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高合金工具鋼の熱処理に関する研究(第3報)

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高合金工具鋼の熱処理に関する研究(弟3報)

高炭素高クロム鋼の2段焼入れについて

Studieson

Heat

TreatmentsofHighAlloy

TooISteels(Part3)

On Stepped Quenching of the High Carbon High Chromium Steel

Tadashi Nemoto 内 容 梗 概 先報(1)(2)において高炭素高クロム鋼の残留オーステナイトの挙動およびサブゼロ処理の効果について 述したが,抜型として高硬度が要求される場合には焼入れ後グラインダにより完全仕上げが行われる ので焼入歪がしばしば問題となる場合がある。そこで本報においては焼入歪の軽減をはかる熱処理研究 の一環として2段焼入れについて置接焼入れと比較してのべる。 まず焼入温度980Dcから中間段階の熱浴(5000c)に各種時間保持後油焼入れ,空冷あるいは炉冷さ れたものについて〃ト量および硬さが測定され,ついでサブゼロ処理(-750c)の効果が究明された。 一方2段焼入れ後のr只の安定化におよばす室温における放置時間の影響や循環処理の影響が究明され た。最後に2段焼入れおよび直接焼入れ試片について繰返し打撃試験および曲げ試験が行われ,2段焼 入れが機械的性質におよばす影響があきらかにされた。これらの結果を要約するとつぎのようである。 (1)2段焼入れの5000Cで短時間保持の場合は直接焼入れより r々量を増すが,サブゼロ処理する と両者の差がなくなる。 (2)2段焼入れにおいて熱浴からの冷却速度が減少するにしたがいr花嵐を増すが,サブゼロ処理 するとその傾向は逆になる。 (3)サブゼロ処理iこより生成したマルチンサイトは普通の焼入ノノ法で生成Lたものより加熱にさい し低湿度から分解しやすい。 (4)熱浴における保持時間が増すと r月蓑は減少し,被さは保持時間1時間まで上昇後減少する。 (5)2段焼入れは耐打撃性を向上し,また可挟性をも改善する。

〔Ⅰ〕緒

先報(1)(2)において高炭素高ク 留オーステナイ1、(7′月)の かで本鋼には焼入 温 百一 言 和 銅 ム ロ 動とについてのべ,そのな 滅する2段焼入法が適用できる ことを報嘗した。従来2段焼入法が常通暁入法に比し桃 割れ閲止に有効であることほよく知られているが(3)∼(8) 高炭素高クロム鋼についての研究は少ない。特に高硬度 でしかも精度が要求される抜型のように焼入れ後グライ ンダー仕上げにより完成されるものには焼入歪による変 形がしばしば大きな問題となる。 そこで著者は高炭 く,しかも高硬度がえ 高クロム鋼について炊入 が少な の一環として2段 焼入法について稜々の実験を遂行し,粕に2段焼入法が機 械肘性質におよぼす影響を 究した。また普通焼入れに ついても同様の実鹸を行い2段焼入れと比較検討した。

〔ⅠⅠ〕試料および実験

(り 試 料 試料は光報(1)(2)のものと卜小一材料およぴまったく同一 製造履歴をもつもので,第l表は (2)実 験 (A)2段焼入れ 波高加 料の化学成分を示す。 温度980〇cから5000C熱 俗に30分保持後油焼入れ,空冷および炉冷後r月立と硬 * 日立製作所日立研究所 第1表 試 料 の 分(%) 正* 番 ■ C I Si ■ Mn No.1 No.2 2.17 0.27 0.32 2.10 壷0.23 0.32 Cr ■ 備 考 12.57:熱処理実験用 13.64!機械式鹸用 さを測定し,さらにドライアイスとアルコールとの混合 液(-75ロC)に浸漬し,サブゼロ処理後ふたたびフー針量と 被さを測定した。 ついで5000C熱浴に0/、、-7時間保持後油焼入れした場合 のサブゼロ処理前後の擬さと r允遺の変化を測定した。 また980DC→5000cx30分→油焼入れ後室温に種々の時 間放置してからサブゼロ処理し,そのときのr尺の変態 違およびサブゼロ処理二灘戻処理(2000cx30分)を4 回線返した場合のフ′月の変態量からr月の安定化におよ ぼす影響が究明された。なお本 れ(9800C油焼入れ,空冷) 験と併行して直接焼入 片についても同様な測定 を子 fい,両焼入力法を比較検討した。 故後に直接焼入焼戻し,2段焼入焼戻しおよぴサブゼ ロ処理された各 片について耐打撃性をみるため松村式 返し打撃試験機により打撃エネルギー20kg-Cmで破 断するまでの打撃】司数をもとめ,また山臥横山両氏(9)の 考 による曲げ 験装沼( 片寸法6mm¢×110InmL) により曲げ試よ険を行い,割れ発生までの最大荷重およぴ 4尭み量が求められた。

