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金 融 理 論 に お け る株 式 の 位 置 づ け に つ い て

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(1)

一31一

金 融 理 論 に お け る株 式 の

位 置 づ け に つ い て

ケ イ ソ ズ経 済 学 の 発 展 を お っ て 一

鈴 木 満 直

Lま え.が

2.「 論 」

3。 「一 論 」

4.結

1.ま

最 近 の 金融 理 論,た とえぽ ア ヴ ィラ ピ リテ イ理 論 や 資産 選 択 理 論 な どに お い て,周 知 の よ うに流 動 性 概 念 の 拡 張解 釈 が こ ころみ られ,各 種 証 券 も貨 幣 とほ ぼ 同等 の地 位 を与 え られ る よ うに な って きた が,あ る場 合 に は特 定 証 券 の み が分 析 の対 象 に され,あ る場 合 に は全 証 券 が対 象 に され る こと もあ る。

分 析 目的 が 異 な る とは い え,そ れ ら理 論 に お い て 各種 証 券 の金 融 理 論 に お け る位 置 づ け が 必ず しも明確 に な され てい る とは い え ない と思 う。 と りわ け, 株 式 の取 扱 は暖 昧 に され て い る と思 うの で あ る。

証 券 も し くは 証 券 市 場 を 最初 に 経 済学 の体 系 の 中で位 置づ け,未 開 の分 野 を 開 拓 した労 作 は ケ イ ソズ経済 学 で あ る。 そ こで,解 決 の手 が か りを ケ イ ソ ズ経 済 学 に求 め,株 式 の 位 置 づ け とい う 観 点 か ら ヶイ ンズ 経済 学 を 『貨 幣 論 』 に まで遡 って そ の発 展 を 明確 に し,あ わ せ て若 干 の 注釈 を つ け加 え るの

(2)

一32一 第18巻 第3号

くり

が 本 稿 の 目的 に な っ て い る 。

2.『 論 』

金 融 理 論 は ケイ ンズ の 『貨 幣 論』 を境 に して大 き く変 化 した とい え る。 す な わ ち,『 貨 幣 論 』 以前 は,1844年 の ピール銀 行 条 例 を め ぐる通 貨 主 義 と銀 行 主義 との通 貨 発 行 に 関 す る論争 に よ って代 表 され る よ うに,貨 幣 の供 給 側 が 主 と して 分析 の対 象 に され てい た の に対 し,『 貨 幣 論 』 以後 は貨 幣 の需 要 側が 問題 に され る よ うに な った ので あ る。

ケ イ ソズ は 『貨 幣 論』 に お い て,「 弱 気 」 の理 論 とい う 貨 幣 の需 要 理 論 を 導入 して い る。 そ れ は,一 般 投 資 家 の 有価 証 券 価 格 の 将 来 の予 想 に お け る

「強 気 ・弱気 」 が所 得 の消 費 と貯 蓄 へ の 配分 につ づ い て 行 なわ れ る貯 蓄 の保 有形 態 に 関す る決定 に お い て,貯 蓄 預 金 と有価 証 券 との選 択 に 対 し決定 的 な 影響 を与 え るとい うこ とを 内容 に して い るの で あ る。 「弱気 」 とは そ の瞬 間 にむ しろ有 価 証 券 を 避 け て現 金 を 貸す こ とを欲 し,「 強 気 」 とは む しろ有価 証 券 を保 有 し現 金 を 借 入 れ ん と欲 す る こ とを 意味 す る。 したが って,「 弱気 筋 」 は有 価 証 券 の価 格 が下 落 す るで あ ろ うと 予想 し,「 強 気筋 」 は そ れ が 騰 貴 す るで あ ろ うと予想 す る こ とに な る。

ケイ ソズは,彼 以前 の 古典 派,た とえば ウイ クセ ル や ハ イ エ クが 貨 幣 の流 れ を も っば ら産業 的流 通 とい う視 角 か ら把 握 しい て い た のに 対 し,『 貨 幣 論 』 にお い て,貨 幣 の流 れ を産 業 的流通(lndustrialCirculation)と 金 融 的流 通 (FinancialCirculation)と に 区別 す る注 目す べ き着想 を して い る。 こ こに産 業 とは,「 経 常産 出 ・分 配 お よび 交 換 の正 常 過 程 を維 持 し,ま た 生産 諸 因子 が 生産 の最 初 よ り消費 者 の 最 終 の満 足 に いた る まで に 遂行 す る種 々の義 務 に 対 して,彼 等 に そ の所 得 を支 払 う業 務 」 を い い,他 方 金 融 とは 「富 に 対 す る

(1)ハ ロ ッ ドは 「ケ イ ン ズ を 完 全 に 理 解 し た い と 望 む も の は 『貨 幣 論 」 を 読 む こ と が 大 切 で あ る 」 と 述 べ て い る 。

RF.且arrod,̀̀RetrospectonKeynes"Keynes'GenerαlTheory,Reports ofThreeDeαades,ed.byR.Lekaman,1964,p.141.

(3)

金融理 論に おけ る株式 の位置 づけについ て(鈴 木) 一33一 現 存 の権 利 を 保 有 し,ま た 交換 す る(産 業 の特 殊 化 よ り 結 果す る交 換 以外

の)業 務 を い い,そ の 中 には 株 式 取 引所 お よび金 融 市 場 の取 引,投 機,な びに 経 常 貯 蓄 と 利 潤 とを企 業 者 の手 に 送 達 す る過 程 も 含 まれ て い るの で あ

(2)

る」。

これ らふ たつ の流 通 を構 成 す る貨幣 を所 得 預 金(Income‑DePosits)・ 営 業 預 金(Business‑Deposits)・ 貯 蓄 預 金(Savings‑Deposits)の 三 種類 に 分類 す る。所 得 預 金 とは 所 得 者 が個 人 的所 得 を 受 取 る 日 と,そ れ を 支 出す る 日との 間 の 支払 いに 応 ず るた め に保 有 す る預 金,営 業 預 金 とは商 人 ・製 造 業 者 また は投 機 者 が そ の入 金 と出費 とが 同 時 的 で な く,ま た営 業 支 出 の場 合 に お い て も債 務 を 支 払 うべ き正 確 な 日時 が 正 確 に 予 想 され な い こ とか ら,営 業 のた め に 保 有 され る預 金,貯 蓄 預 金 とは 支 払 い を す るた め で は な く,貯 蓄 を 利 用 す る一 つ の 方法 と して,す なわ ち投 資 と して 保 有 され る預 金 の こ とで あ る。 こ れ ら三 種類 の 貨 幣 は産 業 的流 通 と金 融 的流 通 とに お い て,つ ぎの よ うな地 位 を 占 め る。

産 業 的流 通 で は所 得預 金 と営 業 預 金 の 一一部 が流 れ る。 営 業 預 金 の 一 部,す なわ ち営業 預 金Aは 企 業 者 と生産諸 因子 の 間 を流 通 す る部 分 と,企 業 者 間 を 流 通 す る部 分 とに 分か れ る。 所 得 預 金 は 貨 幣所 得 の循 環 に か か わ る もの で,

生 産諸 因子 に対 す る営 業 預 金Aよ りの 支 払 い と して貨 幣 所 得 が所 得預 金 に流 入 す る。

金 融 的流 通 は 営業 預 金 の残 り,す な わ ち 営業 預 金Bと 貯 蓄 預 金 とが流 れ る。 営 業 預 金Bは 資 本財 また は 商 品 の投 機 的取 引,お よび 金 融 的 取 引,た えぽ 大 蔵省 証 券 の 償還 お よび 借 換,ま た は投 資物 件 の 変 更 な どに 必 要 とさ れ,そ の 額 は売 買 され る証 券 の取 引量 に そ の 平 均価 格 を乗 じた ものに 依 存 す る。 営 業 預金Bの 流 通 速 度 は 一 株 式 取 引所 の 清 算 等 に よ る現 金 使 用 を 節 約 す るた め の工 夫 の 大 な る発 展 の結 果 と して一 非 常 に大 で あ って,こ れ に 用

