財務の枠組みと資本コスト論の関連で
著者
小椋 康宏
著者別名
Ogura Yasuhiro
雑誌名
経営論集
巻
16
ページ
63-93
発行年
1980-10-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005840/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaブ リガ ム経営財務論に関 す る一 考察
経営財務の枠組みと資本コスト論の関連でー 小 椋 康 宏 l n 目 次 序 ブリガム経営財務論の課題 一 経営財務の枠組みに関連してー Ⅲ ブリガム経営財務論の特色 一 資本コスト論に関連してー Ⅳ 結 63 I 序 ここ20年来におけ る経営財務領域に対する理論的研 究は,とくに アメリカ を中心として急速な展開がなされてきたのであ り,い まだに, とどまること な く展開しつつあるとい ってよい。 また,それらの理 論研究の変革は,経営 財務領域の各部面に興味あ る題材を提起しており,多 くの学者に よって論争 が繰り拡げ られてきている。わが国においては,アメリカ経営財務論研究の 導入がめざましく,今日では,とりあえずそれらの理論解明が急務となって い るのが現状 である。 ところで,アメリカにおい ては新しい タイプの経営 財務論のテキストが公 刊されるようになった。 かつ て1960年代後半から1970年代前半にかけて標準 的 テキストの一つといわれた著名な ウェストン,ブリ ガム(Weston, J. F.and 1)E. F. Brigham )の「経営財務」 が第6 版で終焉したかに みえるが,そ のこと は,以前に もまして,この経営財務研究において 屯現 代におけ る経営体の環 境変化に対応できる新しい理論的枠組みを必要としてい るのではないかと考 えられる。つ まり,筆者なりにいえば,経営財務の領 域において,新たな複雑多 岐に わた る環境 主 体に対 応 す る理論 を 創 り出す 必要性 が生 じて きてい る も の と思 わ れる。 犬 こ の ような状 況は ,次 の よ うな 結果 を 生み 出す こ とに なった。 ウェスト ン 2) は , コー プラ ンド(Copeland ,T. E.)との共著 「財 務理 論 と会社政 策」 に。 3)CAPM
理論(Capital Asset Pricing Model)に 立ち なが ら経営 財 務 の展 開を 4) 考え ,一 方, ブ リ ガ ムは 単独著 「 財 務管 理」 の中 に, 彼 自身 の経営 財務 の枠 組 みを 考 え よ うとした。 本 稿は,後 者 のブ リ ガ ムの経営 財務論 の基 礎構 造を 明らか に す ることを 目 的 と してい る。 ブ リ ガ ムは, フ ロ リダ大 学(University of Florida)のビジ ネ ス ・ア ド ミニス トレ ーシ ョン ・フ ァイ ナンス部 門に 所 属 してお り, ダラデ ュ エ ート・ リサ ーチ・ プロ フ ェ ッサ ー(Graduate Research Professor)として活
5) 躍 中 の財 務論 の学 者であ るレ なお ,本 稿で とりあげ るのは , ブ リ ガ ムの「 財 務管 理」(第2 版)を 中心 と しX, そ の批判 ・検 討 であ る。 ブ リ ガ ムは , 最近 の財務 管理 の変 革 につい て 次 の よ う な 問 題 意 識 を も つ こ と に よ っ て , 財 務 管 理( 第2 版) を 出 版 す る に い 6) た っ た とい う。 つ ま り, 強力 な イ ンフ レ ーシ ョンの圧 迫 が予 期 しない 高 さ ま で に利 子 率を 押 し上げ ,そ の結果 とし て高い 資 本 コス トが 会社 の財 務方針や 実 践に 重大 な変 化を もた らし た こ と。 そ の 結果 ,学 者は , と くに 資 本 予 算 (capital budgeting)や 資本 コス ト (the cost of capital) の領域 の中に 重大 な 進展を な した。 と同時に , 実 践家 が 財務 理 論 の利用り 増大を な し,「 現実 の 世 界」 か ら のフ ィ ードバ ッ クが 財 務理論 の改 訂につ な が った とい うのであ る。 そ れでは, ブ リ ガムは, どの よ うな経営 財 務 論を 展開 し よ うとい うのであ ろ うか。 ここで は, まず最 初に , ブ リ ガ ム経 営 財務 論 の課題を 経 営財 務 の枠 組 み の関連 で展 開 し, 続い て, ブ リ ガム経営 財 務論 の特 色を 資 本 コス ト論 に し ぼ って 検討す るこ とにし たい。 注
1)Weston, J. F. and E. F, Bi igham,Managerial Finance, 6 th ed.,The Dryden Press,
1978. (初版は, 1962年 ウェストン単 独著 として出版されてい る)2
)Copeland , T. E, and J. F. Weston, Financial Theory and Corporate Policy, Addison-Wesley, 1979,3
ブリガム経営財務論に関する一考察 65 る。4
)Brigham, E. F., Financial Management 一Theory and Practice, 2 nd ed., The
Dryden Press, 1979.
5) 筆者は,1978 年8 月か ら1980年3 月まで, フロリ ダ大学 のビ ジネス・アド ミニ スト レーショソ, ファイナン ス部門で海外 研究を 行なった 。6
)Brigham ,E. F., op 。心 。preface.
II ブ リ ガ ム経 営財務 論 の課題 ブ リ ガ ムは ,現 代におけ る経営 財 務論を ど の よ うに考 え てい るのであろ う か 。こ こで は, ブ リ ガ ムの経営 財 務に 関す る概括を 追い な がら経 営財 務の枠 組 みを 考え る方 向で検討 を 加え るこ とに したい 。 1) 1 経営 財 務 の流れ 経営 財務 の研 究は,長 年を 経 て重要 な変 化 を もた ら し てき た。財務(finance) が1900 年代 の初 期に 分化 し た研究 領域 とし て出 現 した とき, 合併, 合同,新 会 社の設立 お よび会社に よ/つて発 行さ れ る各 種 の証 券 の型 とい った ような法 律的問 題に 強 調点 がなさ れた。工 業化 がこ の国を お お う ように な る と,会社 が直面 す る決定 的問題 は, 拡張 のた め の資 本を 獲 得す るこ とと なった。資 本 市場は , 個人 の貯蓄 家 から 困難にあ る会社 へ ,資 金を 移転 す るために はあ ま りに も未熟 であ っ た。 財務諸表 に おけ る収益や 資 産 評価 の報告 は信 頼できな い ものであ った し,一方 , 内部取 引者 や 株価 操 作を す る者た ちに ょる 株式取 引 が価 格を 幅広 く変動 させ る こと とな った。 結 果的 に は,投 資家 は, 株式 や 社 債を購 入 す る ことを 嫌った。 こ の環 境 におい てはよ なぜ ,財 務論が1900 年 代 の初 期に証 券 の発行に 関す る法 律的 問 題に 重点 的に 焦点を 合わ せた のかを 理 解す るこ とは 容易であ る。 そ の強 調は ,1920 年 代を 通 じて ,証 券に 向け ら れ たのであ る。 しかし なが ら, 1930年 代 の景気 後 退を 通 じて 急速 な 変化 が 起 った。 つ まり。 そ の時 点 は, 予 想で きない数 の倒産 は, 財 務論 に対 し ,破産 や 再建, 会社O 流 動性 ,お よび 証 券市場 の政 府規制 に 焦点を 合 わ せる 原 因 とな った。 財務論 は ,い まだに 記 述的 ・法 律的 主 題であ った が, 会社 拡 張 か ら会社 存続 へと強 調点が動 い た のであ る。 1940 年 代 お よび1950 年代を 通 じ て, 財務 論 は,記 述 的 ・制度的 主題 として 教 えられ ,経 営 者 の見地 よりはむ しろ 外 部 者 の見 地 か らみな され続け 七きた
