秋田海岸における設計波高
榎 国夫
ThedesignwaveheightonthecoastofAKITA
KunioENoKI (昭和48年10月31日受理)
1 緒 言
普通,消波構造物の設計に使用する波の諸元は,過去 20年間以上の実測値によることが望ましい。しかしなが ら,そのような長期間にわたるdataを備えたところは 極く限られており,当秋田県内の港湾においては,運輸 省秋田港,秋田県八森漁港に略々10年間のdataを数え るの段であり,風浪が激しくなる冬期間の欠測を多い。
従って,秋田沿岸の消波構造物の設計にあたっては,過 去の既応天気図を用いて波を算出,隣接港の実測値と比 較対照,設計波を決定してやらねばならない。
2秋田港,八森港波浪解析
現地の資料不足を補う為に,秋田,八森両港の波浪 dataの解析を試承る。スペクトル解析により,八森港 のdataを現地に外挿するため,極大有義波高を算出し て承ると,大きな値のものでも, (H/%)max=4m 強であり, これは過去に秋田海岸で観測されたものに比 して,あまりにも小さすぎる値である。そこで,八森港 の地理的位置を検討して象ると,汀線がNWに延び, 8 km先に須郷崎がある。このため,冬期間の卓越波向で あるNW,WNWは回折率,屈折率がそれぞれ, 0.3, 0.56である。一方,秋田港はそれぞれ, 0.4, 0.75であ るから,八森は秋田に比して,同じ沖波が入射してきた としても,いつも2〜3割は小さな値で観測されること になる。従って,波高設計に当っては,八森のdataは 参考程度にとどめねばならないことになる。そこで,現 地の波高を,秋田港のdataを用いて,推算して象よ
う。設計基準としては,
i)既応最大波高
ii)モデル台風に対する波浪推算 (S・M.B法,抜本,井島法)
iii)N年確率波高
iv)波高発生確率と構造物建設費等を考慮した賛
用最小波 高等々が考えられる。
2−1期間最大値からの推定
月最大有義波高を用いて, (H%)max時系列を作り その超過出現率を図−1より求めて承る。これより,秋 田で10年間に1回出現する波高は,H%=6.15m, 30年 確率では,H%6.15=mであることが判かる これらの
1『
10.1
超過出現確率
10
10・
10!
0 1 2 3 4 5 6 7 8 m
図1 秋田港月最大有義波高(H")max
値において,過去の実測値に比して少々小さい。 この理 由を考えると, これはdatal2回最大有義波を用いてい るため,春や夏の波浪静穏時の波高dataが含まれてい
るためと思われる。そこで
年の確率波高を外挿すると, 10年確率波高は, H"=
6.4m, 30年確率波高はH%=7.1mとなる。これより,
沖波高はHo%=7.5m位になる。又》周期に関しては,
=e ‐今 .=・ 守pUp−の一一
波浪の大きな冬期間のdataより,波高周期相関図をつ くり,それを図−3に示した。図−3よりH%=7.Om に対応する有義周期T%を推定するとTX=12.3secと
思われる。
2−2極大波高からの推定
N年確率波高の推定値に影響を及ぼすのは,波高のか なり大きな波のdataである。そこで,ある設定以上の 極大波高につき,その極値時系列を作り解析して承る。
図−2は秋田港のN年確率推定曲線である。これからN
3設計波高 波高設計の留意点として
i)当海岸はその地理的位置からも判かるように台風 時の波は,冬期風浪と比して影響が少ない。故に,異常 気象時の波浪は台風を除き,冬期季節風による風浪の承
を考えることとする。
ii)対象期間は昭和33年〜昭和45年迄の13年間とし
た。
iii)天気図は過去13年間に,特に当海岸に大きい影 響をもたらしたと思われる,低気圧,前線のものを選ん
だ。
iv)推算法は次の二通りの方法を用いた。
①S.M.B法 ②坂本,井島の方法
S.M.B法は風域やそれを構成する風速,吹送距離が 著しく変動しない時,深海におけれ風波の推定法で, 日 本海における風波を算出した場合,好結果が求められた と云う報告が得られている。今回の推算においても,主 にこの方法によるものとする。又,坂本,井島の方法は Willson法の修正したもので,今回は精度を粗らくと って,S.M.B法のcheckとした。
①S・M.B法による沖波の推算
天気図による風域と風域内平均風速および風向の決定。
(a)風域内の平均風速は天気図に記入されている風 向,風力記号を参考にし,等圧線間隔と曲線から,海面 風向,風速を推算する。風速は10m/sec以上のものを 選んだ。 )
(b)風域は推算地点と等圧線上の点を結ぶ線と風向の なす角度が30。以内の偏角をなす場合には, この点は風 域内にある。
(c)使用した天気図は,図‑4に示すような,気象庁 の速報天気図である。
(d)風下端の波の算出は,平均風速および吹送距離よ り,S.M.B法の予報曲線を用いて求めた。無次元化さ れた波高(gH%/u2) ,周期(gT%/2yru),および吹 送距離(gF/u2)の関係は以下のとうりである。
旦袰室=0.0040(号晏J.4
m876543
e
極犬波高H苑
ローー
レーーの
dgj''。〆。。鼠〆〆
堅〃 , , 2030 50 100
11
5 10
005 0.1 0.5 1
再現期間Tm 年
図2秋田港N年確率波高推定曲線
T%
(sec)
○432109876511111
0 1 2 3 4 5 6 7 8
図3波高,周期相関図
1964. 1 .19−21
1964. 1 .20−03
, 1309 140.
