Title Time Trade-off法による糖尿病患者の健康状態の評価に関す る臨床的研究( 研究3 )
Author(s) 足立, 久子
Report No. 平成15年度-平成17年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)
一般 臨床看護学 課題番号15592262) 研究成果報告書
Issue Date 2006-03
Type 研究報告書
Version
URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/2827
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研 究 3 糖 尿 病 患 者 の 交 換 者 に 関 連 す る 要 因
Key Words:TTO法 、 非 交 換 者 、 交 換 者 、 通 院 中 の 糖 尿 病 患 者
Ⅰ . 目 的
研 究 1 - 3 に お い て 、 糖 尿 病 患 者 で 、 現 在 の 健 康 状 態 の ま ま 今 後 も 過 ご し た い と す る 非 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 高 く 上 昇 さ せ 、 交 換 者 と の 間 に 関 連 性 の 高 い 要 因 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、「 糖 尿 病 に よ る 3 大 合 併 症 が な い 」 は 、 非 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 高 く 上 昇 さ せ る も の で あ っ た 。
そ こ で 、 本 研 究 で は 、 糖 尿 病 患 者 で 、 平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 高 く 上 昇 さ せ 、 交 換 者 と の 間 に 関 連 性 の 高 い 要 因 を 検 討 し た 。 次 の よ う な 研 究 ① 、 研 究 ② の 2 つ の 研 究 を 行 っ た 。
研 究 ① で は 、 通 院 中 の 糖 尿 病 患 者 に 質 問 紙 法 を 用 い て 、 糖 尿 病 患 者 の 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 は 、 ど の よ う な 構 造 を し て い る の か 探 索 的 因 子 分 析 法( 主 因 子 法 、 バ リ マ ッ ク ス 法 )を 用 い て 検 討 し た 。
質 問 紙 は 、
Torrance, Thomas, & Sackett
(1972)に よ り 開 発 さ れ たTime Trade Off
( 以 後 、 TTO と 略 記 )法 を 用 い て 、 糖 尿 病 患 者 のHRQOL
の 評 価 を 検 討 し た こ れ ま で の 研 究 結 果( 足 立 2001; 足 立 2004a, b)か ら 、平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 、 あ る い は 交 換 を 望 ま な く 現 在 の 健 康 状 態 の ま ま 今 後 も 過 ご し た い と す る 理 由 に 関 す る14
項 目 か ら 作 成 さ れ て い る 。研 究 ② で は 、 通 院 中 の 糖 尿 病 患 者 に
TTO
法 を 施 行 し 、 糖 尿 病 患 者 を 交 換 者 と 非 交 換 者 の 2 群 に 分 け た 。研 究 ① の 探 索 的 因 子 分 析 の 結 果 か ら 得 ら れ た 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 構 造 の 各 尺 度 、 年 齢 、 性 別 、 罹 患 期 間( 年 )、 治 療 法( イ ン ス リ ン 療 法 、 非 イ ン ス リ ン 療 法 )、 血 糖 値(HbA1c%)、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 、 糖 尿 病 や 自 己 管 理 に 起 因 す る 日 常 生 活 に 対 す る 否 定 的 な 感 情 が あ る 、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症( 腎 障 害 、 神 経 障 害 、 眼 障 害 )が あ る 、 な ど の ど の よ う な 要 因 が 、 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 上 昇 さ せ る の に 強 く 関 与 す る の か を 検 討 し た 。
Ⅱ . 方 法 1 . 対 象 者
対 象 者 は 、 総 合 病 院 に 通 院 中 の 癌 及 び 精 神 的 な 障 害 の な い
26
歳~71
歳 ま で の 糖 尿 病 患 者112
