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開眼手術後における視知覚の特性と形成

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.39.10

開眼手術後における視知覚の特性と形成

鳥 居 修 晃

a

・望 月 登 志 子

b

*

a東京大学名誉教授

b日本女子大学名誉教授

Visual activity by the congenital or early blindness after surgery

Shuko Torii

a

and Toshiko Mochizuki

b

*

aProfessor Emeritus, The University of Tokyo bProfessor Emeritus, Japan Women s University

We examined the process of learning to see 2-dimensional forms, 3-dimensional solids and short distance in eight congenitally or early blind patients who acquired varying degree of sight after surgery. When we first asked them to recognize geometric solids such as cube, cylinder, cone and tetrahedron by using vison, it was found that this task was too difficult for them, even though they had the visual ability to identify 2-dimensional forms. The learning processes involved in attaining successful discrimination and identification are described here. The front distance of them became estimated mostly by the size of object at last. This study reveals the difficulty in transition-ing from 2-dimensional discrimination to a 3-dismensional knowledge base.

Keywords: visual activity, congenital or early blindness, after surgery

Part I: 立体知覚の前段階 1. 問題の発端と展開 1.1 モリヌー(Molyneux, W)による問題提起 生まれながらの盲人(生来盲)と4, 5歳までの早期失 明者とを併せた視覚障害者に対して行われる外科的処置 は「開眼手術」と呼ばれている。具体的には,白内障に 対する処置(混濁した水晶体の摘出ないし吸引)や角膜 移植(濁った角膜を亡くなった方から提供された透明な 角膜と交換する方式)などを指す。 モリヌーはアイルランドの哲学者であり,光学に関す る著書もあることで知られているが,その名を世に知ら しめたのは,イギリスの哲学者ロック(Locke, J)に宛 てた書簡(1688年,1693年)の中で以下のような問題 を提起したことに基づく(Degenaar, 1996)。 「生まれながらの盲人が成長する過程で『立方体と 球』(同一の金属製でほぼ同大の)を触覚によって 区別することを会得したとしよう。その後,この盲 人が見えるようになったとする。このとき,眼前の テーブルの上に置かれた上記2種の立体を,触らず に眼だけで区別し,識別することができるのか」 このような問題提起により,以後彼の名を冠してそれ はモリヌー問題(ときにはモリヌークス問題)と呼ばれ るようになった。 1.2 実証的な研究の幕開け 生まれながらの盲人が視覚を得たときの視覚体験につ いて,バークリー(Berkeley, 1709)が挙げている実例の 一つは,チェセルデンの報告(Chesselden, 1728)である。 それは彼自身が執刀した,両眼共に白内障の少年(13 歳)に関する観察結果をまとめたものである。 (1)手術前には,昼と夜の区別は可能であり,色につ いても強い光のもとでは白,黒,scarlet (緋色)の区別 ができていた。しかし,形の知覚は困難であった。 (2)手術後は,色が手術前とは違って見えた。眼でも のの形を判断できない。大きさや形が違っていても,そ Copyright 2020. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. * Corresponding author: 6–5–2–205 Masugata, Tama,

Kawasaki, Kanagawa 214–0032, Japan. E-mail: tm-torii@ fsinet.or.jp

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れらの事物の区別ができない。見たものが,当初はひど く大きく感じられ,すべての物が眼にくっついているか のように見えた(距離の判断ができない)。 ダビエル(Daviel)は白内障に対する水晶体摘出術を 開発した当時のフランスの眼科医であるが,彼は執刀し た先天性白内障患者22例の手術後の所見を次のように 書きとめている「手術後,眼前の事物に触らずに,見た だけでそれが何であるかわかった患者はひとりもいな かった」(Senden, 1932からの引用)。 1.3 開眼事例の文献収集とその比較研究 先天盲(主に先天性白内障)の開眼直後の視体験に加 えて,術後の「視覚」について多少の経過観察をしてい る事例報告は,18世紀半ば以降,ヨーロッパを中心に 徐々にふえていった。それらの文献を収録し,種々の疑 問に従って比較検討を加えた結果をゼンデンは,「先天 性盲人の手術前後における空間と形態の把握」という著 書にまとめている。 ゼンデンは,これらの事例報告を比較検討するには, まずそれぞれが手術前に保有していた視覚の下位機能を 把握しておかなくてはならないと考え,それを保有視覚 または残存視覚と名付けて,保有視覚の程度に応じた症 例をFigure 1のように群分けした。 2. 開眼手術経験者との共同実験 1962年に筆者の一人は,角膜移植手術後4 ヵ月目とい う11歳の少女(TM)に初めて出会う機会に恵まれた。 以来,20人あまりの「先天盲開眼者」と知り合い,そ のうち半数以上の人たちとは少なくとも3年以上に及ぶ 共同実験を望月登志子と続けてきた。ここでの「実験」 とは,それぞれの失明中の視知覚および触運動知覚の発 展と形成を図る試みを指すもので,彼らと筆者らとの共 Figure 1. Three classifications of subjects by their

resid-ual vision.

