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腎炎症例研究 26 巻 2010 年 着を一部に認める 糸球体病変はメサンギウ ム細胞 基質の軽度増加を認めた 毛細管係 蹄の変化を認めず 尿細管炎を認め 間質は 混合性の細胞浸潤があり 一部に線維化を伴 う 2 回目 最終発作から 6 ヶ月後 24 個中 14 個で糸球体硬化像を認めた 硬化 を伴

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症  例

症 例:初診時14歳11か月女児 主 訴:繰り返す発熱,腹痛,腰痛 妊娠分娩歴:妊娠経過に異常なし,40週頭 位自然分娩 3200g 身長51.5cm 頭囲34.0cm 発育発達歴:特記事項なし 家族歴:父が中学時代に気管支喘息,兄弟姉 妹7人全員アレルギー疾患あり(8人中第3子) 既往歴:2歳3か月~気管支喘息,現在内服 なし。アトピー性皮膚炎あり。 食物アレルギー:卵,キウイ,バナナ,桃, マンゴー,パイナップル,ナス,海老,日本そば 現病歴:13歳8 ヵ月から腹痛・腰痛を伴う発 熱発作を繰り返していた。最初の発作時から尿 所見異常があり,5回目の発作時に当院紹介さ れた。 発作の特徴: ◦ 発熱期間は7 ~ 9日 ◦ 発熱は38℃以上でしばしば39℃以上になる。 ◦ 発作開始とほぼ同時に腹痛,胸痛,腰痛が起 こる。痛みは強く,解熱鎮痛薬の他に,ひど い時はペンタゾシン注射を一日4回必要とす る。腹膜刺激症状はない。痛みの部位は同一 発作内でも移動することがあり,背部叩打痛 を伴うこともある。 ◦ 抗菌薬(CEZ,CMZ,CTX,LVFX)治療に は反応しない。 ◦ 3回目の発作以降は1 ヵ月に1回の頻度で発 作が起こっている。 ◦ 血液検査で好中球優位の白血球数増加,CRP 上昇,赤沈亢進,血小板数軽度減少,クレア チニンの上昇,アルブミンの低下,尿所見で 赤血球円柱,β2MG高値などを認める。 ◦ 発熱中に月経が始まることが多い。 ◦ 7回目の発作は1回目腎生検の後に起こり, 月経とは無関係であった。 検査結果 ◦ 腹部CT:異常なし ◦ 骨盤腔MRI:異常なし ◦ 腹部エコー,心エコー:異常なし ◦ 尿培養:一度だけS.epidermidis陽性 ◦ 血液培養:陰性 ◦ レノグラム:異常なし ◦ VCG:膀胱尿管逆流症なし ◦ ガリウムシンチ:(発作時)異常集積なし ◦ DMSAシンチ:左腎優位に両腎上極集積低 下。腎接取率 右14.3% 左14.3% ◦ 眼科:ぶどう膜炎なし ◦ 産科エコー:異常なし ◦ 周期性発熱の遺伝子検索(京都大学):家族 性地中海熱の遺伝子異常なし 腎組織所見のまとめ ◦ 1回目(発作終了の7日後)   生検時に腎周囲に血腫ができたために,穿刺 を中断せざるを得ず,標本中に視認できた糸 球体は3個であった。   硬化糸球体は認めないが,ボウマン嚢との癒

周期的発熱発作毎に赤血球円柱,

尿細管障害,腎機能低下をみた女児例

石 川 順 一

1

  鹿 間 芳 明

1

  高 橋 英 彦

1

赤 城 邦 彦

1

  五 味   淳

2

  田 中 水 緒

2

田 中 祐 吉

2

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着を一部に認める。糸球体病変はメサンギウ ム細胞・基質の軽度増加を認めた。毛細管係 蹄の変化を認めず。尿細管炎を認め,間質は 混合性の細胞浸潤があり,一部に線維化を伴 う。 ◦ 2回目(最終発作から6 ヶ月後)   24個中14個で糸球体硬化像を認めた。硬化 を伴わない糸球体ではメサンギウム細胞の増 殖を軽度認めた。   間質にはリンパ球主体の細胞浸潤を認め,一 部で線維化を伴っていた。   電顕では上皮下とメサンギウム領域にdense depositを認めた。 図1 発作時経過 総蛋白 7.1 g/dl アルブミン 3.4 g/dl 尿素窒素 14.6 mg/dl クレアチニン 0.73 mg/dl 尿酸 5.7 mg/dl シスタチンC 0.63 mg/l T-Cho 234 mg/dl TG 189 mg/dl CRP 0.45 mg/dl CA125 11.7 U/ml (<35) CIC(C1q) <0.1 抗核抗体 80 倍 (speckled) 抗ds-RNA抗体 10 IU/ml 未満 抗RNP抗体 7 U/ml以下 抗SS-A抗体 7 U/ml以下 抗SS-B抗体 7 U/ml以下 PR3-ANCA 10 EU未満 MPO-ANCA 10 EU未満 IgG 1360 mg/dl IgA 350 mg/dl IgM 247 mg/dl IgE 1030 IU/ml IgD 44.1 mg/dl (<9) C3 140 mg/dl C4 32 mg/dl CH50 53 /ml フェリチン 56 ng/ml β2MG 2.6 mg/l HBs抗原 陰性 HCV抗体 陰性 梅毒TP抗体 陰性 pH 6.5 蛋白 4+ 潜血 1+ 赤血球 5-9 /毎 硝子円柱 30-49 /全 顆粒円柱 20-29 /全 上皮円柱 10-19 /全 蛋白 363 mg/dl クレアチニン 181.75 mg/dl NAG 26.2 U/l β2MG 826 μg/l Fishberg濃縮 比重 1.024 最大浸透圧 716 mosm/l PSP排泄15分 15.7 % PSP排泄120分 52.7 % 血圧 収縮期 136 mmHg 拡張期 88 mmHg 最近の血液検査・尿検査結果(非発作時)

