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日本における脳科学の政策動向とその意図 : 「教育への応用」をめぐって

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1.研究の目的と問題の所在 本研究の目的は、1990年代以降の脳科学研究の高度化・大規模化に伴い、国策として展 開されてきた脳科学の政策動向を分析することによって、教育への応用にあたり、どのよ うな立場でもって何を明らかにしようと試みているのか、その意図を明らかにすることで ある。 脳科学の主題は、心の働きを解明することであり、人間を理解することである。すなわ ち、人間の人間たる所以を明らかにすることこそが脳科学の究極的な目的である。未解明 の部分が多いとはいえ、これまでも人間の脳構造及びその機能の働きが少しずつ明らかに されてきており、脳認知発達における教育の重要性も頻繁に指摘されるようになってきた。 教育学にとっても、人間の理解は教育のあり方を規定するものとして共通の哲学的な関心 を抱くことができる。他方で、具体的な教授法等の技術的な関心であっても、例えば従来、 心理学が明らかにしてきた人間に固有な学習メカニズムや発達メカニズムから学んできた 経緯があり、心理学が脳科学と密接に関連づきつつある昨今の研究状況を鑑みれば、脳科 学から示唆を得ることは多い。 歴史をひも解けば、日本で脳科学を教育に応用する試みは1960年代にまで遡る。大脳生 理学者による時実(1969)は「教育とは、私たちをして人間として行動させる脳に作りあ げること」(4頁)であると明示するとともに、当時の脳科学の知見に基づきながら保育 や教育のあり方を検討している。時実による成果は「脳を育む」研究領域の古典として位 置づけられるが、現代の脳科学の見地からすれば、妥当性の検証が求められる。それは当 時の脳科学、特に大脳生理学はラットやマウスなどの動物実験に負う部分が多く、人間を 対象にする研究は脳損傷患者等の限られた事例や症例の検討が中心であったことに起因す る。したがって、それらの成果を健常な生きた人間全体に広げて解釈するには当然のこと ながら制約があり、時には論理的飛躍等の問題を生じさせてしまう。 しかし、1980年代後半の脳科学を支える計測技術の革新的な進展により、脳イメージン グ技術などが開発され、健常な人間の脳活動を生きたまま観察することができるようにな * 浜松学院大学(教育学)

―「教育への応用」をめぐって―

Policy Trend of Brain Science and the Intention :

Focus on“Application to Education”

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った。その結果、教育を含む様々な関連領域へのより直接的な脳科学の応用が射程に入っ た。その他にも、分子生物学やゲノム研究の発展に伴い、現在の脳科学は自然科学という よりはライフサイエンスの色彩を強く帯びるようになっている。 本稿では脳科学における次の2つの大きな変化に注目し、1990年代以降の政策動向を分 析する。特に教育への応用をめぐって脳科学がどのような意図をもって対応してきた/し ようとしているのかを問う。第1の変化は実社会との関連性の強化である。20世紀の自然 科学は物理学に代表されるように、主に自然を知ることを目指してきたのに対し、20世紀 後半、特に1990年代以降は、各種生命現象の解明を通じて人間の理解を図ろうとするライ フサイエンスの色彩が強くなった。その傾向が強まった結果、脳科学の研究成果は必然的 により実社会と関連づくものとなり、実社会に与える影響力も強まりつつある。したがっ て、かつては実社会への応用を考える必要がなかった基礎科学としての脳科学は応用化学 の側面を併せもつように変化した。 第2の変化は国策による研究推進の必要性の増加である。1990年代以降の脳科学は、そ の後、研究の高度化や大規模化の道を辿り、各大学や研究者の個人的な努力だけでは最先 端の研究が実施できない状況にある。例えば、脳イメージング技術を導入して脳科学研究 を実施しようとすれば、数百億という設備経費や維持費が発生してしまい、各大学や各研 究者の自助努力だけでは賄いきれない。また、この時期は世界的に情報、生命、環境を研 究課題とする理学、工学、医学などの伝統的な科学分野を横断する学際的な研究の重要性 が認識され始めた頃でもある。脳科学も1970年ごろから融合分野として成長してきたが、 特に90年代以降、その傾向に拍車がかかっており、脳イメージング技術を用いる研究領域 も医学のみならず工学や心理学など多岐にわたってきている。このように、国が設備や予 算等の研究環境を整備する必要性は以前よりも増し、国の科学技術政策が脳科学の発展度 合を左右するという事態さえ生じている。この傾向は日本のみならず、諸外国でも基本的 には同様である。ただし、米国のように財団等による寄付や助成でもって研究環境を整備 できる仕組みが整っている場合もある。その点では日本は状況が異なり、国策に頼る割合 がより大きい。 したがって、日本における脳科学の全体的な動向とその意図を分析するには、まずもっ て政策文書を分析することが有効であると言える。なぜならば、国策である限り、脳科学 の「社会的意義」を強調しなければならず、各政策文書で脳科学がどのように社会と接点 を持とうとしているのかを読み取れば、将来的な展望も窺い知ることができるからである。 現時点で脳科学を教育に応用することは早急であるとする慎重論は根強い。しかし一方で、 政策文書には教育への応用がはっきりと明記されているのも事実である。将来的に脳科学 の教育への応用をより現実的に推進する際に、これまで/これからの脳科学の方向性を押 さえておく必要があり、本稿ではその問いを中心に考察する。

