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Journal of Japanese Society for Emergency Medicine P-ANCA 抗体価の漸減中に肺病変の再燃を認めた 顕微鏡的多発血管炎の 1 例 三木重樹 田中孝也 北澤康秀 弘津喜史 武山直志 中谷壽男 要旨 P-ANCA 抗体価の漸減中に肺病変の再

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Academic year: 2021

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(1)

儘告

        P-ANCA抗体価の漸減中に肺病変の再燃を認めた

       顕微鏡的多発血管炎の1例

三木 重樹  田中 孝也 武山 直志  中谷 壽男 北澤 康秀  弘津 喜史 【要旨】 P-ANCA抗体価の漸減中に肺病変の再燃を認めた顕微鏡的多発血管炎の1例を経験したの で報告する。症例は76歳の女性。数日間続く下痢および呼吸困難を主訴に紹介入院した。入院時胸 部画像所見で両肺野に浸潤影を認め,肺炎の診断のもとに抗生剤投与を開始したが改善せず。尿蛋 白・尿潜血陽性,P-ANCA抗体価高値および胸部X撮像より顕微鏡的多発血管炎(以下MPA)と診 断した。ステロイドによる免疫抑制療法を開始したがステロイド漸減時に血管炎の再燃と思われる 間質性肺炎/肺線維症を認めた。今回P-ANCAをマーカーにステロイドの減量を行ったが, P-ANCA が低下傾向にあるにもかかわらず再燃をみた。再燃前に血小板数,CRP, FDPなどが変動し,再燃 時にはKL-6,ピアルロン酸が上昇した。 MPAの管理においてはP-ANCAのみならず,種々の炎症 性のパラメーターを総合的に評価し,再燃の予測に細心の注意を払う必要がある。 索引用語=MPA, P-ANCA,ステロイドパルス療法 はじめに  血管炎を基盤としてもたらされる多種多様な臨床 病態は血管炎症候群と総称され,血管炎を原発とす る独立した症候群と全身性エリテマトーデスなどに みられる二次性に発生する症候群とに大別される。 原発性に発生する血管炎は障害される血管のサイズ により大動脈幹動脈に主病変をきたす高安動脈炎な ど,中小動脈が障害される結節性多発動脈炎など,細 小血管が障害されるMPAなどに分類される。血管炎 の診断は今日まで紆余曲折があり混乱している面も A Case of Microscopic Polyangiitis Complicated by a Flare-up  of Pulmonary Lesions in spite of Decreasing Plasma P-ANCA  Levels Shigeki MIKI, Takaya TANAKA, Yasuhide KITAZAWA,  Yoshifumi HIROTSU, Naoshi TAKEYAMA and Toshio  NAKATANI Departmemt of Emergency and Critical Care Medicine, Kansai  Medical University 関西医科大学救急医学科 〔原稿受付日:2003年12月8日 受領No.15-045〕 あるが,MPAは1993年のChapel Hillの会議で結節性 多発動脈炎から細小血管の壊死性血管炎を主病変と する本疾患が分離独立した1)。細小血管の壊死性血管 炎を基本的疾患とするMPAはミエロペルオキシダー ゼを中心とした抗好中球細胞質抗体(P-ANCA)陽性 率が特徴的に高く病態分類,確定診断に有用である とされている。今回MPAにて発症した呼吸障害,腎 障害に対してステロイド療法を施行しいったん寛解 したが,その後再燃とほぼ一致してKし6,ビアルロ ン酸が高値を示した興味ある症例を経験したので報 告する。 症 例

 患者:76歳,女性

 主 訴:呼吸困難  家族歴:父 胃癌,母 肺結核  既往歴:21歳時腎孟腎炎,28歳時肺結核(36~46 歳まで入院加療)。46歳時より高脂血症,気管支拡張 症にて近医にて内服治療中。  生活歴:タバコ30本/日×40年,アルコール(一)。

(2)

