• 検索結果がありません。

( 水俣病事件における食品衛生法と憲法

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "( 水俣病事件における食品衛生法と憲法"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

長崎大学総合環境研究

8

1

pp.

2 3‑3 8 2 0 06

2

水俣病事件における食品衛生法 と憲法

戸 田 清 *

TheFo odSa ni t a t i o nLa w a ndt heCo ns t i t ut i o n i nt heMi na ma t aDi s e a s eCa s e

Ki yos iTODA

Abs t r a c t

OnOc t o be r 1 5, 2004 t heS u pr e meCo u r t ml i ngwa si s s ue di nt heMi na ma t aDi s e a s eKa ns a iLa ws ui t .I t c a n bes a i dt obeavi c t o r yf o rt hepl a i nt i f fsge ne r a l l y.Thec o ur ta ppr o ve dt hepl a i nt i f f s Ta s s e r t i o nt ha tt he go ve mme n tha dbe e nr e s po ns i bl ef o rr e g ul a t i o nofwa s t e wa t e ra ndf o rr e l i e foft hevi c t i m ( c e r t i f l C a t i o no f pol l ut i o n‑ r e l a t e dpa t i e n t swhowe r eno t ye ti de nt i f l e da tt het i me) .Ho we ve r , apr o bl e ms t i l l r e ma i nsbe c a us e t hed e f e nda nt ' S( t hena t i o na lgo ve mme nt ' S )C l a i m c o nc e m i ngr e g ul a t i o noff ood( f i s ha nds e a f ood)wa s a c k no wl e dge dbyt hec o ur t .

The r ei smuc hdo ubtr e g a r d i ngt hede c i s i o noft hena t i o na lgo ve mme nta ndt heKuma mo t oPr e f e c t ur a l go ve mme ntno tt o叩pl yt hef わods a ni t a t i o nl a wt ot heMi na ma t aDi s e a s ec a s ei n 1 957. 1 ti sc o ns i de r e do ne o ft her e a s o nsf ♭ rt heMi na ma t aDi s e a s eha vi ngs pr e a dwi d e l y.

Ap pl i c a t i o noft hef o ods a ni t a t i o nl a wbe c a mec o n t r o ve r s i a la swe l la si nt hec a s eoft heKa ne miRi c eOi l ( PCBsa ndPCDFs )f oodpo i s o ni ng. I f t hef o ods a ni t a t i o nl a wwa sdi s r e ga r de di nt hos ec a s e s , wec a ns a yt ha t 血eCo ns t 血t i o n,o nwhi c ht hel a wwa sf わ unde d , wa sa l s odi s r e ga r de d.TheMi na ma t adi s e a s eha sa l r e a d y be e na c c e pt e di ns o c i e t ya sa ne nvi r o nme nt a lpol l ut i o npr o bl e m,butvi e wl ngt heMi na ma t adi s e a s ea sf わod poI S O nl ngS ho ul dbee s t a bl i s he di nt hewo r l dofme d i c i nea swe l la sa mo ngc o mmo nc i t i z e ns .

Ke ywo r ds:Co ns t i 山t i o n, FoodSa ni t a t i o nLa w, go ve mme nt , Mi na ma t aDi s e a s e ,S u pr e meCo ur t ml i ng

1

.は じめに

水俣病 関西訴訟 の最高裁判決

(

判例時報

』1 8 7 6

3

頁)が

2 0 0 4

年 に出た ことで、認定基準 をめ ぐ る 「環境省 の抵抗」はあるものの、水俣病

( 1 9 5 6

公式発見)の問題 は解決 に向かっていると考 えてい る人が多い

。1 9 9 5

年の 「政治決着

(豊 田,

1 99 6;

宮揮,

1 9 9 9;

富樫,

1 9 9 9 )

で救済対象者 を水俣病患

*長崎大学環境科学部

受領年月 日

2 0 0 5

(平成

1 7

年)

7

2 7

受理年月 日

2 0 0 5

(平成

1 7

年)

1 1

3 0

者 であると認めなかった ことや、国の法的責任 を認 めなかったことが、 「ニセ患者」中傷記事 (無署名,

1 9 9 5 )

を招いたことに象徴 され る諸問題 を抱 えてい るわけであるか ら、最高裁判決 まで戦い抜いたこと は、 ま さに正解 であった。

しかし食品衛生法の論点が残 され、しかも解決 ( 1)の見通 しが立たない ことについては、 日本社会 において軽視 され ることが少 な くない よ うに思われ る。た とえば、判決後の状況 を描いた鎌 田慧のわか りやすいルポル タージュがあるが、食 品衛生法‑の 言及 はない (鎌 田,

2 0 0 4

a;同,

2 0 0 4b)

(2)

水俣病事件 についての法学者の著書には食品衛生 法‑の言及がい くつかある (富樫,

1 9 95:3 6

,40 な ど)。倫理学の領域では、丸山徳次が、「

1 95 7

9

月 に厚生省が食品衛生法の適用 を拒否 したことの重 大性を、なぜ大阪高裁判決が取 りあげなかったのか、

理解 に苦 しむ ところです。」 と述べている (丸 山,

2 00 4:63)

。社会学では、船橋晴俊が食 品衛生法の 適用問題 について詳細な検討 を行 っている (船橋,

2 00 0:1 47‑ 1 51

)。食品衛生法の論点 について、若 干の検討 を行いたい。

2.

最高裁判決

2 00 4

1 0

1 5日、水俣病関西訴訟の最高裁判決

が出た。基本的には原告勝訴である。水俣病事件で は多 くの判例があるが、おそ らく最後の最高裁判決 であろう (

2) 02 0 0 4

1 0

3 0日放映のNHK ・

ETV特集 「水俣病 問い直 された行政の責任

論点 をよく整理 していた。ゲス トは阿部泰隆 (神戸 大学法学部、行政法 ・環境法) と橋本道夫 (元厚生 省公害課長、医師)であった。行政の責任 について は、

3

つの争点があったと思われ る。排水規制、食 品規制、被害者救済である。

排水規制 と被害者救済では原告の主張が認め られ た。すなわち、排水規制 については

1 9 60

年以降の 国の怠慢が指摘 され、被害者 については、未認定患 者 である原告の大半が水俣病 に認定 された ところ が、食品規制については国が勝った。1

957

年に食品 衛生法

4

条 (有害食 品の禁止) を発動すべ きだった とい う原告の主張が退けられ、行政指導だけでよかっ た とい う国の主張が採用 されたのである

。1 95 8

年、

59

年に関西に移住 した原告については、国、県の賠 償責任 が認め られなかった (田中,2004)

3

つの 争点についての判断は、2

001

年の大阪高裁判決

(

例時報』1

761

3‑ 55

貢) を追認す るものだ。

3.