名 で あ る 。糖 尿 病 患 者 の 平 均 年 齢 は
55.7
歳(SD:13.7)、 平 均 罹 患 期 間( 年 )は13.4
年(SD: 10.5)で あ っ た 。 平 均HbA1c%
は7.0
(SD:1.2)で 、 日 本 糖 尿 病 学 会(2003)の 分 類 に 従 い 、 血 糖 コ ン ト ロ ー ル は 可 で あ る 。糖 尿 病 の 3 大 合 併 症( 眼 障 害 、 神 経 障 害 、 腎 障 害 )が ひ と つ で も あ る と し た 糖 尿 病 患 者 は
45
名(40.2%)、 ひ と つ も な い と し た 者 は67
名(59.8%)で あ っ た 。 し び れ 、 倦 怠 感 、 口 渇 、 視 力 の 低 下 な ど の 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る と し た 糖 尿 病 患 者 は59
名(52.7%)、 な い と し た 者 は53
名(47.3%)で あ っ た 。 糖 尿 病 や 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い の あ る と し た 糖 尿 病 患 者 は63
名(56.3%)、 な い と し た 者 は49
名(43.7%)で あ っ た 。 治 療 法 に つ い て は 、 イ ン ス リ ン 療 法 中 の 糖 尿 病 患 者 は63
名(56.3%)で 、 非 イ ン ス リ ン 療 法 中 の 患 者 は49
名(47.3%)で あ っ た 。 糖 尿 病 の タ イ プ は 、 1 型 糖 尿 病 患 者 が9
名(8.0%)、 2 型 糖 尿 病 患 者 が103
名(92.0%) で あ っ た 。2 . 倫 理 的 配 慮
岐 阜 大 学 医 学 部 医 学 研 究 倫 理 審 査 会 に 申 請 し 承 認 さ れ た 後 、 対 象 者 に 調 査 の 目 的 、個 人 の プ ラ イ バ シ ー の 保 護 、調 査 結 果 を 研 究 目 的 以 外 に 使 用 し な い こ と 、 答 え た く な い 質 問 に は 答 え な く て も よ い こ と 、い つ で も 調 査 は 中 止 で き る こ と 、 な ど を 文 書 に よ り 説 明 し 、 す べ て の 対 象 者 か ら 研 究 へ の 同 意 が 得 ら れ た 。
3 . 手 続 き
外 来 患 者 相 談 室 で 個 別 に 質 問 紙 法 と 半 構 成 的 面 接 法 に よ る
TTO
法 を 施 行 し 、 原 則 と し て 1 回 約45
分 の 面 接 を 行 っ た 。研 究 ① で は 、 糖 尿 病 患 者 に 半 構 成 的 面 接 法 を 用 い て 行 っ た こ れ ま で の 研 究 結 果 か ら 、 平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 、 望 ま な い と す る 交 換 ・ 非
交 換 理 由 に 関 す る
14
項 目 を 抽 出 し 質 問 紙 を 作 成 し た 。 各 項 目 に つ い て 、「 あ て は ま ら な い 」( 1 )か ら 「 あ て は ま る 」( 5 )ま で の 5 段 階 に 評 定 さ せ た 。 分 析 方 法 は 、 探 索 的 因 子 分 析 法 を 用 い た 。研 究 ② で は 、
TTO
法 を 用 い て 、 次 の よ う な 質 問 を 行 っ た 。「 こ の 先 、 今 の 糖 尿 病 の 状 態 の ま ま 過 ご し た い で す か 。 そ れ と も 、 生 き ら れ 期 間 が 短 く な っ て も 、 糖 尿 病 の な い 健 康 な 状 態 で 過 ご し た で す か 。 ど ち ら を 選 び た い で す か 。 そ れ は 、 な ぜ で す か 。」 と 問 い か け た 。 こ の 他 に 、 年 齢 、 闘 病 期 間( 年 )、 治 療 法( イ ン ス リ ン 療 法 、 非 イ ン ス リ ン 療 法 )、 身 体 的 自 覚 症 状 の 有 無 、 糖 尿 病 や 食 事 ・ 運 動 ・ 薬 物 療 法 な ど の 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い の 有 無 に つ い て も 尋 ね た 。 カ ル テ か ら は 、 過 去 1 ヶ 月 間 の 平 均 血 糖 レ ベ ル を 推 定 す る
HbA1c%を 用 い た 。
分 析 方 法 に は 、 研 究 ① で は 因 子 分 析 法 を 用 い た 。 研 究 ② で は
t
検 定 、 χ2検 定 、Pearson
の 積 率 相 関 係 数 、 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 を 用 い た 。研 究 ①
通 院 中 の 糖 尿 病 患 者 に 半 構 成 的 面 接 法 に よ り
TTO
