• 検索結果がありません。

食道がん術後患者に生じた身体活動量低下を月一回の外来フォローにより改善できた1 例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "食道がん術後患者に生じた身体活動量低下を月一回の外来フォローにより改善できた1 例"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 46 巻第 1 号 47 ∼ 53 頁(2019 食道がん術後患者への月一回外来フォローの有効性 年). 47. 症例報告. 食道がん術後患者に生じた身体活動量低下を月一回の 外来フォローにより改善できた 1 例* ─栄養指導と運動記録の活用によるフィードバックの実施─. 濵 口 雄 喜 1)# 木 村 大 輔 2) 鈴 木 啓 太 2) 伊 藤 智 崇 2) 永 冨 史 子 1) 武市恵理子 3) 山 辻 知 樹 4). 要旨 【目的】食道がん術後に筋力と全身耐久性が低下し,身体活動量が低下した症例に対し,退院後月一回の 外来フォローにより,良好な結果を得たため報告する。【対象】対象は食道扁平上皮がんの 80 歳代男性患 者である。術後に気胸および肺炎を併発し,術後早期に理学療法を再開したが呼吸機能,筋力,全身耐久 性ともに低下していた。【方法】月一回の外来フォローにて運動指導と栄養指導,1ヵ月の平均歩数,自 主トレーニング実施日数のフィードバックを実施した。【結果】膝伸展筋力,30 秒間立ち座りテスト,6 分間歩行試験の改善を認め,1ヵ月の平均歩数は 1,392 ± 810 歩から 3,547 ± 1,022 歩まで有意に増加した。 【結論】本症例の結果は,適切な運動指導と栄養指導に加えて,1 ヵ月の平均歩数や自主トレーニング実 施日数をフィードバックすることで,月一回の外来フォローであっても,運動機能の向上とともに,身体 活動量を増加,維持できることを示唆している。 キーワード 食道がん,外来理学療法,身体活動量,栄養指導,生活の質. 骨格筋量が減少する。食道がん術後患者における退院後. はじめに. の生活を調査した報告. 3)4). では,食生活の変化,体力.  食道がん術後は,食物の貯留および撹拌機能のある胃. の低下に不安を抱えているとされ,術後は筋力および全. を使用して胃管を形成するため,1 度に摂取できる食事. 身耐久性低下による身体活動量の低下が危惧される。が. 量が減少する。そのため,必要栄養量が不足しやすいと. ん患者において,身体活動量が高い患者は,低い患者と. 1) されている 。また,食道がんの手術は開胸および開腹. 比較して再発率が低く,生存率が有意に高かったと報告. を伴う高侵襲手術であり,手術後の全身性の蛋白異化亢. されている. 2). 進は生体が受けた侵襲に比例して増加し ,それに伴い *. Effect of Postoperative Outpatient Physical Therapy Once a Month on the Physical Activity of a Patient with Esophageal Cancer: A Case Report 1)川崎医科大学総合医療センターリハビリテーションセンター (〒 700‒8505 岡山県岡山市北区中山下 2‒6‒1) Yuki Hamaguchi, PT, Fumiko Nagatomi, PT, MS: Rehabilitation Center, Kawasaki Medical School General Medical Center 2)川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科 Daisuke Kimura, PT, PhD, Keita Suzuki, PT, MS, Tomotaka Ito, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Faculty of Health Science and Technology, Kawasaki University of Medical Welfare 3)川崎医科大学総合医療センター栄養部 Eriko Takeichi, RD: Nutrition Department, Kawasaki Medical School General Medical Center 4)川崎医科大学総合外科学 Tomoki Yamatsuji, MD, PhD: Department of General Surgery, Kawasaki Medical School # E-mail: [email protected] (受付日 2018 年 2 月 20 日/受理日 2018 年 10 月 25 日) [J-STAGE での早期公開日 2019 年 1 月 29 日]. されており. 5‒7). 。食道がんにおいても同様の結果が報告. 8). ,術後の身体活動量をいかに維持,向上す. るかが重要な要素となる。そのため,退院後の身体活動 量も含めた栄養面および体力面での継続したフォローは 重要となる。しかしながら,がんのリハビリテーション を外来にて実施している病院は非常に少ない。本邦にお けるがん診療は,治癒をめざした治療から生活の質 (quality of life)を重視したケアまで,切れ目のない支 援をするといった点では不十分であることが指摘されて いる. 9). 。また,外来におけるがんのリハビリテーション. に関する研究報告は希少であり,その効果については示 されていない。そこで,本症例報告は,がんの術後患者 に対して,外来での介入が身体活動量を維持および増加 させるうえで有効であるかを検討した。.

