北陸 大学 紀 要 第
23
号 (1999
)pp.339〜360
ユ中
国
人 上 級 日本 語 学 習 者
の
日本 語 学 習
に
関 す
る
視
点
臼
杵
美 由
紀
*Chinese
Advanced
Learners
’ attitudeon
Japanese
Language
Learning
Miyuki
Usuki
* ノ〜θ‘θゴved October25
,1999
は じ め に「中国の 学生 に は
,
ロー
ル・
プ レイのよう
な教 室 活 動はあ ま り向
か ない の では ない か」一
こ れ は, 筆 者が北 陸 大 学に赴 任して まもな く留
学生別 科の日本 語 教 員 達の 問で話 題の一
つ に な っ たこ とで ある。
同 じ日本語
教 育 とは言 え,筆者
の 関わ っ て きた 海外
英 語 圏にお ける学部
日本 語 教育
と,
日本に お ける大 学・
大
学 院 進 学の た めの 日本 語 教 育 と は,
確か に授
業の 目標・
内容
を 異にする。 また, 対 象者
が 漢 字 圏 学 習 者で あるか, 英 語 圏 学 習 者で あるかに よっ て , 抱 える 問 題点
も違
っ て く る。 し か し,
学 習者
の文化的背
景は,学
習者
の言 語学
習に対 する意 識の形成 (こ こ で は,
ビリー
フと呼ぶ )に まで も異 なる影 響 を与 えて い るのだろ うか。本稿
は,
まず.
Little
(
1999
)
の提
唱 する学
習者
自律
の普
遍性(
learner
autonQmy universality)
の概 念と, そ れに反 するアジア系 学 習 者に対 する典 型 的な見 方につ い て論 ずる。 次に ,留
学 生 別科
の中国
人学習者
7
名
を対象
に行
っ た グルー
プ・
インタ ビュー
調 査 を もとに, 日本語学習
に 関 する学 習者
の視点
を探
る。
文 化や コ ンテ クス トの 違い に関 わらず,
すべ て の状 況に適 応 する 学 習 者 自律の定 義 付 けが最 終 目標である。 本 稿は, その た めの 予 備 調 査と して一
つ の手が か り を得
ることに より,今後
の調 査 とし て発展
さ せ るための もの である。1
.
学
習
者 自
律 と文化 的
影
響
Jones
(
1995
)
は,学 習者 自律
を あ らゆる文化
に関
わ らず
,価 値
ある 目標
と定める こと は危
険
である と主 張 する。Ellis(
1996
)
も,伝 統
的授業
に慣
ら さ れて来
た学
習者
に, コ ミュ ニ カテ ィブ活
動や学 習 過 程に価 値 を 置い た授業
は,
彼 らの授 業に対 する期 待 と実 際の教 室 活 動 との 聞 に 差が あ り過 ぎる た め,う
ま く行か な い こ と が多
い という
こ とを指摘
し てい る。一
方 ,
Littlewood
(
1999
)
は,
「自律
は西洋
的 な考
え方
であ り,東
ア ジ ア系学
習者
に は適 してい ない」
とい う 批 判に対 応で きる よう, どの文 化 に も 当ては まる 自律 理 論 が 必 要である と強 調 する。 * 国際交流センター
lnternational
Excha
e Center
339
2
臼 杵 美 由紀COtterall
(
1998
)
はこれ に対
し,学
習 者自律向
上の焦点
は, 教師
と学
習者
間の役割
関係
であ り
, 学 習者
自律 を促 す前
提 と して,
学 習者
や教師
が 言語学
習に対
して,
どの よう
なビリー
フ を持
っ てい る か,
そ し て,
その ビ リー
フは ど こ か ら来るのか を 考 慮 しな け ればならない としてい る。ま た
,
Hurd
(
1998
)
に よ れば,学
習者 自律
が,
言語学
習 プロ グ ラム・
デザ イン の 問題
に置
き 換 え ら れて い る点に問 題 が ある の で あ り,
そ れ 以 前に民 族 的 な 違いや その他の違い がどの よう に言 語 学 習 者に影響
し てい る か を見 極め る必 要がある として い る。筆者
は,
上記
のHurd
の指摘
の よう
に,言語学
習プロ グ ラム・
デ ザ イ ン を 固定化
し て考
える こ と に問 題 が あるの で はない かと考 える。 学 習 者 自律
が,計
画 か ら評 価 まで を学 習 者 自 ら が す べ て実行
で きる よう
にな る という
学 習 形態
によっ て の み成 し遂 げら れ る という前
提に疑 問を抱 い て い る。2
.
