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担保権競合に関する経済分析

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担保権競合に関する経済分析*

河  相  俊  之

1 はじめに  次のような事例を考えよう。ある会社Xが代金後日払いでAに商品を引き 渡した。Aはその代金を支払う前に商品をYに売却し,姿を消した(破産その 他)。いまYが所持(占有)している商品をXは取り戻すことができるであろう か。  現在の民法においては次のような判断が下される。商品がいわゆる普通の動 産(特別の公示制度がない動産)であれば,その商品がAに占有されていた以上 それをAの所有物と見なすことは通常の判断である。よってYに過失はなく, たとえXが所有権留保を行っていたとしても,取引の安全を図る必要もあるか ら,結果としてYにその商品を引き渡す義務は生じない。法律的には民法192条 の善意取得によってYはその商品の所有権を取得できるのである。よってX はAを捜しだして損害賠償を請求しなければならない。特別の公示制度がある 場合には,原則的にいってYがその公示制度を信用して取引していたのなら, やはり商品を引き渡す義務はYに生じない。  このような三者間の問題には,担保事項が絡んでいる場合も多い。例えばY * 本稿作成に当たり,本学諸先生方から多くのコメントを頂いた。特に古積健三郎講師か  らはモデル構成のモチーフを得,そして機会を見付けては種々の相談にものって頂いた。  ここに記して感謝したい。勿論,有り得べき誤謬は筆者の責任であり,いまだ議論が不完 全な点もここにお許しをお願いしたい。また,法律的な事項について専門家でない筆者が 誤りを犯している可能性があり,それも当然筆者の責任ではあるが,御寛容を(特に専門の 先生方に)請いたい。  本稿は平成6年度教育研究学内特別経費による研究成果の一部である。

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92  彦根論叢第297号 のAに対する債権のために商品がYに譲渡された場合がそうである。そこで も同じようにXとYの間に争いが生じるのであって,最初の事例も含めてこ のような問題は,広く担保権の競合に関する問題と捉らえられよう。そして概 して上に示した通りの結果が法律的には生じるといってよい。しかし,明らか にこれら取引は経済的行為に他ならないから,民法の規定することが経済学的 に何を意味するかを考察する必要があるし,また経済学的分析から見た判断と はどういうものかも興味あることである。Aによって社会的に生じた問題もし くはコストに対して,その負担をXがほとんどを被り,Yが負担しないことの 経済的な影響とはどういうものか,負担分の価格転嫁によるYへの影響はいか なるものか,公示制度の効果とはどういうものか,その他にも挙げることは可 能だろう。  本稿の目的は,以上のような担保権競合の問題について,簡単なモデル分析 を行うことである。しかし,ある一つのモデルの提示及び分析と,筆者自身の 諸問題理解の第一歩という段階であり,モデルの改善,議論のより深い理解, その他がまだ必要であることを最初にお断りしておきたい。 II モデル  次のような簡単な状況を考える。ある財を代金後払いのもとで販売するX, その財を購入し転売するA,そしてAからその財を購入するYが,それぞれ多 数存在するものとする。Aのなかでαの割合のものは, Xに対する代金未払い のままで姿を消すものとし,その所持していた財はYに売却される可能性があ るものとする。その代金未払いのAから財を購入したYとその財に対する債 権を持つXとの間に争いが生じる。ただし(一般に)完全ではない情報(公示)制 度が存在する場合も考えられ,その場合Yがコストを支払って情報を得たな ら,争いになる危険をいくらか回避することができて,過失を問われない。  以下,情報(公示)制度が存在するものとしてまずモデルを構成する。そのあ る特殊ケースとして,情報(公示)制度が存在しない場合が現れる。

