106 (37) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学 位 論 文論文審査委員
イシ イ ヨウ ジ石井洋治(昭和31
博士(医学) 乙甲1383号平成5年7月16日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
胸部食道癌手術における頚部上縦隔リンパ節郭清の意義 (主査)教授 羽生富士夫 (副査)教授 新田 澄郎,高桑 雄一論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年食道癌の遠隔成績向上を目的に頚胸腹3領域拡 大郭清が広く行われその必要性も論じられている.し かし手術侵襲と根治性,安全性のバランスも重要な課 題である.教室では1985年来術前,術中進行度診断に・ 基づく適応基準で郭清度を決定し施行できたのでその 適応における頚部上縦隔郭清の臨床的意義を検討し た. 対象及び方法 1985~89年間に右開胸開腹胸部食道癌切除再建術を 行った257例を対象とし,頚部上縦隔郭清の程度でA 群(両側頚部を含めた3領域郭清)102例,B群(上品 三重点郭清)61例,C群(上縦隔標準郭清)94例の3群 に分け検討した.教室の頚部郭清の適応は胸部上部癌, 超音波検査で頚部に腫大リンパ節を認める例,超音波 内視鏡,CT検査で上縦隔傍気管に転移を疑う腫大リ ンパ節を認める例,術中上縦隔に転移リンパ節を認め る例とした. 結果 各群の背景因子:平均年齢はA群58歳,B群60歳, C群62歳で,A群がやや若い.転移率はA群81%, B 群57%,C群50%でA群が有意に高率であった. C群 は全身的にリスクの高い症例が多く含まれた. 術後合併症:A>C>Bの順でA群に多く発生し, 反回神経麻痺はA群の頚部上縦隔.リンパ節転移陽性 例において高率(62%)にみられた.手術死亡率はA 群5.8%,B群4.9%, C群2.1%で有意差はないが郭清 度に比例し高くなり,A群の70歳以上の姑息切除例に 多くみられた. 遠隔成績:対象例のover a11の累積生存率はhis- torical controlであるが1985年以前の5年間の右開胸 標準郭清例に比べ有意の改善をみた(p<0.001).術 前,術中進行度診断に基づき郭清した3二間のover a11の累積生存率に有意差を認めず,治癒切除で頚部上 縦隔転移陰性例の郭清度別累積生存率も3群間で有意 差を認めなかった.治癒切除で頚部転移陽性例の累積 生存率は頚部転移陰性例に比し低い傾向にあったが有 意差を認めなかった.姑息切除例ではA群は全例2年 以内に死亡し頚部郭清の有用性は認めなかった.転移リンパ節個数1~3の症例でA群の予後がB+C群
より有意に良好であった(p〈0.05).転移個数0個口 4個以上では差を認めなかった. 再発形式:A群に比べB,C群のリンパ節再発率は 低い傾向にあった. 考察及び結論 胸部食道癌根治手術で頚部を含めた3領域拡大郭清 は肺炎,反回神経麻痺など術後合併症を高め,全ての 症例に一律に行うべきではない.現在超音波検査,内 視鏡的超音波検査など画像診断を駆使した術前進行度 診断の精度は向上しており,術前と術中所見に基づき 郭清範囲を決めて郭清した症例の遠隔成績は3群間に 有意差を認めず,我々の適応基準の妥当性が証明され た.また手術死亡,術後合併症,遠隔成績,再発形式 の検討から,70歳以上の高齢者や明らかな姑息切除例 に対する拡大3領域郭清の選択は慎重を要すること, リンパ節転移個数が1~3個の症例に積極的郭清の有 用性を考慮すれば我々の適応基準はさらに妥当なもの になる. 712_107