のであ る。 し か し会社 の利 益や 株価 極大 化に 役立つ よ う設 計 さ れた 財務 分析 の方 法に 関心 が もたれ は じ めた の であ る。 この変 事した 進展 は ,1950 年 代後 半を 通 じて急 速 とた った。 貸 借対 照表 の貸 方(負債および資本)が初 期に おい て より関心を もっ て受 け 入 れ られた 瓜 しかし 主要 な 強調点 は資産 分 析(assetanalysis )に 移 り始 めた のであ る。数 学 モ デル が開発 され ,在 庫 ,現 金,受 取 勘定 お よび固定 資 産に 応 用 され る ことに なった。 会社 内 で の財 務的 意 思決定 (financial decision)が会 社 財務 論に おけ る決定的 問題 と して認 識 され る に つ れ て,財 務論 の焦点 は 次第 に ,外 部 者の見 地か ら内部 者 の見 地に 移 った ので あ る。 1960 年代 は,(1)証 券 の最 適 ミ ックス,(2)資 本 コス ト, とい った も のに 焦点 を もった貸 借対 照表 の貸方に 新 た な関心 が払 わ れ るこ ととな っ た。 と同時 に , 個人 投資家 に よる資産 選択 の理 論,「 ポ ートフ ォリ オ・マ ネジヅ ソ ト」お よび 会 社 財務論 への 密接 な かかお り合い が展 開 され るこ とと なっ た。 こ れ らの傾 向 は,1970 年代 を 通 じ て継 続 され て きてお り,そ の結果 は, 投 資(investments) と会社 財務(corporate finance) の統合 とな って きた のであ る。 ブ リ ガムも指 摘 す る よ うに , こ の情況 は, 1980年 代に 引 き継 が れた とい っ て よい。 また,’わ が 国に おい て 乱 この よ うな 傾向が み られ てい く であ ろ う と考え られ る。 し かし な が ら, こ の ような流 れは,経 営 財務 論 の展 開 であ る の か よく検討 しなけ れば な らない 課 題であ ろ う。 2) 2 経営 財務 の重 要 性 の増大 前項で みた よ うな変 革 は, 経営 財務 の重要 性を 増大 させ る こ ととな った。 初 期に おい ては , マ ー ケテ ィン グ・マ ネジ ャーが 販売 高を 計 画 し, エ ンジェ ア リン グお よび生 産 スタ ッフが これ らの需 要額に 見合 う資 産を 決定 し, 財務 管 理 者は,単 に ,工 場 ,設 備 ,在 庫品 の購 入に必 要 な資金を 調達 す る ことで あ っ た。 こ うい った 経 営活動 の方 法ぱ もぱや 一般的 で な くな った。 今 日,経 営 意思 決定は , ゴッ ド=・―ル ・ プ ロセ スに 直接, 責任を もつ 財 務管理 者に よ っ て より一 層, 調整 した方 法 で な されてい る。 ブ リ ガ ムは , 会社 内に おけ る 財務管 理 者 の重要 性につ い て ,( フ ォーチ ュ3) ソ」 から 引用 し,今 日の ビ ッグ・ビジ ネ スの経営 者 の \/2以 上 は , 財務 出身 に なってい る事 実を 強調 した6 こ の ような同 じ傾向 は,非 営 利機 関お よび政 府機 関と同 様に ,全 て の規 模 の会社 内 のレ ベルにおい て明 ら か であ る。 また ,
ブ リ ガ ム 経 営 財 務 論 に 関 す る 一 考 察 67 マ ー ケ テ ィ ン グ , 会 計 , 生 産 , 人 事 , そ の 他 の 領 域 の 人 々 が , 自 分 自 身 の 領 域 に お い て 十 分 な 職 務 遂 行 を な す た め に , 財 務 を 理 解 す る こ と が 次 第 に 重 要 に な っ て き て い る 。 会 計 士 は , い か に し て , 会 計 デ ー タ が 会 社 の 計 画 設 定 に 利 用 さ れ , 投 資 家 に よ っ て 検 討 さ れ る か を 理 解 し な け れ ば な ら な い 。 マ ー ヶ テ ィ ソ ダ 担 当 者 は , い か に し て , マ ー ケ テ ィ ン グ の 意 思 決 定 が , 会 社 が 利 用 で き る 資 本 額 , 在 庫 水 準 , 過 大 設 備 能 力 等 々 に ょ っ て 影 響 さ れ た り , 影 響 を 与 え た り す る か を 理 解 し な け れ ば な ら な い 。 実 質 的 に は , す べ て の 事 業 体 の 決 定 に 財 務 問 題 か お り , 財 務 担 当 以 外 の 経 営 者 は 単 に こ れ ら の か か お り あ い を 専 門 化 さ れ た 分 析 の 中 に 入 れ る た め に 財 務 を 十 分 知 ら な け れ ば な ら な い の 4 ) で あ る ○ ■ 5)3 経 営 組 織 に お け る 財 務 の 位 置 組 織 構造 は ,会社 に よって 異な ってい る。 図1 −1 は , 会社 内で の典型的 な財務 の 役割図 を示 してい る。「財 務担 当 副社長」 の肩 書きを もつ 財務 担当 経 営者 は社 長に 報 告す る。 主 要 な部下 は トレジ ャラー(treasurer) とコント1= ・―ラ ー(controller)であ る。 トレジ ャラヴは, 直接 に は 会社 の現 金や市場 性 有価証 券を 管 理 した り,財 務構造を 計 画化 した り,資 本を 調達す るため に 株 式や社 債 を売 る責 任を もってい る。 ト レジ ャラー(しかし,いくらかの会社 取締役 二 □ 社 長 財 務 担 当 副 社 長 トレ ジャ ラー 資本予算担当 管 理 者 原 価 会 計 部 門 生 産 担 当 副 社長 コン ト ロ ー ラー 財 務 会 計 部 門 税 金 担 当 部 門 i ・ ;;・・| t こ ご こ 乙r 図1 −1 典型 的な経営組織における財務 の位置
では=ントローラー)のも とに は, 信 用 担当管理 者,在庫 担当 管理 者 お よび( 既 定資産投資に関連した意思決定を分析する)資本予 算 担当管 理 者 がい る。 マ ーヶ テ ィン ダ部 門お よび製 造 部門 は, 会社 の信用 政策 ,在 庫政策 お よび 固定資 産 の 拡張に主 要 な関 係を もっ てい る。 今 日におけ る経 営 財務 組 織は ,取 締役 会, 社長 ,財 務担 当 副社長 , ド レジ ャラー, コントロ ー ラー等 々そ れ ぞ れの機 関 の一 体的 な関 連 で み る必 要 があ る と考 え られる。 6)4 企 業 体 の 目 標 経営意思決定はあい まいになされてはいけ ない。それは,その中にある目 的をもってなされるのであ る。ブ リガムは,本書を通じて「経営者め第≒義 的目標は株主の富を極大化することである」 とい う仮説を もって作業を進め るとい う。 このことは,普通 株の価格を極大化することを意味す る。 もちろ ん,会社はその他の目標を もっており,現実の意思決定をなす経営者は,モ れ自身の個人的満足,従業員 の福祉,地域社会への慈善に関心を払っている。 それでもなお,「株価極大化かおそらぐ多 くの会社 の最 も重要な目標である」 と設定する理由は,意思決定ルールを 打ちたてるうえで合理的な経営活動目 標であ るからである。 それでは,なぜ,経営者は株主 の富を極大化しようとするのか。この点に ついて,もう丿 歩踏み込んでプリズムの見解を みてい こう。 株主は,会社を所有してお り,経営集団を選任する。代 って経営者は,株 主 の最大の利益に対 し経営活動するよう仮定されてい る。 しかしながら,多 くの大会社の株式は幅広く分散されてい るので,そ うい った会社 の経営者は。 強い 自主性をもってい ることが知られている。これが一般的事例であ るとす れば,経営者は,株主 の富の極大化以外の目標を追求す ることはないのであ ろ うか。た とえば,あ るものは,大型で十分,確固とした会社の経営者は,‥ 公正で「合理的」 な水準に株主 の利益を維持し,公共 サービス活動,従業員 福祉,高い経営者報酬に対し,助力と資源め十部を ささけ るよう働いている と論じてい る。同様に,確固とした経営者は,株主に対 する利益がその仕事 をなすのに十分,高い可能性があるときでさえ 乱 リスクのある事業を避け るのである。この議論 の背後にあ る理論は,株主は一般に多 くの異なった株 式 のポートフ ォリオを保持することに よづて分散化されてお り,もし一つめ 会社が損失を受け るとして 乱 株主は,自分の盲 の一部分めみを失 うにすぎ
ブ リ ガ ム経営 財務 論に 関 す る一 考 察 69 プな い , と い う こ と で あ る 。 一 方 , 経 営 者 は 分 散 化 さ れ え な い の で , 失 敗 は 彼 ら に 重 大 な 影 響 を 与 え る こ と に な る 。 し た が っ て , あ る も り は , 会 社 の 経 営 者 が , 積 極 的 に , 会 社 の 株 式 の 価 格 を 極 大 化 す る こ と を 求 め る よ り は む し ろ , 「 安 全 に 仕 事 を 遂 行 す る 」 傾 向 に あ る , と 主 張 し て い る ○・ ・ ■ ・ あ る 経 営 者 集 団 が 株 主 の 富 を 極 大 化 し よ う と し て い る の か , 単 に 他 の 目 標 ヶを 追 求 す る 一 方 で 株 主 を 満 足 吝 せ よ う と し て い る の か ど う か を 決 定 す る こ と は 非 常 に 困 難 で あ る 。 た と え ば , 自 発 的 に 行 な う 従 業 員 と か 地 域 社 会 の 給 付 プ ロ ジ ェ ク ト が 長 期 的 に 株 主 の 最 善 の 利 益 に な る か ど う か を ど の よ う に 述 べ る こ と が で き よ う か 。 