• 検索結果がありません。

死後変化高度なる絞殺死体の鑑定例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "死後変化高度なる絞殺死体の鑑定例"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

47 (東京女医大繭第26巻第9号頁487−490昭和31年9月)

死後変化高度なる絞殺死体の鑑定倒

緒 東京女子医科大学法医学教室(主任吉成京子教授) 言 講 諦

ヒフ 平 ビラ 瀬 1文 子 セ フミ コ

形 京 子

カタ キョウ コ

(受付 昭和31年7月30日)

死後変化高度のため検案時の外型所見だけでは 死因が全く不明であった死体に於て,これを剖検 により甲状軟骨の骨折並びに同附近に於ける小出 血を認めたのでその死因は「頸部圧迫による窒息 死」であるごとが判明した1例につbて鼓に簡単 に報告する。(剖検は監察医務院で施行した)。 事 例 76才,女 現場の状況。 独りぐらしの老婆を訪れた娘が便所内に於てモンベ 姿で死亡している本屍を発見した。死体は毛布で被わ れ,仰臥位に頭部にはボ・布を枕にして膝を折り曲 げ,死体の状況からは病死とは考えられないし,又外 傷も死後変化高度の為に不明であった。 事件の大要。 住所不定の二男,27才は,夜明けに生家に立寄ろう と附近まで来たが入りかね,隣家の被害者某女76才の 家に入り休息し,空腹を訴えたがことわられ,独り夕 食をとる老婆を見て空腹のあまり殺意を生じ,両手で 首を締め,力が足りぬので老婆の首に巻いてあった布 で更に締めて,筒堅結びにして絞殺した。 この布は後でほどいてゆるめておいたと自供してい る。 剖検所見 (D 外景検査 1.女性老人屍,身長141cm,体重26.5kg, 巨人観を呈している。全身の表皮は殆ど剥脱し, 淡赤褐色乃至淡青藍色の真皮を露出している。屍 斑の存否は不明であるが死体硬直は何れの関節に

も存しなv・。顔面部,背部及び胸部には約エ.Ocm 長内外の蛆多数が密集してV・る。体温は直腸内に 於て20。C,時に室温は19.50Cであった。 2。頭部,後頭部において約1.ecm長内外の頭 髪粗生し,其他の部においては,殆ど脱毛してい る。最短は一般に暗赤藍色を呈し,損傷はない。 3。 顔面部は一般に暗赤褐色,左右眼球は原型 を留めなV・。左右眼案内には1. Ocm長内外の蛆多 数が密集している。口はなかば開き,上下口唇粘 膜は淡黒褐色を呈し,ロ腔内にも蛆多数が密集し てV・る。口腔粘膜は淡青藍色を呈し,舌は著しく 縮小しており舌尖は上下歯槽の後方にある。歯牙 はない◎歯槽は淡紫色を呈している。左右耳翼は 淡黒褐色,左右外聴道内にも1.Ocm長内外の蛆少 数を容れている。死後変化高度で損傷の有無は不 明である。 4.頸部は一般に暗黒褐色に変色し,所々に蛆 が附着している。死後変化高度で損傷の有無は不 明である。 5. 胸腹部は一般に暗黒褐色乃至青藍色の真皮 を露出している。胸部には1.Ocm長内外の蛆多数 附着している。死後変化高度で損傷の有無は不明 である。 (■) 内景検査 1.頭腔開検 頭皮横断開検に際しては殆んど血液を洩らさな い。頭皮軟部組織は淡赤褐色を呈しているが,,血 管の充盈度及び出血の存否は不明である。頭蓋骨 の鋸断臨検に際し,敵塁淡褐色液小量を洩らす。

Fumiko HIRASE and Kyoko HIRAKATA : (Department of Legal Medicine, Tokyo Women’s Med.

Co]lege). A case of medico−legal examination on the strangulated body with a ligature in high grade

postmortem changes.

(2)