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図2 臨床経過 図3 1回目生検 図4 2回目生検 図5 2回目生検    図6 2回目生検 図7 1回目生検 IgG C3

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図8 2回目生検 図9 図10 2回目生検 図11 2回目生検

まとめ

月経周期毎に周期的に発熱・腹痛発作を繰り 返している一例を経験した。発作時には赤血球 円柱や尿細管障害,腎機能低下を伴い,著明な 炎症反応を呈し,抗生剤は臨床的に無効であっ た。発熱発作はコルヒチンの効果なく,低用量 ピルによって8 ヵ月間抑制されているが,非発 作時にも尿蛋白と尿潜血陽性は持続し,CRPも 弱陽性が続いている。 鑑別診断として周期性発熱症候群や膜性腎症 などが挙げられるが,いずれにせよ非典型的な 経過であり,診断と今後の治療方針の決定に苦 慮している。

疑問点

1. 糸球体病変と間質性病変を一元的に説明し うるのか? 2. 診断は何か? 3. 今後の治療方針は? IgG C3

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討  論

座長 まずは,「周期的発熱発作毎に赤血球円 柱,尿細管障害,腎機能低下をみた女児例」。 神奈川県立こども医療センター,石川順一先生, よろしくお願いします。 石川 よろしくお願いします。  症例は,当院初診時に14歳11カ月の女児で す。主訴は,繰り返す発熱,腹痛,腰痛です。 妊娠分娩歴,出生歴に特に異常はありませんで した。発育発達にも特に異常はありません。家 族歴としましては,父が中学時代に気管支喘息 があったということと,この方は8人きょうだ いなのですけれども,8人きょうだいの全員が アレルギー疾患,アトピーなり,喘息なりがあっ たということです。  ご本人も2歳3カ月ごろから喘息,それから アトピー性皮膚炎があったということですが, 特に現在内服は行っておりません。食物アレル ギーは示すようにかなりたくさんありまして, アナフィラキシーなどもあったということなの ですけれども,それ以外特にありませんでした。  現病歴としては短いのですけれども,13歳8 カ月から腹痛,腰痛を伴う発熱発作を繰り返し ていまして,5回目の発作時に当院紹介となっ ています。  発作の特徴を簡単に文字で示します。発熱期 間は1週間から9日ぐらい。発熱は38℃以上で, しばしば39℃以上になります。この腹痛,胸痛, 腰痛なのですけれども,発熱とほぼ同時に起こ りまして,非常に強い痛みを訴えまして,ひど いときにはペンタゾシンの注射を1日4回必要 としました。腹膜刺激症状はそれほど強くない のですけれども,痛みの部位というのは,同一 発作期間内でも移動することがありまして,と きに背部叩打痛を伴いました。  3回目の発作以降は,1カ月に1回の頻度で発 作が起こっています。血液検査では,後に示し ますけれども,白血球の上昇,CRPの上昇,血 小板の減少や,クレアチニンの上昇,それから アルブミンの低下を認めまして,尿所見では赤 血球円柱や,β2MGの高値を認めました。発 熱中に月経が始まる,もしくは月経が始まって から発熱発作が起こることが多かったというふ うに記録されています。  簡単に検査結果を示します。これは5回目の 発作,当院初診時の発作のときですけれども, 発熱発作は,トータルで9日間起こりました。 痛みはそのうち6日,もしくは7日起こっており まして,途中,5日目に月経が開始しています。  治療としましては,当初は細菌感染を疑いま して抗生剤を投与されていますけれども,特に 抗生剤が効いた印象はありませんでした。白 血球は示しましたように最大で16000,血小板 がもともと40万ぐらいあるお子さんなのです けれども,17万まで下がりました。そのほか CRPの上昇,それからBUNはあまり動かない のですけれども,もともと0.6ぐらいのクレア チニンが0.8まで少し上がる。それから,アル ブミンが,4.1ぐらいあったのが,最低で3.1ま で下がるということがありました。尿蛋白は ずっと(2+)で陽性でして,尿中のβ2MGは, 2月の6日の時点で,この単位はμg/Lなのです けれども,尿中β2MGは発作5日目で最高値 を示しまして,その後108まですっと下がって いるという経過です。  全体の臨床結果を示します。グラフの左軸が 血清のクレアチニン,右のほうにCRPと,尿 中の蛋白/クレアチニン比を出しています。こ この数字は発作の回数です。1回目から8回目 まで発作が起こっています。当初,発作のたび にCRP,血清クレアチニンの上昇を認めまし て,特に血清クレアチニンは発作のたびに徐々 に上がっていきまして,もともと0.5前後だっ たものが,最終的には0.7前後まで上がってき ています。それと同時に,尿中蛋白/クレアチ ニン比もじわじわ上がりまして,最大3強まで 上がりました。それからじわじわ下がっていっ ています。  何らかの周期性発熱を疑いまして,コルヒチ