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2.分析方法 (1)分析対象 国策による脳科学研究推進の重要性は主に1980年代後半から認識されてきた(政策文書 ①)。1988(昭和63)年には、当時の中曽根康弘総理大臣の主導の下、国際的な研究助成 組織「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム」が開始され、その主要なテ ーマに脳機能の基礎的研究が取り上げられたという経緯がある。実質的な大型研究プロジ ェクトの実施に至る契機として、その後の脳科学のロードマップを提示したのは政策文書 ⑦(表1)である。したがって、本研究では政策文書⑦を中心に、前後の政策動向とその 意図について考察を加える。主な政策文書は表1の通りである。 また、主な政策文書の範疇には国の審議会、検討会、研究会、および懇談会がまとめた ものに加え、日本学術会議による文書も加えた。日本学術会議には日本の学術政策を学者 の立場から審議し、直接政府に対して勧告や要望を行う権限が与えられているためである。 なお、多くの場合、各政策文書はその後の政策文書において引用、あるいは経緯説明で提 示されており、連続性を帯びている。したがって、本稿において当該文書が主要であると する根拠は、第1にその後の政策文書で触れられているか、第2に教育への直接的・間接的 な言及があるか否かで判断した。 表1:脳科学を巡る主要な政策文書 ①昭和62(1987)年8月:「脳・神経系科学技術の基本方策に関する意見」,科学技術会議 ②平成6(1994)年6月:「脳・神経系機能解明促進のための基盤形成に関する総合的な研究開発の 推進方策について(第19号答申)」,航空・電子等技術審議会 ③平成7(1995)年10月:「脳の科学とこころの問題―脳科学の視点から―」,日本学術会議脳の科 学とこころの問題特別委員会(委員長:大熊輝雄) ④平成8(1996)年4月:「脳科学研究の推進について(勧告)」,日本学術会議第123回総会(会 長:伊藤正男) ⑤平成8(1996)年7月:「脳科学の時代」,科学技術庁研究開発局脳科学の推進に関する研究会 ⑥平成9(1997)年3月:「大学等における脳研究の推進について(報告)」,学術審議会特定研究領 域推進分科会バイオサイエンス部会 ⑦平成9(1997)年5月:「脳に関する研究開発についての長期的な考え方」,科学技術会議ライフ サイエンス部会脳科学委員会(委員長:伊藤正男) ⑧平成11(1999)年6月:「大学等におけるバイオサイエンス研究の推進について(中間まとめ)」, 学術審議会特定研究領域推進分化会 バイオサイエンス部会 ⑨平成14(2002)年6月:「ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について」,科学技術・ 学術審議会研究計画・評価分化会(分科会長:澤岡昭) ⑩平成15(2003)年7月:「『脳科学と教育』研究の推進方策について」,「脳科学と教育」研究に関 する検討会(座長:伊藤正男) ⑪平成17(2005)年6月:「子どものこころを考える―我が国の健全な発展のために―」,第19期日 本学術会議「子どものこころ特別委員会」 ⑫平成17(2005)年10月:「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会報告書」,情動の科 学的解明と教育等への応用に関する検討会(座長:有馬朗人) ⑬平成19(2007)年5月:「脳科学研究ルネッサンス―新たな発展に向けた推進戦略の提言―」,脳 科学研究の推進に関する懇談会(座長:金澤一郎日本学術会議会長) ⑭平成21(2009)年1月:「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について∼総合 的人間科学の構築と社会への貢献を目指して∼(第1次答申)」,科学技術・学術審議会(会長: 野依良治)

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(2)分析の視点 政策文書の分析にあたり、以下の視点を設定する。第1は、いつ頃から教育への直接 的・間接的な言及がなされるようになり、その際に重点項目として何をいつ頃までに達成 すべきであると指定されてきたのかという、「政策・研究関心の変遷」である。次いで第 2に「脳科学と教育」研究のアクターが、どのような考えに基づきながら、自然科学であ る脳科学と人文・社会科学がこれまで対象にしてきた教育を結び付けようとし、どのよう な仕組みでもって「脳科学と教育」研究を推進しようとしてきたのか、という「プラット ホームや研究戦略」である。そして、第3に脳科学が今後、どのように実社会との接点を もちながら進められようとしているのかという、「社会科学技術の将来予測」である。 1990年代以降における日本の脳科学のグランドデザインを構想したキーパーソンは伊藤 正男である。伊藤は1994年から1997年の3年間、日本学術会議会長を務め、国策による戦 略的脳研究の礎を築くとともに、理化学研究所脳科学総合研究センター創立所長、「脳科 学と教育」研究に関する検討会で座長を務めるなど主要なポストを担ってきた。また、 「脳科学と教育」研究の実質的な旗振り役には小泉英明がいる。小泉は「脳科学と教育」 研究に関する検討会のワーキンググループの主査を務め、国際的にも先駆的であった「脳 科学と教育」研究プロジェクト、すなわち、(独)科学技術振興機構社会技術研究開発セ ンター「脳科学と社会」研究開発領域の領域総括を担当してきた。また、小泉は2004年に 設立された「International Mind, Brain, and Education Society」(IMBES)に創立理事とし て携わるなど、日本国内外の「脳科学と教育」研究の指導者的役割をこなしてきた。 以上のことから、日本における「脳科学と教育」研究の主要なアクターは伊藤と小泉の 両名を挙げることができる。ただし、「脳科学と教育」研究の実質的内容に関しては、小 泉に詳しい。したがって、本稿の第2の視点では小泉がどのような考えに基づきながら、 「脳科学と研究」研究を推進してきたのかという点に注目して考察を行うことにする。ま た、第3の視点に関しては、「科学的技術俯瞰的予測調査」(科学技術振興機構)や「イノ ベーション創出シナリオの作成等のための調査研究」(文部科学省科学技術政策研究所)、 および「脳科学の産業分野への展開に関する調査事業報告書」(新エネルギー・産業技術 総合開発機構・NTTデータ経営研究所)などの成果に基づきながら検討する。 3.政策・研究関心の変遷 (1)希望的観測にもとづく「教育への応用」 科学全般における基礎研究と応用研究をバランスよく推進していくために、双方の中間 に「戦略研究」を位置づけこれを強化する必要性が1990年代半ばに認識され、日本学術会 議で議論された1 。とりわけ、戦略研究の典型例に脳科学をとりあげ検討を行う契機にな ったのは政策文書③である。 政策文書③では、こころに関する研究がこれまで人文・社会科学によって蓄積されたこ

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とを指摘しつつ、「こころの生物学的基盤の解明を目指すおおきな学際的研究領域として、 脚光を浴びるに至っている」(366頁)と、こころに関する研究の一環に脳科学を位置づけ ている。それゆえ、脳科学の研究は、「人文・社会科学におけるこころの研究を絶えず参 照し、それと相補い、必要に応じて共同で進められなければならない」(367頁)とし、自 然科学者のみならず、人文・社会科学の代表者も参加する国としての常設的な脳科学研究 推進組織の設置を提唱した。 また、脳科学は「こころの働きに関係する様々な実践的な課題、例えば、精神・神経系 の疾患の治療や老化の予防、育児や教育の方法、ストレスへの対処、あるいは人工知能の 開発などの工学的応用等に大きく貢献するものと期待される」(366頁)として、実社会と 関連づけることの意義に触れている。なお、各項目はより踏み込んで具体例が記載されて いる。例えば、精神・神経系の疾患の治療や老化の予防に関しては、脳神経系の発達障害 の早期診断や対策が可能になりつつある現状を挙げた。また、老年期の脳機能衰退の仕組 みとその防止・軽減化の研究が、「頭をよくする」ことができるのかという課題解決に示 唆を与え得ると、期待を表明している。次いで、ストレスへの対処では「青少年の登校拒 否、学校でのいじめや自殺などの問題行動にも、教育における知識偏重の傾向や受験戦争 のストレスの増加などが関係している。一方、これらのストレスによる障害には、ストレ スに対する耐性が育っていない人格の未成熟も関係しているといわれ、しつけの重要性が 指摘されている」(372-373頁)と言及し、この種の問題に対して、人文・社会科学諸分野 との共同研究が必要であると指摘する。また、育児や教育の方法を巡る問題には、いわゆ るニューメディア(マルチメディア等)を挙げ、「学習の能率化に大きな成果を挙げてい るようであるが、反面、好奇心の減退、読書等による能動的な知識獲得の減少などのネガ ティブな影響も指摘されている」と、情報伝達様式が脳の神経回路網やその機能的発達に 与える影響について総合的な研究を行う必要性を述べた。さらに、「最近幼児期から塾な どで学習させる超早期教育が一般化しつつあるが、それが脳の発達に及ぼす影響とともに、 人格形成、特に情操面に及ぼす影響を研究する必要がある」(373頁)と指摘していた。 政策文書③の内容を基本的に政策文書④∼⑦は踏襲している。政策文書③以降、提案さ れてきた脳科学委員会が科学技術会議ライフサイエンス部会に設置され、それまでの成果 が結実したのが政策文書⑦である2 。いずれの文書でも社会的意義の一つに「育児・教育 への寄与、適切な助言」が触れられており、政策文書⑦では、脳科学の発展が「医療・福 祉の向上」、「社会・経済の発展」、「社会生活の質の向上」をもたらすと謳われた。脳科学 が応用科学の側面を強調した背景には、政策文書③がまとめられた同年、平成7(1995) 年に科学技術基本法が公布され、科学技術の振興を強力に推進するための科学技術基本計 画が策定されたことによる影響がある。すなわち、平成8(1996)年に閣議決定された計 画で「社会的・経済的ニーズに対応した研究開発の強力な推進」が謳われ、その結果、脳 科学も応用研究の色彩を強めたと言える。したがって、これらの貢献を実現し得る応用研