ID 一幸
1964. 1 .19‑18 140。
130。
44
40。
36。
1964.1 .20−00
図4速 報 天 気 ,図
なお,風速に関しては,推算した海上風は,現地の風資 料により修正した。
4計算結果 4−1 沖波の推定
S・M.B法,ならびに坂本,井島法での計算結果を表
−1 ,表−2に示す。波向は北を基準として時計回わり にとるもの:とする。S.M.B法に比して坂本,井島法は 全体的に波高が大きめに出ている。この結果より,N年 確率波高推定曲線を求める6結果を図二5.j‑図‑6に示 す。設計条件として用いられる沖波の諸元を30年生起確 率により決定すると
旦塑=0.08う〔号晏)…2冗秘 . H%:有義波高(m)
T%:有義周期(sec) F:吹送距離(km)
〃 :風速(m/sec)
風域の風上端で発生した波が発達しながら,考える 又,風域の風上端で発生した波が罰
地点に到達する迄に要する時間オは
&*'"
罪:距離 CG:群速度
表−1 推算結果(S.M、B)
| l l l l l
o凸■■■■■■■
凸■■■■■■■■■
︽■■■■■■■■■ⅡIjbm9876543.2く%H
波高 周期
年月 日 波 向
(H)5) 1 (T》§)
sec
11、2 13.5 14.3 12.2 13.8 12.1 12.8 13.1 10.8 12.4 11.7 13.5 13.1
rn
290。
280 270 290 240 275 310 280 290 255 270 245 260
34567890123453333333444444
1 111胆2ulllu331
3.55 6.05 6.75 3.30 4.85 3.70 4.30 4.40 3.60 3.80 4.70 5.20 4.05
〃別79皿8釦77蜴9塑巴
1 2 3 5 , 10 2030 再斑期間 図6 N年確率波高推定曲線(坂井,
S.M、B法の結果N%=9.9m 坂本,井島法の結果H%=8.2m となる。
100年
50
I
井島法)
4−2消波堤前面の波の推定 表−2推算結果(坂本,井島法)
推定した沖波が浅水変形をして,消波堤前面に入射し たとぎ,いかなる波高になるか。周期,波向も同時に考 慮して求めて承る。推算した各ケースの波向別出現率と 周期別出現率を表−3に示す。波向別出現率において,
表−3波向別出現率
波高 周期
年月 日 波 向
(H)5) │ (T%)
sec
12、0 13.8 15.2 11.8 13.5 12.6 12.7 14.1 10.3 12.5 12.5 13.9 13.4
、1
290.
275 263 303 260 270 310 3.72
6.35 7.27 3.65 5.20 4.15 4.53 33
34 35 36 37
111吃2Ⅱ111Ⅱ331 列79
” ㈲ Ⅷ│"│WNWIWSWlそ州│ ヨ
u8別97胆9飽旧
8901234533444444
% S・M.B法
坂本,井島法
80●●78
38.4 46.2
30.8 30.8
23.0 15.0
100
298 100 4.85
38.0 295
243 周期別出現率
4.20 5.05 275
颪"" │ 'wl" B│B 焔│ ヨ
5.50 270
4.40 250 ロ■■−
% S.M.B法
坂本,井島法
11○●6644 11●●妬妬
100 100
88●●77
l l l I l | | l l l
︑987654く%H
Wを中心にWNW,WSWで,又周期は12sec, 14sec
で90%以上を占めている。これらの結果より,消波堤前
面における波の諸元は表−4のとおりである。
ここで浅水係数Ksは
K−ゾ三妄亨 :群速度と波速の比
で表わされる。
設計波の推算について, この二つの方法に取って検討し てきた。その結果,S.M.B法において,波向WNW"
るいはWSW,周期12sec,波向7.5mは秋田港波浪
1 2 3 5 10 20 30 5Q 年
再現期間
図5 N年確率波高推定曲線(S.M.B法)
斗
表−4 水深15mにおける設計波諸元 dataより得られた30年生起確率7.1m,周期12.3secと 殆んど一致し,精度の高いものと考えられる。 日本海沿 岸各地の設計波高以下の通りである。
消波堤前 沖 波 剛鮒駈 面の波
浅水 係数
波高波向│周期 Ks 波高l周期
新潟秋田港
毬&│青森│山形
111
’
1M
m9
●7
■0日日ⅡIⅡ167凸■ⅡⅡ■UⅡⅡⅡ日︲BIb■凸■Ⅱ■Ⅱ8611h日6日日ⅡIIlV11︲IIP卜0.lLI011I6IりI白日Ⅱ■OII法
S
●M
●S
7051 」2 能代
7331 7581 』
WNW (WSW)
ユーーーワ 岨
0.%
1.02 0.92 1.02
nl
7.0 5.7 7.0
H% 7.5 7.5 6.0
sec
14.0 11.6 13.5 13.0
W T% 13.5 8.0
80う│ 」4 73,│ 」2
WNW (WSW)
翅一触一胆一M
0.93 0.91 1.00 1.00
0.%
1.02 0.91 1.02
参考文献 港湾構造物設計基準日本港湾協会 波浪統計に関する2, 3の考察
港湾技術研究所資料No.39PP239〜254
7601 ! i)
ii) 坂本,井島法 8.2m
7871 2
W 8361 」#