比 較 的 高 い 経 営 者 報 酬 は , 競 争 に 打 ち 勝 っ て 会 社 を 維 持 す る 優 れ た 経 営 者 を 魅 力 的 に し た り , 制 止 し た り す る の に 必 要 と な っ て い る の で あ ろ う か 。 リ ス ク の あ る 事 業 が 拒 否 さ れ る と き , そ の こ と は 経 営 者 の 保 守 主 義 の 反 映 で あ ろ う か , あ る い は , そ れ は , 事 業 の リ ス ク 対 予 想 報 酬に 関 す る 正 し い 判 断 で あ ろ う か 。 こ れ ら の 質 問 に 対 す る 明 確 な 答 を 得 る こ と は 不 可 能 で あ る 。 い く つ か の 研 究 は , 経 営 者 が 必 ず し も 株 主 志 向 で は な い こ と を 示 唆 し た が , 調 査 結 果 は は っ ぎ り し て い な い の で あ る 。 会 社 の 業 績 に 経 営 者 報 酬 を 結 び つ け て い る 会 社 は ま す ま す 多 い こ と は 本 当 で あ り , 調 査 研 究 は , こ の こ と が , 株 価 極 大 化 と 矛 盾 し な い 方 法 で 経 営 活 動 す る よ う 経 営 者 に 7) 動 機 づ け て い る こ と を 示 し て い る 。 加 え て , 最 近 に お い て は , 乗 っ 取 り ( テ ン ダ ー ・ オ フ ァ ー ) や 委 任 状 闘 争 が 多 く の 確 固 と し た 経 営 者 を 解 雇 し て き た の ・8) で あ る 。 こ の よ う な 行 動 が 生 ず る と い り 認 識 は , 多 く の 他 の 会 社 に 対 し 株 価 を 極 大 化 す る よ う 刺 激 を 与 え た で あ ろ う 。 最 後 に , 競 争 市 場 で 経 営 活 動 し て い る 会 社 あ る い は 景 気 後 退 で の 多 く の ほ と ん ど の 会 社 は , 株 主 の 富 り 極 大 化 と 合 理 的 に 矛 盾 し な い 経 営 活 動 を な す こ と を 強 い ら れ る で あ ろ う 。 こ の よ う 心 し て , 経 営 者 が 株 価 の 極 大 化 に 加 え て 他 の 目 標 を も つ と し て 乱 こ の 株 価 極 大 化 を 多 く の 会 社 の 支 配 的 目 標 と し て み な す 理 由 が あ る と い え る 。 次 に , ブ リ ガ み に し た が う て , 社 会 的 責 任 (social responsibility ) を 一 瞥 9) し て お こ う 。 考察に値す るもう一つ の論点は社会責任であ る。企業 体は,厳密には,株: 主 の最善の利益に向かって経営活動すべきか,あ るいは ,また部分的には,犬 全 体として社会の福祉に責任を なうてい るのであろ うか。この質問に取り組 む 前に,最初に,投資利益率がすべての会社平均に近い「普通」である会社を
考えてみよう。し しこういった会社が空想的な社 会改良家になろ うとすれば。 それに よって,会社はその費用を増大させることにな るであろ う。 また, も しその産業におけ る他会社が追随しないならば,その とき社会志向の会社は おそらくその努力を破棄させられることとなろ う。この ようにして,不可能 でないにして 乱 熾烈な競争下にある産業におい ては,費用を上昇させる社 会責任活動は困難なものとなろ う。平均的水準以上 の利益を もつ会社につい てはどうか。すなわち会社は社会的 プ=tジェクトに対 し資源を向け ることが できるであろ うか。疑いもなく会社はできるのであ る。すなわち多 くの巨大 で成功している会社は,地域社会のプロジェクト,従業員の給付プタ ジ ェク ト等々に,純利益 とか富の極大化に よって要求されると思われる以上 の程度 まで,従事するのであ る。い まだに,大衆に所有されている会社は,資本市 場 要因に よって,こ ういった活動に制約があ る。投資 資金を もつ人が二つ の 代替的会社を考慮してい ると考えてみよう。ある会社 は社会活動に資源の重 要な部分を 向け ているし,一方,他会社は利潤や 株価に関心を払っている。 多 くの投資家は,社会志向の会社を 避け がちであ り,それらの会社を資本市 場で不利益においている。結局,ある会社の株主はなぜ,他の会社の株主 よ りもより大きな程度まで,社会に助成するのであろ うか。高い利潤率を もつ 会社でさえ もが,一 般に ,一方的な費用増加を もつ社会活動を とることに対 し抑制を とづてい る。 こ のことは,会社が社会的責任を実施すべきではないことを 意味している のであろ うか。それはそ のことを意味しない。それは,単に多 くの費用増加 活動が,少なくとも本質的には,こういった活動の負担が一 律に,すべての 会社に出くわす よう保証するために,自発的な基礎 よりはむしろ強制的な基 礎におかれなければならないことを意味してい る。 この ようにして,公正な 雇用計 画,マイノリティーの訓練計画,生産の安全性,公害の減退,反トラ ストの活動等々は,もし現実的ル ールが本来的に確立 され,政府当局に よっ て強制されるならばさらに効果のあ るものとなろ う。産業 と政府が会社の行 動ルールを 確立するために協同したり,会社がその活動におけ る法律条文と 同じような精神に 従うことは疑わしいのであ る。勝負のルールは制約を もた らし,会社はこれらの制約下のもとで株価を極大化するよう努力しなければ ならないよ
ブリガム経営財務論に関する一考察 71 プ リ ズ ムは , こ の 方 法 で , 経 営 者 は 経 営 活 動 す る も の で あ る と 仮 定 す る の で あ る。 で は , 会 社 が 株 価 を 極 大 化 し よ うと す れ ば , こ れ は 社 会 に とっ て 善 い こ と であ ろ う か , 悪 い こ と であ ろ うか 。 一 般 に , そ れ は 善 い こ と で あ る。 モ ノポ リ ー を 形 成 し よ う と し た り, 安 全 基 準 を 犯 し た り, 公 害 の 規 制 要 件 に 適 合 さ せ る のに 失 敗 し た り , 等 々- す べ て の こ と が 政 府 に よっ て 制 約 さ れ て い る といった不法的経営活動を除いて,株価を 極大化する同じ経営活 動 がまた社 会に 便益 を 与え てい る。 最 初に ,株価 の極 大化 は ,資 源 から 多 く の価値を 引き 出す と ころ の効 率, 低い 費用 の経営 活動を 必要 とす る。 第2 に, 株価の極大 化 は また 消費 者 が望 ん でお り必要 とす る製 品 開発 を 必 要 とす る の で ,利潤動 機は, 新 しい 科学 技術 ,新 製品 お よび新 しい 仕 事に 向け られ るの であ る。 そ れゆ え, 会社 に対 し株価を 増大 させ る経 営活 動 は ,直 接,一 般に 社 会に 便益を 与 え る ことに な る。 こ のこ とは ,利潤 動 機を もつ 企 業 経済が モ の他の経 済制度 のタイ プ よりも一 層 ,効果的 なも のとな っ た理 由であ る。 財 務管理者 は,成 功 した 会社 の経営 活動 に決 定的 な役 割を 演 じ てい るの で, ま た,成 功 した会 社 は ,絶 対的 に 健全 な生産 経 済に とっ て必 要 であ る ので,財 務 がなぜ 社会的 見地 か ら みて重 要 であ るかを 検討す る ことは 容易 であ る。 最後に ,経営 者 は , 株価を 極大 化 す るために ,何を なす の であろ うか。 ブ リ ガムに 従 っ て みてい こ う。 会社 の経営 者 集団 が 株価を 極大化 す るこ とを 実 際に 追 求 してい ると仮定 す れば, 経営 者集 団 は ど うい うタイ プ の経営 活動を なす べ きか 。 最初 に 株価対 利潤の問題 す なわ ち利 潤 の極大 化 は 株価 の極大化 を 生ず るこ とに な るのかを 考えて み よう。 こり 質 問 に答 え るた めに ,わ れわ れは会 社 の利 潤総 額対1 株 当 りの利 益 の問題 を分 析 しなけ れ ばな らない。 あ る会 社 が 株式 を 売 るこ とに よって資 本調達 し,そ れか ら 政府 債に そ の調達 額を投 資 す る と仮定 し てみな さい。利 潤総 額は上 昇 す るであ ろ うが, さらに多 くの株 式 が発 行 済み とな る であろ う。1 株当 り の利益 は ,各 株式 価値 したが って現 在 の 株主 の富を 下落 さ せな がら ,お そ ら く減 少す るで あろ う。 こ の ように ,利 潤 が重 要 であ ると い う点 て,経 営 者は 会社 の利 潤 総 額 よりはむ しろ1 株当 り の利益 に関 心を払 わなけ れば なら ないo 1株当 り の利 益 の極大化 は 株主 の 富を 極大 化 するであ ろ うか。 あ るい は 他 の要 因が 考え ら れる であ ろ うか。 利 益 の タイ ミン グを 考 え てみなさい 。 あ る プ1==・ジ ェ クトは, 5 年 間,1 年 につ き0. 20 ドルつ まり総