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ンを内服しましたけれども,特に効果がなく, 発作が起こるということでした。  それから,月経周期に関連しているのかも しれないということで,低用量ピルを7回目の 発作の後に始めたところ,その後8回目の発作 が1回起こったきり,その後8カ月間ずっと発 作が起こっていないという状態で,現在コント ロールされています。7回目の発作だけは月経 周期と関係なくて,1回目の腎生検の後すぐ2 日後に7回目の発作が起こっています。1回目 の腎生検で充分な糸球体が取れませんでしたの で,8 ヵ月後に2回目の腎生検を行いました。  非発作時,特に最近の血液,尿検査を示しま す。クレアチニンが0.7とやや高値であること。 それから,自己抗体としましては,抗核抗体が 80倍と高いのですけれども,そのほかの自己 抗体は陰性でした。グロブリンでは,IgE,IgD が高い値を示していました。Fishberg濃縮試験, それから,PSP排泄ではFishbergでやや濃縮能 低下,PSPの排泄遅延ということで,腎尿細管 機能低下がみられました。HBは陰性でした。  本人の身体所見としましては,非発作時は血 圧が136/88とやや高い状態です。そのほか日光 過敏でありますとか,皮疹でありますとか,そ のほかの所見は全くありませんでした。  非発作時の尿所見でも,蛋白陽性,顕微鏡的 血尿,蛋白/クレアチニン比が2以上,β2MG も軽度高値がずっと続いています。  これは前の病院で撮られたレノグラム,それ から尿路造影なのですけれども,レノグラムは 特に大きな異常はありませんで,膀胱尿管逆流 症もありませんでした。  当院で撮りましたDMSAシンチでは,左腎 有意に両腎上極にやや集積低下がありまして, 腎摂取率は左右とも14.3%で軽度機能低下が疑 われました。ただ,ガリウムシンチでは特に異 常集積はありませんでした。  そのほかの検査としましては,CT,MRIで も特に異常はありません。エコーも異常あり ませんでした。尿培養は1度だけ,2回目の発 作のときに表皮ブドウ球菌が出ていますけれど も,それ以降は尿培養も陰性です。腎生検は2 回行いました。それから眼科でも特に大きな異 常はないというふうに報告されました。  現在,京都大学で周期性発熱症の遺伝子検査 を依頼しているところです。  1回目の腎生検では得られた糸球体の数が, 先ほど言いましたように少なく,観察するに 足る十分な糸球体が得られませんでしたので, PAMとPASだけ今回は示しています。間質の 炎症細胞そのものが非常に多くて,間質性腎炎 が疑われました。そのほか,矢印で示しました けれども,ボウマン嚢の癒着を一部に認めまし た。それからmesangium基質も軽度増加という ことでした。  2回目の腎生検標本では,左側の弱拡で糸球 体の硬化像を多数認めました。実際に確認さ れた24個の糸球体のうち,全節性に硬化して いたのが14個と多くの糸球体硬化を認めまし た。また,間質性の炎症細胞浸潤もありまし た。特に間質の炎症細胞浸潤は,硬化した浸潤 周囲に多く認められる炎症でして,右側に硬化 していない糸球体の拡大を示しますけれども, mesangiumの増加はそれほど強くなく,また, 間質の尿細管の数が多少減っている,一部に線 維化を伴っているということでした。  2回 目 腎 生 検 の 硬 化 し て い な い と こ ろ の PAM,PASです。ほぼ正常に見える部分の糸球 体でして,mesangiumの軽度増加という所見で した。  別の糸球体のMasson,PAMなのですけれど も,Massonのほうでややdepositを認めました。  ちょっとすみません,これは11月にやったので 病理の先生に渡っていないので申し訳ないので すけれども,蛍光のほうです。蛍光免疫性,蛍 光で1回目の腎生検なのですけれども,C3で顆 粒状に染まっているという所見が出ていました。  それから2回目の腎生検では,IgGがfocalに 染まっていまして,C3では1回目と同様に顆粒 状に染まっているということでした。