法 を 用 い て 行 っ た こ れ ま で 研 究 結 果 か ら 、 平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 、 交 換 を 望 ま な い と す る 理 由 に 関 す る14
項 目 か ら 構 成 さ れ る 質 問 紙 を 作 成 し た 。 各 項 目 に 対 し て 、 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 と し て 「 あ て は ま ら な い 」( 1 )か ら 「 あ て は ま る 」( 5 ) ま で の 5 段 階 に 評 定 さ せ た 。 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 は 、 ど の よ う な 構 造 を し て い る の か 、 因 子 分 析 法 を 用 い て 検 討 し た 。Ⅲ . 結 果 1 . 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 構 造
糖 尿 病 患 者 の 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 交 換 と 交 換 を 望 ま な い 非 交 換 の 理 由 構 造 を 明 ら か に す る た め に 、 探 索 的 因 子 分 析( 主 因 子 法 、 バ リ マ ッ ク ス 法 )を 行 っ た 。
固 有 値
1.000
以 上 の 基 準 で 4 因 子 を 抽 出 し た 。 各 因 子 の 初 期 の 固 有 値 は 第 1因 子 か ら 第 4 因 子 ま で 順 に 、
4.066
、1.728
、1.249
、1.125
で 、 累 積 寄 与 率 は50.3%
で あ っ た 。 そ の 因 子 負 荷 量 と 共 通 性 、 回 転 後 の 平 方 和 と 累 積 寄 与 率 は 、 表 1 に 示 し た 通 り で あ っ た 。 第 1 因 子 に 対 し て 3 項 目 、 第 2 因 子 に 対 し て 4 項 目 、 第 4 因 子 に 対 し て 3 項 目 が
0.4
以 上 の 負 荷 量 を 示 し た 。 第 3 因 子 に 対 し て は 、 3 項 目 が0.29
以 上 の 負 荷 量 を 示 し た 。 削 除 さ れ た 項 目 数 は 1 で あ り 、「 身 体 的 自 覚 症 状 が あ り ま す 」 と い う 内 容 で あ っ た 。交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 構 造 に 関 し て 、 第 1 因 子 で は 「 病 気 や 治 療 の た め に 、 社 会 的 な 付 き 合 い が 難 し く な っ た と 思 い ま す 」、「 病 気 に な っ て 、 や り た い こ と が 出 来 な く な っ た と 思 い ま す 」、「 病 気 の た め に 孤 独 で す 」 の 負 荷 量 が 高 い の で 「 病 気 の た め の 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」 の 因 子 と 命 名 し た 。 第 2 因 子 で は
「 病 状 が 悪 化 す る の が 不 安 で す 」、「 病 状 が 悪 化 す る の が つ ら い で す 」、「 病 気 に な っ て 、 家 族 に 迷 惑 を か け た と 思 い ま す 」、「 病 気 が 気 に な り ま す 」 の 負 荷 量 が 高 い の で 「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の 因 子 と 命 名 し た 。 第 3 因 子 で は 「 病 気 の た め に 、 自 分 ら し い 生 き 方 が 出 来 な く な っ た と 思 い ま す 」、「 病 気 の た め に 、 自 分 の 将 来 の 可 能 性 が な い と 思 い ま す 」、「 病 気 に な っ て 、 新 し い 話 題 や 出 来 事 に 対 す る 好 奇 心 や 関 心 が な く な っ た と 思 い ま す 」 の 負 荷 量 が 高 い の で「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 な い 将 来 」の 因 子 と 命 名 し た 。第 4 因 子 で は「 ふ だ ん の 自 己 管 理 が 負 担 で す 」、「 治 療 に よ る 食 事 制 限 が つ ら い で す 」、「 い つ も 食 べ 物 や 食 事 が 気 に な り ま す 」 の 負 荷 量 が 高 い の で 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の 因 子 と 命 名 し た 。
表 1 交 換 ・ 非 交 換 理 由 に 関 す る 質 問 項 目 お よ び 探 索 的 因 子 分 析 の 結 果 ( 主 因 子 法 、 バ リ マ ッ ク ス 法 )