表1 入院時検査所見 《血算》

WBC

Neut Lym Eos

RBC

MCV

MHC

MCHC

Hb Ht PLT 《凝固系》 ur APTT Fbg FDP 《感染症》 HBs Ag HCV Ab HIV Ab 140 × 102 /pt    94 90    390    090 246 × 104 /pt   88.2 fl   31.0 pg   35.1 g/dl    7.4 gtdl   22.0 90 32.7 × 104 /pt 87 90 33.0 sec 482 mgld1 19.6 lig/m1

)))

《尿所見》 比重 潜血 蛋白 糖 赤血球円柱 穎粒円柱 ろう様円柱 《生化学》 TP AIb T-Bil ALP ChE

GOT

GPT

LDH

BUN

Cre Na

K

Cl BS 1.015 (+++) (+) (±) (+) (+) (++) 6.9 g/d1 2.2 g/dl O.2 mg/d1 218 IUA 68 IUA 31 IUA 14 IUA 338 IUA 72 mgtd1 5.4 mg/d1 135 mEqA 3.5 mEqA 96 mEqA 303 mg/dl 《血清・免疫》

CRP 13.83 mg/dl

Ig-G 1330 mg/dl

Ig-A 249 mg/dl

Ig-M 37 mg/dl

Ig-E 119.0 IU/ml

C3 101 mg/dl

C4 26 mg/dl

CHso 41.7 U/ml

Ccr 7 ml/min

TSH         5.06 p皿J/ml

T3 O.84 ng/dl

FT4 33.6 ngtdl

フェリチン  298.6ng/dl

Fe 17 “Ag/dl

UIB C       l56μg/dl TIBC 173 “ig/dl

KL-6 229 U/ml

ピアルロン酸   349ng/ml ANA      20倍以下 RF      201Ulml以下 C-ANCA    10 EU未満

P-ANCA 322 EU

 現病歴:平成15年1月はじめより感冒様症状を認 めていた。その後,下痢が出現し持続するため,近 医を受診し整腸剤の処方を受けた。2月18日強い全 身倦怠感が出現したため,再度近医を受診し点滴加 療を受けた。一時帰宅したが同日,呼吸困難および 下肢の筋力低下をきたしたため紹介され入院した。 血液検査は年2回(4月,10月)定期的に行ってい るが,高脂血症以外異常を指摘されたことはない。  入院時現症:身長148cm,体重48.9kg,血圧182/ 92mmHg,脈拍1141分・整,体温34.5℃,眼瞼結膜 に貧血あり,全身リンパ節触知せず。両側全肺野に coarse crackleを聴取した。両下肢に軽度の浮腫を認 めた。  入院時検査所見(表1):Hb 7.49/dlと高度の正野方 正色素性貧血を,WBC l l,400/Pt, CRP l3.83mg/d1と 炎症反応の充進を,BUN 72mg/dl, Cre 5.4mg/dlと腎 機能障害を認めた。尿所見は蛋白・潜血陽性,ろう 様円柱などを含む多数の円柱を認めた。  臨床経過(図1,2):搬入時Pao2/Fio2:97と高度 に肺酸素化能が低下していたため,気管挿管下の人 工呼吸管理を開始した。腎機能障害に関しては,当 初感染と脱水に起因するものと判断し補液による改 善を図った。胸部画像上(図3),両側胸水と両側肺 野の浸潤影を認め,炎症反応の充進と併せて細菌性 肺炎を疑い抗生剤投与を開始した。第3病日には肺 酸素化能の改善傾向を認めたため抜訂したが,再度 呼吸困難が出現したため第5病日再挿管した。腎機 能障害に関しては補液療法で著明な改善傾向を認め ず,確保されていた尿量も徐々に減少し体重増加を きたすようになったため,第17四日,週3回の血液 透析を開始した。肺の異常陰影は抗生剤投与後も著 明な改善を認めず,また頻回の喀疾培養検査も陰性 であった。第30病日,肺の浸潤影に比較して炎症所 見が著明でないこと,喀疾培養が常に陰性であった こと,抗生剤にほとんど反応しなかったこと,急速 に進行する腎障害を認めることなどにより血管炎を 疑いP-ANCAを測定したところ322 EUと高値を示し ていた。MPAと診断した第34病日から, methylpred- nisolone sodium succinate l,000mg/日のステロイドパ ルス療法を3日間行い,引き続き後療法として経口