(2)

618 昭和32年5月

〔ⅠⅠⅠ〕実験結果

(り 2段焼入れによ るrRおよび硬さの変化 弟1図は直接焼入試片 (9800C→油焼入れあるい

は空冷)と2段焼入

(9800C→5000Cx30分→ 油焼入れあるいは空冷) のサブゼロ処理前後の rJi量と硬さとの関係を 示す。これから知られる ように7■月量ほ焼入状態 では直接焼入れの方が2 段焼入れより少なく,ま た油焼入れと空冷とを比 較すると後者が前者より 多く,焼入冷却速度の減 少がγ尺量を増す。しか るにサブゼロ処理すると 旬 \J 年 (軍帥(だニ⊥\{小K-斥印鑑 日 立 評 直接焼入れ 0----・--一一--・・」つ 2段焼入れ ○---・--・-・-_ 二・・、 油炊入れ 第39巻 第5号 りイセロ剋i望後

)焼入相ま\

焼入れのま\ ワフセロ及ほ財産 空冷 焼入下法 節1図 高炭素高クロム鋼のサブゼロ 処理前後の残留オーステナイトおよ び硬さにおよほす焼入方法の影響

r用量は空冷の方が油焼

入れより減少する。また硬さは冷却速度が小さい方がわ ずかに低いが,サブゼロ処理後のそれには焼入方法によ る差がない。つぎに第2図はサブゼロ処理前後の示差磁 気分析結果である。まず焼入状態では200∼3000Cと450∼ 6000Cとで2段に磁気が増加し,高温側における増加量 は直接焼入れの方が2段焼入れより少いが,サブゼロ処 理後の両者の差ほほとんどみとめられない。なおサブゼ ロ処理のものほ300∼5000Cの範囲における磁気がいち じるしく減少することが知られる。 (2)サブゼロ処理効果におよぽす放置時間および循 環処;哩の影響 弟3図はサブゼロ処理による?■只の変態量におよぼす 2段焼入れおよび直接焼入れ彼の室温における放置時間 の影響を示す。本鋼は直接焼入れの場合9800c油焼入れ で7′斤量が約26%存在するが,これを焼入れ後1分以内 でサブゼロ処理するとr尺量は約10%に減少する。焼入 れ後の放置時間が30分以上になるとサブゼロ処理効果が 減少し24時間でほ効果は半減する。なお焼入方法による r月量の差は少ないことがわかる。 つぎに第一図はr兄の変態量におよぼす循環処理の影 響を示す。これによると焼入方法によるr尺量の相違は なく,いずれも1回の処理でフ■々はいちじるしく変態し, その後の処理回数による影響が少ないことが知られる。 (3)熱浴における保持時間の影響 弟5図は500ロC熱俗において種々の時間保持後油焼 入れせる試片のサブゼロ処理前後のr′モ量と硬さとの関 (べ)醐(鳶)エヽト朴N-k渕密 . ‥ -■ . <‖〃 ハ〃 クー こ∈l /皿 虐 (℃) 第2図 示差磁気分析結果 直接焼入れ(彪♂㍗油焼入れ) 、●【 、- ∫ 〟 、 、、、、 、 苫〉巳にあけち放置指間 (J) - -第3区】残留オーステナイトの分解iこおよは す室温における放置時間の影響 係を示す。これによると焼入状態では,7′月量が保持時間 10分まではわずかに増加するが,それ以上保持すれば減 少し,7時間保持で5%減少する。一方擬さほ保持時間 1時間が最高を示す。サブゼロ処理すると 7 月量ほいち じるしく減少し,硬さほ増すが保持時間による変化は処 理前と同じ傾向を示すことが知られる。 (4)熱浴からの冷却速度の影響 弟る図は9800Cから熱浴500日Cに30分.保持後油焼 入れ,空冷および炉冷の各 片のサブゼロ処理前後のr′i 量と硬さとの関係を示す。これより フー尺量は焼入のまゝ