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      担保権競合に関する経済分析   93 【Xの行動】Aに対して財を価格pでxsだけ販売すると,(1一α)xsの量に関 しては必ず収入が見込めるが,残りについてはYとの争いの問題があり不確実 である。その残りの収入分をγ餌sとする。例えば,もしYが争いに全面的に勝 利するなら,比率であるγの値は0である。Xの最大化行動は次のようになる。    璽(1一α+γ)が一・(xs)       り 。(xs)は費用関数であり, c’>0, c”>0を仮定する。この問題を解くことによ り, (1−a十7)p=c’(xs) が得られる。 【Aの行動】繁雑さを省くために,財に関する関数のみを与える。 x=D (P , q) (1) (2) ただし,qはYに売却する場合の価格である。1)p<0, Dq>0であり,また参入 等によりAの利潤はゼロであるとの想定をおく。代金未払いで姿を消すAの 割合であるαは一定値とする。 【Yの行動】Yの効用関数をu=V−P−e/ωとする。ただし,V, eともに各 Yによって相違するものとする。V(≧0)は財から得る価値, Pは支払額, e/ω は情報を得るためのコストである。ここで情報とは,問題を起こさないAと取 引する可能性が高まるような情報であり,公示(情報)制度を利用して得られる ものである。e(≧0)は情報の価値,またωは情報(公示)制度使用の簡易さのパ ラメータであり,ωが大きくなれば各Yのコストが小さくなることを念頭にお    2) いている。VがそれぞれのYにおいて値が相違することは当然であるが, eが 各Yによってその値が相違することを仮定するのは,不完全な情報(公示)制度 1)以下,関数の表示に関して独立変数の表記を省くことを,問題が生じないであろう範囲 で多用する。また微分はダッシュ,偏微分は関数への添字を使う。 2)1/ωを情報価格のように捉らえることもできよう。

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を考えているためである。Vとeは独立に分布しているものと仮定し,人口を N,それぞれの分布密度関数をf(V),g(e)とする。  Yは財を1単位購入するかどうか,その際に情報を得るか否かの選択をせま られているものとする。財を購入しなければ,効用は0であるので,Yの最大 化行動は次のようになる。 max{V−q−6ptP, V−q−e/o, O} 情報を得ずに財を購入する場合,情報を得て財を購入する場合,財を購入しな い場合の効用値の中で最大の場合を選択する。βは情報を得なかった場合のX との争いになる確率であり,μはそのときの支払割合である。公示(情報)制度を 利用しなかったわけであるから過失があることになり,一般的にはμの値は1 であるが,公示(情報)制度が存在しない場合の分析のために,ここではμとし ておく。情報を得た場合にはYは無過失であり,よって第二式の中にそのよう        3) な支払い割合を示す値は含まれない。  情報を得ず購入される財の量をy,情報を得て購入される財の量をzで表す ものとする。情報を得ない場合は,第一式と第二式を較べて,βωμヵ≦eが条件 であること等を考慮すると,それらの値は, ・一NL{鷹評)9(・)dV}de

・一N∬ゆ肱γ)・(・)晦

(3) (4) となる。  主体行動者の記述は以上であり,モデルを閉じるためには需給均衡等が必要 である。  XとAについての需給一致式として, xS =x (5) 3)Yが危険中立的であることを仮定している。しかし,危険回避的な場合も本来視野にい れなければならないだろう。

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      担保権競合に関する経済分析   95 がある。  次に,AとYとの間の需給一致が必要であるが,その記述のためには公示(情 報)制度についての想定を特定しなければならない。それを,制度によって情報 を得たものは一定確率λで必ず問題を起こさないAと取引できるようになる, ということにする。すなわち,λ=1であれば,情報を得ることによって問題を 起こさないAを知ることができる。もし公示(情報)制度がより不完全であれ ば,1>λ>0であって,問題を引き起こすAと取引する可能性が残ることにな る。このように考えると,AとYとの間の需給一致式は, (1一β)ニソ十(1一β)(1一λ)z十λz=(1一α)x (6) となる。誰もが情報を得なかった場合,すなわちz=Oのとき,y=・xとなるよ        4) うに,β=αと仮定する。  最後にXとYとの争いの結果によって,最終的にXが受け取る金額につい て, γxs=βμツ (7) が成立しなければならない。 4)(6)式における関係を図示すると次のようになる。        (1−a)x ax

tt2 Ys−u

      1−B : /3

 厳密には(6)式は,問題を起こさないAとそれに対応したYとの間の需給一周前であ る。すなわち,βを外生的な値としていることによって,姿を消すAの中でYに財を売れ ないものが存在することになっている。そして,その分のXへの支払いはなされていない ことになるから((7)式),その損害はXが被ることになる。  βが外生的な値でβ=αとすることはアドホックな仮定であり,YにもAと同じ割合だ け問題の生じるものがいる,という程度にしか意味付はないかもしれない。AとYの需給 一致について,X=y+Z,β=αX/{y+(1一λ)z}とすることによって,この辺りの問題を回 避できるが,変数,式ともに一つ増えることによって,計算がかなり複雑になる。モデル 構成上重要な点であるが,今後の課題としたい。

