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304 東京医科大学雑誌第 74 巻第 3 号 1 CT : 大 2 : MRI : TAE CT 大 170 mm17 cm 1 : 1 科 : CT 大 MRI 2 T1 号 号 2 号 T2 号 号 号 号 T2 号 号 1 flow void SFT 科

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Academic year: 2021

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第 453 回東京医科大学臨床懇話会

排尿困難を契機に発見された巨大 Solitary fibrous tumor

Huge solitary fibrous tumor found by difficult voiding

日   時 : 平成 27 年 11 月 16 日(月)18 時∼ 会   場 : 東京医科大学茨城医療センター       医療・福祉研究センター 1 階 多目的ホール 当 番 分 野 : 東京医科大学茨城医療センター泌尿器科 関連診療科 : 東京医科大学茨城医療センター消化器外科       東京医科大学茨城医療センター呼吸器外科       東京医科大学茨城医療センター放射線科       東京医科大学茨城医療センター病理診断部 司   会 : 黒田  功(泌尿器科 准教授) 発 言 者 : 滝澤 一晴(泌尿器科)       田渕 崇伸(消化器外科)       古川 欣也(呼吸器外科 教授)       代田 夏彦(放射線科)       松本 暢彦(病理診断部) 東医大誌 74(3): 303-312, 2016

臨床懇話会

黒田(司会): 時間になりましたので、第 453 回 東京医科大学臨床懇話会を始めさせていただきま す。本日の司会を務めさせていただきます、茨城医 療センター泌尿器科の黒田です。よろしくお願いし ます。 今回のテーマは、「排尿困難を契機に発見された 巨大 Solitary fibrous tumor」です。茨城医療センター 泌尿器科の滝澤一睛先生からプレゼンテーションを お願いします。

症   例

滝 澤( 泌 尿 器 科 学 分 野 ): Solitary fibrous tumor (SFT)は、胸膜病変として 1931 年に初めて報告さ れた間葉系腫瘍であり、成人に発生する比較的まれ な腫瘍です。今回、我々は、骨盤腔内の巨大な腫瘍 として発見された SFT の 1 例を経験したので、報 告いたします。 症例は、53 歳の男性です。排尿障害を主訴に当 科を受診されました。主訴は、排尿時の尿勢低下、 残尿感、下腹部痛です。 身体所見では、若干下腹部が膨隆しており、一般 的には尿閉を疑う所見でしたが、触診では緊満した 膀胱というよりは充実性の腫瘤といった印象を受け ました。圧痛などはありませんでした。 腹部超音波検査を行ったところ、膀胱内に残尿は なく、膀胱の背側から頭側にかけて腫瘤を認めまし た。 血液検査所見を示します。白血球の上昇と若干の CRP の上昇を認めましたが、特記すべき異常値は 認めませんでした。PSA も 0.659 ng/mL と正常範囲 内でした。