Table 1.

Clinical history, residual vision and the first visual experience after operation of Sub. MM, YS, TM, and HH.

開眼事例 保有視覚に関する報告 手術直後の視覚体験 MM 生後10か月で失明. 12歳で右眼の虹彩切除 明るい,暗いはわかったが色は わからなかった. 色名も習得していなかった. 術後6日: 眼帯を取ったとき「眩しい」. 「明るさはわかるけど,色はわからない」と 言い色名は一つも答えられなかった. YS 生後3歳半で失明 角膜軟化症 (右眼: 光覚,左眼: 光覚) 「色はわかったが,形はわからな かった」. 直後の状況は不明. TM 生後1年2か月で角膜白斑のため 両眼失明. 1歳で左眼の角膜移植 「黒,赤,青はわかったが緑と青の 区別は困難」. 「色名は母から教えられた」. 「形はわからなかった」. 手術直後:「黄色が鮮明で印象的だった」. 手術後4か月頃:「どこにあるのか位置は わかるが,形はわからない」. 「緑と青の区別が難しい」. HH 5歳頃角膜炎のため両眼失明. 28歳(右眼),29歳(左眼)に それぞれ角膜移植 近くで「白,赤,黄などが見えた」 「真っ赤はわかるが薄い赤はわから なかった」 本人は「形はわからない」と言うが, 左眼では三角形,正方形,円の識別 ができることが確認された. 第1眼手術後:「色がはっきりした.白,黄色 なら10 cmくらい離れてもわかる」. 机に対して「手術前は何かがあることも わからなかったが,今は何かあることは わかる.机とはわからないが」. 第1眼手術後92日: 4種の平面図形の識別 が可能 円錐:「何かがあるのは分かるが,眼では何 であるかわからない」.

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同作業である。Table 1は,本稿のPart Iで紹介する開眼 者のうち,4人(MM, YS, TM, HH)の保有視覚と手術直 後の視覚体験談である。 この4事例を含む計10人の人たちについて検討をして きたわれわれが気づいたのは,次の 2点である。一つ は,ゼンデンが提出している保有視覚による群分けでは やや粗すぎるという懸念であり,Table 2のような分類を 提案してみた。この分類によれば,MMは第1a群に, YSは第II群,TMは第III群,HHは第IV群に相当する先 天盲ないし生後早期の失明者と考えられる。二つ目は, 2種の立体を,触らずに眼だけで区別し,識別すること ができるのかを問うモリヌー問題は,開眼後に2次元図 形の形態知覚弁別が成立していることを前提としている のではないか,との疑問である。そこでPart Iでは,開 眼後の色彩知覚をはじめ,図領域の方向弁別および2次 元図形の形態弁別に関して行われた結果の概要が示され た。 3. 色彩の知覚 3.1. 色名の習得活動の推移 MMは生後10か月で角膜軟化症により両眼共に失明 状態となり,盲学校での視力検査によると,右眼は 「光覚弁」,左眼は「光覚もない」という状態になった。 12歳で右眼だけの虹彩切除手術を受けたが,「明暗」の 弁別活動以外,光の方向定位も2種の「色」の弁別も困 難な状態に置かれていた。当時12歳になっていたもの の,「色の名前」についても何も習得していない様子で あった。 手術後3日目に初めて訪問したとき,まだ眼帯をかけ ていたMMは「明るい,と暗いの違いは前からわかって いたが,色はわからなかった」と報告し,自ら短時間だ け眼帯をはずした場面で,「眩しい」と声を上げた。色 名については「一つも知らない」とのことであった。 他の事例報告(Wardrop, 1826; Latta, 1904)をみても, 開眼直後は「明るくなった」,「光が眩しすぎる」,「眼が くらむようだ」という経験談に終始している。すなわ ち,手術前に「明暗」だけを保有していた先天盲の場合, 手術に成功しても,それだけでは「色のある世界」がす ぐさま実現することはないのであろう。 3.2 色の弁別活動: その推移 MMとの共同実験では上記の色名習得の進行を追うと ともに,2種の色の弁別活動の形成を促す試みも,手術 後2 ヵ月頃から平行して進められた。MMにとって適切 な色見本がどれか明らかでなかったこともあり,暗室に 提示した色光の弁別実験ではチャンスレベルを超す水準 が維 持 さ れ な か っ た(Figure 4 の(a))。 実 験 開 始 後 4 ヵ月半頃,たまたま赤色光を見ていたMMは「こうい うアカ(色光)はよくわからない。太陽の下でみた赤い 紙(色紙)の方がわかりやすい」とつぶやいた。 そこで,あらためて標準色紙を直径 6 cmの円形に切 り抜き,それを白色台紙(25 cm×25 cm)の中央に貼り つけたものを提示材料とする2色間の弁別実験に切り替 えた。すると,Figure 2の(b)が示すように,当初チャ ンスレベルに近かった適中率は次第に上昇して,開始後 約半年で80–90%に上昇している。 Table 2.

