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NGOの理論的分析 : 国際社会におけるNGOの位置づけ

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(1)NGOの理論的分析 国際社会におけるNGOの位置づけ. 根. 岸. 知. 代. ンスのなかでこれらの組織がより中心的な場を 占めていく必要がある,」という見解が示され. はじめに. 近年,環境,開発,人権,女性,平和,翠. ている4).このようにグローバル・ガバナンス. 棉,復興支援など多様な分野で活動するNGO. とは,多様なアクターが利害を調整し合いさま. (Non-Governmental. ざまな問題に対応するプロセスであり,その中. Organization) -の注目 が高まっている.かつては国家が国際社会の. でNGOの役割への期待も高まっている.いま. 唯一の重要アクター(行為主体)であると考え. やNGOは国際社会の中で無視できない存在で. られていたが,現在は非国家アクターの重要. あり,国際関係を理解する上でのひとつの重要. 性も認識されるようになり,. な要素であるといえる.. NGOの存在感も. 増してきている.国際社会には,国家におけ. では,. NGOが社会の諸問題の解決にどの程 度貢献しえるのか. NGOは国際社会の要請に. る政府にあたる世界政府なるものが存在しな い.そのような状況の中で地球規模の問題に対 応するためのひとつのアプローチとしてグロー. どの程度応えることができるのか.これらの点. バル・ガバナンス1)が挙げられる.グローバ. 各国内や国際会議におけるNGOの活動分析,. ル・ガバナンス委員会2)の報告書『ourGlobal. 各国NGOの比較研究,国連およびその他の国. Neighborhood』. (邦訳『地球リーダーシップ』). を明らかにするためにこれまで多くの研究者が. 際機関とNGOの連携に関する研究を試みてき. にはグローバル・ガバナンスの概念が示されて. た.これらの研究からNGOが世界各国でいか. いる.これによると,ガバナンスとは「個人と 機関,私と公とが,共通の問題に取り組む多く. なる活動を展開し,どのような発展を遂げ,成. の方法の集まり」であり,. 果を挙げているかを理解することができる.ゆ. 「相反する,あるい. えに,今後はNGOの活動の拡大がグローバル・. は多様な利害関係の調整をしたり,協力的な行. ガバナンスにいかなる変化をもたらしている. 動をとる継続的プロセスのこと」と定義され,. か,またもたらしうるのかという点についての 検討が必要であると考える.. 「グローバルなレベルでは,ガバナンスはこれ まで基本的には政府間の関係と見なされてき. 本稿の目的は,. たが,現在ではNGO,市民運動,多国籍企業,. NGOについての分析を行っ た上で,国際社会の中でNGOがどのような存. および地球規模の資本市場まで含むものと考え. 在として位置づけられるかを検討することであ. るべきである」とされている3).さらに,. る.これはNGOがグローバル・ガバナンスに. 「市. 民社会組織とNGO部門は,効果的なガバナン. どのような影響をおよぼしうるかを理解する上. スのために欠くことのできない豊かな貢献をし. で重要であると考える. NGOのような民間姫 織は, NPO (Non-Pro丘t Organization,非営利. ている.これまで以上に,グローバル・ガバナ.

(2) 138. 横浜国際社会科学研究. (486). 組織)5),. cso. (civilSociety. 第11巻第3号(2006年9月). Organization,市. 正確な数を示すことは困難である.国際NGO. 民社会組織)6)などと表されることもあるが,. の数が急激に増加し始めたのは1970年代以降. 本稿では,政府(Government)あるいは政府. のことで,. 間機関(Inter-Governmental. 設立数が毎年900を超え,ピーク時の1990年. Organization)と. 異なる立場で環境や開発などの諸分野に従事. 1989年-1992年にかけては年間の. には新たに985団体が設立された7).この時期, 特に環境,平和,安全保障,社会,健康といっ. する民間組織を指すことばとしてNGOを用い る.政府あるいは政府間機関以外ということで あれば企業も入るという議論も間違いではない. た分野で活動する団体の増加が顕著であった.. が,ここでは企業は含まないこととする.以. けており,例えば,. 下ではまずNGOの概念的な整理を行う.. NCO. 同連合では,掲載する団体についての基準を設 ①目的が真に国際的なもの. についての絶対的な定義を示すことは困難であ. であり,少なくとも3カ国において活動する意 図をもっていること, ④その団体の活動分野に. るが,本稿では国連の経済社会理事会のNGO. おいて適切な資格をもった個人または団体に加. 協議制度などに言及し, NGOの要件を導き出. 入が開かれていること,. す.次に,. 機関および役員を選出する権利を与えているこ. NGOの存在意義に焦点を当てる.. (参会員に定期的に管理. ここでは政府や市場とは異なる領域に存在する. と, ④本部事務所を有し,活動に継続性がある. NGOの活動形態や特徴に言及し,他のアクター. こと, (参会員-の利益配分を意図しないこと,. との違いを明確にする.その後,国際交渉の場. (釘現在活動していること,などである.同書に. におけるNGOの活動とNGO間のネットワー. は政府間機関およびNGOが掲載されており,. クに触れ,その影響力について検討する.そし. 以上はその双方に共通する掲載基準となってい. て最後に国際社会におけるNGOの位置づけに. るが,これらはNGOフうミ何たるかを示すひとつ. ついて考察を加えることとする.. の基準となりうる. NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC). Ⅰ.. NGOの定義. が発行している『国際協力NGOダイレクトリー. まず,分析対象となるNGOの明確化を試み る.. NGOについての国際的に統一された定義. 2004』には国際協力に携わる日本のNGO354 団体が掲載されている.これは国際協力に携わ. はない.そこで本稿では国連の経済社会理事会. るNGOの要覧であるため,掲載されているの. の協議的地位を得るための要件等,これまでに 示されている定義を参考としてNGOの性格を. は国際協力を主目的とする団体に限られるが,. 導き出す.. する上での参考となる.. 1.. 団体の性格および運営方法などはNGOを定義 JANICの掲載基準は, ①市民主導により設立され,市民活動としての 理念や立場を基礎にして運営が行われているこ. NGOとは. 国際協会連合(Union. of. lnternational. と, (彰民主的な意思決定機構があり,代表者や. Associations)が毎年出している『国際機関年 鑑(Yearbook of lnternational Organizations) 』. 事務局責任者などの責任の所在が明確であるこ. によれば,. 人寄附によって支えられるなど,一般市民の主. 2003年時点での国際的なNGOの数. は50,000以上にのぼる.. NGOには国際NGO. と, (釘組織の事業運営が,会員制度もしくは個. 体的な参加に基づいてなされていること,. ④財. の他に,一国内で全国的な活動をするもの,辛. 源のうちJANICが定める割合が自己資金で賄. の根レベルで活動するものもあり数ではこちら. われていること8),. のほうが上回っていると考えられる.しかし, すべての国で統計が取られているわけではなく. 開されており,特に外部からの求めに応じて資 ⑥一定期間 料や情報の提供が可能であること,. ⑤事業内容や財政状況が公.