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 ほかの所見でも示しますように,IgAもはっ きりした陽性ではなくて,C1qもfocalというこ とで,はっきりした陽性ではないということを 言われました。  電顕です。これは2回目の腎生検の電顕です けれども,上皮下,それからmesangium領域に depositを認めました。このような所見から,電 顕からは膜性腎症も疑われました。  ここに示しますように,2回目の腎生検は, 同 様 に 上 皮 下, そ れ か らmesangium領 域 に depositを認めていました。  腎組織所見をまとめますと,1回目の所見で は硬化糸球体はないけれども,ボウマン嚢との 癒着を一部に認める。それから,糸球体病変は mesangium細胞・基質の軽度増加を認めました。 毛細管係蹄の変化は認めませんでした。尿細管 炎を認めまして,間質は混合性の細胞浸潤,一 部に線維化があるということでした。  2回目は,示しましたように24個中14個で 糸球体硬化像がありまして,硬化を伴わない糸 球体ではmesangium細胞の増殖を軽度認めまし た。間質にはリンパ球主体の細胞浸潤を認めま して,一部に線維化を伴っていました。電顕で は,上皮下,mesangium領域にdense depositを 認めました。  症例を簡単にまとめますと,周期性発熱に腎 病変を合併している1症例です。2回目の腎生 検で電顕上は膜性腎症が考えやすいのですけれ ども,1回目の腎生検で間質性病変が目立つ, それから8カ月で半数以上の糸球体硬化を認め まして腎病変の進行が非常に早いということ, それから糸球体硬化は全節性であるということ など,通常の膜性腎症とは少し異なっていると いう所見でした。  最後に,抄録にも書いてありますけれども, 今回の疑問点としましては,糸球体病変,それ から,間質性病変を一元的に説明し得るような 診断はないかということと,今後の治療方針を どうしていったらいいかということを教えてい ただきたく,今回提示させていただきました。 よろしくお願いします。 座長 ありがとうございました。ただ今のご発 表に対しまして,ご質問,よろしくお願いします。 守矢 湘南厚木病院,腎臓内科の守矢です。2 点お聞きしたいのですけれども,1点目は, ちょっと聞き逃したかもしれませんが,血液培 養等の培養の検査はやられているかということ が1点と。あともう1点は,感染,CRP炎症を 伴うという点でちょっと違うかなと思うのです が,小児で,腹痛で,発作でということで,急 性の間欠性ポルフィリン症といったものもある のかなと思って。ただ,そのときは,あまり炎 症熱を伴わないかなと思ったので,そこらへん の検査,酵素等をチェックされているか。その 培養の検査と,間欠性ポルフィリンの可能性に ついてお聞きしたいのです。 石川 ありがとうございました。培養の検査は, 示しましたように1回,前医で,表皮ブドウ球 菌が尿中で出ただけで血培はすべて陰性です。  ポルフィリンに関しては,実は検索はしてい ません。全く検索していないので,今回は分か らないです。 守矢 はい。ありがとうございます。 原 虎の門病院の原です。私も異型ポルフィリ ン症を考えたほうがいいのかなというので,も し機会があったらポルフィリンを見られたらと。  私はもうずいぶん前ですが,異型ポルフィリ ン症を経験し,リウマチ学会で報告しています。 炎症所見が時々出て,最終的な腎生検の所見で は,慢性炎症から最終的に二次性のamyloidosis になっていました。そういった症例を経験して いたものですから,intermittentの発熱と腹痛と いうことで,ポルフィリンではないのかなとい うので,さっきの先生と同じ質問をさせていた だきました。 座長 ありがとうございました。 森田 藤が丘の森田と申しますけれども,小児 科の先生に対してちょっと門外漢が失礼な質問 かもしれませんけれども。周期的発熱を繰り返 すというと,まず真っ先に地中海熱はどうかと

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いうことを思ったのです。  そうすると,コルヒチンを投与して発作が起 きてしまったというようなことがプレゼンであっ たので可能性は低いと思いますけれども,結局, 教科書的にはamyloidosisで,それで生命予後も 規定されるし,もちろん腎臓にamyloidosisが来 ればネフローゼとか,恐らく腎不全になるのでは ないかというふうに思うのです。  この症例で,結構,全周性に糸球体がやられ ているものが数十パーセントあったと思うので すけれども,amyloidという観点から見て,そ れを示唆するような病状がなかったかというこ とと。それから,臨床的に,どこかでamyloid を示唆するような所見があったかどうか。その 2点について教えてください。 石川 まず,地中海熱に関しましては,ちょっ と病型,熱型が少し違うかなということでわれ われは考えています。家族歴なども特にありま せんし,この子は先ほど示しましたように8人 きょうだいで,ほかのきょうだいに全くこのよ うな症状がないということも家族歴からも否定 的ですし,熱型そのものが,7日から1週間以 上も続くという熱型からも少し,典型的な地中 海熱とは違うような印象があります。  amyloidに関しては,特に病理医のほうでは amyloidという印象はないというふうなことは 言われているのですけれども。 森田 どうもありがとうございました。 平和 横浜市大の市民総合医療センターの平和 です。非常に興味深い症例をありがとうござい ました。  幾つかちょっと病歴を含めてお話をうかがい たいのですが,先生は治療,あるいは経過表に おいて,月経周期と痛み,腹痛,腰痛などが関 係しているのではないかというようなことを示 唆するようなこと,それからピルが効いている ようなことから,月経周期が関係するのではな いかというふうにお考えになっているというこ とで,よろしいでしょうか。 石川 そうです。ほかに,それがなぜか,われ われとしても取りあえずピルを試してみようか というかたちで試したら,意外と効いてしまっ たという印象です。 平和 そうしますと,この子は14歳で病院に いらっしゃったみたいだと思うのですが,初潮 年齢とか,あるいは月経周期はどうだったので しょうか。 石川 初潮年齢が確か,うかがった話では11歳 というふうに聞いています。ただ,周期は具体 的には聞いていないのですけれども,この3回 目以降の発作は,月1回,ほとんど月経と一致 して起こっていますので,そのあたりは周期は 特に問題なかったというふうに思っています。 平和 つまり,臨床的には月経周期と関係あり そうということですね。 石川 ありそうだという印象が最初,ありました。 平和 それから,この方は家族歴ではかなりア レルギーが強いように感じるのですけれども,こ の発症と,好酸球なり,IgEなどの変化というのは, 何かリンクするものがあるのでしょうか。 石川 すみません,今回それは,Eosino,もしく はIgEの経時的な変化を実はあまりフォローして いませんので,発症そのものと,IgEが関わって いるかどうかは,今回調べられていません。 平和 それとあと,腎臓に関してなのですが, この方はもともと腎臓が悪くなくて,発作を起 こすとクレアチニンが上がるという経過を取ら れているようなのですけれども,病歴をうか がっていたときに,かなり痛み止めを使われて いる様でした。大量の痛み止めを使わないとど うにもならないということですので,やはりこ れは,痛み止め,NSAIDを含めて,薬剤に伴 う腎障害を考える必要はないでしょうか。特に 尿細管・間質障害が強かったようですし,尿細 管マーカーも上がっていたようですので,腎機 能障害は実は二次的なものなどということはな いのでしょうか。 石川 確かにわれわれは,それも一つ可能性と しては考えたのですけれども,やはり最初の, 1回目,2回目のときも見ていただいたように,