New classification of subjects by their residual vision (tentative plan). 〈第I群〉 〈第II群〉〈第III群〉〈第IV群〉 Ia Ib 明暗 明暗 明暗 明暗 明暗 光の方向 光の方向 光の方向 光の方向 色 色 色 図 領 域 の 大小 図 領 域 の大小 図 領 域 の 延長方向 図 領 域 の延長方向 2次元の 形

Figure 2. Correct ratio of color differentiation by Sub. MM. (鳥居,1988; 鳥居・望月,1992).

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3.3 色の識別活動の発現と展開 2 色の弁別実験で成果が得られた時期を見計らい, 色見本の数(N)を2種から数種に増やす計画を試みた。 数種の色見本を一つずつランダム順に提示してその 「色名」を問う実験に際して,初めのうちMMは「色の 種類が3つになると,どれがどれだかわからなくなる」 としきりに述べている。この報告はアクロイドら(Ackroyd, Humphrey, & Warrington, 1974)の開眼女性(HD)のそ れと軌を一にするものである。 4. 図領域の知覚: 図領域の有無と帯状図形の方向弁別 4.1 MMの場合 MMに対しては,図領域の有無がほぼ弁別できると確 認された段階で,形態弁別課題にとりかかったが,まだ 簡単ではないと判断された。そのため,帯状図形による 延長方向の弁別課題に切り替えた。提示材料は黒色紙 (N2)から切り抜いた帯状図形を台紙(20 cm×20 cm) の中央に縦または横方向に1枚ずつ貼付したものである (Figure 3)。最初に用いたのは,見本の帯状図形の方向 を触覚で確認し,次に別の台紙上に貼られた帯状図形 (2 cm×12 cm)の方向を見て,見本の方向と同じか否か を判断する「触見本方式」であったが,初期の段階 (Figure 4の触見本矢印が示す期間)では期待される結果 が得られなかった。 そのため,帯状図形が縦・横いずれの場合にも,サン ドペーパーから切り抜いた横の触帯状図形を台紙の裏面 中央に添付する方法(Figure 3)に切り替えた。この方 法では視覚で探索すべき領域の原点が定位できるように なる。MMはここを「真中」と称して,視覚でもそこを 探し当てると,その上下と左右の両端を見て,黒の領域 がそこにあるか,ないかを探せばよいと考えて,帯状の 領域を端から端まで辿ることはしなかった。そのためで あろうか,初回と 2回目は100%を示した対応率が3回 目以降はむしろ低下していく傾向となった(Figure 4の 補助触見本の矢印が示す期間)。 帯状領域の延長方向は,端だけを探索するのではな

Figure 3. Vertical rectangular pattern with tactual hori-zontal one pasted on the reverse (縦・横いずれの場 合も裏の補助触見本は横).

Figure 4. Correct ratio of differentiation between horizontal rectangular and vertical one by Sub. MM (梅津・鳥居・上村, 1993).

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く,領域の端から端まで辿ることによって明確になり, 点と形態を構成する線(辺)との違いもここにあるとの 考えに立ち,MMには顔および台紙を動かして図領域の 広がりを端から端まで辿るよう教示した。この「新しい 教示による方式」によって,対応率は8月からの約3 ヵ 月間で100%に辿りつくことができた(Figure 4の新しい 教示以降)。 4.2 YSの場合 YSの場合には,「色」の識別実験から始めて,図領域 の「定位」が安定してきた段階で「図領域の大小/長短」 に関する実験と並行して,「図領域の延長方向」の弁別 実験も始めている。「水平/垂直」の弁別課題において YS がとった探索方式(Figure 5の I)では,水平に走査 して図領域の「赤」が「見えなくなる」か「いつまでも 見える」か,を基準にして方向弁別がなされていた。し かしFigure 5のIIでは,上記の方式による図領域の延長 方向を認めたうえでさらに,縦の場合には縦方向に沿っ て帯状の領域まで走査を拡張し,横の場合には帯状領域 の周辺つまりその上方と下方の地も走査して,そこには 色の領域のないことを確認している。 「縦・横」の弁別が確実に可能になった段階で,「斜め の方向弁別」課題を導入した。Figure 5のIIIはそのとき の探索方向と順序を示している。結果は,最初の8試行 すべてに100%の対応率を示している。 5. 2次元図形の形態弁別 帯状図形の方向弁別が可能になったYSは,2次元図形 の形態弁別課題を「三角形–円」および「三角形–正方形」 の弁別から始めた。これら三角形との弁別対応率は Figure 6の白丸が示すように順調に進行したが,「正方 形–円」の弁別ではYSがすでに習得していた探索操作で は対処できないことを,2回の実験結果から知らされ た。 そのため,それまで用いてきた灰緑色の台紙上に貼ら れた赤色の図形を「窓」型図形に変更してみた。この図 形は,厚紙の中央を円形または正方形の窓のように切り 抜き,形態部分が周囲より明るくなる。これは,「光を 頼りにした方が形はわかりやすい」というYSの報告に Figure 5. Scanning patterns of directions by Sub. YS.