排水規制 と認定基準

排水規制 について国は責任 を認めたが、被害者救 済 について国は敗北 を認めず に抵抗 してい る。

当初 の認定基準

( 1 959‑ 1 97 0)は重症患者 を念

頭 においた 「狭い」 ものであったが、1

9 71

年認定要 件 (当時の環境庁長官 は大石武一、医師)では、汚 染地域 に住んで魚介類 を食べ、知覚障害な どの うち

いずれかの症状」があれば水俣病 に認定す るとし ている。そのため認定患者数 は大 き く増 えた。

大量棄却 によって多 くの未認定患者 を作 り出 した のは、 「症候の組み合わせ」 を求める

1 977

年判断条

件 (当時の環境庁長官は石原慎太郎、小説家)であ る (3)。背景には補償金支払額 「急増」‑の 「 安」があった と多 くの人は推察 している。今回の最 高裁判決で多 くの未認定患者が司法によって認定 さ れたことは

1 977

年判断条件‑の批判 を含意 してい るが、直接判断条件 を批判す る文章がないために、

国は

1 977

年判断条件 を見直すつ も りはない と主張 す る。 しかし、判決が国側 の医学証人である井形昭 弘、衛藤光明 らの証言 を全 くといっていいほ ど採用 せず、原告側 の浴野成生、三浦洋 らの成果やデータ を採用 したことは (田中,20

04)

、1

977

年判断条件 に疑問を投 げかけるものだ。

疫学的にみて、1

977

年 (昭和

5 2

年)判断条件が 破綻していることは明らかである (津田 ・井形,2

0 01;

津田,

200 4 a

;チ ッソ水俣病関西訴訟 を支 える会,

2 00 4)

。水俣地 区周辺では、四肢末端の感覚障害の 相対危険度 (対照群 を 1とした ときにその何倍か) が非汚染地区 (対照地区)の

1 00

倍前後である。大 気汚染の呼吸器疾患では

2

倍程度である。喫煙関連 疾患でも、非喫煙者 に対 して

5

倍〜 1

0

倍前後であ る (戸田,1

988 )

0

1 0 0

倍が否定 された事例はない。

交絡要因 (曝露 と疾病の関連 をゆがめる第三の要因) もないはずである。

日本精神神経学会は

1 998

年以来、1

97 7

年判断条 件が 「科学的に誤 り

であると指摘 し続けている ( 本精神神経学会 ・研究 と人権問題委員会,1

998;

同,

1 99 9

;同

,2 003 )

。これに対する医学者や環断

( 2 0 01

年以降は環境省)からのまともな反論はない (注 4)0

行政の認定 と司法の認定の 「二重基準」が大きな 社会問題 になっている

。2004

1 2

2 0日の朝 日新

聞社説 「環境省は基準 を見直せ」はわか りやすい解 説 をしている。国が 「負 けた争点」について さえ負 けを認めずに抵抗 しているのだか ら、「勝った争点」

について反省す る可能性 は少ないのではないだろ う か。なお食品衛生法の適用が見送 られた経緯 につい ては、宮揮信雄 の

2004

6

月の文章が丁寧でわか

りやすい (宮揮,2

004 a ) 0 4.

食品衛生法

事件史の流れのなかでは画期的な判決であるが、

国が勝 った

食品衛生法の争点 (大阪高裁判決は 大阪地裁判決の判断を大筋で変更せず、最高裁判決 はそれ を是認 した) に限っては、今回の判決は不当 判決 と言わ ざるをえない。

大阪地裁判決 は、1

957

年時点 についても、1

9 5 9

年時点 についても、食品衛生法4条 (有毒食品の禁

(3)

水俣病事件 における食 品衛生法 と憲法

止)、同

22

条 (飲食店等の規制)、同

1 7

条 (食 中毒 の調査)のすべてについて適用の必要性を否定 した。

また、 自家摂食 は規制の対象外であると述べている

(

判例時報』1

5 06

73

頁以下)。大阪高裁判決は、

1 959

11

月時点 について、 4条の有毒食 晶に該当 すると解釈 し、そのことを告示したほうが望ましかっ た とはいえるとしなが ら、行政指導 にとどまったこ とを是認している

(

判例時報』1

761

23

頁以下) 最高裁判決 は、遅 くとも

1 95 7

年 までに食 品衛生法 により漁獲、摂取 を禁 じるべきであった との原告側 付帯上告に対 して、原審 (高裁判決)の判断は是認 できるとしている

(

判例時報』1

87 6

6

頁、11頁)0 水俣病公式発見は

1 95 6

年、有機水銀 中毒 とわかっ たのは

1 959

年のことである

。1 957

年の段階では病 因物質は不明であったが、原因食品が水俣湾の魚介 類 であることは、伊藤蓮雄水俣保健所長 のネ コ実験

でも確認 された。

前記のETV特集でも示 されたように、1

95 6

年の 熊本県の食 品衛生法第

4

( 20 03

年以降の第

6

条に あたる)適用事例 を見ると、ネズ ミチフス菌 (サル モネ ラ菌)やテ トロ ドトキシン (ふ ぐ毒)のように 病因物質の明 らかなものもあるが、病因物質が 「

のものも少な くない。病因物質が不明でも、原 因食品が明 らかであれば実際に規制 している。後述 の静岡県の例 もある

1 95 7

7

月に熊本県公衆衛生課は、 4条適用 を決 意す る

7

2 4日の熊本県奇病対策連絡会 は食 品

衛生法の適用 (県知事告示) を決めた。 この会議で 蟻 田重雄熊本県衛生部長 も食品衛生法42号適用 を了承 している (宮揮,2

004a)

。 しかも、厚生省 の尾村偉久環境衛生部長 と熊本県の守任意明公衆衛 生課長 のあいだでも食品衛生法の適用 について合意 していた (宮揮,2

00 4a)

。通例 はそれで決着であ る。 しかし、それでも同連絡会の結論 は棚上 げにさ れ、食品衛生法適用の県知事告示は出されなかった。

すなわち、 この とき水上長吉副知事が 「厚生省 に 聞け」 と横や りを入れ、1

957

8

1 6日に熊本県

衛生部長名で厚生省公衆衛生局長 あてに照会状が出 された (宮揮,1

99 7:1 58 )

。県の機関委任事務であ るか ら、国の指導、監督 に従 うことになっているの で、 この件 は判断に迷 う事例 として照会 したのであ ろ う。 これ に対 して、困惑ぶ りを示唆す る

1

ケ月近 い異例 の遅れ を経 て、厚生省公衆衛生局長 は

1 957

9

11日の回答で、

1.

