• 検索結果がありません。

石油留分の膜による高度分離技術の開発研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "石油留分の膜による高度分離技術の開発研究"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2000.国際 3

石油留分の膜による高度分離技術の開発研究

石油留分の膜による高度分離技術の開発研究

石油留分の膜による高度分離技術の開発研究

石油留分の膜による高度分離技術の開発研究

       柳橋研究室  小野修一郎 金子紀男  酒井五十治 佐藤圭祐        〇須磨靖徳  松田正治 甲斐照彦  王 宏遠    刑部潤 杉山昇   大豆生田一夫        茨木研究室 〇池田健一  戸沢修美  前田政利  島津彰       宮崎司   蜂須賀久雄 品川雅一        大津研究室 〇房岡良成  村上睦夫  石崎利之  植手貴夫 佐々木崇夫 1.試験研究の内容 1.1 目的  原油輸入国として供給安定化のため産油国と友好関係を強化することは重要なことである。 この方策の一つとして、技術開発の立場から連携を図るため石油精製プロセスに適用できる先 端的な石油分離膜技術を研究開発することは意義がある。 石油精製プロセスの分離技術は蒸留法が主体であり、多くの熱エネルギーを消費しているの が現状である。膜分離法は特に加熱を必要としないので、蒸留工程を代替えできれば、省エネ ルギー、低環境負荷、低コスト化に大きく貢献することが期待できる。 石油系混合液を膜で分離する場合、分離効率、透過速度、膜の耐油性、耐熱性など解決すべ き課題があり、石油留分の分離工程に経済的に適用できる技術は世界的にまだ開発されていな い。 現在、開発開始から7年が経過して膜の基礎的研究が進み有望なフッ素系ポリイミド膜、ポ リフェニレンスルホン膜、ポリイミド/シリカ複合膜が見出された。石油留分の分離対象系と して芳香族/飽和炭化水素、オレフィン/パラフィンが有望であることがわかってきた。また、 本分離は新しい分野であり、透過試験法など研究者により異なるため標準化を進めている。ま た、全体スケジュールを図1に示す。 本年度は膜の新規評価法検討、新規膜の評価、プロパン/プロピレン分離用ポリイミド膜の実 用化の為の連続運転用ミニスパイラルエレメントによる連続運転試験、経済性シミユレーショ ンの検討、ベンゼンに親和性を有する PPSO 複合中空糸膜の検討を行ったので報告する。 1.2 研究体制  石油精製・利用技術国際共同研究事業の一環として、(財)石油産業活性化センターに分離膜 ワーキンググループを設置して、調査研究(委託研究)と開発研究(参加研究)に分けて進め ている(図1)。 調査研究は大学、国立研究所、民間企業の委員で構成された分離膜専門委員会で審議しなが ら基礎的な膜探索と調査を行った。開発研究は柳橋研究室((財)化学技術戦略推進機構)、大 津研究室(東レ(株))、茨木研究室(日東電工(株))の3社で実施した。 本報告は開発研究の成果を中心に述べ、基礎研究は概要のみとする。

(2)

開 発 項 目 年 度 5 6 7 8 9 10 11 12 1. 膜研究開発 2. 製膜技術の開発 3. 膜分離プロセス・システム の検討 4. 調査研究               図1.石油留分の膜による高度分離技術の開発の全体計画                      図2.石油留分の膜による高度分離技術の開発体制                (PEC) 研究開発小委員会 国際共同研究ワーキンググループ(国際協力部) (参加開発研究)  PEC柳橋研究室(JCII)  PEC茨木研究室(日東電工)  PEC大津研究室(東レ)     (委託調査研究)     分離膜専門委員会(JCII) 基礎研究(大学、国研) 技術調査 (JCII)

(3)

2.試験研究の結果と解析 2.1 開発研究(参加研究) 2.1.1 石油精製分離膜の性能評価法の開発(PEC 柳橋研究室)  昨年度に引続き、分離膜の物理・化学構造の評価技術の開発、分離膜の分離性能評価法の開 発、新規分離膜の試作と評価法の開発、分離膜性能評価法の精度向上に関する検討を行った。 分離膜の物理・化学構造の評価技術の開発ではジアミン成分の異なる5種類(表1)の6FDA-フエニレンジアミン系ポリイミド膜のプロパン/プロピレンの分離挙動が陽電子消滅法による