(鳥居・望月,1992より一部変更).

Figure 6. Correct ratio of differentiation between 2-dimensional patterns (鳥居・望月,1992).

Figure 7. Sub.YS observing the square pattern of win-dow type (鳥居・望月,2000より改変).

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示唆を得て作られたものであるが,こうすることで, YS にとっては図に相当する領域の探索が容易になり, 走査するYSの眼の動きおよび位置を実験者が観察する ことも可能になった。窓型図形による弁別対応率は, Figure 6 の黒丸が示すように,順調な推移を示した。 いったん100%に達した対応率が低下しているのはYSの 眼の状態が悪化したことによるものであり,状態の回復 後に再開した際の対応率は以前よりも短期間で100%に 到達している。 Figure 7は「正方形」に切り抜かれた「窓」の左下隅 を見るように教示したとき,YSがそこに眼を向けてい る場面である。実験者の「左上,右下」などの言語指示 に対して,この段階では,頭部をほとんど動かすことな く,眼球だけでそちらの方向を定位できるようになった 様子を示している。 眼球の意図的コントロールはどのようにして培われた のであろうか。Figure 7を撮影したとき,YSは「決まっ たところを見るにはどうすればよいのか,自分ではまだ よくわからない」と言いつつも,「ピアノを弾きながら, 自分の手の動きを追っていることに最近気づいた」と報 告しており,これは自分の身体(手)の動きを視覚に よっても確認できるようになり始めたことを示唆してい るのであろう(詳しくは鳥居・望月,1992, 2000)。 6. 概要と考察

本稿のPART Iに登場したMM, YS, TM, HHとの共同実 験結果をもとに,各課題の成立順序を矢印で示すと Figure 8のようになる。この経過をほぼくまなく通過し たのはYSであり,MMに関しては帯状図形の方向弁別 までが確実に,TMについて本稿では触れる余裕がな かったが,2次元形態の弁別から出発して,その完成の 域に到達した。 本稿の一部に登場した,上記以外のHH (Table 1参照) については,第1眼の手術後92日目に初めて会ったとき の実験によって,すでに4種の2次元図形の識別が可能 であると判明したが,試みに提示した「円錐」に対して は,「何かあることはわかるが,眼では何かがわからな い」と報告している。 以上のように,本報告に登場した4名の開眼者のうち 2次元図形の識別が可能になった3名については,この 段階で,次のPart IIでモリヌー問題を課するに足る状態 に到達したとみてよいであろう。 (鳥居修晃) Part II: 立体と奥行距離の知覚 MolyneuxはLockeに2度書簡を送っており,最初の書 簡(1688 年)にはモリヌー問題のほかに,「対象が 20 フィートあるいは100フィート彼から離れて置かれたと したら,手を伸ばす前に,それらに手は届かないとわか るだろうか」という問いも記されていた。だがこの 第1書簡への返信は得ることが叶わず,改めて送られた 第2書簡(1693年)には,モリヌー問題とそれに対する 自身の解のみが記された。距離知覚については,1692年 刊行の自著「新屈折光学」でモリヌー自身がすでに解決 しており,立体の問には距離の解も含有されると確信して いたことがその理由であろうと想定されている(Degenaar, 1996)。 この経緯を踏まえ,次に検討すべき課題は立体と奥行の 知覚およびそれらの映像認知に関する変化の過程であると 考えられた。Part IIはこの問題について下記7名(Table 3) に行われた検討結果の一部を要約したものであるが,保有 視覚に応じて参加した課題は異なり,紙幅の都合もあるた め,一部の開眼者による結果のみを記してある。 1. 立体の形態知覚 モ リ ヌ ー問 題 に つ い て は,Locke が「人間知性論」 (1690, 大槻訳1972)でMolyneuxおよびLocke自身の「否」 という見解を著して以来,哲学者による論考と眼科医に よる検証が試みられたものの,統一的な見解がただちに 得られたわけではない。多少とも組織的に検討された過 去の事例報告を集積・考察したSenden (1932)は,両眼 視が可能とみなしうる22症例の中,手術直後から立体 視が成立したのは1例で,残りの21例は立体の弁別が困 難,あるいは立体の形態と断面図の区別も難しかったと している。 当初困難であった立体視の変容過程の詳細は下記(鳥 居・望月,1995, 1997, 2000; 鳥居,1977; 安間・外山・鳥 居・望月,1977; Mochizuki & Torii, 2005)に記されてい る。