水俣湾特定地域の魚介類 を摂食す ることは、原 因不明の中枢性神経疾患 を発生す るおそれがあ

るので、今後 とも摂食 されないよう指導 された

い。

2.

然 し、水俣湾内特定地域の魚介類のすべてが有 毒化 しているとい う明 らかな根拠が認め られな いので、該特定地域 にて漁獲 された魚介類のす べてに対 し食品衛生法第4条第2号 を適用す る

ことは出来 ない もの と考 える

と回答 した (水俣病研究会編,1

9 96:67 0;宮揮, 1 99 7:1 60

;深井,1

9 99:1 40‑ 1 46

;橋本編,2000:

6 2

,1

90)

。 しかも回答 は照会 した県衛生部長 あてで はな く、県知事 あてであった (水俣病研究会編,

1 99 6:670

;宮揮,20

04a)

。回答の内容 は論弁であ る。阿部泰隆が言 うように、1

0 0

個のまんじゅ うに 毒まんじゆうが混 じっているとわかれば、 「すべて」

が毒でなくても、回収するだろう

( NHK 200 4a) 。 4

条 を適用せず行政指導にとどまったため被害は拡 大 した。

厚生省 と熊本県の担当者が合意 したことが上記の ように省 と県の上層部の意向で正当な理 由な く妨 げ られた とした ら、重大な問題である (これは、1

959

11

月の厚生省食 品衛生調査会の答 申がや は り棚 上げされ、1

96 8

9

月の 「政府見解」でようや く水 俣病が有機水銀 に汚染 された魚介類の摂取 による公 害病 であると認 めた ことを想起 させ る)0

大阪地裁判決は、1

957

年時点については原因物質 (正 しい用語で言 うと 「病因物質」

)が不明であ り、

個々の魚介類 の有害性 を判断できないので 4条 を適 用できない、1

959

年時点 については、有機水銀説が 検証不十分なので

4

条該当性 を判断できない として いた

(

判例時報』1

506

7 4

頁)。それを2

001

年の 大阪高裁判決、2

004

年の最高裁判決が基本的に追認 したのである。なお

1 957

年回答の論理 を全面肯定 しているのは

、1 992

年の東京地裁判決である (大塚,

1 996:8 4)

さらに、宮揮信雄が指摘するように、1

968

9

2 6日の 「

政府見解

に 「水俣病患者 の発生 は昭和

35

年 を最後 として終息 してい るが、 これ は、昭和

32

年に水俣湾産の魚介類の摂食が禁止 されたことや 工場 の廃水処理施設が昭和

35

年以降整備 され た こ

とによるもの と考 えられ る」 とい う一文があること が注 目され る (宮揮,2

004

a ;朝 日新聞』1

968

9

27日朝刊)。

1 96 0

年 (昭和

35

年) を最後 に患者の発生が終息 とい うのは誤認である

。1 9 60

年以降の廃水処理施設 もあま り役 に立たなかった。 しかし、それ以上 に食 品衛生法 との関連で重要なのは、「

1 957

年 (昭和

32

(4)

午) に摂食禁止」 とい う記述である 実際は前述の よ うに、食品衛生法

4

条 を適用 して 「摂食 を禁止」

したのではな く、 「危 ないか ら注意 しな さい」 と行 政指導したのであった。それで、人々の摂食量は減っ たが、不安 を抱 きなが ら食べ続 けた。魚介類 の摂食 量が減 ったので有機水銀の取 り込み量 も減 り、

1

半 ほ ど新規患者 がな く、 「終息」の錯覚 を与 えたの である。その後、開催 を超 えたのか、再び患者の発 生が始 まってい る。

1 96 8

年 に政府が

「 1 95 7

年 に摂食が禁止 された」

と勘違いしたのは (意図的に嘘をついた可能性 もあ るが、推定無罪原則により、勘違いとみなしておく) 宮津が示唆す るよ うに、 「この見解 を作成 した段階 での政府の考 え方、あるべ き水俣病対策の考 え方 を 示 したもの」であ り、 「水俣病の原 因が魚介類 とわ かった昭和

3 2

年 に、その摂食 が禁止 され るべきで あ り、当然禁止 されたはずであ り、それによって水 俣病が終息 に向かったもの と、政府 は考えた」ので あろ う (宮揮,2

00 4a) 0「

語 るに落ちたとい うべ きである。

厚生省監修の年表で 「水俣病事件 このころより社 会的にクロ∵ズアップされ る」が、公式発見の

1 956

年でも、有機水銀説確認の

1 95 9

年でもな く、食 品 衛生法 をめ ぐる攻 防の

1 957

8

月の 日付 になって いることも、関心のあ りかを示 していて示唆的であ る (厚生省生活衛生局監修,1

996:555)

食品衛生法現行

6

条 (当時の

4

条 に相当)の内容 は次の通 りである (総務省法令データ提供システム

h t t p: / / l a w. e 一 g o v. go、 j p/ c gi ‑ bi n/ i d xs e a r c h. c gi )

食品衛生法第6 次に掲げる食品又は添加物は、

これ を販売 し (不特定又は多数の者 に授与す る販売 以外の場合 を含む。以下同じ。)、又 は販売の用 に供 す るために、採取 し、製造 し、輸入 し、加工 し、使 用 し、調理 し、貯蔵 し、若 しくは陳列 してはな らな い。