os 板障の色は淡褐色,血:量は中等,骨折がなv・。硬 脳膜は骨に固着しない。内面は淡黄色腱様滑沢, 血管の充盈度及び出血の存否は不明である。脳髄 は淡画藍色全く泥状化し,死後変化高度で,共の 所見は不明である。脳底部骨質におV・ては骨折等 の損傷異常はない0 2.胸腹腔開検 胸腹部を開検するに皮下脂肪織の厚さ1.3㎝, 筋肉の色淡褐色,死後変化高度にして出血の存否 は不明である。大網は諸病の前面上部を薇V・,脂 肪織の発育は貧,死後変化高度で,1血管の充盈度 及び出血の存否は不明である。淋巴腺の腫大せる ものがない。腸間膜脂肪織の発育は中等,死後変 化高度で血管の充盈度及び出血の存否は不明であ る。諸血気を入れること多く,命懸漿膜面の色は 淡青藍色を呈し,所々に腐敗気泡碗泣面以下多数 を認める。 胸腔臓器 1)胸腔を開検するに左右共索状癒着してい る。左胸腔内には汚血赤褐色液45.0㏄を,右胸腔 内には同様液5.Occを容れる。左右胸肋膜下に於 て,死後変化高度で栂指頭面大の腐敗気泡多数が あり,血管の充盈度,盗血点及び出1血の有無は不 明である。左右の肋骨におV・て骨折等の損傷異常 がない。 2)胸腺は殆んど脂肪化し,死後変化高度で, 被膜下における出血の存否は不明である。 3)心嚢内には心嚢液なく,腐敗気泡が多数に ある。血管の充盈度及び盗血点の存否は不明であ る。 4)心臓は大きさ略k本屍の手拳大,高度は著 しく軟かV・。心外膜下脂肪織の発育は中等,心外 膜下における盗血点の存否は不明である。左右の 房室腔内は空虚である。大動脈弁及び肺動脈弁の 閉鎖官能は死後変化高度にして不明である。房室 間孔は右は約3横指,左は約2横指半を通ナ。心 筋は厚さ左府1.2㎝,右約0.4cm,色は汚械淡褐 色,死後変化高度で,出血の存否は不明である。 乳歯筋は淡黄褐色,心内膜は淡黄色,滑沢,死後 変化高度で,血管の充盈度ならびに出血の存否は 不明である。各弁膜装置,肉柱,腱索及び乳転筋 等において,死後変化高度で出血の存否は不明で ある。 5)肺臓の表面の色は暗紫赤色,硬度は軟か い。死後変化は高度で出血及び盗1血点の存否は:不 明である。断面の色は暗紫赤色,腐敗気泡多数あ り,その所見は不明である。気管園内には灰白色 液中等量をいれる。粘膜の色は淡黄紙色,死後変 化高度にして,血管の充盈度及び出血の存否は不 明である。 6)頸部器官,咽頭粘膜は淡青藍色,死後変化 高度にして血管の充盈度及び出血の存否は不明で ある。頸部器官の所々に1.Ocm長内外の蛆が多数 附着している。咽頭及び食道内は空虚,粘膜は淡 青藍色を呈し,1血管の充盈度及び幽血の存否は不 明である。甲状軟骨の左上角は略k中央におV・ て,完全に骨折してV・る。周囲の軟部組織間にお いて,約白豆大の出血とおぼしV・ものが一箇あ る。 甲状軟骨左上角完全骨折 腹腔臓器 1)脾.表面の色は濃青藍色,硬度は著しく軟 かV・。断面の色は濃青藍色,脾肉及び濾胞の像及 び圧出血量は不明である。 2) 腎.表面の色は淡赤褐色,皮一両質の境界 不明,圧出血量も不明である。 3)副腎.死後変化高度で,その所見は不明で ある。 4)膀胱内は殆んど空虚である。粘膜の色は淡 青藍色,.血管の充盈度並びに盗i血点の存否は不明 である。 5) 胃内には淡黄褐色潤濁内容40ccを容れ;内 には未消化の米飯粒,菜葉片,ごぼう片及び大根 片多量に混じている。胃粘膜は一般に淡黄色,所 々に腐敗気泡多数を認める。血管の充盈度ならび に回忌点の存否は不明である。潰瘍等の病変はな Xno 一 488 一

(3)

4,9 6)十二指腸内には淡黄色の濯濁内容中等量、を 容れる。粘膜は二三淡黄色を呈し,腐敗気泡多数 を認める。.血管の充盈度ならびに盗血点の存否は 不明である。 7)小腸上部,中部及び下部には,十二指腸内 容とほぼ同様の内容少量を容れる。粘膜は一般に 汚繊淡黄色を呈し,腐敗気泡多数を認める。血管 の充盈度ならびに出血の存否は不明で幽る。、 8)大腸内は黄緑色の軟便中等量を容れる。粘 膜は淡黄色,死後変化高度にして,血管の充盈度 ならびに出血の存否は不明である。 9う 肝。表面の色は濃青藍色,硬度ぱ著しく軟 かい。辺縁ぱ鈍である。割面におV・て,腐敗気泡 多数を認める。その所見は死後変化高度で全く不 明である。 10)内陰部・膣口は難卵大に開運膣部一部露 出し,腐敗気泡を容れている。死後変化奢しく高 度である。 11)大動脈内は殆んど一血液を容れてない。内膜 は淡赤褐色,アテロ 一一ム変性は軽度である。 考 按 絞殺とは頸に索条物をめぐらし,これを緊めて 気道を圧迫閉鎖して窒息死に至らしめるのを言 う。絞頸はもっとも簡単にしかも容易に死の転機 をとるので,これを用bた犯罪は多い。 絞頸時には頸部におV・て,索溝,筋肉の裂断, 出一血及び骨傷(骨折,亀裂等)等が起ることは周 知のこととされている。而も之等の所見を除外し ては,其他の死体所見が他の手段方法による窒、患 死と何等異った変化がないのである。故に絞頸に 第 2 よる窒息死と判定するためには,上記の如ぎ頸部 における損傷塗証明しなければならない。本屍に おいて死後変化が高度であるためta t一索溝其他死 因と認めるべき外景所見は証明されなかった。し かし内景所見として,・死因を推定すべき根拠とし ては,唯一つ甲状軟骨の骨折及びその附近の小下 血を認めたのみである。本骨折は生前に生じたも ので本屍の死因た.る窒息を起さしめた致命傷であ ると言える。即ち頸部を索条物で絞圧し,叉は手 をもつて圧迫して気道を閉鎖窒息死せしめたもの と考えられる。 絞殺1)の際に生する頸部骨傷は加えられた外力 が相当強度であるに拘らす,比較的稀なものとさ れてい観これは頸部諸軟骨が若年者においては 未だ化骨せす,弾力性があるので容易に損傷され ない為である。三上2)は甲状軟骨のイヒ骨は:男20才, 第 1 表

