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Foreword 地球環境保全に向けた日立グループの貢献(八丁地 隆)

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Academic year: 2021

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03 foreword はじめに 1972年,マサチューセッツ工科大学助 教授のD・H・メドウズらは,世界の著名 な実業家,政治家,科学者から成る民間 組織ローマクラブから委託された研究成 果を,『成長の限界(The Limits to Growth)』 と題された書籍として出版し,資源消費 と環境汚染という地球の物理的な限界 が,経済成長を終焉(えん)に向かわせ るとの警告を発した。その後の人類の努 力は,資源消費と環境汚染を,一定程度 抑制することができた。東京の光化学ス モッグは減り,ライン川上流には,サケ が戻ってきた。 ローマクラブには,設立直後から, 日立製作所第三代社長駒井健一郎が,日 本産業界メンバーの一人として参画して おり,地球環境保全に関する日立グルー プの強い問題意識は,当時から一貫して いるところである。 しかし一方で,地球全体を見れば,資源 消費と環境汚染の絶対量は,現在もなお 幾何級数的な増大を続けている。例えば, 1975年から2000年までの25年間に,石油 の年間消費量は約30%増加,木材パルプ の年間生産量は約70%増加,発電容量は ほぼ2倍となった。この期間のCO2排出量 は約34%増加している。『成長の限界』 は,こうした幾何級数的増加の原動力が, 人口の増大と工業資本(工業生産)の拡大 にあると指摘しているが,これらの予測 値(世界合計)は,今後30年から50年にわ たり,いずれも右肩上がりで伸びていく 見通しである。また,個別地域を見ると, 中国などの新興国,途上国における環境 汚染が深刻さを増しつつある。 こうした中で,人類に求められている のは,資源消費と環境汚染の単なる抑制 ではなく,まずは「ピークアウト」(頭打 ち)を実現したうえで,さらにこれを大 幅削減していくことである。その課題の 大きさは,社会的にも,技術的にも,歴 史上例を見ないと言っていいだろう。 温暖化抑制に必要なCO2排出量の 「ピークアウト」 「ピークアウト」が最も厳しい形で人 類に突きつけられているのが,地球温暖 化問題である。産業革命以降急拡大した 化石燃料の利用に伴って,CO2排出量は 一貫して増加してきた。しかしながら, 2007年のハイリゲンダム・サミットでは, IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネ ル)の報告書を基に,温暖化を抑制する ためのグローバル目標,「2050年までに 世界の温室効果ガス排出量を半減」する ことが議論された。本年1月末のダボス 会議における福田首相のスピーチでも指 摘されたとおり,「半減」を実現するた めには,まずは,CO2排出量の「ピーク アウト」を10年以内に実現することが前 提である。世界中の研究機関が,この目 標を実現するためのシナリオを描こうと しているが,今なお,コンセンサスの取 れたシナリオがないことからも,与えら れた課題の大きさがわかる。 一方,2008年より,ポスト京都議定書の 枠組みに関する議論が本格化し,7月に 開催される北海道洞爺湖サミットでは, 地球温暖化(気候変動)問題が,重要議題

地球環境保全に向けた日立グループの貢献

Hitachi’s Contribution to the Global Environment

巻頭言 日立グループ最高環境戦略責任者 株式会社日立総合計画研究所 取締役社長

八丁地 隆

1970年日立製作所入社,1997年企画 室次長 兼 株式会社日立総合計画研究 所副所長,同年日立製作所企画室長, 2001年ビジネスソリューション事業 部長,2002年情報・通信グループ COO兼CTO,2003年法務・コミュニ ケ ー シ ョ ン 部 門 長 ・ 執 行 役 常 務 , 2004年執行役専務,2006年代表執行 役執行役副社長,2007年株式会社日 立総合計画研究所取締役社長,2007 年12月より日立グループ最高環境戦 略責任者。日立製作所顧問兼任。

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八丁地 隆(はっちょうじ たかし)