1 腐敗 し、若 しくは変敗 したもの又は未熟である もの。ただし、一般 に人の健康 を損な うおそれが な く飲食 に適す ると認め られているものは、 この 限 りでない。

2

有毒な、若 しくは有害な物質が含まれ、若 しく は付着 し、又はこれ らの疑いがあるもの。ただし、

人の健康 を損な うおそれがない場合 として厚生労 働大臣が定める場合においては、この限 りでない。

3

病原微生物 により汚染 され、又はその疑いがあ り、人の健康 を損 な うおそれがあるもの。

4 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、

人の健康 を損 な うおそれがあるもの。

さて、熊本県公衆衛生課が

4

条適用を決意した

1 9 57

7月の時点では、食 品衛生法の最終改正は

1 9 57

6

1 5日のものであった。 この ときの 4

条の条 文は次の通 りである (遠 山ほか編,1

957:6 02

。同 書の巻末 に当時の食 品衛生法の全文がある)。

食品衛生法第4条 次に掲げる食品又は添加物は、

これ を販売 し (不特定又は多数の者 に授与する販売 以外の場合 を含む。以下同じ。)、又 は販売の用 に供 す るために、採取 し、製造 し、輸入 し、加工し、使 用 し、調理 し、貯蔵 し、若 しくは陳列 してはならな い。

1 腐敗 し、若 しくは変敗 したもの又は未熟である もの。但 し、一般 に人の健康 を害 う虞がな く飲食 に適す ると認められているものは、 この限 りでな い。

2 有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着 し ているもの。但 し、人の健康 を害 う虞がない場合 として厚生大臣が定める場合 においては、この限 りでない。

3

病原微生物により汚染 され、又はその疑があり、

人の健康 を害 う虞があるもの。

4

不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、

人の健康 を害 う虞 があるもの。

この42号が 「有毒な、又は有害な物質が含ま れ、又 は附着 しているもの。但 し、人の健康 を害 う 虞がない場合 として厚生大臣が定める場合 において は、 この限 りでない。」か ら、 「有毒な、若 しくは有 害な物質が含まれ、若 しくは附着 し、又はこれ らの 疑いがあるもの。但 し、人の健康 を害 う虞がない場 合 として厚生大臣が定める場合 においては、この限 りでない。」 に変更 されたのは、1

97 2

6

3 0日の

食 品衛生法改正 によってである (大蔵省 印刷局,

1 972:1 25)

0 疑いがあるもの」 を追加 したのは、

結果的に過大規制だった と言われた場合 に当局が責 任を問われるのを避けるためであった (阿部

2 0 02:

3 74)

なお、1

9 47

1 2

24日の公布当時の食品衛生法

の条文は、衆議院ホームページの 「制定法律

で 「

1

回国会」の 「法律第

233

号 食品衛生法」に掲載 されてい る。

h t t p: / / www. s h ug i i n. go. j p / i t d bho us e i . ns 打ht m l / ho ur i t s u/ 0 011 9 471 22 4233. ht m

制定当時の第

4

条の条文は、冒頭が 「左 に掲げる食 品又 は添加物 は

となってお り、 「製造 し

の次の

輸入 し」 (

1 9 53

年の改正で追加)がない ことを除

(5)

水俣病事件 における食 品衛生法 と憲法

いて

、1 957

年当時の条文 とまった く同じである ( 時の法律 は縦書 きなので、 「次 に掲 げる

ではな く

左 に掲 げる」 となっている)0

食品衛生法

4

条 (現在の

6

条)で 「含有するもの」

に とどま らず、 「含有す る疑いがあるもの」 をも規 制す る 「予防原則

(疑わ しきは規制す る) は、

3

号の病原微生物 については

1 9 47

年の制定当初 か ら あったが、

2

号の化学物質 については

1 972

年 に導 入 されたものである (5)。字面だけ見ていると、

1 95 7

年当時、化学物質については 「予防原則」がな かったわけだか ら、 「厳密 な法解釈」 として正当だ と思 う人がいるかもしれない。 しかし、現実 を見 る とそ うした理解 は疑わしくなる

。1 9 57

年以前の2 の事例 をあげよ う。

第 1は、アサ リの例 である (注 6)。終戦前後の 食糧難の頃に、静岡県浜名湖のアサ リがなぜか有毒 化 し (病因物質 は不明)、それ を自分たちで食べて いた周辺住民か ら多数の死者が出た

。1 9 49

年 に静岡 県は病因物質不明のまま食品衛生法

4

条 を適用 し、

住民がアサ リを食べない ようにした。 この対策 によ り新規の患者や死亡者 は発生 しな くなった (津 田,

2 00 4a :50

;宮揮,

2 00 4a)

。熊本県は厚生省食品 衛生課の示唆 を受けて、

1 957

3

1 5

日付で静岡 県衛生部 に経緯 を照会 している (水俣病研究会編,

1 99 6:483

;水俣病被害者 ・弁護 団全国連絡会議,

1 997:1 79

;宮揮,

200 4

a)。もちろん 「すべて」の アサ リが有毒化 していることを静岡県が確認 したわ けではない。また 「病因物質不明」 とい うのは、細 菌性 (ブ ドウ球菌な ど)なのか、化学性 (メタノー ルな ど)なのか、 自然毒 (フグ毒な ど)なのか、わ か らない とい うことである。

2

、1 955

年の森永 ヒ素 ミル ク事件である。 こ れは早い時期 にヒ素 による化学性食 中毒であること がわかった。回収 されたのは 「多 く」の ミル クが汚 染 していることがわかったか らであって、 「すべて

の ミル クが汚染 していることを確認 したか らではLtf い (津 田,

2 00 4a :6 2)

すべて」について確認せよとい うことであれは 食 品衛生法は緊急事態 に対処できない。 ここでい う

すべて」 とい うのは 「すべての魚種」 を意味 して いたようだ (船橋,

2 000:1 5 0)

。水俣湾の魚の 「 べてが有毒化 している」ことを証明する 「悉皆調査」

は不可能であるし、その必要 もない。 「すべてが有 毒化」 しているか どうか不明でも 「少なか らぬもの が有毒化」 していることが明 らかであれば、対処 し てきたことが、アサ リや ヒ素 ミル ク事件か らも明 ら