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 (1)から(7)式によってモデルは完結し,内生変数はxs, x, p, q,γ, y, zで ある。  公示(情報)制度が存在していない場合はz=0である。これは情報を得るコ ストが禁止的に高い場合,すなわちω=0というようにも考えられる。γ・= aμ である(1)式と,(2),(3),(5)式,及びy=x((6)式)でモデルは閉じることにな る。 III分析方向とモデルの特徴  公示(情報)制度がない場合,γ=αμであるので,現在の民法はモデルにおい てμ=・Oとおいていることになる。しかし経済学的観点からは,Aによって生 じた損害をXとYがどのように受け持つのが妥当なのかが問題になる。社会 的余剰分析によって,公示(情報)制度がない場合のμの値の変化の影響を考察 することになる。  第二の問題として,公示(情報)制度の導入が経済にどのような影響を与え, そのことが特にYの厚生をどのように変化させるのか,ということがある。確 かに公示(情報)制度の導入が必ず全てのYの厚生改善になれば,その制度導入 はYからみて好ましい。しかし本モデルにおいては情報コストが高くて情報 (公示)制度を使えないものが存在し,必ずしもそれらYの厚生が改善するのか どうかは考察の余地がある。逆にこのことから,公示(情報)制度はどのような 性格を持つべきか等の問題を考えることができよう。  本稿モデルは以上の問題を考察できるように構成されているのは当然である が,「法と経済学」の分野における既存研究との関連からは,次のような特徴を      5) もつであろう。 5) 「法と経済学」の分野は幅広く,本来怠惰な筆者に多くのことを述べる資格はない。そ の点でここでの言及はささやかな限定的なものでしかない。特に,有価証券に関する「法 と経済学」については,多くの関連が出て来る可能性を感じているが,ほとんど言及する ことができない。不遜ではあるが,将来の課題としておきたい。また,本モデルの方向性 全てが本稿分析によって完結されているわけではなく,その点についても今後の課題とし たい。

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       担保権競合に関する経済分析   97  まず,Aによってもたらされる社会的なコスト(損害)が完全に外生的で, X とYは回避する手段を持たないという点である。このことはある点で本モデル の欠点でもあり,損害がXやYの回避行動水準,注意水準に依存する場合が一       6)般的であろうし,損害賠償の「法と経済学」でもそれが普通である。しかし,

AがXとYの問に存在して問題を起こすという場合,XとYにどのような回

避手段があり,それがどのような作用を及ぼすかはモデルを構成するうえでか なり複雑であるように思われる。そして本稿ではむしろ,公示(情報)制度の導 入こそがある意味でYに回避手段を与えているという構成であり,その不完全 性,不平等性を考察することになってはいる。  第二に「法と経済学」における重要概念である,最安価損害回避者の原理に ついても触れておかなければならないだろう。一般にそれが効率的であるとい う観点から主張されたものであり,最も安い費用で損害を回避できる主体に損        7) 害を負担させよ,という原理である。民法におけるμ=0の判断は,この原理か らいえばXのほうがより安い費用で回避できるという判断でもある。一般に最 安価損害回避者の原理は優れた原理ではあるけれども,誰がそうであるのかを 決めることは必ずしも容易ではない,ということが一つの問題点として挙げら れる。本モデルは,公示(情報)制度が存在しない場合は最安価損害回避者の議 論とは全く対立しないが,公示(情報)制度が存在する場合に不平等性がYに存 在することを念頭においている,すなわちこの原理が採用しにくい状況を考察        8) するという方向性も持っているといえよう。 IV 厚生分析一一一公示(情報)制度がない場合 公示(情報)制度がない場合のモデルは,より整理して次のようになる。 6)損害が両方の注意水準に依存するゲーム的な状況を考察するモデルとして,その結果と ともに興味深いものに,Brown(1973)がある。 Hamada(1976)がその拡張を行ってい る。 7>この方面での最も有名な議論はCalabresi(1970)であろう。 8)モデルの構成において,品質と情報の経済学の分析,特にFaulhaber and Yao(1989)が 役にたったことにも触れておきたい。

