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それは 勤労 倹約 分度 ( 身の丈で生きる ) 推譲 ( 成功は人に譲る ) など 出口なおは これらを本当に大事にした人です ところが 結局破産してしまい 周囲から軽蔑の対象とされてしまうのです 一生懸命 真面目に生きてきたのに ちゃんと働かないからだ 贅沢したからだ 身の丈でないからだと責め立

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Academic year: 2021

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【井手英策】ベーシックインカムより適切な再分配のカタチ

2017/1/30 各分野の第一人者が集まり、成熟化社会において目指すべき社会ヴィジョンとそれを実現 するための新しい方法論について、骨太な提言をする「日本構想フォーラム」。幹事は NewsPicks でもおなじみの波頭亮氏が務めている。今回は財政社会学者の井手英策氏によ る「分断社会を終わらせる 『だれかが受益者』から『だれもが受益者』へ」と題するキー ノートスピーチおよび座談会の模様を収録。前回のベーシックインカム導入議論もふまえ、 よりよい再配分、格差是正の方法についての意見を語る──。 【対談参加者】 波頭亮(評論家、日本構想フォーラム幹事) 山崎元(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員) 上杉隆(元ジャーナリスト、NO BORDER 代表取締役) 島田雅彦(小説家) 西川伸一(AASJ 代表理事、JT 生命誌研究館顧問) 茂木健一郎(脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員) 経済の失敗が道徳の失敗となる 井手 本日のテーマは「分断社会を終わらせる」です。 だれかが受益者から、だれもが受益者になる。そのように、日本社会の原風景を塗り替える ことはできるのか。 では、日本の原風景とは何でしょうか。 安丸良夫さんという歴史家が『出口なお』(明治初期の宗教家)という本を出しています。 非常に面白い本です。彼が強調したのは、「通俗道徳」と呼ばれるものです。

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それは、勤労、倹約、分度(身の丈で生きる)、推譲(成功は人に譲る)など。出口なおは、 これらを本当に大事にした人です。 ところが、結局破産してしまい、周囲から軽蔑の対象とされてしまうのです。 一生懸命、真面目に生きてきたのに、ちゃんと働かないからだ、贅沢したからだ、身の丈で ないからだと責め立てられ、とうとう出口なおは、追い詰められてしまった。 しかし、このとき、神がかりと言われるのですが、彼女は次のように言いました。 「外国は獣類の世、強いもの勝ちの悪魔ばかりの国であるぞよ。日本も獣の世になりている ぞよ……神が表に現はれて、三千世界の立替えなおしを致すぞよ」。 そう言って、彼女は大本の教祖になっていったのです。 出口なおが生きたのは、江戸末期から明治初期の社会の混乱期です。既存の価値がすべて覆 る時代ですが、そのとき、今の時代と同じような現象が起きていたのです。 つまり、勤勉、勤労、倹約を強いられ、それに従って生きたのに、道徳的失敗者として人々 から罵られる、あるいは罵る。真面目に生きてきて苦労をしている人はいまも大勢いるでし ょう。しかし、その人たちに寛容な社会とはいい難い。 日本社会の前提には「勤労」なるものがあります。そして、その勤労を義務として憲法に書 いている国はほとんどありません。 憲法で勤労の義務がある日本では、勤労し、節約し、貯蓄をして、生きていく「自己責任」 が基本です。だから、失敗した人に対し、助けてあげましょう、ではなく、責任を果たせな かった道徳的失敗者として罵ることになりがちです。 この傾向が最近ひときわ強まっていると感じています。

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井手英策(いで・えいさく) 財政社会学者。慶應義塾大学経済学部教授。1972 年、福岡県生まれ。東京大学卒業、同大 学院博士課程単位取得退学。日本銀行金融研究所勤務などを経て現職。朝日新聞論壇委員な どを歴任。著書に『日本財政 転換の指針』(岩波新書)、『経済の時代の終焉』(岩波書店、 大佛次郎論壇賞)、『分断社会ニッポン』(佐藤優、前原誠司との共著、朝日新書)など。 日本は自己責任の勤労、貯蓄国家 では、本題に入り、日本の社会保障の現状を見てみます。最初に日本の社会保障は、どの世 代に向かっているのかです。 日本は高齢者向けの社会保障給付の割合は、先進国でトップクラスです。高齢化率がトップ なので当然です。注目すべきは、現役世代です。 主要先進国34 カ国中、現役世代への給付割合はトルコに次いで少ないのです。私はここか ら、日本を勤労国家と呼んでいます。 勤労国家は、勤労をして、所得を稼ぎ、貯蓄をし、子どもを学校に通わせ、家を買い、老後 と病気に備えると、すべて貯蓄で賄う。ですから、若い現役世代への保障はとても貧弱です。 自己責任という言葉を頻繁にみかけますが、そもそも日本ほど自己責任が徹底している国 はないと思います。その前提にあるのが勤労、そして貯蓄なのです。 次に世帯所得の分布を見ると、ドラマティックな動きがわかります。世帯所得は1996 年と 2013 年を比べると、一貫して下落し、2 割ほど減っています。 96 年と比べた理由は、日本の世帯収入のピークが 96 年だったからです。2 割とは、この 20 年間で貯蓄を約 1500 万円失った額に相当します。子どもを高校と大学に通わせると、約 900 万円、地方から家賃の仕送も含めると、だいたい 1500 万円かかります。 すると、なぜ少子化なのかはっきりします。「子ども1 人分の教育費も払えないほど家計が 貧乏になった」からです。 所得層別の分布を見ると、この20 年で、年収 400 万円から上の層が明らかに減っているこ とがわかります。そして、多くの人たちが低所得層に入ってきています。 世帯年収300 万円から 800 万円を中間層と呼びます。よく中間層が薄れたと言われますが、 データを見ると、見事に中間層の多くが低所得者層の仲間入りをしたことがわかります。 次に貯蓄です。家計の貯蓄率は長い間プラスで、先進国最高のレベルでした。 これが1990 年代の中頃からグッと落ち、現在はゼロ近くまで落ちています。そして直近で は、なんとマイナスになってしまった。 つまり、貯蓄しないと生きていけない社会なのに、貯金ができない。われわれの閉塞感や未 来への不安の正体がよくわかると思います。 繰り返し言います。子どもを学校に通わせる、家を買う、老後の備え、病気の備えと、すべ て貯金で賄ってきたのに、貯金ができない社会になったのです。 一方、長い間、借金を抱えていたけど、97〜98 年に貯蓄超過となり、プラスを続ける主体