アジ
ア系
学
習者
に対 す る典
型
的 見 方
へ の疑
問
Hayashi
(1998
)は, 教 師に対 する権 威や教 師 との 関わ りに対 する学 習 者の意 識は, 文 化 的背景
に よっ て培
われ て き た もの であり,文化
に よっ て違
い があ
る とし て い る。Marie
−
Christine
Press
(1996
)の調 査で は, ア ジ ァ系 学 習 者は, 繰 り返 し, 暗 記, 間 違い 訂 正, 筆 記 テス トとい う教 育活
動 をより好
む 傾向
に あ る という結
果を得た と報告
し てい る。Purdie
,
Douglas
&Hattie
q996
>
は, ア ジ ア系 学 習 者へ の典 型 的 な 見 方につ い て次の よ
う
に 述べ て い る。「
アジア系
学 習者
は, 機 械 的 な 暗 記 学 習に頼 り, 扱わ れてい る教 材か ら何を学ぶ か とい っ た 深い 視 点や理 解に乏 しい 。 そして, 知 識とい うの は,
だ れ か 権 威の ある もの によっ て伝 え られ,
そ れを認 憶す
ることだ という見方
を持
つ 。従
っ て,
学生達
は, 教 師の 言う
こ とや教科書
に書か れて あること を疑いな く取 り入れ ようとし, 教 師の言 うこ と からは, た とえどの ようなこ とで あっ ても 正 しい答
え が導
き出
さ れ ると考
える。 こう
したこ とか ら,彼
らは,
理解 す
る より
, 知 識を た だ言われるま まに吸 収 しようとする受 け 身 的 学 習 者 と考 え られてい る。」Pierson (
1996
)
も ま た,中
国人学
習者
の典
型 的見方
を示 して い る。「中 国人
学
習者
は,受
け身
的で,
教 師の権
威に対 し てあか ら さ ま に挑 戦 する態
度を示 すこと はない 。 また, 暗 記 を好み, 教 師 か ら受
けた知 識に対 して は,
疑い な く受 け 入 れ よ うとする。自
分の考 えで何か し よう
とする こ と が少な く,
教 師の権 威に服 従 する こ と を望んでい る。」Watkins
(1991
)
によ る と, 上記の ようなアジア系 学 習 者へ の典 型 的な見 方を裏 付 ける調 査報告
は数多
く出
さ れて い る とする。「アジア
系学
習者
は 欧米系学
習 者に比べ る と,暗
記に頼るという結
果は, 過去
の様
々 な調 査 で報
告 さ れて い る。 ア ジ ア系 学 習 者 を 教 えてい る教師
達は,学
生 達 が 教 師の 権 威に頼 り,
自 ら 考 え自
分の意見
を持つ という
こ とに欠 ける と批 評 して い る。」中国人上 級日本語 学 習者の 日本語学習に関 する視 点 3
上 記の見 解か らする と
,
ア ジア系 学 習 者は,暗
記 や 繰 り返 し的 練 習 とい っ た従 来の伝統
的授
・
業ス タ イル を好
み, 教 師 主導的授業
を求
め てい る,従
っ て,
学 習者
の文化的
な 違い や,
過 去の経験
か ら授業
に何
を期待
して い るか とい っ た前提
的 状 況 を 十 分考慮
する必 要があ り ,現存す
る 自律
の概念
には適
応しに くい とい う考
え方が成立する。Jones
(
1995
)
は,
自律
の概
念 は,
ア メ リカや西洋
社 会にお ける個 人 主 義 的 価 値 観で あ り, 価 値 観の異 なる社 会や文 化 を 背 景に持つ ア ジ ア系 学 習 者にそ う した教 育 的 目 標を取 り入れ るの は慎重 で なければな ら ない と し てい る。一
方,
Littlewood
(
1996
)
は,
ア ジ ア系学
習者
は, 自
律的学習
に向
い てい ない わけでは な く,
むし ろ他者
との協力
に よっ て学 習者
自律
を向
上 する適 性 が あるの で はない か と主 張 する。し か し
,
最近
の 調 査で は, これ に反す
る結
果 も出
さ れ て い る。Biggs
(
1993
)
は, 中国
人及
び 日本 人 学 習 者は, 記 憶ス ト ラ テ ジー
を特に好ん でい る とい うの で はな く, 記 憶 するこ と を通 し て 理解 する と考 える傾向
にある とし てい る。 同様
に,
Purdie
,
DougIas
&Ha
しde
(
1996
)
は, 日本 人 学 習 者とオー
ス トラ リ ア人 学 習 者の比 較 研 究か ら, 両 学 習 者における学 習 に関 する概念
に差は ほ とん ど な くt 日本 人 学習者
は,学
習 を記
憶 する よ り も むしろ, 理解 する とい う概 念に 結び付 けてい る傾向
が強い こ と を示 した。Holden
&Usuki (
本 号 〉に おい て も, 日本
人学
習者
の イ ン タ ビュー
調 査か ら得
ら れ たこと とし て,
どの よう な方 法 が 外国語
学 習 を 向 上 させ る か と い う問い に対し, 対象
と なっ た学 習 者の ビ リー
フと しては,
メ タ認 知ス ト ラ テジー
が多
く提示
さ れたにもかかわ らず,
実 際 使っ てい るス トラ テ ジー
と して挙 げ ら れたのは記 憶や認 知ス トラ テジー
が多
い傾向
が示さ れ た。 つ まり,
言 語ス キル を向
上 さ せ る手段
とし て メ タ認 知ス ト ラ テ ジー
を 有 効 と考 えてい る学 習 者ビ リー
フに反 して, 現 実には, 記 憶や認 知ス ト ラ テ ジー
の 使 用 を より必 要 とする 状況に置か れて い る とも考 えら れる 。Watkins
&lsmai1 (
1994
)
に よれ ば, ア ジァ系 学 習者
の固定観念
を裏付
ける調 査は,文化的
違い を調
べ る調
査その もの へ の信
頼 性に も 疑い が 持たれる もの で , 確か に成 功 した学 習 者に は共 通 点はある もの の , アジア 系 学 習 者は, 暗 記主義 的 学 習 者 だ とす
るのは疑 問で あ る と し てい る。 上記
の異なる見解
は,
学 習者
の文
化 的 影 響につ い て議 論 が 分かれる とこ ろ であ り, 量 的 調 査に加 えて, 今 後は, インタ ビュー
やダ イ ア リー
な どを使
用 した質
的 調査の結
果が 問 わ れ るとこ ろである。3
.