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究を推進するために、基礎研究とのバランスを考慮に入れた戦略研究が実施され、具体的 な施策が展開するようになった。 戦略研究では「自由発想型」の研究開発と「目標達成型」の研究開発が区別され、後者 は「脳に関する研究開発の長期的な達成点が見通せる段階となったことを踏まえ」、「科学 的にも、社会的、経済的にも有意義な多くの研究成果の生産を促進」するものと位置づけ られる(政策文書⑦)。そして、具体的な研究領域に「脳を知る」「脳を守る」「脳を創る」 の3領域が置かれ、向こう20年間を期間とし、戦略目標及びそれら研究体制や施設等も整 備されるようになった。この領域設定は政策文書⑤の提案をもとに政策文書⑦が踏襲した ものであり、この時点では「脳科学と教育」研究を積極的に進めるための研究領域は設定 されていない。むしろ、教育に関連する事項は「脳を知る」研究領域に含めて考えられて おり、「知情意の脳の構造と機能の解明」および「コミュニケーションの脳機能の解明」 という戦略目標に取り組むために、以下のようなタイムスケジュールが組まれた。 表2から分かるように「育児・教育への助言」は最も早い5年後に設定されており、関 心の高さが窺える。一方で、15年後に「高次の脳の働きの理解」を貢献例として挙げてい ることから、どの程度のレベルで育児・教育への助言を行おうとしていたのかは定かでは ない。むしろ、脳科学と教育を関連づけること自体、研究コミュニティの中で合意されて いなかったと言える。 「脳科学と教育」研究の実質的なアクターである小泉は、研究業績③がまとめられた同 年、1995年1月に日立中央研究所で公開シンポジウム「脳精神科学の基礎と応用」を開催 し、そこで今後有望な四つの脳科学の応用領域を挙げた。それらは①医療・福祉、②情報 技術、③ロボティックス、④教育である。この番号は実用化に近いと小泉が予想した順番 である3 。次いで1996年に科学技術振興事業団の主催で、環境計測に関する四日間の国際 会議を開催し、その際に「脳と環境の相互作用」というセッションをつくった。さらに、 2000年1月に第2回公開シンポジウム「脳精神科学の基礎と応用(Ⅱ)」を再び開催した。 表2:戦略目標タイムテーブル(政策文書⑦別紙から「脳を知る」領域のみ転載) 領域 戦略目標分野 知情意の脳の構造と 機能の解明 コミュニケーション の脳機能の解明 ○知情意の座の解明 ○記憶、学習の解明 ○脳神経系の構築原理の  解明 ○感覚、認知、運動の解明 ○情動、行動、生体リズム  の解明 ○脳神経系の機能統合・  制御原理の解明 ○注意、思考の解明 ○自己意識、社会意識の  解明 ○言葉の座の解明 ・ヒトと動物のコミュニ  ケーションの違い ○言葉の脳内情報処理の  解明 ・非言語的コミュニケー  ションの理解(身振り、  感情など) ・言語の獲得過程の理解 ○言語と思考、知性との  関係の理解 脳を知る貢献例 育児・教育への助言 心身的・社会的ストレスへの対処 高次の脳の働きの理解 人の理解の進歩 5年後 10年後 15年後 20年後 脳 を 知 る 脳 の 働 き の 解 明

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その当時の状況を小泉は、「教育学への応用」に関心を抱く研究者は、脳科学者の中にも 教育学者の中にも見出すことができなかったと後述している4 。そして、同年11月に科学 技術振興事業団の主催で、異分野研究者交流フォーラム「脳を育む−学習の科学」という 国際会議を開催するに至り、「脳を育む」概念は打ち出されたという経緯がある。 以上のことから、政策文書⑦がまとめられた時点では「育児・教育への助言」はあくま でも期待の表明のレベルに留まり、必ずしも実態は伴っていなかった。まさに「脳科学と 教育」研究の萌芽期であり、「脳を知る」研究過程において知り得た知見が間接的に教育 と関わるであろうという希望的観測に基づいていたと言える。すなわち、教育という事象 を脳科学的に解明するという直接的な研究ではなく、脳科学で知り得た知見を解釈するこ とによって教育に応用しようとする姿勢である。この時期の政策動向の特色は、①脳科学 の社会的意義の強調(教育への言及)、②基礎科学の充実とともに応用科学を見通した戦 略研究の推進、③自然科学のみならず、人文・社会科学をも巻き込んだ総合科学としての 脳科学、という点にある。 (2)異分野融合による「脳科学と教育」研究領域の創出 日本における「脳科学と教育」研究が全面的に実施され始めたのは2001年以降であり、 その基盤は政策文書⑨⑩にある5 。その端緒として(独)科学技術振興機構(理事長:沖 村憲樹)は、2001年度から社会技術研究推進事業を発足させ、自然科学と人文・社会科学 の融合的な取り組みにより社会の諸問題の解決を図る研究、すなわち、社会技術研究の推 進を図ってきた。その一環として、世界で最初の国家プロジェクトとして、同年に研究領 域「脳科学と教育」プロジェクトが開始される6 。次いで2002年3月に文部科学省に「脳 科学と教育」研究に関する検討会が設置され、2003年に中間報告「『脳科学と教育』研究 の推進方策について」(政策文書⑩)が公刊された。さらに、「脳科学と教育」研究に関す る検討会の設置と時を同じくして、2002年6月に政策文書⑨「ライフサイエンスに関する 研究開発の推進方策について」で、従来から取り組まれてきた「脳を知る」、「脳を守る」、 「脳を創る」領域に加え、新たに「脳を育む」領域が提案された。それを受け、2003年度 より理化学研究所脳科学総合研究センターは、新たに「脳を育む」研究領域を発足させ、 研究に着手した。これら国内での研究プロジェクトは、互いに方針を一致させながら取り 組まれている。 政策文書⑨の特徴は、①ゲノム科学の進展に伴い、ゲノムという共通言語を通すことに より生物をひとつのシステムとして「統合的」に理解することの必要性が認識されたこと、 ②生物、あるいは生物現象を構成する、分子、細胞、組織、固体、生態系等といった各階 層を縦断して貫く「統合的」な方法論による研究活動が重要であり、従来の学問領域や研 究組織にとらわれない異分野の研究者が「融合」して創生する新たな研究活動が強く期待 されたこと、③ライフサイエンス分野の研究成果が、直接、社会における利益と結びつく