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1.1 開眼後最初期の視覚による立体知覚 平面図形の形態視を保有していた第3群のHHであっ ても,術後3 ヵ月に見た円柱には「マル」,円錐に「あ ることはわかるが,上の尖りがわからない」と報告する に留まっていた。この段階,つまり開眼後の最初期に は,立体を手に取って,あるいは机の上に置いた状態で 見る場合,上面に対して視線をほぼ真っ直ぐに当てて形 状を観察する様子が認められる(Figure 9)。 1.2 視覚による立体の知覚の推移 立体の形態観察は机に置かれた状態で行われたが,弁 別および識別の精度は,継続実験を経て緩やかに上昇し た。立体2種の弁別正答率が100%に達するまでに要し た実験回数は,第 2 群の TM が 9 回,第 3 群の SH, NH, HHは4–6回に及んだ。弁別試行より数回遅れて導入さ れた識別課題の精度が類似した水準に達したのは,第2 群のTMが3回目(3種の立体に対して通算9回目),第3 群の開眼者では 3–9回目(4ないし5種の立体に対して は通算7–13回目)の実験後であった(Figure 10)。 1.3 立体観察の視点と手掛かり 立体の知覚精度と観察様式は半ば,相即不離の関係に あることに気づき,開眼者の行動と報告を辿ったとこ ろ,下記のような変容過程が認められた。 初期段階では,ほぼ真上から見下ろす位置から立体が 観察されたために,円錐の頂点が見にくい,円柱と円錐 の区別がつきにくいなどの欠点が生じた。そのことに気 づいた彼らは,頭部を移動させて種々の角度から立体を 眺めまわし,複数の面の形態とそれらの配置関係から一 つの立体を加算的に構成する第2の方法を用いた。その Table 3.

Participants of the experiments at Part II.

保有視覚 開眼者 失明時期・ 眼疾患 初回の手術直前 の視力 初回の受術年齢 手術の種類 手術(直)後の視力 第2群 光覚・色彩視 TM 1歳2カ月・ 角膜白斑 (30 cm指数弁)左眼: 光覚弁 右眼: ゼロ 左眼のみ: 11歳 角膜移植 左眼: 0.01 程度 MO 先天性角膜 被覆症 左眼: 光覚弁右眼: 光覚弁 左眼: 4歳9カ月右眼: 11歳6カ月 左眼: 角膜移植右眼: 角膜移植・ 水晶体摘出 両眼: 0.012 (−16D) 第3群 光覚・色彩視・ 形態視 KT 先天性白内障 左眼: 明暗弁別以上 左眼: 15歳 水晶体摘出 左眼: 0.01 (n.c.)* 右眼: 不明 右眼: 2, 3歳 (その後視力ゼロ) 不明 右眼: ゼロ SH 先天性白内障 左眼: 眼前手動弁 左眼: 21歳 水晶体摘出 左眼: 眼前手 動弁もしくは 0.005 右眼: 眼前手動弁 右眼: 20歳 水晶体摘出 右眼: 0.01∼ 0.02 (+10D)** NH 先天性白内障 左眼: 眼前手動弁 左眼: 18歳 水晶体摘出 左眼: 眼前手 動弁もしくは 0.01 右眼: 眼前手動弁 右眼: 17歳 水晶体摘出 右眼: 0.02 (+10D)** ToM 先天性白内障 左眼: 光覚弁もしくは 20 cm指数弁 左眼: 10歳 水晶体摘出 右眼: 0.01 右眼: 光覚弁もしくは 20 cm指数弁 右眼: 10歳 水晶体摘出 左眼: 0.01 HH 5歳頃・角膜炎 左眼: 眼前手動弁 左眼: 29歳 角膜移植 右眼: 0.03 (n.c.) 右眼: 眼前手動弁 右眼: 28歳 角膜移植 左眼: 0.02 (n.c.) *:裸眼視力,**:矯正視力