解析より求めた分子間自由体積空孔の大きさに対応するτ3(O-PS Life time)と良い直線間系

を示し(図3)、MELT 4.0プログラムより求めたτ3の確率密度関数分布より、膜の透過及び分

離特性はポリイミドの自由体積空孔構造から推定出来る事を明らかにした。

分離膜の分離性能評価法の開発では 6FDA-TrMPD, 6FDA-BAAF, DSDA-DDBT の3種のポリイミド

膜のガス収着・脱着挙動を調べ、 C2-C3ガスは Fick 型拡散を示すが、C4ガス及びベンゼン、ヘ キサンなどの C6分子は非 Fick 型拡散をす事を示した(表2)。また、6FDA-BAAF でプロパン/ プロピレン/n-ブタン3成分混合ガスの分離性能を評価した。プロパン、プロピレンの透過係数 は両者とも大きくなるが、その分離係数はプロパン/プロピレン2成分混合系より若干小さくな る事が明らかとなったが、これは n-ブタンによる膜の可塑化により拡散係数が大きくなり拡散 選択性が小さくなったためと推定した。2元収着モデルにより計算した分離係数は若干小さい が実験値に近い値を示した(図4)。 新規分離膜の試作と評価法の開発を行った。先ず、シリカ/アルミナ比が 5.5 と 200 の Y 型ゼ オライトとポリスルホン複合膜を用いてゼオライトのガス透過性能を推察する評価法を検討し、 ゼオライト含有率によるプロパン透過係数は、Hennepe の式に合わせることで予測出来る事を 示した。また優れた性能を示すポリイミド膜に見られる膜の可塑化、膨潤挙動を調べる為に図 5に示す装置を試作し、6FDA-TmPD 中空糸膜の膨潤・収縮挙動を調べた。特に、プロピレン,プ ロパンなどのガスによる膨潤は圧力と共に増加し、ガラス状高分子膜の2元収着モデルに類似 した挙動を示し、また膜片面からガスを透過させた時は両面接触の時よりも膨潤度が小さく、 この傾向は膜へのガスの収着量に依存しているものと考えられた(図6)。同時にポリイミド中 空糸膜を焼成して膨潤の起こりにくい炭素膜の評価も進めた。次に、膜膨潤の起こりにくいプ ラズマグラフトフイリング重合法による有機/無機複合膜として、多孔質ガラス(SPG)にオク タデシルジメチルクロロシラン(ODS)をシランカツプリング剤として用い、プラズマグラフト重 合法でメチルアクリレートを SPG 細孔内に重合して得た膜の 50℃クロロホルム/ヘキサンの PV,VP 分離実験を行った結果,高濃度領域でも高い分離係数を維持出来る事が示された(図7)。 また、昨年に引き続き PEO 含量の異なる2種類の PEO-PI-1(PEO 含量 54.4%),PEO-PI-2(PEO 含量 60.0%)を合成してベンゼン/ヘキサン or シクロヘキサン,メタノール/MTBE の PV 分離評価を行 った。PEO-PI-2 は優れたメタノール/MTBE 分離性能を示し、また PEO-PI-1 は代表的なゴム状高 分子 PU/PHMA 膜と比べて優れたベンゼン/シクロヘキサン分離を示した(表3)。

供給ガス流通式の自動透過率測定装置を用い性能評価法の精度向上に関する検討を行つた。 高い透過性能を持つシリコンゴム膜に対するプロピレン/窒素(50/50)混合ガスの膜表面流速と 分離・透過性能を評価した結果、流速が境膜抵抗に影響する事が明らかとなり、評価セルの設 計が大切であるとの示唆を得た(図8,9)。

(4)

       表1 使用したモノマーの分子構造

(5)

      表2 Absorption and desorption kinetics of hydrocarbons in polyimide membranes at 760torr and 303K for gases         and at activity of 0.5 and 303K or 333K for vapors

        図4 PC3H6 and PC3H8 for single and mixed gas permeation in

6FDA-BAAF membrane at 303K(The solid and dotted lines were calculated from the dual-mode sorption model)

      図5 改良型膨潤度評価装置の概略 0 5E-11 1E-10 1.5E-10 2E-10 0 0.5 1 1.5 2

Partial presure (atm)

PC3H6 (cc.cm /cm 2.s.cmHg) 0 5E-12 1E-11 1.5E-11 2E-11 2.5E-11 3E-11 P C3H8 (cc.cm/cm 2.s.cmHg)