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発作が起こっているときもクレアチニンが上 がっているのですけれども,このときはほとん ど痛み止めを使っていないのです。そのときに もクレアチニンの値が上がっているということ からも,やはり疾患特異性のものではないかな というふうに,病歴からは考えています。  ただ,それを,痛み止めが原因ではないとは ちょっと言い切れないかもしれません。 平和 痛いときは,食事を取らなくてたぶん脱 水になるのではないかなということを考えるも のですから,そういうことも念頭にお考えいた だければと思いました。  ありがとうございました。 鎌田 よろしいですか。臨床的なことを何点か 教えてください。この発熱時にCPKが上昇す るとか,ミオグロビン尿が起こったとか,そう いうことは確認されていますか。 石川 それはないです。CKは全然上がりませ んでした。  ただ,潜血はちょっと月経周期とちょうど同時 になってしまうので,どうしても尿潜血は陽性に なってしまうのですけれども。ただ,この子の尿 潜血は発作間欠期にも陽性が出ますので。 鎌田 前の平和先生の質問とも関係があるので すが,痛み止めに対するDLSTはおやりになっ ていますでしょうか。 石川 それはやっていません。 鎌田 はい。ありがとうございました。 赤城 共同演者の赤城なのですけれども,一つ。 先ほど地中海熱はどうだということがありまし たけれども,一応,遺伝子検査のほうで,既知 の地中海熱に対する遺伝子は見つかっていない という状況があります。  それから,発作が起こって痛み止めを使う前 から尿中のβ2MGが上がったりとか,赤血球 円柱が上がるというような状況がありますの で,クレアチニンの上昇の一部に若干そういう NSAIDsが絡んでいるかという感じもするので すけれども,その前に病態として腎機能障害が 起こっているのだろうと想定しております。  以上です。 座長 ほかにございますでしょうか。では私から。  臨床経過で,非常に低用量のピルが効いてい ますので,やはり,症状自体も月経前症候群の 範疇に入ってくるのかなという症状もうかがえ ますし,婦人科的な子宮内膜症であるとか,器 質的疾患ということの精査というのはどうなの でしょうか。 石川 当院の婦人科の先生でもかなりそのへん は協議しまして,最初は子宮内膜症の関連もあ るのではないかというふうにいろいろ探したの ですけれども,画像は示していないのですけれ ども,MRI,CTでは特に基質的な疾患はあり ませんでした。  もちろん子宮内膜症の最終的な診断は腹腔鏡 をしなければいけないという話もあるのですけ れども,さすがにこの子にはそれができていま せんので,そういう意味では否定はしていませ んけれども,子宮内膜症のときに発作的にCRP が上がるでありますとか,腎機能が変わるであ るとか,あまりそういう報告もありませんから, そういう関係はないのではないかと思います。  ただ,ピルで抑えられたというのは何らかの 関係はあるのかもしれませんけれども,そのへ んはまだ分かりません。 座長 ほかにありますでしょうか。この症状が 一元的に説明ができるのかどうかというのは, ちょっと難しいところだと思うのですけれども。 村上 横浜私立大学市民総合医療センターの病 理の村上です。ちょっと縁がありましてこの症 例の標本を見させていただきました。気になっ た点は,電顕で膜性腎症パターンを示したり, あと,humpのような構造を示したりするのは確 かにあるのですけれども,範囲としてはすごく 狭くて,たぶん写真はいいところを撮られてい るのですけれども,たくさん撮られた中のごく ほんの一部分であったということは,病理の先 生にちょっとおうかがいしたい点であります。  あと,地中海熱についてなのですが,遺伝子 はnegativeということでよろしいのですか。そ