研
究
の目 的 と方 法
(3
− 1
) 目 白勺・
受 験を目標 と す る カ リ キュ ラム の もと,
教 師 主導
的 授業
を中心 としたコー
スに おける学 習者
自
律
につ い て検 討 する。
・
ア ジア系 学 習 者は,
教 室 活 動や,
学 習 者・
教 師の役割
に対 し て どの ような視点
を持
っ てい るのかを 明 らかにする。 (
3
−
2
)対象者
1999
年
3
月
に初めて来日 し, 北 陸 大 学 留 学 生 別 科3
ク ラス の う ち, 日本 語レベ ル の一
番 高い クラス で 日本 語を勉 強して い る中 国 人 学生7
名 (男 :女=
2
:5 )
。来 日
前
は,
いず
れ も自
国の大学,専
門学校等
で 日本語
を学
習して きた。 来日後
, プ レー
ス メ341
一
4 臼 杵 美 由紀 ン ス
・
テス ト に よっ て,
ク ラス分
けが行
わ れた。コ
ー
スは,大学
・
大 学 院へ の進学
を 目的
と し,
その た めに,
日本語能
力 試 験1
級 合 格 を 目指 すこ とも 目 標の一
つ と なっ てい る。(
3
−
3
) 方 法 (1
) 留 学 生 別 科 教員
の協
力 を得,対象
クラス の学 生にイン タ ビュー
調査協
力を呼
び かけた 。(
2
) 自
主的
に調 査協 力
を申
し 出た学
生7
名
を2
グルー
プに分け,留学
生 別 科教員
にインタ ビ ュー
日時 を 設 定 して も らっ た。 (3
)各
グルー
プご と に,
調査
目的を説 明 し た後,
質 問に対 し,
全 員が回答す
るこ とを原 則 として , イン タビュ
ー
を実 施
し た。 イン タ ビュー
は,筆者
が行
い , 録音
して文 字 化 し た。使
用 言語
は, 日本語
であ
る。(
調 査は授 業 を担 当 してい ない 筆 者 が 行っ た。 これは, 学 習 者の心 理 的 防 御の 影 響 を 少な
くす
る という利点
を考慮
した ものであ
る)
(4
)
会 話のすべ て を文 字 化 した後, 各 質 問に対 する学 習 者7
名の発 言の要 点 を意
味 を 中 心に捉 え
,
意 味コー
ド をつ けてい っ た。(
5
)
意 味コー
ドに よ る分 析 を,各
項 目ご と に整 理 してまと め た。(
6
)
さ ら に, 意味
コー
ド 分析
ご との学
習者
の 回答
例 と意味
コー
ド を 示 し た解答数
を表
に し た。 (7
) 調査
目 的の考察
として , 問 題提
示と な る学
習者
の デ ィス コー
ス を取
り上げた。4
.結
果 分 析結
果 をA
)
学 習 者に関わる要 素とB )
教 師・
授 業に関わる要 素の2
つ に分 ける。A
)につ い て は,
学 習者
ニー
ズ.
学 習ス ト ラ テジー
に関す
る ビ リー
フなど,学
習者
は何
が問 題か(
必要
か)
, そ して, どう した ら解 決で きるか (向 上で きるか ) とい うス トラ テ ジー
に関 するビリー
フ を調べ るもの であ る。 ま た,B )
につ い て は, どの よう
なこと が学
習者 自律
を向
上 させ (励
ま し)
, どの よう
な ことが学
習 者自律
を妨 げ
る か を検
討 する もの で ある。(
図)(
数字
は回答
か ら分 類 さ れ た 頻 度 数 〉中国人上級日本語学習 者の 日本語学習に関する視 点
[
図1
:A
)学習者
に関
わる要素
インタビュー
調 査 分析結
果か ら得
ら れ た学 習 者・
教 師・
授 業に関わ る要 素 ]5
学 習 者ニー
ズ 言語能力 (
‘磁
∴
学 習 者 (4
)一
[
籌
用 そ の 他(
3
磁
ス→
解決
方法 (
ス トラ テ ジー
)
メ タ認 知 (15
)認 知 (
5
)
記憶
(
1
)
社会 (
2
)
情 緒 (4
) 向 上の ための ス トラ テ ジー
峇 に る 授 業 内(2 )一 集
中授
業 内外
の連 携(
11
)
他
者か らの助 言記
憶 復 習練
習授業外 (5 )一
実 際場
面での使
用・
日本
人 との会話 (
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン)
愚 こ る 害自
己賞賛
自 己 内 省 自 己モニ ター
自 己 制 御肯定的
自 己ビ リー
フ 情 緒 的影
響(
楽 し み・
興 味 ) に わ る 専 言 語 レベ ル (日本 語 レベ ル)E
リソー
ス機会
の 専 あごが忙
諜
343
一
6
臼 杵 美 由紀B
)
教師 ・授業
に関 わる要素
中 国人 上級
H
本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関 する視 点7
霾難 韈羅
靉鑢 黶 靆
i
(
4
−
1
)学
習者
ニー
ズ と学
習ス トラ テジー
貧
:
問 ’自
分 にとっ で,今,
どの ような ことが 泌・
要
か学 習 者ニ
ー
ズと して提 示さ れ たの は,
言 語 能 力,
学 習 者、
その他の3
要 素に 関して で ある。言語能力
につ い て は,
ボキャブ ラ リー
,聴解力
,会話力
な ど特定
の領
域にお ける自分
の不
足部
分 を 自 覚 し, 能 力 向 上の必 要 性 を 指 摘 した者 が5
名い た。 下 記に取 り上 げる デ ィ ス コー
ス では, 特に, 学 習 者の 自 己モ ニ ター
の意
識を捉 える こ とが で きる。例
: 学 生C
:私
の 場 合は,
一
番今,
一
番
重 要 なこ とは,
日本 語 を日本 語で考
える能 力の 上 達で す。筆 者
:今
の時 点で はどう
です か。 中 国 語で考
えてる ? 学 生C
:そ うい う場
合 も多
い です が, 日本語
で 日本 語 を簡 単 な日本 語 な らす ぐ, 日本語
で 話せます。 もし, 複 雑な場 合になっ た らですね。 複 雑な場 合になっ た ら
,
まず,
中 国語
を考
えて, そ れ か ら日本 語に訳 す とい う形。 筆者 :授 業の 中で
意
識 してい ますか。 学生C
:う
ん, はい 。 そう
い う意 識をずっ と持
っ てい る。例
: 学 生E
:私の場 合は,
聴 解 が とて も苦 手だ と思い ます。 私にとっ て一
番 必 要 な 科 目は,
聴 解だ と思 い ます。 筆者 :授 業の 中で は, 何 か 意 識 してい ま す か。 聴 解 力 を強 く しようとする た め に。 学 生
E
:授 業の中で , あの , 授 業の中で, 先 生は, 皆な日本 語で しゃべ っ て い ま すか ら, あの聞 き取れ ない ところ もあ りますの で, とて も
苦
しい と思い ま す。学 習 者 自
身
に関わ る こ と と して は, 自
己の努
力,対 象
言語
を身
につ ける機
会の 必要 性 を最
も 必 要とする こ と と して挙 げた者は4
名で, 学 習 者 と して の責 任を自覚
してい るこ と を示し てい る。例
:学
生B
:私
の場 合は,
自 分の個 入の努
力, もっ ともっ と努 力 す ればい い です ね。その 他は
,
リソー
ス や時
聞の必要性 ,
自分の ペー
ス で の学
習の必 要 性 を挙 げ た学 習 者 が3
名
345
一
8
臼 杵 美 由紀 い た。学 習 者ニ
ー
ズをどのよう
に解決す
る か, その方法
とし て下記
に示す
よう
な様
々な学
習ス トラ テ ジー (
オッ クス フ ォー
ド,1994
)
が 示 された。[
図∬ :問 題に対
す る解決方法 (
学習
ス トラ テ ジー
)
]
メ タ認知
ス トラ テジー
(
15
)
自
分の学
習 を正 し く位置
づ ける一
[
鵯
乙
雛
抽
、。 、 。集 中 す。、
、,癰
聴
酢
謙飜
∴
,
自分の学 習を きちん と評 価 するτ
.