PC3H6 for single gas PC3H6 for C3H6/C3H8

PC3H6 for C3H6/C3H8/n-C4H10 PC3H8 for single gas

(6)

   図6  6FDA-TmPD 中空糸膜の       図7 PV 分離実験      ガス透過状態の膨潤度(at 30℃)    (クロロホルム/n ヘキサン、50℃)         (膜:SPG/ODS-g-MA,重量 2.6mg cm-2)          表3 高分子膜における有機液体混合物の PV 分離特性 1 2 3 4 1.2x10-7 1.4x10-7 1.6x10-7 P.C3.50 P.C3.35 P.C3.80 C3H6 permeability 1/u [s/cm]         1 2 3 4 6.0x10-9 8.0x10-9 1.0x10-8 1.2x10-8 1.4x10-8 P.N2.50 P.N2.35 P.N2.80 N2 permeability 1/u [s/cm]  図8 測定温度 35,50,80℃に おいてシリコ  図9 測定温度 35,50,80℃においてシリ  ンゴム膜のプロピレン透過係数の流速依存性  コンゴム膜の窒素透過係数の流速依存性 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 圧力(atm) 膨潤率(%) C3H6 C3H6 C3H8 C3H8 図 6 6FDA-TmPD中空糸膜のガス透過状態の膨潤度 (at 30℃)

(7)

2.1.2 石油精製用高機能分離膜技術の研究開発(PEC 茨木研究室)  これまでの研究結果1-6)をふまえ、本年度も、石油系成分の膜分離の可能性につき検討を 進めた。昨年に引続き膜分離特性評価法に関する研究、膜の耐石油性に関する研究、膜お よび膜分離プロセスの開発に関する研究の3つを中心に行った。石油精油所への膜分離技 術の適用性を探るには膜および膜モジュールの石油成分に対する分離性能と耐性に関する 基礎的知見を蓄積することが重要である。そこで、これらの要求に応じて、石油成分に対 する膜の透過特性評価設備、膨潤評価設備等を利用し、膜の透過特性および耐石油性に関 する基礎的な知見を蓄積した。また、沸点の近い化合物の分離精製の場合には膜法が蒸留法 よりも経済性に優れる場合があることがわかったため、このあたりを踏まえて膜分離プロセス の研究を進めた。  基礎的検討としては磁場勾配法によるガスの自己拡散係数の測定検討を行い、膜素材中の拡 散挙動の解析に有効であることを示すことができた。ワークステーションを使用した計算化学 では分子モデルを利用したプロパン、プロピレン透過機構の解析により、本研究のポリイミド のプロパン、プロピレン透過性はポリマーの凝集性とガスのサイズに強く影響される結果を得 た。ポリイミドの化学構造が ED(低分子の拡散に必要な活性化エネルギー)に及ぼす影響が大 きいとわかった。EDと透過係数実測値の間に相関が見られた(図10)。新規膜素材として本年 度はジアセチレン骨格、ジアゾ骨格および飽和炭化水素ジオキシ骨格を主鎖または側鎖にとり いれた12種の 6FDA 系ポリイミドの合成を検討した。新規膜の検討としては 6FDA-BAAF 複合中 空糸膜の検討と 6FDA-24DAT、6FDA-26DAT を使用した平膜の検討を行った(表4)。  平膜による透過実験を発展させて、ミニモジュールによるプロパン、プロピレンの透過実験 を行った(図11−13)。従来膜に比べ、約100倍のプロピレン透過性を示すことが確認で き、経済性に優れたシステムを構築できる可能性を見いだした。そこで、ミニモジュールの実 験結果に基づき日本国内立地で膜分離法の経済性シミュレーションを行い、蒸留法と比較した ところ、化学品グレードプロピレン製造においては、ランニングコストが蒸留法より優れる結 果になった(図14、表5)。今後、さらに実験精度を高めて本システムの有効性を確認したい。 以上のように、基礎的検討および実用化に近づけるためのシステム検討を充実させることが できた。

(8)