(2)J・M・Keynes,ATPteαtiseon・voney,vol・1・P・243・ 鬼 頭 仁 三 郎 訳 。 「ケ イ ン

ズ 貨 幣 論 」(同 文 館,昭 和8年)III,3頁

(4)

一34一 第18巻 第3号

い られ る貨 幣 量 の変 化 の 絶対 額は 通 常 は なは だ し く大 き くは あ りえ な い。 し た が って,金 融 目的 の た め の 貨幣 に 対 す る全 需 要 の 主 た る変 化 は,ま った く 異 な った 方 面 に,す な わ ち 貯蓄 預 金 の量 の うえ に起 る。 貯 蓄 預 金 は 二 つ の範 疇 に 分か れ る。 永久 的 に 有価 証券 よ りもむ しろ貯 蓄 預 金 を 保有 せ ん と欲 す る 富 の所 有 者 に よって 保 有 され る貯 蓄 預 金A(そ の額 は徐 々に変 化 す る)と, 有価 証券 市 場 の将 来 の予 想 に 関す る 「強 気 ・弱気 」 に よって 左右 され る貯蓄 預 金Bと で あ る。

この よ うに,金 融 的流 通 の 内 容 を 貨 幣 の流 れ の変 化 とい う観 点 か らみ て く る と,金 融 的流 通 に お い ては,貯 蓄 預 金Bが 中心 的地 位 を 占 め てい る こ とに な る。 した が って,そ れ に 決 定 的 な 影 響 を与 え る 「弱 気 ・強気 」 とい う貨 幣 需 要 側 の 要 因 の認 識が,貨 幣 の流 れ を 産業 的流 通 と金 融 的流 動 とに 区別 させ

る原動 力 とな って い た とい え る と思 う。

『貨 幣 論』 に おけ る貨 幣 需 要 関 数 を 要約 して お こ う。

所 得 預 金 をM、,営 業 預 金 をM2,貯 蓄預 金 をM3と す れ ば,貨 幣 の 総 需 要 は

M=M1十M2十M3

に よっ て表 わ され る。

ケ イ ソズは所 得預 金 を 支 払所 得Eに 結 び つ け,そ の流 通 速 度 をV、 と し, そ の需 要 関 数 は

M・==一▽iE

と い う関 係 が 成 立 す る もの とす る。 た だ し,V1は,一 般 的 に い っ て,あ 一 定 の 経 済 社 会 に お け るR、(V、 の 逆 数)の 平 均 値 は,年 々か な り安 定 した 大 き さ で あ る と い う 理 由 か ら所 与 と 仮 定 して い る。 した が っ て,所 得 預 金 M・ は 支 払 所 得Eの 増 加 関 数 と解 す る こ とが で き る。

営 業 預 金M2は 産 業 的 流 通 と 金 融 的 流 通 と に 分 か れ て い る た め,統 合 し て,そ の 需 要 関 数 を 示 す こ とは 必 ず し も容 易 で は な い が,営 業 預 金Bの 変 化

(5)

金融 理論 におけ る株式 の位 置づけにつ い て(鈴 木) 一35一 の 絶対 額 は通 常 大 き くは な い と述 べ て い るの で,そ の需 要 関 数 はつ ぎの よ う に示 され る もの と解 す る こ とが で き る。

レ 景

上 式 でV2は 営 業 預 金 の流通 速 度 で あ る。V2は は な は だ し く変 化 しや す い こ とが仮 定 され,そ れ は取 引活 発 に して借 入費 用 の高 い と きに は,商 店 は彼 等が 保 持 す る営業 預 金Aの 額 を節 約 す る傾 向 を 有す るか らで あ る と され る。

した が って,支 払所 得 が 増 大す れ ば 貨 幣 利 子率 は 上昇 し,そ の結 果 借 入費 用 の上 昇 に よって流 通 速 度V2も 速 度 を ます こ とに な り,営 業 預 金M2は ほ ぼ 一 定 と想 定 され て い る もの とい え よ う。

貯 蓄 預 金M、 は 「弱 気 」 の理 論,す なわ ち有価 証券 価 格 の将 来 の予 想 に 関 す る 「弱 気 ・強 気 」 に よっ て決定 され,「 強気 」が 市 場 を 支 配す る ときに はM3 は 減 少 し,「 弱 気 」 が 逆 に 支 配す る と きに はM3は 増 大 す る もの とされ る。

本稿 は株 式 の位 置 づ け とい う観 点 か らケ イ ンズ経済 学 を 問題 と して い るゆ え に,ケ イ ソズ の金 融 的流 通 の 部 分 だ け を 図示 す る こ とに し よ う◎

第1図 「貨幣論」の金融的流通

既存資本

投 資1

/

/

矢 印は 貨幣の流れ

(6)

一36一 第18巻 第3号

貯 蓄Sは 一 部 は 貯蓄 預 金Aと な り,他 は 「弱 気 ・強 気 」 に よって 支 配 され' 貯 蓄 預 金Bと 有価 証 券 の いず れ か に 流 れ,両 者 へ の貨 幣 の流 れ の変 化 が 貨 幣

(3)

利 子 率 を 決 定す るの で あ る。 この 「弱 気 」 の 理 論 に も とつ く貨 幣 利 子 論 は, 貨 幣 の変 量 で は な く全 量 を 問題 に して い る とい う意味 か らス トックの 貨 幣利 子 論 とよぶ こ とが で き よ う。 貯 蓄 預 金Aと 貯 蓄 預 金Bと は統 合 され て銀 行 信 用 に な り,そ れ に 有価 証 券 市 場 を経 由 して の 貨 幣 の流 れ が 合 して,貯 蓄Sは 投 資1に 結 び つ き,そ の貨 幣 は 産 業 的流 通 に投 入 され る。 貯 蓄 の うち新 規 発

行 証 券 に 向 う部分 は 直接 的に,既 存 の 有価 証 券 に 向か う部 分 は有 価 証 券 売 却 者 が そ の売 却 資金 で 自 ら投 資 を行 な うとい う意 味 で間 接 的 に 投 資 に結 び つ く の で あ る。

さて,ケ イ ソズ に よれ ば,証 券 市 場 も し くは投 機 市 場 に は全 体 で 四 つ の可

(4)

能 な る型 が存 す る。

(1)公 衆 の意 見 の一 致を 伴 な う強 気 市 場。 す な わ ち有 価 証 券 価 格 は 騰 貴 して い るが な お不 十 分 で あ り,し た が って貯 蓄 預 金M3は 低 下 し,ま た 「弱 気 筋 」 は騰 貴 す る市 場 に お い て 彼 等 の手 配 を 閉 止 しつ つ あ る。

(2)公 衆 の意 見 の分 裂 を 伴 な う 「強 気 」 の市 場 。 す なわ ち有 価 証 券価 格 が過 度 に騰 貴 し,し た が っ て貯蓄 預 金M3は 上 昇 し,ま た 「弱気 筋 」 は 騰貴 す

る市 場 に お い て彼 等 の手 配 を 増 大 しつつ あ る。

(3)公 衆 の意 見 の分 裂 を 伴 な う 「弱 気 」 の市 場 。 す なわ ち有 価 証 券価 格 が過 度 に下 落 し,し た が っ て貯蓄 預 金M3は 低 下 し,ま た 「弱気 筋 」 は 下 落 す

(3)ク ラ イ ン は 「投 資 財(も し くは 非 流 動 資 産)物 価 水 準 決 定 ㊧ 弱 気 理 論 」 と述 べ, ケ イ ン ズ の 弱 気 の 理 論 は 直 接 貨 幣 利 子 率 に は 関 係 が な い と い う 解 釈 を し て い る が,こ の 弱 気 の 理 論 は 後 に 「一 般 理 論 」 に お い て 貨 幣 利 子 率 決 定 の 流 動 性 選 好 説 に 発 展 し た こ と を 考 慮 す る と,む しろ 本 稿 の よ うに 貨 幣 利 子 率 決 定 の 理 論 と解 釈

した 方 が 妥 当 で あ る と 思 う。

LRKIein,TheKeptnsianRevolution,(Macmillan,1947.),p.16.