(3) NGOの理論的分析(根岸). 以上の活動実績があること,などとなっている.. ウスなどである.ロスクーは,. (487). 139. ECOSOCとそ. の下部機関およびその他の国連機関の活動に時 2.経済社会理事会(ECOSOC)のNGO協議. に応じて貢献できると考えられる団体に与えら. 制度. れる.一般協議的地位のNGOには,オブザー. 国連の経済社会理事会(ECOSOC)は,. NCO. との協議制度を設けている.この制度は国連 憲章第71条に基づき,. ECOSOCがNGOのも. つ専門的知識や情報を得ること,. NGOを通じ. バーとしてのECOSOCとその下部機関の会議 発言,意見書の提出や議題の提案 への出風 が認められている.特別協議的地位を得てい るNGOにも同様の権利が認められているが,. て世論を国連の場に反映させることを目的と. 書面による意見書の提出は一般協議的地位が. して1946年に創設された.経済社会理事会決. 2,000字以内なのに対して500字以内となって. 議1996/31には協議資格を有することができる. いる.ロスクーは,その団体の専門分野と一致 する分野の会議にオブザーバーとしての出席と. NGOについての規定がある.これによると協 議的地位を得るための要件は, ①ECOSOCお よびその補助機関の権限内の事項に関心を有 すること,. 意見書の提出が認められる.意見書は特別協議 的地位と同様500字以内となっている.. ②その目的および原則が,国連憲. 章の精神,目的,原則に一致するものであるこ. 2005年時点でECOSOCの協議的地位を得て. と, ④自身の目的,原則,権限および活動の範. いるNGOは2,719にのぼる(表1参照).設立 当初は40あまりであったが, 1992年から2002. 囲内で国連の事業を支持し,国連の原則や活動. 年にかけての10年間では1,490増加した.発. に関する知識を普及すること,. 言権等が最も認められている一般協議的地位に. ④本部と理事お. よび民主的に採択された規約をもつこと,. ⑤代 表者を任命していること,および会員に対する. 野で専門性を備えた団体に与えられる特別協議. 説明責任の仕組みをもつこと,. 的地位にある団体が全体の半数以上を占めてい. ⑥基本的な財源. ある団体は全体の20分の1程度で,特定の分. が各国加盟組織やその他の構成単位または個人. る.地域別でみると1996年時点では,ヨーロッ. 会員からの寄附であること,などとなっており. パ,北アメリカのNGOフうミ約8剖を占めていた. 政府や政府間の合意によって設立された組織は. が, 2005年にはその割合が減少し,一方でア. NGOとはみなされない.. ジアやアフリカのNGOの割合が増加している. これらの要件を満たすNGOには協議的地位. ことがわかる(図1参照).. が与えられ,その地位は一般協議的地位,特別. NGOの参加の制度化は他の国連機関でも進. 協議的地位,ロスクーの3つに分けられる.一. んでいる.例えば国連開発計画(UNDP),国. 般協議的地位は,. ECOSOCとその下部機関の 活動の大部分に関心をもち,その活動に貢献で. 連児童基金(UNICEF). きる団体に与えられる.一般協議的地位を得て. 食糧計画(WFP)などはNGOとの協議制度を. いるNGOにはケア・インターナショナル,グ. 設け,政策の実施においてNGOと協働するな. リーンピース・インターナショナル,オイスカ,. どしている.. ,国連環境計画(UNEP) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),世界. ,. オックスファム・インターナショナルなどがあ. る.特別協議的地位は,. ECOSOCとその下部. 機関の活動の一部に関心があり,その分野にお いて専門性をもち,活動に貢献のできる団体に 与えられる.この地位を得ているのは,アムネ スティ・インターナショナル,フリーダム・ハ. 3.. NGOの要件 以上の議論を参考にすると,. NGOとは次の. 要件を満たすものと定義することができる. ①非政府, ②非営利, ⑨公共性, ④活動の継 続性, (彰自発性.

(4) 140. 横浜国際社会科学研究. (488). 第11巻第3号(2006年9月) (カテゴリー別). 表1協議的地位にあるNGO Year. Special. General. 1968. 17. 78. 1992. 38. 297. 409. 744. 1993. 40. 3.34. 410. 784. 1994. 40. 334. 410. 784. 1995. 65. 406. 415. 886. 1996. 76. 468. 497. 1041. 180. 85. 582. 517. 1184. 100. 742. 663. 1505. 【Ⅱ】. 918. 909. 1938. 2000. 122. 1048. 880. 2050. 2001. 124. 1132. 895. 2151 2234. 2002. 131. 1197. 906. 2003. 131. 1316. 903. 2350. 2004. 134. 1474. 923. 2531. 2005. 136. 1639. 944 ム. ー. dination /n go/ab. 40. America. ロRL:. &. ペ. 2719 ー. ジ. bttp://www.un.org/esa/. 20. 出所:国際連合ホームページ. 85. 1998. coor. lヨLatin. 1. 1997. URL:. America. 40. 26. 出所:国際連合ホ. 回North. Total. 13. 1999. o. Roster. 1948. Caribbean. out.btm. 60. EヨOceania. 80. 1 00. E3Africa国Asia田Europe. b仕p://www.un.org/esa/coordination/ngo/about・htm. 図1協議的地位にあるNGO. (地域別). (単位%). まず非政府であるとは,組織が政府あるいは. 再投資されるべきであることを意味する.この. 政府間協力によって設立されたものではなく民. 点において利益追求をその目的とし,上がった. 間の組織であることを指す.また政府から独立. 利益を構成員に分配する企業は除かれる,公共. しており,活動資金の基本的な部分を民間によ. 性とは,組織の活動が特定の個人や法人のみの. る寄附に依存するものとする.この点で官公庁. 利益ではなく,不特定多数の者の利益に資する. が設立した社団法人,財団法人などの公益法人. ものであることを指す.よって宗教団体や特定. や外郭団体は含まれない.しかしながらこのこ とは組織が政府から支援を受けることを否定す. の政治目標をもつ政治団体,特定の集団の利益 実現を目的とする利益集団は人らない.さらに,. るわけではない.次に非営利であるとは,組織. 地域性の強い町内会,自治会,. の活動が利潤を目的とせず,利潤が発生した場 合でもそれを構成員に分配しないことを指す.. 青年団や,共益性の高い同好会,スポーツ団体,. これは組織が利益を得ることを否定するもので. れる..活動の継続性とは,組織とその活動があ. はなく,それが発生した場合には組織の活動に. る程度の持続性を有していることを指す.イベ. PTA,婦人会,. ボーイスカウト,ガールスカウトなどは除外さ.

(5) NGOの理論的分析(根岸). (489). 141. ントなど一時的な活動を行うだけの組織や,そ. は紛争予防や復興支援に携わるものもあり,欧. の場限りのボランティア活動などは含まれな. 米のNGOと同様に環境破壊や人権問題に取り. い.自発性とは,組織の設立,運営,活動が市 民の自発性によるものであることを指す.よっ. 組むものもある.そのような長い歴史をもち,. て,行政からの委託によって活動する組織(例 えば消防団など)は含まれか、.しかしながら,. 況のもとで発生し,その存在にどのような意義. これは組織のスタッフ全員がボランティアであ ることを意味するものではない.また,何らか. の機能との対比によって明確となる.以下では, 重富の議論を参考にこの点を検討し,その後デ. の団体への帰属が組織の一員となる条件となっ. ビッド・コ-テンによるNGOの発展段階の分. ているもの(例えば労働組合や業界団体)は含. 類に触れ, NGOの発展とそれに伴う機能の変. まれない.. 化について検討する,. 世界各地で見られるNGOの活動はいかなる状 を見出すことができるのか.それは政府や市場. NGOの中には国際的な活動を行っているも のが多く存在する.よって国際的な活動を行っ ているか否かをNGOの要件に含めることもで きる.しかし,国内的な問題がときとして国際. 1.政府の限界,市場の限界 ある国家における国民べの基本的なサービス. 的な問題として理解しうること,主に国内的な. の提供は政府が担う重要な役割である.政府は その権限で国民から税金を徴収し,それをもと. 活動を行っている場合でも問題を解決するため. に公共サービスを提供している.一方,市場で. に他国政府あるいは国際機関-の働きかけを行 うものもあることを考慮し,本稿ではこれを要. はその他のモノやサービスの交換が行われる. 企業はモノやサービスの交換活動を繰り返しな. 件に含めないこととする.また,上記では財団. がら利潤を拡大させることを目指す.しかしt. 法人,社団法人,宗教法人,ボーイスカウトな. 個人が必要とするサービスの提供という点にお. どをNGOに含めないこととしたが,実際には. いて以上のような性格を帯びた政府や市場には それぞれの能力に限界が生じる.政府によって. これらの団体が活動の一部としてNGOと同様 NGOのネットワーク の活動を行っていたり, 組織に参加していたりすることがある.よって. 提供される資源やサービスは必ずしも個人が必. 以上の定義と実際のNGOの活動として扱われ る事象にはいくらかの矛盾が生じることがある. ラの未整備,社会福祉政策の欠陥などがそれに 当たる.また,市場を通して獲得できるモノや. ことは否定できない.. サービスの量は個人によって大きく異なる.資. Ⅰ.. 要とする量に満たないことがある.社会インフ. 源獲得能力の高い個人は多くのモノやサービス NGOの存在意義. NGOの活動は多岐にわたり,その初期の活 動は奴隷解放運動や戦争の被災者,難民および. を得ることができるが,その能力の低いものに はそれが不可能である.特に開発途上国には水. 貧困に苦しむ人々に対する人道主義に基づく援. や保健衛生といった基本的なニーズさえ満た されない人が数多く存在する.そのような状況. 助が中心であり,宗教関係者によって設立され. 下で政府および市場の限界を補ってきたのが. た団体も多かった.その後,開発,環境破壊,. NGOである.. 人権侵害などさまざまな問題に対する国際機閑. NGOは政府や市場を通してでは 満たされないニーズを満たす役割を担ってき. や政府の取り組みに疑問や不満をもつ人々に. た.. よって次々に団体が設立された.開発途上国の NGOは第二次世界大戟後から増加し始め,戟 争や難民の救済,貧困層-の慈善活動,最近で. 2.. NGOのスペース. 重富はNGOの存在する領域を「スペース」.