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ことから、ライフサイエンスにより、21世紀型の新産業を創るとともに生活の質(QOL) を向上させる必要があると指摘されたこと、④「脳を知る」「脳を守る」「脳を創る」に加 え、新たに「脳を育む」領域が設定されたことの4点にある7 。全体を通じて、基盤的技 術開発、応用開発研究、臨床研究への言及数が増え、研究開発成果の産業化・実用化が強 調されるようになった。 政策文書⑨で新たに設定された「脳を育む」領域では、今後10年程度を見通した当面5 年程度の戦略目標が立てられており(表3)、当然のことながら、政策文書⑦の「脳を知 る」領域で示された戦略目標よりも発達や学習のメカニズム解明を前面に押し出したもの となっている8 。また、研究成果のヒトへの適用を視野に入れ実用化を図るため、その推 進にあたっては実験用霊長類の供給体制の整備が必要であるとし、また、神経活動を細胞、 分子レベルで計測できる非侵襲的バイオイメージング装置の開発が重要であるとされた。 一方で、政策文書⑩は「脳科学と教育」研究の推進方策と銘打っていることから、より 踏み込んだ当該研究領域の理念等を含めて提示し、その後の「脳科学と教育」研究の方向 性を示した。すなわち、「人類の安寧とより良き生存」(Human Security & Well-Being) を目的とし、生涯にわたる学習の仕組みの解明を通して、人が本来有している能力の健や かな発達・成長や維持を目指すこと及びその障害を取り除こうとするものである。また、 基本的な研究の取り組み方として、「教育の場からの課題の提示に対して、脳科学をはじ め関係する科学が如何なる貢献ができるのかという観点から対話・交流を進めつつ、これ に基づき、架橋融合した研究活動を行うことを基本的な進め方とする」(3頁)と明記さ れた。具体的には「教育の役割」、「教育を取り巻く環境の変化」に由来する教育の場の課 題を踏まえた研究領域がされており、「脳科学と教育」研究の俯瞰と実施スケジュールは 表4と表5の通りである。これら「脳科学と教育」研究は、政策文書⑨で示された異分野 の架橋・融合による新分野の創出の一分野として位置づけられており、異分野が実際に融 表3:「脳を育む」領域の重要研究課題(政策文書⑨,23頁より抜粋) ・非侵襲的脳機能イメージング法を活用して、 ①ヒトの感覚・運動機能、ヒトに特徴的な言語機能の発達などの臨界期の明確化 ②生後環境が高次脳機能発達に及ぼす影響の解明 ③発達脳可塑性の臨界期及びその終止メカニズムの解明が重要 ・また、乳幼児の認知・行動発達を理解するため、ロボット工学、発達心理学及び理論神経科学を 融合した行動発達の研究 ・成人や高齢者における学習・記憶メカニズムの理解をもとにした、脳科学と教育工学の融合的研 ・神経科学分野の研究者のみならず、小児科医、教育学研究者、現場の教育者等による子供の精神 機能発達障害に関する融合的研究 ・成人・高齢者脳の可塑性と学習能力の解明

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合する研究組織の実現と具体的な架橋・融合に向けての枠組みの開発が目指されている。 ただし、議事録にある通り、「OECDの場でも、教育の側から課題を提起してもらい、脳 科学がその課題に答えるという形とすることが適当ではないかとの議論があった。しかし、 脳科学の側にもまだ分からないことが多いので、新しい知識の獲得が必要である」9 という のが現状であり、脳機能を解明しながら教育に関する課題に対応する必要が認識されてい る。 表4:「脳科学と教育」研究の俯瞰(政策文書⑩,29頁より転載) 教育における課題 教 育 の 役 割 ①人格の形成 ①情報化 ②効率化 ③個人化 ④少子化 ⑤競争社会の進展 ⑥高齢化 ⑦化学物質の影響 ②社会で生きていく力の涵 ③効果的な学校教育の実施 ④生涯の様々な段階におけ る能力の開発と自己実現 の支援 ⑤障害のある人々の学習へ の対応 ①個の理解 ②注意力、意欲、動機づけ、創 造性の発達促進 ①環境要因が人の成長と学習活 動に与える影響の解明 ②コミュニケーション能力の育 ③学習障害、注意欠陥/多動性 障害などへの対応 ④過剰なストレスから脳を守り、 健全に発達させる方策 ③脳科学の知見を生かした適切 な教育課程の開発のための知 識の集積 ④生涯学習の推進 ⑤脳機能障害の解明と脳機能に 障害のある人々の社会参加を 目指す教育・療育の推進 「脳科学と教育」研究の目標 研 究 領 域 ①注意力、意欲の増進や動機づけ、創造 性の涵養に関する融合的研究 ②教育課程・教育方法などの開発のため の知識の集積に関する融合的研究 ③生涯学習の推進と高齢期における脳機 能の低下への対応に関する研究 ④脳機能障害の解明と脳機能に障害のあ る人々の社会参加を目指す教育・療育 の推進に関する研究 研 究 方 法 論 ①胎児期の行動と脳の計測手法の開発 ②乳幼児から高齢者までの脳の計測手法の開発・応用 ③行動、認知、学習などの機能の行動学的・心理学的測定法の開発 ④脳の発達と学習に関する理論的研究の推進 ⑤脳関連遺伝子の解析とその発現に関する研究 ⑥教育学・社会学・脳科学における統計手法の開発 ⑦脳の発達に影響を及ぼす環境要因の分析 ⑧「脳科学と教育」研究に関連すると考えられる動物実験の推進 教 育 を 取 り 巻 く 環 境 の 変 化 教育の場における課題 (一般的課題と障害のある人々 への教育・療育にかかわる課題) ①環境要因が脳機能に与える影響と教育 への応用に関する基盤的な研究 ②社会の情報化がもたらす脳機能への影 響の解明と教育課題解決への応用 ③効率化がもたらす脳機能への影響の解 明と教育課題解決への応用 ④個人化・少子化がもたらす脳機能への 影響の解明と教育課題解決への応用 ⑤社会における過剰なストレスがもたら す脳機能への影響の解明と教育課題解 決への応用 ⑥高齢化社会がもたらす脳機能への影響 の解明と教育課題解決への応用 ⑦化学物質の脳機能への影響の解明と教 育課題解決への応用 ⑧コミュニケーション能力の育成に関す る研究 ⑨顕在化する学習障害などに対する対応 方策の研究 教育への影響 課題の発生