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腹 部 単 純 CT を 施 行 し た と こ ろ、 最 大 長 径 170 mm(17 cm)の骨盤内腫瘤を認めました(図 1)。 画 像 診 断 黒田 : 代田先生、ここで 1 回画像を読んでいただ いてよろしいでしょうか。 代田(放射線科): まず CT です。骨盤内に巨大 な腫瘤状陰影がありまして、頭側からやや内部に低 吸収、明らかな脂肪成分はないかと思います。この 低吸収のところが、壊死を反映しているものと考え られます。 腸管と膀胱との関係です。矢状断で見ると、膀胱 が、この腫瘤によって腹側に圧排されている様子が わかると思います。境界は比較的明瞭なので、膀胱 とは連続性がないかと思います。腹側に押されてい ることより、ダグラス窩あたりから出てきている腫 瘍なのではないかという印象を受けます。例えば、 これがもう少し上の腸間膜由来とかですと、膀胱の が下に圧排される画像になってくると思いますの で、ダグラス窩とか後腹膜とか、そのあたりかと思 います。 直腸との関係です。やはり直腸も後方に圧排され ています。直腸への浸潤は明らかではありません。 腸管由来ですと口側のほうが拡張して、閉塞などの 通過障害が起こることが自然ですが、腸管の口側に 拡張があまり見られないということからも、腸管由 来も否定的かと思います。 そのようなことを考えると、ダグラス窩、後腹膜、 腹膜あたりの間葉系の腫瘍が一番疑われます。ただ、 前立腺との関係がやや不明瞭ですので、前立腺由来 の可能性はまだ残ると思います。 MRI です(図 2)。T1 で筋肉と等信号、やや高信 号の部分もあります。こちらを見ても明らかな高信 号がないので、明らかな脂肪成分はないと思います。 T2 を見ますと、やはり内部に高信号があり、壊死 を反映しています。等信号から高信号の多彩な信号 を示しており、脂肪抑制画像を見ていただいても、 T2 と比較しても明らかに信号の低下がないので、 これを見る限り、脂肪成分はなさそうかなと思いま す。拡散強調像でかなり高信号があるので、悪性腫 瘍が疑われるということ。あと、もう 1 つのポイン トとして、骨盤の底部で、右側のほうに容易に flow void が見られます。血管が増生されている様子が はっきりわかり、かなり太い栄養血管が出ています ので、かなりの多血性ということが考えられます。 後腹膜を含めて骨盤底由来で、多血性の悪性腫瘍で 間葉系ということを考えると、やはり平滑筋肉腫で すとか、SFT なども鑑別かなと。ただ、これだけで は、例えば血管系とか神経原性とかを否定するまで には至らないという気はします。 以上が放射線科的に鑑別として挙げられるものか と思います。 黒田 : そうすると、今の画像診断では、血管に富 んだ後腹膜かダグラス窩のあたりから発生した間葉 系腫瘍で、かつ悪性が一番考えられるということで よろしいでしょうか。 代田 : はい。あと、先ほど言いましたとおり、間 葉系腫瘍で上皮系も否定的なのですが、転移性腫瘍 も完全には否定できないので、頭の片隅には入れて おいていいかと思いますが、それ以外でしたら、や はり上皮系は否定的かと思います。 黒田 : ありがとうございます。画像診断に関して 何かご質問はありませんか。では、滝澤先生、この 後どうなったか、続けてください。 図 1 CT : 骨盤内を占拠する非常に大きな腫瘍を認める 図 2 左 : MRI では内部不均一、血流にとむ腫瘍がみとめられる    右 : 術前 TAE 時の血管造影では腫瘍血管の発達が認 められる

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診   断 滝澤 : この後、組織学的診断を得るために生検を 行う方針としました。当初は、経尿動的に TUR の 要領で組織検体の採取を行おうと考えていました が、スコープが挿入困難である可能性、十分に腫瘍 の内側深くまで採取できない可能性、出血のコント ロールがつかなくなるのではないかという可能性、 画像診断より悪性腫瘍の可能性が否定できなかった ため、また、腫瘍が大きくて経腹的に生検が可能で あったということなどから、経腹的な針生検としま した。 針生検検体での病理組織診断は、Stromal tumor of uncertain malignant potential(STUMP)でした。

