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川村 泰行 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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川村 泰行 論文内容の要旨

主 論 文

Factors related to tooth loss in later years during a long-term maintenance program at dental clinics.

歯科診療所における長期メインテナンス中の中高年期の 歯の喪失に関連する要因

川村 泰行 新庄 文明 福田 英輝

(老年歯科医学・第24巻 第1号 10―19 2009年)

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:齋藤俊行教授)

緒 言

歯科医療の専門家によるメインテナンスケアは、歯の喪失を予防することが示されている が、メインテナンスケアの期間でさえ歯の喪失が生じ得る。しかしながらメインテナンスケ アを行っている期間にどのような要因が歯の喪失に結びつくのかという事は十分に明らか にはされていない。歯の喪失に関わる危険因子、とくに20年以上といった長期間のメイン テナンスケアの観察をとおして、やむなく歯の喪失に至る場合の危険因子は、今まで示され てきた危険因子と異なることも予想される。本研究では、歯科診療所で実施したメインテナ ンスケアを長期間継続して利用した中高年期受診者を対象として、定期的にメインテナンス を利用しても、なおかつ歯の喪失に結びつく危険因子を明らかにすることを目的として実施 した。

対象と方法

大阪市内の2つの歯科医院においてメインテナンスケアを長期に継続している受診者を対 象とした。これら2つの歯科医院では、35 年以上にわたり、すべての受診者に対して予防 からメインテナンスまでを「包括歯科医療」と名づけた一貫したシステムとして実施してき た。その内容としては、初診時に口腔全体の精密な検査を行い、健康で衛生的な口腔環境を つくる治療計画を立案し、これを受診者に提示し、フロスの使用とバス法によるブラッシン グを中心としたプラークコントロールの指導を行うと共に、初期治療、歯周治療および不良 修復物の再治療を行うという一連の対処を行った。治療終了後、定期メインテナンスとして は基本的に6ヶ月に一度の検診を行った。

本研究の対象者は、上記の歯科診療所のいずれか1つにおいて、1989 年以前から 2004

(2)

までの15年以上にわたるメインテナンスケアを受けた984名のうち、その間に少なくとも 六ヶ月に一度の定期的受診を継続しており、20047月~10月に実施した評価期間に来院 した受診者の全員である。不定期に受診しているものは除外した。評価期間には、全身の健 康状態、喫煙習慣、病歴について質問用紙を用いて回答を得た。

対象者の1年あたり平均喪失歯数は、初期治療終了後の1回目のメインテナンス受診開始時

(ベースライン時)における未処置の健全歯、充填された生活歯、歯冠修復をされた生活歯、

歯冠修復された失活歯に区分した歯の合計本数と、上記評価期間の来院時における区分別合 計歯数の差をもとに算出した。一年あたり平均喪失歯数の比較は、1.評価時の年齢、2.

ベースライン時年齢、3.ベースライン時現在歯数、4.ベースライン時修復歯数(充填さ れた生活歯数、歯冠修復された生活歯数、歯冠修復をされた失活歯数)、5.ベースライン 4mm 以上の歯周ポケットの有無、6.評価期間の来院時における全身的疾患(糖尿病、

循環器系、消化器系)の有無、7.最終来院時における喫煙、禁煙の状態の7項目について、

それぞれ区分して行った。なお、分析は、対象者のベースライン時年齢 40 歳未満と 40 以上のそれぞれに区分して行った。

結 果

最終来院時の対象者平均年齢は67.5歳で、対象者371人の平均メインテナンス期間は、ベ ースライン時年齢が40歳未満は27.5年間、40歳以上は25.8年間であった。第三大臼歯を 除く、年平均喪失歯数は40歳未満が0.040本、40歳以上が0.115本であった。喪失歯数と 有意な関連があった項目は、ベースライン時40歳未満では評価時の年齢、ベースライン時 の現在歯数、同充填(生活)歯数、同歯冠修復(失活)歯数、同4mm以上歯周ポケットの 5項目であり、40歳以上ではベースライン時の現在歯数、同歯冠修復(失活)歯数、同4mm 以上歯周ポケット、最終来院時における糖尿病、および喫煙状況であった。これらの項目を 説明変数とする重回帰分析の結果、ベースライン時年齢が 40 歳未満は、現在歯数と 4mm 以上の歯周ポケットの有無が年平均喪失歯数と有意な関連を示し、40 歳以上では、失活歯 数、4mm以上の歯周ポケットの有無、および糖尿病の有無と喫煙習慣が年平均喪失歯数と 有意な関連を示した。

考 察

定期的な歯科受診によるメインテナンスケアを行った本研究の対象者の年平均喪失歯数は、

ベースライン時年齢が40歳未満では0.040本、40歳以上では0.115本であり、定期的なメ インテナンスケアは歯の喪失を防ぐことによりクオリティー オブライフの向上につながる ことが期待される。ただし、長期メインテナンスを継続的に実施する場合でも、40 歳未満 の比較的若年者では歯の本数と歯周ポケットの有無に特に配慮し、また40歳以降の中高年 者については失活歯数と歯周ポケットの有無、ならびに糖尿病の有無と喫煙習慣などの健康 管理に配慮した上で、個々の状況に応じたメインテナンスケアが必要であり、とりわけ、生 涯を通じて歯髄の失活を防ぐ事が中高年期における歯の喪失の予防に重要であることが示 唆される。

参照

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