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結果,円錐の突起は捉えやすくなるが,視点の位置に よって異なる形態が立ち現れてくるため,決め手に欠 き,混乱も生じかねない。 この欠点を補うべく工夫された第3の方法では,観察 可能な側面をくまなく見るのではなく,視点を移動しな がら,その立体の特徴検出に最適な標識と観察位置の絞 り込みが試みられた。しかし,観察時間の短縮には奏功 したが,最適な視点と指標は立体によって異なるため, 観察位置の絞り込みを途中で変更する事態も招いた。 そして最終的には,いずれの立体でもいくつかの面を 同時に捉えやすい斜め上・手前に視点を定め,その位置 から見える諸側面の形態を基に,見えない部分をも含む 統一体としての立体構造を構成的に把握する第4の方式 に自ら辿りついている。 2. 立体の線画と写真の認知 2.1 透視図的線画に対する知覚 手術後1年以上を経た開眼者であっても,立体の透視 図的線画には,何が描かれているのか最初は理解できな い,あるいは小さな平面図形の集括として知覚すること が報告されている(Latta, 1904; 黒田,1930; Gregory & Wallace, 1963; Valvo, 1971)。 立体の知覚がほぼ完成した段階で透視図的線画は導入 された。初めて見た円柱の線画(Figure 11(a))に対し てHHは「楕円形」,2 ヵ月後にも「楕円形,下も楕円形」 と報告した。その1 ヵ月後に実物とともに見た円柱の写 真および線画には「円柱」と答えても,同日,時間を経 て再度見た際には「横長の丸と四角」という初期の反応 に戻っていた。 だが,このような事態も立体識別や描画課題を重ねる 過程で,次第に変化する。手術2 ヵ月後には円柱と円錐 の線画(Figure 11(a),(b))を,2次元図形の集括と捉 えていたToMも,10年のブランクを経て再開した実験 では,「コップ」,「フラスコ」など,立体的な具体物の 名称で答えている。その4年後には,円柱の描線に注目 して,「下の曲線は膨らみを表している」,円錐の曲線的 な底部を指して「下がどっしりしている」と報告した。 この発言からは,輪郭線の形状を「観察」して,立体と して識別する段階から1歩進み,立体の量感あるいは体 積感などの表現内容を「鑑賞」する観点をも ToMが獲 得した兆しを垣間見ることができる。 2.2 線画および写真の陰影による立体感 Figure 11(a)を「円柱」と捉えられていたToMである が,側面に青鉛筆で加筆された陰影(Figure 11(c))に は,「コップについた青い縞模様」と捉えており,2 ヵ 月後にも「青いコップ」,「輪郭線だけの絵の方が,立体 感がある」とつけ加えている。その4 ヵ月後には,青色 の陰影部分を指して「膨らみを表しているの?」と問い かけてきたものの,立体効果については半信半疑であっ た。さらに2年7 ヵ月あまり後に,はじめて「光彩」の 表現に言及したが,それは「青いコップに日が当たって いる」というものであった。つまり,ToMにとって注目 しやすく,かつその意味を捉えやすいのは,白地に生じ た陰影としての暗領域ではなく,青地に陽光がもたらし た明領域なのである。 立体の写真に写り込む陰影(Figure 11(e),(f))の存 在にToMは,最初は全く気づかず,8回目の実験で「丸 みを帯びているの??」と若干変化したものの,確信を 得るまでには至っていない。 以上から,「なだらかな明度変化」が面上にもたらす Figure 10. Correct ratio of differentiation and

identifi-cation of solids (Mochizuki & Torii, 2005).

