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朝 日町能中の新第三系
山 野 井 徹 (山形大学理学部地球環境学科) 見学地 は朝 日町元能中の西部丘 陵地 にある (図 ‑ 1).
また,梶平 (くぬ ぎだい ら)の棚 田 (写真‑1) を見下 ろ す 「一本槍公園」の近辺で もある (写真 ‑ 1).
図‑ 1 見学地位置図
公園の西側の棚 田に至 る道路や,東側の資材置 き場 に作 られた切割 りは地質の観察に適 している. この付近の地質 は図 ‑3に示す ように新第三系の本郷層中の葛沢 シル ト岩 部層 とその上位の大谷凝灰岩質砂岩部層の境界部である.
資材置 き場の露頭で見 られる地質の柱状 は図‑4に示 され る. この図で明 らかなように,下位 は灰色の塊状 シル ト岩 を主体,上位 は凝灰岩や凝灰質砂岩か らなる.す なわち, 下位 は葛沢 シル ト岩部層であ り,上位が大谷凝灰岩質砂岩 部層であ り,両部層の境界部が連続的に見 ることが出来る.
川
図‑2 見学地 (○印)付近の地質図 (佐竹,1989より)
‑一 境界漸移
‑ 境界明確 国 スランプ構造 匡 ヨ 火焔構造 田 凝灰質砂質泥岩 回 生痕化石
【 ≡
ヨ 浮石交 じり[≡ ]凝灰質砂岩 巨 ヨ 凝灰岩 (火 山灰 )
凝灰質泥岩 泥岩 (シル ト岩)
図‑3 見学地に見られる露頭の地質柱状図 葛沢シル ト岩部層と大谷凝灰岩部層の境界部
山形県の新第三系で累層や部層の境界が連続露頭でみ られ る場所 は少ない.その意味で,山形大学理学部では,地質 柱状図を作 った り,地層の境界 を求める実習の場所 として 利用 されている (写真‑2).
また,上位 の凝灰岩や同質の砂岩層 は,当時の陸域か ら 直接海 に降下 した火 山灰 と二次的に流入 した凝灰質砂岩 を
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写真‑ 2 単層を区別 して柱状図を作ったり,より大きな地層の 単位 (部層や累層)の区分の実習に有効
見分 ける実習 に も好適である. また,火山活動が一時お さ まると,再 び葛沢層の堆積期 と同様 な静かな海底 にもどり, 底生の生物が活動 を始めることが シル ト層の中に密集す る 生痕化石か ら分か る. さらに上位‑急激 な流入火 山灰 の表 層へ底生動物が移動 している.露頭 の最上部では,大量 の 火 山灰 の海底地すべ りによる急激 な堆積 で生 じた火焔状構 追 (フレーム構造,写真‑ 2)や当時の海底堆積物 をブロ ッ クとして削 り取 って巻 き込 んで堆積 したスランプ構造 (写 真‑ 3) な どが見 られ,当時の環境 を考 えるのに役立つ.
なお, ここの露頭の上部 を覆 ういわゆる 「表土」に構造 をもつ部分が観察 され る.従来新鮮 な露頭 を覆 う 「表土」
は 「土壌」とほぼ同義で地質学の対象 にはな らなかった.
土壌 の内部構造 は 「土層の分化」もしくは 「土壌層位」と
・一‑一一‑1‑.1▲きり
写真‑ 3 生痕化石の密集する泥岩層の上に流入した凝灰質砂岩 層が数ユニットあり,その‑つの上面に火焔 (フレ‑ム)構造 が見られる.最上位は厚い凝灰質砂岩で,スランプ構造の泥層 を取り込む (写真‑ 4).
写真‑4 凝灰質砂岩に取り込まれた泥層.スランプ構造をもつ ので凝灰質砂岩の急激な流入を物語る.
い う概念で扱 われている. この土層の分化 は地表 にほぼ並 行 して土壌が上位か らA層,B層及 びC層 に分 け られてい る. ここで問題 に したいのは有機物 の上か ら下‑ の集積 , 分解,溶脱す るな どの土壌化作用の ことではない. こうし た土壌 の母材 の形成が新鮮 な岩石 の風化 によってで き,そ れがC層で もあるとされている点である.極端 なた とえ と して,「地上 にお ける土 の生成 も実 は規模 の違 いでだけで, 灯龍や石垣 の石 にこけが侵入 して くると同 じような過程 で, 岩石 の風化 が進行 し,やが て植物群 落 の発 生 す る土 とな る」 と解説 されている (前 田 ・桧尾,1983).
写真 ‑54の露頭では一見葛沢層の シル ト岩が現位置で風 化 して上位の表土 (土壌) を形成 しているように見 える.
しか し,シル ト岩の風化帯 の上位 は下位 のシル ト岩の磯 を 主体 とす るが,それ以外 の磯 を含 むことで,明 らかに堆積 物である.す なわち,土壌 を形成す る母材 は下の基盤岩の 風化物 ではな く,基盤岩 を覆 う異地性 の堆積物であること
をこの露頭 は示 している.
写真‑ 5 表土は基盤岩の風化の産物ではなく,基盤を覆おう異 地性の堆積物
引 用 文 献
前 田正男 ・於尾義郎 (1983)土壌 の基礎知識.農山漁村文 化協会,p.211.
佐竹伸一 (1989)最上川中流部 ・五百川峡谷周辺の地質 と 大地の成 り立 ち.山形応用地質,No.9,17‑27.