(3)

KL-6 P-ANCA (U/ml) (EU) 1500 1000 500 o 400 300 200 100 o MpSS (lg/day) 1“ PSL (mg/day) 50 40 30

↓↓

40 30 20 15 10

  P-ANCA ,

        t        ’        t        ’       ’       t      ’      ’     ’     ’     t 一 ■ ■ 鱒 嘲 噛 ’  (74600)   一s  一..しし  k_  一7一 ”r  i      s t        s t      s t      t      覧 KL-6 , s t、ヒアルロン酸 t ピアルロン酸 ( × 103ng/ml) 6 4 2 1 14 28 42 56 70 84          図1 臨床経過 MPSS : methylprednisolone sodium succinate, PLS : prednisolone 98

  o

l12(病日) 気管挿管一・▼  抜管 一・▼ 気管挿管一量

CRP WBC

(mg/dl) (×107/pl) 15 10 5 o 200 150 100 50 o N 、噺’ 三管

1

        ,’、        ’      、        ノ        、   、      ノ    し       び    、     , ’  ’      、 ’ ’ ’

CRP

「晦隔@軸 鞠曽   s

  s

   s    s  抜管 気管挿管

s

1

 tSN ’ ’ P/F ratio       コココ  も       の ㌔一一一

@ WBC\

         、          、          、 Pre 400 300 200 100 1 14 28 42 56  図2 臨床経過 PIF ratio : PaO2/FiO2 70 84 98    0 112(病日) ステロイドを1mg/kg/日を目安としてprednisolone 50mg/日を投与した。ステロイドパルス療法3日目 より肺酸素化能は改善し,また胸部X線上の浸潤像 も縮小傾向を示したため,第45病日抜管した。高齢 を考慮し,prednisolone 50mg/日2週投与後, P-ANCA を活動性の指標として1週ごとに10mgずつ漸減す る治療を計画した。Prednisolone 30mg/日投与時中の 第61幻日に,再び呼吸困難が出現した。胸部X線上 でも全肺野のびまん性の透過性の低下と浸潤影を, 胸部CTにおいても両側胸水と小結節状陰影を認め た。再度のステロイドパルス療法と気管挿管下の人 工呼吸管理を施行したところ,ステロイドパルス療 法再開数日後に肺酸素化能や胸部X線像の改善を認 めた。その後図1のようにステロイド療法を行い,第 72病三三雨後も順調に経過し10mg/dayの維持量に て透析病院へと転医した。肺病変の悪化時において はP-ANCAの上昇を認めなかったが, KL-6およびビ アルロン酸の上昇を認めた。しかし転医の際には

(4)