項目 内容 因 子1 因 子2 因 子3 因子4 共通性
病 気のた め活動 の制 限によ る孤独 感
5.病 気 や治療 のため に、社 会的 な付 0.898 0.183 0.036 0.096 0.850 き 合 い が 難 し くな っ たと 思いま す。
12.病 気にな って 、やりた いこ とが出 0.576 0.306 0.431 0.078 0.618 来な くな ったと思 いま す。
4.病 気 のため に孤独 です。 0.504 0.163 0.224 0.138 0.350 病 状悪化 に起因 する 精神的 負担
8.病 状 が悪化 するの が不安 です 。 0.009 0.634 0.018 0.421 0.580 9.病 状 が悪化 するの がつら いで す。 0.160 0.582 0.060 0.314 0.467 3. 病 気 に な っ て 、 家 族 に 迷 惑 を か け 0.164 0.515 0.095 0.005 0.302
たと 思い ます。
2.病 気が 気にな ります 。 0.050 0.411 0.121 0.155 0.210 病 気に起 因する 可能 性のな い将来 さ
13.病 気のた めに 、自分ら しい 生き方 0.273 0.131 0.743 0.068 0.649 が出 来な くなった と思 います 。
14.病 気のた めに 、自分の 将来 の可能 0.075 0.220 0.732 0.126 0.606 性が ない と思いま す。
11.病 気にな って 、新しい 話題 や出来 0.312 0.040 0.295 0.066 0.190 事に 対す る好奇心 や関 心がな く
なっ たと 思います 。
食 事療法 に起因 する 精神的 負担
10.ふ だんの 自己 管理が負 担で す。 0.104 0.156 0.185 0.737 0.612 6.治 療 による 食事制 限がつ らい です。 0.181 0.048 -0.039 0.597 0.392 7.い つ も食べ 物や食 事が気 にな りま - 0.016 0.172
0.097
0.460 0.251す。
削 除され た項目
1.身 体的 な自覚 症状が ありま す。 0.138 0.338 0.147 - 0.012 0.155
平 方和 1.687 1.566 1.508 1.469 6.23
(%) 12.052 11.188 10.769 10.493 44.502
次 に 、 第 1 因 子 か ら 第 4 因 子 の 各 因 子 の 内 的 整 合 性 を 検 討 す る
Cronbach
の α 係 数 と 各 因 子 の 平 均 得 点 は 、 表 2 に 示 し た 通 り で あ る 。表 2 各 因 子 の α 係 数 と 平 均 得 点
因 子 構 成 項 目 数 α 係 数 平 均 得 点 第 1 因 子 3 0.75 1.88(1.16)
第 2 因 子 4 0.67 3.72(1.16)
第 3 因 子 3 0.65 1.73(1.02)
第 4 因 子 3 0.65 3.25(3.67)
Cronbach
の α 係 数 に 関 し て 、 第 1 因 子 の 「 病 気 の た め の 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」 は0.75
、 第 2 因 子 の 「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 は0.67
、 第 3 因 子 の 「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 な い 将 来 」 は0.65
、 第 4 因 子 の 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 は0.65
で あ っ た 。平 均 得 点 が 最 も 高 か っ た 因 子 は 、
Cronbach
の α 係 数0.67
を 示 し た 第 2 因 子 の3.72
で あ っ た 。 次 に 平 均 得 点 が 高 か っ た 因 子 は 、Cronbach
の α 係 数0.65
第 を 示 し た 第 4 因 子 の3.25
で あ っ た 。第 1 因 子 か ら 第 4 因 子 の 各 因 子 間 の
Pearson
の 積 率 相 関 係 数 は 、 表 3 に 示 し た 通 り で あ る 。表 3 各 因 子 間 の 相 関 係 数
因 子 第 1 第 2 第 3 第 4
第 1 因 子 - 0.40** 0.53** 0.27**
第 2 因 子 0.40** - 0.29** 0.40**
第 3 因 子 0.53** 0.29** - 0.24**
第 4 因 子 0.27** 0.40** 0.24** -