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うですか。   先 ほ ど,amyloidosisと の 関 連 と い う の も ありましたけれども,地中海熱は必ずしも amyloidosisという点で伴うわけではないような ので,間質性腎炎とか,糸球体腎炎とか,腎 炎パターンでくるのもあるということなので, ちょっと残念ですけれども,そういうものでも 矛盾はしないかなと少し考えてはおりました。 座長 ありがとうございました。ほかに何かご ざいますでしょうか。  そうしましたら,病理のほうに移らせていた だきます。山口先生,よろしくお願いいたします。 山口 われわれは,電顕のああいうものをいた だかなかったので,光顕だけの診断で,そうす るとちょっと難しいですよね。必ず,電顕とIF は,われわれのほうへ送っていただかないとわ れわれも診断できないので,よろしくお願いし たいと思います。  村上先生,僕のほうへ情報を送ってよ。 【スライド01】最初は,1回目の生検のとき はHEしか,1枚だけだったのです。それでは ちょっと分からないからと言って,送ってくれ と言ったらPASだけ送ってこられたのですが。 だいたいこんなものです。ちょっと難しいです が,つぶれた糸球体。確かに糸球体の数はそん なにないのですが,もう間質炎があって,髄質 のほうは,どうでしょうか,尿細管障害があっ て,何かいろいろありそうだったみたいなので すが,あまり大きな所見はないように思います。 【スライド02】ちょっと普通の糸球体が一部 crescenticになっていまして,あとはちょっと知ら ない顔をしている。それから,その周りにずいぶ ん単核球の細胞浸潤が目立っていますので,こ れが糸球体のcrescentに随伴した間質炎なのか, 間質性腎炎なのかというのは,このスライドから だけだと非常に難しいように思います。 【スライド03】1カ所,フィブリン様のものが 出ていまして,full moonに近い。こちらはPAS ですが,こちらはHEの標本で,やはりcrescent ができていることは間違いなようです。ですか ら,壊死性のfocalな腎炎があるということは 間違いないのではないでしょうか。 【スライド04】そういうようなことで,1枚目 は,間質炎が思ったより強いということと,一 応necrotizingなcrescenticな も の もfocalで す け れどもあるということだろうと思います。 【スライド05】次は,確かにあちこちで糸球体 がglobalにつぶれてしまって,感染は最初ほど 強くないようです。どちらかというと,少し尿 細管の委縮とか,線維化になってしまって,半 分ぐらいがglobal sclerosisに至っているという ことで,もしかしたら,そのcrescentをつくっ た糸球体がつぶれて,それが後にglobalになっ ているというふうに思われます。 【スライド06】こういうように,ちょっと流れ がありますけれども。それから,一部tuftが残っ て,fibrosなものに置き換わっているわけで, こちらはそんなに,変化が少ないです。このへ んの炎症は,やはり糸球体のつぶれ,あるいは 周囲の炎症でも説明できるぐらいかなというふ うに思います。 【スライド07】このつぶれた糸球体を見ますと, 確かにtuftの部分が二つに分かれている。そし てちょっとfibrousな領域が大きいので,やはり crescentがfibrosなものに置き換わってつぶれて きている。それからこういうところも血管腔が ところどころ残っているわけで,これも何かや はり糸球体炎でつぶれてきている可能性があり ます。  それから,部分的にこういうようにfibrous, crescentを思わせる所見で,こちらのほうはあま り変化がないわけで,浸出が起こって器質化し たというような病変のように思います。ボウマ ン嚢の基底膜もちょっと不明瞭になっています。 【スライド08】今のところの銀染色であります が,部分的なfibros crescentだろうということ です。 【スライド09】同じようなあれです。segmental に,昔,(★00:46:00 /一語不明,ヘルドネフ ライズ)といわれるような,何か最近,貧血症

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などがあって,部分的に(★00:46:11 /一語不 明,パスクライズ)を起こしてくる,その後を 見ているような印象なのです。もちろん電顕で, あるいはIFで,IgGとC3がだいぶついていま すので,ちょっとそれは考えづらいだろうと思 います。 【スライド10】こういうように少しfibrousに置 き換わって,古い糸球体炎の跡です。 【スライド11】それで,われわれはちょっと スパイク状のものは,ほとんど気が付かな かったです,正直言いまして。ただ,少し paramesangialにちょっとdeposit様のものがあ るということで,あまりmesangiumの反応がな いのですが,一応paramesangial depositがある ということです。 【スライド12】動脈には特に問題ないです。 【 ス ラ イ ド13】 そ の よ う な こ と で,focal

sclerosing crescenticで,paramesangial depositと いうようなことで,可能性としては,ANCAと か,HSPN。これは,腹痛があのぐらい繰り返 してもいいのかどうか分かりませんけれども, そういうようなものを一応考えていたのです が,先ほどの電顕とIFの所見からいうと,や はり何か感染に絡んだ腎炎といったものを考え るのが一番いいのではないでしょうか。  以上です。 座長 ありがとうございました。では,続きま して重松先生,よろしくお願いします。 重松 わたしもなかなかこの症例の背景をうまく 説明することができないのですけれども,まず, この発作的な発熱発作とか,腹痛とか,胸痛とか, それを聞くと血管炎症候群があるではないかと いう先入観みたいなもので見ていました。 【スライド01】それで,2回に標本が分かれて来 て,恐らく最初に見たのが2回目のbiopsyだと 思うのです。こういうふうに10個ぐらい糸球体 がありまして,2個が新鮮な半月体で,5個ぐら いはこういうふうにつぶれてしまった全節性硬 化みたいになっています。それから,かなり強 い間質の病変が混じった病変で,腎炎的な病変 を引きずっているという印象がありました。 【スライド02】それからもう一つは,こういう 一見何でもない糸球体でmesangiumの増殖があ ります。それからそのそばに感染,腎盂腎炎み たいな下部尿路からの感染を思わせるような病 変があるので,感染症も考えなくてはいけない というふうに思いました。 【スライド03】山口先生がお示しになったよう に,LöhnleinのHerd Nephritsみたいな感じで, 一部segmental sclerosisみたいになってボウマン 嚢に癒着している。あとの係蹄も少し硬化があ るのです。あまり管内増殖は目立たないという ことです。 【スライド04】PAS染色で巣状硬化巣がみえます。 【スライド05】これは,Massonで見たところで す。虚脱した係蹄がこう埋め込まれています。 【スライド06】これはPAMで見たところです。 ちょっとdeposit様のものがありますけれども, これはあまり有意に取っていいかどうかという ところです。 【スライド07】それから1個には,かなりactive なnecrotizingでcrescenticなnephritisがあって,こ こには管内増殖と,尿腔内へ遊走細胞が多数出 ています。これはかなりフレッシュな腎炎です。 【スライド08】これは腎炎性でglobal sclerosis になってしまったというところだと思います。 【スライド09】あとの残った二つの糸球体は, あまり強い病変はないということです。 【スライド10】それで,髄質のほうへいくと, かなりcastがあるのです。 【スライド11】そして,また戻ってきますけれ ども,これです。周りにもあるのだけれども, 有意の変化は,castを中心にして,遊走細胞が 有意に尿腔に出ているということです。細菌染 色などはちょっとできませんけれども,とにか く内腔へ尿路を上がってくるこういう所見は, やはり尿路感染というものを考えなければいけ ないだろうということです。  1回,尿の培養が陽性だったという既往があ りますので,この方の発熱というのは,これと