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彦根論叢 第297号 (ユーα+ev)Ct)ρ=〆ω ・一N

L、瞳

y=D (P , q) (8) そしてこの部分的経済における社会的余剰(S)は次のとおりである。

s−N

ュ†岬)∫(V) dV+ (1−a+ apt)勿一・(・) (9)  問題は,(8)の体系の下で(9)の社会的な余剰を最大化しようとするμの値は どのようなものなのか,それは民法が現在に指示しているような0という値な        9) のであろうか,ということである。その考察のためには(8)の体系を前提として Sをμで微分等行えばよいが,実は(9)を振りかえれば,yが大きくなればSは        10) 大きくなることが分かる。よって(8)の体系において比較静学を行い,μのyに 与える影響を調べることで十分である。(8)の諸式を全微分すると, 6

 11

1−a十 apt 一Dp αμ八ゲ

−oM

 妙

 =

のゆ吻

ーー

 ワ

・のM

である。Cramarの公式を使用すれば,    [2ti一=一gft?7)iAfL/{Dp+(1−a)D,} 9)形式的にいうなら,実は社会的総余剰はSの値に姿を消したAが得た。⑳を加えるべ  きである。しかし,そのようなaPyを加えることは本稿の目的にはそぐわない。姿を消し  たAの得る不当な余剰は無視してしかるべきである。   ただ,opyが加えられていない余剰全て(すなわち(9)式)は, Yの全効用を簡単にσ(y)  と表すならσ(y)一。(y)一aPyであり,pの値が中に入ってしまう。そしてここで解こうと  している問題は(8)の体系の下でとしているので,厳密には純粋に社会的最適問題を解いて  いるようにはみえない。もし(9)式を基準とした純粋な社会的な最適状態を考察するなら, pについての何らかの仮定か,もしくは新たな枠組みが必要になるかもしれない。 10)ある意味でXとYに対立はないことになり,実は少し結果が単純なかたちになる原因  となっているといえよう。そして,Xが独占的な主体行動者である場合にどのようになる  のかを考察することは,一つの方向かもしれない。

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      担保権競合に関する経済分析   99 となる。ただし,ノは左辺の行列であって,IA={Dp 一 evμDq}Nc”f一(1一α+        αμ){Nf+Dq}〈0である。明らかにDp+(1一α)Dqの値が負であればμを大き くすること,すなわちAによって生じた損害をよりYに支払わせることが厚 生の改善になり,正であれば小さくすること,Xにより支払わせることが厚生 改善である。  厚生分析の立場からμをどのように決めたらよいのかという問題が,そのμ の値と直接的に関係するXとYの行動様式ではなく,Aの行動様式(Dの形 状)にのみある点で決定的に依存するということは少し意外な感も受けるが,モ デル的には次の単純な理由からである。すなわち,XにとってもYにとっても yの大きくなることがその余剰にとってプラスであるから,そのyに否定的な 影響を与えないようにコスト(Aによる損害)を課すのがよい。例えば,1)qの絶 対値が小さいのならば,AとYとの取引において価格の変動は取引量,すなわ ちyの変動に大きな影響を与えない。そしてDpの絶対値が相対的に大きいの であるなら,AとXとの取引において価格の変動はyの変動に大きく影響す る。ならば,コストは夕により大きな変動(影響)を与えない方に課すのがよ       12) い。それはYの方であり,μを大きくすることである。  以上により,本モデルの想定下においては,現代民法がμ=0とおくのは,Dp       13> +(1一α)Dq>0と考えているからということになる。しかし,このことは常に 確かかというと,そうではないだろう。状況によって,すなわちAの行動様式 によってはμ>0とおくべきであろう。  ただし,現実的には種々の状況によっては,必ずしも裁判所が(もしくは民法 においても)μ=0とおいていないことも十分考えられる。法律は常に形式のみ 11)dP/d#, dq/伽の値はそれぞれ,