(2) 48. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 表 1 リハビリテーション経過. PT(physical therapy) :理学療法 ADL(activities of daily living) :日常生活動作 ALB(albumin) :血清アルブミン値,TP(total protein) :総タンパク質 ALT(alanine aminotransferase) :アラニンアミノ基転移酵素 CRP(C-reactive protein) :C 反応性タンパク CRE(creatinine) :クレアチニン CS-30(chair standing 30 seconds) :30 秒間立ち座りテスト 6MD(6-minute walk distance) :6 分間歩行試験による歩行距離 %VC(%vital capacity) :肺活量 FEV1/FVC(forced expiratory volume in 1 second/forced vital capacity):1 秒率. 食を 8 割経口摂取できるようになっていた。この時期に. 症例紹介. は経腸栄養は減量できていたが,経口摂取が安定してい.  対象は嚥下困難感のため近医を受診し,食道扁平上皮. なかったため,経腸栄養を継続したまま転院となった。. がん(stage Ⅲ)と診断された 80 歳代男性である。入院. 既往歴に両目加齢黄斑変性があり,右目はほぼ見えてい. 時の身長,体重,Body Mass Index はそれぞれ 168.0 cm,. ない状態だが,介助は必要なく,入院前の日常生活活動. 2. 60.0 kg,21.2 kg/m であった。当院入院後 29 日目に開. (activities of daily living;以下,ADL)はすべて自立し. 胸開腹食道切除,リンパ節郭清,胃管胸腔内吻合術を施. ていた。. 行された(手術時間;9 時間 20 分,出血量;3,126 mL) 。.  術前 20 日より理学療法を開始し,術翌日より再開し. 術中,胸腔内高度癒着に伴う胸腔内出血,エアリークを. ていたが,術中合併症の影響により離床が遅延した。そ. 認め,気管切開も同時に施行され,人工呼吸器管理となっ. のため術後には著明な筋力低下が生じ,病棟内 ADL の. た。術後 9 日目に人工呼吸器から離脱し,術後 39 日目に. すべてに重度介助を要する状態となった。入院中の理学. 気管チューブが抜去された。気管チューブ抜去後,嗄声. 療法により,入院 78 日目の転院時には独歩可能となる. などの発声に関する問題はなく,反回神経麻痺の症状は. までに回復していたが,術前と比較すると筋力,全身耐. 認められなかった。栄養管理に関しては,術後 3 日目か. 久性ともに十分な回復には至っていなかった(表 1)。. ら経腸栄養が開始された。経口摂取は,術後の気管切開. 転院先では 12 日間入院し,リハビリテーションは継続. の影響もあり,嚥下機能が低下していたため,言語聴覚. されていた。転院先からの退院後(入院 90 日,この時. 士介入のもと,術後 50 日目より,ペースト状の嚥下調整. 期には経腸栄養は終了しており,経口摂取のみとなって. 食が開始となった。その後,嚥下機能回復に伴い,食形. いた),当院消化器外科外来通院開始(入院 113 日)に. 態を上げていき,転院時には軟飯や軟菜などの嚥下調整. あわせ,外来での介入として運動指導および栄養指導,.