10-14 10-13 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 ED[J/mol] 298K

P

exp [cm 3(ST P )cm /cm 2・s ・cm Hg] 図10 分子動力学によりシミュレートされた ED 計算値と透過係数実験値との関係 ○ C3H6 in C3H6/C3H8=50%/50% gas △ C3H8 in C3H6/C3H8=50%/50% gas ◇ pure C3H6 □ pure C3H8    表4  6FDA 系ポリイミドフィルムのプロピレン/プロパン単ガス分離性能 ポリイミド 透過係数(cm3(STP)・cm/cm・s・cmHg) α(C3H6/C3H8) C3H6 C3H8 6FDA-2,4DAT1) 2.72×10−11 1.05×10−12 26 6FDA-2,6DAT1) 1.30×10−11 6.52×10−13 20 6FDA-BAAF(参考)2) 8.90×10−11 2.70×10−12 33    1)供給側圧力:3atm ゲージ,透過側圧力:真空,測定温度:約 20℃    2)供給側圧力:2atm ゲージ,透過側圧力:真空,測定温度:約 20℃

(9)

膜 モ ジ ュ ー ル 排 気 排 気 圧 力 計 積 算 流 量 計 供 試 ガ ス ボ ン ベ レ ギ ュ レ ー タ ー 熱 交 換 器 T C 圧 力 計 恒 温 槽 図11 装置装置フロー 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 5 10 15 20 25 30 35 40 温度 {℃] 分離 係数 [-] 透過 係数( プロパ ン ) [Nm 3/m 2h a tm] 透過 係数( プ ロピ レ ン ) [Nm 3/m 2h a tm] 図12 温度変化試験結果(差圧=1atm)

(10)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 操作圧P/蒸気圧P0 [-] 透過係 数 (N m 3/m 2・h ・at m ) 温度=10℃ 図13 圧力変化試験結果(プロパン、温度=10℃) EA12 C3 PRE-HEATER FD11 No.1 MEMBRANE UNIT GB11 PERMEATE COMPRESSOR EA13 PERMEATE COMPRESSOR AFTER COOLER FD12 No.2 MEMBRANE UNIT EA11 C3 EVAPORATOR GB12 PROPANE COMPRESSOR EA14 PROPANE COMPRESSOR AFTER COOLER FA11 PROPANE DRUM GB13 PROPYLENE COMPRESSOR EA15 PROPPYLENE COMPRESSOR AFTER COOLER FA12 PROPYLENE DRUM PROPYLENE PRODUCT PROPANE PRODUCT C3 FEED HW LP STEAM CW CW CW 1 51.4℃ 20.42atm 6 5 4 3 2 40.0℃ 8.0 atm 34.0℃ 16.5 atm 38.0℃ 16.5 atm 40.0℃ 8.0 atm 12.7℃ 8.0 atm 図14 膜分離プロセス フローシート

(11)

表5 C3留分の分離精製費用(ケミカルグレード) 処理量 蒸留法 膜分離法 8.801ton/h 8.801ton/h BL 建設費(BLI) 7.76 億円 8.47 億円 総投資額 7.76 億円 8.47 億円 単価および仮定 原単位 製造原価 原単位 製造原価 /kg 原料 円/kg 原 料 /kg 原料 円/kg 原 料 変動費 原材料費 原料   膜交換 10000¥/m2 9.32E-06 0.093 保守 3%/BLI 0.331 0.361 運転 運転費の 10% 0.057 0.057 合計 0.387 0.511 ユーティリティ  電気 10¥/kWh 6.60E-04 0.007 0.0995 0.995  蒸気 1500¥/ton 0.001466 2.199 1.05E-04 0.157  冷却水 5¥/ton 0.0765 0.383 0.0175 0.088  合計 2.588 1.240 変動費総計 2.976 1.750 固定費 人件費  運転員 1000 万円 /人.年 1 人 / 直× 4 直 0.568 1 人 / 直× 4 直 0.568  保守 2%/BLI 0.220 0.241  製品試験 運転費の 20% 0.114 0.114 合計 0.902 0.922 償却その他 プラントオーバーヘッド 総人件費の 80% 0.722 0.738 税金・保険 固定費の 3.5% 0.386 0.421 一般管理・販売・研究 売上の 1% 0.900 0.900 減価償却 固定費の 10% 1.102 1.203 合計 3.110 3.262 固定費総計 4.012 4.184 製造コスト 6.987 5.935

(12)