(6) 142. (490). 横浜国際社会科学研究. 第11巻第3号(2006年9月) 国家. NGOによる資詔京供給領域 出所:重富真一「NGOのスペースと現象形態一第3セクター分析におけるアジアからの視角-『レヴァ. イアサン31号〔特集〕市民社会とNGO-アジアからの視座』木鐸社, 図2. 2002年, 42頁.. 重冨が示した途上国におけるNGOの位置. 住民が作った特定目的 の協同組合(協同組合,. NPOなど). 出所:重富真一「NGOのスペースと現象形態一第3セクター分析におけるアジアからの視角2002年, 55頁. イアサン31号〔特集〕市民社会とNGO-アジアからの視座』木鐸社, 図3. 『レヴァ. 重富が示した先進国における第3セクターとNGOの位置. ということばを用いて表現した9).彼は国家,. 政府であり,市場の中心的な担い手は企業であ. 市場の他にコミュニティという領域を設定し,. る.コミュニティとは,個人間の協同的な関係 を通して資源を獲得する方法であり,アクター. それらと異なる領域にNGOが存在するとして. には親族集団,部族,隣組集団,村落共同体,宗. いる(図2参照).ある国家において個人はそ れぞれ国家,市場,コミュニティという方法を. 教団体が挙げられる.これらが供給できる資源. 通して資源を獲得する.国家の中心にいるのは. には限りがあり,その空間を埋める主体として.

(7) NGOの理論的分析(根岸). (491). 重富はNGOを想定している.そして図2の白. そして先進国のNGOの活動が向かう先は国内. いスペースが大きければ大きいほどNGOが行 う資源供給活動に対する需要が大きいというこ. の政治面にとどまらず,開発途上国の経済的ス. 143. と,つまりNGOの経済的機能に対する需要が. ペースを埋めようとする開発途上国での援助活 動,さらに国際機関に影響力を及ぼさんとする. 大きいということを示しており,これをNGO. 活動として現れるのである10). 近年,国内だけではなく国際的な活動を繰. の「経済的スペース」と表した.しかし,この 経済的スペースが大きければ大きいほど,そ. り広げるNGOの活動がクローズアップされる. の国でNGOが活発に活動しているかというと そうともいえない.重富は, NGOの活動には. ことが多くなった.国際会議に姿を現し,各国 政府や世界銀行,国際通貨基金(IMF),世界. 「政治的スペース」も関係していると指摘する.. 貿易機関(WTO)などの政策に異議を唱える. これは,. NGOが政治的に活動を許される範囲 を意味している.つまりNGOに対する規制. NGOの中には先進諸国のNGOフう言多い.重富. や活動を確保するための制度の度合いである.. における活動スペースが小さくなり(つまり第. NGOに対する国家や社会の規制が強ければそ. 3セクターの出現により経済面がその他の団体. のスペースは小さいものとなり,逆に弱いとき. に代替され)残るは政治面となったことがひと. には大きくなる.よって,. NGOの活動が盛ん な国はこの両スペースが大きな状態であるとい. つの要因であると考えられる.そしてこの政治 面の活動が国内レベルにとどまらず国際レベル. える.ここに示した図2の状態は特に開発途上. にまで拡大している.. の議論を参考にすれば,それらのNGOは国内. 国におけるNGOの位置を示している. 以上の議論ではNGOの経済的なサービス提 供者としての役割に焦点が当てられているが,. 3.. NGOの発展段階. 次に重富は経済の発展した段階でのNGOの現. デビッド・コ-テンは開発におけるNGOの 戦略を4つの「世代」に分類した(表2参照).. 象について議論を進める(図3参照).まず,コ. この世代分類から,. ミュニティ・セクターでは特定の機能を担う組. NGOが活動形態をどのよ うに変化させ,また変化に至たるまでにいかな. 織(水利組織,消防団など)が創られるように. る問題に直面してきたかを理解することができ. なる.次に,市場セクターでは営利企業は参入. る.以下では,コ-テンの世代分類に言及した. しにくいが市場的な取引が必要かつ可能な領域. のち,この世代分類がもつ意義やNGOがその 影響力を高めるためにどのような活動形態をと. に,非営利の組織が創られたり参入したりする ようになる.これは受益者から対価を得るNPO などである.国家セクターでは,公益法人など 形式的には政府から独立した団体が創られ,そ の政府がその機能をアウトソーシングするよう になる.このようにして既存の3セクターの領. ることが望ましいかという点について考察を加 える.. まず第一世代のNGOの活動は,対象となる 人々が必要とする食料や保健衛生などを補うと. 域に隣接して新たな領域が加えられる.これが. いったサービスの直接供与である.既に述べた ようにNGOの初期の活動は戦争の被災者や貧. 「第3セクター」なるもので,これによりNGO. しい人々に対するモノやサービスの提供が主で. の経済的スペースは小さくなる.先進国はこの 第3セクターのスペースが大きく,原型のNGO. あった.もともとそれを率先して行ってきたの. のスペースが小さい状態となる.重富によれば, そのように経済面での活動スペースが限られて. 世界大戦後にイギリスヤアメリカでは被災者救. くると活動の向かう先は政治面になるという.. やオックスファムなどである.第二次世界大戟. は宗教団体であったが世界各地の紛争や2つの 済にあたるNGOフう言いくつも設立された.ケア.

