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文学における記憶の考察

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Academic year: 2021

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教養教育センター付属研究所プロジェクト 文化・

文学における記憶の考察

著者 佐藤 アヤ子

雑誌名 明治学院大学教養教育センター紀要 : カルチュー

ル = The MGU journal of liberal arts studies : Karuchuru

5

1

ページ 107‑108

発行年 2011‑03

その他のタイトル Dynamism of Memory in Culture and Literature URL http://hdl.handle.net/10723/797

(2)

文化・文学における記憶の考察

佐 藤 アヤ子

はじめに

201019日, 白金校舎において, 「記憶の 諸相」 と題してシンポジウムが開催された。 本シ ンポジウムは, 2009年度教養教育センター付属 研究所プロジェクト 「文化・文学における記憶の 考察」 の総括として行われた。

19世紀はじめには, 「下等な心の能力」 でしか ないとみなされていた 「記憶」 が, 19世紀末以 来, 理論や文学にとって中心的な問題となった。

ベルクソン, フロイト, プルースト, ベンヤミン からイェイツ, オング, デリダ, アスマンまで,

「記憶」 をめぐる考察は深められ, 拡げられてき た。 しかし, それと同時に新たな問題提起もなさ れている。 そこで, 本シンポジウムでは, 「記憶 の諸相」 を比較文化的に考察する試みがなされた。

各分野で活躍するパネリスト, コメンテイターを 招聘し, ドイツ語圏, クレオール, 日本, 英語圏 の 「記憶」 のあり方を比較考察した。

パネリスト

岩崎 稔 (東京外国語大学教授:ドイツ哲学・政 治思想・カルチュラル・スタディーズ)

デイビッド・チャリアンディー (作家・サイモン・

フレイザー大学准教授:ポストコロニアル文 学)

ムルハーン・千栄子 (元イリノイ大学教授・文芸 評論家:日本文学・文化論)

佐藤アヤ子 (本学教授:英語圏文学)

コメンテイター

飛鳥壮太 ( すばる 編集者) 茅野裕城子 (作家:現代中国文学) 高木久夫 (本学准教授:思想史)

川島建太郎 (本学専任講師:現代ドイツ文学・自 伝文学・メディア理論)

高木久夫, 川島建太郎

発表概要

岩崎 稔

mnemological turn (記憶論的転回) 以後の 記憶と文化」

第二次世界大戦の経験者世代がいなくなりはじ めた1990年代に 「mnemological turn」 が起こっ たという仮説から, その 「mnemological turn を代表するドイツのアスマン夫妻やフランスのピ エール・ノラなどの現在の記憶研究を紹介。

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教養教育センター付属研究所プロジェクト

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David Chariandy

The Fiction of Memory and the Language of Forgetting

自作の中篇小説Soucouyantを中心に, そこに 描かれた 「記憶と喪失」 を考察し, 20世紀文学 の重要な文学テーマであった 「記憶と喪失」 の問 題を作品例をあげて言及。 さらに, コロンビア大 学の比較文学の教授であるMarianne Hirsch よって提唱された “postmemory” の理論を引き 合いに出して, Soucouyantを分析。

ムルハーン・千栄子

Collective Memories of War : NovelOKEI

「おけい」 は, 19歳の若さで早世した, 会津出 身のアメリカ移民日本女性第一号である。 早乙女 貢の小説 おけい を集団の記憶として, 移民文 学の視点から分析。

佐藤アヤ子

「真実は時として, 知ることができないもの」

「過去はそれ自体何も語らない。 我々が耳を傾 ける必要がある」, とMargaret Atwoodは語る。

そして, 「過去の記憶について語りをするのは我々 である, そして聞き手は我々である」 と。 150

前に起こった殺人事件に材を取ったマーガレット・

アトウッドの歴史小説 またの名をグレイス で, 現代に生きる作家が描いた 「記憶」 とは 「何か」

を, ユングの理論を踏まえて分析。

ま と め

岩崎氏が, 1990年代以後, ヨーロッパ, アジ ア, アメリカ各域における同時代的な現象として 学問分野に導入された 「記憶」 論における5つの 基本研究の言及をはじめに行ったので, 後続の3 つの作品分析が, 聴衆にとって一層理解しやすい ものになった。 「記憶」 のテーマは昨今様々な分 野で取り上げられているが, 今回のシンポジウム では, 内外から多くの研究者, 学生が集まり, 発 表後に質疑応答が活発になされ, 大変有意義なシ ンポジウムとなった。

本書では, 紙面の関係からデイビッド・チャリ アンディー氏の発表原稿 “The Fiction of Mem- ory and the Language of Forgetting” を掲載 することにした。

プロジェクトチーム:佐藤アヤ子, 高木 久夫 川島建太郎, 金 恩愛

文化・文学における記憶の考察

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参照

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