額で1 ドル だけ 上 昇 させ る1 株の利益 を もつ と 仮定 し ,一方 では も う一つ の プ1==・ジ ェ クトは, 4 年間 は利 益 の効果 が ない が,5 年 目に1.25 白レだけ利 益 を 増大 させ ると仮定 してみな さい。 どち らの プ ロジ ェ ク 下が より適切 であ る か 。 そ の答 は, どち ら のプ ロジ ェ クトが最 大限 に 株式 の価値 をつ け 加え る こ と に な るかに 依存す る。そ し て,次 に ,こ れは ,投 資家 に対 す る貨幣 の時 間 価 値に 依存す る。 どんな事 象に おい て も, タイ ミン グは,単 な る利益 よりは む しろ 株価に よって測 定 され る富に 依 存す るた め の重要 な理 由と なっ てい る しの であ る。 も う一 つ の論 点 は リス ク(risk)に関 連 した ものであ る。あ る プロジ ェク ト は ,1 ドル だけ1 株 当 り利 益を 増大 さ せ ると期 待 され ,他方 の プロジ ェク ト は1 株当 り1.20 ドル だけ利 益を上 昇 させ ると期 待 され てい る と仮定 し てみな さい 。 最 初 の プロジ ェ クトは リス クはほ と ん どない。 も し,そ れが 引き受け ら れ ると, 利 益は 確実 に1 株当 り約1 ドル だけ 上 昇 す る であ ろ う。 も う一つ の プ ロジ ェ ク トは全 くリ スクかお り, 最大 限 の推 定 では ,利益 が1 株 当 り1.20 ドルだけ 上 昇す る であ ろ うとい うこ とであ り,そ こ まで 増大 しない か も し れない 可 能 性を 認 識 しなげ れば な らない。 i株当 り の予 想利 益に 伴 うリス タ度 は ,そ の会社 がい かに して資 金調 達 され るかに 依存 し てい る。 わ れわれ が 理 解 してい る よ うに ,比 較的多 くの債 務利 用を な し てい る会社 は, より大 き な 倒産(bankruptcy)''の危険に 直面 してい る。 結果 的 に は,債 務に よる資金 調 達 が1 株当 りの予 想利益 を 増大 させ る一 方 ,債 務 は また, こ れら のプ=t ジ ェ ク トの利益 のリ スク度を 増大 させ る のであ る。 も う一 つ の論 点は , 株主 へ の配 当支 払い対 留保 利益 す なわ ち留 保利益を 会 社 に 再投 資 した り,そ れに よって利 益 の流 れを 時 間 の経 過につ れ て成長 させ る原 因 とす る問 題 であ る。 株主 は 現 金配 当を 好む が ,会 社に 利益 を 再投資 し た こ とか ら生 ず る1 株当 り利 益 の成長 を も好 む のであ る。 財務管 理 者は,当 期 の利 益 の うち どの くらい の額を 留保 額す なわ ち 再投資 額に 比 較 して配当 と して払 うべき かを ,正 確に決 定 しなけ れば なら ない。 これ は,配 当 政策決定 (dividend policy decision)と呼ば れ る。
結 局, ブ リ ガ ムは, 会社 の株価 は 次に示 す 要 因に も とづ い てい るとい う。 (1) 予 想i 株当 り利 益
ブ リガ ム経営 財務 論に 関す る一 考 察 73 (3) 利益の流れのタイミング (4) 会社の資 金調達の方法 ㈲ 配当政策 それぞ れの重要な会社 の決定は,これらの要因したがって会社の株式の価 格に対す る影響に よって分析されなけ ればならない。た とえば,石炭会社は 新鉱床の開拓を考慮しなければならない。 もし新鉱床が開拓されると,1 株 当 り利益を 増大させることが期待されるであろ うか。 費用が予想額を 超え, 価格と産出高が計画を下回り,1 株当り利益が新鉱床 の開拓のために減少す るとい う事例が存在するのか。新鉱床が利潤を示し始め るのにはどのくらい かかるか。鉱床を開 拓する費用はどり くらい資金調達されるかレ もし債務が 利用されるならば,このことは,ど町くらい会社のリスク度を 増大させるの か。会社は,当期の配当を 減少させ,そのプロジ ェクトの資金調達をするた めに節約された キ ャッシ ュを利用すべきか,あ るいは,鉱床に対し,外部資 本でもって資金調達すべきか。財務管理は,こういった 質問に答を出すよう に設計される0 であ る。 結局,経営財務の目標として,「 株価極大化」を もちだし, そのもとで具 体的な経営財務活動を行な うことにな るといえる。われわれは,そこにおけ る経営財務の理論的解明が必要とされると考える。 そして,「株価極大化」 は ,経営財務の枠組 みを構築する原点として,再度,理解しなけ ればならな い であろ う。ただ,その 丁株価極大化め原理上がブリガム経営 財務論の枠組 みとどのような関係を有するかについ ては,一層の吟味が必要であ ると考え る。また,筆者の見解としては, 実践経営学的立場から,「 株価極大化の原 理」を 明確にしたい と考え る。 5 本書 の構成 ところで,ブリガ ムの財務論は,次のように七つ の部分から成ってい る。 (1) 導入 (2) 財務− リスク,利益,評価 (3) 財務諸表 と財務予測 (4) 運転資本管理 ㈲ 資 本予算 におけ る基 礎的 概念 固定資産への投資 (6) 長期 資 金調 達決定
(7) 財 務管 理におけ る トピ ック ス こ の うち ,(1)に おい ては ,経 営 財 務領 域 の歴 史的 検 討, 経営 財務 目標 の要 約 , 財務 管理 が実 践さ れ る場 合 の法 律的 お よび経 済的 枠 組 み の再検討 が展 開 さ れ てい る。(2)にお い ては, 各 々 の財 務的 意思 決定 が会 社 の株式 価値 へめ 影 響 に よって分 析 されなげ れ ば なら ない ので ,こ こ では, 代 替的 意思決定 が ど の よ うに して株価 に影 響す るか , 続い てそ れ が株価 モ デ ルを 必 要 とす る こ と に つい ての知 識を 与 え てい る。 す なわ ち, まず 貨 幣の時 間価 値 ,次に ,基 礎 的 な 株式 評価 モ デルが展 開 され , リ ス ク(risk) と利益 率(rates ol return)
が論 じ ら れ,証 券 評価 モ デル に適 用 さ れる。(3)に おい て は, 財務 諸表 がど の よ うに し て,経 営者 お よび投 資家 両 者に よって 開発 され ,利 用 され るかを 考 慮 してい る。 つ ま り,財 務情 報 と して,利 益 , 配当,成 長率 , リス ク度等 も 検討 さ れ, 未来 の財 務諸表 の計 画を な し,未 来 の経営 活 動を 計 画す るために 。 そ れが利 用 され る。(4)にお い ては , 財 務管理 プロ セス の実施 局面 が展 開さ れ る。 具 体的 には ,現 金, 在庫 ,流 動 資産 が 最 も効果的 に 利用 さ れる かを 検 討 し,短 期 の資 金 調達問題 が検討 さ れ る。(5)にお い ては, 固定 資産 購 入す なわ ち 資 本予 算(capital budgeting) が とりあげ られ,企 業体 の価値 へ の影響 が ㈲ らかに され る。(6)におい ては ,長 期資 本 調達に 焦点 があ お さ れ,長 期資 本 の 主 要 源泉 や形 態 ,資 本 コス ト,最 適 資本 構成 ,配 当政 策 が論 じ られ る。 最後 に ,(7)に おい て は,(1)か ら(6)まで展 開さ れた 財務 管理の 基本的 枠組 みの中でi 国際 財 務,合 併 ,倒 産, ス モール ・ ビジ ネ スの財 務 , リ ース,転 換証 券, ワ ラン トにつ い て論 じら れ る。 なお , ここで は ,ブ リ ガ ムの展 開 す る領 域を すべ て と りあ げ るこ とは でき ない が ,そ の一 端は ,IV 結, の 節 で, 総 括的に ブ リガ ム経 営 財務論 に対 す るコ メン トを してお きたい 。 したが っ て, 次 節では ,経 営 財務 の領域 で 最も 基 本的 課題 であ る資本 コス ト論を と りあ げ ,プ リ ズム経 営 財務論 の 基 礎構造 を 明 ら かに す る手掛 りと したい 。 注
1)Brigham ,E. F,, op. cit., pp. 3 ∼4.2
) Ibid・,pp. 4∼5.3
)Burck ,C. G., "A Group Profile of the Fortune 500 Chief Executive, ”
ブリガム経営財務論に関する一考察 754 ) アメリカにおけ る経営者教育 プゴダラ ムの中で丿 財務担当以外の経営者のため・
の財 務分析」が最 も高い 在籍者数を もってい るとい われ る。5
)Brigham, E. F ごop. cit., pp. 5 ∼6. j6
)Ibid., pp. 4 ∼11.7
)Lewellen, W. G., "Management and Ownership in the Large Firm," Journal of Finance, vol. 24, May 1969, pp. 299 ∼322.