篠 原 三 代 平 。宮 沢 健 一 訳 「ケ イ ン ズ 革 命 」(有 斐 閣,昭 和41年)18頁

本 稿 と 同 じ立 場 を と る も の に 一谷 藤 一 郎 「ケ イ ンズ 理 論 に お け る利 子 率 の 決 定 因 」 バ ンキ ン グ205号

(4)J・M・Keynes,op・cit・,voLI.PP,252‑253・ 鬼 頭 訳 「ケ イ ン ズ貨 幣 論 』III, 14〜15頁

(7)

金融理論 におけ る株式 の位 置づけ につい て(鈴 木) 一37一 る市場 に お い て彼 等 の手 配 を 閉 止 しつ つ あ る。

(4)公 衆 の意 見 の 一致 を伴 な う 「弱 気 」 の 市 場 。す なわ ち有 価 証 券 価 格 が 不 十 分 に下 落 し,し た が って 貯 蓄預 金M3は 上 昇 し,ま た 「弱気 筋 」 は 下 落 す る市 場 に おい て 彼 等 の手 配 を増 大 しつ つ あ る。

い ま,ag‑一 局 面,す なわ ち意 見 の一 致 を伴 な う 「弱気 」の市 場 では,M3を 所 有 してい る人 々は 証券 の 買 い に 出動 す る。 他 方,市 場 に お け る売 り手 も他 の 証 券 へ の乗 換 の た め に手 持 ち の証 券 を 処 分 す る こ とに な る。 したが って, M3は 減 少 し,貨 幣 利 子 率 は 下 落 に 向か う。

第 四 局面,す なわ ち意 見 の一 致 を伴 な う 「弱気 」 の 市場 で は,第 一 局面 と は逆 に,市 場 の売 り手 は 「弱 気 」 に な って手 持 ち の証 券 を 処 分 し,M3を り多 く所 有 し よ うとす る。 買手 は 空売 り(ShortSellin9)の 決 済 な どで あ っ て,M3を 所 有 して い る人 々は 一 般 に 「弱 気 」 のた め に 証 券 市 場 に 出動 しな い 。 そ こで,M3は 増 大 し,貨 幣 利 子 率 は 上昇 に転 ず る。

第 二,第 三 局 面 は,両 者 の 中 間 に 存在 し,M3お よび 貨 幣 利 子 率 の変 動 方 向は 必 ず し も明 確 で は な い 。 しか し,第 二 局 面 は 強気 の方 が 優 勢 で は あ る が,「 弱 気筋 」 が 証 券 市 場 に 出動 し手 持 ち証 券 を 売 却 す る よ うに な るの で, M3は 増 大 し,貨 幣利 子 率 は 若 干下 落す る。 この局 面 は証 券価 格 の変 動 の上 方 転換 点 を意 味 し,第 四 局 面 に 証 券 価 格 の変 動 は 移 行す るの で あ る。 第 三 局 面 は 第二 局面 とは逆 に 「弱 気 」 が 優 勢 に な るが,「 強 気 筋 」 が 証 券 市 場 で 買 いに 出動 す るの で,M3は 減 少 し,貨 幣利 子 率 は 若 干上 昇 す る。 第 三 局 面 は 証 券 価 格 の変 動 の 下 方転 換 点 を示 して い るので あ る。

した が って,第 一 局 面 は証 券 価 格 の 上昇 過 程,第 二 局 面 は 上 方 転 換 点,第 四 局 面 は 下降 過 程,第 三 局面 は下 方 転 換 点 を 表 わ してい る もの とい え よ う。

以 上 の証券 価 格 の変 動 の観 点 か らの貯 蓄預 金M3と 有価 証 券市 場 間 の貨 幣 の移動 は 貯 蓄Sと は無 関 係 に説 明 され てい るが,産 業 的流 通 か ら金 融 的流 通 に 移動 した貨 幣,す なわ ち貯 蓄Sも 「弱 気 ・強 気」 に よ って支 配 され,貯 預 金M3と 有価 証 券 の いず れ か に流 れ てい くので あ る。 した が って,貯 蓄S

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一38一 究.第18巻 第3号

の 貯 蓄預 金M3と 有価 証券 へ の流 れ は,貯 蓄預 金M3と 有価 証券 間 の た ん な る貨 幣 の移動 と と もに,有 価 証 券 価 格 の将 来 の予 想 に 関す る 「弱 気 ・強 気 」 に よ って 支配 され,直 接 も し くは 間接 に投 資1に 結 びつ き,そ こに 貨幣 利 子 率 が 決 定 され る とい え るの で あ る。

他 方,ケ イ ンズは,『 貨 幣論 』 に お い て,以 上 に 述 べ た利 子 論 とは ま った く異 な った 自然利 子 と貨 幣利 子 よ りな る古 典派 利 子 論,た とえ ば ウイ クセ ル

(5)

の利 子 論 を ほ とん どそ の ま まの形 で 踏 襲 して い るの で あ る。

い ま,貯 蓄 をS,投 資を1,自 然 利 子 率 をr',貨 幣利 子 率 をr,貨 幣 量 を Mと す れ ぽ,自 然 利子 率r'は,

S(rノ)=1(r')

に よって 決 定 され る。 他 方,貨 幣 利 子 率rは 貸付 資金 の需 給 の均 衡 点 に お い て 決定 され る。

S(r)士dM;1(r)

貨 幣数 量 の変 量dMは 銀 行 信 用 に 左 右 され るゆ えに,貨 幣利 子 率 は 銀行 信 用 の影 響 も受 け る こ とに な る。 また,現 実 の貯 蓄 と投 資は 貨 幣利 子 率 に 依存 す る。 な お,『 一 般 理 論 』 と異 な り,貯 蓄 は貨 幣利 子 率 の増加 関 数,そ の反 面 消 費 は そ の減 少関 数 で あ り,投 資 は 貨 幣利 子 率 の減 少 関数 で あ る ことが想 定 され てい る。

両 式 の 関 係か ら,貨 幣 量 不変(dM‑O)な る ときに はrLrに な り,貯 蓄 と投 資 は均 衡 し,全 産 業 の利 潤 は 零 に な る。 貨 幣 量 増加(dM>0)の 場 合 に は,貨 幣 利 子率 は 自然 利 子 率 を下 回 り(r'>r),投 資 は貯 蓄 を 超 過 し,利 潤 は 正 とな って経 済 は拡 大 す るに い た る。 最後 に,貨 幣数 量 減 少(AM<0)の 場 合 に は,r'<rと な り,貨 幣 利 子 率 は 自然利 子 率 を 上 回 って貯 蓄 が 投 資 を

(5)J・M・Keynes,op・cit・,vo1・1・PP・154〜155。 鬼 頭 訳 「ケ イ ン ズ 貨 幣 論 」III, 45頁 。 に お い て 第 二 の 基 本 方 程 式 の 第 二 項 を 零 な ら しむ べ き 利 子 歩 合 を 自 然 利 子 率 と呼 ぶ,と 述 べ て い る 。 した が つ て,1‑S=0よ り全 産 業 の 利 潤Qが 零 に な る 利 子 率 を 自然 利 子 率 と 定 義 し て い る こ とに な る。 と こ ろ が,ウ イ ク セ ル の 自 然 利