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は直接関係ないかもしれないけれども,腰痛な どというのはこういう問題が起こってくるし, 糸球体腎炎でも血尿が強いと,IgA腎症などは 特に血尿が強いと,それがコリックみたいな痛 みを出して腰痛になるということも記載にあり ますので,そういうものも考えなくてはいけな いと思いました。 【スライド12,13】これも同じところです。結 論的には1回目のIFはIgGがちょっと弱いのだ けれども,C3は有意に染まっていた。2回目は IgGもsegmentalに強くなって,C3が瀰漫性に陽 性であった。そして,電顕はちょっと局所的だ というお話もありましたけれども,やはりpureな membranous GNというよりも,むしろmesangial depositもあるし,hump様のやや多めのsubepithel depositもあるし,membraneにちっちゃなdeposit もあるということを総合すると,最初のIgA関 連の腎炎がちょっと可能性がないとしても, infectious global nephritisというものがこの方には 続いているのではないかと思います。  その原因がこういう尿路感染かどうか分かり ませんけれども,やはり何か感染巣を内在して いるのではないかということが総合的に見ると 示唆されるので,そういう面からもう一度臨床 像を検討していただけるといいかと思いました。  以上です。 座長 ありがとうございました。ただ今の臨床 のお話と,病理のほうの所見で何かご意見,ご 質問ありますでしょうか。 村上 横浜市大の村上です。好中球があったの で,感染はあったというお話をしたのですが, ないということでよろしいのですよね。 石川 そうですね。臨床的には抗生剤が全く効 かない印象なのです。抗生剤は,最初のころか なりいろいろ使ったのですけれども,ほとんど 効かない。6回目,7回目ぐらいはもうあきら めて抗生剤は使わなかったのですけれども,そ れでもほとんど発熱の期間が変わらないという のもありまして,あまり感染という印象はない です。臨床的には。 鎌田 重松先生に教えていただきたいのですけ れども,あの尿細管間質病変を,血管炎症候群 の尿細管間質性腎炎,ないしは薬剤性尿細管間 質性腎炎として,尿細管腔に入っている細胞も そのように考えることは難しいでしょうか。 重松 なかなか難しい質問なのですけれども, 病理のいろいろな検討から,アレルギー性の, 薬剤でもいいのですけれども,薬剤アレルギー 性の尿細管炎というのは,どうしてもターゲッ トが尿細管の上皮になることが多いのです。で すから,だいたい尿細管炎というかたちで起 こって,そして,上皮が剥離し,そして上皮下, 上皮の間にいっぱいリンパ球とマクロファージ 系統の細胞が出てくる,そういう反応を取るこ とが多いのです。  血管炎のほうは,どちらかというと,これ は血管炎というのがperitubular capillaryのほう から病変が始まってくることが多いのです。 それから,immune complexタイプは,やはり peritubular capillaryからimmune complexが間質 に出て,そして後追い様に遊走細胞が出てくる。 間質の変化がメインで,tublusの変化とか,上 皮の変化が強くない。  この例は間質の変化が結構ありますが,恐ら くわたしの考えでは,部分的にこういうふう に局所的に起こっていますから,これは尿路 感染症に一番多いタイプです。薬剤とかでは, diffuseに起こってくるというのが一般的です。 局所性に起こって,しかも好中球がかなり入っ ていて,そして間質から細胞が尿細管の中に 入ってくるというふうな反応を取っていますの で,すぐにこの薬剤性とか,アレルギー性とい うふうになかなかしにくいところがあると思い ます。 座長 ありがとうございます。 五味 神奈川県立こども医療センタ-病理科の 五味です。今回の症例に関して,事前に蛍光抗 体法の結果や電子顕微鏡写真をお送りすること ができておらず,諸先生方への情報が不十分で あり,討議に不備を生じたことを深くお詫び申