器
雛事
軽
玄
)
,、, 認 知ス ト ラ テ ジー
:(
5
)
L
情報 内容
を受
け 取っ た り,
送っ たりす
る一
情報内容
を受
け取
っ たり,送
っ たり
するた めに さ まざま な
資
料を使う
(4
) 練 習をする一
自然の状 況の中で 練 習 する (1
) 記 憶ス ト ラテ ジー
: (1
)
L
繰 り返し復
習す
る一
体系
的に復
習 を する(
1
)
情
意ス トラ テ ジー
: (4
)
ヒ
自
分 を勇気
づ け る一
自分 を鼓舞
する こ と ば を言 う(
3
)自 分の感 情をき ちん と把
握
する一
体の調 子を診る (1
)
社
会的
ス ト ラ テ ジ「 :(
2
)
L
他
の人々 と協力す
る匸
糊薯
灘 諜
鑒
轡
ω
図
ll
で わかるように, メ タ認 知ス トラ テ ジー
の指 摘 が 非 常に多 く , 記 憶ス トラ テ ジー
の提 示 は少
な か っ た。(4
−
2
)
向 上のた めのス トラテジ ー
質
問rEI 本
語のカをどの よう
に向
土 さ せ る か学 習に関わ る要
素
,学
習者
に関 わる要素
,教師
に関 わる要素
, その他
の要素
に分 け
ることが でき た。中 国 人 上 級 日本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関する視 点
9
(
4
−
2
−
1
)
学 習に関わ る要 素授
業
内, 授業内外
の連携
,授 業外
の ス トラ テジー
に分け
ら れ た 。授 業 内は, メタ認 知ス ト ラ テ ジ
ー
; (重 点に集 中 ) ; (実 践の機 会 ), 授 業 外は, メ タ認 知 ス ト ラ テ ジー
(
実
践の機 会),
認 知ス ト ラ テジー (自然
の状況
の 中での練
習)
が挙 げら れ た。 中で も,授業
内 外の連携
に関
して は, メタ認 知ス ト ラ テ ジー
(
自己モ ニ ター
)
,記憶
ス ト ラ テ ジー
(
文章
の暗
唱,単
語の暗
記)
;(
復 習)
, 認 知ス トラ テジー
(
練 習)
, 社 会 的ス トラ テ ジー
(
他者
か らの 助言〉
な ど,
授業内外
を結
び付
け た学習活動
を向
上のた めの ス ト ラテ ジー
として多
く挙 げてい る。しかし
,
下記
の例
の よう
に,授業外
で実
際の コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン と し て使
っ て み る こと を 強 調 して い る と同 時に, 暗 記 する ことを非 常に重 視 して い る傾 向 も見 逃せない 。 例 :学
生C
一
年
生の 時,
つ まり発 音の練 習の 時ですが, その時い つ も鏡が 日 の前に, そ うやっ て そう
い う練
習 をよ くやり
まし た(
が)
註,発音
の勉強
が終
わ っ てか らす
ぐ文
型,簡単
な文
型 「私
は,〜
です」
という
文 型に なり
ました(
が)
, その時
か らた だ文
章の暗
唱 で した。 暗 唱。一
年 生・
二 年 生 勉 強 した精 読の授 業で勉 強 した文 章は全 部 暗 唱 して し まい ました。 そ れと,
そし て毎
週,大学
には日本
語コー
ナー
があり
ました 。 日本語
コー
ナー
で,
日本 人の留 学 生 と話 すチ ャ ン ス があ り ま す (した) 。学
生A
と りあ え ず
,
も し,
文 法を勉 強し た ら,
翌 日あるい は2
〜
3
日後に もう
一
度, 復 習します。 これは, する必 要 が あ りま す。 もし, 単 語 を勉 強 した ら, で きる だ け新 しい
単
語
をい か して,
もし 日本人 がい た ら 日本
人 と話
し ます。 何か もし,
何か間 違い が あ りますか, もしこ
う
いう
考 えがあれば, こ れ は, 何か会 話に上達 するにな ら ない と思います。 何か 間違 っ て も構い ませ ん。 これは, 必 要で す。 で きる だけ
,
勉 強 した単 語 とか
文法
と か 日本
人の前
で,
ど ん ど ん しゃ べ る ほう
がい いで す。 学 生D
一
年
生,
二年
生,
まだ ま だ日本
語 は, ほ とん ど わか ら ない 。 長い文
と か会話
で きないんですよ。 通 じない んですよ。 で もまず, 暗 記, 文 章の暗 記, 暗 記 した もの を使 っ て,
使
っ て み て(
る こと が)役
に立つ , ぼく
に とっ て は役
に立つ と思い ます
よ。 (4
−
2
−
2
) 学 習 者に関わ る要 素学 習 者に関し て は
,自
己 主導
的 要素
と し て自
己 賞賛,
自 己 内 省, 自
己モニ ター
,
自 己 制御 ,
肯 定 的 自己ビ リー
フ,
情 緒 的 自 己 評 価 とい っ た項
目が 見 出され,学
習 者の 自己に対 する責 任 意 識が強 く表
わされ る結 果と なっ た。 (表 )347
一
10 臼 杵 美 由紀 [表 :
学
習 者に関
わる自
己主 導 的 要素
1
自 己賞賛
「
ある程 度 読める,聴
く能力
持っ てい る」
「授業
中,
一
言 わか っ た」
「
だ ん だ ん向 上 」 「日本語
レベ ル 上手」
自
己 内省
「1
,2
年
の時,
ま だ まだ,
日本語
は,
ほ と ん どわか ら ない,
ま だ ま だ好
きで は な か っ た」「
長い 文 と か会 話で きない 。 通じない 」 自 己モニ ター
「
発音練
習」
「
レベ ル向上」自
己 制 御「
復
習, これ はす
る必 要があ り
ま す」
厂
何
か間違
っ て も構
いま せ ん」「
で きる だけ, ど ん どん しゃ べ る ほ うがい い」「
聞 くの は一
時
の恥
,聞
かぬは一
生の 恥 , 諺ど おり
にやっ てきた」
「一
番
重 要なのは, 自
分の努力」
「