(8) 144. 横浜国際社会科学研究. (492) 表2. 第11巻第3号(2006年9月). デビッド・コーテンによるNGOの4つの世代とその戦略 第1世代. 問題意識. 第2世代. 第3世代. 第4世代. 救援.福祉. 共同体の開発. 持続可能なシス. 民衆の運動. モノ不足. 地域社会の後進. テム開発 制度.政策上の. 民衆を動かす力. 性. 制約. をもつたビジヨ. 10-20年. ンの不足 無限. 持続期間. その場かぎり. プロジェクトの. 対象範囲. 個人ないし家庭. 近隣ないし村落. 地域ないし一国. 一国ないし地球 規模. 主体. NCO. NGOと地域共. 関係するすべて. 民衆と諸組織の. 同体. の公的.民間組 級. さまざまなネッ. 地域共同体の動. 開発主体の活性. 活動家.教育者. 負. 化(触発). 期間. (担い手) 自ら実施. NGOの. 役割 管理.逮. 供給体制の管理 プロジェクトの. 営の方向. 管理.運営. ・運営. 悼. トワーク. 戦略的な管理.. 自己管理.運営. 運営. 的ネットワーク. 開発教育. 飢えろ子どもた 地域共同体の自. の連携と活性化■ 制約的な制度と■ 宇宙船地球号. のテーマ. ち. 政策. 助努力. 出所:デビッド・コ-テン(渡辺龍也訳) 学陽書房,. 1995年,. 『NGOとボランティアの21世紀』. 145頁.. 級,これらのNGOから日本の被災者に対して. より良い農法の紹介,村落レベルの自助活動な. も多くの援助が注がれた.そしてヨーロッパや. どが行われる.これは重富の議論でいうコミュ. 日本が復興を遂げると活動の対象は開発途上国. ニティの担い手への働きかけとなる.第一世代. へと移行していく.このような活動を継続し ているNGOは現在も多数存在し,それに対す. の活動とは違ってここでは対象者は受け身では なく,自ら力をつけることが期待されている.. るニーズも大きい.しかし,この種の慈善的な 活動では貧困層や戦争および災害の被災者は単. しかし,こうした第二世代の活動も実際はより 洗練された形で施しをしているのと変わりが. に援助の対象者であり,援助が一時的に状況を. ないとコ-テンは述べている.彼によれば,地. 改善することはあってもそれ以上のことは望め. 元の権力構造は,全国的・国際的なシステムに. ない.その慈善行為が依存心を生み出してしま. よって保護・維持されており,. うことさえある.そこでより持続的な開発を目. いる組織化の努力のほとんどは,このような大 きな構造に対して意味のある持続的なインパク. 指すNGOは次の戦略へと移行していくのであ る.. 第二世代のNGOの活動目的は,地元の人々 が自立的な行動を通じて自らのニーズをより良 く満たす能力を向上させることにある.重要な. NGOが行って. トを与えるにはあまりにもスケールが小さく,. また分散しているというのである.重富も「ス ペース」の議論においてコミュニティの力を引 き出すだけでは空いたスペースは埋まらず,政. NGOの活 のは一時的な状況の改善ではなく, 動後も地域が持続してその成果を維持していく. 府や企業といった他のアクターに対する働きか. ことである.そのため共同体開発に焦点が当て られる.この活動では農場労働者や女性グルー. のいう第三世代の活動となる. 第三世代のNGOの戦略は,個々の共同体を. プなどの集団を対象として保健委員会の育成,. 超えて地方,全国レベルで特定の政策や制度を. けが必要であると指摘する11).それがコ-テン.

(9) (493). NGOの理論的分析(根岸). 145. 変革しようとするものである.第二世代の戦. もったボランタリー組織は,女性,平和,人権,. 暗では, NGOがもたらした成果を維持するた. 環境,消費者の分野に見られるが,開発の分野. めにはNGO7う言その場で活動を続けるか,援助. ではそうした活動がまだ少ないと指摘した.し. 機開からの支援に頼り続けなければならない.. かし現在では,開発の分野でも貧困や不平等を. さらにNGOフうゞそれぞれ単独で行動しているた. 生み出している構造や制度の変革を目指す第四. め,限られた場所でしか成果を挙げられないと. 世代の戦略をとるNGOも見られるようになっ. いう限界があった.そこで第三世代では,持続 可能な開発活動を促進する政策環境と制度をつ. てきた.それは世界銀行やIMF,. くり出すことに重点が置かれる.これは一時的. そして開発に限らず環境,人権等の分野で第四. な施しでもなく,地域共同体の開発でもなく,. 世代の戦略をとるNGOの多くは先進国の国際. 貧困などの問題を創り出している構造そのもの. NGOである.. WTO,など. に対するアドポカシー活動として現れている.. を変革しようとする点で第一,第二世代の活動 と大きく異なるといえる.だが第三世代の戦略 もある特定の政策や制度の変革を目指している ことに欠陥があり,より大きな漠模で民衆中心 の開発ビジョンの実現に向けた自立的な行動を 活性化する必要があるとコ-テンは説く.. 4.考. 察. 以上で見てきたように,. NGOは政府,市場,. コミュニティが満たすことのできないニーズを 満たすとともに,それらに対してより良いサー ビスを提供するよう働きかけを行う存在である. その第三世代の限界から生まれるのが,世. といえる.さらに,諸問題の根本原因を改善す. 界の政治・経済システム自体の見直しを働きか. るよう働きかけを行い,現在ではそれが国家を 超えたレベルにまでおよんでいる例も多数見ら. ける第四世代の戦略である.それまでNGOは コミュニティ,国家,市場に働きかけることに よって空いたスペースを埋めさせようとしてき. れる.このようにNGOは,資源配分の仕組み. たが,それらのセクターの政策がそれを超えた. はコミュニティとは異なる何らかの影響力を行. ところで形成されていることに気付く.そこで. 使する存在であるということができる.. 第四世代の戦略は,特定の政策や制度の変革に. コ-テンの世代分類については,ひとつの世 代だけにきっちりおさまるNGOはほとんどな. 重点を置いた運動を超え,変革を引き起こすの に十分な自律した運動の活性化を目指す.ゆえ に,全国ないし地球規模のボランタリー行動を 巻き起こすような新たなビジョンを一般大衆の 意識に吹き込むことが必要とされる.そのため. や政策の決定過程において政府や市場,さらに. いという指摘があり,コ-テンはこの指摘を正 しいものとする12).っまり, NGOの多くはさ まざまな事業を行っていてその事業のうちいく. にあらゆる種類の社会ネットワーク(マスコミ,. つかは第一世代,いくつかは第二世代,そのほ かは第三世代にあたるということがありうる.. 学校教育,イベントなど)を通じてアイデアと. よって,ひとつのNGOが総体としてどの世代. 情報を交換し,人々が自分の属する組織の内外. のどの戦略をもっているかという分類を試みる. で変革に向けた自発的な行動を起こすよう触発. よりも個々の事業の戦略を分類するほうが有用. することに重点が置かれる.. ということである.これについては著者も同様. NGOには,ボラ. ンティアを互いに連携させるものは何か,活性 化させるものは何か,を認識し民衆組織と諸組. の意見である.多様な活動形態をもつNGOの 場合,それをひとつの世代に分類することは難. 織のさまざまなネットワークをつなぎ,活性化. しく,無理に分類してもそれはあまり意味のな. することが求められる. コ-テンはその著書で第四世代の方向性を. いことのように思われる,コ-テンの挙げた発 展段階は,ひとつのNGOの発展過程,つまり.

(10) 146. (494). 横浜国際社会科学研究. 第11巻第3号(2006年9月). ひとつの組織が徐々に段階を経て,第一世代か. やサービスの提供も必要であるが,一時的な援. ら第二世代,第三世代へと性格を変化させてい. 助である地域の問題が解決に向かうとしても,. く状況を示すものとして(この場合組織の性格. それを創り出した制度や構造が変わらなければ. はひとつの世代に分類しやすい),あるいはひ とつの団体が第一世代に加えて,第二世代,第. いずれまた同様の問題が違う場所で発生する恐 れがある.ゆえに,より広い視野で問題解決に. 三世代,第四世代の戦略を同時に取り入れてい. 取り組む第三,第四世代のNGOの役割は重要. く状況を示すものとして(この場合団体の性格. であり,その数が増加すること,あるいはそれ. はひとつの世代に分類できない)理解すること. らの戦略をもつNGOが力をつけることが他の. が可能であろう.. アクターに対する影響力を高める上でも望まし. この世代分類は開発の分野で活動するNGO を対象としたものであるが,他の分野のNGO. いとも言える.しかし,第三,第四世代の活動. についても同様のことが当てはまる.例えば軍. の大半を一部の先進国のNGOフうミ担っている場 合,現場のニーズと実際のアドポカシー活動に. 縮の分野で考えると,ある地域における地雷除. 尭離が見られる可能性も否定できない.つまり. 去はその地域の安全を確保する上で欠かせない. 欧米の国際NGOが繰り広げるアドポカシー活. 取り組みとなる.だが,地雷の使用についての. 動,あるいはキャンペーン活動が開発途上国あ. 規制が世界的に進められなければ同様の問題を. るいは他の国々が望むようなものではない場合. 抱える地域が次々に現れることとなる.そこで. も起こりうるということである.現場の状況を. 問題の根本をたどると地雷の使用禁止という国. 正しく把握せずに,アドポカシー活動をもっと. 際的な働きかけが必要となる.よって問題の根. もらしく続けるだけでは現場のニーズと離れた. 本的な原因の攻略のためには,. 要求を行いかねないし状況の改善は難しい.さ. NGOフうミ第四世. 代的な活動をとることが望ましいと考えること. らに,問題の根本にある制度や構造に変化を起. もできる.だが,. NGOの活動が第一世代から 第四世代の戟略に移行することが望ましいとは. こすまでには時間を要する.そこで必要なとき. 必ずしも言い切れないというのが著者の意見で. やコミュニティを対象とした共同体開発活動は. ある.コ-テンは「第一世代から第三世代まで. 今後も一定の役割を果たすことが期待される.. の事業はみな必要なものであり,戦略を分類す. 国際的な脚光を浴びるNGOがある反面,長年. る枠組みに価値判断をふくめるべきではない」. 草の根レベルでの活動に従事し,そこで成果を. という指摘に対して,どのNGOも重要なニー. 挙げているNGOも多い.ゆえにNGOの活動. ズに応えているとしながらも,. 形態を考えるとき,単に第三,第四世代の戦略. 「開発の未来,. に必要なサービスを提供する活動,地域の人々. そしておそらく地球社会の未来は,より多くの. をとるNGOの増加が望ましいというよりも,. NGOが第三世代,第四世代の戦略を今以上に 大胆に,そして効果的に実行していくことにか. それぞれの世代が各々の手法で各セクターへの. かっていると信じる」と述べている13).この意. こすために各世代のNGOフうミ連携をとることが 望ましいのではないかと考える.. 見から彼は第三,第四世代の活動をより重要な. 働きかけを行うとともに,より大きな変革を起. ものととらえ,そのような戦略をとるNGOが Ⅱ.. 増加すること,そして影響力を高めることが望. 世界各地で開催される国際会議に多くの. ましいと考えていると理解できる. 確かにコ-テンの指摘どおり,. NGOの影響力. NGOの戟略. は段階を経るごとに症状の軽減から根本的な原. NGOが姿を現すようになるにつれて,国際交 渉の場におけるNGOの動向に注目が集まって. 因の攻略へと向かっている.不足しているモノ. いる.以下では,. 1992年の国連環境開発会議.