子 率 は,資 本 財 産 業 も 消 費 財 産 業 も と もに 利 潤 が 零 な る 場 合 に 支 配 して い る 利 子 率 の こ と で あ る 。 そ こ で,厳 密 に い え ば,多 少 の 相 違 は 認 め られ る の で あ る 。

(9)

金融理 論におけ る株式 の位置づけ につい て(鈴 木) 一39一 超 過 す る。 よ って,経 済 の 縮 少 が もた らされ るの で あ る。 い うまで もない が,『 貨 幣論 』 は 完 全 雇 用 を前 提 と して い るので,自 然 利 子 率 は 完 全 雇 用 に お け る均 衡利 子 と して考 え る こ とが で き,し た が って,自 然 利 子 率 に よっ て 規 定 され る経 済規 模 を 上 限 と して,経 済変 動 は繰 り返 え され る とい え るので あ る。

本 稿 の 主題 は 『貨 幣 論』 に おけ る利 子 論 の 展 開 で は な い ので,こ れ 以上 の 追求 は しな い こ とに す る。 『貨 幣 論』 の利 子 論 は,す で に 明 らか な よ うに 二 元 的 で あ る こ とが 判 明 す れ ば よい の で あ る。

で は,株 式 の位 置 づ け は どの よ うに な され て い るので あ ろ うか 。

「弱気 」 の 理 論 に おい ては,貯 蓄 預 金M3と 代 替 関 係 に あ る 有価 証 券 は Securitiesと して表現 され て い る。 そ こで,株 式 は 当 然有 価 証 券,し たが っ て 「弱 気 」 の 理論 の対 象 に な り,金 融 的流 通 を 構成 す る一媒 介 物 とな っ て, そ こで 決定 され る貨 幣利 子 率 と直 接 的 な 関 係 を有 す る地 位 に おか れ て い る と い え る。 しか し,貸 付 資金 説 に よっ て決 定 さiれる貨 幣利 子 率 も し くは 市 場利 子率 の定 義 に おい て,ケ イ ソズは,「 市 場利 子 率 な る 言葉 を銀 行 利 率(Bank Rate)と 債券 利 率(BondRate)と の合 成 物 に対 して 用 うるで あ ろ う」,とくふ

述 べ,株 式 は 貨幣 利 子 率 と直接 的 関 係 は 有 しな い こ とに され てい る。 とい っ て,他 の 経済 諸 要 因 との関 係 が 明示 され てい るわ け で は な い。 よ って,『 貨 幣論 』 では 株 式 の 位 置 づ け は曖 昧 に され て い る とい え るの で あ る。

株 式 は証 券 利 回 りに 関 係 を 有す る。 と ころが そ の証 券 利 回 りも し くは 貨 幣 利 子 論 が 二 元 的で あ れ ば,当 然証 券,と りわ け 株 式 の位 置 づ け は曖 昧 に な ら

ざ るを え な い。 よっ て,こ の曖 昧 の基 本 的原 因 は 貨 幣利 子 論 の二 元 化 に あ る と思 う。

と ころで,ケ イ ソズ は,「 銀 行 利 率(BankRate)の 変 化 は市 場 利 子 率 を 同 じ方 向 に動 か す と仮定 しよ う」 とい い,市 場 利 子 率 を 構 成 す る 債 券 利 率

(6)J.M.Keynes,op.cit.,vol.ILP.201.鬼 頭 訳 「ケ イ ン ズ 貨 幣 論 」II,109頁 (7)lbia・

(10)

一40一 第18巻 第3号

(BondRate)と 銀 行 利 率(BankRate)は 同 じ方 向 に 動 く こ とを 示 唆 して い る が,他 方,貸 付 資 本(た と え ぽ 債 券)と 実 物 資 本(た と え ぽ 株 券)の 値 は 反 対 の 方 向 に 動 き,か くて 一一部 分 相 互 に 補 整 し合 う こ と が 稀 で は な い で あ ろ う」 とい っ て い る。 こ の こ とか ら,『 貨 幣 論 』 で の ケ イ ソズ は,株 式 と 他 の 債 券 と の 異 質 性,す な わ ち株 式 は 貨 幣 利 子 率 に 直 接 的 関 係 を 有 しな い こ

と に す で に 着 目 して い た と解 す る の が 妥 当 で あ る と思 う。

3.『 論 』

『一 般 理 論 」 で は,貨 幣 流 通 の 分 析 は 『貨 幣 論 』 に 比 べ て 著 し く後 退 し て い る。 しか し 『貨 幣 論 』 の 大 き な 貢 献 の 一 つ で あ っ た 「弱 気 」 の 理 論,す わ ち 金 融 的 流 通 の 把 握 は 『一 般 理 論 』 に も受 け つ が れ,よ り一 層 重 要 な 地 位 を 与 え られ,そ の 結 果,株 式 の 経 済 的 意 義 お よ び 効 果 も十 分 に 認 識 さ れ る よ

うに な る の で あ る。

『一 般 理 論 』 は,周 知 の よ うに 自然 利 子 お よ び 貸 付 資 金 説 よ りな る 古 典 派 利 子 論 を 否 定 し,『 貨 幣 論 』 の 「弱 気 」 の 理 論 も し くは 金 融 的 流 通 を さ らに 発 展 させ た流 動 性 選 好 に 利 子 率 決 定 の 直 接 的 要 因 と して の 中 心 的 地 位 を 与 え,ケ イ ンズ 貨 幣 利 子 論 は 一 元 的 に な り,体 系 化 さ れ る よ うに な った の で あ

る。

流 動 性 選 好 に つ い て,『 貨 幣 論 』 の 「弱 気 」 の 理 論 と 関 連 させ,そ の 発 展 の あ とを た ど りな が ら若 干 説 明 を 加 え る こ と に し ょ う。

『一 般 理 論 』 に お い て も,貨 幣 は そ の 保 有 動 機 に も と つ い て 取 引 動 機 (Transactions‑Motive),予 備 的 動 機(Precautionary‑Mo七ive)お よび 投 機 的 動 機(Speculative‑Mo七ive)の 三 種 類 に 区 別 さ れ て い る。 取 引 動 機 は 家 計 お

よ び 企 業 の 日常 の 取 引 の た め の 貨 幣 の 必 要 で あ り,家 計 の そ れ は 所 得 動 機, 企 業 の そ れ は 営 業 動 機 に さ らに 区 分 さ れ る。 予 備 的 動 機 は 将 来 の 貨 幣 に 関 す

る安 全 の た め の 需 要 で あ り,投 機 的 動 機 は 将 来 に つ い て 市 場 よ り も よ り よ く

(8)J.M・Keynes,op・oit・,vol・1・P・249・ 鬼 頭 訳 「ケ イ ン ズ 貨 幣 論 」III,10頁

(11)

金融理論 におけ る株式 の位置づけ につい て(鈴 木) 一41一 予想 す る こ とに よっ て利 益 を え よ うとす る 目的 か ら生 ず る貨 幣需 要 の こ とで あ る。 したが っ て,『 貨 幣 論』 の 貨 幣 需 要 に 対 応 させ る と,所 得 動機 は 『貨 幣 論 』 の所 得預 金 に,営 業 動 機 は 営 業 預 金 に,投 機 的動 機 は 貯 蓄預 金 にそ れ ぞ れ対 応 し,予 備 的動 機 に も とつ くもの は一 部 は 『貨 幣 論』 の現 金 預 金,す な わ ち所 得預 金 と営 業 預 金 の総 計 に,他 は貯 蓄 預 金 に 含 まれ る と解 す る こ と が で き る。 な お,取 引動 機 お よび 予備 的動 機 に も とつ い て保 有 され る貨 幣 は

