2014年8月29日 ジャカルタ ジャパン クラブ 会 員 各 位 ジャカルタ ジャパン クラブ 邦人安全対策連絡協議会 本協議会から,最近の治安状況等についてお知らせいたします。会員各位ならびにご家族,また関 係のご出張者におかれましては治安状況等に十分ご留意いただき,掲載の事件・事故と同様の被害 に遭われないよう十分ご注意,ご周知ください。 *JJC邦人安全対策連絡協議会 TEL:315-0418 FAX:3192-5902 *在インドネシア日本国大使館 TEL:3192-4308 1.最近の政治・治安情勢 (1)政治情勢 7月22日(火),予定通り大統領選挙の公式結果発表がありジョコウィ側が約7,100万票(53.15%), プラボウォ側が6,300万票46.85%を得て約800万票差でジョコウィ側が逃げ切った結果となった。そ の際,プラボウォ側が選挙プロセスから撤退するという発言もあったが,結局憲法裁判所への異議 申し立てをしており,裁判所での審議自体は終了し8月21日に出される判決を待っている状態である。 ただ,有識者のコメントを見ると,800万票の票差を覆すような証拠をプラボウォ側は示していない のではないかという意見があるため,選挙結果については変わることなくジョコウィ当選で終わる と思料(注:その後,21日に判決が出て,ジョコウィ側勝利で選挙結果確定)。 関連する治安情勢として,7月22日にはデモ等はあったが治安上,大きな問題は発生しなかった。 今後,憲法裁判所で判決が出る8月21日(木)は,裁判所前にプラボウォ側の支持者が集まることは 想定されるが,それが支持者間の衝突や暴動に進んでいく可能性は現時点では極めて低いと考えら れる。プラボウォ側は選挙前には上り調子であったが,選挙結果発表後の一連の対応が良くなかっ たということから,現在支持率は下がっている由。 (2)治安情勢 大統領選挙に係る治安情勢は,非常に安定しており,4月の総選挙からは半年近い長丁場ではあっ たが,順調に進んでおりインドネシアの民主主義の成熟度が治安情勢の安定に表れているのではな いかと思う。 他方,インドネシアに限らず世界中で注目を浴びているイスラム過激派のISISがある。これ は,Islamic State in Iraq and Syriaの略称で,もともと内戦状態にあるシリアの反体制派の過激 派の組織であったが,現在はイラク北部まで勢力を拡大している。このISISの指導者が6月末ごろ, 全イスラーム教徒の指導者であるという意味である「カリフ」を名乗り始め,ISISの最後のIS(Iraq and Syria)を取ってIS(イスラーム国)というものを建国したと宣言。このISIS,あるいはISは, 考えに従わない住民を虐殺するという非常に過激な組織である。今月18日には,このエリアに入 っていた日本人がISISに拘束されているとの情報が流れているが,インドネシアでも当地の治安に
大きく影響するのではないかと政権,宗教界も非常に懸念している。すでにインドネシア人過激派 の50人以上がイラクやシリアへ渡り,ISISに合流しているのではないかと言われており,現地入り したインドネシア人らしき人物がインドネシア語でメッセージを発している動画をインターネット 上で公開している。インドネシアに元々いるイスラム過激派もISISへの支持派と反支持派に分かれ て内部で対立しているという状況もある。ISISはイスラムの原理主義的な側面を持っており,政府 は,インドネシアの国家原則であるパンチャシラ,「多様性の中の統一」に大きく抵触すると述べ ている。特に警察や軍は徹底的に検挙するという立場であり,実際にほぼ毎日のように支持者グル ープが検挙されている。またインドネシアの宗教界も,その考え方や実際の行動の危険性を指摘し ておりISISは受け入れられないと表明している。現在,このISISの支持者がインドネシア国内でテ ロを起こしたわけではなく,現時点で治安上の大きな懸念はないが,シリアやイラクへ渡ったイン ドネシア人がテロリストとしての訓練を積んで戻ってくるのではないかと懸念されている。今後, 支持者が拡大していく可能性もあるため,ISISのインドネシアへの浸透については引き続き注視し ていく必要がある。 2.邦人に関わる最近の事件・事故報告 今月は大使館へ電話で報告があった事案を報告申し上げる。被害に遭われた方は東南アジア在住 の邦人でジャカルタには出張で滞在していた由。8月8日(金)深夜1時ごろ,コタ地区のホテルか らタクシー乗車したところ,途中で警察官と思われる男性に止められた。パスポート不携帯であっ たことから,刑務所へ行くか,高額の罰金を支払うか,それともここで示談とするかと言われ,示 談にしようと話をすすめたが所持金80万ルピアでは足りないと脅かされた。付近のコンビニに連れ て行かれATMから約4万円ほどを引き出すことになってしまった。被害に遭った男性は,そのよ うな状況でも警察官が身分がわかるようなバイクのナンバープレートを写真を撮影しており,今後, 大使館の警備班と相談して警察にそのような人物が実際にいるのかを確認する。被害者は今後の対 策として,まずパスポートは携帯しておくこと,タクシー乗車の際は登録番号やナンバープレート を携帯電話などで撮影しておくこと,ぼんやりと乗るのではなく道中に何があるかなど注意を払う こと,携帯電話等でインターネットが使える状態にしておくこと,可能であればシルバーバードタ クシーを利用すること,と話していた。 3.最近の医療事情 西アフリカ地域,ギニア,リベリア,シエラレオネなどにおいてエボラ出血熱という急性ウイル ス性感染症が流行している。致死率が9割以上であり「死の病気」としてセンセーショナルに取り上 げられているが,流行している地域は基本的に衛生事情が悪く医療環境が整っていない。また,感 染した患者を隔離する方法や感染に対するケアができていない点が1番の問題である。西アフリカの ガーナ在勤中,周辺国へ出張もしたが,医療環境はかなり劣悪であった。それと比べるとインドネ シアの医療はある程度の医療は確立されており,私立の病院では隔離などの対応はできると思う。 したがって,西アフリカのような状況はインドネシアや日本では起きないだろう。また,感染につ いては飛沫感染などはなく,死体に触る,病人に接触することで起こる体液による感染と言われて いるため,普通の生活で感染する可能性はない。アフリカの特殊な事情で,例えば葬儀で死者に触 れる習慣などがこの病気の流行に影響していると言われる。エボラ出血熱の情報については,外務 省のホームページなどでも適宜アップロードしている。現在,発生状況や対処法,西アフリカ地域
への渡航は避けるなど,情報を引き続き注視していただきたい。