かである。

水俣病京都地裁判決でも 「当該特定範囲の食品全 体 について一般的に有毒有害 と認められ るな らば、

右範囲に含まれ る全ての食 品が同条同号にい う有害 食 品に該当す ると解すべきであって」 と述べている

(

判例時報

』1 476

46

頁 ;大塚

1 996:8 5)

0

1 95 7

9

月の厚生省局長通知は、法令解釈 として、

条文だけ眺めると 「正当」 に見えるとしても、静岡 県の 「前例」や予防原則 の 「論理

(緊急事態 に現 場で どう対応すべきか) に照 らす と明 らかにおかし い (もちろん 「前例踏襲」がいつ も正 しい とは限 ら ないが、 この場合 は前例が妥 当なものである)。現 場 を考慮 しない 「机上の空論」であ り、法解釈 をゆ がめるものであると言わ ざるをえない

。20 04

年の最 高裁判決がなぜ この食品衛生法解釈 を結果的に追認 しなければな らないのだろ うか。 この場合、食品衛 生法の適用 を官僚の 自由裁量 にゆだねてよかったの か。薬害エイズ裁判厚生省ルー ト

( 2 005

3

25

日に二審判決でも一部有罪)でも問われていること であるが、緊急事態 においては行政の裁量の余地が 狭 まるとい う 「裁量権収縮 の理論

(阿部,

1 988:

1 87‑ 1 90

;宇賀,

1 997:1 56‑ 1 6 2 )

も考慮すべ き であろ う (7)0

さらに

、1 957

年の厚生省の対応は、厚生省 白身の

1 95 0

52日の通達 における 「危険性の範囲が当 初明瞭になっていない ような場合 には、危険の考 え られ る範囲全部 に対 して包括的な処置 を行っておい て、爾後調査の範囲が明確化す るにつれ、不必要で あった制限は順次解除 し、食品の利用の禁停止 を必 要な部分のみに圧縮 してい くことが必要である」 と い う指示 に反す るものである (船橋,

20 00:1 50)0

水俣病 について初 めて国、県の賠償責任 を認めた 画期的と言われる第三次第一陣熊本地裁相良判決

( 1 98 7

3

3 0

日)では、 「裁量権収縮の理論」 をふまえ

、1 95 7

年 に食品衛生法

4

条 を適用すべきだった と している

(

判例時報

』1 23 5

21 2

頁 ;富樫

,1 995:

4 0

,

3 48

,

351

,

468;

水俣病被害者 ・弁護 団全国連 絡会議編,

1 997:1 77

,

21 7;

牛山編,

2001:1 8 4)

また第三次第二陣熊本地裁判決

( 1 9 93

3

25

日) は、遅 くとも

1 95 9

11

月までに食品衛生法 4条 を 適用すべ きだった としてい る

(

判例時報

』1 455

42

頁 ;水俣病被害者 ・弁護団全国連絡会議編

,1 9 97:

1 77)

水俣病国家賠償訴訟で国 ・県の責任 を認めた とき の根拠法令 を表 1に示 した。

(6)

表 1 水俣病国家賠償請求訴訟の判決 1 2

3

4

5 6

7

8

決 熊 (本 熊 新 熊 (渇 本 熊 俣 京 俣

( 水

水 俣

水 本 水 水 本 病 都 俣 地 東 軍 俣 地 京 地 病 裁 病 裁 都 裁 西 西 西 第 一 訴 第 一 訴 ‑ 訴

三 九 訟 決 三 九 訟 九 訟 八 判 九 判 九 判 訴 七 ( 訴 三 決 三

訟 年 訟 年 ( ( (

第 三 裁 第 三 一 月 二 月

判○陣 三 判 五陣二 旦 地 決 旦 九 決 且 冒 九

)

北 午

) ) ) ) )

口口

讐法 × (

*

×J × × × × × × × ×

調

× × ×

LH

8

) × × ×

× × × × × ×

*

1959

1

1月未 の段 階で食 品衛 生法 の適用 は認 めてい る が、結論 で は棄却 した もの。

1

2

4

5

は熊本水俣病全 国連 関係、

3

は関連す る

新潟水俣病 関係 。

出典 水俣病被害者 ・弁護 団全国連絡会議編 『 水俣病裁判 』 ( か もがわ出版

,1997)177

頁 の表 に関西訴訟高裁判決、最 高裁判決 を加筆 して 日付順 に した。

2

6

は行政の法的責任 に関 して原告 の全面敗訴。 3 も原告敗訴。なお、水俣病全 国 連の前掲書では関西訴訟‑審の 「 緊急避難的行政行為」を 「 ‑」

としてい るが、判決文 な どか ら

×

」であると解釈 した ( 『 判 例時報

』1506

82

頁 ;同

1876

6

頁 ) 0

1 9 5 7

年当時の熊本県公衆衛生課長守住憲明 (取材 当時は開業医、故人)は、

4

条適用が阻止 された悔 しさを回想 している

( NHK

,

2 0 0 4b)

。食品衛生 法第

1

条は

1 9 4 7

年の制定当時も

1 9 5 7

年当時も 「 の法律 は、飲食 に起因す る衛生上の危害の発生を防 止 し、公衆衛生の向上および増進 に寄与す ることを 目的 とす る」であった

( 2 0 0 5

年現在の第

1

条はそれ に少 し加筆 したものだが、趣 旨は同じである)。何 をなすべ きか明 らかだったはず だ。

ただし、加工食品 ・外食産業 と生鮮食品の違いは 食品衛生法運用の課題 として残 る。食品衛生法

4

(現在の

6

条)は、加工食品や外食産業で有害物質 や病原菌が付着 した場合 を想定 してお り、

4

条適用 は業者の管理不備 の責任 を問 うものである。 しかし 水俣病の場合 は有害物質付着の責任は化学工場にあ り、

4

条 を適用 され る漁民 には責任がなかった。そ のため、

4

条適用 に際 しては漁業法の規定により、

行政は漁獲禁止 をした場合 に漁民 に補償 しなければ ならない。それが県庁 に適用 を蹟蹄 させた内部要因 (外部要因は前記の厚生省の介入)であった (宇井,

1 9 6 8:4 2

;船橋,

2 00 0:1 51 )

