頻度効果 を防 止 するに は,
意 識 的 要 因 だけ で なく,
自 動 的な処 理 過 程を制御す る方法の開発が必 要で ある と考え ら れ る。 ま た,
出現頻 度効果だけで な く,
SOS や二 重 標 的コ ス ト と いっ た現 象 も標 的の見 落と しの原 因となりう る。 現 実 場 面で の見 落と し を防 止す る に は,
出現頻 度効 果の特 性の解 明だ けでな く,
その他の見落としの原 因と な る 現象の特性や,
出 現 頻 度 効 果と の関係 性の解 明 も必 要で ある。 今 後は,
実 験 室 場面 と現実 場面 と の違い (Gur,
Rock−
ette
,
Warfel,
Lacornis,
& Fuhrman,
2003b) や 初 心 者と専 門家の違い を考 慮 した研 究 を行 うことも重 要だ ろ う
。
最 近で は, 医用画 像 診 断を情 景の知覚
・
認 知として とらえるこ とで
,
放 射 線科医の特性の理解を試みて い る研 究 も ある (レビュ
ー
として,
Drew,
Evans,
V6,
Jacobson
,
& Wolfe,
2013)。 例 え ば
,
放 射 線 科 医や細 胞 診の専 門 医は,
その 長い経 験に よ る訓 練の効 果か ら,
専門とす る画像に対 す るgist(情景が もつ 意 味的なカ テ ゴ リー
や 空間の レイ ア ウ ト,
い くつ か の主 要 なオ ブジェ ク ト) を 持っ て おり,
その結 果と し て素早 く乳が ん や 異形 成を発 見で き る可能 性が指摘さ れ てい る (Evans& Wo晩,
2el2)。 また その他 の研究は,
放 射線 科 医や細 胞 診の専 門 医,
空 港の保 安 検 査員が,
自分が専 門として い る 画像の記憶が容易で あるこ とを帳 告し てい る (Evans
,
Cohen,
Tambouret,
Horowitz,
Kreindel
,
& Wolfe,
2011a;Schwaninger,
Hardrneler,
& Hofer,
2005)。 ま た数は少 ない が
,
専 門 家 を対 象に し た実 験で は出 現 頻 度 効 果は生 起 し ない と す る報 告も あ る (Gur,
Rockette
,
Armfield,
Blachar,
Bogan,
Brancatelli,
Britton,
Brown
,
Davis,
Ferris,
Fuhrman,
Golla,
Katya1,
Lacomis,
Mc−
Cook
,
Thaete,
& Warfel,
2003a)。
こ れ らの研 究は,
放 射 線 科 医や細 胞 診の専 門 医,
空 港の保 安 検 査 員が,
自分の専 門に特 化 し た特別な知 覚・
認知特性を持っ て い る可 能 性 を 示 唆 す る。 彼らの専 門に特 化した知覚・
認知特性を解 明 する こ と は, 専門家を短期 間で養成す るた めに重 要で ある。
また,
出現頻度効果の防止策を提 案す る う え で も 良い ヒ ン トになる可 能 性が ある。
出現頻度効 果に関 する基 礎 研 究は ま だ始まっ たばか り で あ り
,
明 らか になっ ていない点も多い。
また本 論 文で石橋
・
喜 多;視覚探 索に おける出現 頻度効果 47 紹 介し た研 究の多く は実 験 室 場 面で行わ れ てい るもの で あり,
これ らが本 当に現 実 場 面で 応 用で き るか否かはま だ検 討さ れて いない。 今 後の研 究で は,
基 礎 研 究で得 ら れ た出現 頻 度 効 果に関 する知 見 を 現 実 場 面に応 用 し,
そ こ か ら得 られ た知 見を ま た基 礎研究に持ち帰る よ う な,
双 方 向の発 展 を促 され る研 究 を行 うこ とが求められ るc そ う し た 双方 向の発 展が促 す研 究が,
出現 頻 度 効 果の よ り良い 防止策を提案す るうえ で重要に なっ てい く で あ ろ う。
謝 辞 本論文は SCOPE (戦 略的情 報通信研究開 発推進 制 度,
課 題 番 号:101707012)の支 援 を 受けて執 筆 した。 本 論 文 の執 筆にあたっ て は,
中 島 亮一
氏 大 杉 尚 之 氏,
横 山 武 昌 氏に貴 重な助 言をい た だいた。 こ こ に感 謝の意を表し たい。
また詳 細かつ 重 要 な ご指 摘 を くだ さっ た 2名の査 読 者の方々,
な ら びに担 当編 集 委員の方に も お礼を申しH
げ たい。
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