2.1.3 石油精製プロセス用分離膜技術に関する研究(大津研究室) 1)はじめに われわれは、芳香族/非芳香族炭化水素系の分離の例として、リフォーミュレートガソリン 中のベンゼンの除去を分離対象に想定して、ベンゼン選択透過型スイープガス式膜蒸留法(SGMD 法, 広義のパーベーパレーション法)を検討してきた。SGMD 法は通常のパーベーパレーション 法のような真空系を必要とせず、また、分離機構として溶解拡散機構より高い選択性の毛管凝 縮機構を利用できるので、無機膜と同様に高い分離性能の発現が期待でき、省エネルギー・低 環境負荷プロセスに有利であると考えられる。本テーマの平成 10 年度までの検討で、ベンゼン 親和性のある素材を用いた SGMD 用新規複合膜でベンゼン/n-ヘプタンの分離性能が有意に向上 するという結果が得られたので、本年度は、ベンゼン選択分離性能を示す複合膜化素材の探索 (ベンゼン親和性評価の検討)に重点を置いて検討を行った。 具体的には、ベンゼンに対して強い親和性を示す膜素材の探索では、50 種類の化合物を合成 し、それらポリマーのベンゼン、ヘプタン蒸気吸脱着量とベンゼン、ヘプタンとの混合熱量を 測定し、ベンゼン親和性を評価した。ベンゼン、ヘプタン蒸気吸脱着測定では、各種素材のベ ンゼン、ヘプタンの吸脱着量の測定を行い、各々のポリマーでベンゼン吸-脱着量の差(脱着過 程-吸着過程)とヘプタン吸-脱着量の差(脱着過程-吸着過程)を求め、その比でポリマーを比較 したところ 4 種のポリイミドでその比が 100 以上の高い値となった。また、各々のポリマーの ヘプタンとの混合熱量に対するベンゼンとの混合熱量の比を求め比較したところ3種類のポリ イミドで混合熱量比が 10 を越える高い値を示した。 その他、複合膜化素材としてスルホン酸基含有ポリイミド、ナフィオンを用い、さらに銀イ オンをドープして調製した複合膜で分離係数が有意に向上する(α(Bz/Hep)=3∼5)という結果 が得られた。 2)検討方法 複合膜化素材(図15)について、ベンゼン(Bz)と n-ヘプタン(Hep)の 50℃での蒸気吸 脱着量を測定した。同一のサンプルで測定した吸脱着等温線から、分離実験時の供給液ベンゼ ン成分の分圧(圧力 5066 Pa)に相当する蒸気圧でのベンゼン吸-脱着量の差(脱着過程−吸着過 程)と同様に分離実験時の n-ヘプタン成分の分圧(圧力 17065 Pa)に相当する蒸気圧でのヘプタ ン吸-脱着量の差をとり、その比を計算してサンプル形態の影響を無視できるよう規格化し、比 較検討した。また、ベンゼン、ヘプタンを対象溶液とし、測定温度 50℃で各ポリマーサンプル との混合熱量を測定した。得られた混合熱量データから、ベンゼンとの混合熱量とヘプタンと の混合熱量の比を計算してサンプル形態の影響を無視できるよう規格化し、比較検討した。 ポリフェニレンスルホン中空糸膜を支持膜とし、スルホン酸基含有ポリマーを複合膜化して、 さらに銀イオンをドープした複合膜を調製した。分離実験は、ベンゼン/n-ヘプタンの混合液 (Bz/Hep 9/91wt%)を供給液とし、供給液温度を 50℃に調整してスイープガス式膜蒸留法 (SGMD 法)で評価した。

(13)

S O O O O O O O O C CF3 CF3 O O O O O O 6FDA DSTD 酸 無 水 物 PMDA BTDA C O O O O O O O O O O O O O 各 種 ジ ア ミ ン mPDA TeMPD BAPS B3AS BADIB PDDA PD4SA BDSA DADPE BAPBP NH2 NH2 NH2 CH3 CH3 CH3 NH2 CH3 O NH2 NH2 S O O NH2 NH2 C CH3 CH3 C CH3 CH3 NH2 NH2 O O NH2 NH2 O NH2 S O NH2 O O SO3H NH2 NH2 O NH2 O NH2 NH2 SO3H SO3H NH2 図15 合成検討用モノマーの化学構造式(ポリイミド用モノマー) 3)結果と考察 (1)ベンゼン親和性評価 図16に各種複合膜化素材の有機蒸気吸脱着測定結果を示す。DSTD-TeMPD、6FDA-B3AS, 6FDA-DADPE, PMDA-BAPS が 100 以上のベンゼン/ヘプタン吸着量比を示した。 図17に各種複合膜化素材の混合熱量測定結果を示す。DSTD-TeMPD、BTDA-TeMPD、DSTD-BAPBP が混合熱量比の値で 10 を越える値を示した。これらのポリマーは、ベンゼンに対して親和性が 高く、高分離性の素材として期待できる。 (2)複合膜分離実験結果 図18にスルホン酸基含有ポリマーを用いて調製した複合膜の分離性能を示す。左がポリイ ミド DSTD-PD4SA、右がナフィオン(デュポン社製パーフルオロスルホン酸)を用いた複合膜の 性能である。白抜きがポリマーのみ、黒く塗りつぶしたものが、更に銀イオンをドープした結 果を示す。複合膜化により、分離係数が 2 から供給液の比揮発度程度であったものが、銀ドー プによりいずれも比揮発度を越える分離係数となった。銀イオンは、ベンゼン選択性向上に効 果がある。

