Title
ハイドロキシアパタイトを基材とする徐放性抗癌剤の開発
と実験的骨軟部腫瘍への応用( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
熊澤, 愼志
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1022号
Issue Date
1996-01-17
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15250
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与目付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 熊 澤 憧 志(愛知県) 博 士 (医学) 乙第 1022 号 平成 8 年 1 月17 日 学位規則第4条第2項該当 ハイドロキシアパタイトを基材とする徐放性抗癌剤の開発と実験的 骨軟部腫瘍への応用 (主査)教授 松 永 隆 信 (副査)教授 高 見 剛 教授 佐 治 重 豊 論 文 内 容 の 要 旨 近年,悪性腫瘍に対する化学療法は集学的治療の一つとして広く施行され,その治療成績は向上してきている0 しかし,実際臨床上抗癌剤を投与すれば腎障鼠肝障害,骨髄障害等が出現し,中止を余儀なくされる場合があ る。そのため,全身に対する副作用を軽減させ,さらに高濃度の抗癌剤が局所に長時間有効に働くことを期待し て,各種基材を剛、た徐放性抗癌剤が考案されている。ハイドロキシアパタイト(Ca.。(PO4)6(OH)2)は良好 な骨親和性を有し,骨と同等の力学強度を有する事より骨欠損部や骨病巣郭清後の死腔充填基材として応用され, 臨床的にその有用性は定着してきている。申請者は悪性骨腫瘍郭清後の死腔を充填し同時に腫瘍増殖を抑制する 目的で,連続気孔を有するポーラスハイドロキシアパタイトブロック(HA-b)を基材とした徐放性抗癌剤を作 製し,血uか0における徐故実験と,マウス骨原性肉腫内に同上ブロックを埋入し抗腫瘍効果を検討した。 実験材料および方法 使用薬物は塩酸ドキソルビシン(ADR)原末を用い,実験腫瘍として放射線照射によりChoiらが樹立した骨 原性肉腫(OGS-MGH)を用いて,これを生後7週齢のC3H/He系雄性マウスに移植した。 1)ADR含有HA-bの作製法と1n uitro徐故実験 ADR含有HA-b(ADR-HA-b)の作製は,ADR原末を蒸留水に溶解した後,HA-bと共に遠沈コンテナーに入 れ,遠心分離機を用いて2000回転15分遠沈し連続気孔内に薬剤の封入を行った。 HA_bよりのADRの経時的な溶出はt 蒸留水3mlによる37℃の恒温槽内,隔日の全量交換法とし,ADRの溶 出量の測定は高速液体クロマトグラフ法により行った。 2)動物実験 A:健常マウス筋肉内投与によるADRの臓器移行量の測定 健常マウス背筋筋肉内にADR-HA-bを埋入し,埋人後1週,2週,3過,4週に埋入部筋肉,肝臓,腎臓お よび血清を採取し,ADRの移行量を測定した(各群 n=3)。 B:マウス皮下に移植したOGS-MGHに対するADR-HA-b局所投与による抗腫瘍効果の測定 あらかじめ作製したOGS-MGHを約2mm角に細切し,マウス背筋筋膜上に移植し陸瘍体積が約350mdに成長し た後,ADR_HA-b埋入群(n=27),ADR非含有HA-b埋入群(n=23),無処置群(n=17)の3群で検討した。 これら3群の腫瘍の大きさを0.5週毎にその長径,短凰 高さについて計測し,腫瘍体積の比較検討を行った。 腫瘍増殖の度合を判定するため計測時腫瘍体積(a),手術時腫瘍体積(b),前回計測時腫瘍体積(c)として, a/bを腫瘍増大率,a/cを腫瘍増大速度と定めた。 また,組織学的検討についてADR-HA-b哩人後1週,2週,3週,4週で腫瘍を摘出し,これらをHE染色に よる光顕的観察及び蛍光顕微鏡による観察を行った。 125
結果および考察 1.ADR-HA-bのh uitro徐故実験 溶液中のADR量は初期に急速に薬剤が溶出されたが,2カ月以上にわたって徐放が認められ,66日後におい ても0.2〃g/ml以上の濃度を保っていた。 2.動物実験 A:健常マウス筋肉内投与によるADRの臓器移行量の測定 ADR-HA-bを埋入した背筋内ADR濃度は,埋人後4過においても12000ng/g以上の高値を示していた。また, 他臓器へのADRの蓄積は,ADRが高濃度に分布するとされる肝胤 腎臓においても局所筋肉内濃度の約10%以 下であり,また.血液中では3ng/ml以下と検出限界濃度に近いことが示された。摘出したHA-b内のADR濃 度は,埋人後2週以後は経時的な減少は認められるものの埋人後4週においても37.5FLg/gが残存し.ADR-HA-b埋人後4週における薬剤維持量が充分であることを示していた。 B:マウス皮下に移植したOGS-MGHに対するADR-HA-b投与による抗腫瘍効果の測定 経時的な腫瘍体積の増大率は.ADR-HA-b埋入群は他群と比較して.術後1週より術後12週まで有意に抑制 され,各週における腫瘍増大速度も術後3週まで有意差を認めた。組織学的には,術後1週でADR-HA-b理入 部周囲の腫瘍細胞核は壊死となり,術後2週では埋入部外縁から周囲に向かいブロック占拠部位のおよそ3倍の 範囲にわたって腫瘍細胞の壊死像を認めた。蛍光組織標本では.ADR-HA-b埋入部外縁から周囲に向かって徐々 に減少するADRの自家蛍光を認め,腫瘍細胞核内.細胞質共にADRの取り込みを確認した。 以上より本方法は,薬剤の溶解度によりブロック内含有量が制限されるものの,一定期間薬剤の効果が持続し 局所での腫瘍増殖を抑制するという結果を得ることができ,複数個の投与によりより有力な徐放性抗癌剤になり うるものと考えられる。