。前述のアサ リも生鮮 食品であるが、 これは周辺住民による自家採取であ り、漁民‑の補償の問題は生じなかったのであろう。

橋本道夫 らは次の よ うに述べている。 「水俣病の 場合、厳密な原因特定 を主張す る勢力があったため に、魚介類 とい う人の 口に入 る第一の原因が軽視 さ れた。人命 に関す る緊急性のあることであ り、細か な化学式まで求めるのでな く、原因を魚介類 として 当面の対策 をとる必要があった。水俣湾の魚介類の 摂食が原因であることがわかった時点で、被害の深 刻 さに鑑み、行政は、補償 問題 と健康被害 を天秤 に 掛けるのではなく、漁獲の禁止措置をとるべきであっ た。そして、その魚介類の有毒化の原因 として工場 排水が疑われた時点で、行政は工場の立入検査 を実 施 し、有害物質の排出を停止 させ る措置 をとる必要 があった

(橋本編,

2 00 0:1 3 8)

0

食品衛生法 (注 9)では、有害食品を食べて症状 のあった人 (曝露有症者)はすべて救済 しなければ

(7)

水俣病事件 にお ける食 品衛生法 と憲法

な らない。症状の組み合わせで選別 してはな らない (津 田,

2 004 a : 75 )

食 中毒患者 の認定制度」

とい う奇異なものは、水俣病 (熊本 と新潟) とカネ ミ油症 の他 に例 を見ない。「1万人 を越 える未認定 食 中毒患者」 とい う異常事態 はこの

2

つの事件 の他 にない (津 田,

2 00 4b )

。水俣病 では、救済の枠 を拡大 した

1 971

年 (昭和

46

年)の認定要件は選別、

切 り捨てにつなが らなかったので、科学的にも法的 にも妥 当 と思われ る (科学論争 はあるが、 日本精神 神経学会の見解が妥当と思 う)。 しかし

、1 95 9

年 ( 定制度 の正式 な発足)か ら

1 971

年 の認定要件採用 まで と、

1 977

年 (昭和

52

年)判断条件採用 か ら現 在 までは、食 品衛生法の趣 旨に反す る状態が続いて い るのではないだろ うか。

救済の失敗 (昭和

5 2

年判 断条件) も、原 因の一 部 は食 品衛生法の軽視 である。水俣病では、食 中毒 の全体像 をつかむための調査 もなされていない (調 査は食品衛生法で義務づけられている

。1 9 57

年当時 の第

27

、20 05

年現在 の第

5 8

条 をみ よ)。公的な 調査がな く患者 の本人 申請 を待つ とい うのも、 1万 人 を超 える 「未認定食 中毒患者」の存在 も、 「検査 漬け

や申請 してか ら何年も保留で待たされ るのも、

食中毒事件処理 としてまったく異常な事態である ( 本精神神経学会 ・研究 と人権問題委員会

,2003:83 0;

津 田,

2 004 a)

1 968

年のカネ ミ油症でも食品衛生法は軽視 され、

さらに医師 (九大病院)による食中毒届出さえなかっ た (津 田,

2 004 a: 1 85

;川名,

2 005:91

,

330)0

もちろん、全体像 をつかむための調査 もな されてい ない。 「症状 の組 み合わせ による厳 しい認定基準」

も水俣病 と同様 で、被害 を届 けた約

1 4000

人の うち 認定患者 は死亡者 も含 めて

1 88 5

人 (

1

割余) にす ぎない。 ダイオ キシ ン類 のPCDFを加 えた

20 04

年の新認定基準でも、

11 7

人の申請 に対 して認定 は

1 8

( 1 5

%) にす ぎない (垣花 ・石川,

2 005)

0

津 田敏秀 は水俣病判決 について次のよ うに述べて い るが同感 である。 「食 品衛生法 にお ける国の責任 を認めなかった大阪高裁 の判決 をそのまま引きず る 形で食 品衛生法の問題 を取 り上 げなかった最高裁判 決 を見 ると、『原 因物質』 とい うよ うな食 品衛生法 の実務 では使わない用語 を誤ったまま判決文 に用い てお り最高裁 が食 品衛生行政の実際や裁判資料 を検 討する上で著 しい不備があったと考えざるを得ない。

食 の安全性が大 きな関心 となっている現代社会 にお いて、法の番人である最高裁がこのよ うな判決 を下 していては、今後の食 品衛生法の適用 において大 き

な障害 とな るだろ う(津 田,

200 4

b)

5.

阿部が指摘 したよ うに、環境 ・健康の問題 は憲法

1 3

条 (個人の尊重、生命 、 自由及び幸福追求 に 対す る権利)をふまえて対処 しなければならない

( N

HK

,

2 00 4 a)

0

1 3

条の趣 旨は、他人 を犠牲 にして 自己利益 をはかる利 己主義 と、全体 のため と称 して 個人を犠牲にす る全体主義を否定することである ( 秤,2

000:1 88)

また、学説 では、 「環境権」 の根拠 としてあげ ら れる憲法の条文に、第

1 3

条 とあわせて、第

25

条 ( 康で文化的な最低限度の生活 を営む権利、公衆衛生 の向上など)がある (淡路,

1 998:31

;辻村,

2 00 0:

3 25

;杉原,

2004:1 83)

。第

25

条 は、 「生存権」 の 根拠 として よ くあげ られ るものである。高度成長時 代 には、 日本経済 とい う 「全体」のために、営利企 業の 「集合的利 己主義

のために、個人が犠牲 にさ れ公害が激化 した。それ は、 「健康 な生活 を営む権

の侵害 であった。

食 品衛生法

1

条 (目的) と憲法

25

条 が 「公衆衛 生の向上」 とい う文言 を共有 してい ることは

、1 9 47

年の法案提案理′由説明でも念頭 におかれてい るし、

逐条解説の公式説明でも強調 されてい る (厚生省生 活衛生局監修,

1 996:9

,

1 0

,

53 8 )

。法の 目的は 「 食 に起 因す る衛生上 の危害 の発生の防止

(1条) であ り、その危害 はまず個人の レベル で生 じる ( れが集積すると、集団‑の危害になる) ものである。

水俣病裁判原告団も、食 品衛生法の上位規範 が憲法

1 3

条 と

25

条であると指摘 している (判例時報

』1 235

87

頁 ;『判例時報

』1 455

20

頁)。また下山瑛二

も憲法

1 3

条、

25

条 と食 品衛生法の密接 な関連 を示 唆 してい る (下 山,

1 979:1 5 7)