(11) NGOの理論的分析(根岸). (495). (UNCED)におけるNGOの活動とNGO問の. 多くの分野で重要な貢献をしている.これらの. ネットワークについて見ていくこととする.. 知識,技術,熱意,官僚組織とは違うアプロー. 147. チ,草の根レベルのものの見方などは,公的機 1.. NGOの役割への注目 世界会議-のNGOの参加拡大は,. 関が提供するものを補っている.」という見解 NGOが. 持つ機能と果たしうる役割-の期待の表れであ るといえる.. 1984年に設立された環境と開発. に関する世界委員会(WCED)は,. を示している16).. NGOは活動を蓄積するなかで,問題の根本 にある制度や構造に変革を起こすためにその活. 87年に持 続的な開発に向けて世界が講ずるべき方策を. 動範囲を拡大させ,国際政治の舞台にまで現れ. 『our common. 境問題や貧困問題など一国のみの取り組みでは. Future』と題する報告書にま. るようになった.それと同時に,地球規模の環. とめた.同報告書はNGOの役割について次の. 解決が困難な問題が山積するなかで複数国問の. ように述べている.. 協力,さらには国際機閑,政府,企業など多. 「科学に関係するコミュニ. ティーと非政府機関は,特に若い人々の支援の. 様なアクターの協力が不可欠であるという認識. もとで,早い段階から環境問題に関する運動の. が高まってきた.そして,それらと異なる立場. 主要な役割を果たしてきた.. に立って国内および国際的な活動を展開する. (中略)科学者と. 非政府団体は,ストックホルムでの国連人間会 議において大きな役割を果たした.これらのグ. NGOの重要性-の認識も高まり, NGOにも積 極的な関与が求められるようになっている.. ループは,ストックホルム会議以来,危機の解 明,環境に対する影響の評価とそれらに対処す る方法の発見と実施,その活動の基礎として必 要な人々の高い関心を維持するという点で,欠 くことのできない役割を果たしている.. (中略). 2.世界会議への参加 1972年のストックホルムでの国連人間環境会 議以降,人口,女性,環境などに関するアドホッ. 環境と開発に関する問題は,ますます増えてお. ク会議が次々と開かれ,これらの会議にNGO も積極的に関与してきた.総会によって招集さ. りt このような団体がなければそれらに対処し. れる世界会議へのNGOの参加に関しては,給. ていくことが困難である.. (省略)」14). 会自らがその都度決定するというかたちをとっ. また, 1992年のUNCEDで持続的な社会を. 実現するための具体的な行動計画として採択さ. ており,原則としてECOSOCの協議的地位をも. れた「アジェンダ21」の第27章は「非政府組. つNGOのみに参加が限定されていた17).しかし, 1992年のUNCEDではECOSOCの協議的地位. 織の役割の強化」について述べている.ここに. をもたないNGOにも参加資格が認められた.. は,. 「参加型民主主義の形成及び実行には,非. 政府組織が重要な役割を果たす」,. 「公式及び非. 公式な組織はアジェンダ21実行のパートナー として認識されるべきである」,. 「社会,各国政. これにより,開発途上国の草の根のNGOも政 ECOSOC 府間会合に公式参加する機会を得て, に協議的地位をもたないNGOフうミ参加NGOの過 半数を占めるに至り,その数は最終的に1,418団. 府,国際機関は,非政府組織が環境上適正で持. 体に達した18).そしてUNCED以降,. 続可能な開発の過程において,責任を持って,. に協議的地位をもたないNGOにも参加資格が 与えられるパターンが定着し,これによって世. かつ効果的に協力する彼らのパートナーシップ の役割を果たすことができるような仕組みを構 築すべきである」と記されている15).さらに, グローバル・ガバナンス委員会は,. 「概して,. 市民運動とNGOが今,国内的にも国際的にも. ECOSOC. 界会議へのNGOの参加数は飛躍的に増加した (表3参照). またUNCED以降,政府間会議に並行して開催 されるNGOフォーラムも定着した.. NGOフォー.

(12) 148. (496). 横浜国際社会科学研究 表3. 第11巻第3号(2006年9月). 世界会議の政府間会議への参加NGO数. 国連人間環境会議 世界人口会議 世界食糧会議. 国際婦人年世界会議 国連人間居住会議 国連水会議 国連砂漠化会議 国連婦人の10年中間年世界会議 国際人口会議 国連婦人の10年締め括り世界会議 国連環境開発会議 世界人権会議. 国際人口開発会議 世界社会開発サミット 第4回世界女性会議 出所:馬橋憲男『国連とNGO』有倍堂,. 1999年, 98頁. を引用,著者が一部加筆.. 1992年の国連環境開. 発会議の数字は,毛利聡子『NGOと地球環境ガ バナンス』築地書館,. 1999年,. 87頁を参考とした.. その他の条約交渉の場でどのような活動を展. ラムは,当該問題に対するNGO全体としての 意見や立場について話し合い,それを宣言など. 開してきたのか.. のかたちで発表することによって政府間会議. ローズアップしてみたい.. で最終的に採択される文書にNGOの意見を反. (1). 映させることを目的としたものである.. NCO. UNCED. uNCEDへのNGOの関与は準備プロセスか ら始まっていた.. 92年のUNCEDで フォーラム-の参加者は, は18,000名, 93年の世界人権会議では5,000 名, 94年の国連人口開発会議では4,200名, 年の世界社会開発サミットでは12,000名,同. NGOの活動のいくつかをク. 1990年から1992年の2年. 間に行われた計4回の準備委員会ではさまざ 95. まなNGOが活動を展開していた.毛利は,準 備委員会からUNCED本会議に至るまでの. 年の第4回世界女性会議では30,000名にの. uNCEDプロセスにおけるNGOの活動を以下. ぼった19).一連の世界会議に世界各地から多 くのNGOが参加したことは,開発,環境,人. の3つの涜れに示した20).. 権などの諸問題に対する市民の関心の高さを 示している.また,. ECOSOCに協議的地位を. 持たないNGOに参加の門戸が開かれたこと, NGOフォーラムを通して世界各地から集まっ たNGOが意見を交換する機会を得たことは,. ・第1の流れ:第1回準備委員会での政府間交 渉から文書の作成に継続してロビー活動を行 い,草案の修正や提議を行ったNGO戟略グ ループ. ・第2の流れ:第1の流れにやや遅れて形成さ れ,政府間交渉へのインプットよりもNGO. その後のNGOの発展に大きな影響を与えたと. 自身のアジェンダの提示に強い関心をもつ政. 思われる.. 治思考の強いNGOグループ. 3.国際交渉の場におけるNGO 実際にNGOが世界会議において,あるいは. ・第3の流れ:特定の政治的志向をもたず,ま た他のNGOとの連携も少なく,組織化され (数の上ではこの流れに属し ていないNGO.