ここに おいて,ル ウェレソは, 経営 者が大部分,「株 価極大化 」を 指向する意 思決定をなしている ように思われると結論づけてい る。 しかし ながら,わが国 の・ 大会社の多 くの経営者が「株価極大化」を 行動指 針とし て意思決定を なしている かについては,はなはだ疑間であ る。8 ) わが国において も√実質的な「乗っ取 り」が近い 将来 ,見 られる ようにな るの ではないか と予 想す る。9 ) 「社会的責任 」は,今 日の企業 体を 明確にす る具体的 経営活動であると考え る。 Ill ブ リガム経営財務論の特色 一 資本コスト論を中心にしてー ブリガ ム経営財務論 の基礎構造を理解するためには ,彼に よるモジリアー
-ケ ミラ ー(Modigliani, F. and M. H. Miller)理 論を 批判 ・検討 してい る点
か ら試 み てみ よ う。つ まり資 本構成(capital structure)と資 本 コスト(the costof capital )に 関 する モジ リ アー ニ, ミラ ー理 論 への批 判的接 近 であ る。 では。 1) ブリガ ムに 従 って・みて み よう。 企業 体 の価 値 は, 期待利 益 の流 れ とそ の流 れ の現 在 価 値を 見つけ るた めに 利 用され る割引 率(資本コスト)に 依 存す る。 し たが っ て, も し資 本構成 が価 値に影 響を与 え ることに な れば ,企業 体 は, 期待 利益 ,資 本 コス トあ るい は 両 者に 影響を 与 え るこ とに よっ て,そ の ように 遂行 し なけ れば ならない。 資 本 構成を 評価お よび資 本 コス トに 関 連づけ る理論 の多 くは, 直接 ,間接を と 2) わず, モi>V ア ーニ, ミラーの研 究に もとづい てい る。 ブ リガ ムに よれば, モジ リア ーニ, ミラー の理論(本節では,以下,「MM 理論」という)が現代 の・ 会社財 務 の基 礎を 提供す る もの として 幅広 く受け 入 れ られ てい るけ れ ども, この領 域に は,八 ヽまだ にい くつ か の主 要な 未解 決 な議 論 かお るとい う。 基 本 的には,これらの議論は,基本的な関係 厳密には ,財務レバレジにおけ る変化がどれくらい の影響を企業体 の利益の流れと資 本コストに与え,した
か って株式 の価値に与えるか ものである。 を計 量化 す るた め の実 証的 試 みに 関連 す る 資 本構成 の理 論に 関 す る初 期 の研究を デ ュラン ド(Durand,D ・)に 従 っ て み て み よ3)。 デ ュラ ン ドは二つ の極端 な状 況を 考 え る。 1 純利 益 アプpt ―チ (NI ) と純営業 利益 (NOI ) ア プロ ーチ
① 純利 益 アプ = − チ(Net Income Approach, NI )。 評価 に対 す るNI ア プpt ―チ の もとで は, 利子 率と 自己 資本 コストは両 者 とも一 定 し て 牡 り資 本構 成 とは無 関係 であ る。 しか し, 加重平 均資 本 コス トが減 少 す る と,企業 体 の
2)
総 価値(株式価値と社債価値を加えたもの)は,財務 レバ レジ の 増大に つ れて上 昇 す る。 し
③ 純 営業利 益 アプ ロ ―チ(Net operating Income Approach, NOI )。 NOI アプpr ―チの も とでは , 自己資 本 コス トが 債務 コ ストを 除い て加重平 均 コス トを 増 大 させ ると, 企業 体 の総 価値 は レバ レジが変 化 し た と して も一 定 して い る。 今 日, こ うい った 極端 な状 況 のいず れ もが現実 に 存在 す る と考 え てい る人 は い ない とい う。 しか し, それ らは ,わ れわ れの 研究 の 出発点 を 提 供してい る。 こ の重要 な論 点に 焦 点をあ わせ るた めに, わ れわ れはい くつ か の単純化 した 前 提を な す こ とか ら始 め る。 上 ① 法 人 税は ない。 ③ すべ て の利 益は 配 当に支 払 わ れる。 ③ 企業 体 の資 産 は成 長 しない。 そ の結 果,営 業利 益(EBIT )は,未来に お い て一 定 してい ると期 待 され る。 ④ 企業 体 の債 務 は リス クのない 永久 資産 か らな り, 瓦=Rp であ る。 な お , こ こで使 わ れ る記 号 の 意味 は次 の通 りであ る。 Q ―株式 (持分) の総 市 場価 値 T )=社 債 の総 市場 価値 v =企業 体 の総 市場 価値 ( =5 十八) EBIT =利 子 ・税 金控 除 前利益。 これ は純営業 利益 (NOI ) に 等 しい。 レ/ =支 払利 子総 額( = 臨功 …‘ … 瓦 =社 債に対 す る利子 率( =I/D =R λ) 犬 ks =自己 資本 の コス ト ニ ト 丿 十 … ……
ブリガム経営財務論に関する一考察 77 債 務 が 完 全 に リ ス ク の な い 永 久 社 債 か ら な っ て い る の で ,社 債 の 価 値 は フ:)=I/ 臨 と な る。 ま た , 企 業 体 の 税 率 は ゼ ロ で あ る の で , 自己 資 本 の 価値 は 次 の よ うに な る。 し た が っ て , 5; = EBIT −I 一 糾 ゐs = EBIT −I S 社債と自己資本価値は,企業体の総価値を決定す るために合計される。 V =D 十o =^ ・ 臨 +
EBIT −I
岫
最 後に , われ われ は, 加重平 均 資本 コ スト 瓦 は 次 の よ うに な る。 し 瓦=心 恥 十心 尨 =(D ノVし臨 +(S 玖 尨 こ れらの定 義 と方程式 は議論 の余 地は な く,そ れ らは ,すべ ての資 本構成 理 論に使 わ れ る。 (1) 純利 益(NI) アプ ロ ―チ NI とNOI との間 の基 本的 差 異は ,企 業 体が社 債を 次第に多 く利 用 す る に つれ て,ks つ まり結果 とし て,V とS に 何 かお こ るかに 関連 してい る。NI の もとで は,ks は, 企 業 体 の財 務 レバ レジ の程 度を 無視 して 固定 化 さ れてお り,一 定 であ ると仮 定 さ れ る。一 方 ,NOI の かとで は,ks は変 化 す ると仮定 される。( 両者の理論は,社債の利子率丸 は一定であると仮定している丿NI ア プ= ―チを 説 明す るた めに , 最初 , 企 業 体は社 債 を もた ない とし, 臨 =7.5%, EBIT = $900,000, ks =lO % であ る と仮定 す る。 法人 税はない の で, NI ア プr=・− チでは企 業 体 の価 値は 次 の よ うに な る。 v =争
EBIT −I
尨
=O 十 S 900, 000 0.10 =$9,000,000 企業体は自己資本だけを利用してい るので,平均資本 コストはka =ks =10% となる。 今,伺 じ状態を仮定するが,400 万ドルの社債を もつ企業 体を と9 てみよう。 NI アプa ―チのもとで,その価値は次のように計算される。 z) =二 = 力d '・0.075($4,000,000)
0.075 ト
=$ 4,000,000o 一 一 EBIT −I $900,000 −$300,000 − − 尨 $ 600,000 0.10 0.10 =$ 6,000,000 F =$4,000,000 十$ 6,000,000=$ 10,000,000 また,平均資本コストが9 %であ ることに注目すると, 瓦 =( 10 % =9 % さて, 100 万ドルの追加社債を売り, 利益を株式を買い戻すために使うこと 忙 よって, レバレジを 増大させる会社を考えてみよう。 この変化は,企業体 の 価値および資本コストにどのような影響をもたらすであろ うか。 NI アプpt ーチのもとでは,社債と自己資本の合成コストは7.^ %と10% でそれぞ れ 一定であると仮定されている。その結果,新しい状況 は次の よりになる。 D) = c = 0.075($5,000,000 )_ − 0.075 $900,000 − $ 375,000 0.10 $5,000,000 − _$525,000 0.10 -$5,250,000 F =$ 5,000,000十$5・,250,000=$10,250,000 平 均資本コストは また減少する 瓦 =(
$ 5,000,000$10,250,000
10% =8.78 % こ のように,追加レバレジの利用は,企業体の総価値を上昇させ,平均資本 コストを下落させる原因となった。 表2 −1は, 異なった財務レバレジにお 表2 −1 価値と資本コストに関する資本構成の影響(ⅣO レバレジ比率 (/)/F) 社 債の価値D 自己資本の価値S 総 価値y ■ a ≪ . ≪ s e w t e ^ ″ 祷O% 40. 00% 48. 78% 80.00 % oo.en o/ 100. 00%
$0 $9.00 $9.00 7.50 %10. 00%10. 00% $ 4.00 $ 5.00 $ 9.00 $ 11.00 $ 12.00$ 6.00 $ 5.25 $ 2.25 $ 0.75 $ O・$ 10. 00 $ 10.25 $11.25 $ 11.75 $ 12. 00 7.50 % 7.50 % 7.50 % 7.50 % 7.50 % 10.00% 10. 00% 10. 00% 10. 00% 10.00 % 9.00% 8.78 % 8.00 % 7.66 % 7.50 % ( £iS/T=$900,000 , そ の他 の単 位100 万 ド ル)
