80 (7) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ナカ ノ ケイ コ(昭和2
医学博士 甲第176号平成元年3月17日
学位規則第5条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程修了者)メラノーマ腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のマウス腫瘍内分布に関す
る研究 (主査)教授 重田 帝子 (副査)教授 鎮目 和夫,教授 内山 竹彦論 文 内 容 の 要 旨
目的 細胞融合法により特異性の高いモノクローナル抗体 (MoAb)の大量生産の道が開かれ,腫瘍学の分野でも 悪性腫瘍の診断と治療に強力な武器になりうると注目 された.放射牲核種(RI)で標識したMoAbはin vitro において,腫瘍マーカーとして癌の早期診断に役立っ ている.また,生体に投与して原発巣や転移巣の画像 診断法として,さらに治療量のRIで標識したMoAb は,悪性腫瘍の特異的治療法(Radioimmuno therapy) として,悪性黒色腫などに応用されている.しかし, 期待されたほど成果をあげていない,一つには現在の MoAbがマウス由来のものが多く,ヒトへの応用では 異種蛋白として免疫原性の問題が障害となっていた. もう一つには,MoAbがin vivoでどのような生体内 挙動を示すのか基礎的な研究が少なく不明な点が多い ことにある.そこでin vitroで特異性が確認されてい るMoAbを用いて, in vivoでの腫瘍内分布を確認す るとともに,同部の組織学的検討を試みた. 本実験はヒトMoAbでの臨床応用を前提とし,抗体 (IgM),腫瘍,動物が同種同系である実験系を組み,免 疫治療への有用な情報を得ることを目的とした. 方法 マウスに自然発生したメラノーマを同種同系に免疫 して得られた抗メラノーマMoAb(M2590, M562)を 放射性ヨー素で標識し,メラノーマ移植マウスに投与 した.マウス全身の凍結切片を作製し,フィルムに密着することで得られるオートラジオグラムで標識
MoAbの腫瘍内分布を観察した.次に残りの凍結ブ ロックから腫瘍部分を切り出し,オートラジオグラム の切片と連続して組織用切片を薄切あるいは,ゆっく り解凍しパラフィン包埋してから,連続面を組織標本 とした. 結果・考察二種のMoAb M2590およびM562は各々オートラ
ジオグラムの腫瘍部内に不均一な分布を示し,その分 布はメラニン色素の分布とも異なっていた.同部の組 織標本の光顕所見では二種のMoAbとも腫瘍内壊死 部分へ強く集積しているのが認められた.集積の程度 は壊死の程度に比例していた.コントロールIgMも非 特異的に壊死部へ集積したがその程度は低かった.こ れらMoAbの壊死部への集積は抗体の影響によるも のではなく,壊死部での抗原性が保持されている結果 であると考えられた. 結論 抗体の腫瘍内分布をin vivoで観察し,これを組織 学的に確認した報告は未だみられなかったが,本研究 ではこの方法で抗体集積部を組織学的に評価すること が可能であった.特異性の高いMoAbが一部のみに集 積し,抗原決定基と反応しない腫瘍細胞を見逃す可能 性がある.これを防ぐには,いくつかの性質の異なる MoAbを組み合せて投与する方法がより有用である ことが示唆された. 一970一81