  劣一蹴・・劣一一・・

 である。 12)ある意味で,最安価損害回避者の議論と通じるものであるといってよいだろう。 13)厳密にいえば,μ=0のためにはpとqのとる全域にわたって1)p十(1一α)Dq>0が必  要である。

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によって判断されるものではなく,現実諸関係を十分吟味して判断が下される ものであるから,必ずしもここでの結果が,法律判断と完全に相違していると はいえないであろう。そして,やはり上記結果は本モデルの想定下という極め て限定的事情下でのものであり,例えば前節でも述べたように,XとYに回避 手段が与えられれば,結果が大きく変化する可能性も当然存在する。 V 公示(情報)制度の考察  公示(情報)制度の存在がどのような影響を与えるのかが問題である。そのこ とを考察するために,ωの変化が諸変数にどのような影響を与えるかについて の比較静学を行う。公示(情報)制度が存在する場合のモデルの体系(1)∼(7)が, 次のように整理できる。 1)(P,(?)一S((1一α十γ)P)=0      こンつ      

(・一・)N磁・)鹿柵y脚

   +(・一・+・・)N蒋)礁y)dV}de        一(1−a)D(P,q)=O

禦N

U)漉偽、y脚切(P・q)一・

(10) (11) (12) ただし,Sは。’(xs)の逆関数(Xの供給関数)であり, S’>0である。全微分を 行うと,     ai, i 1 dq 1=1 b, l dbl       d7

an=Dp一 (1−a十y) S’ ai 2= Dq ai3=一PS’

‘Z2 i= m (1−a) a”Alfth 十 cr 2 blptINgdi 一 (1−a) D,

(11)

      担保権競合に関する経済分析  101    Cl・2一一(1一・聯一(・一・+・λ)厩黙・)∫(・+e/・)de一(1一・)Dq    a23=O cz3 i=一a2pt 2Ar (blgip 十fth)一7D,

   a32=一aptlVfth−7Dg a33 =一D bi 一一〇

   b2=一a2# APNgdi 一x b, =a2pt 2PNgdi ・な・・ただし・f一〆(q+a・・P)・…9(卿)・φ一

揀チ剛冠雛)d・・

x一(1−cr十aA@  Q)2)N

氈E噛+e/・)deで理詰の行列をK・表言己す

       15) る。安定性を仮定するとIKIは負であることがわかる。  いま,Yに与える影響に焦点を絞ることにする。前節の場合には単に取引量 が増えるかどうかのみにすべてのYの厚生が結局は依存していたが,ここでは 公示(情報)制度が存在するため,情報を得たものと得ないものとでその余剰が 相違してくる。その影響を知るためには,明らかにpとqの変化が問題であっ て,情報を得ないものにとってはq+αμ♪が大きくなると厚生が低下するのに 対し,情報を得るものにとってはq+e/ωが大きくなると厚生が低下する。  計算の結果,次を得る。    一£ltll一=fit r (b2 {PS’ (a;aNfV + 7D,) + D,D } + a,,a2pt 2p2NgS’¢)          (a2ptPIVgdi +x) {Dp一 (1一 ev + 7) S’}D    dq 一 1 i−a2geAP21VgS’diD,一(1−A)a‘”32V2p2{zlEg’v    do ”一 1 K 11 +ps’x{cr2pt2N(wg¢ +fth)+7Dp}        + a2pt 21VP 2gS’ di { a”NfV + (1−a) Dp}  の2とb、は共に負であるから,明らかにdP/dωは正の値をとる。よって,例 えばωが0から正の値になること,すなわち公示(情報)制度の導入は,必ずX ・4)f’(V)・dV−F(・V)としたとき, F(・・)一・, F(・)一・である。 15)p,q,そしてγについてもその調整過程を考え,う=(10>式左辺,々=(11)式左辺,シ=  (12)式左辺,と想定している。この微分方程式体系における近傍での安定条件の一つとし  てIKIく0を得ることができる。