(14)

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 DS T D -m P D A D S T D -24D A T DS T D -D MP DA DS T D -T e M P D DS T D -B 3 A S DS T D -D A D P E DS T D -B A D IB DS T D -B A P S 6F D A -m P D A 6F D A -24D A T 6F D A -D M P D A 6F D A -T eM P D 6F D A -B 3A S 6F D A -D A D P E 6F D A -B A D IB 6F D A -B A P S BT D A -m P D A B T D A -24D A T B T DA -D MP DA BT D A -T e M PD BT D A -B 3 A S BT D A -B AD IB BT D A -B AP S PM D A -m P D A P M D A -2 4D A T PM D A -D M P D A P M D A -T eM P D P M D A -B 3A S PM D A -B A D IB PM D A -B A P S DS T D -P D4 S A DS T D -B DS A 各種複合膜化素材 Bz 吸着量の差 /H ep 吸着量 の差 [ -] 図16 各種複合膜化素材の有機蒸気吸脱着測定結果 (ベンゼン吸着量の差/ヘンプタン吸着量の差)

0

5

10

15

mPDA 24DA T DMPD A TrM PD TeM PD DADP E BADI B BAPB BAPS BAPB P BAP6 F PD4S A BDS A

各種複合膜化素材

混合熱

量比(

Bz

/

H

e

p

-]

DSTD

6FDA

BTDA

PMDA

図17 各種複合膜化素材の混合熱量測定結果 (ベンゼン混合熱量/ヘプタン混合熱量)

(15)

S O O O O O O N N SO3H DSTD-PD4SA O (CF2−CF2) (CFx 2−CF) m (O-CF2−CF) (CF2−CF2) CF3 SO3H x=5∼13.5 y=1000 m≧1 ナフィオン R 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 透過速度[kg/(m2・h)] 分離係 数α (B /H )[ -] [1] 0.1wt% [2] 0.5wt% [3] 2wt% [4] 0.1wt% AgBF3 [5] 0.5wt% AgBF3 [6] 2wt% AgBF3 PPSO PPSO(シリコーンコート) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0.001 0.01 0.1 1 10 透過速度[kg/(m2・h)] 分離係数α (B / H )[ -] [1]ナフィオン 2wt% [2]ナフィオン 5wt% [3]ナフィオン10wt% [4]ナフィオン2wt% AgBF4 [5]ナフィオン5wt% AgBF4 [6]ナフィオン10wt% AgBF4 PPSO PPSO(シリコーンコート) 供給液の気液平衡 時の比揮発度 供給液の気液平衡 時の比揮発度 図18 スルホン酸基含有ポリマー-PPSO 複合中空糸膜の SGMD 法による ベンゼン/n-ヘプタン系の分離性能 4)まとめ 複合膜化素材探索の指標となるベンゼン親和性評価として行った有機蒸気吸脱着測定で、ベ ンゼン吸着量の差と n-ヘプタン吸着量の差の比を計算したところ、4 種類のポリイミド(DSTD-TeMPD、6FDA-B3AS, 6FDA-DADPE, PMDA-BAPS)が 100 を上回る結果となり、他のポリイミドは 20 以下であった。また、混合熱量測定では、ベンゼンとの混合熱量とヘプタンとの混合熱量との 比を計算したところ、3種類のポリイミド(DSTD-TeMPD、BTDA-TeMPD、DSTD-BAPBP)が他のポ リイミドと比較して大きい値であった。

