Title
Japanese patients with mitochondrial 3-hydroxy-3-methylglutaryl
-CoA synthase deficiency: in vitro functional analysis of five
novel HMGCS2 mutations( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
吾郷, 耕彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1142号
Issue Date
2020-10-21
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/79870
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名 ( 本 籍 ) 吾 郷 耕 彦 (島根県) 学 位 の 種 類 博 士(医学)
学 位 授 与 番 号 甲第 1142 号
学 位 授 与 日 付 令和 2 年 10 月 21 日 学 位 授 与 要 件 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 目 Japanese patients with mitochondrial 3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase deficiency: in vitro functional analysis of five novel HMGCS2
mutations
審 査 委 員 (主査)教授 清水 雅仁
(副査)教授 中島 茂 教授 鈴木 康之
論 文 内 容 の 要 旨
Mitochondrial 3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase(HMGCS2)欠損症(OMIM #605911)は, ケトン体合成経路の酵素である HMGCS2 の欠損により肝臓でのケトン体合成に障害をきたし,飢餓時 に低ケトン性低血糖・アシドーシス発作を呈する常染色体劣性遺伝疾患である。本疾患は現在までに 世界で 29 症例が報告されおり,急性期尿有機酸分析での 4-hydroxy-6-methyl-2-pyrone(4HMP)の上 昇や,血中アシルカルニチン分析でアセチルカルニチン(C2),C2/遊離カルニチン比(C2/C0)の上 昇を認めるのが特徴的であると近年報告されている。本研究では,日本人の HMGCS2 欠損症が疑われ る 4 症例の遺伝学的解析を行い,病的変異と推定される 5 つの未報告ミスセンスバリアントを見出し た。さらに,それらの病原性の有無を明らかにするためin vitroでの機能解析をヒト由来培養細胞 と大腸菌の二つの実験系で行った。 【対象と方法】 1)解析対象:飢餓時の低血糖・代謝性アシドーシスと,その他検査所見より HMGCS2 欠損症が疑われ, 岐阜大学小児病態学に遺伝子解析依頼のあった日本人 4 症例を対象とした。
2)遺伝子解析:末梢血より Sepa Gene kit でゲノム DNA を抽出し,3 症例は PCR 法でHMGCS2遺伝子 の各 exon を exon-intron 境界部を含むように増幅後,direct sequencing を行った。残りの 1 症例 は,次世代シークエンサーにより,ケトン体・脂肪酸代謝に関わる遺伝子を含む 193 遺伝子の全 exon の配列を調べた。 3)ヒト由来培養細胞を用いた HMGCS2 タンパク質の発現解析: HEK293T 細胞に mitochondrial targeting sequence を含む野生型および 4 種の変異型HMGCS2をそれぞれ一過性発現させ,細胞を低 張液にて溶解しイムノブロット法にて可溶性部分の HMGCS2 発現量を比較した。 4)大腸菌を用いたリコンビナント HMGCS2 タンパク質の発現と精製:pGEX6P-1 ベクターを利用した 実験系を用いて,大腸菌 BL21(DE3)に野生型および 5 種の変異型 HMGCS2 を glutathione S-transferase (GST)融合タンパク質として発現させ,affinity chromatography にて精製した。GST は PreScission protease にて切断し,再度の affinity chromatography にて除去した。タンパク質濃度は 280 nm の 吸光度より算出し,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)とイムノブロットにて目的 タンパク質であることを確認した。
5)精製酵素を用いた活性測定(野生型と変異型の比較):Clinkenbeard らの活性測定法を改変した手 法により,分光光度計を用いて基質の減少速度を測定し,精製酵素の活性を算出・比較した。 【結果】