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がいます。これが何かというと、金融機関を除く企業です。 事実は明白です。 人件費を削り、働き手は貯金ができず貧乏になり、企業は浮いたカネで貯金をする。マクロ の借金と貯蓄の主体の関係がものの見事に逆転したのです。 ちなみに、この主体が入れ替わった時期に、何が起きたか。男性の自殺者が増えました。女 性と高齢者は増えていません。増えたのは30〜50 代の男性です。それほど私たちの社会で は、勤労して蓄えることが重要なことなのです。 また、97 年から 98 年を境に非正規社員も増えます。 この97 年から 98 年は、あらゆるデータが劇的に変わり、日本社会の転換点だったと言え るでしょう。アジア通貨危機が起き、山一證券、北海道拓殖銀行が破綻、消費増税が実施さ れました。 このタイミングで、日本の社会、経済、政治が劇的に変わった。ここが重要な点です。 国民貯蓄は減、企業貯蓄は増 では、次に格差の話に移ります。貯蓄ができなくなり、みんなが貧しくなる中で、日本人は どう変化したのか。 かつての日本は北欧と並び平等主義国家と知られていました。 ところが今、貧しい人に給付をし、格差を小さくする財政の力は調査対象の先進諸国中 (OECD 加盟 21 カ国中)ビリから3番目です。また、お金持ちに税金をかけ、格差を小さく

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する力はビリです。 少なくとも、困っている人を助ける意思を持つ国家が作る財政ではありません。みすぼらし い財政だと思います。 一方、アメリカは日本と同様、給付面で格差を是正する気はないものの、税ではきちんと格 差を是正しています。金持ちへはちゃんと税をかけましょうという哲学を持っています。 貧しい人への給付、金持ちへの税金と、両方とも少ないのは日本と韓国です。韓国もおそら く憲法の中に勤労を定めています。 だから、日本と似ているのかもしれません(編集部注※韓国の国民の 4 大義務は納税・国 防・教育・勤労とされている)。 格差が大きくなると、ジニ係数(格差を測る指標。ゼロに近づくほど平等となる)も大きく なります。それが今、OECD34 カ国中で 9 番目に高い。 相対的貧困率(全所得額の中間の所得額の半分以下の人の割合)では34 カ国中 6 番目に高 い。ひとり親家庭(主に母子家庭)の貧困率は1 番目です。 そして、母子家庭の母親の就労率も1 番です。つまり、シングル女性は生活保護をもらわず 健気に働いているのにもかかわらず、貧困率は1 番。 客観的に見て、中間層が低所得層入りし、格差も拡大した。これはもう明確な事実です。で は、このことに当の日本人は気づいているのか。 ISSP(国際比較調査グループ)のデータでは、「自分の所得は平均以下である」という質問 に対し、「そうである」と答える人の比率は先進41 カ国中 12 番目に多くなっています。 また、「育った家庭よりも地位が下がった」という質問に対し「そうだ」と答えた人は41 カ 国中8 位でした。 そして、「父親よりも低い職業になってしまった」に対して「そうだ」と答えた人は41 カ国 中1 位です。ちなみに、お金持ちが増えると、平均値は上がります。平均以下の日本人が今 は6 割います。その意味で、それらしい答えが出ています。 貧しくても不平等ではない? 面白いのはここからです。 「あなたはどの所得階層に属していますか」と日本人に聞くと、「中の下」と答える人の割 合が38 カ国中 1 位。対して「下の上」と答える人の割合は 29 位です。おかしいですよね。 先ほど見たように、中間層は明らかに低所得層に入ったはずだから。 つまり、みんな自分は「下の上」ではなく、「中の下」と認識するのです。ここが、鍵とな る極めて重要な洞察です。 つまり、人々は「不平等な社会だ」とは、あまり思っていないわけです。 左派の人たちは「弱者救済、格差是正」と、当たり前のように言います。リベラルな野党は、 中間層と貧困層を分ける分断線を引き、分断線以下の人を助けますと言います。 この気持ちはわかるし、正しい。平均所得以下が6 割、非正規社員が 4 割、年収 200 万円

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以下が1000 万人超もいるのですから。だから、分断線を引いて困った人を助けますという 戦術は正しい。 しかし、確かに分断線以下だけれども、分断線あたりにいる多くの人が自分たちは中間層だ と思っている。 格差は大きいと思わない人たちが多い社会に対して、「格差是正」というメッセージは果た して届くのでしょうか。 *続きは明日掲載します。 (構成:栗原昇、撮影:鈴木愛子)

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