(3) 食道がん術後患者への月一回外来フォローの有効性. 49. 図 1 CT 画像 術後,肺炎を併発し,転院時には両下側肺野に浸潤影,胸水の貯留を認めたが(中央画像) , 最終評価時には浸潤影,胸水ともに消失していた.. 図 2 自宅の食事調査 3 日分の食事の写真(左図),その内容を記載していただいた(右図).写真は上段から下段にかけて 朝,昼,晩であり,左が 1 日目,中央が 2 日目,右が 3 日目(朝の写真なし)である.. 運動機能評価,自主トレーニング継続の程度について. walk distance;以下,6MD)を測定した。また,歩行. フィードバック(以下,外来フォロー)を開始した(表. 能力の指標として 10 m 歩行時間を評価した。さらに,. 1)。なお,入院中に肺炎を併発しており,転院時には肺. 1 ヵ月間にウォーキングを実施した日のウォーキング時. 実質に変化が生じていた(図 1)。. 間内での歩数の平均値(以下,1 ヵ月の平均歩数)を身.  本症例報告は,治療方法や個人情報の保護に関する十. 体活動量の指標として評価した。. 分な説明を行ったうえで,患者本人から書面にて同意を.  握力,膝伸展筋力,10 m 歩行時間は各 2 回測定し,. 得て実施した。. よい方の値をデータ値として採用した。膝伸展筋力の測. 方   法. 定方法は座位で膝関節屈曲 60˚ に固定し,最大努力下で 等尺性収縮を行った。測定機器には測定機能付自力運動. 1.運動機能評価. 訓 練 装 置( オ ー ジ ー 技 研 社 製, ア イ ソ フ ォ ー ス GT-.  各評価は術前,転院時,外来フォロー開始時,外来. ® 330 )を用いた。. フォロー開始 1 ヵ月,最終評価時に実施した。筋力の評 価として,握力,膝伸展筋力,30 秒間立ち座りテスト (chair standing 30 seconds;以下,CS-30)を実施し,. 2.食事評価  本症例は食道がん術後のため,消化器構造の変化が生. 最大周径も測定した。呼吸機能の評価として,肺活. じ,食事量が減少しやすい特徴がある。そのため,食事. 量(%vital capacity; 以 下,%VC) と 1 秒 率(forced. 面の評価も外来フォロー開始時に実施した。自宅での 3. expiratory volume in 1 second/forced vital capacity;. 日分(朝,昼,晩)の食事の写真を撮影してもらい,そ. 以下,FEV1/FVC)を測定した。全身耐久性の評価と. の内容を大まかに記載してもらった(図 2)。その内容. して,CS-30 と 6 分間歩行試験による歩行距離(6-minute. をもとに,管理栄養士が 1 日の平均摂取エネルギーおよ. 下.