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政策文書⑩を受けて、科学技術振興機構では2004年度より新規研究「心身や言葉の健や かな発達と脳の成長」が開始され、長期にわたるコホート調査が計画・実施され始めた10 この研究は、単発の刺激と脳内における反応の計測だけでは解明できない、社会・生活環 境が心身や言葉の発達に与える影響やそのメカニズムの解明と、その成果の活用方策の提 示を目指す。その後、政策第19期日本学術会議「子どものこころ特別委員会」がまとめた 政策文書⑪でも、「こころの座としての脳の発達」がとりあげられ、表6のような知見に基 づきながら子どもの健全な成長に資する具体策が提言される。さらに2005年10月には、文 部科学省で情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会が設置され、いわゆる「キ レる子」対策に着手し(政策文書⑫)、具体的な調査として「子どものこころの成長に関 する基盤整備事業」が行われた。つまり、一連の動向から看取される傾向として、表4で 示した研究領域のうち、社会性の脳認知発達に焦点を当てた研究開発が特に重点的に行わ れてきたと言える。 表5:実施スケジュール(政策文書⑩,30頁より転載) 「脳科学と教育」研究の研究領域 基礎的評価 緊急性 重要性 集中して研究に取り組むべき時期 当面から短期 中長期 ○※ ○※ ①注意力、意欲の増進や動機づけ、創造性の涵養に関する融合的研究 ②教育課程・教育方法などの開発のための知識の集積に関する融合的研究 ③生涯学習の推進と高齢期における脳機能の低下への対応に関する研究 ④脳機能障害の解明と脳機能に障害のある人々の社会参加を目指す教育・療育の推進に関する研究 ①環境要因が脳機能に与える影響と教育への応用に関する基盤的な研究 ②社会の情報化がもたらす脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ③効率化がもたらす脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ④個人化・少子化がもたらす脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ⑤社会における過剰なストレスがもたらす脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ⑥高齢化社会がもたらす脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ⑦化学物質の脳機能への影響の解明と教育課題解決への応用 ⑧コミュニケーション能力の育成に関する研究 ⑨顕在化する学習障害などに対する対応方策の研究 ①胎児期の行動と脳の計測手法の開発 ②乳幼児から高齢者までの脳の計測手法の開発・応用 ③行動、認知、学習などの機能の行動学的・心理学的測定法の開発 ④脳の発達と学習に関する理論的研究の推進 ⑤脳関連遺伝子の解析とその発現に関する研究 ⑥教育学・社会学・脳科学における統計手法の開発 ⑦脳の発達に影響を及ぼす環境要因の分析 ⑧「脳科学と教育」研究に関連すると考えられる動物実験の推進 (1) 教育の役 割に応え るための 研究 (2) 教育を取 り巻く環 境の変化 に対応す るための 研究 (3) 「脳科学 と教育」 研究を支 える研究 方法論に ついての 研究 注:緊急性…社会的な意義、脳科学などの進歩状況などの拠点から評価  重要性…教育の改善、福祉の向上、経済的な効果の視点から評価   当面から短期…5年以内での一応の達成を目標  中長期…10年程度での一応の達成を目標  なお、集中して取り組むべき時期については中間評価などにより、適宜見直すことが重要である。   「当面から短期」及び「中長期」の両方の欄に○が記入されている領域については、当面から中長期にわたって集中して取り組むべきであるという意味である。   (1)②、③については緊急性の評価は「中」であるが、当領域の中に項目数が非常に多く、そのうち一部については「当面から短期」に取り組むことが可能であるため○を付した。   *…(3)については、(1)及び(2)の研究を支える基盤的な研究であり、いずれも早期に着手すべき課題であるため、基礎的な評価の対象に含めていない。 表6:政策文書⑪で取り上げられた脳科学的知見(3-8頁より抜粋) (1)脳の基本的な構造と機能は10歳前後にほぼ完成する。 (2)ヒトの脳の発達の過程で、神経細胞には「間引き」が起こる。 (3)一旦完成した脳にも「可塑性」があり、これが学習の基礎となる。 (4)しかし、脳の可塑性に基づく機能獲得には「臨界期」がある。 (5)「環境」の豊かさが健全な脳の発達には必要である。

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以上のように、矢継ぎ早に様々な施策が進められたわけであるが、教育学の分野で関心 を真っ先に示したのは特別支援教育であった。「今後の特別支援教育の在り方について (最終報告)」(2003)には、「言語障害、LD、ADHD等のように脳の発達と密接な関連が あるものもあり、障害のある児童、生徒についても脳科学の成果を踏まえて適切な教育的 対応を図ることが一層効果的であると考えられるものがあるため、現在行われている検討 の結果を踏まえ、教育サイドからの課題の提示を踏まえた『脳科学と教育』研究が進展さ れることが望まれる」とある。この指摘をもとに国立特殊総合研究所では、2004年度より 3ヵ年計画で課題別研究「脳科学と障害のある子どもの教育に関する研究」を実施するた めの体制整備を始め、成果の一端を、『国立特殊総合研究所紀要第33巻』(2006)に掲載し ている。それと意向を同じくして、2004年2月には文部科学省と国立吉備少年自然の家に より、「『脳科学と教育』と自然体験シンポジウム」が開催され、学習障害(LD)や注意 欠陥・多動性障害(ADHD)などの障害児への教育支援が議論された。シンポジウムの提 言をうけ、自然体験キャンプが実施され、脳科学的検証も試みられている(沖野,2006な ど)。 特別支援教育は脳神経系に起因する発達障害児の教育も担っており、「脳を知る」領域 に基盤を置きつつ「脳を守る」領域と「脳を育む」領域の双方にまたがる分野に位置づけ られる。障害理解とその対応という点で、もともと医学・医療とも親和的に展開されてき た経緯をもつことから、脳科学とも親和性が高かった。一方で、特別支援教育以外の学校 教育の研究からは、そのような素地が形成されていなかったためか、積極的な脳科学の受 容は見受けられない。したがって、現状では、学校教育、特に通常学級への脳科学の応用 はあまり取り組まれていない。 しかし、先述したコホート調査などの実施や乳幼児や高齢者、及び特別なニーズのある 子どもを対象にした研究成果、特に社会性の脳認知発達に関する知見の蓄積を図りながら、 近い将来において学校教育に応用しようとする方向が目指されている。この点で、「脳科 学と教育」研究は、漠然とした1990年代の希望的観測から、2000年代には具体的な研究関 心が明確になり、一つの研究領域として創出されたと言える。 4.「脳科学と教育」研究推進のためのプラットホームと研究戦略 2001年以降、急激な進展をみせた「脳科学と教育」研究であるが、その実質的なアクタ ーであった小泉は自然科学と人文・社会科学を架橋・融合するためのプラットホームを整 備してきた。以下、その特徴を概観する。 (1)生物学的定義の提案とこころの形態学の構想 自然科学と人文・社会科学が架橋・融合するためには、基本的な概念を同じ意味で共有 する必要がある。小泉は、この点に留意し、雑誌『科学』で生物学的観点による「学習」