さらにカネ ミ油症事件一審判決 (福岡地裁小倉支

1 9 78

3

1 0

日) は、食品衛生法の意義 につい ては、次の よ うに指摘 してい る。

食 品衛生法 は、右憲法第

1 3

条、第

2 5

条の政治 的理念 に基づいて制定 され、飲食 に起 因す る危害の 発生 を防止 して、公衆衛生 の向上および増進 に必要 な条件 を確保す ることを 目的 とす るものであ り、食 品の安全が人の生命、健康 の維持、発展 にとって必 須 の条件 であるため、消費者 である国民 に対 して安 全 な食 品の供給 を確保 をす ることが食 品衛生法 に基 づ く行政の極 めて重要な基本的責務 となってい るの である。」

(

判例時報

』8 81

68

頁 ;下山,

1 97 9:

22 4

,

23 6)

0

(8)

ただし、 このカネ ミ油症事件判決 は、 「被告国に 食 品衛生法 に基づ く規制権限の不行使 について全 く 行政上の責務僻怠 (けたい)がなかった とはいい難

」 (

判例時報

』8 81

70

頁) としつつ も、 「ダー ク油事件の発生 に際 して、被告国の食品衛生法上の 権限不行使 について、被告国に著 しい不合理があっ た とは到底いい難い(

i bi d:73)

、 「九大医学部の 医師が同条 (注 :食 品衛生法

2 7

条)の届出義務 を 怠 り、仮 にこれ によって本件事散の拡大に寄与 した 結果 になった としても、国家賠償法第

1

条の責任が 問題 となる余地 はないのである

( i bi d:72)

な ど として、国家賠償法

1

条 に基づ く国の賠償責任 を否 定 したものであ り、 この判示 には異論の余地が少な

くない。

憲法の基本的人権規定 を財産権 中心の把握の仕 方か ら、生存権中心の把握の仕方 に転換す ることを 要求 し、憲法

1 3

・25

条か ら、その一環 としての

健康権』概念 を導 きだ して くる」 (下山,

1 979:

72)

うえで、食品衛生法の適正な運用 は、重要な要 件のひ とつであろ う (阿部,

2 002

参照)。下山は生 命 (生存権) を中心におき、その外側 に健康 (健康 檀)、生活 (財産 を含む)、環境 (環境権) をおいた 同心円を図示 してお り、有益である (下山,

1 97 9:

79)

下山の著書は四半世紀前のものであるが

、21

世紀 に入っても、阿部泰隆が 「財産権 ・営業の 自由偏重 の法システムを廃止せよ」と訴えている 仲摺β

,2002:

3 76 )

0

2

人のす ぐれた行政法学者の発言 に耳を傾 け るべきであろ う。なお個人の尊重 とかかわ りの深い 財産 と、法人や富豪の巨大財産は、当然区別すべき ものであろ う。私たちが 「生存権 ・健康権 ・環境権 が財産権より優先すべきだ」 とい うときの財産権は、

特 に後者 の巨大財産が念頭 にある

6.

被害の拡大

行政の不作為によって被害はどの くらい拡大 した のであろ うか。チ ッソ附属病院の細川院長が水俣保 健所 に届出をしたのは

1 95 6

5

月で、 これがいわ ゆる 「公式発見」である。わずか半年後の

1 95 6

1

1月には、熊本大学医学部公衆衛生学の喜田村正次 教授 らによって 「水俣病の原因は、工場排水 中に含 まれ るある種の重金属 による魚介類 の汚染 による食 中毒の疑いが強い」 との報告が出された。 この時点 排水 を停止

し、

魚介類の摂取 を禁止 していら、

水俣病患者は約

5 0

名程度で終わっていただろ うと、

三重県立大学医学部公衆衛生学 (当時)の吉 田克己

教授 は後に著書 『四 日市公害

のなかで指摘 してい る (吉 田,

2 00 2;

永嶋,

2005 b)

。吉 田は、四 日市 公害裁判 で原告住民側 に協力 した医学者 である。

被害拡大防止の第

2

の機会は

、1 957

7

月に熊本 県公衆衛生課が食品衛生法第 4条適用 を決意 した と きである。 この時点で排水停止 と魚介類摂取禁止 を 行 っていれば、水俣病患者 は 「

5 0

名程度」 をそ んなに大きくは上回らなかったのではないだろうか。

3

の機会 は

1 95 8

7

月の厚生省公衆衛生局長 通達で、水俣工場の廃棄物 によって魚介類が有毒化 した と推定 され ると指摘 された ときである (富樫,

1 99 5:3 23 )

0

1 958

9

月の水俣工場 による排水路変 更で患者発生地域 は拡大す る

4の機会は

1 95 9

7

月の熊本大学医学部の 「 機水銀 中毒である

との報告であ り、第

5

の機会は

1 95 9

11

月の厚生省食 品衛生調査会の 「有機水銀 中毒である」 との答 申であった。 この答 申は政策の 基礎 にされ ることな く棚上げされ る (宮揮,

1 9 9 7:

2 63)

。 この頃、水銀 を触媒 とす るアセ トアルデ ヒ ド の増産が続いている (水俣病被害者 ・弁護団全国連 絡会議編,

1 997:49

の図)0

そして

、1 968

5

月に水銀 を触媒 とするアセ トア ルデ ヒ ド製造工程が 日本全土か らな くなったことを あたかも見届 けるかのように (切 り替 えが早かった のは

1 9 61

年 1月の鉄興社酒 田工場 であ り、最後 ま で残っていたのはチ ッソ水俣工場 と電気化学工業青 梅工場であった)、国は

1 9 68

9

月の 「政府見解」

で水俣病 を有機水銀 中毒 と認めたのである (原 田,

1 985:7 2

;見 田,

1 99 6:60)