(4) 50. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. びタンパク質を概算した。. 題点であると考えられた。このことが原因となり,身体 活動量の低下を招くことが危惧された。. 3.問題点の整理(外来フォロー開始時点)  術前から外来フォロー開始時までの血液検査,運動機. 4.介入. 能,呼吸機能の変化を表 1 に示す。術前と比較し,転院.  本症例に対して,下肢筋力と全身耐久性を向上させる. 時には膝伸展筋力,CS-30,6MD が著明に低下していた。. ために自宅での運動指導と分岐鎖アミノ酸(Branched-. 外来フォロー開始時には膝伸展筋力,CS-30 で一定の改. Chain Amino Acids;以下,BCAA)の摂取を併用した. 善が認められたが,術前までの改善には至っておらず. 介入を試みた。自宅での運動指導内容は椅子からの立ち. (下肢筋力の低下),6MD は低下したままであった(全. 座りとカーフレイズを各 20 回 3 セットと歩数計を使用. 身耐久性の低下)。呼吸機能検査では外来フォロー開始. したウォーキングである。指導した運動が 3 セット行え. 時に% VC,FEV1/FVC の両方で低下を認め,% VC は. た日と 1 日のウォーキング時間内での合計歩数を毎日記. 80%未満と拘束性換気障害に分類される値まで低下して. 録してもらった。また,運動後にはロイシン含有量を高. いた。また,外来フォロー開始時,患者本人から「動く. めた BCAA(患者個人で購入)を摂取してもらった。. ことが億劫だ」と訴えがあり,身体活動量低下のリスク. なお,タンパク質摂取量を増やすにあたり,腎機能(ク. が高いと予想された。. レアチニン;以下,CRE)に問題がないことを確認し.  食事面の評価において,摂取エネルギー量は 1,756 ±. た(表 1) 。. 213 kcal,摂取タンパク質量は 58 ± 7.3 g であった。日.  月一回の当院消化器外科外来通院に合わせて,外来. 本人の基礎エネルギー消費量の平均値である 25 kcal/. フォローを開始した。外来フォローの内容を以下に述べ. kg/ 日を用いて. 10). 本症例の基礎エネルギー消費量を算. る。外来フォロー日に運動機能評価を実施し,その評価. 出 す る と 1,450 kcal(25 kcal/kg × 58 kg) と な っ た。. 結果を術直後と比較し,どの程度改善しているか,また. これに活動係数とストレス係数を掛けて,本症例の 1 日. 術前の値と比較し,現在の状態を説明した。さらに,運. の必要エネルギー量を算出した。活動係数は自宅外にて. 動指導によって患者が自宅で実施した運動の記録(1 ヵ. 歩行を行っているため 1.3 とし,炎症反応が基準範囲内. 月の平均歩数および自主トレーニング継続の程度)を提. であるため,ストレス係数は 1.0 とすると 1 日の必要エ. 示してもらい,今後の継続可能な運動目標などを患者へ. ネルギー量は 1,885 kcal であった。. フィードバックした。.  