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とAとの間の取引価格を上昇させることになる。またωの値が大きくなるこ と,公示(情報)制度の改善も同じ効果を持つ。dq/dωの値の正負は確定的では ない。  すべてのYの厚生に影響を与えるqは,上昇,下落の両方の可能性があり, もし下落すれば,すべてのYの厚生にプラスであり,逆は逆である。しかし問 題は,情報を得ないで財を購入するYに影響を与えるpを含む項と,情報を得 て財を購入するYに影響を与えるωを含む項は,それぞれのYの厚生に逆方 向の影響を与えることである。すなわち,dP/dω>0であるためにωの値の上 昇は,情報を得ないYの厚生にはマイナスであるのに対し,明らかにPが影響 しない情報を得るYの厚生には情報のコストが低下することによってプラス である。情報を得るYに対し,情報を得ないYは,公示(情報)制度の存在が相 対的に不利ということである。もしdq/dω>0ではあるが,その値が小さいの であれば,情報を得るYは厚生が改善するのに対し,情報を得ないYは厚生が 悪化することになる。情報に関するコストが小さいものが相対的に有利なので ある。  以上により,不完全な公示(情報)制度は,それを利用できるものと利用でき ないものの利益の差を拡大させる方向にあるといえる。このことは平等の観点 からいって好ましいとはいえないであろう。全てのYが利用できる公示(情報) 制度でない限り,Yの立場からではあるが,その導入は行われるべきではない といえるかもしれない。現実にも,種々の事例につき有効な公示(情報)制度を 確立することは検討されてはいるが,具体的には難しい問題として残っている といえよ蓼)。 16)dγ/4ωの符号は確定しそうにない。よってXの余剰についての影響も不確定であろう。  すなわち,社会的な余剰についてはなおさら確定的でない。より詳しい公示(情報)制度が  Xに与える影響,他のパラメータが与える影響等の分析は,より深い考察とともに,今後  の課題としたい。

(13)

担保権競合に関する経済分析  103

VI若干の事例考察

 本節では,若干の現実有名事例について,以上で得た結果をもとにして簡単 な考察を行う。ただし,本来なちば現実の法律事象に関する判断はその現実諸 関係に密接に関連しているのが常であるのに対して,ここで行う考察は,それ ら現実法律事象を極めて単純化したかたちで捉えて,それを特別で限定的なモ デル分析によって得た結果によって判断しようというものである。方法論的に も,また筆者の(特に法律事項に関する)力量からも若干の問題点があるだろう        17) ことは,事前にお断りしておきたい。  まず関連が深いであろう事例として,所有権留保売主の地位に関する最高裁 昭和50年2月28日判決がある。事実としては次のとおりである。X社は自動車 ディーラー,A社はサブデ/一ラーで,両者は協力して販売をしていた。ユー

ザーであるYはA社から自動車を購入したが,その自動車はX社がA社に対

して割賦方法で,すなわち代金完済まで自動車の所有権がX社に留保されると いうかたちで売却されていたため,後にA社が完済できない状態に陥ったと き,X社はYに対して自動車の引渡を訴求した。判決は次のとおりである。 X 社とY社は協力して販売を行っていたにもかかわらず,そのような訴求を行う ことは,X社自らが負担すべき代金回収不能の危険をYに転嫁しようというも のであり,自己の利益のためにYに不測の事態を蒙らせるものであって,権利 の濫用として許されない。  この事例はそれぞれモデルの主体行動者の記号,役割とも一致した、かたちで あり,また自動車といういわゆる登録(公示〉制度が存在する動産のために,本 稿と関連深い例といえるであろう。この場合,公示(情報)制度が存在するので あるが,X社がYへの販売にもかかわり,必ずしもユーザーYにとって実質的 17)この節は,しかしながら,理論と現実を結ぶということでもあり,このような考察を行  うことは避けられない側面も持つであろう。またモデルの改善その他のためにも,現実事 例の紹介が必要であろう。ただし,その紹介も極めて簡単なものであり,より詳しくは例  えば星野,平井(1989)を参照。また筆者自身がこのような事例を聞き,興味をもち,モデ  ル分析に進んだことも付け加えておく。