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と「教育」を「脳を育む」ことと関連づけて表7の通り定義した(小泉 2000,878頁)。 これら生涯を見通した価値中立的な定義づけにより、他分野の参入が可能となった。 次いで、小泉はこれまで人文・社会科学が扱ってきた精神(形而上)の世界と物質(形 而下)の世界が結びつきうることを提示した。まとめたものが図1であり、将来的には一 連の情報処理機構と形而上的認識の間を1対1で結びつけることができないだろうかと構 想を紹介している(小泉,2005a)。ただし、現状では「主観の問題を避けながら、客観的 な対象と成し得る範囲で次第に心の中に科学の橋頭堡を築いていく研究」(大熊2005,310 頁)が多い。 (2)脳発達の基本的視座(脳と環境の相互作用) 小泉は脳と環境を対峙して捉える。人間の脳は、自身が置かれる環境の多くを造り出し ており、逆に脳すなわち神経回路の一部も環境からつくられる(小泉1998,269-270頁)。 つまり、脳こそが環境の刺激を受容する唯一の器官であり、脳と環境との相互作用によっ て人間の精神的機能を考える必要がある。要するに脳は環境からの入力に依存する。小泉 表7:学習と教育の生物学的定義 学習:環境に適応した情報処理回路とデータベースを構築するように、脳が刺激に反応し新たな神 経回路網を生成する過程。 教育:脳の情報処理機構の基本的なアーキテクチャが構築される際に、脳への入力刺激を準備した り制御することによって、新しい神経回路の構築を導き、かつ鼓舞する過程。 図1:精神と身体の対応 精神(形而上) 物質(形而下) 自己意識 意志 高次連合野 視床 筋肉 感覚器 精神と身体の対応

Suggesterd by Sasaki. K. at Mind Brain Symposium at Univ. of Hokkaido(1997)

感覚連合野 脊髄 運動連合野 一次感覚野 (大脳辺縁系) 一次運動野 (大脳基底核・小脳) 脳幹 脳幹 脊髄 思考 決定 認知 計画 (記憶) (情動) One to One Correspondence

〈心を観る装置の可能性〉

感覚 行動

唯一の 効果器 言語

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のいう環境には対物環境(自然環境、人口環境)と対人環境が含まれる(小泉,2006)。 この考えをもとに小泉(2005b,31-32頁)は、アセスメントの問題に関心をもっており、 「都市化や情報化で激変する環境因子によって子どもたちがどのような影響を受けている のか、議論を繰り返すよりも、脳科学の見地から実証するべきである」と主張する。すな わち、脳に対しての環境アセスメントである11 また、脳と環境の相互作用による発達を捉えるためには、遺伝子で決定される先天的、 すなわち、ジェネティックな部分と、環境で発現が調整されるエピジェネティックな部分 とを区別して考える必要があると指摘し、遺伝や環境という二分法ではなく、両者の「動 的交互作用」を見取る必要があるとする。なお、小泉は脳発達の知見を踏まえて、最終的 には適切な教育時期の指針を与えることで教育カリキュラムを提案できると考えている。 (3)「環学性」の提唱(要素還元論から「俯瞰統合論」への転換) 20世紀の近代科学技術は、物事を要素に還元して分析的に考える要素還元論によって、 細分化・高度化しながら飛躍的に進展してきた。しかし、21世紀の社会では、科学技術の 成熟により、ひとつの特定分野のなかだけでは新しい知見や成功を得ることが困難である。 そのため、様々な要素を俯瞰し統合することが21世紀の科学には求められる12 。この問題 意識に基づきながら、小泉は従来の学際性や多分野性という概念が2次元に位置し静的で あるがゆえに期待したほどの効果が得られないと批判する。すなわち、学際性や多分野性 に基づいて行われた研究開発の多くが、例えば異分野の研究者を1つの建物に寄せ集めて おけば、自然に分野は融合されるという楽観的な考えに基づいていたきらいがある。 それに対して小泉が提唱したのが、3次元的空間に位置し動的に異分野を架橋・融合す る環学性の概念である。各分野の要素は異分野の要素と共鳴して結合し、新たな分野情報 を生成する可能性があり、環学性の概念ではある「場」の存在が分野の一部を共鳴させ、 その結果、異なる分野の一部が架橋・融合されると考える。この際の「場」とは、例えば 「脳科学と教育」研究という意図的に設定された研究領域であり、新しい研究組織を指す。 また、分野融合を起こすためには垂直方向に起き上がるような一つの力、インセンティブ を用意する必要があるという13 。「脳科学と教育」研究におけるインセンティブとは、領域 で共有する目的「人類の安寧とより善き生存」である。この目的を実現させるために、社 会技術開発による一層の直接的な社会貢献を脳科学が請け負うことを小泉は強く求めてき た。社会問題の具体的な解決には「統合俯瞰論」に基づいた環学性によるアプローチが不 可欠であり、それゆえに「脳科学と教育」研究は、教育問題を脳科学によって具体的に解 決しようとするイシュー志向の研究領域として発展してきたと言える。