**:p<.01
第 1 因 子 の 「 病 気 の た め の 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」 と 第 2 因 子 の 「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、 第 3 因 子 の 「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 な い 将 来 」 と の 間 に 、 そ れ ぞ れ 有 意 な 中 程 度 の 正 の 相 関 が 認 め ら れ た 。 第 2 因 子 の 「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 神 的 的 負 担 」 と 第 4 因 子 の 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 神 的 的 負 担 」 と の 間 に 、 有 意 な 中 程 度 の 正 の 相 関 が 認 め ら れ た 。
研 究 ②
研 究 ② で は 、 ど の よ う な 要 因 が 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 上 昇 さ せ る の か 、 検 討 し た 。
研 究 ① の 結 果 で 示 さ れ た 平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 、 非 交 換 理 由 と な る 「 病 気 に 起 因 す る 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」、「 病 気 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 の な い 将 来 」、「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」の 4 尺 度 、年 齢 、性 別 、罹 患 期 間( 年 )、イ ン ス リ ン 療 法 、血 糖 値(HbA1c%)、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症( 腎 、 神 経 、 眼 障 害 )が ひ と つ で も あ る 、 糖 尿 病 や 食 事 ・ 運 動 ・ 薬 物 療 法 な ど の 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る 否 定 的 な 感 情 が あ る 、 糖 尿 病 の 合 併 症 数 な ど の ど の よ う な 要 因 が 、 糖 尿 病 患 者 で 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 を 望 む 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 に 強 く 関 与 す る の か 、 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 を 用 い た 。
Ⅳ . 結 果
糖 尿 病 患 者 に 、 現 在 の 健 康 状 態 を 総 体 的 に 評 価 す る
TTO
法 を 施 行 し た 結 果 、 交 換 者 は42
名(37.5%)、 非 交 換 者 は70
名(62.5%)で あ っ た 。1 . 糖 尿 病 患 者 の 交 換 者 と 非 交 換 者 の 特 徴 に つ い て
糖 尿 病 患 者 で 、 交 換 者(N=42)と 非 交 換 者(N=70)の 性 別 、 平 均 年 齢 、 平 均 罹 患 期 間( 年 )、 平 均 血 糖 値(HbA1c%)、 糖 尿 病 の タ イ プ( 1 型 糖 尿 病 、 2 型 糖 尿 病 )、 治 療 法( イ ン ス リ ン 療 法 、 非 イ ン ス リ ン 療 法 )、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症( 腎 障 害 、 神 経 障 害 、 眼 障 害 )の 有 無 、 身 体 的 自 覚 症 状 の 有 無 、 糖 尿 病 や 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い の 有 無 は 、 表 4 に 示 し た 通 り で あ る 。
表 4 糖 尿 病 患 者 の 交 換 者 と 非 交 換 者 の 特 徴
交 換 者 (N=42) 非 交 換 者 (N=70) 性 別
女 性 (N=65) 24名 (57.1%) 41(58.6%) 男 性 (N=47) 18 名 (42.9%) 29(41.4%) 平 均 年 齢 56.1歳 (SD:12.8) 55.4歳 (sD:14.3) 平 均 罹 患 期 間 ( 年 ) 12.9年 (SD:12.0) 13.6年 (SD: 9.7)
平 均 HbA1c% 7.1%(SD: 1.3) 7.0%(SD: 1.1)
糖 尿 病 の タ イ プ
1 型 (N= 9) 3名 ( 7.1%) 6名 ( 8.6%) 2 型 (N=103) 39名 (92.9%) 64名 (91.4%) 治 療 法