必要エネルギーは計算上 100 kcal 程度不足していた.  外来フォロー開始 1 ヵ月(141 日目)∼ 6 ヵ月(295 日. が,体重は転院時から著変なく経過していたため,適切. 目)までの各月の平均歩数の差を検討するために,統計. なエネルギー量は摂取できていたと考えられた。しかし,. 学的解析には IBM SPSS Statistics Ver.23(IBM SPSS. 効率的な筋タンパク合成反応を促すためには 1 日あたり. Statistics Inc., Tokyo, Japan)を用い,反復測定分散分. 1.2 g/kg 程度のタンパク質摂取が推奨されており. 10). ,. 本症例の必要量としては 70 g であり,タンパク質摂取 量が不足していた。  術前,外来フォロー開始,外来フォロー開始 1 ヵ月時. 析を行った。多重比較検定には Bonferroni 法を用い, 有意水準はいずれも 5%とした。 結   果. 点での各血液検査の結果において,血清アルブミン値.  外来フォローによる介入後の運動機能,血液検査,呼. (以下,ALB)はいずれも基準範囲を下回る値で推移し. 吸機能検査の結果を経過とともに表 1 に示す。外来フォ. ていた(表 1)。ALB 低下の要因としては,低栄養状態. ロー開始時から最終評価時の変化として,膝伸展筋力は. である以外にタンパク質を代謝する肝臓の機能が低下し. 右 26.0/ 左 22.3 kg から右 32.4/ 左 30.4 kg まで改善し,. ている場合と,身体の炎症反応を抑えるためにタンパク. 術 前 よ り も 増 加 し て い た。CS-30 は 10 回 か ら 12 回,. 質が代謝されている場合が挙げられる。そのため,肝機. 6MD は 240 m から 315 m まで改善した。握力は両側と. 能 の 指 標 で あ る ア ラ ニ ン ア ミ ノ 基 転 移 酵 素( 以 下,. もほぼ 3 kg 増加し,下. ALT)と炎症反応の指標である C 反応性タンパク(以. れなかった。10 m 歩行時間は 11.6 秒から 9.7 秒まで短. 下,CRP)の値も同時に経過観察した。しかしながら,. 縮した。血液検査の結果に関しては,ALB は外来フォ. ALT,CRP ともに基準範囲内を推移していたことから,. ロー開始時の 3.3 g/dL から 4.1 g/dL と基準範囲内まで. これらの要因の ALB 低下に対する影響は小さく,タン. 改善しており,ALT の軽度上昇が認められたが,CRP,. パク質摂取量の不足が主たる要因であると解釈した。. CRE はともに問題なく経過していた。.  以上のことから,日常的なタンパク質の摂取量不足に.  呼吸機能は% VC が 57.9%から 65.9%,FEV1/FVC. より,骨格筋の合成が不十分となり,下肢筋力および全. は 88.3%から 95.6%まで改善したが,% VC は 80%未. 身耐久性の低下を招いていたことが本症例の根本的な問. 満であり,依然として拘束性換気障害に分類される結果. 周径には大きな変化は認めら.