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(4)研究アプローチの焦点化 教育を主題に据える限り、人間を対象に科学的な研究を行う必要がある。それを踏まえ た上で「脳科学と教育」研究が採る研究アプローチには重要視すべき点が2つある(小泉, 2010)。第1に、脳科学の教育への具体的な応用は「特殊から一般へ」と進展させること が重要である。すなわち、病状や障害といった尖端的な特殊事例から新たな知見を生み出 し、それらの知見から一般事項へ慎重に論を展開する方法である。第2に健常者を対象と した研究の場合、後方視的研究では脳認知発達の因果関係を追求することができないため、 脳イメージング技術を用いた前方視的集団追跡研究(コホート研究)が最重要であるとい うことである。 また、研究を行う際の留意点は次の通りである。まず、人間を対象にした研究が実施で きない場合は、動物実験に頼らざるをえない。その場合は、ヒトに最も近い霊長類を対象 にするのが好ましく、例えば「代表的なゲッパ類であるマウスやラットの実験から、人間 に直接言及するのは距離が大きすぎることを常に留意する必要がある」(小泉2010,28頁)。 次いで、ライフサイエンスの分野ではゲノムを共通言語にして、分子、細胞、組織、個体、 生態系等といった各階層を縦断して貫く「統合的」な方法論による研究活動が重要である。 教育への応用を検討するのであれば、分子、細胞、組織のレベルにおける知見は個体レベ ルにまで統合される必要があることに注意しなければならない。 5.「脳科学と教育」研究における社会科学技術の将来予測 第2期科学技術基本計画に基づき、平成13(2001)年に総合科学技術会議がまとめた 「分野別推進戦略」において、ポストゲノム研究の推進が強く打ち出されたこと等により、 当時の脳科学は重点項目から外れ「危機」に瀕していた(甘利,2006)。そのため、科学 研究に関連した大規模なプログラムやプロジェクトが行われることはなかったものの、前 節で述べた通り、「脳科学と教育」研究は新しい研究領域として著しい発展を遂げた。そ の他にも「脳科学&XYZ」という異分野の融合・架橋による新たな研究領域、例えば、神 経経済学や神経倫理学、ニューロリハビリテーションなどが萌芽期を迎え展開されてきた。 この時期の特徴は従来の「科学技術」ではなく「社会技術」という概念が使われ始めた ことにある。「社会技術」とは「人間や社会のための科学技術」という意味であり、課題 解決型研究開発を中心に目的志向の研究開発を通して基礎研究の未開拓部分を明らかに し、両者を並行させて研究することを指す。平成13(2001)年3月に閣議決定された第2 期科学技術基本計画では、第1期よりも社会とのつながりを強調しており、「社会のため の、社会の中の科学技術」という認識の下、科学技術と社会とのコミュニケーションを確 立することを要請した。先述した通り、(独)科学技術振興機構は、2001年度から社会技 術研究推進事業を発足させた。近年では、研究開発の結果が社会で実際に使えることを具 体的に確認する「社会実装」までが目標とされる。したがって、より一層の社会貢献を脳

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科学が請け負うことを強く求められるようになってきた。平成18(2006)年3月に閣議決 定された第3期科学技術基本計画でも「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」 を指向しているように、この動向はより強化されていくことが予想される。 第3期科学技術基本計画や学術界の動向等を踏まえ、総合科学技術会議がとりまとめた 「分野別推進戦略」では、「脳や免疫系等の高次複雑制御機構の解明など生命の統合的理解」 や「こころの発達と意思伝達機構並びにそれらの障害の解明」等が、ライフサイエンス分 野の重要な研究開発課題(5年間に政府が取り組むべき重要な課題)に選定されることに なった。また、文部科学省は平成18(2006)年12月に研究振興局長の下に「脳科学研究の 推進に関する懇談会」を設置し、今後の脳科学研究の在り方について政策文書⑬をまとめ、 脳科学は新たな展開を迎えるようになる14 政策文書⑬では、人の心の理解を共通基盤とし、人文・社会科学分野の研究の多くが脳 科学に向かいつつあることを踏まえ、それら「新しい人間の科学」(総合的人間科学)の 創出が、科学の枠組みを変える可能性を秘めていることを前面に押し出している。そして、 ゲノムから、細胞・脳・免疫系などより複雑で高次の機能を統合的に研究し、基礎研究成 果の臨床への橋渡しを重視するという従来の動向を踏まえながら、特に社会的要請や緊急 性が高いものについては戦略的に研究開発を行う旨が謳われた。これらはいずれも政策文 書⑦以降の動向と合致する。 また、重点的に推進すべき研究領域では、「脳を知る」「脳を守る」「脳を育む」の3領 域を引き続き設定するとともに新たに「脳に学ぶ」(脳内情報の解読と機器接続などに関 する応用技術、計算論的神経科学、脳型情報システムの開発)を設定した。「脳に学ぶ」 領域とは日本発の「脳を創れる程度に脳を知る」「脳を創ることによって脳を知る」とい う研究パラダイムを発展させたものである。各領域の根幹をなす「脳を知る」領域では 「社会的問題を解決するための科学的基盤」を学際的かつ融合的視点に立ちながら提供す ると明記され、ディシプリン志向ではなくイシュー志向の基礎科学が強調されている。ま た、同領域に「社会行動と心のメカニズムの脳科学的解明」が位置づけられており、社会 性の脳認知発達に対する社会的要請が強いことを窺い知ることができる。 「脳科学と教育」研究と最も密接に関係する「脳を育む」領域では少子化時代を迎え、 すべての子どもを健康に育みたいという点から、発生、発達やその障害に関する研究が重 点項目に挙げられた。特に「発達障害の予防あるいは治療」に加え、種々の脳機能発達の 感受性期(臨界期)の解明を通じて、適切な教育カリキュラム、教育時期などに関する指 針を与え、「科学的データに基づいた新しい教育理論の構築」を長期的目標に位置づけ (表8)、その達成に向けて短期的目標、中期的目標を設定したことに注目できる。

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この背景には、当然のことながら、2000年以降の「脳科学と教育」研究の蓄積がある。 1990年代の政策文書に見られた希望的観測による脳科学の教育への応用は、政策文書⑬に おいて、むしろ、教育の脳科学(Educational neuroscience)として直接的に教育問題に 貢献できるという具体的な見通しが立てられ、検討されるようになった。科学技術・学術 審議会が平成21(2009)年にまとめた政策文書⑭でも政策文書⑬を踏襲し、「社会に貢献 する脳科学」の実現を目指す重点的な研究領域に「脳と社会・教育」を挙げ、社会性の脳 認知発達の研究をコホート研究によって長期的に推進していくことを挙げている15 政策文書⑬⑭で挙げられた研究目標・戦略は先述した小泉の考えとほぼ軌を一にする。 したがって、今後の研究では、教育現場と連携した調査・研究により、脳科学等における 成果の一端を社会に還元しつつ、さらに研究の推進を図ることが重要になる。また、脳科 学研究の成果は、社会への貢献に供されるまでに長い時間を要する傾向があることから、 脳科学研究の推進のためには、長期的かつ多様な研究が多面的に行われる体制の構築が望 ましいとされた16 教育現場への応用の推進を謳う一方で政策文書⑭は、基礎研究と社会への貢献を見据え た研究の間に大きなギャップが存在することも問題に挙げている。特に、脳科学研究に関 する不確かな知見が、検証されないまま広がることにより、あたかも真実のように扱われ る危険性も孕んでいると警鐘を鳴らす。ゲーム脳などの俗説が社会に流布されていた現状 に危機意識を感じた日本神経科学学会も「ヒト脳機能の非侵襲的研究」の倫理問題等に関 する指針を2009年に改訂し、対応してきた。 しかし、産業界(新エネルギー・産業技術総合開発機構・NTTデータ経営研究所)が 中心となり2008年にまとめた「脳科学の産業分野への展開に関する調査事業報告書」が指 摘する通り、研究者と産業界との間に科学的知見に関する無視できない認識のギャップが 存在し、研究成果の実用化が必ずしも円滑に進まない場合があることも事実である。すな わち、研究者が「科学的確からしさ」を高め、「背景となるメカニズム」を解明すること を一義的に追求するのに対し、科学の成果を応用する側では「結果が良ければ細かなメカ ニズムは問わない」という姿勢である。基礎研究と応用研究が同時並行で進められている ことから、教育現場においても同様の事態が窺えるわけであり、脳科学がもたらす長期的 表8:「脳を育む」領域の長期目標(政策文書⑬,17頁から転載) ・言語、コミュニケーション力等の社会能力発達の促進方法を明らかにし、教育カリキュラムの作 成等に応用する。 ・感受性期(臨界期)の終止を遅延あるいは阻止するメカニズムを解明し、成人における学習を促 進する方策を開発する。 ・種々の発達障害を予防する方法を開発し、発達障害のある子どもを大幅に減らす。 ・脳の発生・機能発達のメカニズムの解明に基づく、「胎児期から老年期に至るまでの教育理論」 を提唱する。