むちゃ くちゃ に練 習 して」肯定
的 自己 ビリー
フ「
夢 中になっ た ら , 勉 強 が 大 丈 夫 成 功で きる, 上 手に話せ る」 情 緒 的 影 響 「日本
語が好
き」
「ど ん なに うれ し かっ た か」 (4
−
2
−
3
)
教 師に関わ る要 素向
上の ため に教 師の与え
る影響
を指 摘 し たの は,
中国人日本語
教 師の 日本語
レベ ル(1
名)
, 教 師 から与
え られる, ま たは,
助 言さ れ る リソー
ス(
2
名)
や学
習の機
会(
1
名)
で, 授業
に 関 する学 習ス ト ラテ ジー
や 学 習 者の 自己 主 導 的 意 識 と比 較 する と, 教 師につ い て の指 摘は非 常 に少 なか っ た。 (4
−
2
−
4
)
その他上級 生の 日本 語レベ ルへ の憧 れ (
1
名 ) , 日本 人 や 日本 語 その もの に対 する魅 力 (2
名 )を挙 げる者
もい た。 (4 −
3
)
初 級レ ベ ル の人へ の 向 上の た めの ア ドバ イス 質 周 」初 級レベ ル の入に ア ドバ イスする とした ら, どの よ うなこと か初 級レベ ル の人へ のア ドバ イス として挙 げ ら れ た 回
答
は,学
習者
が持
つ 日本語学
習へ の ビ リー
フ を よく反映
して い る。自
己に関し ては, 自
分自身
へ の意欲
づけ, 自
己 制御 ,
ゴー
ル設定,学
習ス トラ テ ジー
とし て は,
前 述 し た向 上のた めの ス トラ テ ジー
と同様,
メ タ認 知,記
憶,
認 知,
社 会 的ス トラ テ ジー
,
中 国人 上級日本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関 する視点
11
及 び,授 業内外連
携が提 示さ れ た。 やは りこ こで も向
上の た め には, 学 習 者 自身
の 学 習に対
す る意 識 が最
も重要
である とい う点
が強 く表
わ さ れ てい る。 反 面,
学 習者
の自
己意 識以外
の要素
として, 環 境や教 師の影 響に関 する ビ リー
フ も指 摘 され た。
例筆
者 どうやっ て 日本語
の力
を今
の レベ ル にすること がで きた と思い ます か。学
生G
そ れ は
,
や っ ぱり先
生 が教 え たん で しょ。 それ に私 たちの努力
。 い くら努力
か は,
日本 語の レベ ル, 教 えた レベ ル。 筆
者
日本 語を教
え
た先 生の 日本語
の レベ ルと自分の努力
, どち らが強い ですか ね。 学 生G
やっ ぱり先 生で しょ。 学 生E
私は, 自 分 が 重 要だ と思いま す。 自分の努 力 が 重 要だ と思い ま す。 も ちろん
,
先 生の教 えるの も重 要 だ と思い ま すけど
,
一
番
重要なのは,
自分の努
力 だと 思い ます。 はい 。 学 生F
中国時 代は, 勉 強 し た 日本語
はやっ ぱ りテス トだ けの た め の 日本
語勉
強で すけ ど,
私の場 合は
,
やっ ぱ り 日本
語が大好
きですね。 学 生F
自分 自 身の努 力 と
,
先 生のい い 教 える方法
両方
ですね。 学 生E
:も ちろ ん,
自分の努 力は一
番 重 要 だ と思い ます け ど,
日本語
が 上手
になるの は,
た くさ んの単 語 を (先生 が
)
教 えなければな ら ない 。 まずは,
た くさ んの単 語を覚 えて,
そ れか ら日本 語の 文 法 も ちゃ ん と教 えて, その単
語
と文
法 と生 か して (た ら)
日本 語の レベ ル は
,
だん だん上手
に な れ る と 思い ます。 学 生G
先 生の 授 業に情 熱 して
,
自分 が もっ と,
自分 が 買 物に行
っ た ら,行
っ た り,
どこ に行
っ て も日本人ですか ら
,
間 違っ て も構わ な くし た らい い と思い ます。 授 業は も ち ろ んです が
,
授 業は よく聞い て,
授 業で勉 強 したこ とを 買 物 と か日本
人に会っ た時に これを使
う
よう
に なっ た ら早 くよ くな る と思う
。i
韈
轗 爨
i
攤鑠鏤
麟 鑼
霾
(4
− 4 )
良い授
業賃
二 聞 ’良い授
業 とたtt
どう
いう授
業かo良い 授 業 として挙 げられた要 素 として, 科 目に関 するこ と
,
内 容, 教 師, 学 習 者の4
項 目に 分 ける ことが で きた。科目 に関し て は
,
読解,
会 話,
聴解 ,文法 ,語彙,作文
など,
全て に わたっ てお り,
学習者
349
一
12
臼 杵 美 由 紀 が 自 分に とっ て必 要 な授
業とい うとらえ方
をしてい る。内容
につ い て挙 げ
た学
習者
は, 日本
につ い て 日常生活につ い て い うこ とで一
致 し た要 望が あ る。例
: 学 生E
:日本のい ろい ろなこ と を理解
するため に や っ てい る,
そう
いう授業
がい い授業
だ と思う
。教 師に関 する要 素として は
,
教 材 提 供や詳 しい説
明 とい っ た 教師
か ら情報
を よ り効率
的に与
えら れ る こ と,
ま た,
教 師 側が学 習 者に対 する十 分 な把 握 をする必 要 が ある こ と とい っ た教 師 主導
的 要 求が大 きか っ た。 例 :学
生B
:私は, どう
いう授業
がい い か と考 える と, やっ ぱ り授 業を受
ける学生達の学生の レベル に合 う授 業 が 何 よ りだ と思い ます。 授 業の 内 容の 難 し さとか 易 し さとか 関 係 な く,
早 く
学
生の今
の持
ってい るレベ ル の(
を)高
め ら れ る よう
な授
業 だっ た ら一
番
い い です。 学 生D
:先
生の, や っ ぱ りい い 先 生 なら自分(
が)学
んだ 知 識 をはっ き り皆
さ ん に,学