資 本 コ ス ト ( %) O a> CO1 7 CO L O ・ < * CO <M 1 0 ブ リガ ム経営財 務論 に関 す る一考 察 79 0.1 0.2 0.3 0 。4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 D/V 図2 −1 Ni アプローチのもとでの資本コスト 廿 る企業体の総資本 コストと総市場価値を示し, 一方, 図2 −1において, 資 本コス丿 が図示 される。表において,企業体の価値は,負債比率が増加す るにつれて上昇し,表2 −1,図2 −1両者において総資本コスト, 平均資本 コストは,減少す ることに注 目しておきたい。 (2)NOI アプ■a ―チ NOI アプa ーチは異なった一 連の前提に もとづいてい る。 それは, 評価 や 資本コストに関す るレバレジの影響に関して,性急な異なった結論に導く。 次 のものは,NOI アプローチの主要な前提である。 ① 瓦 は一定である。それはレバレジとともに変動しない。 ② 企業 体の価値は純営業利益EBIT を 割引率 垢 で資本化することに よって求められる。 F = EBIT 一 瓦 KBIT と 瓦 は一定であり,レバレジと無関係であ るので, V はまたレバ シジが変動しても一定であ る。 ③ 株式の価値S はに企業体の(一定した)価値から,社債の価値D を控 除 した残余分として求められる。
S =V −D ④ 社債のコストは 尨 で一定しており, 自己資本 のコストは次のように なる。 瓦s = EBIT −I S ks はNOI 理論のもとでは,レバレジとともに増大 する。 ⑤ 平均資本コストは次のように計算される。 恥a D -F 恥d 十 尨 仮 説1 で みた よ うに, 瓦 は一定 であ る。 瓦 を 一定 に す るために は> 尨 は, レ バレジ が 増大 す るにつ れ て上 昇 しなけ れば な ら ない 。 NOI を 説 明す るために ,Ni 項 で みた同 じ デ ータを 利 用す る。 すなわ ち 恥=7.5 %,EBIT = $900,000, Z)=$4,000,000, そ してka =10 %(400万 ドルの社債において)であ る。 NOI の仮定 に もとづ け ば, わ れわ れは次 の よ うな価値 を みつけ る。 F = KBIT $ 900, 000 一 一 瓦 0.10 =$9,000,000 フ:)=$4,000,000 (所与) S =F −/)=$9,000,000 − $ 4,000,000=$5,000,000 自己資本コストは次のようになる。 ゐs = EBIT −I $ 900, 000 −0.075($4,000,000) − − S $ 5,000,000 =0,12( =12 %) そ して 加重平 均 資 本 コス トは 次 の よ うに な る。
jSy
バ
臨
﹂
旦F
ソ
ス
瓦
( ・)7.5% 十(−95 1 9% =1 A% もし社債が500万ドルに増大するとしたら,企業体の価値は900万ドルで一定 し,株式 の価値は400 万ドルに落ちるであろ う。そし て,自己資本コストは,1Q .19%に上昇す るであろ う。 ゐs= $ 900,000−0. 075($ 5,000,000) $ 4,000,000 1 q .19 % $ 525,000$4,000,000ま た , ブリガ ム経営 財 務論 に 関す る一 考察 81 瓦=l.^ %(晋)+13.12 %(昔)=4.17 +5.SS =10 % と な り , 再 度 , 計 算 さ れ た 資 本 の 平 均 コ ス ト は 一 定 で あ る こ と が わ か] る 。 表2 −2 に お い て は , 異 な っ た 負 債 比 率 に お け るF, 瓦5, 瓦 お よ び 尨 の 価 値 が 示 さ れ る 。 図2 −2 に お い て は, NOI の 資 本 コ ス ト が 図 示 さ れ る ノ ① 社 債 の コ ス ト 尨 と 総 資 本 コ ス ト , 平 均 資 本 コ ス ト 瓦 は 一 定 で あ る 。 ③ 自 己 資 本 コ ス ト 臨 は ,D ノV 比 率 に よ っ て 測 定 さ れ る レ バ レ ジ :,と と も 4) 十 に 指 数 的 に 上 昇 す る 。。 結 局 ,NI 理 論 とNOI 理 論 は , 企 業 体 の 価 値 と 資 本 コ ス ト に 対 す る レ バ レ ジ の 影 響 に 関 し て 全 く 異 な っ た 結 論 に 導 い て い る 。 ど ち ら の 理 論 が 真 実 に も っ と も 近 い で あ ろ う か 。 こ め 問 題 は 次 項 で 展 開 し て み よ う 。 2 モ ジ リ ア ー ニ と ミ ラ ー の 仮 説 … … … …… モ ジ リ ア ー ニ , ミ ラ ー は ,NOI ア プp ー チ を 支 持 す る 理 論 的 議 論 を 展 開 し た 。 最 初 に , 彼 ら は , そ れ ら の 前 提 を 次 の よ う に な し た 。 の 企 業 体 は 同 質 の リ ス ク ・ ク ラ ス に 分 類 さ れ る 。 所 与 の リ ス ク ・ ク ラ ス に お け る 企 業 体 は , 同 じ リ ス ク に あ り , そ の 期 待 利 益 は , 同 じ 率 で 資 本 化 さ れ る 。 そ れ ゆ え , 所 与 の ク ラ ス に お け る す べ て の 企 業 体 は 同 じ 期 待 必 要 利 益 率 を' も つ ○ 。 ・- ・ I ⑧ す べ て の 現 在 お よ び 未 来 の 投 資 家 は , 各 企 業 体 の 平 均 未 来 のEBIT に 同 じ 見 積 り を な し て い る 。 表0 −0 NOI ア プ ロ ー チ の も と で の 価 値 と 資 本 コ ス ト に 関 す る 資 本 構 成 の 影 響(Non レ バ レ ジ 比 率(i>/F) \ し 社 債D 自己資本S 総価値y ゐ& 恥 たα・D/S (\%$ 0. 000$ 9. 000$ 9. 000 7.50 % 10. 00 % 10. 00 % O % QO .OQ 0/$ 2. 000$ 7. 000$ 9. 000 7.50 % 10. 71 %10. 00 % Zo.Oi/o 44. 44% 88. 89%$ 4. 000 $ 8. 000$ 5. 000 $ 1. 000$ 9. 000 $ 9. 000 7.50 % 7.50 % 19 nn % 30. 00% 10. 00% 10. 00% 80. 00% 800. 00% (EBIT =$ 900, 000,そ の他 の単 位100 万 ド ル 100.00 % $ 9.000$ 0. 000 ・$ 9. 000 7.50 % − 10.00 % −
資本コスト (%) 30 25 20 15 10 5 0 11.11 22.22 33.33 44.44 55.56 66.67 77.78 88.89 B/V (社 債 対総 市場 価 値, 図2-2 税金 のないNOI アプ ロ ーチのもとで の資本 平Iスト み ゐ 100 % ) ③ 株式と社債は完全資本市場 で取引される。 この前提は,そ の他の事項 − ⑧取引費用がない, ⑤個人投資家は会社と同じ利子率で借りられる,− の 間で意味をもつ。 ④ 法人税はない。 この前提は,後に撤回されるが,他のものはそ のまま である。これらの前提に もとづいて,MM は, 二つの命題を 提唱した。最初 の一つは, NOI の仮説と同じであ る。 命題1 ニ企業 体の価値は,純営業利益(NOl =EBIT )を企業体のリスク・ クラスにおけ る適切な率で資本化することに よって次のように確立される。 v = EBIT -・ 瓦
ブリガム経営財務論に関する一考察 83EBIT は 利子 控 除前 で計 算 され る。 した がっ て, そ れ は レ バ レジ と無関 係 である。 命 題1 を 論 ず る うえ で,MM は, 如 が 未来 のKBIT に 関す る不 確実性( すなわち(^beit)に のみ依 存す るとい う。 もし, EBIT と 如 が両 者 とも レバ レジ と無 関係 であ るとす ると ,V は一 定 であ り, レ バ レジ と無関 係 で なけ れ ば な らない。 命題2 自己 資 本 コス トは,一定 した平 均 資 本 コ ス トに 財 務 レバ レジの程 度に 依存 す る リ スク・ プ レ ミア ムを 加えた も のに等 しい。 臨 =如 十リス ク・ プレ ミア ム =如 十(如 一如)(D/S) こ の ように, 命題2 は, 企業体 の社 債の利 用にっ れて , 自己 資 本 コス トは上 昇 す るこ とを 述べ てい る。 ひ とまと めに す れば, MM の命 題 は, 次 のこと を 意味 す る。 た とえ社 債が 自己資 本 よりも 費用が か か らな いけ れ ど 乱 資 本 構 成の 中に 社 債を 含め る ことは, より安 い社 債 の利 点 が 自己資 本 コストの増 大 に よっ て相 殺 され る とい う理 由 で, 企業 体 の価 値を 増 大 させ ない であ ろ う。 