スルホン酸基含有ポリイミド、ナフィオンを用い、銀イオンをドープした複合膜で供給液の比 揮発度を上回る性能が得られた。

(16)

2.2 基礎研究(委託研究) 2.2.1 高機能分離膜技術に関する基礎研究 大学、国立研究所の10機関の膜専門委員会で基礎研究を行い、優れた有機膜、無機膜、 プロセスを見出している。ここではその結果の一部を紹介する。 (1)硫化水素熱分解反応(H2S=H2+1/xSx)から水素を回収し、石油精製工程の水素化脱  硫プロセスに循環利用する為に、高温・高腐食条件下で使用可能な水素選択性分離  膜を用いたメンブレンリアクターにより、反応転化率の増加、メンブレンリアクターの  水素収率の増加を図った。特に、Knudsen 透過機構を有する多孔質膜を2段に組み込んだリ  アクターの反応器内物質収支に関する無次元化基礎式を導出し、アクターの性能評価を  数値解析にて行った。また、耐熱・耐腐食ジルコニア複合膜を作成し、硫化水素の熱分  解反応実験を行った。H2収率は、反応温度 1023K、反応室内圧力pR =0.11 MPa、1/SV =77sec  において最大値 0.33 を示した。 (2) 優れた有機液体選択透過性を有するNaXおよびNaY型ゼオライト膜を作成した。X型   ゼオライト(P型ゼオライトを含まない)膜は、メタノール/MTBE系の浸透気化(PV)分   離でY型ゼオライト膜より高い分離性能を示した。Y 型ゼオライト膜は、ベンゼン(Bz/   n-ヘキサン(Hx)系、Bz/シクロヘキサン(Cx)系の蒸気透過(VP)分離(150℃)で、それぞれ   透過流束0.50と0.30kg/m2h、分離係数44と190を示した。 (3)メタクリルオキシプロピル基(MTMS)又はイソオクチル基(ITMS)を含むトリアルコキシド をテンプレートとして,テトラエトキシシラン(TEOS)に加え,ゾルゲル法によりシリカ膜 を作製した膜は水素の透過率が TEOS 単独で作製したシリカ膜に比べ 40 倍以上となり、ま たメタンまたは六フッ化硫黄に対する水素分離係数が,それぞれ 139,792(at 300℃)と   大きく,水素分離膜として期待された。一方,アルコキシドを持つウレタンをテンプレート   として用いた膜のベンゼン/シクロヘキサン混合物の VP 実験では,ベンゼンが優先的に   透過し分離係数は 1.4(at 100-150℃)であった。 (4) アルミナ基材上に酸素10員環をもつ MFI と酸素12員環を持つ BEA 薄膜の分離性能

  を評価した。SiO2/Al2O3=50 とローシリカな MFI 膜のアルミナ基材上へのドライゲルコン

  バーション法による結晶化条件を検討し、原料ゲルに、シリカ比で 10wt%の MFI 粉末を加   え、60℃で4時間以上エージングしたゲルを用いることにより、423K での窒素の透過係   数が 10-8mols-1m-2Pa-1以下で、423K にて n-ブタンとイソブタンの2成分透過試験で開   始直後はイソブタン選択透過性を示し、最大分離係数は 11 以上の緻密なゼオライト膜を   得た。しかし、9時間以降は n-ブタン、イソブタン両者の透過は測定限界(10-9 mols -  1m-2Pa-1)以下となった。 2.2.2 高機能分離膜技術に関する調査研究 石油分離膜技術を調査するため、国際共同研究分離膜専門委員会を設定・開催し、専門委員 による海外調査、海外研究者の招聘、特許・文献調査等を実施した。

(17)