生さんに教 えてい るの は
一
番
い い 先生 だ と思い ます。 例 : 学生F
:別 科生 に とっ て は,
日本 語 能 力 試 験 を受
ける た めですか ら, 能 力 試 験のた めの授 業が一
番い い。 学 生G
:授 業 中は, もっ と詳 しい説 明 を してい ただ け れば一
番
い い と思い ます けど。 さっ と教えて 理
解
で きない こと もや っ ぱ り残っ て い ますね。筆 者
:使
っ てい る教科書
を詳
し く説 明す
る授
業がい い授
業? 学 生G
:そ うです ね。学
生E
:もっ と詳
しく説
明 する ほうがい い。 やはり,難
しい文法
と難
しい単語
の説明
とか。学
生G
:私
は,
もう
一
つ欲
しい もの は,
F
さ ん が言っ たよう
に,
た とえ ばt一
級
の テス トの単
語の ま とめ とか を も らい たい 。 今 か ら き ちん と
記
憶し ておい て (た ら ),一
番い い と 思い ますね。すべ て教 師に 関わ る
事
項の み に集 中し た発 言だっ たの で,筆者
は, 学 習 者 側の責 任の 問いか け をお こなっ た。 そ れを受
けて,初
め て学
習者側
の要素
が出
た。例
筆 者
中 国 人上級 日本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関 する視 点13
先
生 の こ とが出ま し たけど, じゃ ,先
生 がすべ てよい 授 業 , 悪い授
業 を決め ますか。 学生D
そ うと は限らない 。 協 力 が 必 要 なんです。 つ ま り, い い 先 生 なら, 学 生 さんを 興 奮
さ せ る かもし れ ま せ ん。
積極 的
に答
えた り, 教 えた りする(
のが)
可 能 性がある。 学 生A
学 生の態 度,
授
業 中の態 度 と か, 先 生に質 問 がはげ しい ですか。これ は雰 囲
気
も必 要です。 もし,先
生 が質 問 出し て,
だ れ も答
えて くれ なけれ ば,
これはちょっ と あ ま りよくない です。 学 生B
:授業
とい うの は,何
か, あの,一
つ の授 業がい い授
業に な る か どう
か は,
もち ろん 先 生の役 割は一
番 重 要だ と思い ます。 非 常に重 要だ と思い ま す。 も ちろん学 生の協力
も必要
なん です。 (4 −
5
) 良 く ない 授 業 二ifRn7
∴良ぐ ない授業
とば どういう授
業か。良
くない授 業
につ い て は,
圧倒 的に教師
側 の責
任が強 調 さ れ た。 下記に ま と め たのが その 回 答である。・
教 師の 教 育 能 カー
学習者
に良 く ない 影 響を与 える,
または,何
の 影響
も与 えない・
教 え方
の 問題一
教 科書
を教える域 を 出 ず,教
師の知識・
経 験・
意見
が含
ま れ ない・
教 師の 言 語 能 カー
中 国 人 教 師の 日本 語 レベ ル に問 題 が ある場 合・
学 生の レベ ル の把 握の 欠 如・
無 責 任一
授 業の準 備や計 画 不 足特に
,
学生C
は, 教 師の影
響が学生 の学 習態
度に も反 映 する こ と を指 摘 してい るこ と は,
興 味 深い 。 例 :学
生C
良
く ない 授 業っ て,
うん,
あんま り役
に立 た ない授業
。 つ ま り,特
に,先
生が そう
い う先生 が あっ た んで すが,
先生 が本を読みな が ら教 える とい う,
あん ま り 自 分の考
え方,
自分の意見
が 入 っ てい ない 。筆 者
:先
生の意見
が 入っ てい ない ? 学生C
そ
う
。 そして そ ういう
先生 が, そう
いう
先 生の授 業を受
けた学生達 も 自 分の意
見がない と
言
われて い る。筆
者
:じゃ,
か な り先 生の影響
が学
生にも ある ? 351一
14
臼 杵 美由紀 学生C
:大き
い です。 学 生A
私はC
さんの意 見に賛 成です。 も し, 先 生 が 本 通 りに読みな が ら皆 さんに教 える よりも, む しろ
自
分で独
学 する ほう
がい い じゃない ですか。筆
者
:授 業を受
ける より も 自分で独 学のほう
がいい ? 学 生A
そ う。 先 生は, 何か教 科 書の 中に書い た内 容のほかは, 越 える内 容が も しあれ ばもっ
とい い と思い ま
す
。一
方 , もう
一
つ の グルー
プでは , 教師
の責任
が強 く主 張 され た。 例 :学
生F
:私
の場合
,先
生は, 授業前
に き ちんと準備
しておい て,今
度の授業
中に何 を教 え ま すか, どの練 習を や りますか, その時 間に とっ て十 分で きますか
,
色々 の こ と を きちんと
準
備 して おい て , 時 間を無 駄に使
わない ように して くだ さい 。 授業
中, 思い 付い て ,思い 出した。 それ は
一
番
き らい だ 。上
記
した 回答に反 し て,
学 生E
は,
学 習 者 側の授 業に臨 む 態度
が一
番 重要
で あ り, わ る授 業は どの よう
な授 業で あ ろう
と,自
分に有益
だという
認 識を示し た。 例 : 学生E
日本
に関 係がある授業
は, ど ん な授
業 も 自分 にい い(
だ)
と 思い ます。 日本に関(
4
−
6
)中
国の授
業・
教
師 対 日本の授
業・
教 師 質 問 」週 去の授 業ぱ, どの よう な授 業だ っ た か中 国 人日本 語 教 師に対して と, 日本 人
EI
本 語 教 師に対 して とでは,
学 習 者の意
識の持 ち 方に 違い が あるこ とが示
さ れた。中
国人 日本語教師
は,学習者
にとっ ては, 目指
すべ きモデルとし て映 り, 日本 人 教 師は, 対 象 文 化の一
部と して映っ てい るこ とがわ か る。 例 :学
生B
日本
人の先