イ ン ス リ ン 療 法 (N=63) 24 名 (57.1%) 39名 (55.7%) 非 イ ン ス リ ン 療 法 (N=49) 18 名 (42.9%) 31名 (44.3%) 3 大 合 併 症
有 (N=45) 22名 (52.4%) 23名 (32.9%)
無 (N=67) 20名 (47.6%) 47名 (67.1%)
身 体 的 自 覚 症 状
有 (N=59) 32名 (76.2%) 27名 (38.6%)
無 (N=53) 10名 (23.8%) 43名 (61.4%)
つ ら い 思 い
有 (N=64) 29 名 (69.0%) 35 名 (50.0%)
無 (N=48) 13 名 (31.0%) 35 名 (50.0%)
交 換 者 と 非 交 換 者 の 平 均 年 齢 、 平 均 罹 患 期 間( 年 )に 関 し て 、
t
検 定 の 結 果 、 両 者 の 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 平 均HbA1c%
に つ い て は 、 交 換 者 が7.1%、 非 交 換 者 が 7.0%で 、 日 本 糖 尿 病 学 会
(2003)の 分 類 に 従 う と 、 交 換 者 と 非 交 換 者 と も に 血 糖 コ ン ン ト ロ ー ル は 可 で あ っ た 。t
検 定 の 結 果 、 両 者 の 間 に 有 意 差 は 、 認 め ら れ な か っ た 。ま た 、 χ2検 定 の 結 果 、 糖 尿 病 の タ イ プ( 1 型 、2 型 )、 治 療 法( イ ン ス リ ン 療 法 、 非 イ ン ス リ ン 療 法 )、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症( 腎 障 害 、 神 経 障 害 、 眼 障 害 )の 有 無 つ い て 、 交 換 者 と 非 交 換 者 と の 間 に 有 意 で な か っ た 。 し か し 、 身 体 的 自 覚 症 状 の 有 無 と 糖 尿 病 や 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い の 有 無 に つ い て は 、 両 者 の 間 に 有 意 で あ っ た( 身 体 的 自 覚 症 状 χ2=14.90, df=1, p<.01、 つ ら い 思 い χ2=3.89, df=1, p<.05)。
2 . 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 上 昇 さ せ る 要 因 に つ い て
研 究 ① で 得 ら れ た 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 構 造 と な る 「 病 気 に 起 因 す る 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」、「 病 気 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 の な い 将 来 」、「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 と い う 4 尺 度 の 得 点 が 高 い ほ ど 、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 、 糖 尿 病 や 食 事 ・ 運 動 ・ 薬 物 療 法 な ど の 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い が あ る 、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症 が ひ と つ で も あ る 、 糖 尿 病 の 合 併 症 数 が 多 い ほ ど 交 換 者 と の 関 連 性 が あ る と し た 。 こ れ ら の ど の よ う な 要 因 が 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 上 昇 さ せ る の か 、 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 の 結 果 は 、 表 5 に 示 し た 通 り で あ る 。
表5 各要因の有意確率、オッズ比と 95%信 頼区間
要因 Wald 有意 確率 オッズ比 信頼区 間
年 齢 0.709 0.400 1.019 0.975- 1.066
女 性 0.014 0.906 0.941 0.344- 2.572
罹 患期 間(年) 3.033 0.082 0.952 0.900- 1.009 イ ンスリ ン治 療 0.549 0.385 0.674 0.237- 1.914 血 糖値 (HbA1c%) 0.755 0.377 1.216 0.782- 1.890 病 気に 起因する 行動 の制限 0.576 0.430 1.220 0.730- 2.036
に よる 孤独感