経   過

ここで Cancer Board で検討いたしました。MRI 所見より悪性疾患が高いこと、腫瘍が巨大であり根 治的外科的な切除が可能もしくは安全に施行できる とは言いがたい状況であり、化学療法を先行させ、 腫瘍縮小が得られたならば、外科的手術により摘出 する方針とさせていただきました。 軟部組織腫瘍、特に頻度の一番高い平滑筋肉腫の ジェムシタビンとドセタキセルの併用のレジメン で、術前化学療法を 3 コース施行。化学療法へは若 干の反応を示し、縮小傾向を認めましたが、効果判 定としては SD でした。 黒田 : このジェムシタビン・ドセタキセルの化学 療法前後に、Cancer Board で挟んで、皆さんのご意 見を伺った上で、頻度的に最も多い Leiomyosar-coma として化学療法を行ったこと。もう 1 回画像 診断をして、その後、Cancer Board でインターベー ションをやったらいいという話でしたので、動脈塞 栓術(TAE)を施行していただいて、その上で手術 をしたということでよろしいですか。手術には消化 器外科も入っていただいたと思いますが、まず、滝 澤先生から、どんな手術したのか説明してください。 手   術 滝澤 : 先ほどの画像診断で、flow void があると いうところで、かなりの血流に富んだ腫瘍であると いう点から、術前に TAE を施行していただいた上 で(図 2)、出血のコントロールがある程度つくよ うな環境をつくった上での手術という方針にさせて いただきました。 以上を受けて手術を施行しました。悪性の可能性 が十分にあることと、前立腺・膀胱など尿路系との 境界が不明瞭である点などから、腫瘍とを一塊とし た膀胱全摘とし、尿路変更は回腸導管としました。 腫瘍摘出時に直腸損傷を来し、消化器外科チームに よって一時的に人工肛門を増設していただき、レス キューしていただきました。 黒田 : では、消化器外科の田渕先生からお願いし ます。 田渕(消化器外科): 消化器外科の対応としては、 消化管、腸間膜由来の腫瘍の可能性も否定し切れて いない状況で、かなり大きい腫瘍だったので、その 辺の可能性も含めて、最初から泌尿器科と一緒に手 術に入らせていただきました。 結果は、腸管と関連する腫瘍ではありませんでし たが、骨盤内の操作に移るに連れ腫瘍の境界が不明 瞭になり、かなり出血もかさんだのと同時に、やは り前立腺から直腸の剥がすところが、どうしてもこ こは損傷を起こしやすい部分なので、術中にそれが 判明したということでした。 一緒に入っていた田渕前教授が見つけたのです が、そのときに手をおろして直腸診を行ったところ、 示指頭大の損傷が見受けられまして、まずはここの 単純閉鎖を行いました。ただ、直腸の Rb の下の部 分は漿膜がない部分で、かなり弱い部分ですし、出 血もかさんでいるような状況の手術だったので、そ れだけでは術後経過がよくないだろうということ で、S 状結腸を用いて人工肛門増設を行い損傷部の 安静を図るという目的で対応させていただきまし た。 術後経過です。骨盤内に血腫が形成されて、また 炎症反応もかなり高い状態が持続し、これが感染源 ではないかということで、ちょうど太いドレーンが 入っていたので、そこから洗浄を行うような管理を 一緒にさせてもらっています。 ただ、後の造影検査で、直腸から骨盤腔に造影剤 が流れ出るような状態が確認され、その遷延した炎 症反応としては、血腫と同時に損傷部の縫合不全が あって状態を左右させていたと思われました。 そ のまましつこくドレーン洗浄を行って、廃液量と性 状を確認しつ抜去するまでに至っています。 術後 12 日目の CT です。まだドレーンが両側か ら骨盤腔内に入っている状態で、血腫が確認される

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ような状態です。14 日目にチューブ造影を行った のですが、造影してみると、骨盤の中に cavity が形 成されていて、造影剤がたまっていく。さらに、そ のときに腹部の正中切開創から血腫が湧くように出 てきたので、そこの部分にドレーンをもう 1 回追加 して、そこから流してみる。ちょうどもともとのド レーンの部分、これは結局入れかえているのですが、 潅流させるような感じで、いいように循環させるよ うな洗浄ができたので、これが回復につながってく れたのではないかと思われました。 ただ、術後 36 日目で注腸造影検査を行ったので すが、その損傷部分から、範囲は狭いのですが、骨 盤内へ造影剤が流れ出るような状況です。ちょうど 側臥位と仰臥位になると、その部分から造影剤の行 き来ができるような状況で、確認されています。 限局し、炎症反応も落ち着いたので、今度は瘻孔 の自然閉鎖というのも、退院された後に経時的に診 させていただいて、4 カ月後ぐらいにもう 1 回造影 検査と CT を同時に行っています。このときは、瘻 孔はもう閉鎖し、横に見えるように、ストマのほう に造影剤が流れ出てしまっているのが確認され、実 際、指診でもそこの部分が触れるような状態だった のですが、ずぼっと入っていくのが怖いので、柔ら かく触る程度でしたが、開いてはいないだろうと確 認し人工肛門閉鎖を行いました。 最終的には、6 カ月後に人工肛門の閉鎖術を行っ て、閉鎖術は特に問題なく、10 日後に退院されて います。以上です。 黒田 : ありがとうございます。滝澤先生、田渕先 生の説明に何か追加する発言はありますか。特にな ければ、滝澤先生、また続けてください。 滝澤 : 回腸導管増設時に直腸損傷し、一時的に人 工肛門をつくり救済するという方法をとりました。 術後、骨盤内に血腫がたまってしまって、それを 感染源にし、直腸の縫合不全を来してしまいました。 保存的加療をかなりねばった状況でやらせていただ いたのですが、それで何とか救済することができた と思っています。 病理診断 1 黒田 : それでは病理診断部の先生から説明をお 願いします。 松本(病理診断部): まず、こちらが手術で摘出 された材料です。骨盤内腫瘍、検体全体は 20 cm 大 です(図 3)。 こちら、腫瘍に割が入っていますが、最大径 15.5 cm の腫瘍が認められます。また、検体には、 前立腺、膀胱、精嚢も含まれています。割面では、 腫瘍は周囲との境界が明瞭で、灰白色から一部黄色 調を呈す充実性の腫瘍です。検体には、膀胱、前立 腺、精嚢が含まれていましたが、腫瘍はいずれの臓 器とも連続していませんでした。 次に、腫瘍の組織像です(図 4)。このように紡 錘形から短紡錘形あるいは多角形の腫瘍細胞が、特 定の配列を伴わない、いわゆるパターンレス・パター ンを呈して増殖しています。拡大を上げます。特定 の配列は見られません。また、腫瘍は間質に硝子化 した膠原線維なども介在させています。また、一方 でミキソイド、粘液腫様の領域も認めます。それか ら、周囲に硝子化を伴うような薄壁性の血管も多数 認められます。腫瘍は、多数の血管を介在させてい まして、壁が薄いものが目立ちます。また、このよ うに鋭角的に分枝して、周囲に紡錘形から類円系の 細胞の増殖を伴う、いわゆる血管周皮腫様のパター ン(hemangiopericytomatous pattern)を伴っています。 このパターンは、牡鹿の角(staghorn)あるいは枝 角 状(antler-like) と 表 現 さ れ ま す。 こ の よ う な hemangiopericytomatous pattern を示す腫瘍は幾つか 認められています。今回の SFT のほか Hemangio-pericytoma、 滑 膜 肉 腫、Mesenchymal