じ  ノ

取 引 貨 幣,投 機 的 動 機 に よ るそ れ は 資 産 貨 幣 と も よぼ れ て い る。

い ま,取 引 貨 幣 をM1,資 産 貨 幣 をM2,そ れ ぞ れ の 需 要 関 数 をLl,L2と す れ ぽ,流 動 性 選 好 関 数 は つ ぎ の よ うに 表 わ され る。

M‑M、+M2‑Ll(Y)+L2(r)

上 の 式 に お い て,取 引 貨 幣M、 は 所 得Yに 対 応 す る需 要 関 数 も し くは 流 動 性 選 好 関 数L、 に よ っ て 決 定 され,資 産 貨 幣M2は 利 子 率rの 流 動 性 選 好 関 数L2に よ っ て 決 定 され る。

ケ イ ソズ は 貨 幣 の 所 得 流 通 速 度V・ を 一 定 とす れ ば,取 引 貨 幣 の 需 要 は 所 得 水 準Yに 依 存 し,そ の 増 加 関 数 で あ り,

YL 1‑・ 一▽T‑Mi

1

とい う関 係が 成 立す る と してい る。 他 方,資 産 貨 幣 は価 値 保 蔵手 段 と して債 権 と代 替 関係 に たつ もの とみ られ,利 子 率rの 減 少 関 数 で あ り,

M2=L2(r)

とい う関 係 が成 立す る もの と され て い る。

資 産 貨 幣M2は 『貨 幣 論』 の 貯蓄 預 金 に対 応 す る ところか らす で に 明 らか

(9)価 値 保 蔵 手 段 と して の 機 能 を 貨 幣 に 最 初 に 認 め た 文 献 は ケ イ ソ ズ の 「貨 幣 論 」 で あ る。 こ の 貢 献 も 貨 幣 の 需 要 側 の 重 視,す な わ ち 「弱 気 」 の 理 論 の 展 開 に 由 来 す る も の とい え よ う。 投 機 的 動 機 に よ る 保 有 貨 幣 も し くは 貯 蓄 預 金 を 資 産 貨 幣 と

よぶ の は,貨 幣 に 価 値 保 蔵 手 段 と し て の 機 能 を 認 め た か らに ほ か な ら な い 。 資 産 貨 幣 と い う用 語 を 最 初 に 使 用 し た の は ハ ン セ ン で あ る 。

A.且 、Hansen,MonetaryThθoγyα 妬.FisicalPolicy,1949,p.62.

小 原 敬 士,伊 東 政 吉 訳 「貨 幣 理 論 と財 政 政 策 」 昭 和28年,70頁

(12)

一42‑‑t‑一 第18巻 第3号

な よ うに,資 産 貨 幣M2の 流 れ が金 融 的流 通 を構…成 し,取 引 貨幣Mlの 流 れ が産 業 的 流 通 を 構成 す るの で あ る。

さて,こ こで 金 融 的 流 通 に 直接 関 係 が あ り,『 貨 幣 論 』 の 「弱 気 」 の理 論 を さ らに 発 展 させ た流 動 性 選 好 関 数L2に 問題 を しぼ って,さ らに説 明 を加 え てみ る こ とに し よ う。

ケ イ ソズの流 動 性 選 好 とは,す で に 明 らか な よ うに,貨 幣選 好 の 別 言 で あ る。 「個 人 の流 動 性 選 好 は,彼 が諸 々異 な る組 み 合 せ の状 況 の も とに お い て 貨 幣 の形 態 に お いて 保 有 しよ うと欲 す る彼 の資 産 量 を示 す 表 に よ って与 え ら

(10)

れ る」 といい,「 利 子 率 が 貯 蓄…あ るい は待 忍(Waiting)そ れ 自体 に対 す る報 酬 で あ りえ な い こ とは 明 か なは ず で あ る。 な にゆ え な らば,も し人 が彼 の貯 蓄 を貨 幣 で 保 蔵 す るな らば,以 前 と同 じ額 だ け 貯 蓄 して も,彼 は何 等 の利 子 を も収 得 しない か らで あ る。 これ に反 し,利 子 率 の異 な る定 義 は きわ め て多 くの言 葉 を もっ て利 子 率 は特 定 期 間流 動 性 を手 離す こ とに対 す る報 酬 で あ る こ とを わ れ わ れ に 教 え る。 な に ゆ え な らば 利 子 率 は,そ れ 自体 に お い ては, 一定 貨 幣 額 と特 定 期 間 債 権(Debts)と 交 換 に 貨 幣 に対 す る支配 力 を手 離 す こ との た めに 獲 得 し うる額 との 間 の反 比 例 以外 の なに もの で もな いか らで あ

 ニ ラ

る」 と述 べ る。 か く して,利 子 率 は 投 資 の た め の 資 金 需 要 を 現 在 の 消 費 を 抑 制 し よ う とす る心 構 え と均 衡 化 せ しめ る 「価 格 」 で は な く,富 を 貨 幣 の形 態 に お い て 保 有 し よ う とす る 欲 求 を 使 用 し う る貨 幣 量 と 均 衡 化 せ しめ る 「価 格 」 に な る の で あ る 。 こ の こ とか ら,『 一 般 理 論 』 に お い て は,銀 行 信 用 も

含 め た 貯 蓄 と投 資 の 均 衡 か ら貨 幣 利 子 率 が 決 定 され る とい う貸 付 資 金 説 お よ び 自然 利 子 論 が 否 定 され,『 貨 幣 論 』 の 「弱 気 」 の 理 論 を 発 展 させ た 流 動 性 選 好 説 が 貨 幣 利 子 率 決 定 の 中 心 的 位 置 を 占 め,貨 幣 利 子 論 も し くは 利 子 論 は

⑩J.M・Keynes,TheGeneralTheoryofEmうloアment,InterestcmdMoneア, 1936,p.166.

塩野 谷九十 九訳 「雇用 ・利 子お よび貨 幣の一般理論 」第三版 昭和24年,200頁 ωKeynes,GenerαlTheorツ,etc.,P.167・

塩野 谷訳 「一般理 論』200頁 。

(13)

金融理 論におけ る株式 の位置づ けについ て(鈴 木) 一43一 一 元 化 され た といえ るの で あ る。

流 動 性 選 好 説 に よる貨 幣利 子 率 決 定 の メ カニ ズ ムを部 分均 衡 を前提 に して 図示 し ょ う。

第2図

r

ro

M

A S 0

第2図 に お い て,縦 軸 に 利 子 率r,横 軸 に 貨 幣 量Mが 測 られ る 。 貨 幣 量 の 供 給 を 一 定 と し,そ れ をOAに て 表 わ し,0か ら左 に 取 引 貨 幣 の 需 要M、

を,Aか ら右 に 資 産 貨 幣 の 需 要M2を そ れ ぞ れ 示 す 。M、 は 所 得 の関 数 で あ り,M2は 利 子 率 の 関 数 で あ る か ら,貨 幣 需 給 の 均 衡 は

M・ ・M,(Y)十M2(r)

(14)

一44一 第18巻 第3号

に よ っ て 示 され る。 い ま,所 得 を 所 与 と し,そ の た め の 貨 幣 需 要M、 をOS で 表 わ せ ぽ,M2はASに よ っ て 示 さ れ る。 このM2と 流 動 性 選 好 関 数L2 に よ っ て,均 衡 貨 幣 利 子 率r・ が 決 定 され る 。 い うま で も な い が,流 動 性 選 好 関 数L2は 貨 幣 利 子 率rが 低 下 す れ ば,資 産 貨 幣M2の 需 要 は 増 大 し, 逆 に 貨 幣 利 子 率rが 上 昇 す れ ば そ れ は 減 少 す る もの と想 定 され て い る 。