病気悪化に起因する精神的 4.371 0.037* 1.767 1.036- 3.013 負担
病 気に 起因する 可能 性のな 0.283 0.595 1.176 0.647- 2.140 い将来
食事療法による精神的負担 4.227 0.040* 1.594 1.022- 2.486 身体的自覚症状がある 10.863 0.001** 8.465 2.377-30.149 つ らい 思いが ある 0.618 0.432 1.531 0.529- 4.431 3 大合 併症が ある 0.689 0.407 2.327 0.317-17.091 合 併症 数 0.254 0.614 1.299 0.470- 3.590
*:p<.05 **:p<.01
有 意 確 率 が
0.05
未 満 の 要 因 は 、 交 換 ・ 非 交 換 理 由 の う ち 、「 病 気 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 と 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の 2 尺 度 と 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る で あ っ た 。「 病 気 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の オ ッ ズ 比 は1.767
( 信 頼 区 間 1.036-3.013)、「 食 事 制 限 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の オ ッ ズ 比 は1.594
( 信 頼 区 間 1.022-2.486)、「 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 」 の オ ッ ズ 比 は8.465
( 信 頼 区 間 2.377-30.149)で あ っ た 。「 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 」 は 、 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 大 き く 上 昇 さ せ る も の で あ っ た 。
年 齢 、 性 別 、 罹 患 期 間( 年 )、 イ ン ス リ ン 療 法 、 血 糖 値(HbA1c%)、 糖 尿 病 や 自 己 管 理 に 起 因 す る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い が あ る 、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症 が ひ と つ で も あ る 、 糖 尿 病 の 合 併 症 数 の こ れ ら の 要 因 は 、 交 換 者 の 出 現 に は 関 与 し な か っ た 。
Ⅴ . 考 察
平 均 年 齢
55.7
歳 、 平 均 罹 患 期 間13.4
年 の 血 糖 コ ン ト ロ ー ル が 可 の 状 態 に あ る 通 院 中 の 糖 尿 病 患 者 に つ い て 、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 者 、 病 気 や 自 己 管 理 に 起 因 す る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い が あ る 者 は 、 非 交 換 者 よ り も 交 換 者 に 有 意 に 多 く 認 め ら れ た 。こ れ ま で の 研 究 結 果 か ら 交 換 ・ 非 交 換 理 由 に 関 す る 質 問 紙 を 作 成 し 、 交 換 ・ 非 交 換 の 理 由 構 造 を 探 索 的 因 子 分 析( 主 因 子 法 、バ リ マ ッ ク ス 法 )を 用 い て 行 っ た 。 そ の 結 果 、 4 つ の 因 子 が 抽 出 さ れ た 。 第 1 因 子 「 病 気 の た め の 活 動 の 制 限 に よ る 孤 独 感 」、 第 2 因 子 「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、 第 3 因 子 「 病 気 に 起 因 す る 可 能 性 な い 将 来 」、 第 4 因 子 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 で あ っ た 。 糖 尿 病 患 者 の 平 均 余 命 と 健 康 な 生 存 期 間 と の 交 換 、 あ る い は 非 交 換 の 理 由 と し て 「 あ て は ま る 」 と し た 平 均 得 点 が 最 も 高 か っ た 因 子 は 、
Cronbach
の α 係 数0.67
を 示 し た 第 2 因 子 で あ っ た 。 次 に 平 均 得 点 が 高 か っ た 因 子 は 、Cronbach
の α 係 数0.65