(5) 食道がん術後患者への月一回外来フォローの有効性. 51. 図 3 自主トレーニングおよびウォーキング実施率と身体活動量の推移 * p <0.001. であった。転院時に認められた下側肺の浸潤影に関して. 施し,1 ヵ月の平均歩数と自主トレーニング継続の程度. は,最終評価時には改善していた(図 1) 。. をフィードバックした。その結果,ALB,下肢筋力,.  自主トレーニング実施率とウォーキング実施率,身体. 全身耐久性の低下が改善し,身体活動量を有意に増加す. 活動量の推移を図 3 に示す。自主トレーニング実施率は,. ることができた。また,「自分で動いてみようという気. 外来フォロー開始 1 ヵ月では 28%であったが,外来フォ. 持ちになった」といった発言を本人から引き出すことが. ロー開始 2 ヵ月では 85%まで増加し,その後 6 ヵ月ま. できた。. で維持されていた。身体活動量に関しては,外来フォ.  本症例は外来フォロー開始時「動くことが億劫であ. ロー開始 1 ヵ月の平均歩数は 1,392 ± 810 歩であったが,. る」との発言があり,部屋から出ることが少なかったこ. 外来フォロー開始 2 ヵ月では 4,042 ± 1,417 歩まで増加. とから,身体活動量の低下がもっとも危惧された。本症. しており,統計学的に有意な増加が認められた(F (5,130). 例において,身体活動量をいかに向上させるかが重要な. = 20.92, p < 0.001) 。また,最終評価時の平均歩数は. 課題であった。朴ら. 3,547 ± 1,022 歩であり,多重比較検定の結果,外来フォ. 道切除術後患者は,身体機能が術前と近い値まで回復し. ロー開始 1 ヵ月と比較して,2 ヵ月以降のすべての月で. ているにもかかわらず,身体活動量は術前よりも有意に. 身体活動量の有意な増加が認められた(p < 0.001)。し. 低い状態であったとされている。この報告から,退院後. かしながら,2 ヵ月以降の各月間では平均歩数に有意差. に外来フォローが実施されない場合は,身体機能の向上. を認めなかったことから,外来フォロー開始 2 ヵ月で増. が身体活動量の増加に直接的につながらないことが推察. 加した身体活動量は 6 ヵ月後まで維持されたといえる。. される。しかしながら,本症例では外来フォロー開始 1 ヵ. 自覚的なものとしては,外来フォロー開始時点での「動. 月の平均歩数が 1,392 歩であった身体活動量を,多い月. くことが億劫だ」という訴えが,外来フォロー開始 3 ヵ. で 4,042 歩まで増加させ,最終評価時には 3,547 歩と外来. 月の時点では「自分で動いてみようという気持ちになっ. フォロー開始 1 ヵ月の平均歩数を下回ることなく維持す. た」という訴えに変わった。また,妻からも「促さなく. ることができた。Yamada ら. ても自分から動くようになった」という発言が得られ. 行動変容プログラムにより 1 日の平均歩数,運動機能,. た。なお,外来フォロー開始から最終評価までの間で,. 下肢筋量において有意な改善が認められたと報告してお. 食事摂取量に著変はなく,運動指導による運動以外での. り,行動変容において歩数計を使用することの有用性を. 活動量の増加や生活範囲の拡大もなかった。. 示唆している。この報告をもとに,本症例に対して歩数. 考   察. 11). の報告では,退院 1 ヵ月後の食. 12). は,歩数計を使用した. 計を使用したウォーキングを指導し,その歩数と自主ト レーニングの実施回数とを併せてフィードバックした。.  本症例は食道がん術後に筋力および呼吸機能,全身耐. さらに,運動機能の術前値と各外来フォロー時点での運. 久性の低下を呈した患者であって,さらに退院後の生活. 動機能の推移もフィードバックをし,自己の低下した身. においては動く意欲も低下しており,身体活動量が低下. 体能力を客観的に把握してもらい,運動量を増加および. していた。この症例に対し,月一回の当院消化器外科外. 維持できるように指導した。外来フォロー開始 1 ヵ月で. 来通院に合わせ,栄養補助を組み合わせた運動指導を実. の低い自主トレーニング実施率は,術後の運動機能低下.