3.試験研究の成果 柳橋研究室 (1)陽電子消滅法によりポリイミド膜のプロパン/プロピレンの分離挙動が分子間自由体  積空孔の大きさから推定出来る事を明らかにした。 (2)ポリイミド膜のガス収着・脱着挙動およびプロパン/プロピレン/n-ブタン3成分混合ガ   スの分離性能を評価解析した。ゼオライト/ポリスルフォン複合膜、炭化膜、有機/無機   複合膜、PEO-PI 膜などの新規分離膜の試作と評価法の開発を行った。膜の可塑化、膨潤   挙動を調べる為の装置を試作し、ポリイミド膜の膨潤・収縮挙動を調べた。 (3)性能評価法の精度向上を目的として流通式の自動透過率測定装置を用い流速が境膜抵抗   に影響する事を明らかとした。 茨木研究室 (1) 磁場勾配法によるガスの自己拡散係数の測定検討を行い、膜素材中の拡散挙動の解   析に有効であることを示すことができた。 (2) 新規膜素材として12種の 6FDA 系ポリイミドの合成を、また新規膜としては   6FDA-BAAF 複合中空糸膜と 6FDA-24DAT、6FDA-26DAT を使用した平膜を検討した。 (3)ミニモジュールによるプロパン、プロピレン透過実験を行い、従来膜対比、約100   倍のプロピレン透過性を示すことを確認した。国内立地で膜分離法の経済性シミュレーシ   ョンを行い、蒸留法と比較し化学品グレードプロピレン製造でランニングコストが優れる   結果が得られた。 大津研究室 (1) 複合膜化素材のベンゼン親和性評価として、蒸気吸着量測定を行い、ベンゼン吸着量の 差と n-ヘプタン吸着量の差の比を用いて比較したところ、4種類のポリイミドが比較的 大きな値を示した。また、ベンゼンと n-ヘプタンの混合熱量の比を用いて比較評価した ところ、3 種類のポリイミドが比較的大きな値を示した。これらのポリイミドはべンゼン に対する親和性が高いポリマーである可能性が示された。 (2) スルホン酸基含有ポリマーを用い、銀イオンをドープした複合膜で、ベンゼン/n-ヘプタ ンの分離係数が有意に向上する(分離係数α(Bz/Hep)=3∼6)という結果が得られ、スル ホン酸基含有ポリマーを用い、さらに銀イオンをドープした複合膜で高い分離性能を発現 する可能性が見出された。 4.まとめ   平成11年度に予定していた研究項目それぞれについてほぼ予定通りの成果をあげること が出来た。平成12年度は以下の研究課題に取り組む。 (1)オレフィン/パラフィン等の2成分、3成分系混合ガス、及びベンゼン/ヘプタン、ヘキ   、シクロヘキサン等の統一した共通評価系によるガス、液分離評価と評価法の開発を行う。

(18)

(2)有機、無機複合膜、炭素膜、開発膜の性能評価法の開発、有機高分子膜分離性能と高次   構造の関連する評価法、膜性能に影響する膨潤特性に関する評価法の開発を行う。 (3)これまでの設備を駆使して膜法のプロセスへの適用可能性を明確にするための研究を実   施する。計算化学、物性評価の研究により膜性能向上、膨潤抑制などの基礎的研究を行う。 (4)プロパン/プロピレン膜分離のモジユール試験の継続と実用エレメントの試作を行う。   性能の優れた素材については新規開発膜として成分分離の検討を進める。これまでの成果   を国際学会にて積極的に発表する。 (5) ベンゼン親和性複合膜化素材の探索とベンゼン親和性評価データの解析を行い、ベン   ゼン親和性と膜性能との相関を見出す。 (6)複合膜構造の解析を行い、複合膜構造と膜性能との関係を明らかにする。 <引用文献> 1) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成   果報告書(平成 5 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-93I06, 36 (1994) 2) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成   果報告書(平成 6 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-94I07,55(1995) 3) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成   果報告書(平成 7 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-95I07,62(1996) 4) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成   果報告書(平成 8 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-1996-I20, 74   (1997) 5) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成   果報告書(平成 9 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-1997-I19, 82    (1998) 6) (財)石油産業活性化センター, 石油留分の膜による高度分離技術の開発に関する成 果報告書(平成 10 年度石油精製・利用技術国際共同研究事業), PEC-1998I-14, 96   (1999)

参照

関連したドキュメント

医学部附属病院は1月10日,医療事故防止に 関する研修会の一環として,東京電力株式会社

第4 回モニ タリン グ技 術等の 船 舶建造工 程へ の適用 に関す る調査 研究 委員 会開催( レー ザ溶接 技術の 船舶建 造工 程への 適

また、第1号技能実習から第2号技能実習への移行には技能検定基礎級又は技

海洋技術環境学専攻 教 授 委 員 林  昌奎 生産技術研究所 機械・生体系部門 教 授 委 員 歌田 久司 地震研究所 海半球観測研究センター

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

(1)  研究課題に関して、 資料を収集し、 実験、 測定、 調査、 実践を行い、 分析する能力を身につけて いる.