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腫瘍・アポクリン・エクリンなら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

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Academic year: 2021

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中高年の顔面,頭皮に好発する黄色調の結節および腫瘤.病 理組織学的に脂腺分化を示す良性腫瘍である.

3.脂腺腫(脂腺上皮腫) 

sebaceoma(sebaceous epithelioma) 顔面や頭皮に生じるドーム状あるいは有茎性の結節(図 21.11).黄色調を呈することもある.病理組織学的に,基底細 胞様の腫瘍細胞の増殖を認める.未分化な細胞がみられるなか, 一部で脂腺細胞や導管への分化を認める.

1.エクリン汗囊腫 

eccrine hidrocystoma 顔面に単発,ときに多発する,直径 2 〜 3 mm の常色〜青色 調の半透明小結節(図 21.12).多発する症例では夏季に増加, 冬季に減少する傾向がある.エクリン汗腺の真皮内汗管が拡張, 囊腫化したものと考えられる(図 21.13).断頭分泌はみられ ない.針で穿刺すると汗の貯留が確認される.

2.汗管腫 

syringoma 症状 エクリン汗腺の真皮内汗管が限局性に増殖した結果,直径 1 〜 3 mm 大の正常皮膚色の扁平隆起性および小丘疹が多発す る.眼瞼部に好発し,体幹に播種状に認められることや融合傾 向を示すこともある(図 21.14).女性に多く,汗の分泌量が 増加する思春期に目立つ.自覚症状はないが,自然消退するこ ともほとんどない.17 章 p.311 の MEMO も参照. 病理所見 真皮上〜中層に,大小の管腔構造と索状構造がみられる.管 腔の一端に,短い尾のような上皮索をつける特徴的な像〔オタ マジャクシ様(tadpole-like)またはコンマ状(comma tail)〕を 呈する.管腔は 2 層の壁細胞からなり,周囲に結合組織の増殖 をみる(図 21.15).

D.汗腺系腫瘍 sweat gland tumors

図21.11 脂腺腫(sebaceoma)

黄色調のドーム状に隆起する小結節.

図21.12 エクリン汗囊腫(eccrine hidrocystoma)

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鑑別診断 臨床的に顔面播種性粟ぞくりゅう粒性狼ろう瘡そう,稗粒腫,血管線維腫,エク リン汗囊腫などとの鑑別を要する. 治療 自覚症状がなく悪性化もないため通常治療は必要としない. 整容的に問題がある場合は,炭酸ガスレーザー療法や凍結療 法,ケミカルピーリングなどが行われる. 図21.15 汗管腫の病理組織像 本症にきわめて特徴的なオタマジャクシ様,または コンマ状の腫瘍細胞塊から形成されている. 汗腺由来の腺腫の分類 図21.14 汗管腫(syringoma) a:眼瞼に多発する 2 ∼ 5 mm 大の扁平隆起性小丘疹.b:額部.c:腋窩に多発,融合して大きな局面を形成している.d:前胸部.e:顔面 に多発.一部融合. a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp

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定義・症状 エクリン汗腺の汗管導管部の外側細胞が増殖したものであ り,その一部は汗管内腔細胞,さらに汗管分泌部細胞に分化す る.広基性または有茎性の小結節で,暗赤色で易出血性を示す のが特徴であるが,とくに足底や手掌に好発する(図 21.16). 病理所見 連続性に表皮から真皮内へ腫瘍細胞(poroid cell)の増殖巣 を認め,その中では好酸性の細胞が小管腔を形成する〔クチク ラ細胞(cuticular cell),図 21.17〕.腫瘍細胞は多量のグリコー ゲンを含む. 治療 まれに悪性化〔エクリン汗孔癌(eccrine porocarcinoma,22 章 p.436 参照)〕するため外科的に切除する.

4.エクリンらせん腺腫 

eccrine spiradenoma エクリン汗腺の真皮内導管および腺細胞への分化を示す良性 腫瘍である.顔面,頸部,体幹,上肢に単発する直径 1 〜 2 cm の境界明瞭な硬い皮内および皮下結節.表面は正常皮膚 色または青色で,自発痛や圧痛を伴うことが特徴である(図 21.18).病理組織学的には,大型明調細胞と小型暗調細胞が柵 状および塊状に増殖し,管腔構造を形成する.

5.乳頭状エクリン腺腫 

papillary eccrine adenoma

四肢に好発し,直径 1 〜 3 cm 大の小結節が単発する.病理 組織学的に,種々の大きさの囊腫構造と,上皮細胞の内腔への 乳頭状増殖を認める.断頭分泌はみられない.エクリン汗管に 分化する良性腫瘍と考えられているが,管状アポクリン腺腫 (後述参照)との異同について議論が続いている.