chondrosar-図 3 摘出標本    a : 肉眼像。骨盤腔の腫瘍切除材料 (腫瘍と膀胱・前 立腺を一塊とした全摘術材料)。b : 割面。検体の割面 には周囲との境界が明瞭な、灰白色調∼一部黄色調の 充実性腫瘍(155 ×115 ×78 mm)を認める。検体に は膀胱と前立腺および精嚢が含まれているが、腫瘍は いずれの臓器とも連続していない。

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coma、Leiomyosarcoma、そのほか良性腫瘍や中間 悪性の腫瘍にも認められます。

以 上、 臨 床 所 見 と 組 織 所 見 か ら、1. SFT、2. STUMP、3. 前立腺の間質肉腫(stromal sarcoma)、4. 消 化 管 間 質 腫 瘍(gastrointestinal stromal tumor : GIST)、5. 平滑筋腫(leiomyoma)、6. 平滑筋肉腫 (leiomyosarcoma)が鑑別に挙がりました。 次に、免疫染色の結果です(図 5)。全ての上皮 に反応するマーカーである AE1/AE3 は陰性です。 次に、Vimentin は陽性です。α-SMA です。血管壁 には陽性像が見られますが、腫瘍自体は陰性です。 Desmin は、 陰 性。CD34 は、 び ま ん 性 に 陽 性。 Bcl-2 は、陽性。STAT6 は、核に陽性です。以上、 免疫染色のまとめです。上皮系のマーカーは、AE1/ AE3 が陰性、間葉系のマーカーの Vimentin が陽性、 血 管 系 や GIST な ど で 陽 性 と な る CD34 が 陽 性、 Bcl-2 が陽性、一般的に GIST で陽性となる c-kit が 陰性、筋原性マーカー、α-SMA や desmin などは陰 性です。問題となるホルモンの状態、エストロゲン レセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PgR) が、場所により陽性を示していました。STAT6 は 先ほどお示ししましたが、これは最近登場してきた マーカーで、SFT にかなり特異性が高いマーカーと 言われています。こちらが陽性でした。 以上、総合しまして、SFT と考えられました。 こちらは ER ですが、約 60% の細胞に弱から強 度の陽性像が認められました。また、PgR も陽性像 が認められました。このことから、2 番、3 番に挙 げた STUMP や stromal sarcoma の可能性も否定はで きません。文献的に SFT とホルモン受容体の関係 について検索したところ、まず、STUMP や stromal sarcoma、PgR が陽性で、ER が陰性のことが多いで すが、SFT においても、PgR がまれに陽性となるこ とがあります。ER は陰性が多いとされています。 ただ、今回はこちらも陽性でした。幾つか文献を検 索したところ、2 例ほど、ごく少数ですが ER が陽 性の SFT も認められるということでした。また、 最後の文献においては、ER、PgR のホルモン受容 図 4 原発巣病理所見 ①    a : HE 染色(×400)。紡錘形∼短紡錘形∼多角形などの腫瘍細胞が、多くの領域で特定のパターンを伴わずに増殖 している(patternless pattern)。b : HE 染色(×400)。分枝を伴う鹿角様血管の介在が多数みられる (hemangioperi-cytomatous pattern)。c : HE 染色(×100)。細胞密度の増加や軽度の核異型を伴う、富細胞性の領域を認める。一部 に核分裂像の増加を伴っている(5-8 個/10HPF)。d : HE 染色(×100)。浮腫状ないし粘液腫状の領域や、変性・ 壊死を伴う領域もみられる。