『一 般 理 論 』 の 金 融 的 流 通 の 全 体 を 問 題 に す る こ とに し よ う。 こ こ の 説 明 で は,流 動 性 選 好 に よ る貨 幣 利 子 率 決 定 の メ カ ニ ズ ム の と こ ろ とは 異 な り, 貨 幣 量 お よび 所 得 の 一 定 を 前 提 とす る 必 要 は な い 。

第3図 一般理 論の金融的 流通 既存資本

資産貨幣

債権 → 利噺 ↓

銀行信用

/

投資1

矢 印は貨幣の流れ

第3図 は金 融 的流 通 の 全 体 を 図示 した もの で あ る。 す なわ ち流 動 性 選 好 L2に よ る資産 貨 幣 と債 権 の選 択 を通 じて決 定 され る貨 幣 利 子 率 を 基礎 と し て貯 蓄 の投 資 へ の フ ローを示 して い る。 『貨 幣 論」 の金 融 的流 通 と同様 に, 既 存 資本 が 貯 蓄 に総 合 され て貨 幣 利 子 率 を 決 定 し,貯 蓄 は そ の利 子率 の水 準

(15)

金融理論 におけ る株式 の位置 づけについ て(鈴 木) 一45一 いか んで 債権 また は 資産 貨 幣 一 銀 行信 用 の ル ー トを 通 っ て投 資 に到 達 す る の で あ る。 た だ,こ の第3図 は,予 想利 子率 を第2図 と異 な り所 与 と して い な い ので,債 権 利 子 率 も し くは 価 格 の将 来 に関 す る予 想,す な わ ち 「弱気 ・ 強 気 」 も貨 幣 利 子率 お よび貯 蓄 の フ ローの ル ー トに影響 を与 え る こ とを 暗 示

して い る。 した が って,『 貨 幣 論』 と同 じよ うに,「 弱 気 」 が 証 券 市場 を支 配 した ら資 産 貨 幣 は増 大 し,債 権 利 子 率 も し くは 貨 幣利 子 率 は 上昇 し,逆 に強 気 が市 場 を 支 配 した ら資産 貨 幣 は 減少 し,貨 幣 利 子率 も 低 下 す る こ とに な る。 同時 に,強 気 の と きには,貯 蓄 は よ り多 く債 権 ル ー トを通 り,逆 に,弱 気 の場 合 に は 資 産 貨 幣一 銀 行 信 用 の ル ー トを よ り多 く通 る といえ るの で あ

る。 な お,す で に説 明 した よ うに,債 権 ル ー トは企 業 の新 規 の証 券発 行 に よ る資金 調 達 に よって 生 じた 貨 幣 ル ー トだ け で は な く,既 存 の証 券 を売 却 して え た 資金 も し くは 貨 幣 を投 資 に 向け る こ とも含 意 してい る ので あ る。

『一般 理 論 』 の金 融 的流 通 は,以 上 に 述 べ た か ぎ りで は,貨 幣利 子 率 決定 の メ カ ニズ ムを 除 き,『 貨 幣 論 』 のそ れ とほ ぼ 同 じで あ るが(『 貨 幣 論』 で は 貯 蓄 預 金Aは 有価 証 券 と代 替 関係 に な い),『 一 般 理論 』 で は 資産 貨 幣 と代 替 関係 に あ る ものが債 権(Debts)と な って い るの に対 し,『 貨 幣論 』 で は そ れ が有 価 証 券(Securities)と な っ てい る と ころ に大 きな 相異 が認 め られ る。 別 言す れ ぽ,『 一般 理 論』 で は 株 式 は 資 産 貨 幣 と 代 替 関係 に な い,換 言 す れ ば 株 式 は貨 幣 利 子 率 決 定 の 直接 的 要 因 とは な って い ない のに対 し,『 貨 幣 論 』 で は株 式 は貨 幣 利 子 率 決定 の 直接 的要 因 と して の地位 を与 え られ てい る。 こ れ は,『 貨 幣 論』 に お け る株 式 と他 の証 券 との 異 質性 に 関す る認 識(位 置 づ け は曖 昧 で あ ったが)が 基礎 に な って,後 述 す る よ うに発 展 した もの とい え

るで あ ろ う。

『一般 理 論 』 の貨 幣利 子 論 は,貨 幣 の全 量 を 問 題 に して い る とい う意 味 で ス トッ クの利 子 論 で あ り,さ らに流 動 性 選 好 と して の 資産 貨 幣 と債権 との選 択 に よ って決 定 され る利 子 論 とい え るが,こ れ は,フ ローの利 子 論,す なわ ち貸付 資金 説 を否 定 し,貯 蓄預 金 と有 価 証 券 との代 替 を 資産 貨 幣 と債 権 との

(16)

一46一 第18巻 第3号

代 替 に変 更 し,株 式 を貨 幣利 子 率 の 決定 要 因か ら除 外 して 「弱気 」 の理 論 を さ らに 発 展 させ た とい う意 味 で,『 貨 幣 論』 の 貨 幣利 子 論 に 大 き く相 異 す る ので あ る。

そ こで 問題 は,貨 幣利 子 率 の 決定 要 因か ら除外 され た株 式 が どの よ うに位 置 づ け られ,ど の よ うな経 済 的 意義 お よび効 果 を 認 め られ て い るか とい うこ

とに な る。

『一般 理 論』 に おけ る株 式 の位 置 づ け お よび そ の経 済 的 意義 は,主 と して そ の 第12章 「長期 期 待 の状 態 」 に お い て説 明 され て い る。

ケ イ ンズは,「 投 資 の規 模 は 利 子 率 と規 模 の異 な る経 常投 資 に対 応 す る資 本 の 限界 効 率 との間 の関 係 に 依存 し,資 本 の限 界 効 率 は 資 本 資産 の供 給 価 格

(12)

とそ の 予想 収 益 との間 の関 係 に 依存 す る」 とい い,一 資 産 の 予想 収 益 を決 定 す る諸 要 因 セとつ い ては,一 部 分 は多 か れ 少 なか れ確 実 に 知 られ る とわ れ わ れ の想 定 し うる現 存 の事 実,す な わ ち 「諸 々の類 型 の資 本 資 産 な らび に 資本 資 産 一般 の現 存 量 と,そ の能 率 的 な 生産 の た め には 資 本 の 比 較 的 大 な る援 助 を

(13)

必 要 とす る財 貨 に対 す る現 存 消費 者 需 要 の強 さ」 に 関す る期 待,い わ ゆ る短 期 期 待 で あ り,一 部 分 は 多 か れ 少 なか れ 確 信 を もっ て予測 し うるに と ど まる 将 来 の 出来 事,す なわ ち,「 蓄 積 資 本 の類 型 お よび 量 な らび に 消費 者 の嗜 好 の将 来 の変 化,当 該 投 資 物 の 存続 期 間 中 に おけ るそ の 時 々の有 効 需 要 の強 さ

(14)

お よ び そ の 存 続 期 間 中 に お こ り う る貨 幣 で 表 わ され た 賃 金 単 位 の 変 化 」 に 関 す る期 待,い わ ゆ る長 期 期 待 で あ る と して い る。

両 期 待 の うち い ず れ が 重 要 で あ るか は 予 想 収 益 が な に に 関 係 が あ るか に よ っ て き ま る。 い うま で も な く,こ こで は 予 想 収 益 は 資 本 の 限 界 効 率 に か か わ らせ て あ るの で,長 期 期 待 が は る か に 重 視 され て い る。

設 備 投 資 を 決 定 す る 経 済 主 体 は 企 業 家 で あ る 。 そ こ で,企 業 家 の 彼 等 の 長 (i2)Keynes,GeneralTheory,etc.,P・147・

塩野 谷訳 「一般理論 』176頁 θ

乃ぎ4.