(6) 52. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. による運動意欲の低下が主要因であったと考えられるが,. の呼吸機能は,% VC が 80%未満であり,拘束性換気. 前述のフィードバックにより本症例に具体的な行動目標. 障害に分類される値であった。呼吸機能を改善できな. ができ,行動変容が生じることで,外来 2 ヵ月以降の自. かった原因として,手術による侵襲や術後人工呼吸器の. 主トレーニングを含めた身体活動量を増加,維持できた. 管理下にあったことからも胸郭可動性低下や呼吸筋力低. と考えられる。このことは,月一回の頻度での外来フォ. 下が考えられるが,今回は詳細な評価および介入は実施. ローであっても,適切な運動指導と栄養指導に加えて,. していなかった。胸郭可動性や呼吸筋力にも介入するこ. 1 ヵ月の平均歩数や自主トレーニング実施日数をフィー. とで肺換気量が増加し,全身耐久性のさらなる改善につ. ドバックすることにより,運動機能の向上とともに,身. なげられた可能性がある。. 体活動量を増加し,維持できることを示唆している。.  本症例報告は,自宅での日常生活まで評価できなかっ.  本症例に対する運動指導としては,椅子からの立ち座. たことにより,総合的な身体活動量が正確に測定されて. り,カーフレイズといった低負荷でのトレーニングと歩. いない点が不十分であった。身体活動量の一般的な評価. 数計を使用したウォーキングの指導を行った。結果とし. 方法としては,加速度計を用いる方法. て, 膝 伸 展 筋 力 は 右 26.0/ 左 22.3 kg か ら 右 32.4/ 左. による自宅での運動レベルの調査から算出した METs・. 30.4 kg まで改善した。筋力の改善とともに,全身耐久. h/week で評価する方法. 性 の 指 標 と し て 用 い た CS-30 で は 10 回 か ら 12 回,. ながら,当院には加速度計がないため,加速度計による. 6MD では 240 m から 315 m へと改善を示した。これら. 評価は実施できなかった。また,本症例は高齢であり,. の筋力や全身耐久性の改善により,1 ヵ月の平均歩数と. 外出する機会が限られており,自宅外での活動は運動指. しても 1,392 歩から最終評価時には 3,547 歩まで増加し,. 導によるウォーキングが主であった。そのため,質問紙. 身体活動量を有意に増加できたと考えられる。高齢者に. による運動レベルの調査では本症例の活動量の変化を評. おいても筋力トレーニングにより筋力や筋量が増加する. 価することは困難であると判断した。そこで,歩数計を. ことは知られているが,これは 1RM の 60 ∼ 80%(高. 身体活動量の評価に用いている報告. 13). 6)8)25). 11)23)24). ,質問紙. が挙げられる。しかし. 12)26). もあることか. であ. ら,本症例では歩数計を用いて身体活動量の変化を評価. によると,低負荷(30%. した。自宅での日常生活までの詳細な評価はできなかっ. 1RM)でのトレーニングで筋量および筋力を増加でき. たが,介入中,生活活動範囲に変化がなかったことを考. たと報告されており,高齢者における低負荷トレーニン. えると,本症例の総合的な身体活動量は,自宅での日常. グでの筋力増強効果の可能性が示唆されている。また,. 生活の活動量に自主トレーニングによる運動量を付加し. 強度)で筋力トレーニングを行った場合の報告 る。しかし,Watanabe ら. Yamada ら. 12). 14). の報告からも低活動高齢者に対して,歩. た活動量であったと推察される。このため,外来フォ. 数を増やすことで骨格筋量を増加できる可能性がある。. ローでの介入を継続したことで 1 ヵ月あたりの身体活動. これらのことから,本症例においても同様に,低負荷ト. 量の低下を直接的に予防できたのではないかと考えら. レーニングによって筋力増強が起こったと考えられる。. れる。.  先行研究では,栄養補助を付加した方が筋力トレーニ ング単独よりも筋力と筋量の増加に効果があると報告さ 15‒18). ま と め. 。また,若年者では経口摂取からの少な.  今回,食道がん術後の症例に対して,自宅での身体活. いタンパク質摂取でも筋タンパク合成反応は促される. 動量の向上を目的とした外来フォローを経験した。本症. が,高齢になるとこの反応に抵抗性が生じるため,高齢. 例では,月一回の介入頻度であっても,運動と栄養に関. 者の筋タンパク合成を促すにはタンパク質摂取量を増や. する指導と自主トレーニングの継続過程のフィードバッ. れている. 19)20). 。さらに,タンパク質. クを組み合わせて行うことで,運動機能が改善し,身体. の中でも必須アミノ酸のロイシンが筋タンパク合成を促. 活動量の増加を図ることができた。今後,がん医療が外. す必要があるとされている. 20). 。本症例にお. 来へとシフトしていく現状においては,本症例報告はが. いても,ロイシンの割合を高めた BCAA(タンパク質. んのリハビリテーションにおける非常に有用な情報にな. 10 g)を栄養補助として摂取することでタンパク質摂取. り得ると考える。. すために重要であると指摘されている. 量を計算上必要である 70 g 近くまで高められたと考え る。その結果,ALB が正常範囲内まで改善し,筋力の 改善につながったと考えられる。.  開示すべき利益相反はない。.  全身耐久性に関しては,下肢筋力が術前よりも改善し ているにもかかわらず,術前までの改善には至らなかっ た。全身耐久性は下肢筋量と相関がある 呼吸機能とも相関がある. 22). 利益相反. 21). だけでなく,. と報告されている。本症例. 文  献 1)三浦美奈子,井上智子:3 領域リンパ節郭清を伴う食道切 除再建術を受けた食道がん患者の食の再獲得の困難と看護.