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体が陽性の SFT は、いずれも良性の経過をたどっ たという報告がありました。 また、今回、前立腺に近接していたということで すが、こちらが前立腺の組織像です。特に所見はな く、前立腺への浸潤等は見られませんでした。 以上より、今回の手術材料で SFT という結論に 達しました。 腹部、後腹膜、骨盤の SFT は非常にまれとされ ていて、最新の報告では SFT 82 例中 23 例(28%) が報告されています。 もう 1 つ今回の問題となるのが、腫瘍の内部には 結節状に、非常に細胞成分に富む領域が認められて います。かなり細胞密度が高いです。核異型も軽度 から中等度が認められます。また、核分裂像がこの 領域では増加していて、強拡大 400 倍、10 視野で、 大体 5∼8 個認められました。これ以外の細胞のま ば ら な 領 域 で は、 核 分 裂 像 は 0∼1 個 で し た。 Ki-67/MIB-1 ですが、細胞の増殖能をあらわす免疫 染色です。1∼10% を場所により染色されていて、 先ほどの細胞成分が多い、細胞密度が高いところに 高い確率で認められました。p16 の免疫染色です。 予後とかかわるという報告があります。左側の部分 は細胞成分が高い部分に対応しています。

以上より、最終的に SFT with atypical features、発 生部位は pelvic cavity としました。

なお、今回の症例は 2012 年の論文でリスクの分 類がされています。年齢 55 歳、Score 0、Tumor size 15.5 cm だったので Score 3、核分裂像 5∼8 個だっ たので Score 2、合計 Score 5 で、ハイリスクと分類 されています。こちらのリスクですと、Metastasis

-free rate が 5 年 間 で 15%、10 年 間 で 0%、Disease

-specific survival が 5 年間で 60%、10 年間で 0% とい う報告があります。以上です。 黒田 : ありがとうございました。今の松本先生の 発表に対して、滝澤先生から追加コメントなどはあ りますか。フロアの先生から、何か病理に関しての 質問などありませんか。私から 1 つ。pelvic cavity ということで発生母地になっているのですが、先ほ ど代田先生は膀胱とか前立腺とか直腸に関係ないう ことだったのですが、具体的にはどの辺からと考え 図 5 原発巣病理所見 ②    a : CD34 免疫染色(×100)。腫瘍細胞はびまん性に陽性。 b : STAT6 免疫染色(×400)。腫瘍細胞の核に陽性。 c : Ki-67/MIB1 免疫染色(×200)。標識率は 1∼10%。d : p16 免疫染色(×40)。腫瘍細胞にびまん性に陽性となる 領域(左)や、陽性像と陰性像が混在する領域(右)を認める。