では油焼入れ,空冷(600C/分)炉冷(20C/分)の順序で

増加するが,サブゼロ処理後はまったく逆の傾向を示す

ことが知られる。一方硬さは冷却速度が減少するにした がいわずかに低下する。 (5)2段焼入れが検械的諸性質におよぽす影響 第2表ほ打 試験結果で熱処理方法と破断するまでの

(3)

高合金工具鋼の熱処理に関する研究(第3報)

619

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∬ ハけ 川 〃 ワプセロ処婚亡i2仇タ℃焼庚l. 煉人磯 ワイノせロ 焼 庚 ワ了セロ 焼 房 ナフγロ 焼 戻 ワ 丁 せ-[] 第4図 残留オーステナイトの分解におよぼすサ ブゼロ処理こ焼戻処理の影響 へ脚)穂′」\トートベ一木御許 彷 仰 J -∴・ 快入方法 もきわめてイ】-効な熱処 理方法の-→つであるこ とが知られ■る (沢)聞(穂)亡よ右下⊥遠道 〓. † β J J 7 保 持 鴨 闇 rわノ 第5L到 高炭素高クロム鋼の残留オーステナイ トと硬さにおよぼす烈浴における保持時間の 影響 打撃国数の関係を示す。これから直接焼入焼.戻法による 場合は2段焼入法に比較し/て打撃回数が少なく,さらに 2段焼入れの熱俗における保才脚寺間が増すと打撃回数が 増加し,サブゼロ処理によi)わずかに減少することがう かがわれる。これらの雛果から2段焼入法はは耐打撃性 の改善にきわめて有効であることがわかる、、 つぎに第7図は2段焼入れの熱俗における保持時間を 佐々変化させて浦焼入れ,さらにサブゼロ夏日里された試 片の曲げ試験結束である.‥〉なお参考まで忙令熱処甥㍑こよ るrJ‡量および硬さの変化を図の右側に示す、)これから 最大荷重および挟み量は2段焼入れが直接焼入れよりす ぐれ,特にサブゼロ処理された場合忙は7一月最が減少し 硬さが増加するにもかかわらず可擁性が向上する_、また 2段焼入れに際し熱浴における保持時間が増すとi一尺畳 が減少し硬さが増し可挽怖が顛才に改善せられ,2段焼 入法は上述の打撃試験結果で示すと同様に物性の向上に 第6園残留オーステナイトおよ び硬さにおよばす熱浴からの 冷却速度の影響

〔ⅠⅤ〕結果に対

する鳶察

直接焼入れと2段焼 入れのコノ尺量および硬 さとの関係(第1図)お よび示差磁気分析結果 (弟2図)から知られる ように)ノ尺も;:は2段焼 入れの方(500〇Cで短 時間保持)が直接焼入 れより多いごノすなわち 2段焼入法ほr′王墓を わずかに増す傾向があ る。一般に7′尺故はオ ーステナイトのC濃 度,焼入過程における オーステナイトの安定化ならびに焼入 に起因L_て増減 する。2段焼入れがフ′用量を増すことはオーステナイト のC濃度によるのではなく(2段焼入れの力がCji-㌢が少 ない),水塊入れが油焼入れより r兇暴が少ないよう に,(11)∼(17)主として 入歪による。換言すれほ直接焼入 れの方が2段焼入れより熱 ;大きいから.二れがA7ノ■ 態を促進するものと考えられる。 つぎに打撃i 験結果(弟2表)からわかるように打撃 回数は2段焼入れによりいちじるしく改善せられるが, サブゼロ処筆削こよりわずかに減少する。また削げ試験結 果(弟7図)によれば2段焼入れの熱浴における保持時 間が増すにしたがい可擁性が向上する。したがって2段 焼入れほ桃割れ防止に有効であるとともに機械的性質を いちじるしく改善することがあきらかにされた。 従来サブゼロ処理が諸性質におよぼす影響に/木、てほ 第 2 験 結 果 熱 処 理 条 件 9釦OCう油焼入れう2000Cx2時間焼戻し 9釦OCう空 冷う2000Cx2時間焼戻し 葡すすeう両石古Cxl時雨う痛鎗大元二㌻ 一W_,__________________写鱒三Fx2時間焼医ら9800Cう5000Cx3時間う油焼入れう 20_0アワx2時間焼戻し 頂緬6ご与5縛6C)i 6時間う油焼入れ→ 、:・、・・ヽ、・:: .、 函酢℃う部師Cx9時間う池焼入れう 2000Cx2時間焼戻し 9800Cぅ油焼入れうサブゼロ処理 -_】____上準旦拉些些旦些慣担鎚 9800C-〉500ロCx6時間う油焼入れサブゼ ロ処理(-750C)う200ロC〉く2時間焼戻し