(7) 食道がん術後患者への月一回外来フォローの有効性 支援の検討.日がん看会誌.2007; 21: 14‒22. 2)藤崎安明,田代亜彦,他:外科侵襲下の高カロリー輸液 (TPN)におけるエネルギー及びアミノ酸至適投与量の検 討.日外会誌.1992; 93: 119‒132. 3)森 恵子,秋元典子:食道がんのために食道切除術を受け た患者が抱える生活上の困難と対処に関する研究.岡山大 保健紀.2005; 16: 39‒48. 4)中村美鈴,城戸良弘:上部消化管がん患者が手術後の生 活で困っている内容とその支援.自治医大看紀.2005; 3: 19‒31. 5)Rogers LQ, Hopkins-Price P, et al.: A randomized trial to increase physical activity in breast cancer survivors. Med Sci Sports Exerc. 2009; 41: 935‒946. 6)Meyerhardt JA, Giovannucci EL, et al.: Physical activity and survival after colorectal cancer diagnosis. J Clin Oncol. 2006; 24: 3527‒3534. 7)Thorsen L, Courneya KS, et al.: A systematic review of physical activity in prostate cancer survivors: outcomes, prevalence, and determinants. Support Care Cancer. 2008; 16: 987‒997. 8)Wang L, Wang C, et al.: Impacts of physically active and under-activeon clinical outcomes of esophageal cancer patients undergoing esophagectomy. Am J Cancer Res. 2016; 6: 1572‒1581. 9)  哲也:がんリハビリテーション最前線.理学療法学. 2015; 42: 352‒359. 10)小坂鎮太郎,若林秀隆:栄養療法の進め方・考え方.日本 医事新報.2016; 4786: 40‒47. 11)朴 文華,立松典篤,他:食道切除術後患者の退院後の 身体活動量および身体機能の変化.理学療法学.2013; 40: 120‒121. 12)Yamada M, Mori S, et al.: Pedometer-based behavioral change program can improve dependency in sedentary older adults: A randomized controlled trial. J Frailty Aging. 2012; 1: 39‒44. 13)Stewart VH, Saunders DH, et al.: Responsiveness of muscle size and strength to physical training in very elderly people: A systematic review. Scand J Med Sci Sports. 2014; 24: 1‒10. 14)Watanabe Y, Madarame H, et al.: Effect of very lowintensity resistance training with slow movement on muscle size and strength in healthy older adults. Clin Physiol Funct Imaging. 2014; 34: 463‒470. 15)Yamada M, Arai H, et al.: Nutritional supplementation. 53. during resistance training improved skeletal muscle mass in community-dwelling frail older adults. J Frailty Aging. 2012; 1: 64‒70. 16)Dreyer HC, Drummond MJ, et al.: Leucine-enriched essential amino acid and carbohydrate ingestion following resistance exercise enhances mTOR signaling and protein synthesis in human muscle. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008; 294: 392‒400. 17)Biolo G, Tipton KD, et al.: An abundant supply of amino acids enhances the metabolic effect of exercise on muscle protein. Am J Physiol. 1997; 273: 122‒129. 18)Kim HK, Suzuki T, et al.: Effects of exercise and amino acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women: A randomized controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2012; 60: 16‒23. 19)Houston DK, Nicklas BJ, et al.: Dietary protein intake is associated with lean mass change in older, communitydwelling adults: the Health, Aging, and Body Composition (Health ABC) Study. Am J Clin Nutr. 2008; 87: 150‒155. 20)Katsanos CS, Kobayashi H, et al.: A high proportion of leucine is required for optimal stimulation of the rate of muscle protein synthesis by essential amino acids in the elderly. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2006; 291: 381‒387. 21)Sanada K, Midorikawa T, et al.: Development of nonexercise prediction models of maximal oxygen uptake in healthy Japanese young men. Eur J Appl Physiol. 2007; 99: 143‒148. 22)Sugihara H, Ohta K, et al.: Relationship between Respiratory Muscle Strength and Exercise Tolerance. J Phys Ther Sci. 2009; 21: 393‒397. 23)川越厚良,清川憲考,他:安定期高齢 COPD 患者の日常 生活における身体活動量の生活活動計による定量評価.理 学療法学.2011; 38: 497‒504. 24)眞鍋克博,前園 徹,他:生活活動計による高齢片麻痺 者の身体活動時間計測の妥当性.理学療法科学.2013; 28: 477‒480. 25)Holick CN, Newcomb PA, et al.: Physical Activity and Survival after Diagnosis of Invasive Breast Cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2008; 17: 379‒386. 26)野添匡史,北村友花,他:急性期理学療法実施期間におけ る軽症脳梗塞患者の身体活動量とその特徴.理学療法学. 2016; 43: 164‒165..

(8)

参照

関連したドキュメント

 CKD 患者のエネルギー必要量は 常人と同程度でよく,年齢,性別,身体活動度により概ね 25~35kcal kg 体重

patient with apraxia of speech -A preliminary case report-, Annual Bulletin, RILP, Univ.. J.: Apraxia of speech in patients with Broca's aphasia ; A

Eskandani, “Stability of a mixed additive and cubic functional equation in quasi- Banach spaces,” Journal of Mathematical Analysis and Applications, vol.. Eshaghi Gordji, “Stability

We show that a discrete fixed point theorem of Eilenberg is equivalent to the restriction of the contraction principle to the class of non-Archimedean bounded metric spaces.. We

「A 生活を支えるための感染対策」とその下の「チェックテスト」が一つのセットになってい ます。まず、「

今回の SSLRT において、1 日目の授業を受けた受講者が日常生活でゲートキーパーの役割を実

(新) 外来感染対策向上加算 6点

   がんを体験した人が、京都で共に息し、意 気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美