1)解析対象:対象症例の全例で,血中 C2,C2/C0 比の上昇と,尿中 4HMP の上昇を認め,近年の HMGCS2 欠損症の特徴に関する報告と同様の所見を得た。 2)ゲノムレベルでの遺伝子解析:HMGCS2遺伝子に,c.656G>A(p.G219E),c.704T>C(p.M235T),c.758T>C (p.V253A),c.1175C>T(p.S392L),c.1498C>T(p.R500C)の 5 つの未報告バリアントが確認され, 家族解析にて 4 症例全てが複合ヘテロ接合性であることを確認した。遺伝学的にも HMGCS2 欠損症で あることが強く疑われ,これらバリアントのin vitroの機能解析を行うこととした。 3)ヒト由来培養細胞での HMGCS2 タンパク質発現解析:野生型・変異型ともに, mitochondrial targeting peptide を含む未成熟型 HMGCS2 が全て同等に発現していた。成熟型 HMGCS2 は,G219E バ リアント以外では同等に発現していたが,G219E バリアントではタンパク質が検出できなかった。 4)大腸菌を用いた HMGCS2 の発現と精製:1 g の大腸菌から,野生型 147 μg,G219E 42.2 μg,M235T 258 μg,V253A 148 μg,S392L 66.5 μg,R500C 99.6 μg のタンパク質をそれぞれ精製できた。 SDS-PAGE とイムノブロットにて,G219E のみ目的サイズのバンドが薄く,タンパク質の不安定性が示 唆された。 5)精製酵素を用いた活性測定:野生型,V253A,S392L,R500C の酵素活性は,それぞれ 345±58.2, 83±8.45,3.6±3.43,12.7±1.30 nmol/min/mg protein であった。G219E,M235T の活性は検出感度 以下で,全ての変異型の活性は野生型よりも有意に低かった。
【考察】
低ケトン性低血糖症例において,HMGCS2 欠損症を疑う指標として血中アシルカルニチン分析上の C2,C2/C0 比は有用と考えられる。HMGCS2 は,N 末端側の mitochondrial targeting peptide ととも に細胞質内で未成熟型タンパク質として発現し,ミトコンドリアマトリックスまで運ばれる。そこで targeting peptide が切り離され成熟型タンパク質となり,ホモ二量体を形成し酵素活性を発揮する。 G219E は,大腸菌発現系では,他のバリアントよりも精製度が低いと思われるが,HEK293T 発現系に おいても,成熟型タンパク質が検出されておらず,ミトコンドリアマトリックス内で可溶性タンパク 質として存在することが困難であると推定される。よって G219E バリアントは病的変異と考えられ る。その他の 4 つのバリアントについては,大腸菌発現系で野生型と同程度の純度で精製され,野生 型より有意に低い酵素活性を示したことから,これらも病的変異であると考えられる。 【結論】 ヒト由来培養細胞と大腸菌の発現系を用いたin vitro実験を組み合わせ,5 つの未報告HMGCS2遺 伝子バリアントが病的変異であることを証明した。飢餓時の血中 C2,C2/C0 比の上昇は,低ケトン性 低血糖の症例において,HMGCS2 欠損症と脂肪酸代謝異常症を鑑別する良い指標となる可能性がある。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 吾郷 耕彦は,HMGCS2 欠損症が疑われる 4 症例の遺伝学的解析を行い,5 つの新規ミスセ ンスバリアントを見出し,それらバリアント酵素のin vitroでの機能解析を行うことで,見出され た新規バリアントは全て病的変異であることを証明した。本研究の成果は,HMGCS2 欠損症の遺伝学 的診断に役立つものであり,小児科学の進歩と発展に少なからず寄与すると認める。 [主論文公表誌]
Yasuhiko Ago, Hiroki Otsuka, Hideo Sasai, Elsayed Abdelkreem, Mina Nakama, Yuka Aoyama, Hideki Matsumoto, Ryoji Fujiki, Osamu Ohara, Kazumasa Akiyama, Kaori Fukui, Yoriko Watanabe, Yoko Nakajima, Hidenori Ohnishi, Tetsuya Ito, Toshiyuki Fukao: Japanese patients with mitochondrial 3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase deficiency: in vitro functional analysis of five novel HMGCS2 mutations.