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なリスク評価等にまで踏み込んだ基礎研究と応用研究の「橋渡し的研究」の重点的な推進 方策が求められる。 「橋渡し的研究」への希求は、脳科学を始めその他の科学分野でも同様の傾向が見受け られる。もはや科学は社会と切り離されず、現代社会における社会問題の解決のみに留ま るものではない。近年では、目指すべき社会の姿や社会のニーズを導き出し、そこで求め られる科学技術はなにか、を導き出す調査研究が実施され始めている。その代表例に科学 技術政策研究所の「イノベーション創出シナリオの作成等のための調査研究」がある。そ の調査研究では「科学技術の中長期的発展に係る俯瞰的予測調査」(2003年度∼04年度に 実施・報告)の結果をもとに、デルファイ調査とシナリオライティングの手法を組み合わ せた専門家の議論により、2025年の社会の姿(というニーズ)を描き出している。 シナリオに描かれた一分野に「『脳科学』の進展による生活者の活動支援」があり、そ の中に「生活者の活動支援の姿―教育・学習・日常生活の高度化―」が位置づけられた。 それによれば、2025年の社会像としては「寛容な社会」「人生での選択の可能性が多重に なっている社会」「子供たちが心身ともに健全に育つ社会」「信頼できる衣食住を選択でき て病気になりにくい社会」が到来するという。その社会では「教育・学習システムの充実」 が図られており、「多様性を認めた教育により、世界的に高いレベルの学力水準を達成し ている」「子供が子供らしく育つことができる社会になっている」「外部脳活用によって洞 察・創造や意思疎通が効率化していく」ことが予測されている。すなわち、健全な脳機能 発達を促すメディアや外部脳機能システムという社会技術の開発により、子どもの適性を 早期に発見して得意分野の能力を伸ばすテーラーメード型の教育が実現される。このシナ リオは現在の科学技術の「シーズ」をもとに描かれたものであり、空想ではない。実現可 能性は差し置いたとしても、科学技術関連の専門家がこのような将来像を見据えているこ とは間違いない。したがって、教育学はこれをどのように捉え、脳科学との関係を築いて いくのかを検討する必要がある。 6.結論 考察の結果、明らかになった日本における脳科学の政策意図は次の通りである。まず第 1は「ディシプリン志向」から「イシュー志向」への転換である。社会への応用をそれほ ど重視しない自然科学の一分野であった脳科学は「社会問題を解決するための科学的基盤」 として位置づけられ、異分野との架橋・融合を図る総合的人間科学の色彩を強めてきた。 第2のポイントは、それらの動向を受け、「脳科学と教育」研究が新しい研究領域として 創出され、希望的観測による「脳科学の応用」から、教育問題に直接貢献するための「教 育の脳科学」へと転換されたことにある。その際に「環学性」という概念に基づきながら、 異分野が同じ場を共有できるプラットホームを形成してきた小泉の貢献は大きい。そして、 「イシュー志向」の高まりにつれて、現代社会における社会問題の解決をはじめとする

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「近視眼的な科学技術の発展・予測」ではなく目指すべき社会の姿(というニーズ)から これからの科学技術を考える「遠視眼的な科学技術の発展・予測」へ転換した点が第3の 特徴である。 日本の脳科学の研究史を読み解くと、予算の総額では欧米には太刀打ちできないものの、 「脳科学をどう構想するか、ヒトを理解するための科学としてゲノムからシステム、情報、 さらに教育から心まで広がる大きな構想を示すこと」で理念的にアメリカをリードしてき た(甘利2006,436頁)。だが、教育への応用を巡るこれまでの動向を鑑みれば、脳科学の 側から教育学への歩み寄りがあったと言えるが、特別支援教育を除き教育学から脳科学に 歩み寄る姿勢は決して強くない。 近年、行為の中の省察に基づく反省的実践家モデルが提唱され(Shon,1983=訳2001)、 教育学もそのモデルを積極的に受容してきた。このモデルは技術的合理性に基づく技術的 熟達者モデルの批判から構築されたものである。脳科学は技術的合理性と親和的であり、 基礎研究の成果を社会で応用できるところまで発展させようとする「社会実装」の概念は その典型例である。確かに反省的実践家モデルが主張するように、教育を議論する際に技 術的合理性のみを強調することは望ましくない。しかし、脳科学等による新たな科学技術 が開発されてきている昨今の現状を踏まえれば、それを排して教育学が議論を深めること も望ましくない。さらに、将来の目指すべき社会像を描きながら科学技術の開発が行われ 始めており、それらが社会に与える影響は非常に大きいことが予想される。したがって、 従来から社会と密接に関わりながら発展してきた教育学は新たな科学技術の受容のあり方 に関して理論構築していく必要がある。特に、教育という制度の中で脳科学をどのように 適用するのかという点について、将来、目指すべき社会像を見据えた規範的な実証研究を 積み重ねることが重要になると考える。この点が今後の課題である。 日本学術会議では毎年、外国に派遣団を送り、国際交流を行っている。1994年から1997年の3 年間、日本学術会議会長を務めた伊藤は1994年に自らが団長となりロンドンを訪れ、英国にお ける科学技術行政の激しい流れに目を見張ったという。基礎研究に優れながらも応用研究に乏 しい英国と、逆に応用研究に優れながらも基礎研究に乏しい日本で事情は異なったものの、両 者をバランスよく推進していく、「戦略研究」の必要性をその国際交流で認識したという経緯が ある(大熊編2005,295頁)。 政府レベルでの進展と並行して、草の根的な活動をした「脳の世紀推進会議」の役割も大きい。

米国は1990年7月に米上院で「脳の10年」(Decade of the Brain)の決議を行い、国を挙げて脳 科学を推進させ始めていた。その国際動向にも関わらず、何も動かない日本の現状に危機感を 覚えた当時の文部省の幾つかの特定研究班の代表者が中心となり呼びかけ、関心を持つ人が参 加したのが「脳の世紀推進会議」である。当時はまったくの任意組織(2004年以降、特定非営 利活動法人)で、一般に向けて脳科学の重要性を訴え、成果を伝え、社会の脳科学への理解を

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