0

この

「 11

年の遅れ

」 ( 1 957‑ 1 968

年)は、薬害 エイズ事件 における加熱血液製剤 の認可での

「2

4

ケ月の遅れ

」( 1 9 83

3

〜 1 985

7

月)を連想 させ る 認可の遅れた

2

4

ケ月のあいだに血友病 患者の感染は集 中している (池 田,

1 993:1 01

)。 こ の場合、加熱製剤の開発で先行 したのは、 トラベ ノー ル、‑キス ト、化血研で、開発 に遅れ をとった ミド

リ十字の開発状況 をあたかも見届 けるかのよ うに、

厚生省の認可がなされたのである (池田

,1 99 3:1 1

7)

2 00 0

3

31

日までに

1 71 28

人が認定申請を行っ たが、熊本県 と鹿児島県が認定 した患者数 は

22 6 4

人 にす ぎない (田中,

20 04;

永嶋,

2005

b)。単純 計算 しても、 「疑わ しきは規制す る」 とい う 「予防 原則」で対応 していれば、被害は約

40 0

分の

1

程度 にお さえることができたのではないだろ うか。橋本 道夫の次の指摘 は印象的である。 「民法の共同不法 行為 に対 して、共同不作為 ともい う法理が研究 され

(9)

水俣病事件 にお ける食 品衛生法 と憲法

る必要もあるのではなかろ うか

」 (橋本編,

2 0 0 0:

2)

国の公式認知

( 1 9 6 8

年)が公衆衛生学 (

1 0 )

の教科書にどう反映 されたかも見ておこう (2) 水俣病 については、公衆衛生学の教科書で、環境衛 生 ない し環境保健 (水質汚染 と公害病)、食 品衛生 (化学性食 中毒)、母子保健 (胎児性水俣病)、労働 衛生 (職業性有機水銀 中毒)の項 目で言及があるの が望 ましいのであろ う。 この表 を見 る と、 「公害病 としての水俣病

は定着 してい るが、 「化学性食 中 毒 としての水俣病」‑の認識 はいまひ とつである。

2 公衆衛生学の教科書 における水俣病の記述 の 比較 (戸 田作成)

著者 .編者 発行年 水俣病 の記述 古屋監修

1 9 4 9

今後起 り得る化学

5

編 優

性食中毒について 生畢」に

7 3

の項 で、.鉛 、枇 をさいている 素、緑青について ことが、時代 の言及はあるが、 背景 をうかが 水銀‑の言及はな

( 4 0 7

頁) わせ る○

斎藤編

1 9 5 6

化学性食中毒の項 上下巻あわせ で無機水銀 (昇衷 て 本 文

8 1 2

の誤用 自殺)に言 頁 ○ 下 巻 は

( 2 0 7

) ○ 1 9 5 7

年○

遠 山 .川

1 9 5 7

化学性食中毒の項 公衆衛生学の 城 .金原 . に無機水銀‑の言 教科書ではな

松井編 及がある

( 3 7

頁) く食品衛生の参考書であるが、比較のために入れたo

豊川 .菊池

1 9 5 9

性食中毒の項にも水銀‑の言及はな公害の項にも化学

( 6 6

,

1 6 1

貢) 福 島 .藤

1 9 6 0

食中毒の項にも公

咲 .栗原 害の項にも水銀‑の 言 及 は な い(

1 4 7

,

1 5 9

頁)

田中

1 9 6 1

食中毒の項にも環 食品衛生の節 境衛生の章にも水 に放射能汚染 銀‑の言及はない の項 目あ り○

安倍 .高桑

1 9 6 7

環境衛生の章にも

食品衛生の章の食俣 病 ‑ の言及 なで水銀中毒に言及中毒の項 目にも水しo労働衛生の章

( 3 21

頁)o

1 9 6 8

食中毒や環境衛生の項 目はないo 豊川 .林 .

1 9 6 9

食品衛生の章の化

重松編 学性食中毒の項で水 俣 病 に 言 及生の章で無機水銀中毒について記述

( ( 2 3 1 4 4 7

貢)頁)oo労勘衛

塚原

1 9 7 3

項 目で水俣病に言頁)の節の 「の説 明 の なか にう言葉があ り化学性食中毒有機水銀」 とい、「

( 6 2

環境衛生」頁)o公害」の

㊥4 」

安倍 .高桑

1 9 7 4

化学性食中毒の項 前掲の安倍 . 宿 に水俣病‑の言及 高 桑 編

1 9 6 7

はないが、公害の の 全 面 改 定

章 に言及 が あ る

( 4 3 1

頁)O.労働衛 生の章で水銀中毒

水 銀 中毒頁)oの他に 「付 有機

」 ( 3 2 0

版 ○ 西川 .井上

1 9 7 4

食品衛生」の項

毒」の項 目も言及生」の章のなかに水俣病‑の言及はの言及はあるが、ないもな く、 「目はあるが 「メチル水銀」‑

( 1 0 7

環境衛頁)o食中

表 1 水俣病国家賠償請求訴訟の判決 1 2 3 4 5 6 7 8 判 決 熊 (本 熊 水 俣 新 熊 ( 渇 本 熊 俣 京 俣水( 水 水俣 水俣水 本柄水 水 本 病 都柄柄柄 俣 地 東 俣病 軍 俣 地 京 地 関 関 関病 裁戻病 裁 都 裁西西西第 一 訴第 一 訴 ‑ 訴訴訴 三 九 訟 戻判 決 三 九 訟 九 訟 訟 訟次八 判次九 判 九 判判判 訴 七 決( 訴 三 決 三午訟 年訟 年 ( ( ( 第 三 東 蘇 裁 第 三渇地 大 大 最一 月戻二 月‑阪阪高判○陣 三地裁判

参照

関連したドキュメント

注)○のあるものを使用すること。

(2)「冠表示」の原材料名が生鮮食品である場合は当該生鮮食品の産地を、加工

既存の精神障害者通所施設の適応は、摂食障害者の繊細な感受性と病理の複雑さから通 所を継続することが難しくなることが多く、

ニホンイサザアミ 汽水域に生息するアミの仲間(エビの仲間

 本計画では、子どもの頃から食に関する正確な知識を提供することで、健全な食生活

17‑4‑672  (香法 ' 9 8 ).. 例えば︑塾は教育︑ という性格のものではなく︑ )ット ~,..

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

HACCP とは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのあ る微生物汚染等の 危害をあらかじめ分析( Hazard Analysis )