この ように し て,基 礎的 なMM 仮 説は, 法人 税 のな い 世 界で は,企業 体 の 価 値は 完全に ,資 本構成 に よっ ては影 響され ない とい うこ とであ る。 3 MM 仮説 の証 明 MM 仮 説 の証 明は , さや取 り取 引の過 程に も とづ い てい る。 彼らは, 次 の ように 論 じてい る。 も し二 つ の会社 が,(1)会 社 が資 金 調達 する方 法,(2)総 市 場価 値, に おい て の み異な ってい るな らば ,投 資家 は 過大 評価 さ れた会社 の 株式を 売勺 , 過小評 価 された 会社 の株式を 買い , そ れ ら の会社 が同 じ市場 価 値を もつ まで こ の過程を 続け るであ ろ う。 説 明 のた めに ,二つ の企業 体 £ (借り入れのある) とU (借り入れのない) が財 務 構造を 除い て,す べて の局面 に おい て同 じであ る と仮定 し てみ よ う。 す なわ ち企 業 体 £ は7.5 %で400 万 ドル の社 債を もち, 企業 体 び は , す べ て自己資 本 で 資 金 調達 され てい る。 両 企業 体 と も £召/r =$900,000 を もつ 。 さや取 り以 前 の最 初 の状 況で は, 両 企業 体 と もks =lO % の自己 資本 の資 本化 率を も ってい る。 こ の ような状 況 のもと では ,NI アプ ローチ の仮定 は正 しい も のであ り, 次 のよ うな状 況 が 存在 す る であろ ‰ 企業 体 び:
卜 企 業 体 び め 株式 価 値 = 恥 = EBIT −I S 900,000 −0 一 尨 0.10 =$9,000,000 企 業 体 び の価 値 =Vn =Dn 十& = $0 十$9,000,000 =$9,000,000 企 業 体 £: ユ ・・.・. . ・・ .・. 企業 体 £ の株式 価値 =亀 = $ 900,000 −0,075($ 4, 000,000) 0.10 =$6,000,000 企業体 £ の価値=Fi =D. 十Si =$4,000,000 十$ 6,000,000 十 =$ 10,000,000 このようにして,借 り入れ会社 の価値, 企業体 £ は, 借り入れのない企業 体 の価値を超える。MM は, この条件は説得的でない と論ずる。 説明のた めに,企業体 £ におけ る株式を所有 したと仮定してみょう。MM にょれば, あなたは,財務リスクを増大 しない で総利益を増大することができる。たと えば,あなたが £ の株式 の10%を所有すると仮定して みる。 その結果, あ なたの投資額は60万ドルとなる。 あなたは, £ の株式 を売り £ の社債の10% ($400,000)に等 しい 額を借 りることができる。それ から90万ドルでU 分 株式 の10% を買 う。あなたは,株式 の売却と借 り入れか ら100 万 ドルを受け 取り,u の株式に90万ドルを使 う。その結果,あなたは,自由な資 金10万ド ルを 七つごとになる。さて,あ なたの所得状況を考えてみよ。 旧 所 得:L ($600,000 )の10 % S 60,000 新 所 得:び($900,000 )の10 % $ $ 400,000 借 り入 れ資 金 の7.5 %-30,000 $ 60,000 このように して,あなたの株式投資所得は,以前と全く同じものとなる。し かし,あなたは,他への投資のために10 万ドルを残すこ とになる。 さらに,MM に よれば,あなたのリスクは以前と同じであり, あなたは単に , 会社 のレバレジ の代 りに「手製の」レバレジを代用しているにすぎない。MM は, このさや取 りの過程は,L の株式 の売却が価格を引き下げる方向に働き,u の株式の購入が価格を引き上げ る方向に働くごごとに よって ,二つ の企業体の 市場価格が等しくなるまで,行なわれると結論する。こ の一致が到達される とき,NOI の条件が満たされ, 企業 体の価値とその平 均資本コス下は等し くなる。このように して,V と 瓦 は,資本構成と無関係である。 …………
ブリガム経営財務論に関する一考察 85 4 づMM 仮説 の批判 ト MM の結 論 は,最 初の 前提 から, 論理 的 に なさ れて い る。 そ れゆえ, 価 値 がレバ レジ と無関 係であ る とい うMM 仮 説に 同 意 しない 人 々は ,一 般に , 彼 らの前提を 非 現実的 な もの とし て攻 撃を してい る。 主 な 批判 のい くつ かは 次 のものであ る。 〔D MM の分析 は,個 人 と会 社 のレバ レジ が 完全 に 代替 性 があ るこ と を 〕意 味 してい る。 会 社 の借 り入 れ の場合 に おい て は, 借 り入 れ のあ る企 業体に 投 資す る個人 は,有 限責任 であ る。 し か しな が ら, も し,あ る 屯のが さや取 り取引に 従事 ず るな らば ,借 り入 れ のあ る企 業 体に おけ る保有 だけ でな く, 何 様に 他 の資 産を 失 う可能 性かお る。 ト = 。 ② MM の分 析で は, 取 引費用 は 仮定 さ れてい るが , こ の ような費用が レ ③ 会 社 と 個 人 は ,鍔 じ利 率 で 借 り入 れ る と 仮 定 さ れ て い る。 借 り 入 れ の 費 用は , 企 業 体 よ り も 個 人 の方 が よ り 高 く な る で あ ろ う。 十 ダ ④ 時 々 , 制 度 的 制 限 が さヤ 取 り 過 程 を 遅 ら す か も し れ な い 。 機 関 投 資 家 檀, 今 日 , 株式 市 場 を 支 配 して い る・。 しか し多 く の 機 関 投 資 家 は ,「 手 製」 の レバ レジ で , 介 入 す る こ と づは禁 じ ら れ て い る 。し MM の 批 判 者 は , モ デ ル の 前 提 が 無 効 で あ り, 現 実 の世 界 に お い て は , こ企 業 体 の 価 値 と資 本 コ ス トが 財 務 レ バ レ ジ の関 数 で あ る と 論 じ て い る。 5 法 人 税 を 伴 う場 合 のMM の 見 解 税 金 が 導 入 さ れ る と, MM の 状 況 は 変 化 す る。 法 人 税 を もつ こ とに よ う て, ……・MM ・は,‥__借 口入 れ口 お る企 業 体 が 社 債 に 対 す る_利 子 が 控 除 で‥き……う_る_費 用 であ る た め に , よ り 高 い 価 値 を も っ て い る こ とを 認 め て い る。 特 に ,MM 拉, L の 価 値 は ,L の 社 債 と 税 率 を か け あ わ せ た 額 だ け , び の 価 値 を 超 え る 。 I VL =Vrr 十tD ‥‥・…・d) こ こにVl は 企 業 体 の 価 値 で あ り,V れ ま企 業 体 び の 価 値 で あ り, D は £ 忙 おけ る社 債 の 額 であ り ,t \よ税 率 で あ る。 こ の 証 明 は 次 の通 り と な る。 資 本 構成 を 除 い て , す べ て の 局 面 に お い て 一 致 し て い る 二 つ の 会 社 を 考 え て み よ。 企 業 体 び は 資 本 構 成 に 社 債 を もた ず , 一 方, L は 社 債 を 採 用 し , 期 待 営 業利 益EBIT は 各 企 業 体 に と っ て 同 じ で あ る と 仮 定 す る 。 こ れ ら の 前 提
の も と で は ,r 投 資 家 に 利 用 で き る 営 業 キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー, 企 業 体 び と 企 業 体 £ に 対 す るCFu とCF バ ま 次 の よ う に 計 算 さ れ る 。 CFu =EBIT(l −0 ‥ ‥ ‥ ‥‥(2) ま た 。 cf ・ =(EBIT − 島M)( −0 十kj) … … …(3) こ こ でt \ま 税 率 で あ り , 島 は 社 債 に 対 す る 利 子 率 で あ り ,D は 社 債 総 額 で あ る 。 方 程 式(3) の 右 側 の 最 初 の 項 は , 株 主 に 利 用 で き る 所 得 で あ り , 第2 の 項 は , 社 債 権 者 に 利 用 で き る 所 得 で あ る 。 企 業 体 び が 社 債 を 採 用 し な い め で 。 そ の 価 値V れ ま , 税 引 後 の 年 間 正 味 利 益, EBIT(- − だ を 自 己 資 本 コ ス ト で 割 り 引 く こ と に よ っ て 決 定 さ れ る 。 つ V び=
EBIT(X −f)
臨
…… ・…(4) 借り入れのあ る企業体の税引後のキ ヤヅシ ュ・フロ- , CF いt. 次のように 述べることができる。 CFl =(EBIT −k μ)(1 −0 十kj)=EBIT −koD −EBIT () 十tkj) 十kaD =EBIT 一EBIT (O 十tkaD