熱i琢巨

歩 傷 の 種 類

甲状軟骨舌 骨その他

1117 6 右側移動性不全骨折

222i・1扁

平 3 30 ♀ 左右胃角骨折

4図・左右上囎折半鯖折

sl

51 ♀ 左右翼骨折

658.

E1上鯖折丁夫謡i一

768 i・上鮒捌

s 17gi 6 i”

睡骨折塵界辮

闇騰轡[初生児一・・ρ.=192・一2gl・・一3946−49−6・一・廻以上L一三

例数 5 3 』4i・ i’”1・5

6 9 計 骨傷例数 。・ 1 1 1

一i

i1

4 1 百分率(%)1 o

33 1 2s

50

刊 …

20 例 数

n1

8 8 7 3 一色1一 1 41 骨傷例証 o o

o1

1 o 2

i1

4 醐率(%)i o

ol

o 14 o 66 ioo 1 9 例 数 51 5 野営例数 4 4 百分率(%) 7 80 一489一

(4)

50 女22才頃より,吉川2)は21才∼25才の間に始まる と報告している。化骨機転5)の進展速度は個人に より差異があるが,年令の増加と共に進展する。 そしてこの頸部骨傷が生前に生じたものであれ ば,殆んど常にその附近に出血を伴うものであ る6土井4)の鑑定例によれば,各年令層にわたる 絞殺死体56例中8例に頸部の骨傷を証明してV・ る(第1表参照)。と.れによれば頸部の骨傷が少数 であるごとがうかがえる。甲状軟骨k折7例,舌 骨骨折4例,輪状軟骨々折1例を示し,2つ以上 の骨折を起してV・るもの4例である。これを年令 的にみると(第2表参照),50才以上においては80 %に骨傷が起って居り,49才以下は7%に起って いる。これは老人において頸部骨傷が圧倒的に多 いことを物語っている。 本屍の死後経過日数は顔面その他身体各所に密 集している蛆の成長度5),及び上半身黒褐色,下 半身青藍色の真皮を露:出している点,内臓諸臓器 に多数の腐敗気泡を認める点等から推定して.,8 日前後を経過しているものと老えられる。 む す び 死後約8日間を経過した腐敗高度な死体のため 外景検査では索溝等は不明であったが,剖検によ 砂甲状軟骨左上角完全骨折を認めたことにまり絞 殺と決定した1鑑定例を報告した。 御校閲をたまわりました吉成教授に深謝致します。 (爾本論文の要旨は第79回東京女子医科大学学会例会 において.口演したものであります。) 蓼考文献 1)古畑種基,浅田 一:法医学全書,126,(昭24.) 小南叉一郎;実用法医学,395.(昭19.)古畑種基: 法医学,83.(昭28.) 2)吉川栄一,三上努雄:日本法医学会総会誌,5, 307, (H召26、) 3)後藤光治:日本耳鼻咽喉全書,4, 2,217,(昭28.) 4)土井十=:京都医学雑誌,25,978(昭3.) 5)浅田 一:東女医大誌,9,639(昭17。) 一 490 一

参照

関連したドキュメント

色で陰性化した菌体の中に核様体だけが塩基性色素に

見た目 無色とう明 あわが出ている 無色とう明 無色とう明 におい なし なし つんとしたにおい つんとしたにおい 蒸発後 白い固体

1.4.2 流れの条件を変えるもの

(1)う回指導板は縦 140cm、横 110cm、高さは地面から 160~170cm の立て看板とする。.

 1)幼若犬;自家新鮮骨を移植し,4日目に見られる

 肉眼的所見.腫瘍の大きさは15・5x8・0×6・Ocm重

主食については戦後の農地解放まで大きな変化はなかったが、戦時中は農民や地主な

・虹彩色素沈着(メラニンの増加により黒目(虹彩)の色が濃くなる)があらわれ