生 と中 国 人の先
生 と,
教 え方
とか,
なんか違 うん ですよね。 あの, 日本 人の表
情と か考え
方と か, あのやっ ぱ り中国人で す ね。 言 語 だ けで ね。 教 えて く れ る能 力,
も ちろ ん あ り ます
け ど,
で も,
日本
人の考
え方
とか,
動作
とか,
表情
とか,
ちょ っ と違 うん ですよね。 はい,
文 法 的 な 知 識です ね。 ちゃ ん と教え
て くれ る んです けど。 あの,
で もぐ
れ は, し か た が ないん じゃ ない んですか。関
連し て学 習 者 ビ リー
フ として話 題に挙 がっ たのは, 中 国 人 教 師 と 日本 人 教 師の与 える授 業中 国 人上級 日本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関 する視 点
15
効
果に関 して で ある。 中 国にい て も授 業 外で の 日本 入 との交 流 を 持つ ことがで きた学 習者
もい る が(
例 :学生E
の発 言),
ほ と ん どの場合 ,授
業は文法
中 心の内 容, 実 際 使わ れて い る 日本 語と は離
れてい る もの,暗記
を強調
する とい っ た伝統 的形式
であり,学
習者
は,
これ に反 し て コ ミュ ニ カ テ ィブ な 内 容 を 好んで いることが 強 く表わ され た。
例 : 学生B
国に い る時で す ね。 授 業で習っ た日本 語 を日常 生 活に使
えるチャ ン スが な かっ た んです
。 だか ら,
はい,
な ん か文法
的な知 識です ね。 結 構, 身に付 き ま したけど。 で も,
話せる ぐ らい のね。 そ れ を活
用です ね。 で き なか っ たみ たい です。 はい 。 例 :学
生A
中 国 人, 大 学にい た時は, やは り中 国 人ですか ら, 授 業 中は, 授 業 中は, 中 国語
で皆 さん に教 えて あ げ ま した。
あの,
そ して,
内容
は 主に文法
につ い ての授 業
をやり
まし た。 試 験のた めですね。 試 験の た めの文 法を教 えて くれ ま し た。 日常 会 話と か 日常 用 の単 語とか文
法は教 えて くれ な かっ たです。 教 え た単語,文法
は,
生活
では あん ま り 使わ ない 。 例 :学
生B
:今
。 思 い 出し た ら, い い点 という
とですね。 き ち ん と ね, ちゃ ん と ね, 文 法で すね, 習い ま した。 筆 者 :文 法を習っ た。 学生B
はい
,
良い 点とい うよ り, ちょっ と苦 手で し た ね。 会 話のチ ャ ン スが なかなかなか っ たんです ね。 例 : 学 生E
高校
の授業
は,
テ キス トだ けで やっ てい ま すが,大学
に入 っ て,聴解,精読,判読
, ビ デ オ を見る授 業 もあ ります。 それ か ら, 日本の留 学生 と一
緒に交 流 とい う授 業 も あ り ます。 はい 。学
生F
中国時代
は, だい たい , テス トのため の授業
です
ね。 あの会話
の練
習 とか実際
の練
習とか 全 然 な かた んです。 や っ ぱ り長い 日本 語 を勉 強 する時 間 が 長い で す けど, な か な
か 上
手
に な れ な か っ た ん で,
まあ,
ク ラス・
メー
トは,
2
〜
3
年 間 専 門に 日本 語を勉強 して きて, ま あとて も上
手
だ と思い ます。 なぜな らば,私
は繰
り返 して考え
て ,授
業
の方法
と関係
あり
ますね。 日常
の会話
とか は,実
際の場 面と かを作
っ て,会話
の練習とか
,
その チャ ン ス が多
い です けど,
私は,
自分で自覚
して勉 強 した んで,
こ んなチ ャ ン スが少 ない だけど
,
やっ ぱ り学 習の 環 境は, やっ ぱ り一
番 重 要だ と思い ま す ね。353
一
16
臼 杵 美 由紀また, 日本 語 を習 うのな ら日本 人 教
師
で な け ればな ら ない , 日本
という環境
が必要
だ という
声
と, 初 級 レベ ル で は, 中 国 人 教 師のほう
が 日本 人 教 師より好 ま し く, 学 習 者レベ ル に よっ て 母 国語
で の授業
が必 須であるという声
も聞
か れた。例
: 学 生G
日本 人の 先 生 か ら教 え たの が
,真
の 日本語
だ と感
じ てい ます
。 日本
人で は ない先
生 から教
え
ても
らう
よう
な 日本 語の授 業は よく ない 。 学 生C
大 学
一
年 生の時, 教 えた 日本 語の先
生 達は み な 中国
人で した。 で も,
その一
年
生の時,
あま り日本 語が わ か ら な かっ たです。 その時,
中 国 人の先生 がい い と思い ま し た。 もし
,
一
年 生の時,
日本
人の先
生 がい た ら(
だっ た ら)
,先
生 が何
が(
何
を)言
っ ているの か全 然わ か らない です。 だ か ら, そ ういう授 業 がた ぶ ん役に立たない。
し か し, 全 体 的に日本 人 教 師, 日本の環 境に対 する肯 定 的 な 見 方は共 通で, 様々 な犠 牲 を払 っ て強い
意
志で 日本 留 学 を決
意し た留学
生 達の 意 識が 反映さ れ てい る。その 中で も,
学
生D
の発 言は興味
深い 点を示唆
してい る。 そ れ は, 中 国 人 教 師の学 習 者に対 する意
識 や 期 待である。 つ ま り, 学 習 者 が 暗 記 を好んでい る より も む しろ,
教 師 が 「中 国 人 学 習 者は暗記力
に優 れてい る」
い う 見方
を持
ち,暗記
を 強 要 する傾向
にあるので は ない か という
点
である。 実 際, こ こで イン タ ビュー
し た7
名の学 習 者は , こ れまで見て きた ように, いず れ もコ ミュ ニ カテ ィブな 学 習 活 動や実 際 場 面で の日本語力