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られるものなのでしょうか。pelvic cavity といって もかなり広いと思うのです。そこの腹膜から出てく るものなのか、脂肪織のところから出てくるものな のかと、皆さん考えたりすると思うのですが。血管 像などを見ると、腹膜外ではないのかと思いますが、 実際、こういう病理でわかるものでしょうか。 松本 : 最も考えられるのは、やはり漿膜と関連し た腹膜由来が多いのではないかと思いますが、後腹 膜由来のものもあるので、病理組織像からは何とも 言えないと思います。 黒田 : ありがとうございます。自分も手術に入っ ていたのでわかってはいるのですが、滝澤先生にあ えてコメントをいただきたいと思います。病理の結 果から見ると、膀胱、前立腺、直腸と離れていると 言われていますが、実際に腫瘍だけとることは可能 だったと思いますか。 滝澤 : MRI を後から見ると、膀胱は温存できた のかなという印象は確かに受けますが、あれだけの 大きさのものが狭い骨盤腔内にあって、しかも前立 腺と連続性があるように画像上は見えていて、前立 腺由来のものを最初に疑っていたということを考え ると、前立腺と腫瘍は一塊にしてとらざるを得ない だろうと。引き連れて膀胱が頭側に圧排されている ことを考えると、膀胱と前立腺をとった後の尿道を つなぎ合わせるのにかなり距離があって、それがで きるかどうかというのは何とも言えないところで す。あと、悪性腫瘍という可能性がかなりあったと いうもろもろの諸事情を考えると、やはり膀胱全摘、 前立腺と腫瘍を一塊にして摘出して回腸導管で再建 するという方法でよかったのかなとは思っていま す。 黒田 : これは腫瘍が膀胱の裏にありますが、尿管 の確保というのが結構難しかったのではないかと思 いますが、どうですか。 滝澤 : 確かに、尿管を拾いにいくのもかなり難し くて、腫瘍が結構大きくてがっちり骨盤腔内に存在 していましたので、尿管を同定するのもかなり頭側 のほうで拾うことになり、回腸導管につなぎ合わせ ること自体もなかなか難しい。やはり尿管も、それ だけ圧排されて引っ張られるという状況でしたの で。 黒田 : やはり大きくとらざるを得ないかなとい うことで、田渕先生もそんな印象でしたか。 田渕 : 私からそこまで強くは言えないのですが、 最初に腫瘍がぼこっと出たときに、やはり境界が下 のほうにいっているというか ―― 下というか、わ からなくなってきていたのですが、少し腫瘍のなだ らかな山の下の部分があったので、そこからアプ ローチしてもよかったのかなと、今思い返して思っ たところもありました。 黒田 : なかなか大きいから、後から言えても、そ の場で判断するのはとても難しいと思うのですが、 悪性を考えたら大きくとらざるを得なかったかなと 私自身は思いますが、フロアの方から何かあります か。 青柳(泌尿器科学分野): 非常に興味深い所見と 思われたので、病理の先生に質問したいのですが、 病理組織学的に多彩な部分が示されたと思うのです が、SFT という名前からは、比較的均一な形のもの を想像してしまいます。リスク分類の資料もありま すが、比較的均一ですごく悪いものになっているも のが多いのか、それとも、この例のようにものすご く細胞密度が高いところがあったり、そうでもない ところがあったりして、成長していく段階で何か分 化が生じていくような形になっていくものが多いの か、そういったところは、今までの文献的なところ でどうなのかと思いまして、教えていただければと 思うのですが。 松本 : 組織像と悪性度の関連はないという文献 があります。幾つかのリスク分類の項目が、核分裂 像と細胞密度や壊死像などの 3∼4 個ぐらいは、悪 性との関連はあるという報告はあるのですが、全体 で多彩な像を示すことは、悪性度とは相関しないと いう報告があったと思います。 森下(病理診断部): 実は、ここに来るまで SFT の悪性を 1 例も見たことがないのです。ところが、 2 例も悪性っぽい SFT だということで、その 2 例だ けで見ると、本当に一部だけにそういう cellularity の高い核分裂、これと同じ状況を示すような所見が ありました。基本的に良性の場合というのは、先生 がおっしゃるように大体均一な組織像を示してい る。先ほど松本先生が示した hemangiopericytoma-tous pattern とか patternless pattern というのが、pat-ternless pattern の全体に広がっているというような 像が基本だと思います。こういうような悪性の場合 の経験が少なくて何とも言えないのですが、そうい うようなところが一部にあったということで、非常 に 興 味 深 い 例 だ と 思 い ま す。 つ ま り、malignant