箆Rき,直撃回数

60∼6119,000 60 60∼61 60へ・61 59∼60 58・-60 61∼62 60∼61 註 打撃回数ほ2∼3偶の試片の平均値を示す。 7,658 8,969 9,298 9,731 9,900 7,800 9,200 備 考 正 接 焼 人焼戻し 2 人 焼 戻 し 隠按焼人後 サブゼロ処理 2膚 疲天後 サブ・ビロ処理

(4)

620 昭利32年5月 抗折荷重(身) 項 さ(触 / ヱ∴ ∴入;・ミて'・ム主ナ1、:・1)一、∴∼、∴-、・-J.、l-、∼ 立 β / Z 7 (7 2ク 最大挽み(仇町) 残留オーステナイトr加重(%) Eヨ抗新局華 ■■l最大凍み 匠辺牙頻留オーステナイト⊂コ碩さ

⑦‥脚℃→α∂.-Z〟℃花叩飢ガ

⑦③④⑦◎⑦

一′′ -一方で 2α7℃/吉昭β摺d 一仰℃(J固間卜8且→公腔花柳♂ -- ′′ 一〃+・-・一方℃一2♂佗花〝間作♂ -仰℃(珊瑚トシ →Ⅷ研〃両脚吻 ・→甜℃(J時間-シ ーー ウ → 疇〃 一一方℃→2〃℃乃画 第7同 曲 げ 試 験 結 果 多くの人たちにより究明されている。すなわち横山,松 倉両氏(18)はゲージ鋼の経年変化が減少することをあき らかにし,またDepoy(19)ほ高速度銅の切削性に好影響 をおよぼすことを 告しており,さらに近藤氏(20)は高速 虔鋼は焼入れ後サブゼロ処理するよりも焼入焼戻し後サ ブゼロ処理した方が機械的性質が良好であることをのべ ている。他方B,Hedde d′Entremont(21)Kennedy(22) Wolfe(23)およびKunze(24)などは:TI具鋼についてサブゼ ロ処≡和がかならずしも有効でないことを認めている。 しかるに本実験結果によるとサブゼロ処理はわずかに 可擁性を向上するが,これ以上に2段焼入法が機械的性 質の改善に役立つことがあきらかにされた。

〔Ⅴ〕結

以上高炭 言 クロム鋼について焼入歪を軽減する2段 焼入法を直接焼入法と比較対照しながら究明し.また打 験および曲げ 鹸などから機械的性質におよばす2 段焼入れならびにサブゼロ処理の影響が究明された。こ れらの結果を要約するとつぎのようである。 (1)油焼入れ状態では2段焼入れの力が直接焼入れ より 7′尺量が多いが,サブゼロ処理後の差は少ない。 (2)熱浴における保持時間が増すと7■尺量が減少し, 硬さは保持時間1時間まで増加後わずかに減少する。 (3) 第39巻 第5号 浴からの冷却速度が減少するにしたがいr尺 鼠が増加するが,サブゼロ処押後はその傾向が逆になる。 (4)2段焼入法ほ耐打撃性および可換性をいちじる しく向【とする。 以上の実験結果により技塾の熱処理に2段焼入れを採 用すれば焼割れ防止ほもちろんのこと変形量が減少し, しかも機械的性質を改善しうることがあきらかにされ た∵. 終りにのぞみ終始懇切なる御指導を賜わった村上武次 郎博士に沫甚の感 の意を すとともに御援助を賜わつ た日立製作所日立研究所三浦所長ならびに御指導と御鞭 撞を賜わった小野健二博二Lに衷心より謝意を表するとと もに試料の提供を願った日立金属工 株式会社安来工場 山本工場長に深謝する。また実験に熱心に協力された八 重樫敏雄,秋山浩両君に感 1 2 3 する。 参 芳 文 献 梶本:日立評論金属特集号別冊,1d,41(1956) 梶本:目立評論に

39,503(1957)

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42(1950)

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参照

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