を 求め てい る。例
: 学 生D
先 生だけ しゃ べ っ てい た,
とい うことが 普 通 なんです。 先 生の 立 場か ら見れ ば,
中 国 の学
生 は,皆
なすごい暗
記 するのが,暗
記 する力が(
を)い っ ぱい 持っ てい る , 書 く のがみ んな 上 手, しゃ べ る の が 苦 手, とい うこ とが (を ) よ く耳に しましたので。
筆 者 先 生 が, そ うい うふ うに思っ てた わけ ね。 じゃ,
中 国では会 話の授業
は どんな感 じだっ た ん で
す
か。学
生D
本 を
見
な が ら ですね。 先生は,
こう
いう
文 型,
よく 日常 会 話で使わ れ る,
使わ れていますか ら, ちゃ ん と
覚
えて欲しい 。 筆 者 あ あ, 覚 える。 学 生D
うん,
うん。筆
者
そ れ を説明す
るわけ ? 学生D
そ
う
。中 国 人 上 級日本 語 学 習 者の 日本 語 学 習に関 する視 点 17
(
4
−
7
)
期 待 する教師
の役 割 貿 周 ’娚 待 する教 師の投 割と ぱ何 か期待す
る教師
の役割
につ い ての回答
は,学
習者
の 自律
的 意識
が も とになっ てい るこ とが 下記 の発 言 か ら も分 かる。
初 級 レベ ル段
階で は,
教師
が 基 本 を 指導
する とい う形を好 ま しい として い る見 方 が あ り,
中 上 級にい くに従っ て,
教 師の援助
的役
割 を 求め ている こ とが伺 える。 いず
れに せ よ,教 師
の権威
を求
め,指
図 を待
っ てい る という姿勢
と は 異 なる。例
筆
者
:日本語
の先
生に求
め るこ と,先
生の役割
とい うか,先
生に期待
するこ と。学
生C
:もし,先
生が私
のか わり
に勉強す
る こ とがで きるな らばい い と思い ます が, これ が不可
能
な こ とです
の で , つ まり
,先
生の役割
は,手伝
い という役割
だ と思 い ます
。う
ん 。 学 生B
ユー
モ ア。 皆 さんをで きるだけ 笑わ せ るようなユー
モ ア。 学 生A
も し, 何か授 業 以 外は, わ か らない とこ ろがあれ ば, 先生に聞 く方がい い です。 先生の 意
見
と か考
え方
は,自分
の参考
になり
ます。 学 生B
:本 当の こ とを言 うとね。 手 伝 うとい う言 葉が適 当だ と思い ますね。 それ は, 先生方は,
い ろい ろ
教
えて くれます
け ど,
で も, 自
分 が受
け取
っ てい るか ど う かは,
わか ん ないで しょ 。 先 生 もわ か らない で しょ 。 (自 分が) 先 生は
,
い ろい ろな 学生 に教 えるで しょ。 で も
個
人個
人 ですね,何
% ですね,受
け 取っ たのかわ か ら ない で しょう。 う一
ん 。だ か ら, 自分の勉 強 する こ とにつ い て ですね。 やっ ぱ り
,
一
番
大事
なの は自
分が勉
強するか どうか , 受 け 取るか どう かは, そ れは, 大
事
で す ね。 (先 生は) 自 分の勉 強にとっ て は
,
勿論
教 えるの は非常
に大事
だと 思い ます けど,
で も,先
生がせ っ か く教
えて くれ たの に,
受
け 取らな ければお しい なあと思 っ て。 学 生D
そ う (だ)と思い ます。 しか し,
学 習 者 が 初 期の段 階では, 教 師 主 導 的 授 業が必 要で ある とい う意
見も
出さ れ た。 例 筆者 :中 国の先 生 が 講 義み たい に説 明を し て
,
全 部暗
記しなさい っ て言っ て,皆
な が こう書
い てた
授業
?学
生D
:普
通 なん です。355
一
18
臼 杵 美 由紀 筆者 :それ が, 普 通 なんで す ね。 そ れは, 本 当に先 生の役 割っ てい うの は, 手 伝い で はない
んで
す
よ ね。 学生D
:そう
で すよ ね。一
年生, 二年生, そう
いう
関係
が な かっ た んですよ。 筆者 :手 伝 うとい うよ り, 教 え 込 む ? 学 生
B
:教 え 込 む。筆
者
:そ れは,皆
さ ん はい い と思 っ て ない の ?学
生A
:い い と思い ます
。学
生B
:その時
は, い い と思い ます
。筆
者 :その 時っ て い うの は,
申 国で 日本 語 を勉 強 し始め た時です か。 学 生B
:はい , そ うです。 筆者 : で も, 今の レ ベ ル では, 手 伝い のほうがい い ?
学
生B
:手伝
い のほ うがい い とい うより,考
え方
として, 自分
が知 らない こ と を全部先
生 が 教えて くれ る か ら
,
一
生懸 命や ら な くて もい い なとい う気 持 ちじゃ な くて, 先生 が努 力して本 当に 工夫 して
(
なんか)
教 え 方 も考
えて,
い ろい ろ様々 なこ と教 えて くれ ま すけど。
今
は,
もう
大 人にな っ て,
そう
いう
具 体 的 なこ と を どう
や っ て受
けと る か,
どの程 度, どの部 分
,
自分に役に立つ か, 自分に し か わ か ら ない か ら, そ うい う意 味で ,先
生 は,手伝
い という考
えな ん ですよ。筆
者
:C
さん は,
一
番最
初に始
めた時
は,
中 国 人の先生, それ が良
か っ たん ですよ ね。 その先生 は, 教 え込むっ て い
う
感じで した か。 全 部 全て知 識を与 えるっ ていう
か, その時は
,
そ れが一
番よ か っ たですか。学
生C
:はい 。 そ うです。 筆 者 :じゃ,
レベ ル に よっ て,
,, 学 生C
:レベ ル に よっ て 違い ま す。筆 者
:じゃ,
レベ ル に よっ て,先
生の役割
も違 う?中 国 人 上 級日本 語 学習者の 日本 語 学 習に関 する視 点 19