=EBIT(l −0 十t kj) 最後の方程式 の最初の項EBira −だ は,u の所得に等しく,一方,第2 の項tk に は, 利子が控除され るために生ずる税金節約(tax savings) を表 わしている。 借り入れのあ る企業体 の価値は,その税引後利益の部分を資本化すること に よって求められる。MM は,L の「規則的な」 利益の流れが正確には企 業体 び の所 得と同じリスクを もっているので,それは同じ率,ks で資本化 されなけ ればならない。社債はリスタのない ものとして仮定されてい るので。 社債に対する利子は支払われなければならない。それゆえ,税金節約は比較 的,確実に, 企業体の社債の利子率 島 で割引されなけ ればならない リスク のない流れを表わしてい る。このように,われわれは次式を得る。 V .= し か し な が ら ,
EBIT(l −O
肌
tkaD E BIT (1 −0 一 恥d カs 十tD ‥‥‥‥‥(5 )ブ リ ガ ム経営 財 務論 に 関す る一 考察 87 EBIT(l −) Vu = ‘ ks し た が う て , わ れ わ れ は ,Vl を 次 の よ う に 表 わ す こ と が で き る 。 Vl =Vu 十tD ・… … …(1) このよりに,MM に よれば, 借り入れのある企業体の価値は, レバレジ の ない価値に,税率と社債の価値をかけ たものに等しい利子の税金保 護分の現 在価値を加えたものに等 しい。 借り入れのない企業体の自己 資本コストは,方程式(4)を解くことによって 求められる。 ksU =
E BIT (1
−)
V び
… … …(6) 借り入れのない企業体は社債を もってい ないので,その平均資本コストはそ の自己資本 コストに等しい。kaU =ksU 借り入れのある企業体にとっては,自己資本のコストは 自己資本の価値に よ って割られる税引後利益であ ることを知ってい る。 &sL 一 一 (EBIT −I) (EBIT −1 で)(l−0 − S l V −D … … …(7) 利子が控除できうるのを考慮 して,企業体 £ に対 する加重平均資本 コストは 次のようになる○ 瓦£=(£)/F)(紅)a −0 十(s/yで)(ゐs) ………(8) 法人税を伴 う世界におけ るMM 評価や資本コスト方程式を説明するために, 次の条件を仮定してみる。 ①あ る企業体は5,400 万ドルの総資本を もつ事業 を始める。 ②この資本は, 5,400 万ドルの費用を もつ資産を購入するのに使 われる。 ③これらの資産 の税引前利益率は,16.67 % で あ り,EBIT =$900,000 である。④レバレジ のない 自己資本の資本化率はks =10%であ る。 ⑥法人税率は40%である。このようにして借 り入れのない企業 体の価値は以 下のように計算される。 ‰ =EBIT(l  ̄だ)=$900,000(1  ̄0.4) =$,,^,^ 屯し企業体がレバレジを利用す るならば,何がおとるのか。社債が追加され ると,方程式(1)に よって,企業体 の価値は社債の単位あたりtD だけ上昇す ることがわかる。たとえば, もし7.5 % である200 万ドルの社債が利用されると,そのとき, VL,
=V び十tD
=多5,400,000十0.4($2,000,000)
=$ 5,400,000十$800,000=$6,200,000
(EBIT −n)(-) ($900,000 − $ 150,000)(0. 6) 一 一 ks. = -V −D $ 450,000$ 4,200,000 =10.71 % $6,200,000 − $ 2,000,000 私,L = フ:>/F)(ゐぶ)(l−) 十(S/ 玖)(尨) -$2,000,000 $ 6,200,000 )(7.5 ゛)(0.6) 唯 に 言, 000 )ぐ^^.^^゛) 犬 =0.3226(4.5 %) 十〇.6774(10. 71%) =8.71 % 犬 ニ レ そ の他 の財務 レ バ レジ の額 の もとで, Vl。 尨L と 瓦乙の価 値 は表2 −3 お よ。 び図2 −3 に 示 さ れ る。 こ こ では ,MM 理論 は ,法 人 税を もつ 世 界に おい て, 平 均 資 本 コス トは 漸次 減少 し,企業 体 め価値 は財 務 レバ レジ とと もに ,漸 次 増大 す るこ とを 示 してい るこ とがわ か る。 こ の よ うに ,MM モ デルは, 企 業 体 が100 % の社 債に よっ て資 金調 達さ れなけ れば な らない と の結 論に導い てい る。 ◇ 表2 −3 価値と資本コストに関するレバレジの影響 一 自己資本 平均資本 社 債 (Z)) 0 2 4 6 8 ︷ `Ψ 総市場価値 (F) $5.4 6.2 7.0 7.8 8.6 レ バ レ ジ( £/F)- O % 32.25 57.14 76.92 93.02 コ ス ト ( 恥) 10. 00%10.71 %12.0015. 0030.00 コ ス ト ( 尨)10. 00% 8.71 7.77 6.92 6.28 (単位 100万ドル) 6 倒産 コストの追加 企業体は社債に よる資金調達のみを利用しなければならない とい う結論は,MM モデルが倒産および財務上 の困難さに付随したあっ れき費用を無 視 し てい る理由を生 じさせることになる。実際には,現実世界において不確実性 は,100%の社債資金調達に到達するい かなる企業体に とって も高い倒産り 確資本コスト (%) 15.0 10.0 馳i=l L o -< d < LO O LO ブ リガ ム経営 財務 論に 関す る一 考 察 89 自己資 本の コスト, ん 0 10 20 30 40 50 60 70 80 B/V (社債対総市揚価値, %) 図2 −3 税金を考慮した場合のMM 仮説のもとでの資本コスト 率が生 ず る。 さらに , 倒産に 伴 う費 用 は重要 であ る。そ れ ゆえ ,負 債 比率が 高ければ 高い ほ ど, ます ます 企業 体 の資 産の重要 な比 率 が失 わ れ る確 率が高 くなる。 さ らに, た とえ 企業 体 が実 際に は, 倒産に いた ら ない と し て 乱 弱 体 な貸 借対 照表 は , 困難 な時 代 の代替 案に 制限を もたらす で あろ うし, また , もしそ の企業 体 が より大 きな 財務 的 強さを 屯った と して も存 在す るであろ う よりも少ないKBIT こ流 れ の原 因 ともな る。 ゝ・ 。 ■ ■ 税金に関 す るしMM の論 理 が受げ 入 れ られ, 倒産 費用 や 関 連費 用 がそ のモ デ ルに 加えら れ るな らば , そ の とき企業 体 の価値は, 図2 =4 で示 され る よ うに, レバレジ とと もに 変 化す るであ ろ う。そ れ が描 かれ るに した がって,OA の範囲を 超え る と, 企業 体 の価値 の増 加はMM 仮 説 が示 した ように 線 型であ る。 し か七な が ら,点A を 超え ると,「倒産 コス ト」 は重 要 とな り, 利子の税 金保 護分を 相 殺 し始 め る。 点 石 に おい て, 予 想 さ れる 倒産 の限 界 費用は正確に は 債務 に よる資 金 調達 の利益 と一 致 し, 企業 体 の価 値 は極大 化 され る。 図2-3 に 示 さ れ る よ うな 資 本 コ ス トの状 況は 倒産 コス ト が加え ら れ る と き修正 されなけ れば な らない 。 こ の場 合, 社債 と 自己 資 本両 者 の コストの上 昇は非線型 であ り, 加 重平 均資 本 コ 不トは 最低点 を もつこ とに なろ う。 倒産 6) に 伴 うMM の 資 本 コ不 ト 曲線 は , ブ リガ ムが示 す も の と同 じ よ うな 一 般的
企業 体の総 価 値 V じ 企業 体に対 す るMM の 「理論 的」価 値: 覧 企業体の実際の価値 財務レバレ ジのない 企業体の価値 O A B レ゛くレ ジ (D/V) 図2 −4 企業体の価値に関するレ バレ ジの影 響 型 を も っ て い る の で あ る。 7 若 干 の コ メ ン ト 図2 −4 に お け る 考 え 方 と , い わ ゆ る 加 重 平 均 資 本 コ ス トの 最 低 点 を 求 め る考 え 方 と は , 実 業 界 お よ び 学 会 の 部 面 に お い て ほ と ん ど不 一 致 は ない と い わ れ る 。 し か し な が ら , 問 題 は , そ れ ぞ れ の 曲 線 の 形 状 で あ る。 つ ま り,(1) 倒産 コ ス ト の 重 要 性 ,(2)レ バ レ ジ に ょ っ て , 恥 ,ks ,ka が 影 響 さ れ る 範 囲 ,(3) 所 与 の 企 業 体 に 対 す る最 適 資 本 構 成 が そ れ で あ る。 ブ リ ガ ムに よれ ば , こ の よ う な 問 題 は , 理 論 上 の問 題 で は な く , 経 験 上( 統計上) の 問 題 で あ る とト
う。 つ ま り , 経 営 実 践 上 , 最 適 資 本 構 成(optimal capital structure) が どO
よ うに 合 理 的 に 決定 さ れ てい く か を み る こ と は む ず か し い とい う の で あ る。 わ れ わ れ も ま た , こ れ ら の研 究 で展 開 さ れ た 理 論 の実 践 へ の 適 用 に 対 し , 明 確 な 方 法 を 提 起 す べ き で あ る と 考 え ら れ る 。 ・7) な お , ブ リ ガ ムは ,CAPM 理 論 も と り あ げ 説 明 し て い る の で あ る が , 経 営 財 務 の 枠 組 み の 中 で は , 羅 列 的 に と りあ げ て い るに す ぎ ず , そ の理 論 に対