(13) NGOの理論的分析(根岸). たNGOが最も多かった) 第1の流れを形成していたNGO戦略グルー プは準備委員会からUNCED本会議に至るま. (497). のNGO参加者が意見を交換し,ネットワーク を形成する場をつくるという動機があったとい う.. で政府間交渉に関与した.. この国際NGOフォーラムにおいて国際. NGOによる提案は, 「環境と開発に関する.リオデジャネイロ宣言」. NGO条約の作成作業が本格的に始まった.国. を具体化するための行動計画として採択された. 際NGO条約は国際法上の条約とは異なり,法. 「アジェンダ21」に取り入れられた.例えば女. 的拘束力はなく国家間関係を規定するもので. 性グループ,先住民,青年グループがロビー活. もない.しかし,毛利はこの条約が①オルター. 動を積極的に展開したことによって,女性,育. ナティブなアジェンダの提示,. 午,先住民,. ニティの理論的支柱,. ②NGOコミュ. (彰関係形成のツールと. NCO,地方自治体,労働組合,料 学者団体等を扱う「主要なグループ」の章が追. いう3つの意図から作成されたことからこれ. 加されることになった21).一方で,. をNGOコミュニティによる初めての本格的な. NGOが作成. した草案を政府が取り入れる際に修正が加えら れたり,. NGOが意図していたのとは反対の意味. になっていたなどという問題も発生した22). 第2の流れは,第3回準備委員会においてブ. 149. アジェンダの提示ととらえるべきとする25).っ まり,国際NGO条約の作成は単に政府間交渉 の成果を批判するために進められたのではな く,それがNGO側の目指す持続可能な社会の. ラジルNGOフォーラムが発起人となって200. ビジョンとどう異なるのかを示す試みであると. 以上のNGOで構成される国際NGOタスク・. 同時に, NGOコミュニティのよりどころとな. フォースが設立されたことによって形づくられ た.このNGOグループでは,単に政府の政策 案や条約案を批判するというアプローチから. る価値観を明確にすること,さらにNGO間の 交流を促進し,多様なNGOをひとつにまとめ るための手段となることを意図していたのであ. 一歩進んで,国および国際レベルのNGOフうミ自 分たちでアジェンダ設定を行うために代替条. る.. 約を作成しようという試みがなされた.第3回. 成を,多様なグループが共同作業を通じて国. 準備委員会後には,. 際的な場で合意形成およびアジェンダ設定を. UNCEDに向けてNGOの. 毛利はUNCEDにおける国際NGO条約の作. ポジション・ペーパーを作成することを目的. 行った初めての試みとして一定の評価を与えて. とした世界規模のNGO会議,. いる.一方で,対政府間交渉という点でみると. 「1992年地球サ. ミットに関する地球NGO会議」フうミパリで開か れ, 150以上の国から862名のNGO代表者と. ロビー活動を行ったNGOと条約作成に関わっ たNGOとの分業体制が確立していなかったこ となどから,. 400名以上のオブザーバーが集まり,うち開発 途上国からは600名以上が参加した23).その後,. NGOの条約作成作業が政府間交 渉や公式文書に直接影響を与えることができ. 第2グループの活動はUNCEDの政府間会議. なかったと指摘する.しかし,条約形成の意. と並行した国際NGOフォーラムの開催へと向. 図がNGOコミュニティの理論的支柱の構築や. かう.国際NGOフォーラムは「'92グローバ. NGO閏の関係形成にもあったことを考慮すれ. ル・フォーラム」の枠組みのなかで開催され, 地域ワークショップ,国際NGO条約作成ワー. ば,毛利の言う第3の流れに属していたNGO. クショップ24)などのワークショップやイベン. と開発途上国のNGO間で対等な議論が行われ. トが連日行われた.政府間会議と並行して国. たことにも意義があるといえる.このように. 際NGOフォーラムが開催された背景には,政 府による交渉アプローチ-の不満の他に,多数. を含む幅広い分野のNGOが参加し,先進国. NCO UNCEDではNGOの活動が活発になり, 同士が連帯して政府に代替案を提示しうる存在.

(14) 150. (498). 横浜国際社会科学研究. となってきたことが明らかとなった.. NGOは. 第11巻第3号(2006年9月). するNGOの国際的なネットワークとなってい る.. UNCEDを機に,単なる批判者またはオブザー バーから持続的な社会の構築を進めるための. IRNの活動の目的は,河川や河川流域の 劣化を食い止め,回復させること,河川と河川. パートナーへと変化してきたということができ. 流域の自然を守る草の根の活動を支援するこ. よう.. と,河川に依存する人々の生活や文化を保護し,. (2) NGOのネットワーク. 回復しようとする運動を支援すること,持続可. 能で環頓にやさしいダム建設・水路建設を促進. uNCEDでは南北のNGO間の関係形成が進 められたが,そのようなNGOのネットワーク. すること,公平で持続的な水,エネルギーお. は環境,開発,軍縮などの分野で特筆すべき活. よび洪水管理を推進することなどである.. 動を展開している.. はダム反対運動の活動家やグループに働きかけ Action. a.気候行動ネットワーク(CAN:Climate Network) cANは1989年に設立されたNGOの国際的. IRN. て会議を開催し,世界的なキャンペーン活動の 基盤となる行動計画や宣言を採択するなどし て,ネットワークの形成において先導的な役割. なネットワークで,世界自然保護基金(WWF),. を果たしてきた26).. グリーンピース,. のクリティバで「第1回世界ダム被影響住民会 議」が開催され,ダム・プロジェクトを調査す. FoEなどの国際NGOから開. 発途上国の小さな草の根NGOに至るまでさま CANの目的は,. 1997年3月にはブラジル. 人間が引き起こした気候変動を生態的に持続可. る独立の国際機関の設置や,世界銀行などが融 資する大型ダム・プロジェクトの調査終了まで. 能なレベルに抑制するための政府の対策や個人. の建設工事の凍結などを求めた.そしてIRN. の衝動を促進すること,気候変動問題に対処す るため,情報交換,意見交換,活動などの調整. を中心とした活動が1998年の世界ダム委員会 on (WCD: World Commission Dams)の設立. に関して国境を越えたシステムを構築すること. へと結びついた27).. にある.. c..地雷禁止国際キャンペーン(ICBL: International Campaign to Ban Landmines). ざまなNGOが参加している.. CANの活動で注目すべき点は,単に. 気候変動に関するキャンペーンを行ったことで. ICBLは,対人地雷の禁止を求める欧米の6. はなく,気候変動枠組み条約および京都議定 書の締結に向けた議論において削減目標の設定. 団体によって1992年10月に設立されたNGO. などに関与していたことである.条約や議定. の国際的なネットワークである.今日,この. 書の実際の交渉過程ではCANのメンバーであ. ネットワークは対人地雷禁止に草の根t. るNGOにはオブザーバーとしての参加しか認. 地域,国際の各レベルで取り組む60カ国以上,. められていなかった.しかし,交渉会場外にお. 1,100のグループをつなげる役割を果たしてい. けるニュースレターや独自の報告書の作成`・配 布,それを通じた問題提起,各国の政府代表団. る.. 貯蔵,移転の全面的な禁止,地雷の除去,地雷. の説得といった間接的な手法で政策決定に一定. 被害者の援助プログラムへの国際的な支援の増. の役割を果たした.そして現在も気候変動に関 する国家および国際レベルの政策のモニタリン. 加,地雷回避プログラム-の支援の強化などで. グなどを行っている.. 働作業(オタワ・プロセス)を経て1997年12. b.国際河川ネットワーク(IRN:International. 月の対人地雷全面禁止条約の成立に多大な貢献. Rivers. を果たした.この条約は国連の枠組み外で実現. Network). IRNは河川開発に関わる活動家たちによっ て1985年に設立され,現在は開発や環境に閑. 国家,. ICBLの活動目標は,対人地雷の使用,製造,. ある.. ICBLはカナダなど数カ国の政府との協. した異例の国際条約である.条約は122カ国に よって署名され,. 1999年3月に発効した.こ.