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陰影よりも,「明確な明度対比」がもたらす輪郭線の曲 線性(形状の特性)の方が,開眼者に対する立体効果は 大きいと言える(鳥居・望月,1996, 1998)。これは,立 体の印象形成にとって陰影の力は弱いので,その説得性 を高めるには輪郭線で形態を囲むなどの工夫が必要とす る指摘(Ramachandran, 1988a, b)に通じる現象であると も言えよう。 3. 前方奥行き距離の知覚 3.1 哲学者による論考 Molyneux は,著書「新屈折光学」で「距離自体をわ れわれは見ることができない。なぜならば,距離はその 端が眼に届く1本の線であり,眼底では1点になってし まうので」,… ,「純粋に視覚で行う距離の推定は,感 覚よりも判断による行為であり,生来性の機能ではな く,むしろ経験と比較によって獲得される行為である」 と述べている(Molyneux, 1692; Degenaar, 1996)。 Molyneux から多大な影響を受けた Berkeley (1709 下 條・植村・一ノ瀬訳 鳥居解説 1990)も,同じく「距離 がそれ自体としては,直接的には見ることができぬもの であるということに誰しもが同意するであろう」と指摘 しており,そのうえで,「…生まれつきの盲人が視覚を 与えられても,最初,視覚による距離の観念を全く持た ないであろう。…というのも,我々が視覚によって知覚 された対象を何らかの距離に,あるいは心の外側にある と判断するのは完全に経験の結果であり,この経験の結 果を,そうした状況下に置かれているひとはまだ獲得し 得ていないのだから」と推論している。 3.2 過去の開眼事例報告 開眼後の視覚世界について,Chesselden (1728)の症 例 お よ び そ れ 以 降 の 開 眼 事 例 報 告 を 検 討 し た 黒 田 (1930)は,ある程度の遠近を以って配列されていると 推断している。Senden (1932)も同様の想定を下してお り,実験的な試みの成された過去の事例報告14症例の うち,術後早期から正確な判断のできた3症例は,いず れも術前から奥行のある視空間を知っていた,と記して いる。 3.3 開眼後初期の絶対距離判断 開眼後比較的早い段階では,実際より距離は近くに, 対象は大きく感じられたとする報告がある(Franz, 1841; Latta, 1904; 梅 津,1952; PokrovskiĬ, 1953; Gregory & Wal-lace, 1963; Valvo, 1971)。第 3 群の HH では第 1 眼手術後 7 ヵ月に,第2群のTMでは術後10年を経ても,遠距離 の過小視が認められた(鳥居・望月,1997)。 3.4 近距離の目測と距離知覚の手がかり 近距離(20–100 cm)の目測実験を術後2, 3年の間に 7–18回継続して,推定精度の推移が検討された。机上に 立てた対象(直径10 cmの白円盤)までの距離は,cm単 位の数値で報告するか,メジャー上の長さで示された。 Figure 12は,推定距離(d)と観察距離(D)の差をD で除した比率(%)を推定精度(E)とし,初回と最終 回の実験結果(Eの平均値)を視覚条件別に比較してい る。単眼視の開眼者(TM, KT)では5%程度の過小視が 最終回でも継続したが,左右眼に機能差のある両眼視 a群(SH, NH)では過小視から10%未満の過大視に転じ, 当初から機能差のない両眼視b (HH)では10%前後の過 大視が持続している。以上から,当初認められる距離の 過少視傾向は,術後の視覚条件と時期によって変化する ことが確認された(望月,1979, 1989, 1993; 鳥居,1984; 鳥居・望月,1997; 安間他,1977)。 距離知覚の手がかりについて,KTは「遠くのものは, ボーッとして小さく見えるのですね。遠くから見えるの は,(いつも)大きいからだと思っていた,…」と驚い て報告しており,後には「遠いものは小さく見える,と いう話は聞いていたけれど,遠いということが最近よう やく,少しずつわかってきた。人が近づいてくると段々 大きくなるから」とも報告している(望月,1989)。こ の指摘からは,それまでの彼らは事物の見えの大きさ も,触覚のそれと同じく,距離に関係なく一義的に確定 されると想定していたが,距離の推定実験を通じて,視 覚では異なることに気づき,今や対象の大きさを手がか りとして距離を知覚し始めていることが推測される。

Figure 12. Accuracy of measured distance by sight at close range (望月,1993).

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一方,見えの大きさが距離によって変わることを承知 していたNHは,手術の3年3 ヵ月後に「物までの距離 は,そこまでの机の長さを測ればよく」,「教室の奥にあ る壁までは,足元から壁までの床の長さを測ればよい」,…, 「大きさは,距離判断の手掛かりにあまりならないと思 うので…」と述べている(望月,1979)。この内容は, 支持面から遊離した対象の大きさだけでなく,対象を支 える連続体の面(Gibson, 1950)も観察対象として加わ り,面の長さを距離判断の主要な手がかりとしているこ と,つまり,地続きの空間としての奥行距離をある程度 捉えている可能性を想定させるものである(望月, 1979, 1989, 1994; 鳥居,1984; 鳥居・望月,1997)。 3.5 距離に伴う対象の大きさ 距離と見えの大きさに関する吟味実験は,机の上に置 かれた直径10 cmの白円盤またはテニスボール1個を観 察して,その大きさ(直径)を手で示すか,円で描くと い う方 法 で 行 わ れ, Gilinsky (1951)の関係式: S/S0= (A/δ)/(A+D)に従って結果が図示された。Sは対象ま での観察距離 Dで知覚された対象の大きさ,S0は距離 δで知覚された対象の大きさであるが,ここでは距離δを 大きさが恒常に保たれる最大距離としている。Aはδ以 降の理論曲線の傾きを表すパラメータで,A→∞のとき は大きさの恒常性が成り立ち,A=0のときは視角の法則 に従う双曲線となる。 大きさが恒常に保たれる最大距離(δ)が,開眼者 NHでは単眼,両眼視いずれの場合においても20 cm未 満であり,単眼視条件での視覚健常者STの結果に近い。 しかし,Aについては,単眼視,両眼視いずれの場合 も,開眼者の値は極めて小さく,見えの大きさがほぼ視 角の法則に従って縮小していることになる。その傾向 は,実験早期の単眼視条件で顕著である(望月,1989; 鳥居・望月,1997)。 4. 奥行を表す単眼図像の知覚 ―線遠近法の原理と肌理の密度勾配― 4.1 線遠近法図像からの奥行感 Gibson (1950)は,距離に応じて単位要素の密度が一定 の比率で変化するパターンを肌理(texture)と名づけ,肌 理の密度勾配は面が遠方に拡がる奥行き印象をもたらす

Figure 13. Perceived size and physical distance by a person normal sighted.