(④ 乃鉱

(17)

金融 理論におけ る株式 の位置づ けにつ いて(鈴 木) 一47一 期 期 待 に よせ る確 信 の程 度 が 問題 に な る。 ケ イ ソズは,「 わ れ われ の 決意 の 基 礎 を なす 長期 期 待 の状 態 は,… …単 に われ われ の な し うる最 も確 か ら しい 予測 に のみ 依 存 す る もので は ない 。 そ れ は また この予 測 を な す に 当 って の確 信 に わ れ わ れ の最 善 の予 測 が ま った く失 敗 に帰 す る可 能 性 をわ れ わ れ が どの程 度 に 高 く評価 す るか に一一 依存 す る。 も しわ れ わ れ が 大 な る変 化 を予 想 しなが ら も,こ れ らの変 化 が 如 何 な る明確 な形態 を とって現 わ れ るか に つ い て,き わ め て 不確 実 で あ るな らば,わ れ われ の確 信 は 弱 い もの とな るで あ

 ヨ

ろ う」 とい い,確 信 の状 態 は 実 際 家 達 が常 に綿 密 な最 も熱 心 な注 意 を払 って い る こ とが らで あ る と して い る。 しか しなが ら,確 信 の状 態 につ い ては 先 験 的 に い うべ き多 くの ものは 存 しな い と して,「 われ わ れ の結 論 は 主 と して市

(16)

場 と事 業 心理 との実 際 の観 察 に 依存 しな けれ ば な らない 」 と述 べ,初 期 資本 主義 時 代 の企 業 行 動 を そ の 例 と して観 察 の対 象 にす る。

「企 業 が主 と して発 起 人 また は そ の友 人 お よび仲 間 達 に よ って所 有 され て いた 古 い時 代 に は,投 資 は,生 活 の方 途 として事業 に乗 り出す血 気 盛 んに し て建 設 的衝 動 にか られ た 人 達 の 十 分 な補 充 に依 存 して い て,予 想 利 潤 の正 確 な 計 算 に は実 は依 存 して い なか った。 事 業 は あ る程 度富 くじに類 す る もので あ った。 … … も し人 間 の 性 質 が僥 倖 を うる こ とに 何 等 の誘 惑 を も感 ぜ ず,工 場 や 鉄 道 や 鉱 山や 農 場 を建 設 す る こ とに(利 潤 を 離 れ て)何 等 の満 足 を もお

ぼ え なか った と した な らぽ,単 に冷 静 な計 算 の結 果 と しての み の投 資 は あ ま

ロリ

り多 くは行 なわ れ な か った で あ ろ う」 と してい る。

か くて,ケ イ ンズは,企 業 家 の長 期 期 待 の形 成,お よび それ を基 礎 とす る 予想 収 益 の計 算 は 一 種 の 心 理 的 要 因 に依 存 す る と主張 す るの で あ る。

ところ で,今 日で は所 有 と経 営 の 分離 に伴 な い,投 資 市場 が組 織 化 され る

(ISKeynes,GeneralTheory,etc,,p.148.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 」177〜178頁 (1㊦Keynes・GeneralTheory,etc・,P.149.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 」178頁 (ITKeynes,GeneralTheory,e七c.,p.150.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 」180頁

(18)

一48一 第18巻 第3号

よ うに な った 。株 式 市場 も し くは 株 式 取 引 は い ろい ろ の機 能 を 有 す る と思わ れ るが,そ の一 つ に 評価 の機 能 が あ る。 ケ イ ソズ は この機 能 に 注 目 し,「 証 券 市 場 の存 在 しな い場 合 に は,わ れ わ れ が ひ とた び実 行 に移 して しま った投 資 の再 評 価 を しぼ しぽ 企 つ べ き何 等 の手 が か りが な い。 しか し株 式 取 引所 は 多 くの投 資物 を 毎 日再 評価 し,そ の再 評価 は 個 々人 に対 して(社 会 全 体 で は

く  ラ

な いが)彼 の 投 資契 約 を改 変 す べ き しば しば の機 会 を与 え る」 とす る。

か くて,企 業 者側 の予 想 収 益 の計 算 が心 理 的要 因 に頼 っ てい る こ とが 原 因 とな って,こ の株 式 市 場 の 当該 企業 の投 資物 に対 す る評 価 が 企業 者側 の 予想 収 益 に反 映 し,不 可 避 的に 経 常 投 資率 に決 定 的影 響 を お よぼ す と結論 す るの で あ る。

ケ イ ンズ に よれ ば,利 子 率 お よび 資本 資産 の供 給価 格 が 一定 な ら,株 価 の 騰 貴 は 当該 企 業 の予 想 収 益 を 上昇 させ,当 該 企 業 の 資 本 の 限界 効 率 を 上 昇 さ せ る結 果,利 子 率 との比 較 で 当該 企業 の投 資 を 誘 発 させ る こ とに な る。 他 方,株 価 の下 落 は そ の逆 で,当 該 企 業 の予 想 収 益 お よび 資本 の限 界効 率 を 低

ご 

下 させ,投 資 支 出を縮 少 させ る原 因 とな る。

か くて,株 価 の上 昇,す なわ ち株 式 の利 回 りの 下 落 は 資本 の限 界効 率 を 上 昇 させ,株 価 の下 落,す なわ ち株 式 利 回 りの上 昇 は 資本 の限 界 効 率 を ひ き下 げ る と ころか ら,ケ イ ソズ は 『一 般 理 論 』 に お い て は,株 式 を 資本 の 限 界効 率 の 中 に吸 収 させ,そ の結 果 株 式 の経 済 的 意義 お よび効 果 を 明確 に した とい

え るので あ る。

も っ と も,以 上 の 論述 は株 式 を 取 引 所 に 上 場 して い る企 業 に関 しての み 妥 当す る。 なに ゆ えな らぽ,非 上 場 証 券 を 発 行 して い る企 業 は 買取 られ る恐 れ もない し,ま た株 式 発 行 に よ って有 利 な コス トで長 期 資金 を調 達 す る可 能 性

a8)Keynes,GeneralTheoリ ノ,etc.,p.151.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 」180頁

「一 般 理 論 」 に お け る 資 本 の 限 界 効 率 と い う概 念 は,「 貨 幣 論 」 の 自然 利 子 に 相 当 す る も の と い え る。 も っ と も,前 者 は 不 完 全 雇 用 も前 提 と し て い る の に 対 し, 後 者 は 完 全 雇 用 を 前 提 に して い る と い う意 味 で,多 少 の 相 異 は 認 め られ る。

(19)

金融 理論 におけ る株式 の位 置づけにつ いて(鈴 木) 一49一 も きわ め て少 な い か らで あ る。 一 般 に,非 上 場 証 券 を発 行 して い る企 業 は 中 小 企 業 で あ るた め,こ れ に よ って ケイ ソズの株 式 の位 置 づ けに 関 す る積 極 的

貢献 が 損 わ れ る こ とは な い と思 う。

この よ うに書 い て くる と,ケ イ ソズは 様 式市 場 の評 価 の機 能 を 高 く評 価 し てい る よ うに とれ るが,実 際 は む しろ逆 で あ る。企 業 家 の長 期 期 待 に 関 す る 確 信 が 心理 的要 因 に 支配 され,き わ め て 不 安 定 であ る こ とは す で に 述 べ た が,こ れ は株 式 投 資 家 も し くは 投 機 家 の 当該 企業 の業 積 も し くは 当該 企業 の 配当 の予 想態 度 に も妥 当す る とい うので あ る。

(20)

この理 由 を基 本 的 と し,さ らに つ ぎの よ うな 若 干 の 要 因 を指 摘 して い る。

(1)社 会 の総 資 本 投 資 の 持 分 の うち,支 配権 を もたず した が って 当該 事 業 の,現 在 な らび に将 来 の,事 情 につ い て何 等 特 別 の知 識 を もた な い 人 々に よっ て保 有 され て い る部 分 が漸 次 増 加 した結 果 と して,そ れ を所 有 して い る人 々また は それ を 買 お うと考 慮 して い る人 々に よる投 資物 に対 す る評 価 に は,実 情 に 関す る知 識 の要 素 が 著 し く少 な くな って い る。