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potential をどのようにするかというものを考える上 で非常にいい症例だなという気がします。 黒田 : そうすると、malignant potential を持った部 分があったから転移が起きているという可能性もあ るということでしょうか。 森下 : そういうふうな気がしています。 黒田 : ありがとうございます。そのほか、何かご 質問はありませんか。では、松本先生、ありがとう ございました。滝澤先生、続きをプレゼンテーショ ンしてください。 術後経過 1 滝澤 : 術後の経過は良好でしたが、経過観察中の CT スキャンにて肺転移を示唆する所見を認めまし た(図 6)。呼吸器外科の先生に依頼して、こちら は部分切除を行っています。術後 6 カ月の時点では、 有意ととるかどうか非常に悩んだ所見だったのです が、術後 12 カ月でかなり大きくなってきたという ところで呼吸器外科に依頼させていただきました。 次に、呼吸器外科の先生に手術をしていただいた 術後の最新の CT スキャンです。転移巣が新たに新 規に出てきているといった状況です。かなり大きい 病変が出てきている状態で、大動脈の近傍にも大き なものが 1 つ出ているという状況です。 黒田 : 呼吸器外科の先生に途中で、確定診断かけ るために胸腔鏡下でやっていただいたわけですね。 古川先生、何かそのときの所見等はありましたか。 古川(呼吸器外科): Cancer Board で、この方の 胸部 CT 画像を拝見させていただきました。新しく 影が出てきたということで、S3 に 1 個、今、滝澤 先生が示したのが半年でかなり大きくなってきてい たので、これは腫瘍性病変に間違いないだろうとい うことです。あと、S6 に微小なものが 1 個と下葉 に微小なものが 1 個あったということです。 これが、Cancer Board で転移なのかどうかという ことが話題になったと思います。呼吸器外科として は転移だろうと、画像上は原発性肺がんとは考えら れず、転移だと思っていましたが、SFT の肺転移と いうのは、我々も経験したことがなかったし、病理 の先生も、悪性の SFT を見たことはほとんどない ということでしたので、とって診断しようというこ とでした。3 個であれば、微小なものはほかにある かもしれませんが、転移であればとれるだけとった ほうがいいのではないかという考えがありまして、 3 個摘出させていただきました。 手術手技は、まず胸腔鏡で観察して、ほかに播種 病変がないか観察した上、微小なので胸腔鏡だけで は 3 個切り取れないと判断し、触診が必要なので、 第 5 肋間を開胸して触診をしながら行いました。S3 はカートリッジを使って部分切除しまして、あとの 2 個は肺を鉗子で挟んで電メスで切除して縫合する という形で切除させていただきました。 胸部外科としても、胸膜由来の SFT というのは あるのですが、そういう悪性というものは経験した ことがなかったので、興味を持って手術させていた だきました。 黒田 : ありがとうございます。古川先生のコメン トに対して、何か質問等はありませんか。では、肺 の病理について説明していただけますか。 病理診断 2 松本 : こちらが肺の手術でとられてきた右肺の 上葉の部分切除術材料です。4 カ所からとられてき ており、材料は 4 片です。 このように割を入れて検討しました。割面では、 白色から灰白色調の境界明瞭な腫瘤が認められま す。 HE 像です(図 7)。かなり細胞密度の高い腫瘍が 認められます。また、腫瘍は多数の血管の介在を伴っ ています。腫瘍は、類円系から紡錘形の腫瘍で、軽 度から中等度の核異型を示しています。また、介在 する血管は、先ほどお示ししたような鋭角に分枝す る薄壁性の血管であり、hemangiopericytomatous pat-tern を示しています。また、200 倍でもわかります ように、非常に多数の核分裂像が認められます。 図 6 術後 1 年胸部 CT : 右肺に転移性肺腫瘍を認める。

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核分裂数は、異常分裂も含めて、400 倍、10 視野 で 17 個が認められました。原発巣の核分裂数は 5 ∼8 個でしたので、かなり分裂数が多くなっていま す。また、このようにミキソイドな領域もありまし て、出血を伴っています。 D2-40、リンパ管内皮を染める免疫染色です。リ ンパ管内への侵襲像が認められます。免疫染色の結 果です(図 8)。AE1/AE3、上皮性のマーカーが陰性。 Vimentin、間葉系のマーカーが陽性。CD34、陽性。 Bcl-2、陽性。c-kit、陰性。αSMA、陰性。desmin、 陰性。h-caldesmon、陰性。S-100、陰性。β-catenin、 胞体内に顆粒状に陽性。ER、今回は陰性。PgR、弱 から中等度陽性の細胞が散見されます。CD99 は陰 性でした。STAT6 が核に陽性です。Ki-67/MIB-1、

標識率 32%。原発巣は 10% 程度でしたので、増加 しています。p53 の陽性率も高くなっています。 p16、こちら予後に関係するという報告もあります が、びまん性に陽性となっています。 HE 像です。左側が肺実質で、右側が胸膜ですが、 胸膜から突出するように増殖する像も見られます。 EVG 染色を施行したところ、黒く扇状に染色され ているのが弾性線維ですが、臓側の弾力板を越えて 腫瘍が突出しているため、APL2 に相当します。