第 を 示 し た 第 4 因 子 で あ っ た 。こ れ ら の 4 尺 度 の 得 点 が 高 い ほ ど 、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 、 糖 尿 病 や 食 事 ・ 運 動 ・ 薬 物 療 法 な ど の 自 己 管 理 に よ る 日 常 生 活 に 対 す る つ ら い 思 い が あ る 、 糖 尿 病 の 3 大 合 併 症 が ひ と つ で も あ る 、 糖 尿 病 の 合 併 症 数 が 多 い ほ ど 交 換 者 と の 関 連 性 が あ る と し た 。 こ れ ら の ど の よ う な 要 因 が 交 換 者 の 出 現 確 率 を 上 昇 さ せ る の か 、 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 の 結 果 、「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、
「 病 状 の 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 」 は 、 交 換 者 の 出 現 確 率 を 上 昇 さ せ る 要 因 で あ っ た 。
「 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る 」 は 、 他 の 「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 病 状 の 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 と 異 な り 、 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 大 き く 上 昇 さ せ る も の で あ っ た 。
身 体 的 自 覚 症 状 は 、 患 者 に 苦 痛 を 与 え る だ け で は な い 。 患 者 に と っ て 、 病 状 が 安 定 し て い な く 、 総 体 的 な 健 康 状 態 が 悪 化 し て い る 状 態 を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 た と え 、 身 体 的 自 覚 症 状 が 治 療 に よ り 軽 減 し た と し て も 、 糖 尿 病 は 治 癒 困 難 な 病 気 で あ る ゆ え に 、 身 体 的 自 覚 症 状 は 今 後 の 身 体 的 危 機 の 予 測 を 引 き 起 こ す こ と も 考 え ら れ る 。 ま た 、 身 体 的 自 覚 症 状 は 、 糖 尿 病 患 者 の 生 活 に お い て 、 入 浴 や 着 替 え な ど の 身 体 的 活 動 の 制 限 、 友 人 と の 付 き 合 い の 制 限 、 仕 事 や 社 会 的 活 動 の 制 限 な ど の 日 常 生 活 に 否 定 的 な 体 験 を 生 じ さ せ る 可 能 性 が 大 き い 。 そ れ ゆ え に 、 身 体 的 自 覚 症 状 が あ る は 、 健 康 状 態 の 評 価 を 低 く し 、 今 後 生 き る 期 間 が 短 く な る が 健 康 に な り た い と す る 交 換 者 の 出 現 頻 度 の 確 率 を 大 き く 上 昇 さ せ た の で は な い か と 考 え ら れ る 。
「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 の オ ッ ズ 比 は そ れ ぞ れ 低 い 値 を 示 し た こ と か ら 、 上 昇 さ せ る 確 率 は そ れ ほ ど 大 き く な か っ た と い え る 。 そ れ ゆ え 、「 食 事 療 法 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」、「 病 状 悪 化 に 起 因 す る 精 神 的 負 担 」 は 、 自 己 管 理 と と も に 過 ご す 生 活 に 否 定 的 影 響 を 与 え る 可 能 性 の あ る も の と 考 え ら れ る 。
引 用 文 献
足 立 久 子
2001
慢 性 疾 患 患 者 のHealth-Related QOL
の 研 究 -Time Trade-Off
法 に よ る 検 討 -,
ヒ ュ ー マ ン ・ ケ ア 研 究, 2, 38-46.
足 立 久 子
2004a
Ⅰ 型 糖 尿 病 患 者 の 現 在 の 健 康 状 態 の 評 価 に 与 え る 糖 尿 病 ス キ ー マ の 影 響,
ヒ ュ ー マ ン ・ ケ ア, 5, 52-58.
足 立 久 子
2003
慢 性 疾 患 患 者 のQOL
に 関 す る 臨 床 的 研 究 -Time Trade-Off
法 に よ る 検 討 -,
平 成13
・14
年 度 科 学 研 究 費 助 成 金 基 盤 研 究 (C) ( 2
) 研 究 成 果 報 告 書, 1-51
日 本 糖 尿 病 学 会 編