(15) (499). NGOの理論的分析(根岸). の活動の成果が認められ,. ICBLは1997年に. 151. 集まるひとつの要因である.世界資源研究所,. ノーベル平和賞を受賞した.現在は各国に対人. ワールドウオツチ研究所,国際環境開発研究所. 地雷禁止条約への署名,批准,履行を働きかけ. など主に調査・研究を行う組織は多くの専門家. るとともに,締約国の条約の遵守状況の監視を 行っている.. を抱え,報告書や自書の出版を通して学術面で. WEDO. この他にも, and. Development. International29). (Women's. Environment. Organization)28) Friends. ,. of the. Right to など,女性,環境!開発,貿易などの分野で ,. 多大な貢献をしてきた.また,. ICBLやアムネ. Birdlife. スティ・インターナショナルのように特定の 分野で条約や規約の遵守状況を監視する役割を. Water30). 担っているNGOもある,さらに世界各国に支. NGOのネットワークは数多く存在する.. 部をもつWWF,グリーンピース, NCO. FoE,オッ. クスファムなどの国際NGOはその広範なネッ. は,単に世界会議に参加するようになっただけ. トワークを活かして現地での活動から政策分. ではなく,特定の分野でNGO間のネットワー. 析,政策提言まで幅広い活動を行っている.辛. クを形成し,その影響力を高めているといえる.. の根レベルや地域レベルで活動するNGOは市 民の声を最もよく拾い上げることができる存. Ⅳ.国際社会におけるNGO 以上の議論を踏まえて,なぜNGOに注目. 在であるといえる.. NGOは政府や国際機関に. よって無視されている,あるいは重要視されな. が集まりその役割に期待が高まっているのか,. い問題を拾い上げ,人々の関心を呼び起こすと. NGOに期待される役割とはいかなるものかと. いう問題提起の役割も担っている.特定の分野 での長年の活動を通して知識,経験,情報力,. いう点について検討する.その後,近年の議論 をもとに国際社会におけるNGOの影響力とそ. 政策分析能力を蓄積してきたNGOは政府や国. の限界について考察を加える.. 際機関にとって欠かせないパートナーであると いえる.最近では,国際会議の各国政府代表団. 1.. NGOの役割. にNGOのメンバーが加わるという現象も見ら. NGOは国際社会において一定の役割を果た しており,その役割の重要性についての認識も. れるようになった.. 高まっている.. 2.. NGOの役割-の注目はそれが. 備える特徴によるものである.従来,開発や環. NGO間の連携 NGOフうミネットワークを形成し,ある国家の. 境問題-の取り組みは国際機関や各国政府が中. 政策や国際交渉に影響をおよぼそうとする動き. 心となって行われてきた.しかし,国際機関の. は,. 取り組みには限界があり,国際的な交渉の場. がった出来事であろう.通信や移動手段の発達. では国家が国益を主張して交渉が進展しないな ど,国際機開や国家による取り組みに限界が生. はNGOのネットワーク化を後押しした.. じてきた.また,問題解決に向けて多様なア. NCO-の注目を著しく高める結果につな NCO. によるネットワークの形成は環境,人権,軍縮, 女性などさまざまな分野で見られ, NGOが国. クターによる取り組みの必要性が認識されるよ うになった.そのような状況の中で国益や私益. 家あるいは国際レベルの政策決定に影響力を及. にとらわれず,ときに国境を越えて連帯する. で活動する組織が政策分析や政策提言の能力を. NGOは持続可能な社会の実現の重要な担い手 として注目され,国際政治-の関与が求められ. つけるのは,その規模や費用面から必ずしも容 易なことではない.また,ひとつのあるいは少. るようになってきたといえる.. 数のNGOが政府や国際機関の政策に影響を与. またNGOの専門性もNGOの役割に注目が. ぼす上で重要な手段であるともいえる.草の根. えることは困難である.そこでNGOのネット.

(16) 152. (500). 横浜国際社会科学研究. 第11巻第3号(2006年9月). ものであるとする,31).そしてそのような組織は. ワーク化はこれらの課題を乗り越える手段とな りうるのである.南北のNGOが連携すること. 人々に対する影響力の行使という点では国家ほ. で,ある問題に対して先進国と開発途上国の双. どは成功していないもののその活動は特に環境. 方の意見を反映させることができるし,専門分. 分野において無視できないものであるとする.. 野や活動形態が異なるNGOが連携することで. ここで展開されるワープナ-の議論における. 互いに不足した機能を補い,. NGOには人権保護や環境保護を訴える団体だ けでなく,宗教団体や多国籍企業も含まれてい. NGO全体として. の影響力を高めるこ・ともできる.多くのNGO が参加すれば,それらを通して市民により広い 情報提供が可能となる. しかし,. NGOがインターネットなどを通し. る.しかしながら,アムネスティ・インターナ. ショナルやグリーンピースの活動を挙げ,その ような政治的に動機づけされたNGOの行動が. て容易につながり市民に行動を呼びかけること. グローバル・ガバナンスに及ぼす影響に注目し. が常にプラスの効果を上げるとは言い切れな. ている.また,. い.. 1999年にシアトルで開催されたWTOの. R.フォークはグローバル市場. のパワーを「上からのグローバリゼーション」. 閣僚会議には世界中から多くのNGOが集まっ. と見なし,それに対置して国境を越えた社会. た.シアトルへの結集を呼びかけたのはパブ. 活動を「下からのグローバリゼーション」と. リック・シチズンやジュビリー2000をはじめ. 見なしている.そしてこの「下からのグロー. とするNGOの国際的なネットワークである.. バリゼーション」は歴史的に「上からのグロー. その大多数はワークショップ,展示会,非暴力. バリゼーション」のネガティブな側面に挑戦. のデモなどを通じて_WTOが進める自由貿易 体制に反対するものであった.しかし少数が引. し,これを変容させる役割を果たしてきたと. き起こした多国籍企業の店舗の襲撃,それに乗 じた若者の略奪行為,逮捕者の続出はNGOに. 1974年の世界 食糧会議と1992年のUNCEDにおけるNGO. 対するマイナス・イメージを産んだともいえ. のロビー活動を比較したうえで,今日のNGO. る.だが,このような一部の行為からNGOの 暴力性を強調するのは間違いである.その大部. は20年前よりも明らかに国際舞台において存 在感が増しているとしながらも,. 分は非暴力を言匝っており,以上に挙げたように. 力を行使しうるのは,. 条約交渉の場でその知識と情報力といった専門. ものである場合, ②問題が国家の安全保障に脅. 性を武器にアドポカシー活動を展開し,条約締. 威とならないlowpolicyと呼ばれるようなも. 結に多大な貢献をしたものもあるからである.. のである場合, ③NGOが政策決定の初期段階 からアクセスが可能である場合であり,世界会. 3.. 読-の参加の増加が必ずしも影響力を行使して. NGOの活動が拡大することの意義 国際会議へのNGOの参加が増加すること,. している32) 一方で,. A.ヴァンローイは,. NGOが影響. ①問題が国際的に目立つ. いることの証明にはならないとしている33).さ. さらに国際的な政策決定にNGOが関与するよ. らにヴァンローイは,南のNGO間の連携も進. うになることにはどのような意義があるのだろ. むことで34)北のNGOはもはや南の声の代弁者. うか. P.ワープナ-は,. 「個人より上位で国家. より下位に存在し,国境を越えた領域」を「グ. ではなく,ロビー活動におけるアプローチ法を 変更するよう南のカウンターパートに求められ. ローバル・シビルソサエティ」と定義し,その. るまでになっているとする.. 領域では人々がさまざまな目的の達成のため. また,. A.M.クラークらは国連が主催する. に自発的に自らを組織しており,その領域に存. 環境,人権,女性に関する世界会議における. 在する組織の多くが一般的にNGOと呼ばれる. NGOの活動を比較した上で,. NGOが世界会.