6.結節性汗腺腫 

nodular hidradenoma 顔面,頭部に好発する単発性の皮内結節.腫瘍細胞は,暗調 で細長い核をもつ紡錘形細胞と,円形の核をもつ澄明細胞とが 種々の割合で存在する.後者が目立つものを澄明細胞汗腺腫 (clear cell hidradenoma)と呼ぶ.エクリンないしアポクリン系

図21.16 エクリン汗孔腫(eccrine poroma) 暗赤色有茎性(a)および広基性(b)の小結節. a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp 図21.17 エクリン汗孔腫の病理組織像 図21.18 エクリンらせん腺腫(eccrine spirade­ noma)

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の分化を示す良性腫瘍と考えられている.ときに悪性化するこ とがあり,悪性結節性汗腺腫(malignant nodular hidradenoma) と呼ばれる.

7.皮膚混合腫瘍 

mixed tumor of the skin 同義語:軟骨様汗管腫(chondroid syringoma) 青壮年の顔面(上口唇,鼻,頭部)に好発する,比較的硬い 皮内結節ないし皮下結節(図 21.19).下部は可動性を有する ことが多い.1 〜 2 層の壁細胞で囲まれた管状構造をとる上皮 性組織と,粘液様および軟骨様の間葉系組織とが混在してみら れることが特徴である.断頭分泌や毛包系,脂肪細胞への分化 がみられることもある.エクリンおよびアポクリン汗器官由来 の良性腫瘍とみなされる.まれに癌化する.

8.アポクリン汗囊腫 

apocrine hidrocystoma アポクリン汗器官系腫瘍.中年以降の眼囲,顔面,耳,頭皮 部に単発するドーム状に隆起する透明ないし青色調で直径数 mm 〜 2 cm の小結節.真皮内に巨大な囊腫構造を認め,アポ クリン分泌を示す 1 層の円柱状細胞とその外側に位置する筋上 皮細胞から構成される.通常自覚症状はない.患者が希望すれ ば外科的切除を行う.

9.円柱腫 

cylindroma 日本人にはほとんどみられない.思春期の頭部などに,1 〜 10 cm 大で半球状ないしは軽度有茎性,正常皮膚色〜褐色の腫 瘤が通常多発する(図 21.20).頭部全体を侵し,ターバンを 巻いているような外観を呈することがある〔ターバン腫瘍(tur-ban tumor)〕.まれに単発例も認める.多発型は常染色体優性 遺伝を示し,多発性家族性毛包上皮腫(p.387 参照)と同様に CYLD1遺伝子の異常が同定されている.汗腺系への分化を示 す腫瘍細胞の集塊が,巣状にジグソーパズルのように配置す る.まれに悪性化し,悪性円柱腫と呼ばれる.

10.乳頭状汗腺腫 

hidradenoma papilliferum 女性の外陰部に好発するドーム状の小結節で,びらんや出血 を伴いやすい.肉芽組織に類似する.病理組織学的にはアポク リン分泌像を示す腺上皮細胞の密な乳頭状増殖をみる.アポク

図21.19 皮膚混合腫瘍(mixed tumor of the skin)

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11.乳頭状汗管囊胞腺腫 

syringocystadenoma papilliferum 小児の頭部や顔面に好発する疣状結節で,表面は紅色で,と きにびらんを伴う(図 21.21).アポクリン汗器官性過誤腫で, 脂腺母斑に続発することが多い.病理組織学的には内腔側に高 円柱状細胞,外側に立方体状細胞の 2 層の管状構造を示し,間 質には著明な形質細胞浸潤を伴う(図 21.22).

12.管状アポクリン腺腫 

tubular apocrine adenoma

多くは頭部に好発し,脂腺母斑から生じることもある.直径 1 〜 2 cm の正常皮膚色〜褐色の結節.病理組織学的には,乳 頭状エクリン腺腫(p.392 参照)と同様に多数の小囊腫と乳頭 状の上皮増殖がみられるが,断頭分泌の像を伴う.

13.乳頭部腺腫 

adenoma of the nipple 同義語:erosive adenomatosis of the nipple

乳頭に生じる良性の腫瘍.びらんや滲出液を伴う場合が多く, 乳房 Pぺージェットaget 病や乳管癌との鑑別を要する.病理組織学的には密 な乳頭状増殖を伴う管腔構造がみられ,断頭分泌が観察され る.乳頭部の乳管由来の良性腫瘍である.治療は外科的切除で あり,取り残しがあると再発する. 図21.21 乳頭状汗管囊胞腺腫(syriogocystadeno­ ma papilliferum) 図21.22 乳頭状汗管囊胞腺腫の病理組織像

図 21.12 エクリン汗囊腫(eccrine hidrocystoma)
図 21.19 皮膚混合腫瘍(mixed tumor of the skin)

参照

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