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には有効ではなかったということであり,不完全な公示(情報)制度であろう。 本稿の分析によれば,もしX社に自動車を引渡さなければならないのであれ ば,情報を得ないY,すなわちコストの多大であるYは,情報公示制度の存在 しない場合よりも厚生的に不利であるかもしれない,ということになる。よっ てYに勝訴というのがモデルの結果からの一つの判断となろう。判決と本モデ ルとの結果は一致する方向にあるといってよかろう。  次に,集合動産の譲渡担保に関する最高裁昭和62年11月10日判決を考える。 事実は次のとおりである。X社はA社と極度額を20億円とする根譲渡担保契約 を締結した。その内容として,担保目的物を倉庫他,保管場所に存する在庫商 品とし,その所有権をX社に移転し,在庫商品と同種のものを取得した場合に はA社は原則として保管場所に搬入しなければならない,とした。さてA社は Y社から商品を購入し保管場所に搬入したが,Y社とX社との間でその商品の 帰属につき争いが生じた。この事例は,譲渡担保の目的物として構成部分の変 動する集合動産が担保として有効か,ということが主要な法律的問題点なので はあるが,ここでは判決がXの勝訴であるということに注目する。  この事例は,公示(情報)制度は存在しない鴬合,そしてモデルの記号,役割 が一致しているとみてよかろう。その場合に判決はXを勝訴させている,すな わちモデルにおいてμ=1と判断している,ということになる。本稿モデル分析 の結果によれば,それが肯定されるにはAの行動様式に一定の条件が満たされ なければならない。それはラフにいうなら,Aの行動に関してX側とY側の取 引どちらがより変動しやすいかであり,この場合Xの側の取引の方が変動しや すいのか,ということである。この点は具体的な事例によって判断されなけれ ばならないが,確かにこの場合,X社のように多額のお金を貸す立場が弱めら れると,A社の取引全体も小さくなる可能性はありそうである。その点では判 決を肯定する方向にあるといえるであろう。判決もしくは学説の中にも,取引 の活発化という利益を優先させることを,X側勝訴の理由の一つとしてもい 18) る。 18)例えば,古積(ユ994)第2節を参照。

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担保権競合に関する経済分析  105 VII おわりに  本稿では,担保権の競合について経済学的モデル分析を行い,IV, V節の分 析により,主として次のような結果が得られた。  第一に,XとYとの争いにつき,現民法においてはXにその損害を負わせる 方向があるが,必ずしもそれが常に望ましいわけではなく,その判断はAの行 動様式に左右される。  第二に,公示(情報)制度は,その制度を利用して情報を獲得できるものに有 利であり,そうでないものには厚生を悪化させる可能性が大きい。よって公示 (情報)制度は,すべてのものが利用できる完全に近いかたちで導入されるべき であろう。  既に本文中で述べているように,これらの分析結果はより深い理解,よワ深 い考察によって改善されて行くべきである。       参 考 文 献 Brown, J. P., “Toward an Economic Theory of Liability”, fournal of Legal Studies, 1973. Calabresi, G., The Cost of Accidents : A Legal and Economic Analysis, Yale University   Press, 1970. Faulhaber, G. R. and D. A. Yao, “Fly−by−night Firms and the Market for Product   Review”,ノbzarnal Of In dustn’a l Economics,1989. Hamada, K., Liability Rule and lncome Distribution in Product Liability, Amen’can   Economic Review, 1976. 浜田宏一『損害賠償の経済分析』東京大学出版会 1977. 半田正夫『やさしい担保物権法』法学書院 1989. 小林秀之,神田秀樹『「法と経済学」入門』弘文堂 1986. 古積健三郎 「流動動産譲渡担保」と他の担保権の関係 彦根論叢第287・288号,289号 1994. 宮沢健一編『製造物責任の経済学』山嶺書房 1982. Posner, R. A., Economic Analysis of Law, Little, Brown, 1992. 星野英一,平井宜雄編『民法判例百選1総則・物権(第三版)』別冊ジュリスト No.104   1989.

参照

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