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適刺激であり,距離の印象は直接的な過程であって,手 掛かりの解釈はその後に生じるとする。ただし,この場 合の直接的な過程は,生得的な距離の直感を意味するも のではなく,特定可能な刺激をもつことの意味である。 さらに,距離知覚の問題は視線に並行な面をどのように 見ることができるかに帰着するとも指摘している。 線遠近法に従った線路のカラー写真(Figure 15) は, 単眼でも奥行感の得られる画像として開眼者に提示され たものの1例である。 実空間での奥行距離推定をすでに経験していた SH, NH, KT, HHであるが,当初はこのような写真を見ても 前方への奥行き感は得られなかった。手術後1年2 ヵ月 目に Figure 15を初めて見たNHは,「別に特に何もあり ません。大部分が黒。あとは白,三角が3個と横線があ る」,3回目は「白い線が上で狭くなっている」,4回目 にも「三角錐が立っている」との報告に留まった。 その後は,「まっすぐの線が 2本並んでいて,それが 遠くに行っている。線路みたい」,と視線に平行な前方 へ拡がる奥行きをそこに知覚したのは2年後,5回目の 実験であった。「半年前に線路の模型と学校の廊下を 2 mほど手前から観察して写生したときに見た,横幅が 遠くで少し狭くなっている光景を思い出した」,と NH はこのとき報告している(望月,1979)。 他の開眼者も,これらの写真に対する当初の「三角」 あるいは「三角錐」,「山」など高さの表現と捉える段階 から,前方への奥行き距離を感じとったことを示す報告 に変化したのは,前方に延びる実物の線路または線路の 模型を手前から観察した後であった。 彼らにとって観察可能な実空間の奥行距離は写真のそ れに比べてごく近距離に限られており,横幅の収斂も映 像のように急峻ではない。このことは,遠距離までを一 定の視点から映し込む写真などの映像を見ても奥行距離 感が直截には得にくい一因となっている可能性は否定で きない。それ故であろうか,その成立には類似した実物 の視覚記憶像との類推が依拠している可能性も想定され る (望月,1979, 1989, 1994; 鳥居・望月,1997)。 4.2 texture patternの知覚 より具象性の少ない要素の漸進的系列変化である texture pattern からの奥行感も調べられた。Figure 16 は KTに提示した図形の1例であるが,パターン(A1, B1, C1)に対しては,「網戸が立っている」と報告して,B2 には,「上に上がる階段」,C2には要素の形と大きさが 小さくなるとのみ報告している。結局,前方に延びる奥 行平面としての印象を得たのは,唯一A2のみであった。 ここでは斜めの内線が多数加わることにより,線遠近法 の原理による前方での収束感が強調されており,そのこ とが面の奥行感の喚起に奏功した可能性も想定される。 開眼者にとっては,対象の大きさが距離によって変化 することを理解していても,要素図形や間隔が漸進的に 縮小する状態全体を前方に延びる距離変化の情報として 捉えることは難しい。そのことが,texture patternから の奥行印象が得られにくい一因でもあろうと想定され る。

Figure 15. Photograph of distant railroad (Gregory, 1968).

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お わ り に 手術直後の開眼者にとって,視覚で立体および前方へ の奥行距離を知覚することは,平面の形態視が成立して いる段階にあったとしても極めて難しい。しかし,順序 立てた実験課題への参加を経ることにより,その状態は 徐々に克服されることが明らかになった。さらに,立体 と奥行距離は同じく3次元知覚の対象であるが,同日に 語ることのできない視覚対象であることも見出された。 仮にここでは,その違いを次のように考察してみた い。立体に対して求められる課題は個物を対象とする形 態知覚であり,開眼者は触覚(主に手)によってもそれ を探索している。それに対して,奥行距離は空間の状態 であり,それを直接手で探索する機会は極めて限られ る。さらに,彼らにとって空間としての地表面は主に身 体を支える面として実感されており,距離は歩みに伴う 時間経過と一体化した歩尺として遡及的に感じ取られて いる可能性も否定できない。また,前方の距離は,歩を 進める過程で受ける風圧や反響音を通じて感じ取ること はできても,奥行距離を含む空間が視覚の対象となる機 会は少なく,彼らにとってそれは術後に遭遇する新な視 覚課題であることが想定される。これらのことが,奥行 空間の知覚、特に映像による奥行表現の認知を一層難し いものにしている可能性が考えられる。 謝 辞 Figure 16の作成にあたり,ご協力をいただいた池田ま さみ氏(十文字学園女子大学教授)に謝意を表します。 (望月登志子) 引用文献

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Figure 2. Correct ratio of color differentiation by Sub.
Figure 4. Correct ratio of differentiation between horizontal rectangular and vertical one by Sub
Figure 6. Correct ratio of differentiation between   2-dimensional patterns  (鳥居・望月,1992).
Figure 8. The visual tasks accomplished and the order from color to 2-D shapes.
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