(17) (501). NGOの理論的分析(根岸). 議に関与する過程で「Global. Civil. Society」を. 153. 的な正当性を与えることができ,長い目でみれ. 形成したのかどうかを論じている35).ここでは. ばより力強い運動となりうるという肯定的な見. 「Civil」, Society`」を「Global」, 「Society」に分け, 「Global」とは「地理的に多. 方も示している.. 様で,バランスのとれた代表が存在すること」,. 社会における影響力とその限界についてまとめ. 「Civil」とは「国際的なガバナンスの枠組みに. ると,まずNGOは国家や国際機関によって取 り上げられることのなかった,あるいはそれら. 「Global. Civil. NGOの参加があること」,. 「Society」とは「問. 題の本質的な理解を共有していること」と定義. 以上のような議論を踏まえて,. NGOの国際. している36).そしてクラークらはUNCED以. による取り組みが前進しにくい問題を取り上げ 国際的な関心を呼ぶことに機能を果たす.また,. 降,南のNGOの関与が増大し,国連における. 専門性やネットワークを活かして国家や国際機. NGOのアクセスや参加が促進されているとし. 閑に有益な情報を提供することができる.そし. てNGOの活動に一定の評価を与えている..し. てロビー活動等を通して国家間あるいは国際的. かし一方で,南のNGOの参加が増えているも. な政策決定に直接または間接的に関与する.さ. のの依然として北と南のNGOのバランスがと. らに一部のNGOは条約の履行状況を監視し,. れていないとする.またNGOと国家の相互作. 報告する役割も担っている.. 用は国家によって制限されており,. NGO間の. NGOは国家や国 際機関への働きかけだけではなく,キャンペー. 問題意識の共有や相互理解もあまり進んでい. ンや商品の不買運動の呼びかけなど通して企業. ないと指摘する.そして,国連会議における. に対して影響力をおよぼしうる存在でもある.. NGOのロビー活動やネットワーク活動は地球 規模で盛り上がりを見せているが,国家主権に. 加えてNGOはネットワークを形成することで. よる制限もあり,これをもって「GlobalCivil. その影響力を高めつつある.よってNGOの存 在感は従来と比較して著しく増し,行使しうる. Society」が完全に形成されたというには至っ. 影響力も増大していると考えられる.しかし,. ていないとする.. 近年の研究ではNGOの増加,世界会議への. さらに,. L.D.ブラウンらはNGO間で必ず. NGOの参加の制度化,. NGO間のネットワーク. しも目標が共有されているわけではないこと,. の進展状況だけを見てNGOの影響力の拡大と. 関心,パワー,富,イデオロギー,文化,地理. 結論づけることに慎重な議論も見られる.ゆえ. に格差が存在すること,組織の決定がどのよう. に,. になされるべきか,だれが参加すべきかとい う点について明確な合意がないことを理由に挙. の影響力をおよぼしているが,国家や国際機関. NGOはその活動の拡大に伴い,環境,開発, 人権,女性,軍縮などいくつかの分野では一定. げ, NGO問のパートナーシップの形成や維持. による制約により行使しうる影響力には限界が. が容易ではないことを指摘している37).特に国. あるといえる.. 際NGOが草の根の運動と協働することを望む Ⅴ.結. ときには問題がより複雑となる.例えば,国際 的なアドポカシーNGOは北の中産階級のメン. 本稿では,. 論. NGOの定義づけを行った上で,. バーやスタッフの主な関心事項である世界銀行. NGOの存在領域,活動の発展段階,影響力に. の改革と環境的責任の改革を進めることに焦点 を当てるが,草の板の運動はメンバーの生活に. ついて検討してきた.最後に国際社会における NGOについて考察を加えたい.それにはまず. 関わることに関心を示すということである.し. NGOの正当性について検討する必要がある.. かし,ブラウンらは国際NGOと草の根の運動. つまりNGOは誰の利益を代表しているのかと. が連携することで,活動に国家的あるいは国際. いうことである.. NGOは政府のような正当性.

(18) 154. (502). 横浜国際社会科学研究. を持つわけではなく,必ずしも正義を主張する ものでもない.よってNGOが常に社会的弱者. 第11巻第3号(2006年9月). 保されている場合には,. NGOフうミ市民の意見や 動向を反映していると見なすことができるであ. の利益を代弁し,地球公共益を志向する存在で あると断言することはできない.しかし,既に. ろう.. 述べたようにNGOは政府や企業のように国益. な存在として位置づけられるのか.国際社会に. や私益あるいは短期的な利益にとらわれず,よ り広い問題意識(社会的弱者の視点,地球規模. は国内の政府にあたる中央集権的な権威が存在. の問題意識,将来を視野に入れた問題意識)を もって活動している.また蓄積された専門性や. 盟国に対する絶対的な権力はもっていない.こ. 経験は,政府や国際機関の機能を補完しうる. に対応する枠組みとしてグローバル・ガバナン. ものである.このような点はNGOが正当性を. スという考え方がある.グローバル・ガバナン. 主張するひとつの根拠になるであろう.さらに. スとは多様なアクターが利害関係を調整したり 協調的な行動をとって問題に取り組むプロセス. NGOフう亨正当性を高めるためには説明責任の確 保も重要となる.まず,組織としての透明性を. それでは,. NGOは国際社会の中でどのよう. しない.国際連合は,国家の連合であり,各加 のような中で国際社会の秩序を維持しt. である.グローバル・ガバナンス委員会はこの. 高めるには組織の事業内容,運営方法や財源を. グローバル・ガバナンスのアクターのひとつと. 明らかにする必要がある.. してNGOを想定している.これまで,グロー. NGOの役割への関. 諸問題. 心が高まるにつれて政府や企業がNGOの活動. バル・レベルのガバナンスの中心は国家であ. を財政面で支援する動きも見られるようになっ. ると考えられてきた.今後も国家が主要なアク. た.財政状況の厳しいNGOにとって政府や企 業による支援は重要な財源となる.しかしその. ターであり続けることには変わりはないであろ う.しかし,国家は国益を優先して自国の利益. ような資金への過度の依存はNGOの独立性を. を制限するような取決めに参加したがらないと. 脅かしかねない38).政府が開発援助事業で草の 根のNGOと協働することや,企業が社会的責. いう傾向がある.国際機関が地球規模問題の解 決に政策面,資金面で果たす役割は重要である. 任を果たす活動の一環として環境NGOの活動. が,その権限や活動資金は限られている.また. を支援することなどは,社会におけるNGOの. 機関内の発言力が提供する資金規模に左右され. 役割を強化する上で,あるいはNGOの社会的. る,. 認知を高める上で有効であるが,そのなかで独. ・大国の意向が反映されやすいなどの問題点 も抱える.企業は,企業利益を損なうような取. 立性をいかに維持していくかがNGOにとって. 決めに反対し,政府や国際機関に対して政治的. の課題である.また,. 影響力を行使することもある.このような状況. 動が誰の信任を受けているかが問題となる.多. の中で上記の正当性を満たしたNGOやその連 合は市民の意見をグローバル・レベルのガバナ. くの人々に影響する決定が少数のNGOの行動. ンスに反映させ,これまでのシステムの欠陥を. に方向づけられることには疑問をもつ人もいる. 正し,補完する役割を担う存在として期待でき. NGOが国際的な交渉の プロセスに影響を与えようとする場合,その活. であろう.よって,. NGOがネットワークを形. 成して政府間交渉に影響を与えようとする場合. る.. グローバル・ガバナンス委員会の委員である. には,そこにどれほどのNGOが参加している. 緒方は,. 「ガバナンス」を「統治」と「自治」. か,それらのNGOがどれほどの会員を保有し, どれだけ市民の支持を得ているかを示す必要が. の統合の上に成り立つ概念と表現した39).これ までのグローバル・レベルのガバナンスは国家. あり,そのことがNGOの主張の正当性を示す. や国際機関による「統治」という面が強かった. 根拠となるであろう.以上のような正当性が確. と考えられる.ここにNGOが加わることでこ.

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