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04 Vol.90 No.05 382-383 2008.05 日立グループの地球環境戦略 になる予定である。日立グループとして は,グローバルレベルでの目標設定に関す る議論を注視し,企業としていかなる貢 献が可能かを見極めていく考えである。 革新的技術によって 地球環境に貢献する 日立製作所は,1910年,久原鉱業所 日立鉱山付属の修理工場として設立さ れ,2010年に創業100周年を迎えるが, 日立グループの環境対策の原点は,創業 当時の日立鉱山煙害対策にある。当時, 銅精錬によって発生する煙が周辺の農作 物を枯らす被害が発生した。日立鉱山の 創業者久原房之助は,大煙突の建設を提 案し,気球を使った高層気象観測という 科学的アプローチによって,大煙突が排 煙の希釈に効果的であることを確認し た。その結果,日立鉱山は,1914年,標高 328 mの山頂に高さ155.7 mの大煙突を建 設するに至り,煙害を激減させた。大煙 突をめぐる創業当時の親会社の経験は, 「優れた自主技術・製品の開発を通じて 社会に貢献する」という日立製作所の企 業理念に受け継がれることとなった。 地球温暖化問題,大気汚染,水質汚染な どの個々の環境問題に対処するためにも, 優れた技術の開発が必須である。特に地 球温暖化問題のように,早期の「ピーク アウト」が必要な課題に対しては,革新的 な技術開発を加速することが求められる。 日立グループは,環境事業におけるテ クノロジーリーダーをめざして,革新的 な技術開発に,積極的に経営資源を投入 する。 温暖化防止,生態系保全, 資源循環に取り組む 現在,地球温暖化防止が最大の地球環 境課題である。加えて,『成長の限界』に 立ち戻って考えると,資源消費と環境汚 染という二つの制約を,より広くとらえ る必要がある。日立グループは,過去の 継続的な取り組みを通じて蓄積された人 的・技術的リソースを最大限活用して, 地球温暖化の防止だけでなく,生態系の保 全,資源の循環的利用の分野においても, 製品・事業を通じた貢献を行っていく。 この取り組みは,日立グループ一体と なって,グローバルに推進する。グローバ ルな取り組みの例としては,「中国雲南省 における電機システムの省エネ・余熱余圧 利用モデルプロジェクト」が挙げられる。 日立のインバーターユニットを納入し, エネルギー消費量を大幅に削減するプロ ジェクトであり,現地政府組織・機関と の協業を有効に機能させるグローバル規 模での「協創型プロジェクト」の典型例 である。また,中国におけるこのような プロジェクトは,将来の省エネルギー・ CO2削減ポテンシャルが大きく,途上国 とグローバル社会全体に対する多大な貢 献が可能である。 環境事業,環境管理, 環境コミュニケーションを一体推進する エール大学教授D・C・エスティ他著 『Green to Gold』(2006年10月)などは,環 境経営戦略論の構築に取り組んでいる。 この著作では,成長ポテンシャルを実現 することが主要テーマとなる「環境事業」 の 分 野 と ,リ ス ク 管 理 の 徹 底 が 主 要 日立鉱山(茨城県,1960年ごろ) 「中国雲南省における電機システムの省エ ネ・余熱余圧利用モデルプロジェクト」合 作協議書調印式(2007年9月)

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05 foreword テーマとなる「環境管理」の分野を統合 戦略にまとめる必要性と方法論が論じら れている。 日立グループにおいては,2006年3月 に発表した「エミッションニュートラル」 のコンセプトに基づいて,環境事業と環 境管理の統合を実現する。 「エミッションニュートラル」は,生 産活動のために使用されるエネルギーや 温室効果ガス排出などの「直接環境負荷」 の量と,製品の消費電力や使用済み製品 の再資源化に使用するエネルギーなどの 「社会的環境負荷」の削減量を同等とする ことを指す。日立グループは,2015年度 に「エミッションニュートラル」を実現 することをめざしている。 環境経営活動に関するコミュニケーショ ンについても,環境事業と環境管理に関 する取り組みを一体のものとして,ステー クホルダーにご理解いただけるよう , 「持続可能な社会を共に創る」という精 神の下,ステークホルダーとの対話の場 を充実させていく。 「環境ビジョン2025」を推進する 昨年12月20日,日立グループは,環境 経営に関する長期計画「環境ビジョン 2025」を発表した。 「環境ビジョン2025」においては,地球 温暖化防止に関する対策を強化し,以下 の二つを具体的な目標として掲げている。 (1)2025年度までに日立グループ製品 により,世界全体でCO2排出抑制量1億t の実現をめざす。 (2)2025年までに日立グループ全製品 を「環境適合製品」とすることをめざす。 「CO2排出抑制量1億t」という目標は, 2015年に「エミッションニュートラル」を 達成した後,日立グループ製品の使用に よる「社会的環境負荷」の削減量をさらに 拡大するという意味を持っている。CO2 排出量1億tは,日本全体のCO2排出量 (2005年度)の約7%に相当する量である。 「環境適合製品」は環境配慮に優れた 製品であり,これを大幅に拡大すること により,「CO2排出抑制量1億t」実現を確 かなものにしていく。そのための経営資 源の投入を積極的に行う。 これらの目標の実現を支えるのは日立 グループ一人一人の意識であり,日々の 行動である。地球環境保全に関する過去 100年にわたる日立グループの取り組み を継承し,コーポレートステートメント Inspire the Nextの精神の下,次の100年に 向けた新しい発想と行動を生み出す人材 を育てるための活動を行っていく。 おわりに この特集「日立グループの地球環境戦 略」においては,地球温暖化の防止,資源 の循環的利用,生態系の保全という重点3 分野における技術開発の取り組みを紹介 する。その内容は,材料,部品,コンポー ネント,プロダクト,システム,サービス・ソ リューションという幅広い取り組みをカ バーしている。地球環境保全に向けた日立 グループの貢献は,これらの優れた技術 によって実現されるものであり,今後と も,革新的な技術を社会に提供できるよ う,不断の努力を行っていく考えである。 参考文献 1)D・H・メドウズ,外:成長の限界,ダ イヤモンド社(1972.5) 2)D・H・メドウズ,外:成長の限界 人 類の選択,ダイヤモンド社(2005.3) 3)Intergovernmental Panel on Climate Change:Climate Change 2007: Synthesis Report(2007.11) 4)International Energy Agency:World

Energy Outlook(2007.11) 5)D. C. Esty, et al.: Green to Gold

(2006.10) 環境対策セミナーを行った日立グループの

総合展示会「Hitachi Inspire Life」(2008年2月, 英国・ロンドン)

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参照

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