現 存 投 資物 の利 潤 の,明 らか に 一 時 的 で あ っ て重 要 で な い性 質 の 日々の 変 動 が,市 場 に ま った く過 当 の馬 鹿 馬 鹿 し くさ え思 わ れ る影 響 を もた らす 傾 向が あ る。 た とえ ば,ア メ リカの製氷 会 社 の株 式 は,そ の利 潤 が氷 を な に び と も必要 と しな い冬 に比 して季 節 的 に 高 い夏 に は,よ り高 い価 格 で売

られ る傾 向 が あ る といわ れ る。 …… 。

多 数 の不 知 の個 々人 の 群集 心 理 の産 物 と してつ く り上 げ られ る心 理 評価 は,予 想 収 益 に対 して実 際 には 大 した 差 異 を もた らさな い諸 要 因 に も とつ い て 意 見 に急 激 な動 揺 の お こ る結 果 と して,激 甚 な 変 動 を 蒙 る こ とが あ る。 そ れ は か か る心 理 的評 価 を 固執 す べ き確 た る強 い根 拠 が な いか らであ る。 こ とに,現 状 が無 限 に 継続 す る とい う仮説 が,確 定 的 な変 化 を予 想 す る明 白 な根拠 は な い に して も,普 段 よ りは い さ さか あや し くな った 異 常 な

⑳Keynes,GeneralTheorpt,e七c.,pp.153‑155.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 」184〜185頁

(20)

一50一 第18巻 第3号

場 合 に は,市 場 は 楽 観 と悲 観 との 浪 に さ らされ るで あ ろ う。 それ は不 合 理 な こ とで は あ るが,し か もなお 合 理 的 な計 算 の確 固た る基礎 の 存在 しな い 場 合 に は あ る意 味 に おい て 正 当 な こ とで あ る。

(4)し か し,ひ とつ われ われ の 注 目 に 値 す る,と りわ け 特 色 的 な ことが あ る。 普 通 の 素 人投 資 家 のそ れ を 超 えた判 断 と知識 とを もっ てい る専 門 的 な 玄 人 筋 の間 の 競争 に よ って,孤 立 した 不 知 の個 人 の気 ま ぐれ が 修 正 され る で あ ろ うと想 像 され て い た か も しれ な い。 しか しな が ら,た また ま職 業 的 投 資家 お よび 投機 業 者 の精 力 と 熟 練 とは 主 と して 別 の こ とに 注 がれ てい る。 な にゆ え な らば,こ れ らの人 々の大 多 数 が 関 心 を も って い る こ とが ら は,事 実 上,大 部 分,投 資 物か らそ の全 存 続 期 間 に わ た って え られ るべ き 蓋 然 的 な収 益 に 関 してす ぐれ た長 期 予測 を なす こ とで は な く,一 般 の 大衆

にわ ず か先 ん じて評 価 の心 理 的 な 基礎 の変 化 を予 見す る こ とに あ るか らで あ る。 彼 等 の関 心 は,一一投 資 物 が そ れ を 「蔵 って お くた めに 」 買 う人 に と って 真 に如 何 な る価 値 を もつ か とい うこ とに あ るの では な く,三 ヵ 月後 と か 一年 後 とか に,市 場 が群 集 心 理 の影 響 の も とに,そ れ を如 何 に評 価 す る で あ ろ うか とい うこ とに存 してい るので あ る。 の み な らず,こ の行 動 は 頑 迷 な性 向 の所 産 で は な く,上 記 の ご と き線 に 沿 って組 織 され た投 資市 場 の 不 可 避 的 な結 果 で あ る。

この よ うに述 べ た あ と,周 知 の よ うに,職 業 的投 資は 美 人投 票 に 似 て い る と され る。 す な わ ち,「 各 投 票 老 は 彼 自身 が 最 も美 しい と思 う容 貌 を選 ぶ の で は な く,他 の投 票 者 の好 み に 最 も よ く合 うで あ ろ うと思 う容 貌 を 選 択 しな けれ ば な らな い の で あ って,し か も投 票 者 のす べ て が 問題 を 同 じ観 点 か ら眺

な り

め て い るの で あ る」。

か くて,ケ イ ンズ は,「 も し私 が 投 機 とい う言 葉 を市 場 の心 理 を予 測 す る 活 動 に充 用 し,企 業 とい う言 葉 を 資産 のそ の 全 存続 期 間 にわ た る予想 収 益 を

(21)Keynes・Gene「alTheory,etc.,p.156.

塩 野 谷 訳 「一 般 理 論 』189頁

(21)

金融 理論に おけ る株式 の位置 づけにつ いて(鈴 木) 一51一

予測 す る活 動 に充 用 す る こ とが ゆ る され うる と した場 合,投 機 が企業 以 上 に 優 位 を 占め る とは常 に 必ず しもい い え な い。 しか しな が ら,投 資市 場 の組 織 が 改 善 され るに つ れ て,投 機 が優 位 を 占 め る危 険 は事 実 増 大す る。 世 界 に お け る最 大 の投 資市 場 の 一 つ で あ る ニ ュー ヨー クに お い ては,投 機(上 記 の意

  ラ

味 に お け る)の 支 配 力 は 巨大 な もので あ る」 と主 張す る。

以上 の 叙述 か らす でに 明 らか な よ うに,ケ イ ソズは,株 式 市 場 は 投 機 化 し,そ の 評価 は必 ず しも正 当 で は な い こ とを認 め てい る。 した が って,株 式 市 場 の評 価 が企 業 側 の 予想 収 益 を 支配 す る範 囲 内に お い て,企 業 側 の予 想 収 益,し た が って 資本 の限 界効 率 お よび投 資規 模 はゆ が め られ る と され て い る

もの と解 す る こ とがで きる ので あ る。

ケ イ ソズが,こ の よ うに株 式 市 場 の一 つ の 特徴 を経 済 学 の体 系 の 中で 論ず る こ とが で きた の は,い うまで もな く,『 一 般 理 論 』 に お い て株 式 の 位 置 づ け を 明確 に した,す なわ ち株 式 も し くは株 式 利 回 りを 資本 の限 界効 率 の中 に 吸 収 せ しめ た か らに ほ か な らな い。 そ して,そ の位 置づ け を可 能 な ら しめ た 条 件 は 流動 性 選 好説 に よ る貨 幣 利 子 論 の一 元 化 に あ った と思 うので あ る。

4.結

株 式 も し くは 株 式 市 場 は,貯 蓄 者 が新 規 発 行 株 式 に投 資す れ ぽ貯 蓄 を直 接 的 に投 資 に,他 方,貯 蓄 者 が既 発 行 株 式 に 投 資 すれ ば貯 蓄 を 間接 的 に投 資 に 結 びつ け る経 済 的機 能 を は た して い るに もか か わ らず,こ の 経済 的機 能 は い ろい ろ の理 由が あ るにせ よ,あ ま り問題 に され た こ とは な か った。 これ は, 主 と して 株 式 の経 済 学 の 体 系 に おけ る 位 置 づ け が 不 十 分 で あ るか らだ と思 い,解 決 の手 がか りを ケ イ ンズ経 済学 に求 め てみ た の で あ る。

『貨 幣 論」 で は,ケ イ ソズは 貨 幣 の需 要 側 を 伝 統 に 反 逆 して重 視 した 結 果,「 弱気 」 の理 論 を 導 入 し,貨 幣 の流 れ を産 業 的流 通 と金 融 的流 通 とに 区

(20Keynes,GeneralTheory,etc.,p.158.

塩 野 谷 訳 『一 般 理 言制190頁

参照

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