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し上げます。  今回,2回施行された腎生検の病理組織像に つきまして,当院での見解を中心に述べさせて いただきます。  腎生検組織検体では,2回目に施行された生 検組織検体中には糸球体が24個認められまし たが,初回生検組織検体中では確認できた糸球 体の数が合計で3個と少なく,初回では糸球体 病変の全体像を評価するのは困難と考えられま した。糸球体病変の初回および2回目の病理組 織像を厳密に比較するには限界があると考えら れます。尿細管間質では,初回,2回目の病理 組織像ともに尿細管の萎縮と,間質の線維化お よび単核細胞主体の巣状の炎症細胞浸潤像が認 められました。2回目の生検組織中,硬化した 糸球体が24個中14個と,約60 %に認められま した。初回の生検検体では,糸球体硬化像は認 められておりません。硬化を伴わない糸球体で は,明らかな半月体形成等を認めませんでした。 尿細管間質の変化が目立つ部位を中心に糸球体 硬化像が認められ,糸球体硬化は,主に尿細管 間質障害に伴い生じたと考えられました。  特殊染色では,Masson染色で糸球体基底膜 領域に沈着物が認められ,初回に比して2回目 で沈着物が目立つようになりました。PAM染 色では,2回目の生検検体のごく一部にspike様 構造が認められましたが,初回では明らかでは ありませんでした。蛍光抗体法では,初回・2 回目ともに,C3,C3dがメサンギウム領域で顆 粒状に陽性で,メサンギウム領域のごく一部に IgM陽性像を認めました。IgA,IgG,C1qおよ びフィブリノーゲンは陰性でした。C1qは,図 9で陽性と記載されておりますが,再度確認し た結果,陰性でした。電子顕微鏡像では,初回・ 2回目ともに上皮下と一部のメサンギウム領域 にdepositが認められ,少数ですが,hump様の 基底膜の外側にみられる瘤状のdepositもみら れました。2回目では,上皮下でのdepositが目 立つようになりました。糸球体硬化の成因には, 尿細管間質障害の原因は明らかでないものの, これに他の要素がoverlapしている可能性が考 えられました。  以上,病理組織像(H.E染色・特殊染色), 蛍光抗体法,電子顕微鏡像,および臨床像より, 膜性腎症を含めて鑑別診断が挙げられました が,確定診断にまでにいたりませんでした。今 回の症例では,周期的発熱を伴う,尿細管間質 障害を主とする腎障害が認められ,抗エストロ ゲンの使用で症状が軽快するという非常に稀な 臨床経過をたどっております。このような経過 より婦人科的な疾患が背景にあるようにも考え られます。子宮内膜症も考えられましたが,精 査の結果,明らかなものは確認されておりませ ん。もしも今回の症例に似た経験をされた先生 がいらっしゃれば,是非御教授をと考え,今回, このような症例提示をさせていただきました。 宜しく御願いを致します。 座長 ありがとうございました。どうぞ。 赤城 共同演者の赤城です。臨床での追加なの ですけれども,この人は低用量のピルを飲んで 発作自体は治まっているみたいなのですけれど も,CRPは絶対陰性化していないのです。いわ ゆる普通のバクテリアのinfectionとか,そうい うものによるperinephritisとか,そういうもの は恐らく考えなくていいのだと思うのです。  それ以外の膠原血症とか,そういうのは残っ ているかなというふうには見ています。  先ほど,最初は,間質病変が割と強いのか なというのがありまして,確かにperitubularの capillary,そこらあたりの病変とか,そういう のはどうなのだろうかという格好。  それから,global sclerosisという格好でぼん ときてしまうものですから,むしろ外側のボウ マン嚢というか,そちらのほうからの炎症で もってつぶれたのかと思ったのですけれども, 細胞のところでmembraneceのところにdense depositがあるというので,これはどういうこと なのだろうかというのが,僕らは臨床のほうか らちょっと疑問に思っている点でした。 座長 ありがとうございます。どうぞ。

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小板橋 聖マリアンナ医大の小板橋でございま す。これは質問ではなくて,赤城先生もいらっしゃ るのでわたしにお教えいただきたいのですが。  いわゆる自己炎症疾患というのでしょうか, autoinflammatory disease。 地 中 海 熱 も 含 め て, こういうものが糸球体腎炎,あるいは間質性腎 炎を伴っていたという報告はどの程度あるので しょうか。 石川 非常に難しい話なのですけれども,例え ば,先ほどおっしゃられましたように,地中海 熱には例えば晩期になってamyloidosisを合併 するという報告が多々あります。もちろんそれ はたくさんあるのですけれども。  この最初のころからこういう腎機能障害,も しくは,こういうふうなsclerosisをきたすとい う報告は,文献的には,探し得た限りではほと んどないです。 小板橋 そうですか。 座長 ありがとうございます。ほかに何かあり ますでしょうか。 村上 村上です。恐らくこの症例は,全身性疾 患なのだろうと思っているのですが,その一部 分を腎臓の組織で見ていないと思っているので すが。先ほどの地中海熱にしても,血管炎とか, そういった間質性腎炎パターンでくるような疾 患もない,絶対ないわけではないと思うのです が,ご経験のある先生方がいらっしゃるのでど うなのかなと思っているのです。 座長 どなたか。なかなかこういう症例という のはめったにないものだと思いますけれども。 赤城 地中海熱というのは,基本的には,発熱 がだいたい12時間から72時間で終わります。 それから,まずコルヒチンが効きます。それか ら,基本的に遺伝子検査で,そこらあたりの既 知のやつ,特にamyloidosisを起こすやつとい うのは地中海地方には多いのですけれども,そ ういうのも決まっています。  そういうものは見つかっていませんし,これ は臨床的に言っても地中海熱はまず否定でき る。それ以外の周期性発熱症候群というのが 引っ掛かってくるかなと思っているのですけれ ども,それについては,今はまだ検査が全部終 わっていないのですけれども,少なくとも既知 のものはつかまっていないという報告は受けて います。 座長 ありがとうございます。議論が尽きない のですが,時間もありますので,終わりにした いと思います。どうもありがとうございました。

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