籔酵魍t/ 図3 胸部画像(搬入時) KL-6,ピアルロン酸はともに低下傾向を示した。 考 察  1866年にKussmaulとMaierは発熱,末梢神経障害, 腎障害などの全身症状と,全身の中小動脈の動脈瘤 による結節を主病変とする:壊死性血管炎を,結節性 動脈周囲炎として報告した2)。しかし近年では特徴 的な炎症所見が動脈周囲に限らないことから結節性 多発動脈炎と改名された。その後本症は動脈よりも 細い毛細血管や細動静脈にも炎症性変化をみる症例 もあることから,hypersensitivity angiitisあるいは結 節性多発動脈炎のmicroscopic formなどの位置づけが なされ,今日のMPAへとつながつた。  MPAはとくに腎・肺を好んで侵し,腎では半月体 形成を伴う壊死性糸球体腎炎や巣状壊死性糸球体腎 炎像を呈し,肺では肺出血,間質性肺炎,肺線維症 を呈する。タイプとして腎限局型,肺限局型,腎肺 型に分類される。本例の入院当初の肺病変は検査値 (KL-6,ピアルロン酸)と画像所見より肺出血と考え られる。さらに,経過中に問質性肺炎/肺線維症を 起こした(KL-6,ピアルロン酸の上昇期)ものと考 えられる。尿中の多数の円柱,急速進行性腎障害を 認めたことから腎病変も伴っていた。したがって, 本例は腎肺型に分類される。本症例では血疾を認め なかったことが診断の遅れにつながったが,肺出血 の1/3の症例において血疾を認めないといわれてい ることから,本症の診断には注意がいる。血管炎発 症には,先行する慢性下気道感染の存在が,ANCA 形成に関与している可能性が指摘されている。本門 では既往の気管支拡張症に上気道感染が契機になっ て発症したと解される。  治療法は活動性の指標とされるP-ANCAをマー カーとしてステロイド投与を行いP-ANCA抗体価の 低下を確認後にステロイドの減量を行ったが,再燃 をきたした。最大の原因は高齢ということもあり, ステロイドの減量を厚生省の推奨する治療指針より も早期に行ったことにあると思われるが,マーカー としてのP-ANCAにあまりにも重点をおきすぎたこ ともピットフォールであったと思われる。本例では 再燃前よりKL-6が上昇傾向を示し,また再燃時にお いてKL-6,ピアルロン酸ともに上昇を示した。再燃 前にFDPの再上昇および血小板の低下, CRPの上昇 などの炎症に伴う検査値の変動も認めた。有村らは 肺出血時にはP-ANCA抗体価の上昇を認めるが,問 質性肺炎の活動性とP-ANCA抗体価の間には相関を 認めなかったと述べている3)。また吉田もANCA陽 性例でも20~40%において血管炎症候と無関係に ANCA抗体価が変動する症例がみられると述べてい る4)。本例においても肺出血にて発症時,P-ANCA抗 体価の上昇を認めたが,間質性肺炎による血管炎再 燃時にはP-ANCA抗体価の再上昇は認められず,上 記文献を支持する結果となった。またP-ANCAは検 査の迅速性に欠け,上記のように肺病変の活動性す べてを反映しないため,MPAの活動性の指標にはな らないことに注意しなければならない。本例では, 再燃前にCRP, FDP,血小板数などの変動を認めた

(5)

ことより活動性予測に有用ではないかと思われた。  以上よりMPAの治療においてはP-ANCAのみなら ず,多くのdataをもとに集中治療が必要であると考 えられた。また,腎・肺限局型でなく腎肺型におい ては,感染などの副作用に十分注意を払いながら厚 生省の治療指針に従い強力な免疫抑制療法が不可欠 であると考えられる。 結 論  MPAの診断および治療に関しては,以下の治療戦 略が必要と思われる。 1.原因不明の腎・肺疾患を認めた際には早期に   ANCA検索を行うこと。 2.いったんMPAと診断されれば年齢にかかわら   ず,強力な免疫抑制療法を行うこと。 3.MPAの管理に関してはP-ANCAのみならず血小   板数,CRP, FDP, KL-6,ピアルロン酸などの   パラメーターを総合的に評価し,再燃の予測に   細心の注意を払うこと。 文 献 1) Jannette JC, Falk RJ, Andrassy K, et al : Nomencla-  ture of systemic vasculitides: proposal of lnternational  Consensus Confence. Arthritis Rheum 1994 ; 37 : 187-  92. 2) Kussmaul A, Maier R : Ueber eine bisher nicht  beschreibene eigenthumliche Arterinerkrankung  (Periarteritis nodosa), die mit Mobus Brightii und rapid  fortschreitender allgemeiner Muskellahmung einhergeht.  Dtsch Arch Klin Med 1866 ;1:484. 3)吉田雅治:血管炎症候群;分子レベルの解析から  臨床まで.ANCA関連血管炎症候群の病態と治療.  日内甲会誌 2001;90:1702-7. 4)有村義宏,蓑島忍,田中宇一郎,他:ミエロペル  オキシダーゼに対する抗好中球細胞質抗体陽性症例  における肺病変の検討.リウマチ 1995;5:46-55.

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