以上より、Extrapleural Malignant solitary fibrous tumor, pelvic cavity と最終的に診断しました。以上 です。 黒田 : ありがとうございました。何か質問等はあ りませんか。では、松本先生、ありがとうございま す。滝澤先生、その後の経過をお願いします。 術後経過 2 滝澤 : この SFT ですが、冒頭にもお話ししたと おり、胸膜病変として報告された間葉系腫瘍で、 WHO の腫瘍分類では中間悪性群に分類され、低頻 度転移群というものに属します。SFT・再発・転移 で文献検索を行いましたところ、医中誌で調べてみ 図 7 肺転移巣病理所見①    a : 肉眼像。肺の部分切除術材料。境界明瞭な灰褐色調の腫瘍(最大 7×7×7 mm)を認める。b : HE 染色(×20)。 富細胞性の腫瘍を認め、胸膜表面に露出している。c : HE 染色(×100)。類円形∼多角形あるいは紡錘形の好酸性 の腫瘍細胞が増殖。腫瘍内に、大小の薄壁性血管の介在がみられ、これらの血管は鹿角状の血管周皮腫様パターン (hemangiopercytomatous pattern)を伴っている。d : HE 染色(×400)。個々の腫瘍細胞の核は、類円形∼楕円形あ るいは紡錘形に腫大し、核の大小不同、クロマチンの粗造化や空胞化など、軽度∼中等度の核異型を伴い、巨大核 も認め、異常分裂を含めた核分裂像が多数散見される(17 個/10HPF)。

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たのですが、2014 年北村らが自験例を含めた 15 例 の検討を行っており、悪性が 9 例、良性が 5 例、不 明が 1 例と悪性が多く、その転移や再発の形式とし ては局所再発と肺転移が多いとしています。 治療は外科的切除が原則ですが、再発・転移を来 した症例に対しては治療法が確立していません。そ の中でも、パゾパニブは無増悪生存期間を有意に延 長した分子標的治療薬です。前出の北村らも使用報 告をしていますが、この効果については触れていま せんでした。2015 年に石山らが同薬剤を SFT に使 用した経験を報告しており、こちらに関しては、5 カ月間にわたって SD を維持しているという報告を しています。本症例に対しても、今後このパゾパニ ブを投与する予定です。 まとめです。今回、我々は骨盤腔内に発生した巨 大な SFT の 1 例を経験しました。転移を来す SFT は非常にまれであり、標準治療も確立していないの が現状ですが、パゾパニブは無増悪生存期間を有意 に延長した分子標的治療薬であり、今後の治療に期 待が持てると考えています。以上です。 黒田 : ありがとうございました。今までの経過に 関してや今後について、何かご質問やご意見はあり ませんか。古川先生、いかがですか。 古川 : この病変はかなり悪性度が高い、MIB-1 インデックスも 32% だったということなので、や はり骨盤の腫瘍の悪性度の高いものが転移してきた というふうに考えてよろしいですか。 松本 : 組織所見上も、原発巣で悪性度の高い部分 があったのですが、そちらの組織像にかなり類似し ていまして、そちらが転移したものと考えて矛盾し ないと思います。 黒田 : ありがとうございます。そのほか、いかが でしょうか。 今後、パゾパニブを使うに当たって、パゾパニブ は唯一、軟部肉腫に対して保険適用が通っているお 薬ですが、パレット試験では Progression Free Sur-vival は有意に延びていますが、Overall SurSur-vival は 有意差を認めず、全然変わらなかったので、副作用 をコントロールし、QOL をなるべく維持、予後を いい生き方をしてもらえるようにしていただきたい と思います。 では、以上で第 453 回東京医科大学臨床懇話会を 終わりたいと思います。ありがとうございました。 (瀬戸口靖弘編集委員査読) 図 8 : 肺転移巣病理所見 ②    a : CD34 免疫染色(×200)。腫瘍細胞に陽性。b : STAT6 免疫染色(×400)。腫瘍細胞の核に陽性。c : Ki-67/ MIB-1 免疫染色(×200)。標識率は 32%。d : p16 免疫染色(×200)。腫瘍細胞はびまん性に陽性。

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